updated:2021.09.28
リースバックとは、自宅を売却することで、まとまった資金を手に入れることができる資金調達方法で、売却後も同じ家にそのまま住み続けることができます。ただし、リースバックにはデメリットもあるので、特徴を理解したうえで利用することが大切です。今回は、リースバックの仕組みやメリット、デメリットを紹介します。
リースバックとは、「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれ、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。
一般的な売却と比べて資金化までのスピードが早く、短期間での資金調達が可能です。また、売却後は運営会社に所有権が移転するので、自宅の相続についてのトラブルも回避できますし、契約次第では売却後に自宅を買い戻すことも可能です。
リースバックの仕組みは以下の通りです。
近年、リースバックに注目が集まっています。「不動産リースバック利用者への総合調査」によれば、リースバックの利用者は前年対比で1.5倍に増えており、今後もリースバックの需要は伸びていくといった結果が示唆されています。
参考)利用者が前年比1.5倍?!不動産リースバックの実態は?
この背景には住宅ローンの借り入れ年齢の高齢化(※1)、高齢無職世帯の貯蓄高の減少(※2)、2000年代から始まった平均給与の減少(※3)、といったといった社会的背景が影響していると考えられます。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行による収入の減少がさらなる環境悪化をもたらす可能性もあり、リースバックに対する関心はさらに高まることが予想されます。
参考)
※1:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」(2019年度)
※2:家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-
※3:令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-
リースバックでは、売却する物件に一定程度の流動性があれば戸建て、マンション、土地などの物件の種類を問わず利用可能なケースが多いです。ただし、下記のようなケースでは対象外となる場合がありますので、注意が必要です。
建物自体に問題がある場合は、リースバックを利用できないケースが多いです。例えば、物件に瑕疵があったり、既存不適格物件である等のケースが考えられます。瑕疵とは、造成や設備の不良など建物に何らかの欠陥があることをいい、雨漏りや上階からの水漏れ、耐震強度不足、戸建てに発生しやすいシロアリなどが該当します。また、既存不適格物件とは、現行の建築基準などに違反しているものや再建築できないような物件を指します。
建物が建っている土地が問題となってリースバックを利用できないケースもあります。例えば、借地権であったり、市街化調整区域である等のケースが考えられます。借地権とは、土地の所有者に地代を支払うことで建物を建設して利用できる権利のことをいいます。そのため、土地の所有者の許可を得られればリースバックを利用できる可能性もありますが、基本的には難しいと考えておきましょう。また、市街化調整区域とは、自治体によって定められた市街化を抑制すべき区域のことをいい、物件としての流通性が低いためリースバックできないケースが多いです。
上記以外にも、リースバック運営会社によっては取扱エリアが決まっているため、エリア外である場合はリースバックを利用できません。
物件以外の理由によってリースバックを利用できないケースもあります。例えば、共有持ち分であったり、住宅ローンの残債が多い等のケースが考えられます。物件の持ち主が複数いる場合に、持ち主全員の承諾が得られなければリースバックの利用はできません。また、住宅ローンの残債が残っている場合は、リースバックと同時に住宅ローンを完済しなければなりませんが、これができない場合はリースバックを利用できません。
上記以外にも、家賃の支払い能力がないと判断された場合などはリースバックを利用するのが難しいケースが多いです。
リースバックは下記のような方におすすめです。
リースバックには、以下3つのメリットがあります。
まとまった資金を手に入れるために自宅を売却すると、通常は別の家を探して引っ越さなくてはなりません。しかし、高齢になるほど、新居を購入するために住宅ローンを組んだり、賃貸住宅を借りたりするのは難しくなるのではないでしょうか。リースバックなら、運営会社と賃貸借契約を締結することで、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられます。自宅を売却してまとまった資金を手に入れながらも、慣れ親しんだ自宅に住み続けられるのは、リースバックの大きなメリットです。
自宅を所有している場合、住宅ローンを完済していれば、定額の支出はありませんが、修繕が必要になるとその都度支出が発生しますし、固定資産税や火災保険、地震保険の支払いも必要です。一方、リースバックでは自宅を売却して賃貸借契約を締結し、毎月一定の家賃(リース料)を払うことになります。自宅を所有している時の費用がなくなり、支払いが定額化されるので、資金計画が立てやすくなります。賃貸借契約の場合、家財やマンションの専有部分には火災保険をかけるのが一般的ですが、中には火災保険料が無料の運営会社もあります。
自宅を所有していると、価格下落や修繕、災害による建物の損壊などのリスクがあります。特に、戸建ての場合はマンションと比べて価格下落や災害による影響を受ける可能性が高いです。また、変動金利の住宅ローンが残っている場合は、金利上昇で返済額が増加するかもしれません。リースバックで自宅を売却すれば、所有権が運営会社に移転するので、これらのリスクは運営会社が負うことになります。
リースバックは先程紹介したメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
リースバックは、基本的に自宅の売却価格が市場価格よりも安くなります。市場価格よりも安くなる理由は、リースバック運営会社が売主(借主)の家賃滞納リスクや、買い戻しに応じるために自由に売買できない制約などを抱えているからです。また、リースバックでは、売却価格と家賃がトレードオフの関係にあるため、仮に高く売却できたとしても、その場合は家賃が高くなる傾向があります。リースバックは売却しても自宅にそのまま住み続けられる分、普通に売却するより売却価格が安くなる点に注意が必要です。
持ち家で、特に戸建ての場合などは自由にリフォームや建て替えができます。しかし、リースバックで自宅を売却すると、所有権はリースバック運営会社に移転するため、自分の好きなようにはできなくなります。「リフォームや建て替えをしたい」と思っても、運営会社の許可が必要になります。将来、自宅のリフォームやリノベーションなどを考えているなら、リースバックの利用は慎重に判断しましょう。
リースバックは、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられるのがメリットです。しかし、リースバックの多くは、賃貸契約期間が定められている「定期借家契約」で賃貸借契約を締結しますが、「定期借家契約」の場合はずっと住み続けられる保証はありません。定期借家契約では、貸主と借主の合意があれば再契約は可能ですが、運営会社の事情で再契約ができず、売却から数年後には引っ越しを迫られる可能性もあります。リースバックでも賃貸借契約の期間を越えて家に住み続けたい場合は、定期借家契約ではなく、普通借家契約が締結できる運営会社を選ぶと安心です。
リースバックの代表的な事例をまとめました。
住宅ローンの返済が滞って金融機関に残債の一括返済を求められた場合、任意売却や競売での返済を選択すると、自宅を失うことになります。しかし、リースバックで自宅を売却し、その資金で住宅ローンを完済することができれば、同じ家に住み続けることができます。ただし、リースバックでは市場価格よりも安くなる傾向にあるので、売却価格が住宅ローン残高よりも高くないと利用が難しいということを念頭に置いて検討することが必要です。
リースバックを利用すれば、自宅に住み続けながら、月々の支払額を減らすことが可能な場合があります。住宅ローンによっては当初固定金利や段階金利など、返済期間の経過に伴い月々の支払金額が上がるケースもあります。返済額の増加によって毎月の支払いが厳しくなった時、リースバックで賃貸に切り替えることで住宅ローンの返済額より家賃のほうが低くなれば、月々の支払額が減って資金繰りが楽になることがあるでしょう。
リースバックは、新しい家に住み替える際にも利用できます。リースバックで自宅を売却すれば、まとまった資金が手に入り、新居の購入資金に充てられますし、住宅ローンが残っている場合にも残債を返済することが出来るので、借入を精算することが出来ます。また、新居に住み替えるまでは今までの家に住み続けられるので、仮住まいを見つけて一時的に引っ越しする必要もありません。
高齢化に伴い、老後資金に不安を感じている方は多いのではないでしょうか。高齢の方の場合、金融機関からの融資が難しいケースがあります。しかし、リースバックを利用すれば、同じ家に住み続けながら、自宅の売却でまとまった資金を手に入れられます。また、不動産は共有で相続すると後々に不都合が生じますし、だれか一人が相続すると他の相続人との間で不平等が生じ、トラブルになりやすいとされています。リースバックを利用して、財産を現金化しておけば、相続についてのトラブルも回避することができるでしょう。
リースバックの代表的なトラブル事例をまとめました。
売買価格が適正価格を大きく下回っていたことで、トラブルとなる可能性があります。リースバックでは、基本的に売買価格は市場価格の70%前後になる場合が多いです。しかし、運営会社によっては、想定以上に安い売買価格を提示されるケースがあります。実際にリースバックを利用する場合は、複数の運営会社に相談し、売買価格を比較することが大切です。
リースバックの家賃は、売買価格と期待利回り、周辺の賃料相場などによって決まります。そのため、売買価格を重視しすぎると、その家賃は相場に比べて割高に設定されることが多いです。家賃の設定が自身の家計に対して適切でないと、家賃が払えなくなってしまう可能性があります。契約前に売買価格と賃料設定のバランスが適切かどうか確認しましょう。
業績不振で倒産リスクが高いなど、与信に問題がある一部の運営会社を利用した場合、賃貸借契約期間中に運営会社が倒産する可能性があります。運営会社が倒産すると無断で物件を売却されてしまうかもしれません。リースバックは、多額の資金を必要とする事業のため、運営会社の買取実績や業績などを確認し、信頼のできる運営会社を選ぶことが大切です。
リースバックでは、売却した自宅の買戻しが可能なケースが多いです。一方で、リースバックの買戻し価格は、運営会社への売買価格よりも高くなります。そのため、想定よりも買戻し価格が高く、資金不足で買戻しができない場合があります。買戻し時に新たな住宅ローンを借りるのは難しいケースも多いため、事前にきちんと資金計画を立てたうえでリースバックを利用しましょう。
上記で紹介した代表的な事例のうち、住宅ローンの返済が滞って売却を求められた場合に任意売却という手段がとられる場合があります。任意売却とは、住宅ローン等の返済が滞ってしまった場合に、債権者である金融機関の同意を得た上で債務者が自分の意志で不動産を売却する方法です。リースバックと任意売却は、自宅を売却し、所有権が買主へ移転するという点で共通しています。
一方で、リースバックと任意売却は、転居の要否が異なります。リースバックの場合は、自宅売却後も賃貸という形で自宅に住み続けることができますが、任意売却の場合は、転居をする必要があります。加えて、リースバックの場合は、将来的に売却した不動産を買い戻すことができる点も大きな特徴と言えるでしょう。
上記で紹介した代表的な事例のうち、まとまった老後資金を確保する手段としてリバースモーゲージというサービスもあります。リバースモーゲージとは、自宅を担保に借り入れができる高齢者向けのローン商品です。毎月の支払いが利息のみで、債務者の死亡後に相続人が自宅の売却もしくは現金一括で元本を返済する点が特徴です。リースバックとリバースモーゲージは、自宅に住み続けながら資金調達ができる点で共通しています。
一方で、リースバックとリバースモーゲージは所有権の移転するタイミングが異なります。リースバックの場合は、自宅を売却した時点で所有権が買主へ移転しますが、リバースモーゲージの場合は、長期にわたる利息の延滞などが発生し、抵当権が実行されるようなことがない限り債務者が死亡するまで自宅の所有権が移転することはありません。その他にもリースバックとリバースモーゲージは対象物件などが異なり、リバースモーゲージは、戸建てのみを対象としていることが一般的です。詳しくは、下の表を参照してください。
リースバックとリバースモーゲージとの違い
種類 | リースバック | リバースモーゲージ |
---|---|---|
契約の形態 | 不動産売却・賃貸借契約 | 金銭消費貸借契約 |
対象物件 | 不動産全般(流通性等の一定程度の基準を満たすもの) | 制限有り |
年齢制限 | 無し | 有り |
借り入れの有無 | 無し | 有り |
転居の要否 | 無し | 無し |
所有権の移転 | 有り | 無し |
資金使途 | 自由 | 原則、生活資金 |
※筆者作成
リースバックのよくあるご質問をまとめました。
住宅ローンが残っていても、リースバックを利用することは可能です。ただし、売却時に対象不動産に設定されている抵当権を抹消する必要があります。
リースバックで売却した不動産は、買い戻すことができる場合が多いようです。なお、買い戻し価格は、当初の売却価格の一定割合もしくは買い戻し時点での市場価格とのバランスなど、運営会社との合意によって決まります。
一般的には、入金まで2週間~1ヵ月程度かかるようです。リースバックを利用するためには、複数の手続きが必要になるため、早くても2週間程度かかると考えておきましょう。
売却価格次第では、家賃の支払いを安く抑えることは可能です。 一般的に、リースバックの家賃は対象となる不動産の売却価格を基準に算出されますので、売却価格と家賃のバランスを考慮した上で、総合的に判断すると良いでしょう。
必ずしも2、3年で退去する必要はありません。賃貸契約の種類や期間によっては、自宅に長く住み続けることも可能ですので、検討の段階で事前の確認をおすすめします。
リースバックは、あくまで不動産売買+賃貸借契約であるため、不動産売却に係る費用と賃貸に係る費用が発生します。ただし、これらの費用を売却代金から支払うことができますので、手元資金がなくても利用できる場合が多いようです。
高齢者や年金受給者であっても、利用することができます。リースバックは、融資商品とは異なり、年齢制限や収入の基準を設けていないことが多いためです。
リースバックは、戸建て、マンション、事業用不動産など幅広い種類の不動産で利用が可能です。ただし、流通性など一定程度の基準を満たす必要があります。
一般的なリースバック利用までの手続きの流れを紹介します。
まずはご利用の運営会社に問い合わせください。ここでは、一般的に自身の所有物件や状況、希望条件(売却価格、家賃)についての確認がされます。
ここで、大まかな売却価格や家賃の提示がされ、希望条件とのすり合わせが行われます。
物件を訪問し、詳細な調査と査定が行われます。
物件の査定を受け、具体的な契約条件が提示されます。
契約条件に同意後、契約手続きが行われます。
売買代金が支払われることで売買が成立し所有権が移転します。それと同時に、自宅の賃貸が開始します。
SBIスマイルは、不動産に関わるお客さまの幅広いニーズに迅速にお応えし、広く社会に貢献できる企業を目指して2012年に設立されました。
同社は、同社が提供するリースバック商品「ずっと住まいる」を通して、顧客の幅広いニーズに迅速に応え、暮らしを豊かにする提案を行っています。
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東証一部上場のSBIグループであるSBIスマイルでは、顧客のことを第一に考え、売却時の支払いは一括で行っているため、迅速に資金を確保できます。
家賃が市場価格よりも安く設定されているだけでなく、賃貸開始から終了後まで、家賃は変動しないため、値上がりの心配がありません。
一級建築士が建物検査をすることで、将来的な資産価値を維持しながら、より長く住み続けることができます。
将来売却するときの事務手数料や、賃貸として住み続けたときの敷金・礼金・更新料がかからないため、余計な費用負担を考えずに取引をすることができます。
顧客との直接取引だから、仲介手数料はかかりません。また、個々の状況や要望に合わせて、家賃や賃貸期間、売買価格などを柔軟に設定することができます。
リースバックは、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられるので、「老後資金を確保したい」「住宅ローンの返済負担を減らしたい」といった場合に活用できます。ただし、売却価格は市場価格より安くなりますし、賃貸借契約が定期借家契約の場合は、ずっと住み続けられる保証はありません。契約してから後悔しないように、メリットやデメリットをよく理解したうえで、リースバックを利用するか検討しましょう。
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