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  • 空き家税とは?制度内容や導入される目的、対策を解説

    空き家税とは?制度内容や導入される目的、対策を解説

    京都市において、全国初の「空き家税」が2026年度に導入される見通しとなりました。空き家税は、利用されていない空き家や別荘などに課税する新たな税の仕組みです。京都市では、なぜ空き家税が創設されるのでしょうか。 この記事では、空き家税の制度内容や導入される目的、課税への対策について解説します。 空き家税とは 空き家税とは、正式名称ではなく、京都市が創設する「非居住住宅利活用促進税」のことを指します。京都市では、令和2年(2020年)8月に有識者や市民公募委員などで構成される検討委員会を設置し、空き家や別荘所有者への適正な負担のあり方について議論を重ねていました。 その後、令和4年(2022年)3月に「京都市非居住住宅利活用促進税条例」が成立しました。令和5年(2023年)3月24日には総務大臣が空き家税の創設に同意したことで、令和8年度(2026年度)以降に全国初の空き家税が導入される見通しとなっています。 京都市が空き家税を導入する目的 検討委員会の答申によると、空き家税を創設する目的は以下の2つです。 (1)住宅供給の促進や居住の促進、空き家の発生の抑制といった政策目的の達成 (2)現在及び将来の社会的費用の低減を図り、その経費に係る財源を確保すること 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 京都市の見解では、空き家や別荘、セカンドハウスなどの「非居住住宅(※)」の存在が、京都市への移住希望者や住宅供給を妨げ、防災や防犯、生活環境に関する問題の発生や地域コミュニティの活力低下の原因の1つにもなっているとされています。 ※その所在地に住所(住民票の有無にかかわらず、居住実態の有無によって生活の本拠が判断される。)を有する者がない住宅のこと。 空き家の所有者に課税することによって、非居住住宅の有効活用を促す狙いがあります。また、空き家税の税収により、住宅供給の促進や安全な生活環境の確保といった施策にかかる費用の低減を図る方針です。 空き家税の制度概要 ここでは、京都市の空き家税の制度概要を確認していきましょう。 納税義務者 空き家税は、京都市内の市街化区域内に所在する非居住住宅が課税対象です。 非居住住宅の所有者が納税義務者となり、「家屋価値割額」および「立地床面積割額」の合算額を負担します(詳細は後述)。 課税免除 次の非居住住宅については、空き家税が免除されます。 ①事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもの ②賃貸又は売却を予定しているもの※(事業用を除く) ③固定資産税において非課税又は課税免除とされているもの ④景観重要建造物その他歴史的な価値を有する建築物として別に定めるもの等 ※ただし、1年を経過しても契約に至らなかったものは除く。 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 課税額と税率 空き家税は「①家屋価値割」と「②立地床面積割」の2つがあります。それぞれの税額を計算し、足し合わせたものが空き家税の課税額となります。計算方法は以下のとおりです。 出典)京都新聞「京都市検討の別荘税「空き家」も幅広く対象に 課税額は物件価値で3段階か」 なお、②立地床面積割の税率は、固定資産評価額(土地)によって以下のとおり変動します。 固定資産評価額(土地)税率 立地床面積割700万円未満0.15% 700万円以上900万円未満0.30% 900万円以上0.60% 出典)京都市情報館「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」 ただし、家屋価値割の課税標準が20万円(条例施行後の当初5年間は100万円)に満たない非居住住宅は免税となり、課税されません。 空き家税の賦課期日(課税の基準日)は毎年1月1日です。徴収方法は「普通徴収」で、京都市から送付される納税通知書で税額を納めます。 空き家税の対策 京都市に空き家を所有している場合、何もしなければ将来は税負担が増えてしまいます。ここでは、空き家税への対策を2つ紹介します。 売却する 1つ目は、所有している空き家を売却することです。売却して空き家を手放せば納税義務者ではなくなるので、空き家税を課税されることはありません。 また、実際に売却されていなくても、売却を予定している非居住住宅は課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。将来住む予定がない空き家を放置している場合は、少しでも早く売却活動を始めるといいでしょう。 賃貸に出す もう1つは、所有している空き家を賃貸に出すことです。非居住住宅であっても、賃貸を予定しているものは課税が免除されます(1年を経過しても契約に至らない場合を除く)。入居者が見つかれば、家賃収入を得られるのもメリットです。 ただし、賃貸に出すには、空き家を入居希望者に貸し出せる状態にする必要があります。物件の状態によっては、リフォームの必要があるかもしれません。 また、賃貸借契約や家賃の回収といった管理業務が発生し、入居者がいないと家賃が入ってこない「空室リスク」もあります。立地や間取り、築年数などから、賃貸に適しているかを見極める必要があるでしょう。 関連記事はこちら不動産投資の8つのリスクとその対策 まとめ 京都市が創設する空き家税がうまく機能すれば、今後は他の自治体でも導入されるかもしれません。利用していない空き家を所有している場合は、売却や不動産活用を検討しておいた方がいいかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 空き家を相続したらどうするべき?対処方法や税制特例について解説 相続で取得した実家に住む予定がない場合、何もしなければ空き家になってしまいます。空き家の状態で放置することには、さまざまなリスクが存在します。 そのため、空き家を相続する予定があるなら、どの...記事を読む

    2023.04.12制度
  • 貸付自粛制度とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    貸付自粛制度とは?メリット・デメリット、手続き方法を解説

    貸付自粛制度とは、「借金をやめたいのにやめられない」という悩みを抱えている方に向けた支援制度です。本制度を利用することによって、さらに借金が増えるのを防止できる可能性があります。 この記事では、貸付自粛制度の仕組みやメリット・デメリット、手続き方法について解説します。 貸付自粛制度とは 貸付自粛制度とは、「日本貸金業協会」または「全国銀行個人信用情報センター」のどちらかへ申告をすると、金融機関からの借り入れを5年間制限できる制度です。 浪費癖やギャンブル依存などにより、本人や家族の生活に支障が生じる借金を行わないようにサポートすることを目的としています。 自らを「自粛対象者」として登録することで、今後借り入れの申込みをしても金融機関はこれに応じなくなるため、借金に対する抑止力が期待できます。 利用できる人の範囲 貸付自粛制度の利用を申告できるのは、原則として本人のみです。たとえ家族であっても、本人に無断で登録することはできません。ただし、法定代理人や、一定の要件を満たす家族は申告可能です。 貸付自粛制度のメリット 貸付自粛制度のメリットは以下のとおりです。 お金の借り過ぎや多重債務の防止になる 自粛対象者として登録すると、その後本人が借り入れの申込みをしたとしても、金融機関はこれに応じなくなります。そのため、「借金をやめたいが、どうしてもやめられない」といった悩みを抱えている人にとっては、借り過ぎを防ぐ効果が期待できます。 無料で利用できる 貸付自粛制度は登録手数料がかからず、無料で利用できます。費用の心配をせずに登録できるので安心です。ただし、郵送で申告する場合は、申告書控えを送るための返信用切手を自己負担で用意する必要があります。 貸付自粛制度のデメリット 一方で、貸付自粛制度には以下のようなデメリットもあります。 家族の借金をやめさせるのは難しい 貸付自粛制度は、原則として本人が申告を行います。家族が手続きできるのは、本人が所在不明であることが条件です。本人に借金をやめる気持ちがない場合、家族が本制度を利用して借金をやめさせるのは難しいでしょう。 3ヵ月経過すると撤回できてしまう 貸付自粛制度は、登録を依頼した日から3ヵ月経過すると自分で撤回できてしまいます。「借金をしない」という強い意志がないと、登録を撤回して再び借金をしてしまう恐れがあります。 違法な金融業者からであれば借り入れができてしまう 貸付自粛制度は、「日本信用情報機構」「シー・アイ・シー」「全国銀行個人信用情報センター」に加盟している会員(貸金業者・銀行)が対象です。本制度に登録をしても、前述3つのいずれにも加盟していない違法な金融業者からであれば借り入れができてしまいます。 違法な金融業者から借り入れてしまうと、違法な高金利の請求や悪質な取り立てなどの被害にあうリスクが高まるので、絶対に利用しないようにしましょう。 出典)金融庁「違法な金融業者にご注意!」 貸付自粛制度の手続き方法 貸付自粛制度を利用する場合は、日本貸金業協会または全国銀行個人信用情報センターのどちらかへ申告します。全国銀行個人信用情報センターで申告する際の手続きの流れは以下のとおりです。 申告に必要な書類を準備  ・貸付自粛申告書  ・貸付自粛申告確認書(申告理由がギャンブル等による場合)  ・本人確認書類(2点)の写し  ・返信用切手(404円分) 全国銀行個人信用情報センターに郵送 本人確認の連絡(電話) 登録完了(申告書の控えが郵送される) ※日本貸金業協会はWeb申告が可能 ギャンブル等依存症対策のため、申告理由がギャンブル等による場合は「貸付自粛確認書」も作成して同封する必要があります。 また、申告書を送付した後は電話で本人確認が行われます。本人確認ができないと申告書が受理されないので、連絡が来たら必ず対応しましょう。 出典) ・日本貸金業協会「貸付自粛申告」 ・全国銀行協会「貸付自粛制度のご案内」 貸付自粛制度以外の解決策 貸付自粛制度は借り過ぎ防止が期待できる一方で、「申告できるのは原則本人のみ」「3ヵ月経過すると撤回できてしまう」などのデメリットもあります。自身もしくは家族の借金を何とかしたいと思っても、「貸付自粛制度では解決できない」という人もいるでしょう。 ここでは、貸付自粛制度以外の解決策として、自身や家族の借金に関する相談先を3つ紹介します。 依存症対策全国センター 全国の依存症専門相談窓口や依存症専門医療機関を探し、相談できます。借金の原因がギャンブル等依存症の場合、専門家に相談することで改善・解決が期待できるかもしれません。 >詳細はこちら 金融庁 多重債務相談窓口 金融庁が多重債務に関する相談窓口をまとめています。信頼できる相談窓口の中から、自身に合った相談先が見つかるかもしれません。 >詳細はこちら 消費者ホットライン 消費者ホットラインでも借金についての相談が可能です。特に金銭や商品、サービスなどで業者とトラブルになっている場合は消費者ホットラインに相談しましょう。 >詳細はこちら まとめ 借金で自身や家族の生活に支障が生じている場合は、貸付自粛制度によって借り過ぎの防止が期待できます。「借金をやめたくてもやめられない」と悩んでいるなら、貸付自粛制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 住宅ローンが払えないときはどうすればいい?FPが解説 コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...記事を読む

  • 【2023年版】リフォーム減税はどのような工事が対象?申請の流れ・注意点

    【令和5年版】リフォーム減税の対象工事・申請の流れ・注意点

    自宅のリフォームを行う際、内容によってリフォームの減税制度の対象となる場合があります。リフォームの減税制度にはいくつかの種類があるので、仕組みや条件、それぞれの特徴を正しく理解することが大切です。 この記事では、2022年度の税制改正の内容を踏まえて、現行のリフォームの減税制度の内容について解説します。また、利用するために必要な手続きも併せて見ていきましょう。 リフォームの減税制度とは リフォームの減税制度では、一定の要件を満たすリフォームを行った場合に減税を受けられます。リフォームの減税制度は全部で5種類あり、各減税制度によって対象となるリフォームの内容が異なります。各リフォームの減税制度と、対象となるリフォームの内容は以下のとおりです。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)目次/概要」 前半部分では各リフォームの減税制度について、後半部分では対象となるリフォームの具体的な工事内容について解説します。 1.所得税の控除 所得税を対象としたリフォームの減税制度は、リフォーム促進税制と住宅ローン減税の2種類があります。2つの制度を併用することはできないため、自身の状況を踏まえてどちらかを選択する必要があります。まずはそれぞれの特徴や注意点について解説します。 リフォーム促進税制 リフォーム促進税制とは、特定の性能向上リフォームを行った場合に利用できる減税制度です。後程説明する住宅ローン減税とは異なり、リフォームローンの有無にかかわらず利用できます。このリフォーム促進税制は、リフォーム費用を大きく3つに分類し、控除額を計算します。 図中Ⓐは「10%控除の対象となる費用」です。図中Ⓐの限度額(以下10%控除限度額という)は、対象となる工事の内容ごとに定められています。なお、上記①~⑤に複数該当するリフォームを行う場合、該当した分だけ10%控除限度額が大きくなります。ただし、⑤長期優良住宅リフォームは①耐震リフォームや③省エネリフォームと併用することができないので注意が必要です。リフォームの内容のごとの限度額は以下のとおりです。 リフォームの内容 10%控除限度額 ①耐震リフォーム250万円 ②バリアフリーリフォーム200万円 ③省エネリフォーム250万円※ ④三世代同居対応リフォーム250万円 ⑤長期優良住宅リフォーム250万円※ ※太陽光パネル設置の場合350万円 図中Ⓑは「5%控除の対象となる費用」です。図中Ⓑの限度額は、1,000万円-Ⓐで計算できます。内訳としては、10%控除限度額を超過してしまった費用と、①~⑤に該当しないリフォームにかかる費用の2種類です。 図中Ⓒは「控除の対象とならない費用」です。リフォーム費用総額のうち、1,000万円を超えた部分については控除の対象となりません。なお、図中Ⓐ+Ⓑが1,000万円を超えない場合、Ⓒの費用が発生することはありません。 リフォーム費用をⒶ、Ⓑ、Ⓒの3つに分類したうえで、Ⓐ×10%+Ⓑ×5%が控除額となります。 注意点として、計算に用いられるリフォーム費用は、国土交通大臣が工事内容ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」を用いて計算した金額であることが挙げられます。実際にかかった費用ではないので、あらかじめ金額を確認しておくことが重要です。 出典)国土交通省ホームページ 住宅ローン減税 住宅ローン減税は、住宅の購入にあたって住宅ローンを組む場合に利用できる制度ですが、リフォームローンを組む場合でも利用できます。利用条件は以下のとおりです。 ①償還期間が10年以上であること ②リフォーム費用合計額(補助金を控除した金額)が100万円を超えていること ③対象となる第1号~第6号工事のいずれかに該当する工事であり、建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人の証明を得ること ④その他リフォームを行う住宅等の条件を満たすこと 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅵ.住宅ローン減税編」 住宅ローン減税は、10年間にわたって毎年の「年末ローン残高の0.7%」が所得税から控除されます。リフォーム費用分にあたる年末ローン残高(上限2,000万円)×0.7%の控除が受けられるので、1年あたりの最大控除額は14万円までとなります。 2.固定資産税の減額 固定資産税を対象としたリフォーム減税は、対象となるリフォーム工事をした翌年度の固定資産税額のうち、一定割合を控除する仕組みです。具体的な減額割合はリフォームの内容によって以下のように異なります。 リフォームの内容 減額割合 家屋面積の上限 ①耐震リフォーム1/2120㎡相当分まで ②バリアフリーリフォーム1/3100㎡相当分まで ③省エネリフォーム1/3120㎡相当分まで ④三世代同居対応リフォーム減額なし- ⑤長期優良住宅リフォーム2/3120㎡相当分まで 上記のように、リフォームの内容によって家屋面積に上限がある点に注意しておきましょう。併用は基本的にできませんが、バリアフリー+省エネリフォームの場合のみ併用が可能です。 3.贈与税の非課税措置 親などから資金援助を受けてリフォームする場合、条件によっては贈与税の非課税措置が利用可能です。贈与税には基礎控除が設けられており、そもそも贈与資金が年間110万円までであれば、どのような用途であっても原則非課税となります。 そのうえで、親や祖父母などからリフォーム資金の贈与を受ける場合は、一定の条件を満たすことで最大1,000万円までが非課税となります。条件には面積や最低工事費用、贈与を受ける人の年齢といったさまざまなものがありますが、一般的なリフォームであれば、自然と満たしているものが多いのも特徴です。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅶ.贈与税の非課税措置編」 4.登録免許税の特例措置 個人が対象となるリフォームが行われた住宅を購入した場合、所有権移転登記に係る登録免許税の特例措置の対象となります。通常は課税標準額×2%の登録免許税がかかるところが、0.1%まで軽減されます。特例を受けるためには、申請書類を法務局に提出する必要があります。リフォームが行われた住宅を購入する場合には、売り主や仲介会社に書類について確認してみましょう。 なお、中古住宅を購入した後にリフォームを行う場合は対象外となります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅷ.登録免許税の特例措置編」 5.不動産取得税の特例措置 宅地建物取引業者が中古住宅を購入する場合、対象のリフォームを行ったうえで個人に譲渡することを条件に、不動産取得税の控除を受けることができます。また、個人が新耐震基準を満たしていない中古住宅を購入し、購入後に耐震リフォームを行う場合も、不動産取得税の控除を受けることができます。 どちらの場合も、購入する中古住宅の新築日の日付に応じて控除額が決定します。新築日が前であるほど控除額は小さくなります。 出典)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「リフォーム減税制度の概要 Ⅸ.不動産取得税の特例措置編」 リフォームの減税制度が適用される工事の種類 リフォームの減税制度を利用するためには、適用される工事であるかどうかを事前に確認することが大切です。ここでは、適用対象となる工事の種類を具体的に見ていきましょう。 耐震リフォーム 耐震リフォームとは、住宅の耐震化に関するリフォーム工事のことを指します。主に古い耐震基準で建てられた建物について、現行の耐震基準に適合するように行われる補強・改修を行う工事のことです。 バリアフリーリフォーム バリアフリーリフォームとは、高齢者や障がい者が安全かつ快適に生活するために必要なリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「通路等の拡幅」「階段の勾配の緩和」「浴室改良」「段差の解消」などの工事が対象となります。 要介護もしくは要支援の認定を受けている人や、高齢者・障がい者が居住していることなどが、リフォームの減税制度の適用条件となっています。 省エネリフォーム 省エネリフォームとは、住宅の省エネ性能を上げるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「窓や壁などの断熱工事」「高効率空調機の設置工事」「太陽光発電設備の設置工事」などが該当します。注意点として、リフォーム減税の適用には窓の断熱工事が基本的に必須とされていることが挙げられます。 同居対応リフォーム 同居対応リフォームとは、親と子・孫の三世代が同居をするためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「キッチン」「浴室」「トイレ」「玄関」のいずれかの増設工事を指し、このうち2つ以上の設備が複数ある場合、リフォームの減税制度の対象となります。 ただし、あくまでも「同居」が条件であるため、離れなどに増設した場合は対象とならない点に注意が必要です。 長期優良住宅化リフォーム 長期優良住宅化リフォームとは、シロアリ対策や耐震補強といった住宅の耐久性を高めるためのリフォーム工事のことです。具体的な施工内容としては、「外壁を通気構造等とする工事」「浴室または脱衣室の防水性を高める工事」「シロアリ対策」「断熱リフォーム」など11種の工事が対象であり、長期優良住宅の認定を取得することでリフォームの減税制度が利用できます。 主なリフォーム費用の相場や活用できる補助金については、以下の記事で詳しく解説されているので、参考にしてみてください。 関連記事はこちらリフォーム費用の相場と安く抑えるコツ リフォームの減税制度の申請方法 リフォームの減税制度を利用するためには、工事を行ったあとに自分で申請手続きを行う必要があります。ここでは、申請のタイミングと必要書類について解説します。 工事を行った翌年に確定申告を行う リフォームの減税制度を利用する場合、確定申告を行う必要があります。リフォーム工事の完了日、あるいは工事契約書に記された日付を基準日とし、その翌年の2月中旬~3月中旬にかけて申告しなければなりません。 なお、会社員などの給与所得者であっても、制度を利用するためには自分で確定申告を行う必要があります。ただし、翌年以降は勤務先の年末調整で手続きを済ませられるため、負担が大幅に軽減されます。 ただし、利用するリフォームの減税制度によっては、確定申告以外にも手続きが必要な場合もあります。 例えば、固定資産税のリフォームの減税制度を利用する場合は、工事が完了してから3ヶ月以内にお住まいの都道府県・市区町村に申請する必要があります。 必要書類は工事内容によって異なる リフォームの減税制度を利用するには、リフォーム工事が適用条件を満たしているかを証明するための書類を提出する必要があります。必要書類は利用する制度や工事内容によっても異なりますが、以下のようなものが挙げられます。 確定申告書 登記事項証明書 増改築等工事証明書等 工事請負契約書 住宅ローン残高証明書 住宅耐震改修証明書(耐震リフォームの場合) 介護保険の被保険者証の写し(バリアフリーリフォームの場合) 必要書類のなかには、工事を担当した施工会社に用意してもらう必要がある場合もあります。そのため、国税庁のホームページなどで確認しておくとともに、施工会社にも必要な手続き・書類について相談しておくと安心です。 まとめ リフォームの減税制度にはさまざまなものがあります。各制度の利用条件を確認し、どのリフォームの減税制度を利用できるかを確認することが大切です。 また、リフォームの減税制度を利用するためには、必要書類を整えたうえで確定申告による手続きを行う必要があります。利用条件だけでなく、必要な手続きについても忘れずに調べておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安 住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじ...記事を読む

  • 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリット、普通建物賃貸借契約との違い、手続き方法を分かりやすく解説

    終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

    終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借契約の概要やメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。 終身建物賃貸借契約とは? 終身建物賃貸借契約とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。 賃借人は生涯同じ家で安心して生活でき、一代限りの契約であるため、死亡時に相続は発生しません。基本的に入居できるのは60歳以上に限られます。ただし、60歳以上の配偶者との同居であれば、60歳未満でも入居ができます。 なお、終身建物賃貸借契約をするには、対象となる不動産が都道府県知事の認可を受けている必要があります。また、賃貸住宅が一定の基準に適合していることも要件です。 出典)東京都住宅政策本部「終身建物賃貸借制度」 終身建物賃貸借契約のメリット 終身建物賃貸借契約のメリットは以下のとおりです。 死亡するまで住み続けられる 終身建物賃貸借契約は契約期間が終身であるため、賃借人が死亡するまで同じ家に住み続けられ、賃貸人からの解約は、原則以下のとおりです。 老朽や損傷などにより、住宅を維持できない場合 入居者が長期にわたり居住しておらず、住宅の管理が困難な場合 入居者に不正行為や公序良俗に反する行為、事実が判明した場合 中途解約は基本的に都道府県知事の承認が必要です。それに加え、6か月前に入居者に対して解約の申入れを行わなければならず、急に賃貸人から退去を求められることが少ない点も安心です。 なお、老人ホームへの入所や親族との同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申入れを行うことで、賃借人からの解約が可能です。 契約終了後の手続きが簡単 終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡によって契約が終了します。相続が発生せず、契約終了の手続きが不要のため、相続人に迷惑をかけずに済みます。同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。 バリアフリーの要件を満たしている 終身建物賃貸借契約の対象不動産は、一定のバリアフリー基準を満たしています。「段差のない床」「浴室等の手すり」などが備わっており、高齢者にとっては住みやすいでしょう。 高齢者でも家を借りられる 一般的な賃貸住宅では、健康面や金銭面の不安から高齢者の入居を敬遠するケースもあります。それに対し、終身建物賃貸借契約は、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度であるため、高齢を理由に入居を断られる心配がありません。 更新料がかからない 普通建物賃貸借契約では契約期間が定められており、契約更新の際に家賃1ヵ月分の更新料がかかるのが一般的です。一方、終身建物賃貸借契約は契約期間が終身のため、更新料はかかりません。同じ家に長く住む場合は、住居費の負担軽減が期待できます。 終身建物賃貸借契約のデメリット 終身建物賃貸借契約には、以下のようなデメリットもあります。 事前に認可されている不動産でないと利用できない 終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。認可されている不動産はまだ少ないので、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。 同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できない 終身建物賃貸借契約は、賃借人や同居人に一定の制限があります。賃借人は、基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないので注意が必要です。 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違い 終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違いは以下のとおりです。 区分 終身建物賃貸借契約 普通建物賃貸借契約 定期建物賃貸借契約 契約の方法公正証書等の書面による契約に限る書面でも口頭でも可公正証書等の書面による契約に限る 期間または期限賃借人の死亡に至るまで1年以上または期間の定めなし期間の定めなし 契約の更新無し正当事由がない限り更新更新なし、再契約が必要 賃料増減額請求権 増減を請求できる※1 増減を請求できる※2 増減を請求できる※3 相続の有無無し有り有り ※1 賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない ※2 賃料を増額しない特約があるときは増額を請求できない ※3 増減額請求権を排除する特約を定めることが可能 終身建物賃貸借契約は、契約方法が公正証書等に限られ、契約期間が終身で更新や相続がないのが特徴です。 終身建物賃貸借契約の手続き方法 終身建物賃貸借契約は、賃借人側に特別な準備は必要ありません。都道府県ごとに、終身建物賃貸借契約が利用できる住宅一覧が公表されているため、確認して問い合わせてみましょう。入居したい物件が見つかったら、賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結します。 出典)東京都終身認可住宅一覧(令和5年4月1日現在) 賃貸人の手続き 賃貸人が終身建物賃貸借契約をするには、事前に都道府県知事の認可を受ける必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。 賃貸住宅の概要や賃貸条件等を記載した「事業認可申請書」を作成する 間取図等の必要な書類を添付する 都道府県知事等の自治体の長に提出する 一定のバリアフリー基準等に適合していることが要件となるため、物件の状況によっては手すりの設置などの対応も必要です。 出典)国土交通省住宅局安心居住推進課「終身建物賃貸借契約の手引き」 まとめ 高齢者は、健康面や金銭面の問題で賃貸住宅の入居を断られるケースが少なくありません。しかし、終身建物賃貸借契約を利用できる不動産であれば、高齢者でも安心して同じ家に住み続けられます。老後も賃貸暮らしを続けたい場合は、終身建物賃貸借契約に対応した物件を探してみてはいかがでしょうか。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老後にリースバックを利用すると得られる4つのメリット リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックを利用することで老後の不安を解消し、より快適な生活が送れるように...記事を読む

  • 【2022年度版】リフォームで活用できる補助金の種類や金額の目安、申請時の注意点を解説

    【令和5年版】リフォームで活用できる補助金の種類と金額の目安

    住宅のリフォームを検討する際には、補助金制度の仕組みにも目を向けて計画を立てるのがおすすめです。補助金には全国一律で適用されるものと、自治体ごとに独自で設けられているものがあるので、あらかじめ細かく情報収集することが大切です。 この記事ではリフォーム関連の補助金の種類やそれぞれの仕組み、利用条件などについて詳しく解説します。 補助金を活用できるリフォームの種類 一口にリフォームといっても、その内容は目的によって異なります。そして、どのような種類のリフォームを行うかによって、補助金の支給対象になるかどうかも変わります。 補助金を活用しやすいリフォームの代表的な種類は以下のとおりです。 介護・バリアフリーに関するリフォーム 介護やバリアフリーに関するリフォームでは、特定の施工内容について、介護保険を利用した住宅改修制度などの補助金を活用することができます。たとえば、トイレを和式から洋式に換える、浴室の扉を引き戸にするなど、介護に必要なリフォームは補助金の支給対象となります。 また、「手すりを設置する」、「床の段差を解消する」、「床を滑りにくい素材に変更する」といったバリアフリー化に関する施工も補助金の支給対象です。 省エネ・エコ・断熱に関するリフォーム 省エネやエコに繋がるリフォームでは、持続可能な住環境の推進を目的としたリフォームが補助金の支給対象となります。具体的には、窓や壁などの断熱リフォーム(複層ガラスの導入、内窓の設置など)、高効率給湯器(エコキュートなど)の設置、節水性の高いトイレに交換するといった施工が挙げられます。 また、太陽光発電システムや蓄電池といった「創エネ」に関する設備の導入にも、補助金制度を活用できる場合があります。 耐震診断・耐震改修に関するリフォーム 耐震診断や耐震補強工事といった基本的な安全性に関わるリフォームは、多くの自治体が補助金の支給対象としています。具体的には、専門家による耐震診断の費用や耐震補強・改修工事などが挙げられます。なお、旧耐震基準で建てられた建物(1981年5月31日以前に建築確認を受けた、倒壊リスクが高いとされる建物)であることが、利用条件に含まれる場合もあるため、注意が必要です。 また、自治体によっては、安全面や周囲への被害防止の観点から、倒壊の危険があるブロック塀の撤去や解体工事の費用についても補助金の支給対象としています。 テレワークに関するリフォーム 自治体によっては、「新しい生活様式」の推進に向けたテレワーク関連のリフォーム補助金を取り扱っている場合があります。具体的には、間仕切りの設置によるワークスペースの確保や換気、防音工事、衛生管理対策などが挙げられます。 また、国土交通省が実施している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」においても、テレワークスペースを確保するためのリフォーム工事が補助金の支給対象となる場合があります。ただし、耐震改修工事や断熱改修工事などの性能向上工事と併せてリフォームを行う必要があるので注意が必要です。 その他のリフォーム 自治体によっては、アスベスト除去や景観の改善など、健康被害の予防や環境整備に関するリフォーム補助金が設けられている場合があります。また、豪雪地域の自治体では、屋根の改修などの雪対策に利用できる補助金制度が設けられている場合もあります。 それ以外にもシンプルな増改築や間取り変更、外壁の補修、床暖房の設置にまで利用できる補助金など、地域によって異なる特色があるので、自治体のホームページなどで調べてみると良いでしょう。 リフォームで活用できる補助金の要件や金額の目安 補助金の仕組みは種類によって異なるため、それぞれの特徴を的確に把握しておくことが大切です。ここでは、代表的な5つの補助金制度について、具体的な要件や金額の目安を解説します。 介護保険 介護保険には、要支援、要介護と自治体から認定された方がバリアフリーリフォームを行う際に、工事費用の一部を補助してもらえる制度が設けられています。運営主体は各自治体ですが、全国共通で利用できる補助金制度です。 利用にあたっては、担当のケアマネージャーなどと相談し、理由書を作成してもらう必要があります。また、介護保険の補助金利用は、着工前に申請を行わなければならないため、注意が必要です。 補助金の上限額は20万円であり、工事費用の最大9割までが補助される仕組みです。なお、一回の工事費用が20万円に満たなかった場合、次回に差額分を利用可能です。 出典)厚生労働省「介護保険における住宅改修」 長期優良住宅化リフォーム推進事業 長期優良住宅とは、長期間にわたって快適かつ安全に居住できる施工が行われた住宅のことです。一般住宅から長期優良住宅へのリフォームを行う際に、一定の性能向上を満たしていれば、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金制度を利用できます。 補助金額は工事内容に応じて異なりますが、一戸あたり100~250万円となっています。また、三世代同居対応の設備拡充や、子育てをしやすい住宅への改修なども対象となる場合があります。 この制度を利用するためには、着工前に住宅診断(インスペクション)を行う必要がありますが、申請手続きは居住者本人ではなく施工会社が行います。あらかじめ施工会社に対応してもらえるかどうかを確認しておくと良いでしょう。 出典)国立研究開発法人建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業」 住宅エコリフォーム推進事業 住宅の省エネ化を推進するための事業であり、ZEHレベルの高い省エネ性能へリフォームする場合に活用できる補助金制度です。ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。具体的には省エネ診断、省エネ設計、省エネ改修などが挙げられます。 なお、省エネ診断では「補助率3分の1(民間実施の場合)」、省エネ設計も「補助率3分の1(民間実施の場合)」、省エネ改修では「補助率11.5%(一戸建ての上限は512,700円)」が限度となっています。 出典)住宅エコリフォーム推進事業実施支援室「事業概要」 既存住宅における断熱リフォーム支援事業/次世代省エネ建材実証支援事業 既存住宅における断熱リフォーム支援事業と次世代省エネ建材実証支援事業は公募形式による補助金制度で、高性能な断熱材や「次世代省エネ建材」を使用したリフォームを行うときに適用されます。 「断熱リフォーム支援事業」では、断熱材、断熱用の窓、断熱用ガラス、断熱仕様の玄関ドアを用いるリフォームを対象に、一戸あたり120万円を上限として工事費用の3分の1以内が支給されます。 「次世代省エネ建材実証支援事業」では、外張り断熱、内張り断熱、窓断熱の3つの区分から施工内容を選択可能であり、外断熱なら一戸あたり300~400万円、内断熱なら一戸あたり200万円、窓断熱なら一戸あたり150万円を上限に、対象経費の2分の1以内が支給されます。 出典) ・公益財団法人北海道環境財団「既存住宅の断熱リフォーム支援補助金について」 ・一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和4年度 次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介」 リフォームで活用できる補助金の申請時の注意点 リフォームに関する補助金を利用する際には、申請のタイミングに注意する必要があります。 リフォームを着工する前に申請が必要な場合がある 補助金制度の中には、「着工前」に申請を行わなければならない場合があります。この場合、リフォーム工事の着工後や完了後に申請をしても受理されず、補助金が利用できないため注意が必要です。 また、利用条件として工事完了の期限が設けられている場合もあるため、スケジュールを逆算したうえで工事日を調整することも大切です。 予算の上限で早めに締め切られることがある 補助金制度の中には、あらかじめ自治体などの運営主体が予算の上限総額を設定している場合があります。予算の上限に達すると、期限内であっても締め切られてしまうため、なるべく早く申請手続きを行うことが大切です。 なお、一般的な補助金は年度ごとに募集がかけられ、夏や秋ごろには利用枠が埋まってしまう恐れがあります。補助金利用の可否によって出費には大きな差が生まれるので、施工会社にも前もって相談しておくと良いでしょう。 補助金を申請するには? 補助金には様々なものがあり、種類によって取り扱う窓口は異なります。また、申請にあたって必要となる書類や手続きのタイミング、具体的な手順などもそれぞれ違うので注意が必要です。 たとえば、介護保険の補助金制度を利用するなら、まずは担当のケアマネージャーに相談し、理由書を作成してもらう必要があります。円滑に申請を済ませるためにも、利用したい補助金に応じてどのような手続きが求められるのかを確認しておきましょう。 まとめ 住宅のリフォームには、介護・バリアフリーに関するものや省エネ・環境保護に関するものなど、様々な種類の補助金制度が用意されています。その中から適切な補助金制度を正しく申請することで、リフォーム費用の一部を賄える場合もあります。リフォームを行う際には、事前に補助金制度の仕組みを調べておくことが大切です。 また、補助金には施工会社を通して申請するものも多いので、不明点があれば遠慮をせずに専門家へ相談しましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リフォーム費用の相場と安く抑えるコツ 住み始めた頃は問題ないと感じていても、月日の経過に伴って住まいに不便さを感じる場面も出てきます。今後の生活を快適にするためには、リフォームを検討してみるのも選択肢の1つです。しかし、実際にリ...記事を読む

  • 倒産や破産、特別清算の違いとは?根拠法や用語の意味を解説

    倒産や破産、特別清算の違いとは?根拠法や用語の意味を解説

    会社の経営が立ち行かなくなると、廃業を検討することもあるでしょう。「倒産」「破産」「特別清算」はいずれも廃業に関する用語ですが、廃業時に適切な方法を選択するためにも、用語の意味や違いを理解しておくことが大切です。 この記事では、「倒産」「破産」「特別清算」の意味やそれぞれの根拠法、違いについて解説します。 倒産とは 倒産は、中小企業倒産防止共済法第2条おいて、下記のいずれかに該当する場合と定義されています。 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立てがされること。 手形交換所において、その手形交換所で手形交換を行っている金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してされること。 電子記録債権法第二条第二項 に規定する電子債権記録機関において、その電子債権記録機関で電子記録債権を取り扱う金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してされること。 前三号に掲げるもののほか、過大な債務を負っていることにより事業の継続が困難となっているため債務の減免又は期限の猶予を受けることを目的とするものと認められる手続であって、その開始日を特定することができるものとして経済産業省令で定めるものがされること。 出典)中小企業倒産防止共済法(第2条) この条文から、倒産とは、法人や個人が破産手続・特別清算開始などの申立て、金融取引の停止、業績不振などによって経済的に破綻し、債務弁済や事業継続が困難な状態になることと言えます。 破産とは 破産とは、負債の整理方法の1つです。裁判所に破産手続開始の申立てをし、破産手続開始決定がされることで、債務者が支払不能の状態にあることを宣言します。なお、支払不能は破産法第2条において、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいうと定義されています。 出典)破産法(第2条) 破産手続開始決定の際は、原則として裁判所によって破産管財人(弁護士など)が選任されます。破産管財人は、債務者の全ての財産を現金化して債権者に分配します。破産管財人が選任されると、債務者は次のような制限を受けることがあります。 居住制限を受ける(転居・長期の旅行は裁判所の許可が必要) 郵便物が破産管財人に転送されることがある 破産管財人に対して財産状況の説明義務を負う 個人の場合は、破産手続開始の申立てをすると、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます。ただし、破産手続開始決定だけで債務の支払義務が免除されるわけではありません。事案に応じて免責判断が行われます。虚偽の説明をした場合など、事由によっては免責が認められないこともあります。法人には免責制度はありませんが、破産によって解散すると法人格を失い、債務が消滅するのが一般的です。 出典)裁判所「自己破産の申立てを考えている方へ」 特別清算とは 特別清算とは、債務超過の状態で解散した株式会社を清算するための法的手続きです。会社法第510条では、特別清算を開始する事由について下記のように記載されています。 清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること。 債務超過の疑いがあること。 出典)会社法(第510条) 特別清算は破産に比べると厳格な手続きを要求されず、簡易かつ迅速に会社を清算できるのが特徴です。特別清算開始の決定後、会社が選任した清算人が財産目録や協定案の作成、債権者集会の招集などを行います。 債権者集会において、「出席者の過半数」および「総債権額の3分の2以上」の同意を得られると協定案が可決されます。その後、裁判所の協定認可の決定により、特別清算手続きが実施されます。 協定案の内容は、債務者の間で平等であることが求められます。ただし、不利益を受ける債権者の同意がある場合などは、債権者の間で差を設けることも可能です。 倒産や破産、特別清算の違い 「倒産」「破産」「特別清算」は、それぞれ根拠法に違いがあります。 倒産は「中小企業倒産防止共済法」で定義されている用語です。破産は「破産法」、特別清算は「会社法」において、申立てや手続開始、効力などについて記載されています。 また、倒産の根拠法である「中小企業倒産防止共済法」の中で、破産手続開始や特別清算開始が倒産の状態に該当すると記載されています。このことから、倒産は法人・個人が債務弁済や事業継続が困難な状態にあることを意味する大きな概念であり、破産や特別清算は倒産の1つであることがわかります。なお、負債の整理方法として、破産や特別清算のほかに「任意整理」「特別調停」「個人再生」「民事再生」などの方法を選択することも可能です。 まとめ 「倒産」「破産」「特別清算」はいずれも廃業に関する用語ですが、根拠法が異なります。実際に廃業を選択する際には、弁護士などの専門家に依頼し、その意味を正しく理解したうえで手続きを進めるようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 ”明るい廃業®”を掲げる新生銀行に ニッポンの経営者の本音を聞いた 日本には、2021年6月時点でおよそ367万4000社の企業があります。(総務省・経済産業省による発表)そのうち中小・小規模事業者の数は99.7%を占めるといいます。 そして、2017年に中...記事を読む

    2023.01.04制度
  • 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説

    親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目されています。家族信託とはどのような制度なのでしょうか。 この記事では、家族信託の仕組みやメリット・デメリット、手続き方法について解説します。 家族信託とは 家族信託とは、財産の管理・処分を家族に任せるための仕組みです。預貯金や不動産、有価証券のように換価できる財産を託すことができ、以下の三者で構成されます。 委託者(財産管理を任せる人) 受託者(委託者から任された財産を管理する人) 受益者(財産から生じる利益を受け取る人) 認知症などによる判断能力の低下に備えて、財産を管理する権限を家族(受託者)に与えます。本人(委託者)が判断能力を失った後は、本人の意向に沿って家族が財産管理を行います。家族信託では、委託者と受益者が同じ人になるケースが一般的です。 出典)家族信託普及協会「家族信託とは?(制度の概要)」 家族信託と成年後見制度の違い 成年後見制度とは、認知症などの理由で、財産管理や契約手続きなどを自分で行うのが難しい人を保護し、支援するための制度です。本人の判断能力が低下した後は、本人に代わって後見人が財産管理等の事務を行います。 成年後見制度は認知症対策として有効ですが、本人の財産保護の観点から、財産の運用や処分について柔軟に対応できないのがデメリットです。また、弁護士や司法書士などの専門職が後見人になる場合は、毎月2万円~6万円程度の支払いが発生し、原則として亡くなるまで続きます。 一方、家族信託は信託契約の内容を自由に決められるため、柔軟な財産管理と運用が可能です。 出典)東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」 家族信託と商事信託の違い 家族信託と商事信託の大きな違いは、「受託者」です。上述のとおり、家族信託では家族が受託者となるのに対し、商事信託は信託会社や信託銀行が受託者となります。 つまり、営利目的で業として行われる信託であるため、信託報酬や手数料等の費用が発生することになります。一方で、家族信託と違って専門家が適切に財産を管理してくれます。「家族に迷惑をかけたくない」、「専門家に適切な財産管理をお願いしたい」といった場合は、商事信託も検討してみましょう。 家族信託は商標登録されている 家族信託という言葉は、一般社団法人家族信託普及協会が以下の目的で商標登録をしている言葉です。 「家族信託」という言葉を使いながら、家族親族でない方が「業として」信託を引き受ける商品名にこの言葉を使用するなど、一般の方々に誤解を与えてしまう使い方をされないことを防止する目的 同協会によると、正しく「家族信託」の名称を使用する場合は、協会の許可等なく「家族信託」という名称を使用しても良いとされています。ただ、各種広告やホームページ等を見ると、商標登録されている「家族信託」という名称を避け、「民事信託」等の名称が用いられている場合もあります。 出典)一般社団法人家族信託普及協会「商標登録につきまして」 家族信託のメリット 家族信託には以下のようなメリットがあります。 認知症の親の財産を犯罪から守ることができる 認知症になると判断能力が低下するため、詐欺などの犯罪に巻き込まれる恐れがあります。判断能力があるうちに信託契約を締結することで、信頼できる家族に財産管理を任せることが可能です。また、親が認知症になった後も、本人の意向に沿って子どもが管理・運用できるため、財産を犯罪から守ることができます。 子どもの判断で親の財産の管理・運用・処分ができる 家族信託では、受託者が委託者の財産を管理します。親が認知症になった場合は、受託者である子どもの判断で親の財産の管理・運用・処分が可能です。介護費用などが必要になっても、親の財産を現金化できるので安心です。 相続対策として活用できる 家族信託では、契約で財産の承継順位を定めることが可能です。最初に指定した受益者が亡くなっても、次の受益者を誰にするかを指定できます。生前贈与や遺言には、このような機能はありません。 また、不動産を複数の相続人で共有する場合、賃貸経営や処分を行う際は共有者全員の同意が必要です。家族信託で共有者の1人に不動産の管理処分権限を与え、不動産から生じる収益は各共有者に公平に分配することによって、相続トラブルの防止が期待できます。 家族信託のデメリット 家族信託は信託財産の金額に応じて、弁護士や司法書士への報酬、公正証書の作成費用、登記費用などがかかります。専門家への報酬は基準がないため、事前に料金を確認した上で依頼することが大切です。 信託財産から年3万円以上の収益が発生する場合は税務署への書類提出が求められるなど、受託者は税務申告の手間がかかる恐れがあります。 また、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。大規模修繕の予定がある不動産などがある場合は、信託契約を締結する前に税理士と相談しましょう。 家族信託の手続き方法 家族信託の手続きの流れは以下のとおりです。 ①家族信託の目的、信託財産、受託者と受益者の決定 まずは家族信託を利用する目的を明確にした上で、信託する財産の範囲や管理方法、受託者と受益者を誰にするかなどを決めます。信託や相続に関する専門知識も必要になるため、弁護士などの専門家に相談しましょう。 ②信託契約の締結・公正証書の作成 次に、信託契約書を作成して契約を締結します。信託契約の際は、金融機関で信託口口座を開設する際に提出が求められるため、公正証書を作成しましょう。契約時に公証人が意思確認を行うため、信託契約の有効性を証明することができます。 ③信託財産の名義変更 信託契約を締結したら、信託財産の名義を委託者から受託者に変更します。信託財産に不動産が含まれている場合は、「所有権移転登記」と「信託登記」の2つが必要です。 所有権移転登記は、不動産の名義を委託者から受託者に移転する手続きで、委託者と受託者が共同で申請します。 信託登記は、不動産が信託財産であることを第三者に対抗するための登記です。受託者等の住所・氏名や信託の目的、不動産の管理方法などを登録します。 ④信託口口座の開設 受託者には分別管理義務があり、受託者固有の財産と信託された財産を明確に分けて管理することが求められます。信託財産を分別管理するために、金融機関で信託口口座を開設します。信託口口座の財産は、信託契約で定めた目的に従って、受託者の判断で管理・運用が可能です。 まとめ 家族信託を利用すれば、家族に財産の管理や処分を任せられます。成年後見制度に比べると柔軟な財産管理が可能で、相続対策に活用できるのもメリットです。親の財産管理を行う予定がある場合は、家族信託を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続...記事を読む

  • 中小企業退職金共済とは? 制度概要とメリット・デメリット、加入手続きの流れを解説

    中小企業退職金共済とは? 仕組みやメリット・デメリットを解説

    中小企業退職金共済(中退共)とは、中小企業のための退職金制度です。自社で退職金制度を持つのが難しい中小企業でも、中小企業退職金共済に加入することで、手軽に退職金制度を導入できます。 この記事では、中小企業退職金共済の仕組みやメリット・デメリット、加入手続きの流れについて解説します。 中小企業退職金共済とは 中小企業退職金共済とは、主に中小企業の常用労働者を対象とした退職金共済制度です。事業主が掛金を納付することによって、従業員に中小企業退職金共済から退職金が支払われます。 自社で従業員の退職金を管理・運用することが難しい中小企業でも、中小企業退職金共済に加入すれば簡単に退職金制度の導入が可能です。 制度開発の背景・目的 中小企業退職金共済は、1959年(昭和34年)に中小企業退職金共済法に基づいて設けられました。単独で退職金制度を持つことが困難な中小企業に対して、事業主の相互共済の仕組みと国の援助で退職金制度を設け、従業員の福利厚生の充実と雇用の安定を図ることによって、中小企業の振興・発展に寄与することを目的としています。 制度の仕組み 中小企業退職金共済制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構(中小企業退職金共済事業本部)によって運営されています。中小企業退職金共済の仕組みは以下のとおりです。 出典)厚生労働省「一般の中小企業退職金共済制度のしくみ」 事業主が中小企業退職金共済と退職金共済契約を結ぶ 事業主は毎月掛金を納付する 従業員が退職したときは、事業主が中小企業退職金共済に退職届を提出する 退職者本人からの請求により、中小企業退職金共済から直接退職金が支払われる 掛金は全額事業主負担であり、従業員に負担させることはできません。掛金月額は5,000円以上30,000円未満で従業員ごとに選択することができます。 加入条件 中小企業退職金共済に加入できるのは、「常用従業員数」または「資本金・出資金の額」のいずれかが次の範囲内である企業です。個人企業や公益法人等は常用従業員数で判断します。 業種 常用従業員数 資本金・出資金の額 一般業種(製造業、建設業など) 300人以下 3億円以下 卸売業 100人以下 1億円以下 サービス業 100人以下 5,000万円以下 小売業 50人以下 5,000万円以下 常用従業員には、一週間の所定労働時間が同じ企業に雇用される通常の従業員とおおむね同等で、「雇用期間の定めがない者」「雇用期間が2ヵ月超の者」も含まれます。中小企業退職金共済に加入するためには、短時間労働者等の従業員を除き、原則として従業員が全員加入する必要があります。 出典)厚生労働省「よくわかる中小企業退職金共済制度」 中小企業退職金共済のメリット 中小企業が中小企業退職金共済制度に加入するメリットは以下のとおりです。 掛金の一部を国が助成する 中小企業退職金共済には、掛金の一部を国が助成する制度があります。助成期間中は掛金月額から助成額を控除した額を納付するため、事業主の負担軽減が期待できます。国からの助成は次の2種類です。 助成の種類 助成額 助成期間 新規加入助成 (1)掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)(2)短期労働者の特例月額(2,000~4,000円)は、(1)に300~500円を上乗せ 加入後4ヵ月目から1年間 月額変更助成 18,000円以下の掛金月額を増額する場合、増額分の3分の1 増額月から1年間 ただし、同居親族のみを雇用する事業主などは助成の対象外となります。 掛金は非課税 中小企業退職金共済の掛金には、税法上の特典が設けられています。法人の場合は損金(税務上の費用)、個人事業の場合は必要経費として全額非課税となるため、事業主の税負担の軽減が期待できます。 管理に手間がかからない 中小企業退職金共済は、退職金制度の管理に手間がかからないのもメリットです。毎月の掛金は口座振替で、従業員ごとの納付状況や退職金の試算額は中小企業退職金共済が知らせてくれます。そのため、手間をかけずに退職金制度の導入・運営が可能です。 中小企業退職金共済のデメリット 一方で、中小企業退職金共済には以下のようなデメリットもあります。 掛金の減額は原則できない 中小企業退職金共済では、原則として掛金月額の減額はできません。掛金月額の減額が認められるのは、次のいずれかの場合に限られます。 従業員が同意した場合 現在の掛金月額の継続が著しく困難であると厚生労働大臣が認定した場合 掛金月額の増額変更はいつでもできます。しかし、減額は簡単にできないため、掛金月額の設定は慎重に行うことが大切です。 出典)厚生労働省「よくわかる中小企業退職金共済制度」 元本割れする恐れもある 中小企業退職金共済は、掛金の納付期間によっては元本割れする恐れもあります。 掛金の納付月数が11ヵ月以下の場合、退職金は支給されません。また、12ヵ月以上23ヵ月以下の場合は掛金納付総額を下回り、元本割れとなります。中小企業退職金共済で元本割れを避けるには、24ヵ月以上の掛金納付が必要です。 出典)中小企業退職金共済事業本部「従業員の退職金は中小企業退職金共済制度(9.退職金について)」 従業員しか加入できない 中小企業退職金共済に加入できるのは従業員のみで、経営者や役員は加入できません。経営者が老後の生活に備えるには、中小企業退職金共済以外の制度を利用して自分で退職金を準備する必要があります。 中小企業の経営者や役員は、一定の条件を満たせば「小規模企業共済」に加入できます。退職金の準備に活用できるため、必要に応じて検討しましょう。小規模企業共済については、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら小規模企業共済とは?メリット・デメリットと加入までの流れを解説 中小企業退職金共済の加入手続きの流れ 中小企業退職金共済へ加入する場合は、事業主が手続きを行います。加入手続きの流れは以下のとおりです。 加入申込書に必要事項を記入して金融機関などに提出する 中小企業退職金共済本部と退職金共済契約を締結する 中小企業退職金共済本部から従業員ごとの「加入通知書」および「退職金共済手帳」が送付される 加入申込書は申込先の窓口に用意されています。銀行や信用金庫といった金融機関のほか、商工会議所などでも申込み可能です。常用従業員数が一定規模以上の場合は、「中小企業者であることの証明」の提出も求められます。 出典)中小企業退職金共済事業本部「手続きのご案内」 まとめ 退職金制度は、従業員にとっては退職後の生活の安定に不可欠なものです。従業員の意欲向上や雇用の安定につながるため、企業経営にもプラスの効果が期待できます。自社で退職金制度を持つのが難しい中小企業は、中小企業退職金共済への加入を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自営業の人の年金は少ない?年金対策も解説 自営業の人は、会社員に比べて年金が少ないといわれますが、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が異なる理由は、自営業の人と会社員では、適用される年金制度が異なるためです。年金が少ない...記事を読む

    2022.12.14制度
  • 不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説

    不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説

    不動産の売買や相続、住所変更などがあった場合は、不動産登記の手続きが必要です。しかし、「不動産登記」という言葉を聞いたことはあっても、詳細までは理解していないかもしれません。不動産登記の手続きは、自宅購入や相続の際に必ず必要になるので、基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、不動産登記の概要や手続きの流れ、必要書類、費用について詳しく解説します。 そもそも登記とは? 登記(登記制度)とは、一定の事項を公開された公簿に記載することによって、第三者に対してもその権利の内容を明らかにし、取引の安全と円滑化を図ろうとするものです。この記事で解説する「不動産登記」以外にも、「商業登記」や「相続登記」など、様々な種類があります。 不動産登記とは 不動産登記とは、土地や建物などの不動産の一つ一つについて、「どこに」「どれくらいの広さで」「誰が持っているのか」といった情報をコンピュータに記録することをいいます。この作業は、法務局の職員である登記官によって、専門的な見地から正しいのかを判断された上で行われます。 不動産登記は不動産登記法に基づいて、以下のような事項が記録され、法務局に保管されています。 土地や建物の所在地や構造・種類 不動産の所有者歴 不動産に設定された権利 金融機関の借入金額や利率 つまり、不動産登記を確認すれば、不動産の所在地や所有者、どのような権利を誰が所有しているかなどの情報がわかります。 不動産登記の効力 不動産登記の大きな役割が、第三者に不動産の所有権を法的に主張できるということです。民法第177条では、不動産の権利について次のように定めています。 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 出典)e-GOV 法令検索 民法第177条 つまり、登記がなければ不動産の所有者と法的には認められません。たとえば、不動産を相続した際、登記をせずに所有権が故人のまま、所有者が変更されていないと、相続人は売却ができません。 出典)法務局「不動産登記」 登記情報の見方 不動産登記の情報は、「登記簿謄本(登記事項証明書)」に記載されています。登記簿謄本の記載事項は以下4つに区分されます。 表題部 権利部(甲区) 権利部(乙区) 共同担保目録 1.表題部 表題部では不動産の所在地や面積、建物の種類・構造など、「どのような不動産であるのか」が記載されています。 2.権利部(甲区) 権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区では、「誰が不動産の所有者か」が記載されています。具体的には所有者の住所や氏名、取得日、取得経緯などが記載されています。 3.権利部(乙区) 乙区では、抵当権や地上権といった所有権以外の権利について記載されています。例えば、住宅ローンを組む場合は、金融機関の名前や金額、金利などが記載されます。 4.共同担保目録 抵当権が複数の不動産に設定されている場合、この共同担保目録にその旨が記載されています。住宅ローンを組む場合は、一般的には購入する不動産を担保として抵当権が設定されます。この時、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、それぞれの共同担保目録に記載されます。 関連記事はこちら登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 不動産登記が必要な場面 不動産登記の手続きが必要になる主な場面は以下のとおりです。 不動産を購入したとき 不動産を相続したとき 所有者の住所や氏名が変わったとき 住宅ローンを完済したとき 建物を取り壊したとき マイホームなどの不動産を購入したときは、新築なら「建物表題登記」や「所有権保存登記」、中古の場合は所有権が売主から買主に移ったことを証明する「所有権移転登記」を行います。 不動産を相続したときは「相続登記」、結婚や転居などで所有者の氏名や住所が変わったときは「住所等変更登記」が求められます。この2つの登記は義務化されるので注意が必要です。 関連記事はこちら住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 住宅ローン完済時は「抵当権抹消登記」を行います。なお、住宅ローン完済時は火災保険の質権設定の解除等、ほかにもしなければいけない手続きがあります。詳しくは以下の記事で解説しています。 関連記事はこちら住宅ローン完済後の手続きについて解説 建物を取り壊したときは「建物滅失登記」が必要です。建物を解体してから1か月以内に行わなければならないため注意しましょう。 不動産登記手続きの流れ 不動産登記手続きは、基本的に以下の流れで行います。なお、自分で手続きを行うのが難しい場合は、司法書士に代行を依頼することも可能です。 1.必要書類を準備する 不動産登記を申請をするには、必要な事項を記載した申請書とその添付書類の準備が必要です。登記申請書は法務局のホームページから取得できます。添付書類については登記原因によって異なるので注意が必要です。 2.登記申請書と添付書類を法務局に提出する 法務局によって管轄区域が定められているため、どこの法務局に書類を提出するのか確認が必要です。管轄区域はこちら(法務局のホームページに遷移します)から確認できます。 3.登記識別情報と登記完了証を受け取る 必要書類が受理されたら、法務局で内容の審査が行われます。問題なく手続きが完了したら、登記識別情報と登録完了証が作成されます。登記申請書に用いた印鑑を持って法務局に行くと、登記識別情報と登録完了証を受領できます。 出典)法務局「○登記の申請はどのような方法でしなければならないのですか?」 不動産登記にかかる費用 不動産登記にかかる主な費用は以下のとおりです。 必要書類の取得費用 登記にあたり、登記簿謄本や住民票の写し、印鑑証明書、固定資産税評価証明書などを取得する場合は、1通につき数百円の手数料がかかります。 登録免許税 登録免許税額は、登記の種類や、不動産の種別によって異なります。売買の場合、土地、建物は評価額の2%(土地は2023年3月31日までは0.15%)です。建物が住宅用家屋に該当する場合は、0.3%になります。住宅用家屋を購入する場合は、他にも減税制度が適用されます。詳しくは以下の記事で解説しています。 関連記事はこちら住宅購入時の優遇制度を解説 司法書士への報酬(司法書士に依頼する場合) 司法書士に依頼する場合は、上記費用以外に報酬や交通費などが請求されます。報酬は司法書士によって異なるため、ホームページなどで金額を確認した上で依頼するといいでしょう。 出典)国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」 まとめ 第三者に対して不動産の所有権を法的に主張するには、不動産登記が必要です。登記手続きを怠ると不動産取引をスムーズに進められず、トラブルの原因となります。不動産登記が必要な事由が生じた場合は、忘れずに手続きを行いましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 登記簿謄本(登記事項証明書)は、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類です。不動産の情報が記載されている「不動産登記簿謄本」と、法人の情報が記載されている「法人登記簿謄本」の2種類にわ...記事を読む

    2022.11.23制度
  • 介護保険制度<介護と保健ガイドブック(2)>

    <介護と保健ガイドブック>介護保険制度

    制度の概要 介護保険制度について 高齢による身体機能の衰えや、病気やケガなどによって介護が必要となったときには、介護サービスを提供する公的介護保険制度を利用することができます。新たな社会保険制度として平成12 年4月にスタートしたもので、介護が必要な人とその家族をできる限り社会全体で支えるための公的なサービスです。 介護保険は自治体が保険者となって制度を運営しています。40歳以上の人が被保険者となって保険料を負担し、介護が必要と認定されたときに介護サービスを利用する仕組みです。 介護保険では、利用者がサービスの種類や事業者を選ぶことができます。利用料は利用限度額の範囲内であれば、1割(一定以上の所得者の場合は2割あるいは3割*)の利用者負担で介護サービスを受けることができます。 ※詳細は本記事内「2021~2023年度の主な改正内容」を参照ください。 必要な介護サービスを受けながら、住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を実現していくために、上手に利用していきましょう。現在、介護サービスの基盤強化のために、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム*」の構築に向けた取り組みが進められています。 ※詳細は「家族を介護する必要が生じたなら…<介護と保健ガイドブック(1)>『地域包括ケアシステム』を参照ください。 介護サービスを利用できる人は? 公的介護保険の介護サービスは、介護保険に加入し保険料を納めている被保険者の内、下図の条件を満たし要介護認定を受けた人が利用できます。なお、実際に介護サービスを利用する場合は、介護サービス事業者との契約が必要になります。また、介護保険料額は、居住地域や被保険者の所得によって各自異なります。 申請方法から要介護認定までの流れ 介護サービスを受けるには 介護サービスを受けるには、要介護認定の申請が必要です。要介護認定とは、介護を必要としている人が「どの程度の要介護状態、要支援状態にあるか」を判断するものです。保険者である市区町村が調査を行い、要介護度を判定します。家族を介護する必要を感じたら、申請の手続きをしましょう。 介護保険の申請方法 相談できる窓口 介護される人が居住の市区町村役場の窓口(介護保険課など)で申請を行います。申請時は、申請書、本人の介護保険証(40〜64歳の特定疾病の人は健康保険証)と個人番号(マイナンバー)の確認ができるもの、主治医意見書を依頼するための主治医の情報、印鑑などが必要です(※詳細は自治体に要確認)。 主治医の情報は、申請書に主治医の名前・医療機関名・所在地などを記入します。主治医がいない場合は役所に相談し、高齢者医療に理解がある医師を紹介してもらいましょう。申請は家族が代理で申請することもできます。「地域包括支援センター」で申請の受付や代行も可能なので、所在 を確認して相談しましょう。 訪問調査 申請後、本人のもとへ市区町村の「認定調査員」(指定居宅介護支援事業者などに委託していることが多い)が訪れ、心身の状況などについて聞き取り調査(認定調査)を行い、その結果および主治医意見書に基づくコンピュータ判定(一次判定)を行います。 介護認定審査会 一次判定データは、市区町村に設けられた介護認定審査会にかけられ、保健、医療、福祉の専門家などが一次判定、訪問調査の結果と主治医意見書を基に、どの程度の介護が必要かを全国一律の基準により審査します。 要介護・用支援の認定 申請日から30日以内に「認定通知書」と「被保険者証」が届きます。要介護度区分に合わせて、ケアマネジャーが介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成していきます。 《主治医意見書について》 主治医意見書は、医学的な見地から認知症の有無や在宅介護で必要な配慮や介護の中身について、主治医が記入する書類です。主治医には、要介護者の普段の様子を把握している内科、老年内科、神経内科、整形外科などのかかりつけ医が適任です。区分の判定時に大きな影響を及ぼしますので、普段から主治医とのコミュニケーションを図っておきましょう。 要介護認定(要介護度の判定) 要介護認定について 要介護認定は、「非該当」と介護保険の対象となる「要支援1・2」「要介護1〜5」に区分されます。区分によって、受けられるサービスや利用限度額が異なります。要介護度認定は、どのくらい介護を必要としているかを判断するもので、本人の病気の重さと要介護度の重さが必ずしも一致しない場合があります。要介護認定の判定に不服がある場合は、再認定を要求することができます。 認定ごとの状態とサービス 非該当(自立) 歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能。薬の内服、電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある状態。社会的支援がなくとも生活ができる状態。介護保険を利用することはできないが、65歳以上であれば、市区町村で開催している一般介護予防事業に参加することができます。また、地域包括支援センターで基本チェックリストを用いた審査を受けることによって事業対象者と判定された場合には、介護予防・生活支援サービス事業を利用することができます。 要支援1・2 身体上または精神上の軽度の障害があるために、6か月継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態。訪問看護や福祉用具のレンタル・購入などのサービスが利用できる。 要介護1~5 身体上または精神上の障害があるために、6か月継続して、日常生活における基本的な動作の全部または一部について常時介護を要すると見込まれる状態。在宅あるいは施設入所での介護サービスを利用することができる。 図:要介護状態の区分(心身の状態の一例) ケアプランを作成する ケアプランを作成 要介護認定の通知を受け取ったら、ケアプラン(サービス利用計画書)を作成します。ケアプランは「これからどのような生活を送りたいか」という目標を設定し、その目標達成のためにどんなサービスをどれくらい使うかを計画するものです。ケアプランは、民間業者である「居宅介護支援事務所」に所属する介護支援専門員であるケアマネジャーに依頼して作成してもらうことができます。 介護サービスを利用するには、このケアプランの作成が必要になります。ケアマネジャーは、毎月1回以上に自宅を訪問し、利用者の希望を聞き、症状の変化に合わせてケアプランを作成、変更してくれます。家族は、本人の普段の様子や家族の要望などを伝えましょう。なお、ケアプラン作成には利用者負担はありません。 セルフケアプランという方法 ケアプランは、ケアマネジャーに依頼して作成してもらうケースがほとんどですが、自分でも作成することができます。複雑なサービスをコーディネートする必要がない場合などは、利用する本人が各種の介護サービスを自ら選択して調整したケアプラン(いわゆるセルフケアプラン)を作成することが可能です。セルフケアプランはあらかじめ市区町村に届け出て、認められた場合に介護保険の給付が受けられます。 図:ケアプラン作成の流れ 介護サービスの種類 サービスの種類(在宅・施設・地域密着型) 介護保険で利用できる介護サービスは、介護を受ける場所によって、大きく3つのスタイルに分けることができます。ひとつは自宅で生活しながら利用できる在宅サービス、もうひとつは施設に入所して受ける施設サービスです。さらに、在宅と施設の両方で受けられる地域密着型サービスもあります。 在宅で利用できるサービス 住み慣れた自分の家で受けられる在宅サービスには、「訪問」「通所」「宿泊」の3つの柱があり、これに福祉用具貸与など、その他のサービスを組み合わせます。サービスを利用することで介護する側とされる側、両方の負担が軽減されます。 訪問系サービス ・訪問介護 訪問介護事業所のヘルパーが自宅を訪問。身体介護や生活援助など日常生活のサポートを受ける ・訪問リハビリテーション 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問。自宅で機能回復訓練を受ける ・訪問入浴介護 専用浴槽や巡回入浴車で、入浴時のバイタルチェックも含め自宅での入浴をサポート ・居宅療養管理指導 医師や歯科医師、薬剤師などの専門家が自宅を訪問。指導やアドバイスを受ける ・訪問看護 看護師や保健師などの専門家が自宅を訪問。かかりつけ医の指示に合わせた医学的な世話や処置を受ける 通所系サービス ・通所リハビリテーション ・通所介護(デイサービス) 日帰りで施設に通い、食事や入浴など、日常生活上の介護や機能訓練などを受ける 短期滞在系サービス ・短期入所生活介護(ショートステイ) 短期的に施設へ入所し、日常生活の介護や機能訓練などの介護を受ける ・短期入所療養介護(医療型ショートステイ) 短期的に施設へ入所し、必要な医療を受けつつ日常生活の介護や機能訓練などを受ける 福祉用具をレンタル・購入するサービス 住宅の一部を改修したり、必要な福祉用具をレンタル・購入することで在宅での介護環境を整える ➡介護用品の支給や貸与(詳細はこちら) ➡住宅改修費の支給(詳細はこちら) 施設・居住系サービス ・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、ケアハウスなど) 介護が必要になった場合に、指定を受けた有料老人ホームなどの施設(自宅扱い)に入居したまま介護サービスを受ける 施設を利用できるサービス 介護保険制度で利用できる「施設サービス」には、さまざまな種類や入居の条件があります。専門家による介護を受けられることや、緊急時にも安心できる対応など、多様なニーズに応えています。 介護老人保健施設 老人保健施設、いわゆる「老健」。病状が安定期にあり、入院治療の必要はないが介護や医療を必要とする人を対象に、家庭復帰に向け介護、医療ケア、リハビリテーションを行う施設 介護老人福祉施設 特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」。常に介護が必要で在宅介護が困難と認められた人のための生活施設。入浴、排せつ、食事などの介護、そのほかの日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う施設 介護療養型医療施設 病院または診療所であり、要介護者のために必要な医療などを提供する長期療養施設。療養病床などに入院する人に、療養上の管理、看護、医学的管理下での介護やケア、リハビリテーションなどの機能訓練、そのほか必要な医療を行うことを目的とする施設 介護医療院 長期療養が必要な人を対象とした施設で、2018年に創設。長期療養のための日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアなどの医療機能と、日常生活上の世話(介護)を提供する生活施設としての機能を兼ね備えた施設。プライバシーに配慮した環境整備などが特徴 特定施設 該当する施設は、有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホーム、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅。入居者を対象に特定施設入居者生活介護(日常生活上の世話や機能訓練、療養上の世話)が受けられる。特定施設入居者生活介護の指定を受ける特定施設を「介護付きホーム」という 地域密着型サービス 認知症高齢者や一人暮らしの高齢者が要介護状態になっても、できる限り住み慣れた地域で生活が継続できるように支援を行うサービスです。在宅と施設利用の両方のサービスがあり、地域密着で介護を支えます。居住している市区町村が提供しているサービスを利用することができます。 在宅サービス ・定期巡回、随時対応型訪問介護・看護 日中・夜間を通じて1日に複数回の定期訪問と随時対応を受けられる ・小規模多機能型居宅介護 日帰りの施設へのデイサービス、ショートステイ、訪問の3つのサービスを組み合わせて利用。自宅での生活の支援を受けられる ・看護小規模多機能型居宅介護 訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせた、介護と看護を一体的に利用できるサービス。施設への「通い」を中心に、短期間の宿泊や訪問介護、訪問看護を利用者のニーズに応じて組み合わせて利用することができる。かかりつけ医との密接な連携のもと、医療行為も含めた多様なサービスが24時間365日受けられる ・夜間対応型訪問介護 夜間に定期的に自宅を訪問。おむつの交換やトイレ介助の支援を受けられる ・認知症対応型通所介護 日帰りで施設に通い、認知症に対応した介護や支援を受け、機能訓練を行う 施設サービス ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の高齢者が9人以下の少人数で入居し、入居者同士の交流など家庭的な雰囲気の中で共同生活をしながら、入浴や食事などの介護や支援、機能訓練などを受けられる 生活環境を整えるサービス 福祉用具貸与(レンタル) 加齢や疾病などで身体機能が低下した際、歩行器や車椅子などが必要になります。介護保険では、ケアプランで必要とされている福祉用具に限り1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)負担でレンタルすることができます。担当のケアマネジャーに相談して、福祉用具の利用を検討しましょう。レンタル料金は、その他の介護サービス提供費用と合算して計算されます。 レンタルできるもの ・手すり ・歩行器 ・車いす ・特殊寝台(介助用ベッド) ・床ずれ防止用具 ・認知症老人徘徊感知機器 ・自動排せつ処理装置 ・スロープ ・歩行補助つえ ・車いす付属品 ・特殊寝台付属品 ・体位変換機 ・移動用リフト 特定福祉用具の購入 直接肌に触れるシャワーチェアなど、レンタルに不向きなものは購入する必要があります。「特定福祉用具」に定められているものであれば、1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)負担で購入できます。費用の限度額は年10万円(毎年4月1日から翌年3月31日まで)。10万円を超えた額については全額自己負担となります。また、同じ種目の用具の再購入は、用途や機能が異なる場合や破損した場合には可能です。 購入できるもの ・腰掛け便座 ・自動排泄処理装置の交換可能部品 ・入浴補助用具 ・簡易浴槽 ・移動用リフトの釣り具の部分 住宅改修 在宅で介護をする際に「バリアフリーにしたい」「段差を解消したい」「手すりをつけたい」という要望が出てきたら、要介護者がより安全・快適に生活できるよう住宅改修を検討しましょう。保険給付の対象となる住宅改修費の支給があり、利用が可能です。費用の限度額は20万円で、自己負担は1割(一定以上所得者の場合は2〜3割)。 費用を支払った後に、市区町村から給付費分が支給される、いわゆる「償還払い」が一般的です。要介護度が3段階以上重くなった場合や引っ越しした場合は、再度申請が可能です。 2021~2023年度の主な改正内容 今回の見直しの背景 介護保険制度は円滑に保険給付を実施していくため、3年ごとに見直しを行い、介護保険事業計画を策定、運営しています。新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で、2021年度からの制度改正が施行されました。 今回の見直しでは、日本の人口構造の急速な変化を見据えた対応がとられています。現在は75歳以上の高齢者の急増が目立ちますが、2025年以降には局面が変化し、現役世代の急減が予想されます。それは介護保険事業の支え手が減少していくことを意味します。高齢人口がピークを迎える2040年には、介護サービスの需要の増加が予想されます。 また、各地域の高齢化の状況は異なるため、利用者数の増減など個々の特性に 沿った対応も必要です。こうした状況に対応できるよう、3年に1度の見直しが行われています。 今期の改正のポイント 介護サービスを利用するうえで関わりの深い改正項目について、見ていきましょう。高齢化が進むなかで、負担の公平性と制度の持続可能性を高めるために、それぞれの状況に応じた負担を求める見直しが行われました。 介護保険施設における負担限度額の見直し 令和3年8月から、介護保険施設(介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設、介護医療院)や短期入所施設(ショートステイ)を利用する際の食費・居住費の助成制度が変更になりました。食費・居住費については自己負担が原則ですが、低所得の人への助成(補足給付)を行い、食費・居住費の負担が軽減されています。今回の改正で、助成の認定要件および食費の負担限度額が変更になりました。 『認定要件の変更』では、単身・夫婦それぞれの預貯金額が変更になりました。今回の変更により補足給付の対象外となる場合も、預貯金額が減少して認定要件を満たしたときは申請することで負担軽減の対象となります。負債(借入金・住宅ローンなど)は、預貯金額から差し引いて計算します。預貯金等に含まれるものがある場合は、申請書に預貯金や負債額を記載して、必要な書類を添付します。その後、保険者が必要に応じて金融機関などに照会を行います。預貯金等に含まれるものは以下の①〜⑤になります。 ①預貯金(普通・定期)は、通帳などの写しで確認(インターネットバンクであれば口座残高ページの写し) ②有価証券(株式・国債・地方債・社債など)は、証券会社や銀行口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ③金・銀(積立購入を含む)など購入先の口座残高によって時価評価額が把握できる貴金属の確認は、購入先の銀行などの口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ④投資信託は、銀行、信託銀行、証券会社などの口座残高の写しで確認(ウェブサイトの写しも可) ⑤現金は自己申告。なお、預貯金等に含まれないものは、生命保険、自動車、腕時計、宝石といった時価評価額の把握が難しい貴金属、絵画、骨董品、家財などになります。 また、不正に受給した場合には、それまでに受けた給付額に加え、最大2倍の加算金(給付額と併せて最大3倍の額)の納付を求められる場合があります。『食費の負担限度額の変更』では、施設入所者、ショートステイに対する助成が見直されました。 年金収入など一定額以上の収入や預貯金がある人は、食費の負担額が変更になりました。平均的な食事の費用額(基準費用額)は、1日1,392円から1,445円に変わりました。居住費の負担限度額は変更ありません。生活保護受給者や老齢福祉年金受給者等(第1段階)の負担限度額は、食費・居住費ともに変更ありません。 高額介護サービス費の負担限度額 介護サービスを利用した際は、自己負担割合に応じた利用料を負担しています。1か月に支払った利用料の合計が負担限度額を超えた場合は、高額介護サービス費として差額分が払い戻されます。 負担限度額は一般的な所得の人は月額44,400円です。令和3年8月から、医療保険の高額療養費制度の負担上限額に合わせて、負担限度額が見直され一部変更になりました。対象になるのは一定年収以上の高所得者で、介護サービスの利用者または同一世帯に課税所得380万円(年収約770万円)以上の65歳以上の人がいる場合です。 それ以外の市区町村民税非課税世帯の場合は、負担上限額に変更はありません。また、医療費や介護サービス費ともに高額で、高額介護合算療養費制度(年間の医療費・介護サービス費が負担限度額を超えた場合に払い戻しを行う制度)による払い戻しを受けている人の場合は、収入や介護サービス費などに変更がなければ、実質的な負担額は変わりません。 知っておきたい今期の見直し 介護報酬は0.7%引き上げ 法改正とともに、3年ごとに介護報酬改定が行われています。2021年4月に施行された改定では2期続く引き上げとなり、全体で0.7%のプラス改定となりました。そのうちの0.05%は、新型コロナウイルス感染症に対応するための経費として、2021年9月末までの半年間、介護サービス事業者を支援するものでした。 介護報酬とは、介護サービス事業者が利用者に、介護保険が適用されるサービスを提供した際に支払われる費用です。介護事業者は利用者からサービス費用の1割(原則)を受け取り、自治体に残りの9割分を請求、介護報酬が支払われます。介護報酬は利用者の状況やサービス提供体制に応じて、サービスごとに設定されています。介護報酬の引き上げによって利用者の負担額が増えるサービスもあり影響があります。 介護職員の賃上げがスタート 介護人材の確保は、介護保険制度を持続していくうえで非常に重要です。介護職員の離職防止・定着促進を図ることは喫緊の課題です。そのため介護の現場では、介護職員の処遇改善や職場環境の改善に取り組んでいます。 処遇改善については「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(2021年11月19日閣議決定)に基づいて、2022年2月から9月までの間「介護職員処遇改善支援補助金」により、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置が実施されます。10月分以降については、臨時の報酬改定を行い、収入を引き上げるための措置を講じる方向で調整が行われています。このほか、介護現場を革新するために、テクノロジーの活用や人員基準・運営基準を緩和することで業務を効率化し、負担の軽減を目指しています。 遠距離介護 離れて暮らす親の介護が必要になったときは、電話やビデオ通話などを使ってコミュニケーションを密にし、親の健康状態などに気を配ることが大切です。親の要介護度が進んだときには、食事介助やトイレ介助などの身体介護を誰がどのように担うのかといった問題が生じてきます。介護のために子どもが親元に戻るか親を呼び寄せるか、そんな悩みを抱える人も出てきます。親の介護に直面する世代は、40〜50代の働き盛りが中心です。 現在、介護を理由とする離職者が年間約10万人を超えています。国は、一億総活躍社会を実現するため、必要な介護サービスの確保や働く環境の改善、家族への支援を行い、介護離職ゼロを目指しています。育児・介護休業法で定められているのが「仕事と介護の両立のための制度」です。この制度を利用することによって、介護を行う期間だけでなく、仕事と介護が両立できる体制を整えるための期間にも介護休業を取ることが可能です。 介護保険サービスを受けるための準備期間への活用で、家族の介護をしながら仕事を続ける体制づくりが行えます。制度の内容には、通算して93日まで休業でき、休業前の賃金の67%が支給される「介護休業制度」、介護休業や年次有給休暇とは別に、時間単位で休暇の取得ができる「介護休暇制度」、短時間勤務や時差出勤が可能になる「介護のための短時間勤務等の制度」、残業を免除する「介護のための所定外労働の制限」があります。※ 育児・介護休業法は2021年に改正され、2022年4月から施行されます。雇用形態にかかわらず育児・介護休業を容易に取得できるよう、有期雇用労働者について「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止されます。なお、労使協定を締結した場合は、雇用期間が1年未満の人は対象から除外されます。 ※育児・介護休業法に関する相談窓口:都道府県労働局雇用環境・均等部(室) 出典)一般社団法人日本保健情報コンソシウム発行 『介護をする家族のための介護と保健ガイドブック』より引用 お悩みや疑問は解決できましたか? 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