実家じまいとは?失敗しないための進め方と費用を解説

公開日:2024.11.01

高齢化社会が進む中、多くの家庭で実家じまいが問題となっています。親が高齢になると、介護が必要になったり、施設に入所したりすることが増えます。その結果、実家が空き家となり、管理や維持が難しくなります。ただ、思い出が詰まった家を手放すことは、心に大きな負担を伴うものです。

そのため、実家じまいは、物理的な整理だけでなく、心の整理も必要です。この記事では、実家じまいのプロセスや心の整理の方法、そして実際に行う際の費用とポイントについて詳しく解説します。

実家じまいとは?

実家じまいとは、親が住んでいた家を処分する一連の手続きを指します。多くの人にとって、実家は思い出が詰まった特別な場所です。しかし、親の介護や自身の生活環境の変化に伴い、実家を手放す決断を迫られることがあります。

実家じまいを行う場合、親の意向を尊重しつつ、残された兄弟姉妹間で話し合いをして、行うタイミングや役割分担をすることが大切です。

実家を維持する際にかかる費用

実家じまいをせずに実家を維持するためにはどのぐらいの費用がかかるのでしょうか?株式会社すむたすの調査(※)によると実家の維持・処分費用は「50〜100万円」が多いようです。

【実家を維持する際にかかる費用例】

  • 修繕費用
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 火災保険料
  • 光熱費と水道代など

ただし、屋根や床などの大規模修繕工事などが発生した場合、修繕費用は100万円以上になる場合があるので注意しましょう。

また、固定資産税と都市計画税は、土地や建物の価値を基に計算される税金です。この税金の金額は、その土地や建物の固定資産税評価額(課税標準額)に対して定率を掛け合わせて決められます。具体的には、固定資産税は課税標準額の1.4%で、都市計画税は課税標準額の0.3%が適用されることが多いです。課税標準額にこの範囲の税率をかけた金額が、毎年支払う必要がある税金になると理解しておきましょう。

※出典)株式会社すむたす|半数以上が「後悔」。実家じまい経験者調査、事前にしておくべきだったことトップ3は①処分費の確認②親と一緒に片付け③売却価格の確認

特定空き家に認定されると税金が上がる

実家が「特定空き家」に認定されると、固定資産税が大幅に増加する可能性があります。

通常、「小規模住宅用地の特例」という制度があり、住宅が建っている土地の固定資産税や都市計画税は大幅に軽減されます。

【通常の場合】(固定資産税)

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):固定資産税評価額の1/6に軽減
  • 一般住宅用地(200㎡を超える部分):固定資産税評価額の1/3に軽減、上記の内容を踏まえて計算した、土地の固定資産税評価額1,000万円の場合の具体例は以下のとおりです。
  • 土地の固定資産税評価額:1,000万円(土地面積150㎡を想定)
  • 小規模住宅用地の特例適用後の課税標準額:1,000万円×1/6=166.7万円
  • 固定資産税:166.7万円×1.4%=約2.3万円

しかし、特定空き家に認定されると特例措置の適用がなく、土地の固定資産税課税標準額そのものに1.4%をかけて固定資産税を算出します。特定空き家とは、適切な管理が行われておらず、倒壊や衛生上のリスクが高いと判断された空き家を指します。
特定空き家の固定資産税は住宅用地の特例適用時から最大6倍に上がるため、約2.3万円の固定資産税は、約14万円になります。実家は放置せず、定期的に管理するか、早めの売却や処分を進めた方がよいでしょう。

【特定空き家に認定された場合】

  • 土地の固定資産税評価額(課税標準額):1,000万円(特例措置解除)
  • 固定資産税:1,000万円×1.4%=14万円

実家を片付ける流れ

実家じまいは心身ともに大きな負担がかかる作業です。計画を立てて着実に進めることが大切ですが、心の整理がつかない場合は、無理をせずに時間をかけて整理しましょう。実家を片付けて売却する際の流れは、以下のとおりです。

  1. 片付けの計画を立てる
  2. 片付ける日や捨てる日を決める
  3. 必要なものと捨てるものをわける
  4. 必要な物や財産はよけておく
  5. 部屋中の掃除をする
  6. 不動産会社に査定を依頼する

土地や建物を売ると税金がかかる

実家の土地や建物を売却する際には、所得税や住民税などの税金がかかります。

土地と建物の取得費が2,000万円の家を売却した場合は、以下のような金額になります。

土地と建物の取得費が2,000万円の家を売却した場合の例

譲渡所得は、売却価格から購入費用や売却にかかった費用、減価償却費を差し引いて計算します。

  • 土地と建物の取得費:2,000万円
  • 売却にかかる費用(仲介手数料):96万円※1
  • 売却価格:3,000万円

※1:仲介会社により変動する可能性があります。
【譲渡所得の計算】

  • 譲渡所得=3,000万円−(2,000万円+96万円)=904万円
  • 譲渡所得は904万円となります。

【譲渡所得税の計算】
ここでは、所有期間が5年を超える長期譲渡所得として計算します。
所有期間が5年超の場合、長期譲渡所得として税率が適用され、以下のような税額になります。

【長期譲渡所得】

  • 所得税:904万円×15.315%=138万4,476円
  • 住民税:904万円×5%=45.2万円

所得税・住民税・復興特別所得税を合わせた税額は、約183万円です。

ただし、マイホームであれば「3,000万円の特別控除」が適用され、譲渡所得904万円が控除されるため、税金は0円になります。売却によって得られた利益(譲渡所得)に対しても課税されるため、事前に税額を把握し、資金計画を立てたほうが良いでしょう。

特定の条件を満たせば、税金の軽減措置を受けられるケースもあるので、税金に関する詳細は、税理士などの専門家に相談しましょう。不動産の売却時の税金について知りたい方は「不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説」を参考にしてください。

遺品整理は10か月以内に必要

遺品整理は、相続税の申告期限である被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に作業しましょう。遺品整理を放置すると、相続手続きが進まず、相続税の申告が遅れてしまう可能性があります。相続税の対象になる可能性がある財産は以下のとおりです。

  • 自動車やオートバイ
  • 株や債券などの投資商品
  • 土地や建物などの不動産資産
  • 銀行口座の残高や手元の現金
  • 生命保険や各種保険の受取金
  • 知的財産権(著作権や商標など)
  • 貴重な宝石や美術品、アンティーク品

上記の資産は、相続や贈与で税金がかかる可能性があるため、事前に把握しておくことが大切です。また、仕事で忙しい方や、気持ちの整理がつかなくて自分で片付けられないなどの場合は、専門業者に相談しましょう。実家じまいや遺品整理をする前に「【知らないと大損?】遺品整理は○○か月以内にすべき!?」も参考にしてください。

形見分けをする場合の注意点

形見分けとは、故人が生前愛用していた品々を親族や親しい友人に分け与えることです。故人との思い出を共有し、その記憶を物として形に残すという目的があります。形見分けでは、故人が大切にしていた以下のような品を選ぶのが一般的です。

  • 本や写真
  • 衣類やアクセサリー
  • 日常的に使用していた道具

ただし、高額のものを形見分けするときは、贈与税が発生してしまう可能性があるため、注意が必要です。贈与税がかかる可能性があるものは、以下のとおりです。

  • 価値が高い美術品や骨董品
  • ダイヤモンド・金・プラチナなどの高価な宝石や貴金属

形見分けは、故人を偲び、残された者同士が共に故人を思い出しながら心の整理をする大切な機会です。形見分けを行う際は、贈る相手の気持ちや故人との関係を考慮し、適切な品を選びましょう。

遺品整理は業者に頼むこともできる

遺品整理を家族だけでするのが難しい場合、専門の業者に依頼することもできます。遺品整理業者は、短期間で効率的に整理できて、処分が難しい品物も適切に対応してくれます。遺品の整理を業者に依頼する場合の費用相場は以下のとおりです。

  • 1LDK:7〜20万円
  • 4LDK以上:22〜60万円

※SBIシニアの住まいとお金ch調べ

遺品整理のプロによる作業は、感情的な負担を軽減するだけでなく、法律に則った適切な処理を行います。費用は発生しますが、安心して任せられるため、利用する価値はあるでしょう。

まとめ

本記事では、実家じまいの流れや、遺品整理について解説しました。実家じまいは、感情的な負担とともに、手続きや費用の面でも多くの課題を伴います。実家を維持するための費用や、片付けの流れ、税金に関する注意点を理解した上で、計画的に進めてください。

執筆者紹介

「SBIシニアの住まいとお金」スタッフ
シニア世代の住まいから、住宅ローンや老後の資産形成などのポイントをわかりやすく丁寧に解説していきます。様々な資格と経歴を持った住まいとお金のプロフェッショナルが執筆、監修を行っています。
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