公開日:2025.09.01
マンションを購入したものの、収入減少や予期せぬ出費により、管理費や修繕積立金の支払いが困難になる場合があります。この記事では、マンションの管理費や修繕積立金が支払えなくなる原因や支払えない場合にどうなるのか、また、その対処法について解説します。
管理費は、共用部分の清掃や設備点検、管理員の人件費など、日常的な運営に必要な費用です。一方、修繕積立金は、外壁や屋根、エレベーターなどの大規模修繕に備えて積み立てられる資金です。
国土交通省に調査によれば、滞納住戸の割合(3ヶ月以上の滞納)が0%超~10%以下の管理組合において、令和5年度は平成30年度と比較して4.8%増加しています。
出典)国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果から見たマンションの居住と管理の現状 p.19」
マンションの管理費や修繕積立金が支払えなくなる原因の一つに、これらの費用の値上げがあります。近年、物価や人件費の上昇に伴い、マンションの維持管理にかかるコストも増加傾向にあります。
特に、管理会社の業務内容が多様化・高度化する中で、管理費は上昇傾向です。株式会社マーキュリーの調査によれば、新築マンションの2023年(令和5年)の月額管理費は、2014年(平成26年)と比較して約34%増加しています。
出典)株式会社マーキュリー「新築マンションの月額平均管理費(60㎡換算)の推移」
修繕積立金についても同様の傾向がみられます。国土交通省の調査によれば、修繕積立金の令和5年度の月額費用は、平成25年度と比較して約21%上昇しています。これらの結果から、管理費や修繕積立金の双方において、住民の経済的負担が一層重くなっている現状が浮き彫りとなっています。
出典)国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状 p.8」
また、修繕積立金の上昇は単なる物価の影響だけではありません。マンションの老朽化が進むにつれて、必要な修繕工事の内容も高度化・大型化しており、それに伴う工事費用も増加しています。実際、国土交通省は令和3年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改訂しました。
この改訂により、実際に必要とされる修繕積立金の水準が見直されました。国土交通省が作成したグラフによれば、修繕積立金の2021年度の平均値は、2011年度と比較して約50%上昇しています。
出典)国土交通省「管理・修繕に関するテーマの検討p.22」
こうした費用の上昇は、収入や支出のバランスが崩れたときに支払い困難を招く要因となり、結果として滞納に陥るリスクを高めることになります。
マンションの管理費や修繕積立金の支払いを滞納し続けると、以下の流れで資産を差し押さえられる恐れがあります。
管理組合からまずは書面による督促が行われ、支払いを求められます。督促に応じず、滞納が続くと、管理組合は民事訴訟を起こすことがあります。裁判所からの支払い命令が出されると、法的拘束力を持つ債務となります。
裁判での判決後も支払いがなされない場合、管理組合は差し押さえの手続きを進め、最終的には物件が競売にかけられることになります。競売にかけられると、所有権を失うだけでなく、価格が市場評価よりも低く売却せざるを得なくなる場合もあるため、今後の生活に大きな影響を及ぼします。
出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」第59条第1項
マンションの管理費と修繕積立金が支払えない場合、滞納が発生する前に以下の対処法を検討しましょう。
管理費や修繕積立金の支払いが難しいと感じたときは、まずは一人で抱え込まずに、管理組合や管理会社へ相談してみましょう。事情を正直に伝えることで、今後の支払い方法やスケジュールについて、柔軟に対応してもらえることがあります。
管理会社がいる場合は、できるだけ早く連絡し、支払う意思があることを明確に伝えることが大切です。管理会社は通常、滞納者への対応も担っているため、支払いが難しくなった理由や、支払時期・方法を共有することで、分割払いや支払期限の延長について相談できる可能性があります。
マンションの管理費や修繕積立金の支払いが継続的に困難な場合は、リバースモーゲージの利用を検討するのも一つの選択肢です。リバースモーゲージとは、自宅を担保に融資を受けられる高齢者向けのローン商品です。
リバースモーゲージを利用すれば、手元資金を確保しながら住み続けることができ、管理費や修繕積立金の支払いに充てることも可能です。ただし、マンションの場合は物件の評価額や築年数などによって利用できない場合もあるため、事前に金融機関へ相談することが重要です。
管理費や修繕積立金の支払いが根本的に難しい場合は、リースバックの利用も有効です。リースバックとは、自宅を売却して現金を得て、売却後は賃料を支払うことで、それまで住んでいた住宅に引き続き住むことができるサービスです。
リースバックでは、自宅を不動産会社に売却し、賃貸契約を結んで引き続き居住します。毎月家賃は発生するようになりますが、売却によりまとまった資金を確保できるうえに、管理費や修繕積立金の支払いは所有者となる運営会社に引き継がれます。
この記事では、老後にマンションの管理費や修繕積立金が支払えなくなる原因や対処法について紹介しました。マンションの管理費や修繕積立金の支払いが困難になった場合は、一時的な収支の乱れであれば、管理組合との相談やリバースモーゲージなどの目先の対策を検討しましょう。
また、支払いの目途が立たないのであれば、物件の売却やリースバックを検討することで、滞納による差し押さえや競売にかけられるリスクを回避しましょう。
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