2024.02.14

不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説

公開日:2024.02.14

不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。

この記事では、不動産の購入と売却のそれぞれにかかる税金について解説します。

不動産の「購入」にかかる税金

まずは、不動産の購入にかかる税金の種類と計算方法を紹介します。不動産の購入にかかる税金は、「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」の3種類です。順に解説します。

不動産取得税

不動産取得税とは、土地や家屋などの不動産を取得した際に課される税金です。都道府県から送付される納税通知書を使用して、取得日から半年から1年後に納付します。税額は以下の算式で計算されます。

課税標準額(固定資産税評価額)×税率(本則4%)

ただし、令和6年(2024年)3月31日までは、居住用の住宅を購入した場合に限り、以下2つの軽減措置があります。

  • 土地部分のの課税評価額が2分の1に減額
  • 土地部分も3%の軽減税率が適用

出典)
総務省「不動産取得税」
東京都主税局「不動産取得税」

登録免許税

登録免許税とは、所有権の保存登記(新築住宅)や移転登記(中古住宅)、住宅ローンの抵当権設定登記などを行う際に納める税金です。法務局で登記手続きを行う際に納めるので、納税も含めて司法書士に依頼するのが一般的です。税額は以下の算式で計算されます。

課税標準額×税率

課税標準額と税率は登記の内容によって異なり、住宅については軽減税率が適用されます。

登記の内容課税標準額本則税率軽減税率
建物の所有権保存登記登記官が認定した価額0.4%0.15%※1
土地の所有権移転登記固定資産税評価額2%1.5%※2
建物の所有権移転登記固定資産税評価額2%0.3%※1
抵当権設定登記借入金額0.4%0.1%※1

※1 令和6年(2024年)3月31日まで

※2 令和8年(2026年)3月31日まで

印紙税

印紙税とは、契約書や領収書などに課される税金です。不動産の購入では、売買契約書や住宅ローンの金銭消費貸借契約書などに税額分の収入印紙を貼付します。印紙税額は以下のとおりです。

契約金額不動産売買契約書
()は軽減税率※
工事請負契約書金銭消費貸借契約書
100万円超
500万円以下
2,000円
(1,000円)
400円~2,000円2,000円
500万円超
1,000万円以下
1万円
(5,000円)
1万円1万円
1,000万円超
5,000万円以下
2万円
(1万円)
2万円2万円
5,000万円超
1億円以下
6万円
(3万円)
6万円6万円
1億円超
5億円以下
10万円
(6万円)
10万円10万円
5億円超
10億円以下
20万円
(16万円)
20万円20万円

※ 令和6年(2024年)3月31日まで

出典)
国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

不動産購入時の税金対策

ここでは、不動産購入時に利用できる税金対策を2つ紹介します。

住宅ローン控除

住宅ローンを利用して住宅の新築、取得または増改築等をした場合に利用できる制度です。一定の要件を満たすと、最大13年間、年末ローン残高の0.7%が所得税(一部、翌年の住民税)から控除されます。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。

住宅ローン控除については、以下の記事で詳しく説明しています。

認定住宅新築等特別税額控除

個人が認定長期優良住宅や認定低炭素住宅など(以下認定住宅)を新築及び取得した場合に、一定額をその年の所得税額から控除できる制度です。控除額の計算方法は以下のとおりです。

標準的なかかり増し費用(限度額650万円)×10%

標準的なかかり増し費用とは、認定住宅の基準適合に必要な費用のことです。認定住宅の床面積に応じて計算します。ただし、住宅ローン控除とは併用できないので注意が必要です。

出典)国税庁「No.1221 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」

不動産の「売却」にかかる税金

次に、不動産の売却にかかる税金の種類と計算方法を紹介します。不動産の売却にかかる税金は、「譲渡所得税」「登録免許税」「印紙税」の3種類です。不動産購入と異なる譲渡所得税を中心に解説します。

譲渡所得税

不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じる場合は、他の所得(給与所得、事業所得など)と区分して譲渡所得税がかかります。発生した譲渡所得税は確定申告をして納税を行います。税額算出に用いられる譲渡所得金額は以下の算式で計算されます。

譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

  • 取得費:売却する不動産の購入代金(建物は減価償却費相当額を控除)、仲介手数料など
  • 譲渡費用:仲介手数料、不動産を売却するための測量費、建物の取壊し費用など

※特別控除額の詳細は後述

このように算出した譲渡所得金額に税率を掛けて計算します。税率は、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」で以下のように異なります。

区分税率
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
20.315%
(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)
短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
39.63%
(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)

出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」

登録免許税

売却時は、抵当権抹消登記の際に登録免許税がかかります。登録免許税額は、不動産1個につき1,000円です。住宅の場合、土地1個と建物1個で合計2,000円となります。

所有権移転登記も必要ですが、登録免許税額は買主負担が一般的です。

出典)法務局「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」

印紙税

売却時は、不動産売買契約書に貼付する収入印紙が必要です。通常は売主と買主が1通ずつ契約書を保管するため、売却時にも印紙税が生じます。印紙税額は購入時と同様です。

不動産売却時の税金対策

不動産売却時の税金対策として利用できる制度を3つ紹介します。

3,000万円の特別控除

マイホームを売却したときに、所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。課税所得を大きく減らせるため、譲渡所得税の負担が軽減されます。

以前住んでいた住宅を売却する場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。ただし、親子や夫婦などの近しい親族へ売却する場合は控除を受けられません。

出典)国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

マイホーム売却時の軽減税率の特例

所有期間10年超のマイホームを売却する場合、一定の要件を満たすと、長期譲渡所得にかかる税率(通常は20.315%)が以下のように軽減されます。

長期譲渡所得金額税額
6,000万円以下の部分14.21%
(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%)
6,000万円超の部分20.315%
(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)

この特例は、上述した3,000万円の特別控除と併用可能です。

出典)国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

損益通算・繰越控除

令和5年(2023年)12月31日までに所有期間5年超のマイホームを売却して譲渡損失が生じた場合、一定の要件を満たすと、その損失を他の所得(給与所得、事業所得など)から控除できる損益通算が可能です。

また、損益通算をしても控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以後3年以内に繰り越して控除できる、繰越控除が可能です。

出典)
国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」

まとめ

マイホームの売買は軽減税率や特別控除などの特例が充実しているため、うまく活用すれば税負担の軽減につながります。不動産売買の予定がある場合は、物件の売買価格や諸費用だけでなく、どんな税金がいくらかかるのかも把握しておきましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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