住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • 貸付自粛制度とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    貸付自粛制度とは?メリット・デメリット、手続き方法を解説

    貸付自粛制度とは、「借金をやめたいのにやめられない」という悩みを抱えている方に向けた支援制度です。本制度を利用することによって、さらに借金が増えるのを防止できる可能性があります。 この記事では、貸付自粛制度の仕組みやメリット・デメリット、手続き方法について解説します。 貸付自粛制度とは 貸付自粛制度とは、「日本貸金業協会」または「全国銀行個人信用情報センター」のどちらかへ申告をすると、金融機関からの借り入れを5年間制限できる制度です。 浪費癖やギャンブル依存などにより、本人や家族の生活に支障が生じる借金を行わないようにサポートすることを目的としています。 自らを「自粛対象者」として登録することで、今後借り入れの申込みをしても金融機関はこれに応じなくなるため、借金に対する抑止力が期待できます。 利用できる人の範囲 貸付自粛制度の利用を申告できるのは、原則として本人のみです。たとえ家族であっても、本人に無断で登録することはできません。ただし、法定代理人や、一定の要件を満たす家族は申告可能です。 貸付自粛制度のメリット 貸付自粛制度のメリットは以下のとおりです。 お金の借り過ぎや多重債務の防止になる 自粛対象者として登録すると、その後本人が借り入れの申込みをしたとしても、金融機関はこれに応じなくなります。そのため、「借金をやめたいが、どうしてもやめられない」といった悩みを抱えている人にとっては、借り過ぎを防ぐ効果が期待できます。 無料で利用できる 貸付自粛制度は登録手数料がかからず、無料で利用できます。費用の心配をせずに登録できるので安心です。ただし、郵送で申告する場合は、申告書控えを送るための返信用切手を自己負担で用意する必要があります。 貸付自粛制度のデメリット 一方で、貸付自粛制度には以下のようなデメリットもあります。 家族の借金をやめさせるのは難しい 貸付自粛制度は、原則として本人が申告を行います。家族が手続きできるのは、本人が所在不明であることが条件です。本人に借金をやめる気持ちがない場合、家族が本制度を利用して借金をやめさせるのは難しいでしょう。 3ヵ月経過すると撤回できてしまう 貸付自粛制度は、登録を依頼した日から3ヵ月経過すると自分で撤回できてしまいます。「借金をしない」という強い意志がないと、登録を撤回して再び借金をしてしまう恐れがあります。 違法な金融業者からであれば借り入れができてしまう 貸付自粛制度は、「日本信用情報機構」「シー・アイ・シー」「全国銀行個人信用情報センター」に加盟している会員(貸金業者・銀行)が対象です。本制度に登録をしても、前述3つのいずれにも加盟していない違法な金融業者からであれば借り入れができてしまいます。 違法な金融業者から借り入れてしまうと、違法な高金利の請求や悪質な取り立てなどの被害にあうリスクが高まるので、絶対に利用しないようにしましょう。 出典)金融庁「違法な金融業者にご注意!」 貸付自粛制度の手続き方法 貸付自粛制度を利用する場合は、日本貸金業協会または全国銀行個人信用情報センターのどちらかへ申告します。全国銀行個人信用情報センターで申告する際の手続きの流れは以下のとおりです。 申告に必要な書類を準備  ・貸付自粛申告書  ・貸付自粛申告確認書(申告理由がギャンブル等による場合)  ・本人確認書類(2点)の写し  ・返信用切手(404円分) 全国銀行個人信用情報センターに郵送 本人確認の連絡(電話) 登録完了(申告書の控えが郵送される) ※日本貸金業協会はWeb申告が可能 ギャンブル等依存症対策のため、申告理由がギャンブル等による場合は「貸付自粛確認書」も作成して同封する必要があります。 また、申告書を送付した後は電話で本人確認が行われます。本人確認ができないと申告書が受理されないので、連絡が来たら必ず対応しましょう。 出典) ・日本貸金業協会「貸付自粛申告」 ・全国銀行協会「貸付自粛制度のご案内」 貸付自粛制度以外の解決策 貸付自粛制度は借り過ぎ防止が期待できる一方で、「申告できるのは原則本人のみ」「3ヵ月経過すると撤回できてしまう」などのデメリットもあります。自身もしくは家族の借金を何とかしたいと思っても、「貸付自粛制度では解決できない」という人もいるでしょう。 ここでは、貸付自粛制度以外の解決策として、自身や家族の借金に関する相談先を3つ紹介します。 依存症対策全国センター 全国の依存症専門相談窓口や依存症専門医療機関を探し、相談できます。借金の原因がギャンブル等依存症の場合、専門家に相談することで改善・解決が期待できるかもしれません。 >詳細はこちら 金融庁 多重債務相談窓口 金融庁が多重債務に関する相談窓口をまとめています。信頼できる相談窓口の中から、自身に合った相談先が見つかるかもしれません。 >詳細はこちら 消費者ホットライン 消費者ホットラインでも借金についての相談が可能です。特に金銭や商品、サービスなどで業者とトラブルになっている場合は消費者ホットラインに相談しましょう。 >詳細はこちら まとめ 借金で自身や家族の生活に支障が生じている場合は、貸付自粛制度によって借り過ぎの防止が期待できます。「借金をやめたくてもやめられない」と悩んでいるなら、貸付自粛制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 住宅ローンが払えないときはどうすればいい?FPが解説 コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...記事を読む

  • 【2023年版】リフォーム減税はどのような工事が対象?申請の流れ・注意点

    【令和5年版】リフォーム減税の対象工事・申請の流れ・注意点

    自宅のリフォームを行う際、内容によってリフォームの減税制度の対象となる場合があります。リフォームの減税制度にはいくつかの種類があるので、仕組みや条件、それぞれの特徴を正しく理解することが大切です。 この記事では、2022年度の税制改正の内容を踏まえて、現行のリフォームの減税制度の内容について解説します。また、利用するために必要な手続きも併せて見ていきましょう。 リフォームの減税制度とは リフォームの減税制度では、一定の要件を満たすリフォームを行った場合に減税を受けられます。リフォームの減税制度は全部で5種類あり、各減税制度によって対象となるリフォームの内容が異なります。各リフォームの減税制度と、対象となるリフォームの内容は以下のとおりです。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)目次/概要」 前半部分では各リフォームの減税制度について、後半部分では対象となるリフォームの具体的な工事内容について解説します。 1.所得税の控除 所得税を対象としたリフォームの減税制度は、リフォーム促進税制と住宅ローン減税の2種類があります。2つの制度を併用することはできないため、自身の状況を踏まえてどちらかを選択する必要があります。まずはそれぞれの特徴や注意点について解説します。 リフォーム促進税制 リフォーム促進税制とは、特定の性能向上リフォームを行った場合に利用できる減税制度です。後程説明する住宅ローン減税とは異なり、リフォームローンの有無にかかわらず利用できます。このリフォーム促進税制は、リフォーム費用を大きく3つに分類し、控除額を計算します。 図中Ⓐは「10%控除の対象となる費用」です。図中Ⓐの限度額(以下10%控除限度額という)は、対象となる工事の内容ごとに定められています。なお、上記①~⑤に複数該当するリフォームを行う場合、該当した分だけ10%控除限度額が大きくなります。ただし、⑤長期優良住宅リフォームは①耐震リフォームや③省エネリフォームと併用することができないので注意が必要です。リフォームの内容のごとの限度額は以下のとおりです。 リフォームの内容 10%控除限度額 ①耐震リフォーム250万円 ②バリアフリーリフォーム200万円 ③省エネリフォーム250万円※ ④三世代同居対応リフォーム250万円 ⑤長期優良住宅リフォーム250万円※ ※太陽光パネル設置の場合350万円 図中Ⓑは「5%控除の対象となる費用」です。図中Ⓑの限度額は、1,000万円-Ⓐで計算できます。内訳としては、10%控除限度額を超過してしまった費用と、①~⑤に該当しないリフォームにかかる費用の2種類です。 図中Ⓒは「控除の対象とならない費用」です。リフォーム費用総額のうち、1,000万円を超えた部分については控除の対象となりません。なお、図中Ⓐ+Ⓑが1,000万円を超えない場合、Ⓒの費用が発生することはありません。 リフォーム費用をⒶ、Ⓑ、Ⓒの3つに分類したうえで、Ⓐ×10%+Ⓑ×5%が控除額となります。 注意点として、計算に用いられるリフォーム費用は、国土交通大臣が工事内容ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」を用いて計算した金額であることが挙げられます。実際にかかった費用ではないので、あらかじめ金額を確認しておくことが重要です。 出典)国土交通省ホームページ 住宅ローン減税 住宅ローン減税は、住宅の購入にあたって住宅ローンを組む場合に利用できる制度ですが、リフォームローンを組む場合でも利用できます。利用条件は以下のとおりです。 ①償還期間が10年以上であること ②リフォーム費用合計額(補助金を控除した金額)が100万円を超えていること ③対象となる第1号~第6号工事のいずれかに該当する工事であり、建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人の証明を得ること ④その他リフォームを行う住宅等の条件を満たすこと 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅵ.住宅ローン減税編」 住宅ローン減税は、10年間にわたって毎年の「年末ローン残高の0.7%」が所得税から控除されます。リフォーム費用分にあたる年末ローン残高(上限2,000万円)×0.7%の控除が受けられるので、1年あたりの最大控除額は14万円までとなります。 2.固定資産税の減額 固定資産税を対象としたリフォーム減税は、対象となるリフォーム工事をした翌年度の固定資産税額のうち、一定割合を控除する仕組みです。具体的な減額割合はリフォームの内容によって以下のように異なります。 リフォームの内容 減額割合 家屋面積の上限 ①耐震リフォーム1/2120㎡相当分まで ②バリアフリーリフォーム1/3100㎡相当分まで ③省エネリフォーム1/3120㎡相当分まで ④三世代同居対応リフォーム減額なし- ⑤長期優良住宅リフォーム2/3120㎡相当分まで 上記のように、リフォームの内容によって家屋面積に上限がある点に注意しておきましょう。併用は基本的にできませんが、バリアフリー+省エネリフォームの場合のみ併用が可能です。 3.贈与税の非課税措置 親などから資金援助を受けてリフォームする場合、条件によっては贈与税の非課税措置が利用可能です。贈与税には基礎控除が設けられており、そもそも贈与資金が年間110万円までであれば、どのような用途であっても原則非課税となります。 そのうえで、親や祖父母などからリフォーム資金の贈与を受ける場合は、一定の条件を満たすことで最大1,000万円までが非課税となります。条件には面積や最低工事費用、贈与を受ける人の年齢といったさまざまなものがありますが、一般的なリフォームであれば、自然と満たしているものが多いのも特徴です。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅶ.贈与税の非課税措置編」 4.登録免許税の特例措置 個人が対象となるリフォームが行われた住宅を購入した場合、所有権移転登記に係る登録免許税の特例措置の対象となります。通常は課税標準額×2%の登録免許税がかかるところが、0.1%まで軽減されます。特例を受けるためには、申請書類を法務局に提出する必要があります。リフォームが行われた住宅を購入する場合には、売り主や仲介会社に書類について確認してみましょう。 なお、中古住宅を購入した後にリフォームを行う場合は対象外となります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅷ.登録免許税の特例措置編」 5.不動産取得税の特例措置 宅地建物取引業者が中古住宅を購入する場合、対象のリフォームを行ったうえで個人に譲渡することを条件に、不動産取得税の控除を受けることができます。また、個人が新耐震基準を満たしていない中古住宅を購入し、購入後に耐震リフォームを行う場合も、不動産取得税の控除を受けることができます。 どちらの場合も、購入する中古住宅の新築日の日付に応じて控除額が決定します。新築日が前であるほど控除額は小さくなります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅸ.不動産取得税の特例措置編」 リフォームの減税制度が適用される工事の種類 リフォームの減税制度を利用するためには、適用される工事であるかどうかを事前に確認することが大切です。ここでは、適用対象となる工事の種類を具体的に見ていきましょう。 耐震リフォーム 耐震リフォームとは、住宅の耐震化に関するリフォーム工事のことを指します。主に古い耐震基準で建てられた建物について、現行の耐震基準に適合するように行われる補強・改修を行う工事のことです。 バリアフリーリフォーム バリアフリーリフォームとは、高齢者や障がい者が安全かつ快適に生活するために必要なリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「通路等の拡幅」「階段の勾配の緩和」「浴室改良」「段差の解消」などの工事が対象となります。 要介護もしくは要支援の認定を受けている人や、高齢者・障がい者が居住していることなどが、リフォームの減税制度の適用条件となっています。 省エネリフォーム 省エネリフォームとは、住宅の省エネ性能を上げるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「窓や壁などの断熱工事」「高効率空調機の設置工事」「太陽光発電設備の設置工事」などが該当します。注意点として、リフォーム減税の適用には窓の断熱工事が基本的に必須とされていることが挙げられます。 同居対応リフォーム 同居対応リフォームとは、親と子・孫の三世代が同居をするためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「キッチン」「浴室」「トイレ」「玄関」のいずれかの増設工事を指し、このうち2つ以上の設備が複数ある場合、リフォームの減税制度の対象となります。 ただし、あくまでも「同居」が条件であるため、離れなどに増設した場合は対象とならない点に注意が必要です。 長期優良住宅化リフォーム 長期優良住宅化リフォームとは、シロアリ対策や耐震補強といった住宅の耐久性を高めるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「外壁を通気構造等とする工事」「浴室または脱衣室の防水性を高める工事」「シロアリ対策」「断熱リフォーム」など11種の工事が対象であり、長期優良住宅の認定を取得することでリフォームの減税制度が利用できます。 主なリフォーム費用の相場や活用できる補助金については、以下の記事で詳しく解説されているので、参考にしてみてください。 関連記事はこちらリフォーム費用の相場と安く抑えるコツ リフォームの減税制度の申請方法 リフォームの減税制度を利用するためには、工事を行ったあとに自分で申請手続きを行う必要があります。ここでは、申請のタイミングと必要書類について解説します。 工事を行った翌年に確定申告を行う リフォームの減税制度を利用する場合、確定申告を行う必要があります。リフォーム工事の完了日、あるいは工事契約書に記された日付を基準日とし、その翌年の2月中旬~3月中旬にかけて申告しなければなりません。 なお、会社員などの給与所得者であっても、制度を利用するためには自分で確定申告を行う必要があります。ただし、翌年以降は勤務先の年末調整で手続きを済ませられるため、負担が大幅に軽減されます。 ただし、利用するリフォームの減税制度によっては、確定申告以外にも手続きが必要な場合もあります。 例えば、固定資産税のリフォームの減税制度を利用する場合は、工事が完了してから3ヶ月以内にお住まいの都道府県・市区町村に申請する必要があります。 必要書類は工事内容によって異なる リフォームの減税制度を利用するには、リフォーム工事が適用条件を満たしているかを証明するための書類を提出する必要があります。必要書類は利用する制度や工事内容によっても異なりますが、以下のようなものが挙げられます。 確定申告書 登記事項証明書 増改築等工事証明書等 工事請負契約書 住宅ローン残高証明書 住宅耐震改修証明書(耐震リフォームの場合) 介護保険の被保険者証の写し(バリアフリーリフォームの場合) 必要書類のなかには、工事を担当した施工会社に用意してもらう必要がある場合もあります。そのため、国税庁のホームページなどで確認しておくとともに、施工会社にも必要な手続き・書類について相談しておくと安心です。 まとめ リフォームの減税制度にはさまざまなものがあります。各制度の利用条件を確認し、どのリフォームの減税制度を利用できるかを確認することが大切です。 また、リフォームの減税制度を利用するためには、必要書類を整えたうえで確定申告による手続きを行う必要があります。利用条件だけでなく、必要な手続きについても忘れずに調べておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじ...記事を読む

  • リフォームとリノベーションの違いとは?費用の目安も解説

    リフォームとリノベーションの違いとは?費用の目安も解説

    建物の改装を検討するときには、リフォームとリノベーションのどちらが適しているのかを見極めることが大切です。この記事では、リフォームとリノベーションの基本的な違いについて解説します。 また、施工内容ごとにかかる費用の目安を詳しく見ていきましょう。 リフォームとリノベーションの違い リフォームとリノベーションはどちらも住宅の改築や改修の際に用いられる用語ですが、それぞれに明確な定義はありません。ここでは一般的に用いられる用語の解説をします。 目的の違い 「リフォーム(reform)」は、住宅改修を指す際に用いられる和製英語です。一般的には、「原状回復のための修繕営繕不具合箇所への部分的な対処すること」とされています。経年劣化による設備の損傷を補修したり、古くなった水回り設備を交換したりして、新築に近い状態まで戻すのがリフォームの目的です。 一方、「リノベーション(renovation)」は、一般社団法人リノベーション協議会によると、「中古住宅に対して、機能・価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修を行うこと」とされています。壁を取り払って広い部屋を確保したり、配管を変更してキッチンを移動したりと、住まいの価値を高めたり、自分好みの住環境を実現したりするのがリノベーションの目的です。 出典)一般社団法人リノベーション協議会「リノベーションとは」 工事規模の違い 工事が大規模である際に用いられるのは、リフォームではなくリノベーションである場合が多いです。 リフォームはあくまで新築に近い状態に戻す目的のため、クロスの貼り替えや設備の交換、外壁の塗り替えなど部分的な施工が中心となります。工事の範囲が一部だけであれば、居住しながら作業してもらえる場合もあります。 一方、リノベーションは住まいの価値を高めたり、自分好みの住環境を実現したりする目的のため、間取りの変更や配管の改修などを伴います。そのため、リフォームと比較すると大がかりな施工が中心と言えます。 リフォーム・リノベーションの費用相場 リフォームにしろリノベーションにしろ、施工内容によって費用が大きく変わります。ここでは、国土交通省の『事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会における資料』を参考にしながら、主な施工内容について価格の目安を見ていきましょう。 出典)国土交通省『事業者団体を通じた適正な住宅リフォーム事業の推進に関する検討会第1回配布資料「部位別リフォーム費用一覧」』 設備・内装 設備や内装の施工については、それぞれ以下の金額が目安となります。 水回り 施工範囲 施工内容 目安費用 バス・洗面所バスタブの交換14~20万円 洗面台の交換20~50万円 システムバスの交換※戸建60~150万円 システムバスの交換※マンション50~100万円 洗面所の改装20~100万円 トイレ温水洗浄便座の設置8~16万円 トイレ全体の改装20~100万円 タンクレストイレへの交換30~50万円 キッチンIHコンロへの交換18~80万円 システムキッチン(I型)の交換40~80万円 システムキッチン(壁付→対面型)の交換75~200万円 キッチン全体のリフォーム80~400万円 アイランドキッチンへの改修300~450万円 水回りの改装については、新たに導入する設備の質によっても価格が大きく変動します。 内装 施工範囲 施工内容 目安費用 床畳の交換6~12万円 畳からフローリングに交換15~60万円 段差の解消8~20万円 床暖房の設置50~150万円 壁クロスの交換6~30万円 珪藻土のクロスに交換18~30万円 間取り2室を1室にまとめる50~80万円 和室から洋室への改修50~200万円 リビングの改修200~400万円 廊下の改修20~100万円 内装については、施工範囲に応じて価格の違いが生まれます。一室丸ごとの施工であれば、100万円を超える場合もあるため、予算に応じた慎重な計画を立てることが大切です。 外装・増築 続いて、外装・増築に関する施工費用の目安を見ていきましょう。(※戸建の目安) 施工範囲 施工内容 目安費用 屋根スレート屋根の塗り替え20~80万円 金属屋根の重ね葺き90~250万円 瓦屋根の交換70~120万円 外壁外壁材の重ね塗り50~150万円 サイディングの上貼り80~200万円 基礎耐震補強(金物の使用)20~60万円 耐震補強(基礎からの工事)100~200万円 増築増築300~2,000万円 減築800~2,600万円 二世帯住宅化800~2,500万円 その他雨どいの交換5~40万円 シロアリ防止処理15~30万円 増築や二世帯住宅化は、大規模なものになると、建て替えや新築の建築費とも変わらないほど高額なコストがかかる場合もあります。費用にそれほど差がないようであれば、リフォームを依頼する会社に、建て替えとどちらが適しているか相談してみることが大切です。 外構・その他 最後に、外構やその他の部分に関する費用の目安もご紹介します。 施工内容 目安費用 ウッドデッキの新設10~80万円 太陽光発電システムの導入200~300万円 オール電化への移行100~200万円 高効率給湯システムの設置55~100万円 太陽光発電や高効率給湯システムなど、エコに関するリフォームには一定の条件を満たすことで補助金を活用できる場合もあります。新たに設備を導入する際には大きな費用がかかるので、補助金やローンを活用しながら予算計画を立てましょう。 まとめ 一般的には、リフォームは古くなった状態を改修し、新築に近い状態まで回復させる施工を指します。一方、リノベーションは単なる改修だけでなく、間取りの変更などによって新たな付加価値を求める施工とされています。 実際に改修を依頼する際には、希望の施工内容によって費用が変わるため、部位別に目安金額を把握しておくと安心です。予算の範囲内で快適な住環境を整えられるように、計画を立てましょう。 >ご相談はこちら お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...記事を読む

  • 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリット、普通建物賃貸借契約との違い、手続き方法を分かりやすく解説

    終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

    終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借契約の概要やメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。 終身建物賃貸借契約とは? 終身建物賃貸借契約とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。 賃借人は生涯同じ家で安心して生活でき、一代限りの契約であるため、死亡時に相続は発生しません。基本的に入居できるのは60歳以上に限られます。ただし、60歳以上の配偶者との同居であれば、60歳未満でも入居ができます。 なお、終身建物賃貸借契約をするには、対象となる不動産が都道府県知事の認可を受けている必要があります。また、賃貸住宅が一定の基準に適合していることも要件です。 出典)東京都住宅政策本部「終身建物賃貸借制度」 終身建物賃貸借契約のメリット 終身建物賃貸借契約のメリットは以下のとおりです。 死亡するまで住み続けられる 終身建物賃貸借契約は契約期間が終身であるため、賃借人が死亡するまで同じ家に住み続けられ、賃貸人からの解約は、原則以下のとおりです。 老朽や損傷などにより、住宅を維持できない場合 入居者が長期にわたり居住しておらず、住宅の管理が困難な場合 入居者に不正行為や公序良俗に反する行為、事実が判明した場合 中途解約は基本的に都道府県知事の承認が必要です。それに加え、6か月前に入居者に対して解約の申入れを行わなければならず、急に賃貸人から退去を求められることが少ない点も安心です。 なお、老人ホームへの入所や親族との同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申入れを行うことで、賃借人からの解約が可能です。 契約終了後の手続きが簡単 終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡によって契約が終了します。相続が発生せず、契約終了の手続きが不要のため、相続人に迷惑をかけずに済みます。同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。 バリアフリーの要件を満たしている 終身建物賃貸借契約の対象不動産は、一定のバリアフリー基準を満たしています。「段差のない床」「浴室等の手すり」などが備わっており、高齢者にとっては住みやすいでしょう。 高齢者でも家を借りられる 一般的な賃貸住宅では、健康面や金銭面の不安から高齢者の入居を敬遠するケースもあります。それに対し、終身建物賃貸借契約は、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度であるため、高齢を理由に入居を断られる心配がありません。 更新料がかからない 普通建物賃貸借契約では契約期間が定められており、契約更新の際に家賃1ヵ月分の更新料がかかるのが一般的です。一方、終身建物賃貸借契約は契約期間が終身のため、更新料はかかりません。同じ家に長く住む場合は、住居費の負担軽減が期待できます。 終身建物賃貸借契約のデメリット 終身建物賃貸借契約には、以下のようなデメリットもあります。 事前に認可されている不動産でないと利用できない 終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。認可されている不動産はまだ少ないので、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。 同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できない 終身建物賃貸借契約は、賃借人や同居人に一定の制限があります。賃借人は、基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないので注意が必要です。 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違い 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違いは以下のとおりです。 区分 終身建物賃貸借契約 普通建物賃貸借契約 定期建物賃貸借契約 契約の方法公正証書等の書面による契約に限る書面でも口頭でも可公正証書等の書面による契約に限る 期間または期限賃借人の死亡に至るまで1年以上または期間の定めなし期間の定めなし 契約の更新無し正当事由がない限り更新更新なし、再契約が必要 賃料増減額請求権 増減を請求できる※1 増減を請求できる※2 増減を請求できる※3 相続の有無無し有り有り ※1 賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない ※2 賃料を増額しない特約があるときは増額を請求できない ※3 増減額請求権を排除する特約を定めることが可能 終身建物賃貸借契約は、契約方法が公正証書等に限られ、契約期間が終身で更新や相続がないのが特徴です。 終身建物賃貸借契約の手続き方法 終身建物賃貸借契約は、賃借人側に特別な準備は必要ありません。都道府県ごとに、終身建物賃貸借契約が利用できる住宅一覧が公表されているため、確認して問い合わせてみましょう。入居したい物件が見つかったら、賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結します。 出典)東京都終身認可住宅一覧(令和5年4月1日現在) 賃貸人の手続き 賃貸人が終身建物賃貸借契約をするには、事前に都道府県知事の認可を受ける必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 賃貸住宅の概要や賃貸条件等を記載した「事業認可申請書」を作成する 間取図等の必要な書類を添付する 都道府県知事等の自治体の長に提出する 一定のバリアフリー基準等に適合していることが要件となるため、物件の状況によっては手すりの設置などの対応も必要です。 出典)国土交通省住宅局安心居住推進課「終身建物賃貸借契約の手引き」 まとめ 高齢者は、健康面や金銭面の問題で賃貸住宅の入居を断られるケースが少なくありません。しかし、終身建物賃貸借契約を利用できる不動産であれば、高齢者でも安心して同じ家に住み続けられます。老後も賃貸暮らしを続けたい場合は、終身建物賃貸借契約に対応した物件を探してみてはいかがでしょうか。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後にリースバックを利用すると得られる4つのメリット リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックを利用することで老後の不安を解消し、より快適な生活が送れるように...記事を読む

  • 【2022年度版】リフォームで活用できる補助金の種類や金額の目安、申請時の注意点を解説

    【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安

    住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじめ細かく情報収集することが大切です。 この記事ではリフォーム関連の補助金の種類やそれぞれの仕組み、利用条件などについて詳しく解説します。 補助金を活用できるリフォームの種類 一口にリフォームといっても、その内容は目的によって異なります。そして、どのような種類のリフォームを行うかによって、補助金の支給対象になるかどうかも変わります。 補助金を活用しやすいリフォームの代表的な種類は以下のとおりです。 介護・バリアフリーに関するリフォーム 介護やバリアフリーに関するリフォームでは、特定の施工内容について、介護保険を利用した住宅改修制度などの補助金を活用することができます。たとえば、トイレを和式から洋式に換える、浴室の扉を引き戸にするなど、介護に必要なリフォームは補助金の支給対象となります。 また、「手すりを設置する」、「床の段差を解消する」、「床を滑りにくい素材に変更する」といったバリアフリー化に関する施工も補助金の支給対象です。 省エネ・エコ・断熱に関するリフォーム 省エネやエコに繋がるリフォームでは、持続可能な住環境の推進を目的としたリフォームが補助金の支給対象となります。具体的には、窓や壁などの断熱リフォーム(複層ガラスの導入、内窓の設置など)、高効率給湯器(エコキュートなど)の設置、節水性の高いトイレに交換するといった施工が挙げられます。 また、太陽光発電システムや蓄電池といった「創エネ」に関する設備の導入にも、補助金制度を活用できる場合があります。 耐震診断・耐震改修に関するリフォーム 耐震診断や耐震補強工事といった基本的な安全性に関わるリフォームは、多くの自治体が補助金の支給対象としています。具体的には、専門家による耐震診断の費用や耐震補強・改修工事などが挙げられます。なお、旧耐震基準で建てられた建物(1981年5月31日以前に建築確認を受けた、倒壊リスクが高いとされる建物)であることが、利用条件に含まれる場合もあるため、注意が必要です。 また、自治体によっては、安全面や周囲への被害防止の観点から、倒壊の危険があるブロック塀の撤去や解体工事の費用についても補助金の支給対象としています。 テレワークに関するリフォーム 自治体によっては、「新しい生活様式」の推進に向けたテレワーク関連のリフォーム補助金を取り扱っている場合があります。具体的には、間仕切りの設置によるワークスペースの確保や換気、防音工事、衛生管理対策などが挙げられます。 また、国土交通省が実施している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」においても、テレワークスペースを確保するためのリフォーム工事が補助金の支給対象となる場合があります。ただし、耐震改修工事や断熱改修工事などの性能向上工事と併せてリフォームを行う必要があるので注意が必要です。 その他のリフォーム 自治体によっては、アスベスト除去や景観の改善など、健康被害の予防や環境整備に関するリフォーム補助金が設けられている場合があります。また、豪雪地域の自治体では、屋根の改修などの雪対策に利用できる補助金制度が設けられている場合もあります。 それ以外にもシンプルな増改築や間取り変更、外壁の補修、床暖房の設置にまで利用できる補助金など、地域によって異なる特色があるので、自治体のホームページなどで調べてみると良いでしょう。 リフォームで活用できる補助金の要件や金額の目安 補助金の仕組みは種類によって異なるため、それぞれの特徴を的確に把握しておくことが大切です。ここでは、代表的な5つの補助金制度について、具体的な要件や金額の目安を解説します。 介護保険 介護保険には、要支援、要介護と自治体から認定された方がバリアフリーリフォームを行う際に、工事費用の一部を補助してもらえる制度が設けられています。運営主体は各自治体ですが、全国共通で利用できる補助金制度です。 利用にあたっては、担当のケアマネージャーなどと相談し、理由書を作成してもらう必要があります。また、介護保険の補助金利用は、着工前に申請を行わなければならないため、注意が必要です。 補助金の上限額は20万円であり、工事費用の最大9割までが補助される仕組みです。なお、一回の工事費用が20万円に満たなかった場合、次回に差額分を利用可能です。 出典)厚生労働省「介護保険における住宅改修」 長期優良住宅化リフォーム推進事業 長期優良住宅とは、長期間にわたって快適かつ安全に居住できる施工が行われた住宅のことです。一般住宅から長期優良住宅へのリフォームを行う際に、一定の性能向上を満たしていれば、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金制度を利用できます。 補助金額は工事内容に応じて異なりますが、一戸あたり100~250万円となっています。また、三世代同居対応の設備拡充や、子育てをしやすい住宅への改修なども対象となる場合があります。 この制度を利用するためには、着工前に住宅診断(インスペクション)を行う必要がありますが、申請手続きは居住者本人ではなく施工会社が行います。あらかじめ施工会社に対応してもらえるかどうかを確認しておくと良いでしょう。 出典)国立研究開発法人建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業」 住宅エコリフォーム推進事業 住宅の省エネ化を推進するための事業であり、ZEHレベルの高い省エネ性能へリフォームする場合に活用できる補助金制度です。ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。具体的には省エネ診断、省エネ設計、省エネ改修などが挙げられます。 なお、省エネ診断では「補助率3分の1(民間実施の場合)」、省エネ設計も「補助率3分の1(民間実施の場合)」、省エネ改修では「補助率11.5%(一戸建ての上限は512,700円)」が限度となっています。 出典)住宅エコリフォーム推進事業実施支援室「事業概要」 既存住宅における断熱リフォーム支援事業/次世代省エネ建材実証支援事業 既存住宅における断熱リフォーム支援事業と次世代省エネ建材実証支援事業は公募形式による補助金制度で、高性能な断熱材や「次世代省エネ建材」を使用したリフォームを行うときに適用されます。 「断熱リフォーム支援事業」では、断熱材、断熱用の窓、断熱用ガラス、断熱仕様の玄関ドアを用いるリフォームを対象に、一戸あたり120万円を上限として工事費用の3分の1以内が支給されます。 「次世代省エネ建材実証支援事業」では、外張り断熱、内張り断熱、窓断熱の3つの区分から施工内容を選択可能であり、外断熱なら一戸あたり300~400万円、内断熱なら一戸あたり200万円、窓断熱なら一戸あたり150万円を上限に、対象経費の2分の1以内が支給されます。 出典) ・公益財団法人北海道環境財団「既存住宅の断熱リフォーム支援補助金について」 ・一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和4年度 次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介」 リフォームで活用できる補助金の申請時の注意点 リフォームに関する補助金を利用する際には、申請のタイミングに注意する必要があります。 リフォームを着工する前に申請が必要な場合がある 補助金制度の中には、「着工前」に申請を行わなければならない場合があります。この場合、リフォーム工事の着工後や完了後に申請をしても受理されず、補助金が利用できないため注意が必要です。 また、利用条件として工事完了の期限が設けられている場合もあるため、スケジュールを逆算したうえで工事日を調整することも大切です。 予算の上限で早めに締め切られることがある 補助金制度の中には、あらかじめ自治体などの運営主体が予算の上限総額を設定している場合があります。予算の上限に達すると、期限内であっても締め切られてしまうため、なるべく早く申請手続きを行うことが大切です。 なお、一般的な補助金は年度ごとに募集がかけられ、夏や秋ごろには利用枠が埋まってしまう恐れがあります。補助金利用の可否によって出費には大きな差が生まれるので、施工会社にも前もって相談しておくと良いでしょう。 補助金を申請するには? 補助金には様々なものがあり、種類によって取り扱う窓口は異なります。また、申請にあたって必要となる書類や手続きのタイミング、具体的な手順などもそれぞれ違うので注意が必要です。 たとえば、介護保険の補助金制度を利用するなら、まずは担当のケアマネージャーに相談し、理由書を作成してもらう必要があります。円滑に申請を済ませるためにも、利用したい補助金に応じてどのような手続きが求められるのかを確認しておきましょう。 まとめ 住宅のリフォームには、介護・バリアフリーに関するものや省エネ・環境保護に関するものなど、様々な種類の補助金制度が用意されています。その中から適切な補助金制度を正しく申請することで、リフォーム費用の一部を賄える場合もあります。リフォームを行う際には、事前に補助金制度の仕組みを調べておくことが大切です。 また、補助金には施工会社を通して申請するものも多いので、不明点があれば遠慮をせずに専門家へ相談しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リフォーム費用の相場と安く抑えるコツ 住み始めた頃は問題ないと感じていても、月日の経過に伴って住まいに不便さを感じる場面も出てきます。今後の生活を快適にするためには、リフォームを検討してみるのも選択肢の1つです。しかし、実際にリ...記事を読む

  • 不動産投資の8つのリスクとその対策

    不動産投資の8つのリスクとその対策

    不動産投資は長期の安定収入が期待できますが、投資である以上、損失が生じるリスクもあります。ただし、事前に対策を講じることで、ある程度リスクを軽減できます。物件を購入する前に、どんなリスクがあるかを知っておくことが大切です。 この記事では、不動産投資の8つのリスクとその対策について解説します。 ①空室リスク 空室が生じて、家賃収入を得られなくなるリスクです。入居者が見つからず、空室期間が長引くと収益性が低下します。融資を利用して物件を購入する場合は、ローン返済に支障が出る恐れもあるので注意が必要です。 賃貸需要のあるエリアの物件を選ぶ 空室リスクを下げるには、賃貸需要のあるエリアの物件を選ぶことが有効です。「人口が多い」「ターミナル駅に近い」「大学や工場が近くにある」「スーパーなどの施設が充実している」などの要件を満たす物件は、一定の賃貸需要を見込める可能性があります。 また、不動産会社などが発表している「住みたい街ランキング」をもとにエリアを選定するのも1つの方法です。 入居者募集に強い賃貸管理会社を選ぶ 賃貸管理を委託する場合は、入居者募集に強い賃貸管理会社を選ぶことも有効です。賃貸管理会社によって、実績やノウハウに差があります。入居率や平均空室期間などを参考に、入居者募集に強い賃貸管理会社を選びましょう。 ②家賃滞納リスク 入居者が家賃を滞納して、収入を得られなくなるリスクです。入居者保護の観点から、家賃滞納が発生しても強制的に退去させるのは難しいため、発生防止に力を入れる必要があります。 入居審査を厳しくする 家賃滞納を防ぐには、入居審査を厳しくすることが有効です。経歴や年収、勤務先、人柄といった属性から、家賃滞納を起こす恐れがないかを見極めましょう。 なお、入居者募集は賃貸管理会社に任せられますが、自分でも入居希望者の属性に問題がないかを確認した上で賃貸借契約を締結することが大切です。 家賃保証会社と連帯保証人の両方を求める 家賃保証会社を利用すれば、家賃滞納が発生した際に保証会社が立て替えてくれまが、家賃保証会社だけでなく、連帯保証人も立ててもらうとより安心です。両親や親戚など入居者にとって身近な人に連帯保証人になってもらうことで、「迷惑をかけられない」という気持ちが働き、家賃滞納への抑止力となることが期待できます。 ③災害リスク 地震や火災、水害などで建物に被害が出るリスクです。近年では、地球温暖化の影響で自然災害が多発しています。必ずしも避けることのできるものではありませんが、リスクを抑えることはできます。 火災保険、地震保険に加入する 物件を購入する際は、火災保険や地震保険に加入しておくと安心です。 建物に被害が出ても、保険金で復旧費用をカバーできます。火災保険だけでは、地震が原因の火災の場合に補償してもらえないため、地震保険にも加入することをお勧めします。 新耐震基準の物件を選ぶ 地震への対策として、1981年以降に建てられた「新耐震基準」の物件を選びましょう。新耐震基準は「震度6以上でも倒れない」とされており、大地震が発生しても建物倒壊を回避できる可能性があります。 ただし、築年数が経過している物件は、適切なメンテナンスや修繕が行われているかで建物の状態が変わります。そのため、「築浅物件や管理状態が良好な物件を選ぶ」「投資エリアを分散する」といった対策も有効です。 ハザードマップを活用する ハザードマップを活用し、災害に強い地域の物件を選ぶことも有効です。自治体のホームページに掲載されているので、物件購入前に災害リスクを確認しておきましょう。 ④修繕リスク 経年劣化により、建物や設備が老朽化するリスクです。不動産投資では、設備や建物の老朽化が、入居者募集や家賃、資産価値、売却活動などに大きな影響を与えます。 メンテナンスや修繕の計画を立てる 不動産は実物資産であるため、年数が経過するほど建物や設備の老朽化が進みます。ただし、適切なメンテナンスや修繕を行うことにより、老朽化のスピードを遅らせ、建物を長く良好な状態に保つことは可能です。 あらかじめメンテナンスや修繕の計画を立てておき、その計画を実行できるように修繕費用を確保しておきましょう。また、物件の購入前のシミュレーションには必ず設備の交換費用や、管理費や修繕積立金の増加を見込んでおきましょう。 ⑤不動産価格下落リスク 不動産価格が下落して、物件の資産価値が低下するリスクです。購入時より資産価値が大きく低下すると、売却時に損失が生じて、最終的な損益がマイナスになる恐れがあります。 中古物件を選ぶ 新築の物件価格にはいわゆる「新築プレミアム」が上乗せされており、購入から数年で価格が2割程度下落することも珍しくありません。一方で、中古物件は新築に比べて不動産価格の下落ペースが緩やかな傾向にあります。 ただし、中古物件であっても築年数の経過とともに資産価値は下落するため、定期的に査定依頼をして、売却時期を検討することが大切です。そのほか、再販業者の利益が大幅に乗っている物件や、市場価格よりも高値で売り出されている物件ではないかの確認は必ずしましょう。 不動産価格が安定している地域の物件を選ぶ 不動産価格の推移は、エリアによって差があります。直近はもちろん、長期の価格推移も確認して、値動きが比較的安定している地域の物件を選ぶと良いでしょう。また、地方自治体から出されている「将来人口推計」を確認して、人口減少が見込まれている地域を避けるのも有効です。 ⑥家賃下落リスク 家賃が下落して、不動産投資の収益性が低下するリスクです。ほとんどの場合、築年数が経過するほど家賃は下落します。 人気が高いエリアの物件を選ぶ 家賃下落を抑えるには、賃貸需要が見込める物件を選ぶことが有効です。人気が高いエリアの物件は家賃相場が安定しており、築年数が経過しても家賃が下落しにくい傾向にあります。 ⑦流動性リスク 買い手が見つからず、所有物件を売却できなくなるリスクです。不動産投資は売却によって最終的な損益が確定するため、売却も想定しておく必要があります。 売却しやすい物件を選ぶ 購入時に立地や築年数、建物の構造を考慮して、売却しやすい物件を選ぶことが重要です。たとえば、築年数が経過した地方の一棟アパートよりも、首都圏の築浅区分ワンルームのほうが買い手を見つけやすいでしょう。 また、周辺物件よりグレードが高い、同じくらいの築年数の物件が少ないなどの差別化要素があれば、よりリスクを減らせるかもしれません。 定期的に査定を依頼して資産価値を確認する 定期的に査定を依頼して、物件の資産価値を確認することも大切です。不動産は、基本的に築年数が経過するほど資産価値は下落し、買い手を見つけにくくなります。査定額の変化から、売却時期を見極めましょう。 ⑧金利上昇リスク 不動産投資ローンの適用金利が上昇して、返済負担が増えるリスクです。融資を利用しており、変動金利の場合、市場金利の動向に応じて定期的に適用金利が見直されます。 自己資金を多めに準備する 不動産投資ローンを借りる際は、自己資金を多めに準備しましょう。頭金を多く入れて借入金額を少なくすれば、金利が上昇しても支払利息の負担を抑えられます。 不動産投資は、他人資本(借入金)を活用して効率的に資産を増やせるのが魅力です。しかし、融資を受けられるとしても、無理な借り入れをしないことが金利上昇リスクへの対策となります。 固定金利を検討する 長期の借り入れを行う場合は、固定金利を選ぶのも選択肢です。契約時の適用金利は変動金利より高くなりますが、固定金利であれば、市場金利が上昇しても適用金利は変わりません。 契約時に毎月の返済額や総返済額が確定するため、返済計画を立てやすいのもメリットです。 関連記事はこちら変動型の金利はどう決まる? まとめ 不動産投資にはさまざまなリスクがありますが、事前に対策を講じることで、リスク軽減が期待できます。成功率を高めるためにも、物件購入前に不動産投資のリスクと対策を理解しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 不動産投資の始め方 老後の資金作りや副業として、不動産投資を始める会社員が増えています。マンションやアパートといった投資物件は、安定した家賃収入を得られるのが魅力です。一方で、不動産投資に興味はあっても、投資経...記事を読む

    2023.02.08不動産投資
  • 不動産投資でかかる費用と税金の種類、注意点を解説

    不動産投資でかかる費用と税金の種類、注意点を解説

    不動産投資では、物件を売買するときや所有中にさまざまな費用や税金がかかります。長期にわたる安定収入を確保するには、物件取得前にどのような費用や税金がかかるかを把握し、シミュレーションをしたうえで、物件を選ぶことが大切です。 この記事では、不動産投資でかかる費用や税金の種類と注意点を解説します。 不動産投資でかかる費用の種類 まずは、不動産投資でかかる費用の種類を確認していきましょう。 購入時にかかる費用 不動産投資で物件を購入する際にかかる費用は以下のとおりです。 費用 内容 金額の目安 仲介手数料 仲介業者に支払う手数料 売買価格×3.0%+6万円+消費税 司法書士報酬 司法書士に所有権移転登記や抵当権設定登記を依頼する場合に支払う費用 10~20万円程度 融資手数料 融資を利用する際に必要な事務手数料や保証料 金融機関によって異なる。 仲介手数料は、不動産の売買価格によって変わります。仮に物件価格が3,000万円であれば、仲介手数料の金額は「96万円+消費税」となります。なお、仲介業者なしで不動産を購入する場合は不要です。 所有権移転登記や抵当権設定登記(融資を利用する場合に必要)を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬が必要になります。10~20万円程度が目安ですが、実際にかかる費用は司法書士によって異なります。また、融資を利用して購入をする場合には、融資事務手数料が発生します。 所有中にかかる費用 不動産投資で物件の所有中にかかる費用は下記のとおりです 。 費用 内容 金額の目安 修繕費 不定期で発生する修繕費、設備交換費用など 物件種別や築年数、管理状況などに左右される 管理費・修繕積立金 区分マンションの場合に毎月支払う費用 管理費:月額220円/㎡程度修繕積立金:月額180円/㎡程度 業務委託手数料 賃貸管理及び収納代行を依頼する場合に管理会社に支払う費用 家賃の5.0%程度 ローンの支払利息 不動産投資ローンの支払利息 借入残高の2.0~5.0%程度 火災保険料、地震保険料 加入する火災保険・地震保険の保険料 年数万円程度 税理士報酬 税理士に確定申告を依頼する場合に支払う費用 3万円程度(確定申告のみを依頼する場合) その他費用 不動産投資に必要な交通費、通信費、教材費、交際費など 支出内容によって異なる 区分マンションに投資する場合は、管理費・修繕積立金の支払いが必要です。金額はあくまで目安であり、実際には物件種別や築年数、管理状況などに左右されます。 賃貸管理を依頼する際の業務委託手数料や不動産投資ローンの支払利息も、管理会社や金融機関によって異なるため、購入前に確認しておくことが大切です。税理士報酬は、顧問契約を締結する場合は月数万円程度の顧問料が発生し、決算時に追加費用がかかることもあります。 そのほか、会計上は減価償却費も費用として計上されます。実際に手元のお金を支払うものではありませんが、確定申告などでは知っておく必要があります。 売却時にかかる費用 不動産投資で物件を売却する場合は、以下の費用がかかります。 費用 内容 金額の目安 仲介手数料 仲介業者に支払う手数料 売買価格×3.0%+6万円+消費税 司法書士報酬 司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合に支払う費用 2万円程度 ローン返済手数料 不動産投資ローンの残債を一括返済するための費用 金融機関によって異なる 不動産投資では、基本的に物件売却時にも仲介手数料がかかります。ただし、仲介なしで不動産を売却する場合は不要です。 また、抵当権抹消登記(融資を利用していた場合に必要)を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬も必要になります。加えて、ローンが残っている不動産を売却する場合は、ローン返済手数料も発生します。 不動産投資でかかる税金の種類 次に、不動産投資でかかる税金の種類を確認していきましょう。 購入時にかかる税金 物件購入時にかかる税金は下記のとおりです。 税金 内容 税額の目安 印紙税 売買契約書に貼付する収入印紙 契約金額による※1 登録免許税 土地・建物の所有権移転登記、抵当権設定登記にかかる税金※2 所有権移転登記:固定資産税評価額×2.0%抵当権設定登記:借入金額×0.4% 不動産取得税 不動産を取得した際にかかる税金 固定資産税評価額×4.0% 固定資産税 購入した年の残日数分の日割り計算分 固定資産税額×購入した年の残日数/365日 ※1 契約金額1,000万円超 5,000万円以下の場合は2万円 ※2 融資を利用していた場合のみ必要 印紙税は売買契約時、登録免許税は司法書士報酬に含めて支払うのが一般的です。不動産取得税は、物件取得から半年~1年後に都道府県から納税通知書が届きます。また、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課される税金であるため、購入した年の残日数分を購入時に支払う必要があります。 なお、上記の税額は本則税率の場合であり、軽減税率が適用される場合もあります。 所有中にかかる税金 物件を所有している間は以下の税金がかかります。 税金 内容 税額の目安 固定資産税・都市計画税 毎年1月1日現在の土地・建物の所有者にかかる税金 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%都市計画税:固定資産税評価額×0.3% 所得税・住民税 1年間の不動産所得(不動産投資の利益)にかかる税金 所得税:所得金額×5.0~45.0%復興特別所得税:その年の基準所得税額×2.1%住民税:所得金額×10.0% 物件を所有している間は、固定資産税・都市計画税を毎年支払います。 市区町村から納税通知書が届くため、自分で税額を計算する必要はありません。 不動産所得については、給与所得や事業所得などと合算して所得税額を計算し、確定申告をして税額を納めます。確定申告をすれば、住民税は市区町村から納税通知書が届きます。 売却時にかかる税金 不動産を売却する際は、以下の税金がかかります。 税金 内容 税額の目安 印紙税 売買契約書に貼付する収入印紙 契約金額による※1 登録免許税 抵当権抹消登記にかかる税金※2 不動産1個につき1,000円(土地と建物で合計2,000円) 譲渡所得税(所得税・住民税) 不動産の譲渡所得(売却益)にかかる税金 短期譲渡所得:譲渡所得×39.63%長期譲渡所得:譲渡所得×20.315% ※1 契約金額1,000万円超 5,000万円以下の場合は2万円 ※2 融資を利用していた場合のみ必要 印紙税は売買契約時、登録免許税は司法書士報酬に含めて支払うのが一般的です。 譲渡所得(売却益)が発生する場合は、確定申告をして譲渡所得税を納めなくてはなりません。譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年超の場合は「長期譲渡所得」となります。 不動産投資の費用・税金に関する注意点 不動産投資の費用や税金に関する注意点は主に以下2つです。 必要経費になる支出とならない支出がある 不動産投資では、関連支出を経費に計上すると課税所得が減額され、所得税・住民税の負担軽減が期待できます。 ただし、必要経費になる支出とならない支出があります。たとえば、不動産所得にかかる所得税や住民税、不動産投資に直接関係ない支出は必要経費になりません。 必要経費になるか判断できない場合は、税務署や税理士に相談しましょう。 期限内に確定申告を行う 不動産所得や譲渡所得が生じた場合は、必ず期限内に確定申告を行いましょう。確定申告期間は毎年2月16日~3月15日です。期限内に申告を行わないと、延滞税などがかかる恐れがあります。 自分で確定申告をするのが難しい場合は、税理士に依頼することも可能です。 関連記事はこちら確定申告とは?手続きの流れや方法を解説 まとめ 不動産投資では、さまざまな費用や税金が発生します。物件を購入する場合は、これらの費用を踏まえた収支シミュレーションをした上で投資判断を行うことが大切です。不動産投資でかかる費用や税金を理解して、優良物件を探しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2023.02.01不動産投資
  • 年金のみで生活できるのは5人に1人

    年金のみで生活できるのは5人に1人

    近年、「老後破産」という言葉は様々なメディアなどで取り上げられています。公的年金の財源や年金支給年齢引き上げの問題など、老後の生活に不安を感じている人も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、現在持ち家所有者である60歳~65歳の男女395名を対象に、SBIエステートファイナンスが老後破産に関するアンケートを実施した調査結果をご紹介します。 年金のみで生活できるのは5人に1人 Q1.老後破産への不安はありますか? 老後破産への不安については、「不安がある」(36.7%)と「どちらともいえない」(34.2%)の回答が全体の70.9%となり、多くの人が老後破産について「不安はない」と言えないことが分かります。 【考察】 出典)内閣府『令和2年版高齢社会白書(全体版)』 内閣府が2019年に実施した「高齢者の経済生活に関する調査」によると、60~64歳の高齢者は25.6%の人が「家計にゆとりがなく、多少心配である」、もしくは「家計が苦しく、非常に心配である」と回答しています。 SBIエステートファイナンスの調査は、内閣府による調査と集計方法や対象が異なるものの、老後破産について「不安がある」と回答した人が多い結果となりました。 次回の内閣府の調査では、新型コロナウイルスの影響や近年の物価上昇などを受けて、家計にゆとりがないと回答する人が増加するかもしれません。 Q2.将来、年金(厚生年金と国民年金)のみで家計収支はプラスになる予定ですか? 年金のみで家計収支がプラスになるのは19.5%で、80.5%の人は年金だけでは老後の生活費を賄えないと認識していることが分かります。 【考察】 厚生労働省の2021年度の調査によると、老齢年金の平均年金月額は145,665円であると分かります。また、家計年報によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均支出は225,550円です。これらの調査は、あくまでも収入と支出のそれぞれの平均値であり、家計収支がプラスである人がどれくらいいるのかは不明でした。 一方で、SBIエステートファイナンスの調査では80.5%の人の家計収支がマイナスであるということが分かり、平均年金月額と平均支出の約80,000円の差からも納得できる結果となりました。 出典) ・厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金令和4年12事業の概況』 ・令和2年度家計年報 Q3. 年金(厚生年金と国民年金)と将来想定される年金以外の収入(株や不動産収入等)で家計収支はプラスになりますか? 年金以外に想定される収入を含めたとしても、家計収支がプラスになる人は20.5%しか増えず、「いいえ」が60.0%を占め、老後の家計収支をプラスに出来ない人が大半であることが分かります。 年金以外に収入があっても、4人に1人は老後破産が不安 Q4.将来想定される年金(厚生年金と国民年金)と将来想定される年金以外の収入をすべてお答えください(複数回答可) 「個人年金保険」が39.2%ともっとも多く、次に「株式などの配当収入」が37.0%、「確定拠出年金」が25.3%とのことです。年金以外の収入を準備されていない人は15.9%となっています。 年金以外の収入源を持つ人の老後破産への意識の違い 年金以外の収入源が「無し」と回答した15.9%の人のうち、58.7%が老後破産について「不安がある」と回答しており、年金以外の収入源がある人と比較すると、老後破産への不安が高いことが分かります。 【考察】 「株式などの配当収入」や「民間の個人年金保険」の収入がある人は、約40%近くが「不安はない」と回答しています。一方で、「確定拠出年金」の収入がある人では、28.0%しか「不安はない」と回答していません。 確定拠出年金の制度が始まったのは2001年からのため、現在60~65歳の人は確定拠出年金だけでは、十分な収入になっていない可能性があります。また、「株式などの配当収入」や「不動産収入」がある人でも、4人に1人以上は老後破産について「不安がある」と回答しており、たとえある程度の資産を所有している人でも、老後破産は他人ごとではないのかもしれません。 まとめ 5人に1人しか年金のみでは家計収支はプラスにならず、安心した老後の生活を送るためには、年金以外の収入を早くから準備しておく必要があることが分かりました。まずは現時点での老後の収入金額の把握と、現時点での支出も踏まえ、節約できる費用なども考慮し、将来家計収支をプラスに出来るかどうかを確認しましょう。もし難しい場合は、収入を補填するための資産形成や住まいの資産価値の有効利用も含め、早めの対策をすることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後破産とは?その原因と事前の準備・対策を解説 「老後破産」は、日本人の高齢化などにより、取り上げられるようになったテーマの一つです。様々なメディアなどで目にする機会も増え、老後の生活を不安に感じる人もいるでしょう。 この記事では、老後破...記事を読む

  • 不動産投資とは

    不動産投資とは?仕組みやメリット・デメリット、始め方を解説

    不動産投資は、安定収入が期待できる投資方法です。ゆとりある老後生活を送るための資産形成手段として注目されています。ただし、不動産投資にはリスクもあるため、不動産を購入する前に、正しい知識を身につけておくことが大切です。 この記事では、不動産投資の仕組みやメリット・デメリット、始め方について詳しく解説します。 不動産投資とは? 不動産投資とは、所有する不動産を貸し出して家賃収入を得る投資のことです。入居者がいれば、 自らが働くことなく毎月家賃収入を受け取れます。 「不動産投資は難しそう」と思うかもしれませんが、不動産選びから賃貸管理まで全てひとりで行う必要はありません。不動産を探す際には、不動産会社から紹介してもらいながら探すことができます。また、賃貸管理を管理会社に任せられるため、仕事をしながら副業として不動産投資に取り組むことも可能です。 不動産投資の利益は2種類 不動産投資の利益は、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つに分かれます。 インカムゲインとは、不動産の所有中に継続して得られる利益のことです。家賃収入や更新料などの、安定的・継続的な利益が該当します。 キャピタルゲインとは、不動産の売却によって得られる利益(売却益)のことです。不動産価格が上昇し、取得時より高い価格で売却できれば、取得価額と売却価額の差額が利益となります。 投資対象不動産の種類 不動産投資の対象となる主な不動産の種類は以下のとおりです。 一棟マンション 一棟アパート 区分マンション 戸建て 一棟マンション・アパートの投資は貸し出せる部屋数が多い分、相対的に大きな利益が期待できます。ただし、不動産価格が高額で、多額の資金が必要になります。 区分マンションの投資は、マンションの1室を貸し出す方法です。一棟物件に比べると価格は低額ですが、戸数が少ない分、一棟物件ほどの大きな利益は期待できなくなります。 また、戸建てを貸し出す方法もあります。戸建てを貸し出す場合、主な入居者としてファミリー層が想定されます。ファミリー層は入居期間が長い傾向にあるため、長期的な安定収入が期待できます。一方で、アパートやマンションに比べると入居者が見つかりにくい側面もあります。 それぞれの特徴を理解して、投資の対象とする不動産を選びましょう。 新築と中古の違い 不動産投資は、「新築」と「中古」の違いを理解しておくことも重要です。 新築は建物や設備が新しいので、入居者が見つかりやすく、長く稼働できます。一方で、購入して中古になると、すぐに資産価値が大きく下がるデメリットもあります。 中古は新築より不動産価格が低額ですが、築年数が経過していると、購入後すぐに多額の修繕費がかかることもあるので注意が必要です。 不動産投資のメリット 不動産投資には、以下のようなメリットがあります。 安定収入を得られる 不動産投資は、入居者がいれば毎月家賃が得られます。一般的な仕事とは異なり、労働時間や場所などに収入が左右されません。うまく運用できれば、大きな労力をかけることなく安定収入を確保できるでしょう。 他人資本を活用できる 不動産投資では、借入金で不動産を取得可能です。また、入居者からの家賃収入でローンを返済できます。まとまった自己資金を準備しなくても、他人資本を活用して効率的に資産を形成できます。 働かずに収入が得られる 不動産投資は、入居者がいれば、自らが働くことなく毎月家賃収入を受け取れます。不動産購入後の賃貸管理も管理会社に任せられるため、本業の仕事以外に余分な手間やコストをかけることなく収入を得ることができます。 生命保険効果がある 不動産投資で金融機関から融資を受けるときは、「団体信用生命保険(団信)」に加入するのが一般的です。返済中に契約者が死亡した場合は、団信の保険金で残債が弁済されるため、家族にローンのない不動産を残せます。 インフレに強い インフレ(物価上昇)時は、実物資産である不動産の資産価値は下がりにくく、家賃は上昇しやすい傾向にあります。また、物価が上昇しても額面金額は変わらないため、借入金額は実質的に目減りします。これらの特徴から、不動産投資はインフレに強いと言えます。 不動産投資のデメリット 一方で、不動産投資は以下のようなデメリットもあります。 さまざまな費用がかかる 不動産投資は購入時や所有中、売却時に次のような費用がかかります。 購入時   仲介手数料印紙税登録免許税(所有権移転、抵当権設定)司法書士報酬ローン事務手数料不動産取得税など 所有中 管理費・修繕積立金(区分マンションの場合)業務委託費(賃貸管理を業者に任せる場合)固定資産税・所得税住民税退去時の原状回復費用・修繕費など 売却時 仲介手数料印紙税登録免許税(抵当権抹消)ローン繰上返済手数料譲渡所得税(所得税・住民税) など 費用が収入を上回る場合、損失が生じてしまいます。購入時の費用だけでなく、投資期間中にかかる全ての費用も確認し、 収益を確保できるか見極めることが大切です。 関連記事はこちら不動産投資でかかる費用と税金の種類、注意点を解説 さまざまなリスクがある 不動産投資にはさまざまなリスクが存在します。「空室リスク」「災害リスク」「流動性リスク」の3つが代表的です。 空室リスクは、入居者が見つからず家賃収入を得られなくなるリスクです。空室期間が長期化すると、ローン返済に支障が出る恐れがあります。 災害リスクは、地震や火事、台風などによって建物が被害を受けるリスクです。空室の長期化、家賃・資産価値の低下を招く恐れがあります。 流動性リスクは、不動産を売却できなくなるリスクです。不動産を売却するには、不動産会社と媒介契約を締結して買い手を見つけなければなりません。なかなか買い手が見つからず、現金化に時間がかかることもあります。 関連記事はこちら不動産投資の8つのリスクとその対策 不動産投資の始め方 「不動産投資を始めたい」と思ったら、以下の流れで手続きを進めましょう。 十分な 知識を身につける 不動産会社を探して不動産を紹介してもらう 売買契約、融資契約、賃貸管理契約を締結する 入居者を募集し、賃貸借契約を締結する(空室の不動産を購入する場合) 関連書籍やセミナーなどで十分な知識を身につけてから、不動産会社を探して不動産を紹介してもらいます。不動産会社を選ぶときは、実績や業績、評判などを確認し、複数の不動産会社を比較・検討しましょう。 不動産が見つかったら売買契約や融資契約を行い、必要に応じて賃貸管理を依頼します。既に入居者がいれば、契約後すぐに家賃収入を得られます。空室の不動産を購入する場合は、入居者募集を行いましょう。 関連記事はこちら不動産投資の始め方 まとめ 不動産投資は安定収入が期待でき、他人資本を活用して効率的に資産を形成できるのが魅力です。一方で、購入時だけでなく所有中や売却時にも費用がかかり、空室リスク、災害リスク、流動性リスクといったさまざまなリスクも存在します。不動産投資の成功率を高めるためにも、十分な知識を身につけてから不動産投資を始めましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2023.01.18不動産投資
  • 廃業したら借入金はどうなる?廃業と借入金の関係や手続きまで解説

    廃業したら借入金はどうなる?廃業と借入金の関係や手続きまで解説

    自分が経営してきた会社を廃業する。廃業に至るには様々な原因や理由がありますが、いずれにしても重く大きな決断です。しかし、その決断を下す前に、基礎知識を身につけておくことが重要です。 そこでこの記事では、「会社を廃業したら借入金はどうなる?」「廃業するとき借入金が残っている場合の手続きを知りたい」等の疑問を抱く相談者にFPが解説します。 〔ご相談者 Sさん〕 ・45歳男性。自身の経営する会社の代表。 ・資金繰りが悪化したことにより事業の経営が厳しいと思っている。 ・一方で、借入金が残っている状態であり、廃業が可能か、手続きについても相談したい。 会社の廃業にはどのような方法がある? Sさん:今まで頑張って会社経営をしてきましたが、最近は資金繰りが苦しくなってきました。自分の年齢も考えると、いっそのこと廃業したほうが楽になるのでは?と思い始めました。会社の運転資金として銀行からの借入金が残っていますが、親が残してくれた財産などで、債務を返して会社を終わらせるつもりです。そのほかにもいろいろわからないことが多いので、教えて下さい。 FP加藤:わかりました。まずひとことで「廃業」と言っても、債務が残っている状態での廃業は、特別清算や破産などいくつかのパターンに分かれます。 Sさん:廃業のパターン? まずそのあたりから教えてください。 FP加藤:債務が残っている状態で廃業する2つの方法は、大きく「特別清算」と「破産」に分かれます。 Sさん:特別清算、破産、どちらもあまり穏やかな単語ではないですね。 FP加藤:確かにイメージは良くはないと思います。ですが、それぞれ法律に則った手続きなので安心してください 関連記事はこちら倒産や破産、特別清算の違いとは?根拠法や用語の意味を解説 特別清算と破産の違いとは? FP加藤:特別清算と破産はどちらも、会社の財産をすべて処分して債務を支払い、残った債務は会社とともに消滅させるという廃業の手続きです。原則として、どちらも手続きをすれば、負債の返済義務がなくなります。 Sさん:2つにはどのような違いがあるんですか? FP加藤:言葉ではつかみにくいかも知れませんので、簡単な一覧表にして見ました。 2つの方法~「特別清算」と「破産」 特別清算破産 根拠法会社法破産法 申立人債権者、清算人、監査役、株主債権者、清算人、取締役、債務者 同意株主、債権者の同意が必要株主、債権者の同意は不要 出典) ・e-Gov法令検索(会社法:第511条) ・e-Gov法令検索(破産法:第18条、第19条) FP加藤:特別清算と破産の違いを比較すると上図のようになります。ここで出てきた新しい言葉「申立人」も簡単にポイントをお話しします。 Sさん:はい、お願いします。 FP加藤:申立人とは「特別清算や破産の手続きをする人」といった意味で、つまり当事者かつ手続きする資格のある人を指します。特別清算の申立人は、会社法により債権者・清算人・監査役・株主と定められています。一方で破産の申立人は、破産法で債権者・清算人・取締役・債務者です。 Sさん:それぞれ対応する法律があって、申立人も微妙に違うんですね。 FP加藤:そうですね、また特別清算では株主や債権者の同意が必要なのに対し、破産ではこうした同意が不要なところも違いますね。 Sさん:「特別清算と破産は根拠の法律は違い、当事者も微妙に違う」「特別清算は株主などの同意が必要だけれど、破産は当事者が単独で手続きできる」といった感じでしょうか? FP加藤:シンプルにまとめるとそうなりますね。 特別清算と破産、どちらが良いか Sさん:そこでいよいよ一番教えていただきたいことですが、特別清算と破産のどちらが良いんでしょうか? FP加藤:はい、そうですね。まず特別清算と破産は似て非なるものです。特別清算と破産のどちらが良いか? それは会社の状態により、ケースバイケースなんです。特別清算は、どちらかと言えば債権者と話し合いながら進めていく手続きと言えるでしょう。一方で破産は、債権者などの同意が不要な点からも、会社に残された資産がなく、裁判所の力を借りて強制的に会社を整理する手続きと言えます。 Sさん:では、私の会社はどうすれば良いでしょう? FP加藤:そうですね、会社の状況や資産内容など多角的に見てからでないと判断はできません。会社を廃業する場合において、すべての債務を返済することが可能であるなら、債権者の同意を得られるため特別清算の手続きを進めるのが良いでしょう。 廃業の注意点〜借入金を解消する2つの方法 FP加藤:ではここで、債務の中でも借入金をどうするか?について解説したいと思います。 Sさん:確かに、一番心配になるのは借入金のことですね。ぜひ教えてください。 金融機関からの借入金 FP加藤:銀行等の金融機関からの借り入れは、会社に完済できるだけの財産が残っていれば、そこから返済すれば終わりです。逆に財産がなければ、破産の手続きを選択し、債務を免れる選択が考えられます。ただし、代表者が会社の保証人になっていない場合の話です。 Sさん:それはどういう意味ですか? FP加藤:金融機関が会社に融資をする場合、代表者が会社の保証人になるのが一般的です。その場合、会社が特別清算と破産のどちらかを選択して会社の債務は消滅したとしても、 保証人になっている代表者の返済義務は残ります。そのため代表者に資産があるなら、特別清算を選択し代表者個人が会社の債務を返済するという対策も考えられます。一方で、会社だけでなく個人にも資産がない場合は、破産手続きにより廃業したあと、保証人である代表者個人も自己破産をするケースが想定されます。 役員からの借入金 Sさん:私の場合、会社に対して運転資金などを個人から融通し、会社決算でも個人からの貸付金としてかなりの額が残っています。こちらは廃業するときにどうすべきでしょうか? FP加藤:役員や代表者からの借入金については、悩ましい問題です。決算書に借入金と記載されているので、代表者からの借入金も会社から見れば金融機関からの融資や未払金と同じ債務です。とはいえ、金融機関からの融資や 仕入先への未払金を後回しにして、役員からの借入金を支払うと道義的にも問題が生じるでしょう。そう言った点から、役員からの借入は債務免除、つまりは帳消しになるケースが多いのです。 Sさん: なるほど、確かに役員など身内ばかりを優先してはいけませんね。ところで、個人が債務免除をした場合、税金などは大丈夫なのでしょうか? FP加藤:はい、その点ですが「得をした人が税金を払う」「もらった人が税金を払う」のが大原則です。例えば贈与税は、贈与を受けた人、つまりもらって得をした人が払うのが贈与税で、 贈与した人・あげた人には税金がかかりません。この考え方を引用すると、債務免除をした場合に得をするのは、借金を帳消しにしてもらった会社です。そして債務免除、つまり借金を帳消しにした個人に利益はないので、税金がかかりません。会社に対しては、債務免除益が発生し税金の課税対象になりますが、廃業する会社のほとんどは赤字企業なので、債務免除益は赤字に吸収されて終わりなのが一般的です。 まとめ Sさん:廃業について考え始めても、実は何をどこからどう手をつけていいか?全く分からない状態でした。今回は今さら聞けない初歩的なことまでわかりやすく説明してもらい、目の前が明るくなった気がします。 FP加藤:そう言っていただければ、私も嬉しいです。廃業については慎重に検討するべきですが、やはり弁護士などの専門家のアドバイスを求められるのが一番だと思います。ぜひ、信頼できる専門家に出会い、手続きをスムーズに進められることを願っています。 執筆者紹介 加藤 隆二(Ryuji Kato) 勤続30年の銀行員でマネーライター、 ファイナンシャルプランニング技能士2級。銀行員として事業資金調達から、住宅ローン、カードローンなど借入全般に従事。 ”明るい廃業®”を掲げる新生銀行に ニッポンの経営者の本音を聞いた 日本には、2021年6月時点でおよそ367万4000社の企業があります。(総務省・経済産業省による発表)そのうち中小・小規模事業者の数は99.7%を占めるといいます。 そして、2017年に中...記事を読む