住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • サステナビリティ・リンク・ローンとは?特徴とメリット・デメリットを解説

    サステナビリティ・リンク・ローンとは?特徴をわかりやすく解説

    近年、環境問題や社会的課題の解決に貢献するために、「サステナビリティ・リンク・ローン」を利用して資金調達する企業が増えています。通常のローンとは何が違うのでしょうか。 この記事では、サステナビリティ・リンク・ローンの特徴とメリット・デメリットを解説します。 サステナビリティ・リンク・ローンとは サステナビリティ・リンク・ローンとは、借り手が野心的なサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を達成することを奨励するローンです。 SPTsとは、環境問題や社会的課題の解決に向けたサステナビリティ活動に関する目標です。環境や社会にもたらすインパクトが大きく、定量的なものを事前に設定することが求められます。 SPTsの具体例は以下のとおりです。 温室効果ガス排出量の削減 再生可能エネルギーの生産量・使用量の増加 水消費量の削減、水のリサイクル率の改善 認証された持続可能な原材料・供給品の増加 天然資源投入量の増減、廃棄物処理におけるリサイクル率 ESG格付※の改善、ESG認証の達成 ※企業のESGへの取り組み状況や課題解決に向けた意欲、ビジネスに影響を及ぼしそうなリスクの度合いなどを分析・評価し、スコア化したもの 融資後に、借り手は年1回程度SPTsのレポーティングを行います。貸し手は、SPTsの達成状況に応じて融資条件を見直す仕組みになっています。 出典)環境省「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドラインサステナビリティ・リンク・ローン関係のポイント」 日本におけるローンの組成状況 環境省によると、日本におけるサステナビリティ・リンク・ローン組成額の推移は以下のとおりです。(2023年の値は2023年3月20日時点のものです。) 出典)グリーンファイナンスポータル「サステナビリティ・リンク・ローン発行データ 市場普及状況(国内・海外)」 日本では、2019年に初のサステナビリティ・リンク・ローンが組成されました。2021年以降は急速に普及が進み、2022年には融資額が6,500億円を超える規模まで拡大しています。 サステナビリティ・リンク・ローンの特徴 サステナビリティ・リンク・ローンには以下のような特徴があります。 SPTsの達成状況と融資条件が連動している 融資後のレポーティングを通じて透明性が確保される 調達資金の融資対象が特定のプロジェクトに限定されない 借り手のニーズに合わせた柔軟な商品設計が可能 サステナビリティ・リンク・ローンは成果報酬型のローンで、借り手のレポーティングによってSPTsの達成状況の透明性が確保される仕組みになっています。 サステナビリティ・リンク・ローンのメリット 借り手側のサステナビリティ・リンク・ローンのメリットは以下のとおりです。 サステナビリティ経営の強化につながる SPTsの達成状況と融資条件が連動するため、サステナビリティ経営を実行する強い動機となります。また、SDGs(国連の持続可能な開発目標)達成への貢献やサステナビリティ活動をPRできるため、取引先や投資家からの評価が高まる可能性があります。 資金使途が特定のプロジェクトに限定されない サステナビリティ・リンク・ローンの資金使途は「一般事業目的」とされています。特定のプロジェクトに限定されないため、サステナビリティ活動以外の事業にも利用可能です。 好条件で資金調達できる可能性がある サステナビリティ・リンク・ローンは成果報酬型で、SPTsの達成状況に応じて融資条件が変動します。SPTsの活動に注力し、目標を達成することで、適用利率が下がる可能性があります。 サステナビリティ・リンク・ローンのデメリット 一方で、借り手側のサステナビリティ・リンク・ローンのデメリットは以下のとおりです。 外部評価の取得や目標達成などの手間がかかる SPTsの設定やレポーティングにあたり、第三者評価機関による外部レビューを取得しなくてはなりません。また、SPTsの達成にも取り組まなくてはならないため、一般的なローンよりも手間がかかります。 通常のローンよりコストがかかる可能性がある サステナビリティ・リンク・ローンは、レポーティングや外部レビュー取得の際に費用が発生します。SPTsを達成できなければ、通常のローンよりコストがかかる恐れがあります。 サステナビリティ・リンク・ローンの借入の流れ サステナビリティ・リンク・ローンは通常の借入手続きに加えて、独自の手続きが必要になります。具体的な流れは以下のとおりです。 借入準備(SPTsの設定、融資条件の決定、外部レビュー取得、レポーティング方法の検討など) 金融機関の審査・契約・融資実行 返済・情報開示(SPTs達成状況の測定・レポーティング、外部機関による検証) SPTsの達成状況に応じて融資条件を見直し 借入準備では、事業計画や必要書類の作成の他に、SPTsの設定や第三者評価機関によるレビュー取得などを行います。 融資後はSPTsの達成状況を定期的に測定し、金融機関にレポーティングをしなくてはなりません。金融機関は、SPTsの達成状況に応じて融資条件を見直し、借り手に通知します。 サステナビリティ・リンク・ローンの事例 ここでは、サステナビリティ・リンク・ローンの事例を2つ紹介します。 日本郵船(2019年11月) 2019年11月29日、三菱UFJ銀行をアレンジャーとするシンジケート団は日本郵船にローンを実施しました(日本初の組成)。SPTsは、CDP(環境戦略や温室効果ガスの排出量の開示を求めているプロジェクト)において高ランクを維持することです。 日本郵船は、毎年CDPスコア結果を三菱UFJ銀行にレポーティングします。一定のスコアが維持される限り、返済期限までCDPランクに起因した金利上昇はないことが条件となっています。 SBIエステートファイナンス(2023年1月) 2023年1月23日には、百十四銀行がSBIエステートファイナンスに対してローンを実施しました。同社は子会社である「SBI スマイル」とともに、高齢化社会においてもお客様が安心してご自宅に住み続けられること、豊かさが維持出来ることを目的としています。SPTsは、子会社のSBIスマイルがリースバック事業において取得する物件の件数および取得額です。 SBIエステートファイナンスは、債務の履行完了まで年1回SPTsの達成状況を所定の書式で確認します。SPTsの達成状況の達成状況に応じて、金利を引き下げる仕組みが設定されています。 出典)グリーンファイナンスポータル「サステナビリティ・リンク・ローン発行データ」 まとめ サステナビリティ・リンク・ローンは、SPTsの達成を通じて環境問題や社会的課題の解決に貢献できるのが特徴です。サステナビリティ経営の強化につながり、企業価値の向上や金利優遇などのインセンティブが期待できます。 ただし、通常のローンににはない手間やコストがかかるため、利用は慎重に判断しましょう。 出典) ・グリーンファイナンスポータル「サステナビリティ・リンク・ローンとは」 ・環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライングリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ グリーンリフォームローンとは?利用条件やメリット、注意点を解説 グリーンリフォームローンは、一定の基準を満たす省エネリフォーム専用のローン商品です。リフォームによって自宅の省エネ性能を高めれば、より快適な生活を実現できます。高齢者向けの返済特例もあるため...記事を読む

    2023.05.31各種ローン
  • 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説

    【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説

    住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状況に合わせてどういった条件でどのような控除が受けられるかを把握しておくことが大切です。この記事では住宅ローン控除を、取得した住宅の状況に分けて解説します。 住宅ローン控除の4つの区分 住宅ローン控除は令和4年以降に居住の用に供した場合において、全部で11つの区分に分けられます。その中でも住宅の取得に関する以下4つの区分について解説します。 ①新築住宅を取得した場合 ②買取再販住宅を取得した場合 ③中古住宅を取得した場合 ④要耐震改修住宅を取得した場合 区分ごとに控除額や利用条件が異なる部分もあるため、ご自身の状況に合った区分の住宅ローン控除について、適切に理解しておくことが大切です。 出典)国税庁「令和4年分確定申告特集 住宅ローン控除を受ける方へ」 4つの区分に共通する利用条件 4つの区分に共通する住宅ローン控除の利用条件は、以下のとおりです。 1.住宅の取得日から6か月以内に入居していること 住宅ローン控除を利用するには、住宅を取得してから6か月以内に入居している必要があります。加えて、控除を受ける年の12月31日時点に、その住宅で居住している必要があります。住宅購入から引っ越しまでの期間が空いてしまう場合は、注意しましょう。 2.床面積が40平方メートル以上であり、その半分以上が居住用であること 住宅ローン控除を利用するためには、住宅の床面積が40平方メートル以上であり、かつその半分以上が居住用であることが必要です。そのため、住宅ローン控除を利用したい場合は、新居を探す段階で気を付けておく必要があります。なお、この床面積は登記簿に表示されている床面積により判断されます。購入前にあらかじめ不動産業者に確認しておくとよいでしょう。 3.控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること 住宅ローン控除を利用するには、自身の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。ただし、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額の条件が1,000万円未満となるので、注意が必要です。住宅の床面積を確認したうえで、直近の源泉徴収票などで合計所得金額を確認しておきましょう。 出典)国税庁「専門用語集 合計所得金額」 4.住宅ローンの返済期間が10年以上であること 住宅ローン控除を利用するには、10年以上にわたり分割して返済する方法になっている、新築または取得のための一定の借入金または債務が必要です。ただし、勤務先からの無利子または0.2%(平成28年12月31日以前に取得した場合は1.0%)に満たない借入や、親族や知人からの借入は対象外です。 出典)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」 5.居住用として利用する住宅であること 2つ以上の住宅を保有している場合、主に居住用として利用する住宅である必要があります。例えば別荘として住宅を購入した場合だと、住宅ローン控除を利用することはできません。 6.譲渡所得の課税特例の適用がないこと 居住年および前2年以内に譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件です。また、居住年の後3年以内に、居住している住宅(住宅の敷地含む)以外の一定の資産を譲渡した場合も、譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件になります。 出典)国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」 7.贈与等による住宅取得ではないこと 住宅の取得時および取得後も引き続き生計を一にする者からの住宅取得でないことも条件です。また、贈与による住宅取得も対象外となります。 ①新築住宅を取得した場合 まずは、令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、取得した住宅の環境等によって以下のように異なります。 住宅の環境性能 入居した年 令和4年・令和5年 令和6年・令和7年 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) 5,000万円 4,500万円 ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 その他の一般新築住宅 3,000万円 2,000万円 例えば令和5年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は35万円となります。 基本的に控除期間は13年間ですが、その他の一般新築住宅で入居した年が令和6年もしくは令和7年の場合のみ、10年間となります。 利用条件 新築住宅を取得した場合の利用条件については、前述の共通する利用条件のとおりです。 出典)国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ②買取再販住宅を取得した場合 次に、令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。計算に用いる住宅ローン残高の上限や、控除期間についても、新築住宅を取得した場合と同様です。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が買取再販住宅に該当していることが必要となります。買取再販住宅とは、以下の条件を満たす住宅のことをいいます。 宅地建物取引業者が適切な特定増改築等をした住宅であること 宅地建物取引業者の既存住宅取得日から2年以内に取引された住宅であること 取引時点において、その住宅が新築された日から10年が経過していること 買取再販住宅と認定されるためには、宅地建物取引業者が定められた適切な特定増改築等を行っている必要があります。買取再販住宅に当てはまるかどうかを自分で判断するのは難しいので、事業者側に確認してもらうことが大切です。 出典)国税庁「No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ③中古住宅を取得した場合 続いて、令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、前述の新築住宅および買取再販住宅を取得した場合と上限金額が異なります。 住宅の環境性能 入居した年 令和4年・令和5年 令和6年・令和7年 認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅) 3,000万円 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 その他の一般新築住宅 2,000万円 例えば令和5年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は21万円となります。 中古住宅を取得した場合の控除期間は10年間です。新築住宅や買取再販住宅を取得した場合と比較して、上限金額も低く、控除期間も短くなります。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が中古住宅に該当していることが必要となります。中古住宅とは、新築住宅や買取再販住宅に該当しない住宅のうち、新耐震基準に適合している住宅をいいます。 出典)国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 ④要耐震改修住宅を取得した場合 最後に、令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合について解説します。 控除の内容 令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には、入居した年にかかわらず、一律で2,000万円の上限が設けられています。また、控除期間については中古住宅と同様に10年間です。 利用条件 利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が要耐震改修住宅に該当していることが必要となります。ここでいう要耐震改修住宅とは、新築住宅や買取再販住宅、中古住宅のいずれにも該当しない住宅のうち、建築後に一度は使用されたことのある住宅をいいます。 なお、要耐震改修住宅の取得にあたり、取得日以降に新耐震基準に適合するための耐震改修を行うことを、取得日までに申請している必要があります。加えて、実際に入居する日までに耐震改修を行うことで新耐震基準に適合することとなったことが「耐震基準適合証明書」などによって証明されていることが必要となります。 耐震工事は取得日以降に行うことになるため、取得日から実際に耐震改修が終わって入居するまでにある程度の期間を要します。取得から入居までの期間が6か月を超えると住宅ローン控除が利用できなくなってしまうので、十分注意しましょう。 出典)国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」 まとめ 取得する住宅の条件によって、住宅ローン控除の控除額が変わってきます。住宅ローン控除を利用する場合は、取得する住宅の条件を確認し、今回紹介した4つの区分のどれが適用されるのかを把握しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅購入時の優遇制度を解説 住宅を購入するときは、「住宅ローン控除」をはじめとしたさまざまな優遇制度が用意されています。一方で、どのような優遇制度があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、住...記事を読む

    2023.05.24制度税金
  • マンションの大規模修繕工事 とは?工事内容や修繕積立金についても解説

    マンションの大規模修繕工事とは?工事内容や費用について解説

    マンションは築年数の経過とともに建物や設備が老朽化していくため、いずれは大規模修繕工事が必要になります。大規模修繕工事は、建物の劣化や設備の交換などに対応する工事であり、マンション所有者の暮らしにも影響が出てくるものなので、あらかじめ概要を理解しておくことが大切です。 マンションの大規模修繕工事とは 大規模修繕工事とは、建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事をいいます。例えば、全面的な外部足場が必要な外壁塗装と屋上防水等を同時に行う場合などです。なお、大規模修繕工事は法律等で義務付けられたものではありません。 国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事を行っているマンションのうち、約7割が12~15年周期で大規模修繕工事を行っている、という結果が出ています。 出典) ・国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」 ・国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 大規模修繕工事の内容 大規模修繕工事は大きく3つの工事に分類できます。 ①建築系工事 建築系工事とは、マンションの建物部分を修繕するための工事です。マンションの共用部分の補修も含まれます。具体的には以下の工事が挙げられます。 ・屋根や床の防水工事 ・外壁の塗装やタイル張り ・シーリング工事 ・鉄部塗装 ・建具金物の修繕や取替 大規模修繕工事のほとんどは建築系工事です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する建築系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 ②設備系工事 設備系工事とは、マンション内のインフラを整えるための工事です。具体的には以下の設備に対する工事が挙げられます。 ・給水、排水設備 ・ガス設備 ・空調、換気設備 ・電灯設備 ・情報・通信設備 ・消防用設備 ・昇降機設備 ・駐車場設備 「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、建築系工事と同様に大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する設備系工事の費用割合が増加していく、という結果が出ています。一方で、建築系工事と設備系工事のそれぞれにかかる費用を比較すると、設備系工事はかなり小さい金額となっています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 ③仮設工事 仮設工事は、足場や作業員用の事務所や資材置き場など、建築系工事や設備系工事を進める前の準備にあたる工事です。マンションの修繕とは直接関係のないものの、大規模修繕工事を進めるために必ず必要です。「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事の回数を重ねるにつれて、全体の大規模修繕工事費用に対する仮設工事の費用割合が減少していく、という結果が出ています。 出典)国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(概要)」 大規模修繕工事にかかる費用 修繕積立金とは 大規模修繕工事に必要な費用は、マンションの管理組合が毎月マンション所有者から徴収する「修繕積立金」から支払われます。そのため、マンション所有者に対して急に高額な費用負担が発生するようなことはほとんどありません。一方で、毎月支払うことになる「修繕積立金」についてはしっかりと把握しておく必要があります。 国土交通省が公表している「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、修繕積立金の全国平均額は11,243円です。なお、過去の調査結果と比較をすると、修繕積立金は上昇傾向です。 出典)国土交通省「平成30年度 マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」 修繕積立金の積立方法 修繕積立金の積立方法は、大きく2つに分類されます。 1つ目は、月々の修繕積立金が一定である「均等積立方式」です。あらかじめ立てた長期修繕計画に基づき、必要な費用から逆算して必要額が算出されます。なお、長期修繕計画の見直しに合わせて必要な費用及び月々の修繕積立金額も調整されることがあります。全く変動しないわけではないので注意しましょう。 2つ目は、修繕の必要性に合わせて月々の修繕積立金を段階的に増額していく「段階増額積立方式」です。新築マンションであれば修繕積立金を抑えられる一方で、築年数が経つにつれて増額していくことになる、一長一短な積立方式です。急な増額によってマンション所有者の負担が増えてしまい、場合によってはトラブルになる恐れもあるので注意が必要です。 どちらの方式であっても、適切な長期修繕計画に基づいて積立が行われているかが重要です。今住んでいるマンションの長期修繕計画を確認したうえで、今後の修繕積立金の金額についても把握しておきましょう。 まとめ 大規模修繕工事を行うことで、以前よりも快適な住環境を手に入れることができ、建物の資産価値を保つことにもつながります。マンション所有者である以上大規模修繕工事は他人事ではありません。マンションに住む以上、大規模修繕工事の概要をしっかり押さえ、工事に備えておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む

    2023.05.17用語
  • 資産価値が落ちにくいマンションとは?物件を選ぶときのポイントと相場の調べ方

    マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介

    マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンションの資産価値の目安を調べる方法 マンションの資産価値を調べる場合には、販売中の物件や近隣の成約事例を確認することである程度の目安を調べることが可能です。ここでは、マンションの資産価値の目安を自分で調べる3つの方法を紹介します。 ①レインズマーケットインフォメーション 「レインズマーケットインフォメーション」とは、国土交通大臣の指定を受けた「全国指定流通機構連絡協議会」が運営・管理を行う不動産情報ネットワークのことです。直近1年間で売買が行われ、取引が成立したマンションの販売価格や成約価格が公開されています。 豊富なデータベースのなかから、地域や沿線、専有面積、築年数など細かな条件で絞り込んで取引事例を閲覧できます。複数の事例を比較したり検証したりすることで、マンションの資産価値を判断する指標として利用することができます。 出典)REINS Market Information ②土地総合情報システム 「土地総合情報システム」とは、国土交通省が管理しているWEBサイトです。過去に行われた不動産取引について、細かな条件別に価格の絞り込みが行えるので、レインズマーケットインフォメーションと同じように、類似した事例に基づいて相場を調べることができます。 さらに、過去5年間にわたって四半期ごとのマンション取引相場をチェックできるので、時系列で価格の動きを比較することも可能です。また、地価公示・都道府県地価調査の価格を調べることもできます。 ただし、土地総合情報システムのデータは購入者のアンケート結果に基づいて構成されているので、全ての取引データを扱っているわけではありません。あくまで取引事例の一部データとして用いることが重要です。 出典)土地総合情報システム 関連記事はこちら公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説 ③不動産ポータルサイト 現在販売中の物件については、不動産ポータルサイトを通して確認する方法もあります。不動産ポータルサイトには、実際に購入者を募集している物件の情報が数多く掲載されているため、詳細条件を入力すれば同じような物件の売り出し価格をチェックできます。 また、独自のデータベースに基づいてマンション価格を算出しているサイトもあるので、参考にしてみるといいでしょう。 マンションの資産価値に影響を与える要因 マンションの資産価値を判断する際には、そもそもどのような要因によって価値が変動するのかを具体的に把握しておくことが大切です。マンションの資産価値は次のような要因が影響を与えます。 ・築年数 ・耐震性 ・日当たり、方角 ・最寄り駅・バス停などの距離 ・階数 ・専有面積 ・管理状況 ・周辺環境、騒音、治安 いずれも生活の快適性や利便性、安全性などを左右するポイントであるため重視されます。また、同じマンションであっても、階数や間取り、日当たり条件によって部屋ごとの資産価値は異なります。 不動産の資産価値は、土地の資産価値と建物の資産価値によって決まりますが、マンションの場合は一戸建てと比べて、資産価値のうち土地が占める割合が少ないのが特徴です。マンションの資産価値を考える際は、築年数をはじめとする建物の状況をしっかりと確認しましょう。 不動産鑑定における3つの方法 マンションの資産価値を調べるうえで、そもそも不動産鑑定はどのように行われているのかを知っておくと良いでしょう。ここでは不動産鑑定における3つの方法を紹介します。 ①取引事例比較法 取引事例比較法は、その不動産と同じような条件の不動産がどのような価格で取引されているかを比較することで資産価値を計算する方法です。資産価値に影響を与えるさまざまな要因を踏まえ、類似した条件を持つ物件の取引事例をいくつか並べるだけでも、マンションのおおまかな資産価値を調べられます。 ②収益還元法 収益還元法は、その不動産が将来生み出す収益から資産価値を計算する方法です。購入したマンションを賃貸として活用する際に用いられることが多いです。 賃料収入から必要経費を差し引いた収入で計算した利回りをもとに、現在の資産価値を逆算します。家賃の下落率や空室リスクなどを加味することも大切です。 ③原価法 原価法は、その不動産を再度建築する場合の原価を算出して、築年数が経過したことによる価値のマイナス分を加味したうえで資産価値を計算する方法です。 つまり、「現時点で購入するとしたらいくらかかるのか」という観点から、具体的な金額を割り出していく方法です。前述のとおり、建物は歳月の経過によって劣化していく性質を持っているため、建物の築年数を考慮した推定が必要になります。 まとめ マンションの資産価値はさまざまな要因に左右されるため、購入の際には複合的な観点で検討する必要があります。また、立地や広さといった基本的な項目だけでなく、管理状態などの要因でも価値が変動するため、購入後もこまめに手入れを行い、資産価値の維持に努めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む 不動産のプロが選ぶ30年後に価値の落ちない物件とは? 不動産価値に関する調査を実施 東京近郊の30年後に価値が下がらない物件は? ~ 不動産価値に関してアンケート調査を実施 ~ 2020年を境に不動産価値が下がるという話題を耳にすることが多くな...記事を読む

    2023.05.10不動産価値
  • 生活福祉資金貸付制度とは?概要と手続きの流れを紹介

    生活福祉資金貸付制度とは?概要と手続きの流れを紹介

    生活福祉資金貸付制度をご存じでしょうか。本制度では、失業や減収などにより生活が困窮している人に対して、生活費や一時的な資金の貸し付けを行う「総合支援資金」が設けられています。状況に応じた様々な支援が用意されているため、いざという時の助けになるかもしれません。この記事では、生活福祉資金貸付制度を紹介します。 生活福祉資金貸付制度とは 生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉および社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。都道府県社会福祉協議会を主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となっており、それぞれの世帯の状況と必要に応じた資金の貸付等を行います。 出典)都道府県社会福祉協議会 お問い合わせ先一覧 また、資金の貸し付けによる経済的な援助にあわせて、地域の民生委員が資金を借り入れた世帯の相談支援を行っています。平成27年4月から施行された生活困窮者自立支援制度では、生活上のさまざまな課題がある人に、包括的な相談支援を行うことで自立の促進を図ることを目的にしています。 なお、あくまで本制度は「貸付事業」であることから、貸付することにより現在困っていることを解決できる一方で、「借金を負う」という世帯にとっての負担が伴います。順調に返済することが難しくなれば、世帯への支援を目的に貸付したものが、世帯への大きな負担となってしまいます。そのため、相談した時点で負担の方が大きく、貸付が支援にならないと判断される場合には、借り入れができません。 生活福祉資金の貸付対象 生活福祉資金の貸付対象は下記のとおりです。 低所得世帯:資金の貸付、支援を受けることで、独立自活できると認められる世帯、かつ必要な資金を他から借り入れることが困難な世帯 障害者世帯:身体障害者手帳等の交付を受けた人※が属する世帯 高齢者世帯:65歳以上の高齢者の属する世帯 ※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人 本制度は、個人ではなく「世帯の自立」を支援する制度です。世帯を支援するためには世帯全体の状況を把握することが必要です。そのため、世帯全員の就労・就学・疾病、収入や家計の支出、負債の状況等のヒアリングや、必要に応じた確認がされます。また、本制度の利用にあたって世帯全員の了解が必要です。貸付の相談から返済を完了するまでの間、社会福祉協議会の職員が世帯を支援します。(※ただし、資金貸付の「契約」は、借受人個人の方と締結することになります。なお、「仮受人」とは、本制度を利用して資金の貸付を受ける人のことを指します。) 生活福祉資金の種類 本制度では、用途別に大きく4つの種類が設けられています。 総合支援資金 福祉資金、教育支援資金 緊急小口資金 不動産担保型生活資金 総合支援資金 総合支援資金では、失業等で日常生活に困難を抱えた世帯の生活の立て直しのために、継続的な相談支援や生活費及び一時的な資金の借り入れができます。失業者等の個人を支援する制度ではなく、「世帯」の生活再建を支援する制度のため、世帯員の収入で生活できる場合は対象になりません。 総合支援資金には、生活再建までの間に必要な生活費用である「生活支援費」、敷金、礼金等住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用である「住宅入居費」、生活を再建するために一時的に必要かつ日常生活費で賄うことが困難な費用である「一時生活再建費」の3種類があり、それぞれ貸付条件が異なります。 生活支援費 住居入居費 一時生活再建費 貸付限度額 月20万円以内(二人以上)月15万円以内(単身) 40万円以内 60万円以内 据置期間 最終貸付日から6か月以内 貸付日※から6か月以内 償還期限 据置期間経過後10年以内 貸付利子 保証人あり:無利子保証人なし:年1.5% 保証人 原則必要ただし、保証人なしでも貸付可 ※生活支援費とあわせて貸し付けている場合は、生活支援費の最終貸付日 出典) ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「総合支援資金のご案内」 ・厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」 福祉資金、教育支援資金 具体的な利用目的がある場合に、該当する資金種類の借り入れができます。資金ごとに、貸し付けの条件・基準が定められており、総合支援資金と同様に世帯全員の収入を鑑みて対象か否かを判断します。 「福祉費」では、生業を営むために必要な経費や福祉用具等の購入に必要な経費など幅広い目的がありますが、それぞれ上限目安額が設定されています。 教育支援資金では、低所得世帯に属する人が、高校、大学または専門学校に修学するために必要な費用である「教育支援費」、入学に際し必要な費用である「就学支度費」があり、それぞれ貸付条件が異なります。 福祉費 教育支援費 就学支度費 貸付限度額 580万円以内*1 高校:月3.5万円以内*2高専:月6万円以内*2短大:月6万円以内*2大学:月6.5万円以内*2 50万円以内 据置期間 貸付日*3から6か月以内 卒業後6か月以内 償還期限 据置期間経過後20年以内 貸付利子 保証人あり:無利子保証人なし:年1.5% 無利子 保証人 原則必要ただし、保証人なしでも貸付可 不要*4 ※1 資金の用途に応じて上限目安額の詳細はこちら ※2 特に必要と認める場合は、上記各上限額の1.5倍まで貸付可能 ※3 分割による交付の場合には最終貸付日 ※4 世帯内で連帯借受人が必要 出典) ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「福祉資金のご案内」 ・社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「教育支援資金のご案内」 緊急小口資金 緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合に借り入れができます。貸付対象の理由としては、下記のようなものが該当します。(一部抜粋) 医療費または介護費を支払ったことなどにより臨時の生活費が必要なとき 火災等の被災によって生活費が必要なとき 年金、保険、公的給付等の支給開始までに必要な生活費 会社からの解雇、休業等による収入減 また、貸付条件は下記のとおりです。 緊急小口資金 貸付限度額 10万円以内 据置期間 貸付日から2か月以内 償還期限 据置期間経過後12か月以内 貸付利子 無利子 保証人 不要 出典)社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「緊急小口資金のご案内」 不動産担保型生活資金 現在住んでいる自己所有の不動産(土地・建物)に、将来にわたって住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、その不動産を担保として生活資金の借り入れができます。これまでの資金と同様収入などの条件に加えて、対象不動産に抵当権が設定されていないことや土地の評価額の要件などの条件があります。貸付条件は下記のとおりです。 不動産担保型生活資金 要保護世帯向け不動産担保型生活資金 貸付限度額 ・土地の評価額の70%程度・月30万円以内 ・土地及び建物の評価額の70%程度(集合住宅の場合は50%)・生活扶助額の1.5倍以内 貸付期間 借受人の死亡時までの期間又は貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間 据置期間 契約終了後3か月以内 償還期限 据置期間終了時 貸付利子 年3%、又は長期プライムレートのいずれか低い利率 保証人 要※推定相続人の中から選任 不要 出典)社会福祉法人 東京都社会福祉協議会「不動産担保型生活資金貸付のごあんない」 生活福祉資金貸付制度の申し込みから受給までの流れ 平成27年4月から生活困窮者自立支援制度の施行に伴って、資金種類によって借入申込の流れが一部変更になりました。福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の場合は下記のとおりです。 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の場合の流れは下記のとおりです。 市区町村社会福祉協議会に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に申請書類等を提出する 都道府県社会福祉協議会から貸付決定通知が送付される 借用書を提出する 貸付金を受給する 福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の借り入れをする場合は、市区町村社会福祉協議会に相談し、申し込むことができます。 借入申込者が提出した申請書類等をもとに、市区町村社会福祉協議会および都道府県社会福祉協議会において申込内容の確認と貸し付けの審査を行い、貸付決定通知書または不承認通知書を送付します。 貸付決定となった場合は、都道府県社会福祉協議会に借用書を提出したあと、貸付金が交付されます。 総合支援資金、緊急小口資金 総合支援資金、緊急小口資金の場合の流れは下記のとおりです。 自立相談支援機関に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に利用の相談および申し込みを行う 市区町村社会福祉協議会に申請書類等を提出する 都道府県社会福祉協議会から貸付決定通知が送付される 借用書を提出する 貸付金を受給する 総合支援資金、緊急小口資金の借り入れをする場合は、既に就職が内定している場合等を除き、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の利用が貸付の要件となります。 自立相談支援機関において、相談者の状況に応じた支援プランの検討とあわせて、生活福祉資金(総合支援資金、緊急小口資金)の利用の可能性が考えられる場合に、借入金額や償還計画等について相談したうえで、必要書類を添付し申請します。その後の流れは同様です。 まとめ この記事では、生活福祉資金貸付制度の概要を紹介しました。失業や減収などによって家計が厳しくなった人や、年金収入だけでは生計の維持が厳しい人にはうまく活用できる資金があるかもしれません。詳細が気になる人は、自身がお住いの社会福祉協議会に問い合わせてみるといいでしょう。 出典) ・厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」 ・社会福祉法人 全国社会福祉協議会「福祉の資金(貸付制度)」 ・東京都福祉保健局「生活福祉資金貸付制度について」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 年金生活者支援給付金とは?給付対象や手続き方法を解説 年金生活者支援給付金についてご存じでしょうか。この制度を利用することで、一定の条件を満たした方は、受け取れる年金の額が多くなる可能性があります。年金生活者支援給付金について知らない方は、ぜひ...記事を読む

  • 公示価格とは?実勢価格との違いとその活用法を解説

    公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説

    公示価格(公示地価)は、国土交通省が公示している土地の価格です。土地価格の動向を示す重要な指標ですが、実勢価格(実際の取引価格)とは何が違うのでしょうか。特に土地を売買する予定がある人は、公示価格について理解しておくことが大切です。 この記事では、公示価格の概要や調べ方、活用する際の注意点について解説します。 公示価格とは 公示価格(公示地価)とは、適正な地価の形成に寄与するために、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月に公示する標準地の価格です。 地価公示法に基づいて、全国の分科会に属する鑑定評価員(不動産鑑定士)が毎年1月1日時点の1㎡あたりの正常な価格を判定しています。令和5年地価公示では、全国約26,000地点で実施されました。 公示価格は、一般の土地取引に対して指標を与えるもので、不動産鑑定や公共事業用地の取得価格算定の規準となります。また、土地の相続税評価や固定資産税評価の基準としても活用されます。 公示価格を調べる方法 公示価格は、国土交通省の「標準地・基準地検索システム」で調べることが可能です。地図上で調べたい都道府県名や市町村名を選択し、検索条件を入力すると、地価情報の詳細が表示される仕組みになっています。 具体例として、神奈川県横浜市西区の公示価格を確認してみましょう。 ▼まずは地図上で神奈川県を選択します。   ▼次に、地図上で横浜市西区を選択しましょう。 ▼検索条件指定の画面が表示されたら、「対象」「調査年」「用途区分」「地価」について選択もしくは入力を行い、検索ボタンを押します。 ▼検索結果が表示された後、「詳細を開く」や「標準地番号」のリンクを押すと、地価情報の詳細が表示されます。 複数の地域を選択して検索したり、詳細な地名を入力して検索したりすることも可能です。 出典)国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」 公示価格と他指標との違い 土地価格の指標は複数存在し、「一物五価」と言われることもあります。具体的には、「公示価格(公示地価)」「実勢価格」「基準地価」「路線価」「固定資産税評価額」の5つです。 ここでは、公示価格とそれぞれの語句との違いを説明します。 実勢価格との違い 実勢価格とは、実際に取引された土地価格のことです。土地の価格は需要や立地、周辺環境、当事者間の価格交渉などの影響を受けて変動するものなので、同じ標準地にある土地であっても、公示価格と実勢価格は一致しません。 公示価格と実際に取引される土地価格は異なることを理解し、一つの指標として活用することが大切です。 基準地価との違い 基準地価とは、国土利用計画法に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点における標準価格を判定する土地価格です。適正な地価の形成を目的として、毎年9月頃に公表されます。令和4年の基準地数は約21,000地点です。 公示価格との違いは下記のとおりです。 公示価格 基準地価 調査名国土交通省地価公示都道府県地価調査 調査主体国土交通省都道府県 根拠法地価公示法国土計画利用法 基準日毎年1月1日毎年7月1日 公表時期毎年3月毎年9月 評価方法不動産鑑定士2名以上による鑑定評価不動産鑑定士1名以上による鑑定評価 公示価格は1月1日時点、基準地価は7月1日時点と基準日に違いがあるため、基準地価は公示価格を補完する指標として活用されることがあります。 路線価との違い 路線価とは、相続税や贈与税における評価額の基準となる土地の価格です。一連の土地が面している路線ごとに評価した、1㎡あたりの土地価格を意味します。毎年1月1日を評価時点として、国税庁がその年の7月に公開しています。公示価格の80%程度が目安です。 路線価は、国税庁が運営するサイト「路線価図・評価倍率表」で確認できます。 出典)国税庁「路線価図・評価倍率表」 関連記事はこちら相続時の不動産評価方法は?評価に関する特例も併せて解説 固定資産税評価額との違い 固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する際の基準となる価格です。市町村の固定資産台帳に記載された土地の評価額を意味し、3年に1回「評価替え」が行われます。宅地については、公示価格の70%程度が目安です。 固定資産税評価額は、市町村から送付される固定資産税の納税通知書で確認できます。また、固定資産評価証明書の発行や固定資産台帳の閲覧を自治体の担当部署に依頼し、確認することも可能です。 公示価格の活用法 土地売買の際に公示価格を参照するのは、適切な売却価格かを判断する上で有効です。一方で、公示価格を指標として用いる上で、以下の特徴を把握しておくことが大切です。 地価は変動するので、公示価格と実際に取引する日の地価は異なる 公示価格が高い標準地の土地であっても、立地や周辺環境などの条件が悪ければ金額が低くなることがある 公示価格を算出する標準地は、都会には多いが地方には少ないため、土地の所在地によっては参考にならない場合がある 土地を売買する場合は不動産会社の査定価格を鵜呑みにするのではなく、公示価格や基準地価など、複数の指標と比較して問題ないかを確認した上で、売買判断を行うことが大切です。上記公示価格の特徴を正しく理解し、有効に活用しましょう。 まとめ 公示価格は、国土交通省が毎年公示していることから、信用度の高い土地価格といえます。ただし、公示価格と実勢価格は必ず一致するものではないため、参考程度にすることが大切です。実際に土地を売買する際は、公示価格だけでなく、基準地価や査定価格なども確認した上で売買判断を行いましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...記事を読む

  • 仮住まいの費用を安く抑えてリフォーム・建て替えを行うには?

    仮住まいの費用を安く抑えてリフォーム・建て替えを行うには?

    大規模なリフォームや建て替え等を行う際には、仮住まいが必要になります。 この記事では一般的な仮住まいとしてどのような選択肢があるのか、それぞれのメリットと注意点、費用などについて解説します。 仮住まいが必要となる3つの事例 仮住まいが必要になる事例として以下の3つが考えられます。 ①大規模なリフォームやリノベーション 1つ目は、大規模なリフォームやリノベーションをする場合です。部分的な工事であれば、仮住まいを必要としない場合もありますが、大規模になると安全面や騒音などの理由から仮住まいが必要になります。仮住まいが必要な期間は工事内容によって変わるので、仮住まいを探す前にあらかじめ工事期間を確認しておきましょう。 関連記事はこちらリフォームとリノベーションの違いとは?費用の目安も解説 ②建て替え 2つ目は、建て替えをする場合です。もともと住んでいた家を取り壊すため、新しい家が建つまでの間の仮住まいが必要になります。基本的に建て替えの工事期間はリフォームやリノベーション比べて長いため、仮住まいが必要な期間も長くなります。 関連記事はこちら建て替えとリフォームはどちらがいい?判断する基準を解説 ③住み替え(売り先行) 3つ目は、売り先行で住み替えをする場合です。売り先行とは、住み替えの際に先に現在住んでいる家を売却してから、新しい家を探して購入する方法です。新しい家を買う前に自宅を売却してしまうため、新しい家が見つかるまでの間は仮住まいが必要になります。 4つの仮住まいの選択肢 仮住まいには、主に4つの選択肢があります。ここでは、ほかの選択肢と比べた際のメリットと注意点をそれぞれ解説します。 ①マンスリーマンション 1つ目は、マンスリーマンションを借りる方法です。マンスリーマンションとは、その名のとおり1ヶ月単位での短期入居を想定した賃貸マンションです。マンスリーマンションには、以下のようなメリットがあります。 短期契約が可能 手続きが楽 初期費用が安い マンスリーマンションは1ヶ月単位での短期契約が可能な点がメリットです。家具家電は備え付けられており、電気・ガス・水道などは運営会社が開通手続きを行ってくれます。 快適なインターネット環境を完備している物件も多いため、引越し手続きの負担が大幅に軽減されるのが魅力です。また、一般的な賃貸物件のように敷金・礼金などはかからず、初期費用は清掃費のみのため安く済みます。 一方、注意点としては以下のとおりです。 物件の選択肢が少ない 内見できないところが多い 家賃が高い 自分の家具や家電の収納場所を別途用意する必要がある マンスリーマンションは物件数が限られているため、希望に合った部屋を見つけるのは難しい側面があります。加えて、入居者の入れ替わりが多いことから内見に応じてもらえないことも多いです。 また、初期費用が安い反面、家賃設定は一般的な賃貸と比べて高いので、長期で借りるとかえって費用がかかる恐れもあります。なお、マンスリーマンションは利用期間分の賃料を一括前払い制としている場合が多いため、入居期間をあらかじめ明確にしておかなければなりません。 ②ホテル 2つ目は、ホテルを利用する方法です。ホテルの場合は、以下のようなメリットがあります。 手続きが楽 家具やアメニティなどがそろっている 駅近などの便利な立地に多い ホテルは契約や審査が不要であり、その日に予約をとって利用することができます。また、家具やアメニティの準備は不要であり、掃除も基本的にホテルの従業員が行ってくれる点も魅力です。さらに、駅近などの便利な立地に建てられることが多いため、利便性も高いのがメリットです。 一方、注意点としては以下のとおりです。 1泊あたりの費用が高い 自分の家具や家電の収納場所を別途用意する必要がある ホテルは1泊あたりの費用が高いため、長期滞在をすると費用が膨らんでしまいます。また、家具・家電を置けるスペースがないため、別途で倉庫などを借りる必要もあります。仮住まいが必要な期間が短い場合は検討しても良いでしょう。 ③一般的な賃貸物件 3つ目は、一般的な賃貸物件を借りる方法です。通常の賃貸物件には、以下のようなメリットがあります。 物件の選択肢が多い 取り扱われている物件数が多いため、「駅近」や「駐車場付き」、「ファミリー向けの間取り」「ペット可」など、立地や条件の選択肢が幅広いのが特徴です。 一方、注意点としては以下のとおりです。 初期費用が高い 短期契約が難しい 賃貸物件を借りる際には、敷金や礼金、仲介手数料といった初期費用がかかります。加えて、一般的な普通借家契約では2年間を契約期間とする場合が多いため、短期での入居を断られてしまう恐れもあります。あらかじめ不動産会社に仮住まいとして利用することを相談しておいたほうが良いでしょう。 ④UR賃貸住宅 4つ目は、UR賃貸住宅を借りる方法です。UR賃貸住宅とは、独立行政法人都市再生機構が取り扱う賃貸物件のことです。仮住まいとしても利用が可能であり、以下のようなメリットがあります。 短期契約が可能 初期費用が安い UR賃貸住宅は礼金や仲介手数料がなく、初期費用が一般的な賃貸と比較して安い点が特徴です。短期違約金などはなく、解約日の2週間前に予告すれば退去ができるため、短期間での利用にも適しています。 一方、注意点としては以下のとおりです。 物件の選択肢が少ない 収入に関する独自の審査基準がある UR賃貸住宅そのものの物件数が限られているため、希望の物件が見つからない恐れがあります。また、入居は原則として先着順のため、人気のエリアであればあるほど借りるのが難しくなります。 それ以外の注意点としては、収入に関する独自の審査基準があることが挙げられます。UR賃貸住宅を検討する際には、しっかりと確認しておきましょう。 出典)UR賃貸住宅「お申込み資格」 仮住まいの費用を安く抑えるポイント 仮住まいの費用を抑えるためには、仮住まいが必要な期間に合わせた選択肢を考えることが大切です。仮住まいを探す際には、一般的な賃貸物件以外の選択肢を検討せざるを得ないでしょう。 引越し費用やトランクルーム利用料を抑えるためには、あらかじめ不要な荷物を処分しておくことも重要です。リフォームや建て替えを機に、家具・家電の入れ替えを検討してみるのも良いでしょう。 また、繁忙期を避ければ引っ越し費用も抑えることができます。 なお、一般的な賃貸物件を探すなら、「定期借家」も有力な選択肢となります。定期借家とは借りられる期間が定められている物件のことであり、契約更新ができない分、家賃が安く設定されていることもあります。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? まとめ 最適な仮住まい先は、仮住まいが必要な期間によって異なります。まずはスケジュールを把握し、仮住まいが必要な期間を明らかにしておくことが大切です。一般的な賃貸物件だけでなく、紹介したマンスリーマンションやUR賃貸住宅などにも選択肢を広げることで、最適な仮住まい先を探しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 仮住まいなしで住み替えをする5つの方法 持ち家の方が自宅を住み替える場合、住み替えの方法によっては仮住まいが必要です。 仮住まいとして賃貸物件を借りると、毎月の家賃だけでなく、引っ越し費用や敷金・礼金などの費用もかかります。また、...記事を読む

  • 空き家税とは?制度内容や導入される目的、対策を解説

    空き家税とは?制度内容や導入される目的、対策を解説

    京都市において、全国初の「空き家税」が2026年度に導入される見通しとなりました。空き家税は、利用されていない空き家や別荘などに課税する新たな税の仕組みです。京都市では、なぜ空き家税が創設されるのでしょうか。 この記事では、空き家税の制度内容や導入される目的、課税への対策について解説します。 空き家税とは 空き家税とは、正式名称ではなく、京都市が創設する「非居住住宅利活用促進税」のことを指します。京都市では、令和2年(2020年)8月に有識者や市民公募委員などで構成される検討委員会を設置し、空き家や別荘所有者への適正な負担のあり方について議論を重ねていました。 その後、令和4年(2022年)3月に「京都市非居住住宅利活用促進税条例」が成立しました。令和5年(2023年)3月24日には総務大臣が空き家税の創設に同意したことで、令和8年度(2026年度)以降に全国初の空き家税が導入される見通しとなっています。 京都市が空き家税を導入する目的 検討委員会の答申によると、空き家税を創設する目的は以下の2つです。 (1)住宅供給の促進や居住の促進、空き家の発生の抑制といった政策目的の達成 (2)現在及び将来の社会的費用の低減を図り、その経費に係る財源を確保すること 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 京都市の見解では、空き家や別荘、セカンドハウスなどの「非居住住宅(※)」の存在が、京都市への移住希望者や住宅供給を妨げ、防災や防犯、生活環境に関する問題の発生や地域コミュニティの活力低下の原因の1つにもなっているとされています。 ※その所在地に住所(住民票の有無にかかわらず、居住実態の有無によって生活の本拠が判断される。)を有する者がない住宅のこと。 空き家の所有者に課税することによって、非居住住宅の有効活用を促す狙いがあります。また、空き家税の税収により、住宅供給の促進や安全な生活環境の確保といった施策にかかる費用の低減を図る方針です。 空き家税の制度概要 ここでは、京都市の空き家税の制度概要を確認していきましょう。 納税義務者 空き家税は、京都市内の市街化区域内に所在する非居住住宅が課税対象です。 非居住住宅の所有者が納税義務者となり、「家屋価値割額」および「立地床面積割額」の合算額を負担します(詳細は後述)。 課税免除 次の非居住住宅については、空き家税が免除されます。 ①事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもの ②賃貸又は売却を予定しているもの※(事業用を除く) ③固定資産税において非課税又は課税免除とされているもの ④景観重要建造物その他歴史的な価値を有する建築物として別に定めるもの等 ※ただし、1年を経過しても契約に至らなかったものは除く。 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 課税額と税率 空き家税は「①家屋価値割」と「②立地床面積割」の2つがあります。それぞれの税額を計算し、足し合わせたものが空き家税の課税額となります。計算方法は以下のとおりです。 出典)京都新聞「京都市検討の別荘税「空き家」も幅広く対象に 課税額は物件価値で3段階か」 なお、②立地床面積割の税率は、固定資産評価額(土地)によって以下のとおり変動します。 固定資産評価額(土地)税率 立地床面積割700万円未満0.15% 700万円以上900万円未満0.30% 900万円以上0.60% 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 ただし、家屋価値割の課税標準が20万円(条例施行後の当初5年間は100万円)に満たない非居住住宅は免税となり、課税されません。 空き家税の賦課期日(課税の基準日)は毎年1月1日です。徴収方法は「普通徴収」で、京都市から送付される納税通知書で税額を納めます。 空き家税の対策 京都市に空き家を所有している場合、何もしなければ将来は税負担が増えてしまいます。ここでは、空き家税への対策を2つ紹介します。 売却する 1つ目は、所有している空き家を売却することです。売却して空き家を手放せば納税義務者ではなくなるので、空き家税を課税されることはありません。 また、実際に売却されていなくても、売却を予定している非居住住宅は課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。将来住む予定がない空き家を放置している場合は、少しでも早く売却活動を始めるといいでしょう。 賃貸に出す もう1つは、所有している空き家を賃貸に出すことです。非居住住宅であっても、賃貸を予定しているものは課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。入居者が見つかれば、家賃収入を得られるのもメリットです。 ただし、賃貸に出すには、空き家を入居希望者に貸し出せる状態にする必要があります。物件の状態によっては、リフォームの必要があるかもしれません。 また、賃貸借契約や家賃の回収といった管理業務が発生し、入居者がいないと家賃が入ってこない「空室リスク」もあります。立地や間取り、築年数などから、賃貸に適しているかを見極める必要があるでしょう。 関連記事はこちら不動産投資の8つのリスクとその対策 まとめ 京都市が創設する空き家税がうまく機能すれば、今後は他の自治体でも導入されるかもしれません。利用していない空き家を所有している場合は、売却や不動産活用を検討しておいた方がいいかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 空き家を相続したらどうするべき?対処方法や税制特例について解説 相続で取得した実家に住む予定がない場合、何もしなければ空き家になってしまいます。空き家の状態で放置することには、さまざまなリスクが存在します。 そのため、空き家を相続する予定があるなら、どの...記事を読む

    2023.04.12制度
  • 建て替えとリフォームはどちらがいい?メリット・デメリット、判断する基準を解説

    建て替えとリフォームはどちらがいい?判断する基準を解説

    築年数の経過やライフスタイルの変化などに応じて、住宅の建て替えやリフォームを検討することがあるでしょう。 建て替えとリフォームの特徴を知っておけば、どちらが自分に合っているか判断しやすくなります。この記事では、建て替えとリフォームのどちらがいいか迷っている方に向けて、双方のメリットやデメリット、どちらが向いているかを判断する基準の例を解説します。 建て替えのメリット・デメリット まずは、建て替えのメリットとデメリットについて解説します。 建て替えのメリット 建て替えの主なメリットは以下の2点です。 ①建物の構造や間取りを最初から見直せる 建て替えの場合、工事内容が既存住宅の構造や間取りに左右されることがありません。希望に沿った建物の構造や間取り、仕上がりなどを一から見直すことができます。 ②耐震性をより高めることができる 建築基準法と住宅瑕疵担保履行法により、建て替えの際には必ず地盤調査が行われます。耐震性を高めたい場合、地盤調査のうえで耐震改修工事ができる点は大きなメリットです。また、必要に応じた地盤改良も可能です。 出典)一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「かし保険全般に関するご質問(地盤編)」 建て替えのデメリット 建て替えの主なデメリットは以下の2点です。 ①時間と手間がかかる 既存建物の解体と建築を行うため、完成までにまとまった期間が必要になります。加えて工事の間は仮住まいで過ごす必要があるため、仮住まいや引っ越しなどの手間もかかります。 ②費用が高い 建て替えには、建築費用以外に既存建物の解体費用や仮住まいの費用、引っ越し費用などが必要です。なお、経済産業省の「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、建て替え費用の平均額は3,299万円という結果が出ています。あくまで平均値ですが、一つの目安にはなるでしょう。 出典)国土交通省 住宅局「令和3年度 住宅市場動向調査報告書」 リフォームのメリット・デメリット 続いて、リフォームのメリットとデメリットについて解説します。 リフォームのメリット リフォームの主なメリットは以下の2点です。 ①時間や手間、費用を抑えられる 必要な部位のみリフォームを行えるため、建て替えと比べると工事の期間が短くなります。また、設備の交換などの小規模なリフォームであれば、住み続けたまま工事ができるので、仮住まいが必ずしも必要なわけではありません。 ②愛着のある家に住み続けられる 今住んでいる家に愛着がある場合、建物の原型を大きく変えられないことはメリットにもなります。人によっては壁や柱の傷や汚れも想い出になっているかもしれません。そのような部位は残しつつ、必要な修繕のみ行うことも可能です。 リフォームのデメリット リフォームの主なデメリットは以下の2点です。   ①住宅性能や耐震性の向上には限界がある 部分的なリフォームをする場合、住宅を支える柱や梁を変更、補強しない限りは住宅性能を上げるには限界があります。また、地盤が悪い場合には地盤改良が必要ですが、建築されている状況だと工事が不可能です。 ②希望どおりの間取りになるとは限らない リフォームの場合、建て替えのように自由に構造や間取りを変更することは困難です。工事内容が既存住宅の構造や間取りによって制限されてしまうため、自身の希望する工事ができない場合もあります。自身の希望どおりの工事が可能かどうか、リフォーム業者にしっかりと確認しておくことが大切です。 建て替えかリフォームかを判断するポイント 建て替えとリフォームのメリットとデメリットを把握したうえで、自身の状況に合う方を選択することが大切です。一つの参考として、建て替えが向いている場合とリフォームが向いている場合を、それぞれご紹介します。 建て替えが向いている場合 建て替えが向いている例として、下記の場合が挙げられます。 家の構造や間取りを大きく変更したい 耐震性に不安があり、地盤から見直したい 子供や孫世代に家を引き継ぎたい リフォーム費用が同程度かかる 基本的には大規模な工事を行いたい場合には、建て替えが向いているといえます。その分費用は大きくなるので、自己資金や住宅ローンの条件なども踏まえて検討することが大切です。 リフォームが向いている場合 リフォームが向いている例として、以下の場合が挙げられます。 家全体の状態は良く、一部の工事で済む 家の構造や間取りを大きく変える必要がない 子供や孫世代に家を引き継ぐ予定がない 費用や手間をできるだけ抑えたい 小規模な工事で済む場合、もしくは済ませたい場合にはリフォームが向いているといえます。また、費用面を比較する際には、リフォームの補助金も含めて検討することが大切です。 関連記事はこちら【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 選ぶときの注意点 ここで紹介した建て替えが向いている場合とリフォームが向いている場合は、あくまで一例にすぎません。もしどちらかに当てはまったとしても、実際に両方の見積もりを行うなどして、しっかりと比較することが大切です。 また、建て替えとリフォームのどちらかを選択する上で、自宅の状態を適切に把握することも大切です。ご自身で判断するのが不安な場合は、専門家に建物状況調査を依頼するのも一つの手段として有効です。 関連記事はこちら建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説 まとめ 建て替えとリフォームでは、それぞれメリットとデメリットがあるため、十分に比較をしてからどちらが合っているかを決める必要があります。費用面だけでなく、家族構成やライフスタイルの変化を踏まえた中長期的な視点で考えていくことが重要です。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後は家の建て替えが必要?資金はどうやって準備する? 子どもが独立したり、定年が近づいてきたりすると、老後の住まいについて考える機会が増えるのではないでしょうか。戸建てに住んでいる場合は、住み替えやリフォームだけでなく、建て替えも検討するかもし...記事を読む

  • 地目変更はどんなときに必要?検討すべきケースや手続き方法、費用について解説

    地目変更を検討すべきケースとは?手続きの方法と費用も解説

    土地は、その用途によって地目が定められています。保有している土地の使用方法が変わった場合は、地目変更の手続きが必要です。地目変更はどんなときに求められるのでしょうか。また、自分で行うことは可能なのでしょうか。 この記事では、地目変更の概要や検討すべきケース、手続き方法などを解説します。 地目変更とは 地目とは、土地の用途による分類のことです。地目変更は、土地の用途に変更があったときに登記上の地目を変更することを意味します。 地目:土地の用途による分類であって、第三十四条第二項の法務省令で定めるものをいう。(不動産登記法 第2条18) 出典)e-Gov法令検索(不動産登記法) 地目の種類 不動産登記事務取扱手続準則第68条において、地目は23種類に区分されています。主な地目とその用途は以下のとおりです。 地目 用途 田農耕地で用水を利用して耕作する土地 畑農耕地で用水を利用しないで工作する土地 宅地建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地 学校用地校舎、附属施設の敷地及び運動場 山林耕作の方法によらないで竹木の生育する土地 水道用地専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地 公衆用道路一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない。) 公園公衆の遊楽のために供する土地 雑種地他の22地目のいずれにも該当しない土地 出典)法務省「不動産登記事務取扱手続準則 第68条」 なお、地目には「登記地目」と「課税地目」があります。 登記地目は、上述した不動産登記法で定められている地目のことで、登記簿で確認することができます。土地の利用状況が変化しても、申請を行わないと登記地目は変更されません。 一方、課税地目は、固定資産税の算出根拠となる地目のことで、毎年送られてくる固定資産税納税通知書や、市役所等で取得できる固定資産評価証明書で確認することができます。市区町村や税務署が現地調査によって判定しており、現況に変化があれば自動的に変更されるため、登記地目と課税地目が異なる場合もあります。 地目変更を検討すべきケース 地目変更を検討すべきケースは以下のとおりです。 土地の利用目的を変更したとき 所有している土地の利用目的を変更する場合は、地目変更が必要です。例えば、田や畑として使っていた土地を宅地に造成して家を建てるようなケースが該当します。 土地を担保に融資を受けたいとき 土地を担保に融資を受けるときは、地目と土地の使用目的が一致していることが条件となる場合があります。不一致の場合は融資を受けられない恐れがあるため、地目変更をしておくと安心です。 土地を売却したいとき 地目と土地の使用目的が異なる場合、売却前に地目変更をしておく必要があります。 田・畑などの農地は買い手が農家に限られるため、思うように売却できないかもしれません。場所や周辺環境にもよりますが、宅地に造成し、地目変更してから売りに出すほうが買い手を見つけやすいでしょう。 地目変更登記に関する注意点 地目変更の登記手続きを行う場合は、以下の点に注意が必要です。 期限までに変更しないと罰則がある 土地の用途に変更があった場合、その変更があった日から1ヵ月以内に地目変更登記の申請を行わなくてはなりません。申請を怠ると10万円以下の過料が科されるので、忘れずに手続きを行いましょう。 地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。(不動産登記法 第37条) 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。(不動産登記法 第164条) 出典)e-Gov法令検索(不動産登記法) 関連記事はこちら住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 固定資産税は地目ではなく現況で判断される 上述のとおり、地目には「登記地目」と「課税地目」があり、固定資産税の計算上は土地の現況(課税地目)で判断されます。例えば、登記地目が「畑」である土地を宅地として使用していれば、宅地とみなして課税されます。 農地と宅地の固定資産税額(本則)は、どちらも「課税標準額×1.4%」で変わりません。しかし、課税標準額は宅地のほうが大きくなることが多いため、結果として宅地は税額が高い傾向にあります。 地目変更の手続き方法 地目変更は、内容を正しく理解できれば自分で手続きを行うことも可能です。手続きの流れは以下のとおりです。 土地の登記地目を調べる 土地の現況を確認する 地目変更登記の申請を行う まずは、手元にある登記識別情報などで土地の登記地目を調べましょう。土地の現況を確認し、地目と現況が違っている場合は地目変更登記の申請を行います。申請から登記完了までは、1~2週間程度かかるのが一般的です。 地目変更登記の必要書類 地目変更登記の主な必要書類は以下のとおりです。 土地地目変更登記申請書 登記事項証明書 農地転用許可書(農地を変更する場合) 土地地目変更登記申請書を法務局の窓口またはホームページで入手し、必要事項を記入して法務局に提出します。登記記録の内容を記入するため、土地の登記事項証明書も取得しておきましょう。 なお、田や畑などの農地を農地以外の地目に変更する場合は、都道府県知事の許可書も添付する必要があります。 地目変更登記にかかる費用 地目変更登記に登録免許税はかかりませんが、登記事項証明書を取得する際に、1通につき480円~600円の発行手数料がかかります。また、他の書類が必要な場合は、その発行費用がかかる場合があります。 地目変更登記を土地家屋調査士などに依頼する場合は、別途報酬を支払う必要があります。依頼先によって異なりますが、土地1筆(1個)につき5万円程度が相場となっています。 まとめ 保有している土地の用途に変更があった場合は、地目変更登記が必要です。申請を怠ると過料を科される可能性があり、売却などに支障が出る恐れもあります。地目変更を自分で行うのが難しい場合は、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 「用途」からみた土地の種類 不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地...記事を読む

    2023.03.29用語