住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • 2022年宅建業法改正のポイントを解説!不動産取引のデジタル化は進むのか?

    2022年に宅建業法が改正!不動産取引のデジタル化は進むのか?

    2022年5月に宅地建物取引業法が改正されました。押印義務が廃止され、交付書面の電子化が可能となったため、今後は不動産取引のデジタル化が進む可能性があります。今回の改正によって、不動産事業者にはどんな影響があるのでしょうか。 この記事では、不動産事業者向けに2022年宅建業法改正のポイントを解説します。 宅建業法が改正された背景 今回の宅建業法改正は、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(デジタル社会形成整備法)」に基づいて行われたものです。本法律は2021年5月19日に公布、2022年5月18日に施行されました。 デジタル社会の形成により、日本経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与することを目的としています。 不動産取引においては、改正前の宅建業法で義務付けられていた押印や書面手続きがデジタル化を阻む要因となっていました。そのため、デジタル社会形成整備法の施行に伴い、押印や書面交付に関する宅建業法の改正が行われました。 2022年宅建業法改正のポイント 今回の宅建業法改正のポイントは「押印義務の廃止」と「交付書面の電子化」の2つです。それぞれの内容を確認していきましょう。 宅地建物取引士の押印義務の廃止 不動産取引に必要な以下の書類について、これまでは宅地建物取引士の押印・記名が必要でした。 重要事項説明書 売買・交換・賃貸借契約締結後の交付書面 今回の法改正で押印義務が廃止され、今後は記名のみで可能となります。ただし、媒介契約・代理契約を締結したときに交付する書面については、引き続き押印が必要です。 交付書面の電子化 以下4つの不動産取引関連書類について、電磁的方法による交付が可能となりました。 媒介契約・代理契約締結時の交付書面 レインズ(指定流通機構)登録時の交付書面 重要事項説明書 売買・交換・賃貸借契約締結後の交付書面 依頼者の承諾は必要ですが、今後は紙による書面の交付が義務ではなくなります。電磁的方法による提供において、満たすべき主な基準は以下のとおりです。 依頼者が書面の状態で確認できるよう、出力可能な形式で提供する 電子署名等の方法で、記載事項が改変されていないことを依頼者が確認できるようにする 電磁的方法により書面を提供する場合、不動産事業者は依頼者が確実に受け取れるようにしなくてはなりません。 具体的には、電磁的方法の内容や記録方式を示した上で、出力可能な方法(電子メール、Web上での承諾など)や書面(以下、「書面等」という)で依頼者の承諾を得ます。たとえ事前に承諾を得た場合であっても、依頼者から書面等で「電磁的方法で受け取らない」と申出があれば紙の書面を交付する必要があります。 出典)宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 不動産取引のデジタル化のメリット 不動産事業者にとって、不動産取引のデジタル化は以下のようなメリットがあります。 取引にかかる時間や手間が省ける 不動産取引のデジタル化は、取引にかかる時間や手間が省けるのがメリットです。依頼者と対面で会う必要がなく、オンライン上で契約手続きを完結できるようになります。また、書類の押印や郵送が不要になるため、事務手続きの効率化が期待できます。 印紙税の節税になる 不動産取引では、取引金額が大きくなるほど印紙税の負担が増える仕組みになっています。しかし、書類を電子化して紙の書面を発行しない場合は印紙税が発生しません。不動産取引のデジタル化を進めれば、印紙税の節税になります。 コスト削減が期待できる 不動産取引では、さまざまな書類のやり取りが発生します。関連書類を電子化すれば、書類の郵送料や保管スペース、ファイリング業務が不要となります。閲覧したい書類は検索ですぐに見つけられるため、業務の効率化や書類管理コストの削減につながります。 宅建業法改正が不動産取引に与える影響 今回の宅建業法改正により、不動産取引のデジタル化が加速する可能性があります。ITを活用した重要事項説明(IT重説)は、すでに2017年10月から不動産賃貸で運用が開始されています。2021年4月からは不動産売買においても認められました。 従来はIT重説でも契約は対面や郵送で行う必要がありましたが、今回の宅建業法改正で交付書面の電子化が可能となり、不動産事業者との契約がデジタルで完結できるようになりました。不動産取引のデジタル化は「契約手続きの簡素化」「コストの削減」など、不動産事業者にとって大きなメリットがあります。 一方で、デジタル化を進めるにはITシステムだけでなく、業務のオペレーションの整備が必要です。個人情報の流出を防ぐため、セキュリティ対策にも取り組まなくてはなりません。ITのノウハウを持たない中小不動産業者の場合、自社だけでデジタル化を進めるのが難しいケースがほとんどでしょう。 また、不動産業界は対面での説明や紙の書面交付が一般的であるため、長年の商慣行が変わるか不透明な部分もあります。制度開始直後は、トラブルが起こる可能性もあるため、今回の宅建業法改正が不動産取引に与える影響を注視することが大切です。 なお、ITを活用した重要事項説明や書面の電子化については、不動産事業者に向けて国土交通省がマニュアルを公表しています。不動産取引のデジタル化を進める際の参考にするといいでしょう。 出典)国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」 まとめ 2022年宅建業法改正によって宅建士の押印義務が廃止され、交付書面の電子化も可能となりました。今回の改正によって不動産取引のデジタル化が加速するかもしれません。不動産事業者は変化にすばやく対応できるように、不動産取引に与える影響を注視しておくと良いでしょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 物件の仕入れは資金確保とネットワークが重要?! ーー不動産事業者インタビューvol.1(1) ひとくちに不動産業といっても、さまざまな事業分野があります。その中でも、不動産の物件の仕入れというのは、もっとも基本的かつ重要な業務といえるでしょう。どうすれば優良な物件を入手することができ...記事を読む

  • シニアのYouTube利用率は約9割、動画は文字より2倍好まれる

    シニアのYouTube利用率は約9割、動画は文字より2倍好まれる

    娯楽としてだけでなく、学習の際にも利用できるYouTubeですが、シニア世代がどれくらい利用しているかイメージがない方も多いでしょう。また、情報収集の際、シニアといえばテレビや雑誌から情報収集を行っているイメージがあるかもしれません。 この記事では、持ち家がある60歳以上の男女257名を対象に、YouTube利用や情報収集に関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 YouTubeの利用率は約9割 Q.YouTubeを視聴したことがありますか? 「はい」が87%という結果になりました。若い世代が利用するイメージが強いYouTubeですが、シニア層にも大いに浸透していることがわかります。 Q.YouTubeを視聴する際に最も使用する端末を教えて下さい。 「パソコン」が62%という圧倒的な結果となりました。続いて、「スマホ」が25%と続きます。テレビを好むとされるシニア世代ですが、テレビでYouTubeを視聴する割合は、現在のところ少ないようです。 シニア世代も情報収集はWEBメディアで行う Q.住み替えやリフォームなどの住まいに関する情報は、どこで収集しますか? 「WEBサイト」が38%となり、オールドメディアと呼ばれる「新聞・雑誌」(23%)、「テレビ・ラジオ」(13%)を大きく上回りました。シニア世代においても情報収集の手段としてすでにデジタルへ移行している結果となりました。 文字よりも動画のほうが約2倍わかりやすいという結果に Q.住み替えの情報に関する動画と記事があります。どちらがわかりやすかったですか? ※下記の動画と記事をそれぞれ閲覧いただき、ご回答いただいています。 【動画】 https://www.youtube.com/watch?v=iha5sJWK5oM 【記事】 関連記事はこちら仮住まいなしで住み替えをする5つの方法 「動画」(20%)、「どちらかといえば動画」(33%)の合計が全体の53%となり、記事を上回る結果となりました。次に動画のほうがわかりやすいと感じた理由を確認しましょう。 「情報が目で見て分かりやすく、必要な情報がコンパクトにまとめられていると感じたため」(62歳・男性) 「自然と内容が頭に入ってくるから」(77歳・女性) 「映像(動画)説明の方が、視覚による変化などを適格に捉えやすい」(69歳・男性) 一方で、記事のほうがわかりやすいと感じた理由は下記のとおりです。 「理解できるまで何度も繰り返し読むことができる」(70歳・男性) 「動画は早すぎるので、活字で自分のペースで理解していくほうが自身には合っていると思ったから」(64歳・女性) 【考察】 動画のほうが分かりやすいと感じた理由としては、情報を視覚と聴覚から得られること、コンパクトにまとまっている点が挙げられています。これらのことから、動画が必ずしも万人にとって良い手段であるとはいえないものの、動画は情報収集において有用なツールであると言えそうです。一方で、理解できるまで繰り返し確認できる点など、自分のペースで学べる点については記事の長所であるといえるでしょう。 YouTubeで情報収集したいと思った人は約半数 Q.今後、YouTubeで情報収集したいと思いますか? 「そう思う」(25%)、「どちらかといえばそう思う」(23%)が全体の48%と関心の高さが伺える結果となりました。今後、情報収集という場においてもシニア世代にYouTubeが浸透していくことは間違いなさそうです。 その理由としては下記のような回答が得られました。 「手軽に情報取集できる」(74歳・男性) 「視覚でわかるので、とってもわかりやすい」(60歳・女性) 「いいコンテンツが見つかれば楽に情報収集ができる」(63歳・男性) 「楽しい情報が得られそう」(74歳・女性) まとめ シニア世代のYouTube利用率は約9割となりました。視聴する端末はパソコンが多数を占め、スマホよりパソコンを好むというシニア世代の特徴が見受けられます。一方、テレビで視聴する方はまだまだ少数です。テレビを好むとされるシニア世代ですので、今後ネット動画対応のテレビが増えるにつれて、テレビでのYouTube視聴が増えていくのではないでしょうか。 また、住まいやお金に関する情報コンテンツを動画と記事でそれぞれ情報を取得してもらったところ、動画の方がわかりやすいという回答が2倍程度となりました。シニア世代の情報収集のツールとして、YouTubeがさらに拡大しそうです。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終活の認知は高いが、実際に行っている人は約1割 近年、「終活」という言葉は様々なメディアなどで取り上げられています。一方で、終活に実際に取り組んでいる人がどれくらいいるのか、わからない人も多いでしょう。 そこでこの記事では、現在持ち家所有...記事を読む

    2022.08.03レポート
  • 相続土地国庫帰属法とは?制度の概要や相続放棄との違いなどを解説

    相続土地国庫帰属法とは?制度の概要や相続放棄との違いなどを解説

    「維持管理の費用がかかる相続した土地を手放したい」と悩んでいませんか。相続土地国庫帰属法の成立により、今後は相続した不要な土地を国に引き取ってもらえるようになります。ただし、対象となる土地には要件があるため、制度の内容を理解しておくことが大切です。 この記事では、相続土地国庫帰属法の概要やその制度を利用する際の条件、相続放棄との違いなどを解説します。 相続土地国庫帰属法とは 相続土地国庫帰属法とは、2022年4月28日に交付された「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」のことです。相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。2023年(令和5年)4月27日に施行されます。 相続土地国庫帰属法が成立した背景 相続土地国庫帰属法が成立した背景には、「相続した不要な土地を手放したい」というニーズの増加があります。 都市部への人口移動や人口の減少・高齢化の進展などを背景に、相続によって望まない土地を取得したことで所有者の負担感が増し、管理不全を招くケースが増加しています。増加傾向にある所有者不明土地の発生を抑制するため、相続土地の所有権を国庫に帰属させることが可能となりました。 関連記事はこちら所有者不明土地の解消に向けた法改正とは?2つのポイントを解説 相続放棄との違い 不動産を相続したくない場合は、相続放棄をするのも選択肢のひとつです。しかし、相続放棄ははじめから相続人ではなかったとみなされるため、相続財産(資産および負債)のすべてを放棄する必要があります。そのため、不要な土地・建物だけを放棄することはできません。 また、相続放棄をすれば土地の管理義務がなくなるというわけではありません。他の相続人が管理を始められるようになるまでは管理義務を負うことになります。 一方、相続土地国庫帰属制度は相続放棄と異なり、「相続開始を知ったときから3ヵ月以内」といった制限はありません。制度を利用するために負担金を払う必要はありますが、相続土地を国庫に帰属させれば管理義務はなくなります。 相続土地国庫帰属制度の概要 相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈により土地の所有権を取得した相続人が土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度です。土地の管理コストの国への不当な転嫁やモラルハザードを防止するため、一定の要件を設定し、法務大臣が要件審査をすることとなっています。 承認申請できる人 単独所有の土地は、相続等により土地の全部または一部を取得した人が申請権者です。 複数人で共有している土地は、共有者全員で共同して承認申請を行います。共有者のうち、1人が相続等により持分を取得していれば、共同して承認申請が可能です。 対象となる土地の要件 相続土地国庫帰属制度を利用し、土地を手放すためには、「通常の管理・処分をするにあたり、過分の費用や労力を要する土地」に該当しないことが必要です。 具体的には、以下5つに該当する土地は承認申請が却下されます。 建物のある土地 担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地 通路など他人による使用が予定される土地 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地 境界が明らかでない土地、その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地 たとえば、建物が残っている場合は取り壊して更地にしなくてはなりません。抵当権が残っていると申請できない点にも注意が必要です。 関連記事はこちら抵当権とは?根抵当権との違いや設定・抹消登記について解説 また、以下5つに該当する土地は不承認処分とされます。 崖がある土地で、通常の管理に過分の費用または労力を要するもの 土地の通常の管理・処分を阻害する工作物、車両または樹木などが地上にある土地 除去しなければ土地の通常の管理・処分ができない有体物が地下にある土地 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができない土地 上記のほか、通常の管理・処分に過分の費用または労力を要する土地 このように、相続した土地を国庫に帰属させるには一定の要件を満たす必要があります。却下・不承認処分のいずれも、行政不服審査・行政事件訴訟により不服申立てが可能です。 相続土地国庫帰属制度のメリット・デメリット 相続土地国庫帰属制度は、相続で取得して管理や処分に困っている土地を国に引き取ってもらえることがメリットです。土地の所有権が国庫に帰属されれば、相続した土地の管理から解放され、固定資産税の負担もなくなります。維持費のみがかかり、処分がしづらい山林なども制度対象です。 一方で、相続した不要な土地を引き取ってもらうには、10年分の土地管理費相当額の負担金が発生します。粗放的な管理で足りる原野で約20万円、市街地の宅地(200㎡)で約80万円が目安です。 また、制度対象となる土地が限定されるのもデメリットです。建物がある状態では引き取ってもらえないため、更地にしなくてはなりません。建物の構造や広さ、土地の状況によってはまとまった費用負担が生じる可能性があります。 相続土地国庫帰属制度の利用手続き 相続土地国庫帰属制度の利用手続きの流れは以下のとおりです。 承認申請 法務大臣(法務局)の要件審査・承認 負担金の納付 国庫帰属 まずは承認申請書と政令で定める額の手数料を納めましょう。法務大臣には調査権限があり、必要に応じて実地調査が行われます。申請が承認されたら、承認通知を受けた日から30日以内に負担金を納付します。期限までに納付しないと承認が取り消されるので要注意です。 まとめ 相続土地国庫帰属法の成立により、相続後に処分に困っていた土地を国に帰属させることができます。相続放棄とは異なり、土地だけに限定して処分ができることから、要件を満たせば維持管理に負担がかかる不要な土地を手放すことができるかもしれません。 相続した土地を手放したい場合は、相続土地国庫帰属制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 出典)法務省「相続土地国庫帰属制度について」 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 不動産相続について徹底解説!知っておきたい手続きや費用 不動産を相続することになった場合、さまざまな手続きが必要になります。不動産相続では、相続税や遺産分割で、トラブルが発生することもあります。不動産相続をスムーズに進めるには、手続きの流れを理解...記事を読む

    2022.07.27制度
  • 外国人でも住宅ローンを借りることはできる?

    外国人でも住宅ローンを借りることはできる?

    「外国人でも住宅ローンを借りられる?」「外国人が住宅ローンを借りる条件は?」など、日本で家を買いたい外国人の方は、これらの疑問を持つかもしれません。 この記事では、外国人でも住宅ローンを借りることができるのかを、外国人男性の悩みを基に解説していきます。 [ご相談者Gさん] 35歳アメリカ人男性。世界展開する外資系企業に勤務。 日本支社への転勤で、5年前から日本に住んでいる。 妻は日本人で、2歳の子どもが1人。日本国内の家を買い、永住したいと考えている。 外国人が住宅ローンを組む条件とは? Gさん:気づけば日本に来て5年になりました。日本人の妻と出会い、子供にも恵まれたこの日本に永住したいと考えています。自宅を買うために住宅ローンの検討を始めたばかりです。調べていく中で、外国人が住宅ローンを組むにはハードルがあるとわかってきました。他にも調べれば調べるほど、不安要素ばかり出てきます。外国人は住宅ローンを借りることができないのでしょうか? FP加藤: いえ、そんなことはありません。外国人の方でも住宅ローンを借りることはできますよ。一方で、気をつけるポイントや、住宅ローンを組むための必須条件はありますね。 Gさん:外国人が住宅ローンを組むための条件があるのですか?どのような条件か、ぜひ教えてください。 FP加藤:はい、わかりました。外国人の方が住宅ローンを組むのも、最近では珍しいことではなくなっています。とはいえ、日本人が住宅ローンを組むケースに比べると、下記のような条件をクリアする必要があります。 <外国人が住宅ローンを組む条件例> 永住権※を取得する 日本人の配偶者が連帯保証人になる ※永住権とは、外国人が期間の制限なく永住できる権利のことです。また「永住許可」と呼ばれ永住者への在留資格変更を法務大臣から許可された場合も含みます。加えて、永住権を持つ、または永住許可を受けた外国人のことを一般に「永住者」と呼びます。 永住権を取得する FP加藤:住宅ローンは何十年という長い期間で返していくローンです。また、自宅購入のためのローンですから、そこから居なくなることは原則として想定されていません。そこで外国人がローンを借りる場合、永住権を持つことが一つの条件になっている銀行が多いようです。 Gさん:なるほど、だから永住権が必要になるのですね。 日本人の配偶者が連帯保証人になる FP加藤:日本に住み続けたい外国人の方でも永住権を取得できていない人はいますよね。実は、永住権がなくても住宅ローンを借りることができる場合があるのですよ。 Gさん:永住権が必ずしも必要なわけではないんですね!ぜひ詳しく教えてください。 FP加藤:それは「日本人の配偶者が連帯保証人になる」ことです。はっきりとした根拠を明かしている金融機関はないですが、融資の連帯保証人になるにはかなりの覚悟が必要ですし、ローンを借りた人と同等の責任や義務が生まれ、リスクが回避できると考えられるからでしょう。 Gさん:なるほど。もし永住権が取得できなくても、住宅ローンが組めるのはありがたい話ですね。 FP加藤:ここまで外国人が住宅ローンを借りる条件として「永住権を取得する」「日本人の配偶者が連帯保証人になる」の2つを説明してきました。どちらにも共通しているのは、住宅ローンを組んだ人が「これからも日本に住み続けられるのか?」「住み続ける意思はあるのか?」という点であることは、ぜひ覚えておいてください。 外国人の住宅ローン審査でチェックされるポイントは? Gさん:外国人が住宅ローンを組むための条件があることはわかりました。住宅ローンの審査でも、外国人だから特にチェックされることもあるのでしょうか? FP加藤: そうですね。確かに外国人の方が申し込んだ場合に、特にチェックされるポイントはいくつかあります。中でも特に重要な項目は、先ほど話した「今後も日本に住み続けるのか?」という点に加え、「日本語での意思疎通は可能か?」ということです。 今後も日本に住み続けるのか? FP加藤:ここまでの説明に重なるのですが、外国人でも住宅ローンを組めるのは、日本に長く住むという前提があるからです。そこがクリアされれば、外国人だからといって、年収や勤続年数などが特別に厳しく審査されるとは限りません。この点は、日本人、外国人問わず同じ審査で、一様にハードルが高くはならないのが原則です。 Gさん:そうなのですか?外国人にはいろいろクリアする条件があるので、やはり厳しく審査されるのかと思っていました。 FP加藤:そもそも返済が遅れるリスクは日本人も同じですので、外国人だけ厳しい目で見ることはありません。一方で、たとえば母国の政情が不安定になるなど、想定外の理由で帰国する人もいますので、「日本に住み続けるか?住み続ける意思はあるのか?」が大きなポイントになります。永住権や日本人の配偶者が連帯保証人になることを条件にしている金融機関が多いのにはこういった理由が影響しています。 日本語での意思疎通は可能か? FP加藤:住宅ローンを申し込んでから契約するには、さまざまな注意事項や契約条件などの説明を聞き、理解する必要があります。ここで日本語での意思疎通ができないと、住宅ローンの申し込みは難しくなります。 Gさん:それはなぜですか? FP加藤:たとえば日本人の配偶者が隣にいて通訳することも可能ですが、融資の申し込みや契約は「本人の意思確認」ができることが大前提なので、人を介してやり取りすることはできないのが原則だからです。ちなみに金融機関の中には、外国語での受付や英文での書類作成を認めているところもあるようです。 永住権がない場合にはどうする? Gさん:外国人を比較的受け入れている金融機関でも、永住権が必要なところは多いですね。でも、私は日本に来てまだ5年ですし、永住権を取得できるかわからないので不安になります。永住権が取得できなくても、住宅ローンを組めるでしょうか? FP加藤:そうですね、 Gさんが不安になる気持ちはよくわかります。ではここで一度、Gさんが「永住権を取得するにはどうすればいいか」をおさらいしてみましょう。そ 永住権の取得方法 FP加藤:永住許可を取得するには、以下のような基準をクリアする必要があります。 <永住権の取得方法> 原則として日本に10年以上在留している 公的な支援や扶助を受けなくても、資産や技能で安定した生活ができる 罰金や懲役刑などを受けていない 納税や年金、健康保険料などを納めている 出入国管理などの法律で定められた届出をしている なお在留期間や他の基準も、日本人の配偶者がいるなどの場合には特例で免除されるケースもあるようです。 出典)出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和5年4月21日改定)」 永住権なしで住宅ローンを組むには? Gさん:永住権を取得するために必要なポイントをわかりやすく説明していただき、ありがとうございます。では、永住権がなくても住宅ローンを組むにはどうすればいいんですか? FP加藤:一定の自己資金を用意できたり、購入物件が主要都市圏であったりすれば、利用可能な金融機関もいくつかあります。たとえば、2023年12月現在、東京スター銀行では、「(永住権未取得者向け)住宅ローン」、スルガ銀行には「外国人のお客さま向け住宅ローン」があり、どちらも永住許可を受けてなくても相談が可能と記載されています。 まとめ 外国人でも住宅ローンを借りることができます。条件はいくつかありますが、特別に厳しいものとは言えません。条件はいくつかありますが、日本に長く住み、これからもずっと住み続けたい意思があることが大前提です。この記事が、住宅ローンを検討している外国人の方の参考になれば幸いです。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 加藤 隆二(Ryuji Kato) 勤続30年の銀行員でマネーライター、 ファイナンシャルプランニング技能士2級。銀行員として事業資金調達から、住宅ローン、カードローンなど借入全般に従事。 住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介 マイホームを購入するときは、住宅ローンを利用するのが一般的です。しかし、住宅ローンには審査があるので、必ず利用できるとは限りません。金融機関は、どのような基準で住宅ローンの審査を行うのでしょ...記事を読む

  • リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    リフォーム予定のシニアは約4割、一方で2割が資金に悩む

    60歳を越えると、定年退職や子供の自立など、ライフスタイルが大きく変わる人も少なくないでしょう。自身が所有する住まいについても同様に、設備の故障や経年劣化によって、リフォームを検討する人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、持ち家がある60歳以上の男女500名を対象に、リフォームに関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 詳細はこちら シニアのリフォーム予定は約4割、その半数が費用を200万円未満と想定、資金不足に悩むシニアは約2割!~SBIエステートファイナンスが「シニアのリフォーム」に関するアンケート調査を実施~ 約4割がリフォームを予定している Q. 今、住んでいる物件のリフォームを検討していますか? 「リフォームを予定している」と回答した方は約4割でした。この回答から、60代にもなるとリフォームの必要性を感じる方が多いことがわかります。 Q. 何年後にリフォームを予定していますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの予定時期は「半年以内」が10%、「1年以内」が11%と、1年以内にリフォームを計画している人が約2割いることがわかりました。また、未定が4割であることから、いずれリフォームが必要と考えているが、それほど緊急度の高いリフォームではないことも推察されます。 リフォーム費用は約5割が200万円以下という結果に Q. リフォーム費用はどの程度で考えていますか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォームの費用は、最も多い回答が「100万円以上200万円未満」で30%、「100万円未満」が17%となり、200万円以下のリフォームに留める方が約半数であることがわかりました。このことから、大規模な修繕工事ではなく、最低限の修繕にとどめたリフォームを検討していることが多いことがわかります。 Q. リフォーム費用はどのように準備する予定ですか?(リフォームを予定していると回答した方) リフォーム費用は、約8割の人が貯金から準備する予定であり、「資産(株、投資信託等)の売却」を足すと9割以上となります。このことから大半の人が保有する資産の中からリフォーム費用を準備することがわかりました。 一方で、リフォームを予定しているが、「ローン」を利用するという人が4%、「当てがない」という人も4%おり、リフォームは必要になると考えているものの、どのようにリフォーム資金を準備するか悩んでいる人も一定数いるようです。 全体の2割近くが資金面を理由にリフォームを予定していない Q. リフォームを予定していない理由はなぜですか?(リフォームを予定していないと回答した方) リフォームを予定していない理由は、「現在の住宅に全く不満がない」という理由が34%でした。また、既にリフォームを実施済の人も25%いることから、リフォームを予定していないシニアの方の約6割はライフスタイルに合った自宅に住んでいることが推察されます。 一方で、リフォームを予定していない理由の中には、「費用がかかりそう」が15%、「費用が用意できない」が15%といったように、資金面で悩みがあることもわかりました。この結果とリフォームを予定しているが資金面で悩んでいる人を足し合わせると、資金面でリフォームに悩んでいる人は回答者全体の約2割となることがわかりました。 まとめ 今回の調査によると、シニア世代のほとんどが貯金などからリフォーム費用を準備する一方で、資金面で悩んでいる人が全体の2割を占めることがわかりました。また、リフォーム費用を低く見積もる方も多く、どれくらいの費用をかければどの程度のリフォームができるかを正しく把握できていない可能性もありそうです。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...記事を読む

  • 長期優良住宅とは?認定制度の概要やメリット・デメリット、申請手続きの流れを解説

    長期優良住宅とは?認定制度の概要やメリット・デメリットを解説

    住宅を購入しようとするときに、「長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。長期優良住宅であることで、税制優遇措置や住宅ローンの金利引き下げなどのメリットがあるため、これから住宅を購入するなら選択肢の1つとなります。 この記事では、長期優良住宅の概要やメリット・デメリット、申請手続きの流れについて解説します。 長期優良住宅とは 長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅です。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて、2009年6月から「長期優良住宅認定制度」が開始されました。 背景には「ストック重視の住宅政策への転換」があります。環境負荷の低減や建て替え費用の負担軽減のため、従来の「作っては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして、長く大切に使う」社会への移行を目指しています。 長期優良住宅の認定を受けるには、必要な措置を講じたうえで所管行政庁に申請する必要があります。一度認定を受けたら終わりではなく、工事完了後も維持保全計画に基づく点検などが求められます。 出典)国土交通省「長期優良住宅のページ」 長期優良住宅の認定状況 長期優良住宅の認定戸数の累計は、令和2年度末で120万戸以上(新築と増改築の合計)です。全体の約98%は戸建て住宅が占めています。認定戸数は年間10万戸程度で推移しており、新築戸建ての約4戸に1戸は長期優良住宅の認定を取得しています。 出典)住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」 長期優良住宅の認定基準 長期優良住宅として認定されるためには、定められている認定基準を満たす必要があります。新築戸建ての主な認定基準をまとめました。 項目認定基準の内容 劣化対策数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できる 耐震性耐震性能が高く、地震の振動に耐えられる 維持管理構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理を容易に行うことができる 省エネルギー性断熱性を高めることで冷暖房負荷を軽減できる 居住環境良好な景観の形成、地域における居住環境の維持・向上に配慮している 住戸面積良好な居住水準の確保に必要な規模を有する 保持保全計画将来を見据えて定期的な点検・補修等に関する計画が策定されている 災害配慮自然災害による被害の発生・防止・軽減に配慮されている 「耐震性は耐震等級2以上」「住戸面積は75㎡以上」など、それぞれの項目について一定の基準が設けられています。 共同住宅(マンションなど)については、上記に加えて以下の基準もあります。 項目認定基準の内容 可変性居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能 バリアフリー性共用部分について将来のバリアフリー改修に対応できる 長期優良住宅のメリット 長期優良住宅のメリットは以下のとおりです。 補助金を受けられる 長期優良住宅を取得する際は、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金を受け取られます。本事業の採択を受けた中小工務店などが整備する木造住宅を建築することが要件です。 令和4年度の場合、長寿命型の住宅は最大140万円、ゼロ・エネルギー住宅型は最大150万円が補助されます。 出典)地域型住宅グリーン化事業「令和3年度事業からの変更点」 税制優遇措置が設けられている 長期優良住宅の認定を受けた新築住宅には、以下の税制優遇措置が設けられています。 税目優遇措置の内容 所得税控除対象限度額を5,000万円に引き上げ(一般住宅は3,000万円)※ 登録免許税所有権保存登記の税率を0.1%に引き下げ(一般住宅は0.15%) 固定資産税減税措置(1/2に減額)の適用期間を戸建て5年間、マンション7年間に延長(一般住宅は戸建て3年間、マンション5年間) 不動産取得税課税標準からの控除額を1,300万円に増額(一般住宅は1,200万円) 住宅ローン減税は2023年12月31日までの入居、その他は2024年3月31日までの入居が要件です。 出典)住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」 フラット35の金利が下がる 住宅金融支援機構のフラット35Sが適用されると、フラット35の借入金利から年0.25%引き下げられます。金利引き下げ期間は住宅の技術基準レベルによって異なり、Aプランが当初10年間、Bプランが当初5年間です。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」 地震保険料の割引がある 長期優良住宅は、住宅の耐震性に応じて地震保険料の割引を受けられます。耐震等級を有している建物の場合、割引率は耐震等級2が30%、耐震等級3が50%です。免震建築物の割引率は50%となっています。 出典)住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について」 長期優良住宅のデメリット 一方で、長期優良住宅には以下のようなデメリットもあります。 認定を受けるために費用がかかる 長期優良住宅は、認定を受けるための費用がかかります。具体的には、図面・計算書の書類作成費用や認定申請手数料、申請代行費用などです。所管行政庁や建築会社によって費用は異なるため、いくらかかるかを事前に確認しておきましょう。 一般住宅より建築コスト高い 長期優良住宅は、耐震性や省エネルギー性などの認定基準を満たなくてはなりません。品質の高い材料を使ったり、基準を満たす設計を行ったりする必要があるため、一般住宅よりも建築コストは高い傾向にあります。 住宅の維持保全に手間がかかる 長期優良住宅は、工事完了後に計画的な点検の実施、適切な補修・改良、記録の保存などが必要です。10年に一度の定期点検などを怠った場合、認定を取り消される場合もあります。 長期優良住宅の認定手続きの流れ 長期優良住宅の認定手続きの流れは以下のとおりです。 認定基準を満たすように設計を行う 登録住宅性能評価機関に審査を依頼する 必要書類を準備して所管行政庁に認定申請をする 認定通知書が届く(着工開始) 認定申請は着工前までに行う必要があります。申請手続きは施行事業者が代理で行うことも可能です。工事完了後は維持保全計画書に基づいて定期的に点検を実施し、必要に応じて調査・修繕・改良を行います。 まとめ 長期優良住宅は長期にわたって快適に住み続けることができ、取得する際は補助金や税制優遇制度、住宅ローンの金利引き下げなどを受けられます。一方で、建築コストが比較的高く、維持保全に手間がかかるというデメリットもあります。メリット・デメリットを比較したうえで、長期優良住宅の取得を検討しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 低炭素住宅とは?認定基準、メリット・デメリットを解説 環境問題への意識の高まりから、マイホームの建築・購入の際に「低炭素住宅」を選ぶ人が増えています。環境にやさしい住宅であり、税制優遇を受けることもできますが、認定を受ける際の注意点もあります。...記事を読む

    2022.07.06制度
  • マンション管理適正評価制度とは?仕組みや評価項目、メリット・デメリットを解説

    マンション管理適正評価制度とは?メリット・デメリットを解説

    2022年4月から「マンション管理適正評価制度」が開始されました。本制度は適切に維持管理されているマンションが、市場で評価されるための新たな仕組みです。同じ時期に国の「マンション管理計画認定制度」も開始されましたが、どのような違いがあるのでしょうか。 この記事では、マンション管理適正評価制度の仕組みやメリット・デメリット、マンション管理計画認定制度との違いについて解説します。 マンション管理適正評価制度とは マンション管理適正評価制度とは、2022年4月に開始された、マンションの管理状態や管理組合運営の状態を評価する仕組みです。 日本国内で築年数の古いマンションが増加傾向にあり、維持管理に課題を抱えています。このようなマンションの老朽化抑制や、維持管理の適正化を図るため、一般社団法人マンション管理業協会が不動産関連団体と協力して、全国共通の評価基準を創設しました。マンション管理適正評価制度ではマンションの状態が6段階で評価され、評価結果は毎年更新されます。 なお、国土交通省の資料によると、令和2年末で築40年超のマンションは103.3万戸です。10年後には約2.2倍の231.9万戸、20年後には約3.9倍の404.6万戸に増加すると見込まれています。 出典) ・国土交通省「築後30、40、50年超の分譲マンション戸数」 ・一般社団法人マンション管理業協会 マンション管理適正評価制度の評価項目 マンション管理適正評価制度では、マンションの管理状態を5つのカテゴリーに分類し、30項目について評価します。カテゴリーと各評価項目は下表のとおりです。 カテゴリー評価項目 管理体制(20ポイント)管理者の設置総会の開催、議事録の作成

    2022.06.29制度
  • 都市計画法とは?概要や定められている内容を解説

    都市計画法とは?概要や定められている内容を解説

    都市計画法は、街づくりのルールを定めた法律です。都市の開発や利用に関するルールを設けることで、快適な都市生活を送れることは理解できるかもしれません。しかし、法律でどのような事項が定められているかはよくわからないのではないでしょうか。 そこでこの記事では、都市計画法の概要や定められている内容についてわかりやすく解説します。 都市計画法とは 都市計画法とは、都市計画に必要な事項について定めている法律です。都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、土地利用や都市施設の整備、市街地の開発などに関するルールが設けられています。 都市計画法第一条では、本法律の目的を以下のように定めています。 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。 出典)都市計画法 第一条(e-Gov法令検索) 都市計画法の構成と概要 都市計画法の構成は以下のとおりです。併せて概要も紹介します。 総則(第一章) 都市計画法の目的、基本理念、国・地方公共団体や住民の責務、用語の定義が主な内容です。都市機能を確保するために、適正な制限のもとに合理的な土地利用を進めることを基本理念としています。 国・地方公共団体には都市計画の適切な遂行に努めること、住民には目的達成に協力することを求めています。 都市計画(第二章) 都市計画の内容や決定・変更に関する内容です。都市計画に定められる区域区分の詳細や都市施設などが説明されています。都市計画は都道府県や市町村が定めるとしており、計画の決定や変更に必要な手続きについても決められています。 都市計画制限等(第三章) 開発行為や特定地域内における建築などの規制に関する内容です。無秩序に開発や建築が行われることがないように、土地利用の制限について詳細に定められています。また、開発行為や建築の許可を受けなくてはならない基準なども説明されています。 都市計画事業(第四章) 都市計画事業の認可や施行に関する内容です。誰が事業の認可を行うのか、認可や施行に必要な手続きなどについて定められています。 その他(第五章~第九章) 都道府県や市町村が施設設備予定者と締結する都市施設等設備協定、市町村長が指定できる都市計画団体の内容について定められています。また、都市計画に関する審議会や立入検査、罰則に関する説明もあります。 都市計画法で定められている主な内容 都市計画法で定められている主な内容を、大きく2つに分けて解説します。 ①土地利用に関する内容 都市計画法では、日本の国土を「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分類しています。 都市計画区域は、都市として総合的に整備・開発が行われる地域のことです。原則として、都道府県が都市計画法に基づいて指定します。都道府県や市町村が策定した都市計画に基づき、都市施設の整備などが進められます。なお、2022年3月31日時点では、国土の約27%が都市計画区域に指定されており、全人口の約95%は都市計画区域内に居住しています。 さらに都市計画法では、無秩序な開発を防止し、計画的な市街化を図るため、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分しています。どちらにも区分されていない地域を「非線引き区域」といいます。 市街化区域では、優先的かつ計画的に市街化が行われます。一方で、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域と位置付けられており、原則として開発行為は禁止されています。 図:都市計画法による土地区分 ※編集者作成 地域地区(用途地域) 都市計画区域内の土地を利用目的によって区分し、建築物などのルールを決めて地域地区を指定しています。地域地区にはさまざまな種類がありますが、代表的なものが「用途地域」です。 市街化区域では、必ず用途地域を定めることになっています。大きく「住居地」「商業地」「工業地」の3つに区分したうえで、13種類の用途地域を定めています。各用途地域では建築物の用途や容積率、建ぺい率、高さなどが規制されており、これに反する建物は建築できません。 関連記事はこちら「用途」からみた土地の種類 ②都市施設・市街地開発事業に関する内容 都市施設とは、都市生活者の利便性向上や良好な都市環境の確保のために必要な施設です。具体的には、「道路」「公園」「ごみ焼却場」「下水道」などが該当します。都市計画で都市施設の整備が決定され、その区域内に建築規制が及びます。 市街地開発事業とは、市街地を面的・計画的に開発する事業のことです。土地収用や換地といった手法により、宅地や公共施設の整備などが行われます。代表的な事業の種類に「土地区画整理事業」「市街地再開発事業」などがあります。 都市施設の整備や市街地開発事業は都市計画によって決定され、その区域内に建築規制が及ぶことになります。 都市計画とマスタープラン マスタープランとは、「長期的視点にたった都市の将来像を明確にし、その実現にむけての大きな道筋を明らかにするもの」とされています。都市計画法に基づき、都道府県が都市計画区域マスタープランを策定します。主な記載事項は以下のとおりです。 都市計画の目標 区域区分の決定の有無(区分を定めるときはその方針) 主要な都市計画の決定方針 なお、都市計画区域内の都市計画は、マスタープランに即したものである必要があります。 上記のほかに、市町村が策定するマスタープランもあります。市町村マスタープランは、市町村が属する都市計画区域マスタープランと市町村議会の議決を経た基本構想に即したものとなっています。 出典)国土交通省「都市計画制度の概要(都市計画法制P6)」 地区計画とは 地区計画とは、それぞれの地区の特性に応じて、良好な都市環境を形成するために定められる地区レベルの都市計画です。住民の意見を反映し、その地区独自の街づくりのルールを細かく定めます。地区計画で定められるルールは以下のとおりです。 地区施設の配置(生活道路、公園など) 建築物の規制(用途、容積率、建ぺい率など) 緑地の保全 地区計画は市町村が条例に基づき、土地所有者などに意見を求めて作成します。 まとめ 都市計画法のおかげで無秩序な開発行為が行われることなく、都市の計画的な整備を進めることができます。不動産に関する基礎知識として、都市計画法の概要を理解しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説 住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限がありま...記事を読む

    2022.06.22制度
  • 土地区画整理事業とは?概要や仕組み、事業の流れをわかりやすく解説

    土地区画整理事業とは?仕組みや事業の流れをわかりやすく解説

    土地区画整理事業は、住みやすい街づくりのために宅地や公共施設を整備する手法の一つです。言葉は聞いたことがあっても、実際にどんなことが行われるかはよくわからないのではないでしょうか。 この記事では、土地区画整理事業の概要や仕組み、事業の流れについて解説します。 土地区画整理事業とは? 土地区画整理事業とは、都市計画区域内で行われる市街地整備の代表的な手法の一つです。道路や公園などの公共施設と宅地の総合的な整備が可能となります。土地区画整理法では、土地区画整理事業を以下のように定義しています。 「土地区画整理事業」とは、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、この法律で定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう。 出典)土地区画整理法 第二条(e-Gov法令検索) 古い市街地は道路が狭く、複雑に入り組んで、境界線が曖昧になっているところがあります。下図のように、土地区画整理事業によって整備することで、快適で住みやすい街に生まれ変わります。 出典)小樽市「土地区画整理事業」 なお、土地区画整理事業はさまざまな場面で活用されており、施行面積は2020年3月末現在で約37万haとなっています。これは、東京23区面積の約6倍にもわたる面積です。 出典)公益社団法人 街づくり区画整理協会「土地区画整理事業とは」 土地区画整理事業の仕組み 土地区画整理事業では、道路や公園などが整備されていない区域の地権者から少しずつ土地を提供してもらい、公共用地に充てます。提供してもらった土地を売却し、移転や整備といった事業資金の一部に充当します。 地権者の宅地は、新たな区画に合わせて再配置されます。減歩で面積は減少しますが、地形や形状の改善によって従前の土地に見合う評価を得られます。なお、不均衡が生じる場合は金銭(清算金)で調整されます。 出典)成田市「区画整理のしくみ」 主な区画整理の用語 区画整理の仕組みを理解するために、主な用語の意味を確認しておきましょう。 保留地(ほりゅうち) 土地区画整理事業で整備された宅地のうち、施行者が換地と定めない宅地のことです。施行者は保留地を売却して事業資金の一部に充当します。 減歩(げんぶ) 土地区画整理事業のために地権者が土地の一部を提供することです。減歩には「公共減歩」と「保留地減歩」の2つがあります。公共減歩は公共施設の整備、保留地減歩は事業資金に充てるための減歩です。 換地(かんち) 土地区画整理事業で公共施設などが整備された後に、従前の土地に対して新しく置き換えられた土地のことです。 仮換地(かりかんち) 仮換地指定によって、区画整理前の土地から使用収益権が移行した土地のことです。建物の建築が可能で、通常はそのまま換地となります。 事業の施行者 土地区画整理事業では、以下6者が施行者になれます。 施行者定めるもの同意認可 個人施行規約全員同意知事の認可 組合施行定款2/3以上の同意知事の認可 会社施行基準議決権の過半数2/3以上の同意知事の認可 地方公共団体施行施工規程土地区画整理審議評議会評価員知事または国土交通大臣の認可 国土交通大臣施行 都市再生機構等施行 出典)公益社団法人 街づくり区画整理協会「土地区画整理事業とは」 国や地方公共団体だけでなく、宅地所有者または借地権者である個人、その個人が共同で設立した組合が施行者となることも可能です。ただし、規約や定款を定めたうえで、施行地区内の土地所有者の同意や知事の認可を得る必要があります。 事業の費用負担 土地区画整理事業に必要な費用は、保留地の売却によって賄われます。また、国からの補助金や地方公共団体の助成金、公共施設管理者負担金も活用されます。 公共施設管理者負担金とは、公共減歩された土地の用地費相当額について地方公共団体などの施設管理者に負担を求めるものです。 土地区画整理事業で期待できる効果 土地区画整理事業では以下のような効果が期待できます。 地域のコミュニティがそのまま生かされる 安全で快適な道路に生まれ変わる 公園が確保される(子どもの遊び場、憩いの場) 宅地が利用しやすくなる(形が整う、境界が明確になる) 上下水道、ガスなどのインフラ施設を一体的に整備できる 整備前の権利を保全しながら事業を行うので、地域のコミュニティを維持しながら、宅地や道路をより使いやすい形に整備できます。公園などの公共施設が確保され、インフラ施設も一体的に整備されるため、治安の向上や災害の防止・被害軽減などにつながります。 土地区画整理事業の流れ 土地区画整理事業の流れは以下のとおりです。 企画・調査 都市計画決定 事業計画 換地設計 仮換地指定 移転補償・工事 換地処分・登記 清算 施行者は住民参加の機会なども作りながら企画・調査を進め、土地区画整理事業を都市計画として定めます。設計内容や施行期間、資金計画などをまとめて、都道府県知事などに事業認可を申請します。 認可を得たら換地設計を行い、工程にあわせて仮換地の指定をして地権者に通知します。地権者と補償契約を締結し、地権者は期日までに建物の移転を行います。 換地処分によって従前地の権利が換地へ移行し、清算金の額などが確定すると、施行者が一括して全宅地の登記を行います。換地について不均衡が生じる場合は、清算金の徴収・交付によって調整します。 関連記事はこちら都市計画法とは?概要や定められている内容を解説 まとめ 土地区画整理事業で道路や公共施設、宅地が整備されることで、より快適で安全な街に生まれ変わります。お住まいの地域で土地区画整理事業の実績や実施状況、予定を知りたい場合は地方公共団体のホームページなどで確認してみましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説 住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。 どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限がありま...記事を読む

    2022.06.15制度
  • シニアが住み替える際の4つのポイント

    シニアが住み替える際の4つのポイント

    シニア世代は、子どもの独立や退職などをきっかけに生活環境が大きく変化します。今住んでいる家がライフスタイルに合わなくなると、将来を見据えて住み替えを検討することもあるでしょう。 この記事では、シニアが住み替える際に確認しておきたいポイントを4つ紹介します。 住み替えの目的を明確にする まずは住み替えの目的を明確にすることが大切です。シニアはどんなきっかけで住み替えを考えるのでしょうか。「エリア」「設備」「趣味・嗜好」の3つの観点から、シニアが住み替える目的を確認していきましょう。 エリア 居住エリアの変更を希望する場合は、「子どもと同居、近居したい」「利便性を向上させたい」といった場合が考えられます。 子ども世帯の近隣に住み替えることで、子どもや孫と支えあいながら楽しく暮らせます。また、スーパーや医療機関、公共交通機関などが充実しているエリアに住み替えれば、老後も不自由なく暮らせるでしょう。 設備 「建物や設備の経年劣化により長く住み続けるのが難しい」「バリアフリー化したい」といった理由で住み替えを検討するケースです。 住み替えることで建物や設備が新しくなり、バリアフリー化もできます。ただし、今住んでいる家の建て替えや「リフォームで対応することができないのか」改めて考えてみるといいでしょう。 趣味・嗜好 「趣味の読書や映画、音楽を楽しみたい」「一年中ゴルフをして過ごしたい」「スローライフを満喫したい」など、趣味・嗜好で住み替えを検討する場合も考えられます。戸建てやマンションだけでなく、高齢者向け住宅などの様々な住まいの候補があります。それぞれメリット・デメリットがあるので、後悔がないように物件を選定するといいでしょう。 より快適な老後を過ごすには、住環境を整える必要があります。自分の好みに合った家に住み替えることで、毎日を楽しく快適に過ごすことができるでしょう。 余裕を持った資金計画を立てる シニアが住み替えを成功させるには、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。具体的には以下の点を確認しましょう。 総資産額を把握して住み替え予算を決定する まずは手元にある資産や負債を把握して、住み替えの予算を決定します。 資産は預貯金のほかに自宅の売却価格、株や保険などの金融商品も確認しましょう。自宅の売却価格は住み替えの進め方や売却方法によって変わってくるため、保守的に見積もることが大切です。 負債は住宅ローンやその他の借入があるかを確認します。資産から負債を差し引いた金額が、現時点で手元にある本当の資産(純資産)となります。 借入可能額を見積もる 資金調達を利用する場合は、いくらまで借りられるかを見積もりましょう。 シニアの場合、年齢や収入によって利用できるローン商品が変わってきます。通常の住宅ローンは審査が通りにくく、借りられたとしても長期のローンを組むのは難しいでしょう。高齢者向け住宅ローンの「リ・バース60」も選択肢として検討を進めるといいでしょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 預貯金として残す金額を決める 資産や負債、借入可能額がわかったら、預貯金として残す金額を決めます。年金だけで生活するのが難しい場合、預貯金は生活費を補う重要な財産となります。急にまとまった出費が生じる可能性もあるので、預貯金は多めに確保しておきましょう。 無理のないキャッシュフローにする 住み替え前と住み替え後でキャッシュフローは異なるケースが多いでしょう。借入を利用する場合は、毎月の返済が増え、マンションに住み替える場合は、毎月管理費・修繕積立金がかかります。住み替え後のキャッシュフローができるだけプラスになるか、手元の預貯金で賄えるかなどの視点から、無理のない収支計画を立てましょう。 賢く手段を選んで自宅を売却する シニアが住み替えを成功させるには、自宅をどのように売却するかも重要です。自宅の売却方法は、「買い先行」と「売り先行」の2つがあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選択しましょう。 買い先行で住み替える 買い先行は、新居を購入してから自宅を売却する方法です。空室にしてから売却するので、内覧希望者に対応しやすく、高値で売却できる可能性があります。 ただし、今の住宅ローンを残したまま新居のローンを組むのは難しいため、資金に余裕がある人に向いています。 買い先行は「市街化区域外」「旧耐震」「再建築不可」「既存不適格」「借地権」「郊外」「マンションの1階」など、売りづらい物件に住んでいる場合は要注意です。自宅の売却に時間がかかると手元資金が不足する恐れがあります。 売り先行で住み替える 売り先行は、自宅を売却してから新居を購入する方法です。住み替え資金を確保しやすく、新居のローンを組みやすいので、資金に余裕がない場合は売り先行が向いています。 ただし、売り先行は新居に引っ越しするまでの仮住まいを確保しなくてはなりません。また、新居の購入スケジュールによっては早期に売却しなくてはならないため、買い先行に比べると自宅の売却価格が安くなりがちです。 少しでも高く売るために「仲介」で売却するのか、確実に売却するために「業者買取」を利用するのかを判断する必要があります。 目的に合った物件を選定する 資金計画や自宅の売却方法が決まったら新居を探します。目的に対応する物件を選ぶ際は、以下の点を意識するといいでしょう。 持ち家か賃貸か シニアの住み替えでは、持ち家だけでなく賃貸物件も選択肢となります。 持ち家は間取りなどの選択肢が広く、いざというときに有効活用できるのがメリットです。「売却する」「物件を担保に融資を受ける」などの方法で、まとまった資金を確保できます。 賃貸は毎月家賃がかかりますが、自宅の処分やローンを考慮せずに引っ越しができ、相続トラブルを回避しやすいのがメリットです。ただし、オーナーによっては高齢であることを理由に入居を断られる場合もあるので、老人ホームや高齢者向け賃貸住宅から選ぶといいでしょう。 戸建てかマンションか 住み替えの目的によって、戸建てとマンションのどちらが向いているかは変わってきます。 たとえば、子ども世帯と同居するなら間取りの自由度が高い戸建て、将来の売却や相続を考慮するなら売却しやすいマンションがよいかもしれません。目的に応じて、どちらがよいかを見極めましょう。 都市部か郊外か 都市部と郊外では、住環境が大きく異なります。都市部は生活に便利な設備がそろっていますが、物件価格や家賃は高い傾向にあります。一方、郊外は静かな環境で穏やかに暮らせますが、インフラ整備などの状況など生活するには不便な場所もあります。 都市部と郊外のどちら選ぶにせよ、売却しやすい物件に住み替えることを意識しましょう。 予算を超えたら? 条件に合致する土地や物件が見つかっても、予算を超えてしまうかもしれません。その場合は以下のような選択肢があります。 建て替え・リフォームに切り替える エリアを変える ダウンサイジングする 老後資金不足を招く恐れがあるため、予算を超える場合は住み替えを見送るのが無難です。住み替えにこだわらず、建て替えやリフォームで住環境を改善する方法もあります。 どうしても住み替えたい場合は、エリア変更やダウンサイジング(より小さな家への住み替え)を検討しましょう。 まとめ シニアが住み替えをする場合は、目的をはっきりさせたうえで資金計画を立てることが大切です。また、自分にあった売却方法や物件を選ぶことも重要なポイントとなります。快適なシニアライフを過ごすために、必要に応じて住み替えを検討しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの方法と成功させるポイント 持ち家に住んでいても、転勤や家族構成の変化などのライフスタイルの変化などを理由に住み替えを検討することがあるでしょう。 住み替えは新居の購入や自宅の売却、住宅ローンの手続きなど、同時に進めな...記事を読む