一棟アパートは、不動産投資における代表的な投資対象の1つです。区分マンションや一棟マンションに投資する方法もありますが、一棟アパート投資にはどのような特徴があるのでしょうか。この記事では、一棟アパート投資の特徴とメリットやデメリット、注意点を解説します。 一棟アパート投資の特徴 一棟アパート投資とは、購入または建築したアパートを一棟丸ごと賃貸に出して家賃収入を得る方法です。入居者がいれば毎月家賃が入ってくるため、長期の安定収入が期待できます。 物件価格が同じエリアの区分所有物件に比べて高額であることから、金融機関の融資を利用して取得するケースが一般的です。家賃収入からローンを返済することで、効率的に資産形成ができます。 出典)日本FP協会「知っておこう!現物不動産投資の種類と方法」 マンション投資との違い 不動産投資では、区分マンションや一棟マンションに投資する方法もあります。 区分マンション投資 区分マンション投資は、マンションの一部屋だけを取得して賃貸に出す方法です。エリアや物件によっても異なりますが、一棟アパートよりも取得価格が低い傾向にあります。流動性が高く、売却しやすいのもメリットです。 一方で、新築や築浅、都心の物件は実質利回りが低くなりやすい特徴があります。また、複数物件を所有していないと、空室時に家賃収入が途絶えるリスクもあります。 出典)日本FP協会「知っておこう!現物不動産投資の種類と方法」 一棟マンション投資 一棟マンション投資は、マンションを一棟丸ごと取得して賃貸に出す方法です。一棟アパートと同様に複数の部屋を貸し出すことにより、空室リスクを分散できます。一棟を丸ごと所有することから区分マンションに比べて、物件管理の自由度が高いのもメリットです。 ただし、一棟マンションは一棟アパートよりも物件価格が高く、都内の場合は小規模マンションであっても価格が数億円単位になることも珍しくありません。 一棟アパート投資のメリット・デメリット ここでは、一棟アパート投資のメリットとデメリットについて紹介します。 一棟アパート投資のメリット 一棟アパート投資は主に以下のようなメリットがあります。 空室リスクを分散できる 一棟アパート投資は複数の部屋を貸し出すため、1つの部屋が空室になっても、他の部屋の家賃収入で損失を補填できます。一部屋だけを購入する区分マンションに比べると、空室リスクを分散することが可能です。 減価償却費が大きい 不動産投資では、建物の取得価額を法定耐用年数にわたって分割して税務上の必要経費に計上していきます。この手続きによって計上される経費が減価償却費です。減価償却費は計上時に現金の支出はありませんが、課税所得は減少します。そのため、税負担の軽減につながり、手元にお金が残りやすくなります。 住宅用の建物の法定耐用年数は鉄筋コンクリート造が47年、木造が22年です。木造のアパートは鉄筋コンクリート造のマンションより法定耐用年数が短く、1年あたりの減価償却費が大きくなるため、税負担の軽減効果を得やすいでしょう。 出典)国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」◆参考 主な減価償却資産の耐用年数表(PDF/406KB) 利回りが相対的に高い 一棟アパートは、一棟マンションよりも物件価格が安いことから、相対的に高い利回りが期待できます。運営の自由度が高く、修繕費などをコントロールしやすいため、区分マンションを複数戸所有するよりもコストを抑えることが可能です。 一棟アパート投資のデメリット 一方で、一棟アパート投資には以下のようなデメリットもあります。 まとまった自己資金が必要 一棟アパートを購入する時、金融機関の融資を利用したとしても満額融資は難しく、一定の頭金が必要となることが一般的です。それとは別に仲介手数料や登記費用、ローン事務手数料などもかかるため、ある程度の自己資金を準備する必要があります。 維持費がかかる 一棟アパート投資では、区分所有のマンションに比べて維持費が多くかかります。アパートの賃貸管理を管理会社に任せる場合は、家賃収入の5%程度の委託手数料を毎月支払う必要があります。 そのほか、共用部分の水道光熱費や火災保険料、地震保険料も必要です。木造である程度の築年数が経つと、不定期で退去時のリフォーム費用、アパートの修繕費用なども発生します。 災害リスクの損失が大きい 一棟アパートは、地震や火災、台風などの災害により建物が毀損するリスクがあります。鉄筋コンクリート造のマンションに比べると、木造アパートは災害による損失が大きくなる恐れがあるので注意が必要です。 一棟アパート投資の物件の選び方 一棟アパート投資は、新築物件と中古物件でメリットとデメリットが異なります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った物件を選ぶことが大切です。 新築アパート 新築アパートは建物や設備が新しいため、入居者を見つけやすく、当初は家賃も高めに設定できます。好条件で融資を受けやすく、しばらくは修繕費用を抑えられるのもメリットです。 一方で、物件価格(建築費用)が中古よりも高く、利回りは低い傾向にあります。また、新築時はすべての部屋が空室のため、入居者を一から探す必要があります。 中古アパート 中古アパートは新築より物件価格が安く、高い利回りが期待できます。すでに入居者がいる物件であれば、取得後すぐに家賃収入を得られます。新築よりも法定耐用年数が短く、減価償却費による税負担の軽減効果を得やすいのもメリットです。 ただし、物件の管理状態や築年数によっては、取得後に多額の修繕費がかかる場合があります。また、新築よりも融資を受けにくく、一度入居者が退去すると入居者募集も新築に比べると難しいので、空室リスクが高くなりやすい点にも注意が必要です。 一棟アパート投資の注意点 土地価格が安い地方のアパートは物件価格も安いため、満室時の利回りは高くなります。しかし、人口が多い都市部のアパートに比べると、入居者や買い手を見つけるのが難しい特徴があります。利回りの高さだけでなく、空室リスクや売却のしやすさなども考慮して物件を選ぶことが重要です。 また、災害リスクへの対策として、火災保険や地震保険には加入したほうがいいでしょう。ハザードマップを活用し、災害リスクの高い地域を避けるのも有効です。 関連記事はこちらハザードマップとは?使い方や活用ポイントを解説 まとめ 一棟アパート投資は、相対的に高い利回りが期待できます。複数の部屋を貸し出すことによって、空室リスクを分散できるのも魅力です。 物件価格は高額ですが、金融機関の融資を利用すれば自己資金を抑えることは可能です。一棟アパート投資のメリットとデメリットを理解したうえで、物件を取得する場合は不動産投資ローンの利用を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資でかかる費用と税金の種類、注意点を解説 不動産投資では、物件を売買するときや所有中にさまざまな費用や税金がかかります。長期にわたる安定収入を確保するには、物件取得前にどのような費用や税金がかかるかを把握し、シミュレーションをしたう...記事を読む
不動産投資は長期の安定収入が期待できますが、投資である以上、損失が生じるリスクもあります。ただし、事前に対策を講じることで、ある程度リスクを軽減できます。物件を購入する前に、どんなリスクがあるかを知っておくことが大切です。 この記事では、不動産投資の8つのリスクとその対策について解説します。 ①空室リスク 空室が生じて、家賃収入を得られなくなるリスクです。入居者が見つからず、空室期間が長引くと収益性が低下します。融資を利用して物件を購入する場合は、ローン返済に支障が出る恐れもあるので注意が必要です。 賃貸需要のあるエリアの物件を選ぶ 空室リスクを下げるには、賃貸需要のあるエリアの物件を選ぶことが有効です。「人口が多い」「ターミナル駅に近い」「大学や工場が近くにある」「スーパーなどの施設が充実している」などの要件を満たす物件は、一定の賃貸需要を見込める可能性があります。 また、不動産会社などが発表している「住みたい街ランキング」をもとにエリアを選定するのも1つの方法です。 入居者募集に強い賃貸管理会社を選ぶ 賃貸管理を委託する場合は、入居者募集に強い賃貸管理会社を選ぶことも有効です。賃貸管理会社によって、実績やノウハウに差があります。入居率や平均空室期間などを参考に、入居者募集に強い賃貸管理会社を選びましょう。 ②家賃滞納リスク 入居者が家賃を滞納して、収入を得られなくなるリスクです。入居者保護の観点から、家賃滞納が発生しても強制的に退去させるのは難しいため、発生防止に力を入れる必要があります。 入居審査を厳しくする 家賃滞納を防ぐには、入居審査を厳しくすることが有効です。経歴や年収、勤務先、人柄といった属性から、家賃滞納を起こす恐れがないかを見極めましょう。 なお、入居者募集は賃貸管理会社に任せられますが、自分でも入居希望者の属性に問題がないかを確認した上で賃貸借契約を締結することが大切です。 家賃保証会社と連帯保証人の両方を求める 家賃保証会社を利用すれば、家賃滞納が発生した際に保証会社が立て替えてくれまが、家賃保証会社だけでなく、連帯保証人も立ててもらうとより安心です。両親や親戚など入居者にとって身近な人に連帯保証人になってもらうことで、「迷惑をかけられない」という気持ちが働き、家賃滞納への抑止力となることが期待できます。 ③災害リスク 地震や火災、水害などで建物に被害が出るリスクです。近年では、地球温暖化の影響で自然災害が多発しています。必ずしも避けることのできるものではありませんが、リスクを抑えることはできます。 火災保険、地震保険に加入する 物件を購入する際は、火災保険や地震保険に加入しておくと安心です。 建物に被害が出ても、保険金で復旧費用をカバーできます。火災保険だけでは、地震が原因の火災の場合に補償してもらえないため、地震保険にも加入することをお勧めします。 新耐震基準の物件を選ぶ 地震への対策として、1981年以降に建てられた「新耐震基準」の物件を選びましょう。新耐震基準は「震度6以上でも倒れない」とされており、大地震が発生しても建物倒壊を回避できる可能性があります。 ただし、築年数が経過している物件は、適切なメンテナンスや修繕が行われているかで建物の状態が変わります。そのため、「築浅物件や管理状態が良好な物件を選ぶ」「投資エリアを分散する」といった対策も有効です。 ハザードマップを活用する ハザードマップを活用し、災害に強い地域の物件を選ぶことも有効です。自治体のホームページに掲載されているので、物件購入前に災害リスクを確認しておきましょう。 ④修繕リスク 経年劣化により、建物や設備が老朽化するリスクです。不動産投資では、設備や建物の老朽化が、入居者募集や家賃、資産価値、売却活動などに大きな影響を与えます。 メンテナンスや修繕の計画を立てる 不動産は実物資産であるため、年数が経過するほど建物や設備の老朽化が進みます。ただし、適切なメンテナンスや修繕を行うことにより、老朽化のスピードを遅らせ、建物を長く良好な状態に保つことは可能です。 あらかじめメンテナンスや修繕の計画を立てておき、その計画を実行できるように修繕費用を確保しておきましょう。また、物件の購入前のシミュレーションには必ず設備の交換費用や、管理費や修繕積立金の増加を見込んでおきましょう。 ⑤不動産価格下落リスク 不動産価格が下落して、物件の資産価値が低下するリスクです。購入時より資産価値が大きく低下すると、売却時に損失が生じて、最終的な損益がマイナスになる恐れがあります。 中古物件を選ぶ 新築の物件価格にはいわゆる「新築プレミアム」が上乗せされており、購入から数年で価格が2割程度下落することも珍しくありません。一方で、中古物件は新築に比べて不動産価格の下落ペースが緩やかな傾向にあります。 ただし、中古物件であっても築年数の経過とともに資産価値は下落するため、定期的に査定依頼をして、売却時期を検討することが大切です。そのほか、再販業者の利益が大幅に乗っている物件や、市場価格よりも高値で売り出されている物件ではないかの確認は必ずしましょう。 不動産価格が安定している地域の物件を選ぶ 不動産価格の推移は、エリアによって差があります。直近はもちろん、長期の価格推移も確認して、値動きが比較的安定している地域の物件を選ぶと良いでしょう。また、地方自治体から出されている「将来人口推計」を確認して、人口減少が見込まれている地域を避けるのも有効です。 ⑥家賃下落リスク 家賃が下落して、不動産投資の収益性が低下するリスクです。ほとんどの場合、築年数が経過するほど家賃は下落します。 人気が高いエリアの物件を選ぶ 家賃下落を抑えるには、賃貸需要が見込める物件を選ぶことが有効です。人気が高いエリアの物件は家賃相場が安定しており、築年数が経過しても家賃が下落しにくい傾向にあります。 ⑦流動性リスク 買い手が見つからず、所有物件を売却できなくなるリスクです。不動産投資は売却によって最終的な損益が確定するため、売却も想定しておく必要があります。 売却しやすい物件を選ぶ 購入時に立地や築年数、建物の構造を考慮して、売却しやすい物件を選ぶことが重要です。たとえば、築年数が経過した地方の一棟アパートよりも、首都圏の築浅区分ワンルームのほうが買い手を見つけやすいでしょう。 また、周辺物件よりグレードが高い、同じくらいの築年数の物件が少ないなどの差別化要素があれば、よりリスクを減らせるかもしれません。 定期的に査定を依頼して資産価値を確認する 定期的に査定を依頼して、物件の資産価値を確認することも大切です。不動産は、基本的に築年数が経過するほど資産価値は下落し、買い手を見つけにくくなります。査定額の変化から、売却時期を見極めましょう。 ⑧金利上昇リスク 不動産投資ローンの適用金利が上昇して、返済負担が増えるリスクです。融資を利用しており、変動金利の場合、市場金利の動向に応じて定期的に適用金利が見直されます。 自己資金を多めに準備する 不動産投資ローンを借りる際は、自己資金を多めに準備しましょう。頭金を多く入れて借入金額を少なくすれば、金利が上昇しても支払利息の負担を抑えられます。 不動産投資は、他人資本(借入金)を活用して効率的に資産を増やせるのが魅力です。しかし、融資を受けられるとしても、無理な借り入れをしないことが金利上昇リスクへの対策となります。 固定金利を検討する 長期の借り入れを行う場合は、固定金利を選ぶのも選択肢です。契約時の適用金利は変動金利より高くなりますが、固定金利であれば、市場金利が上昇しても適用金利は変わりません。 契約時に毎月の返済額や総返済額が確定するため、返済計画を立てやすいのもメリットです。 関連記事はこちら変動型の金利はどう決まる? まとめ 不動産投資にはさまざまなリスクがありますが、事前に対策を講じることで、リスク軽減が期待できます。成功率を高めるためにも、物件購入前に不動産投資のリスクと対策を理解しておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 不動産投資の始め方 老後の資金作りや副業として、不動産投資を始める会社員が増えています。マンションやアパートといった投資物件は、安定した家賃収入を得られるのが魅力です。一方で、不動産投資に興味はあっても、投資経...記事を読む
不動産投資では、物件を売買するときや所有中にさまざまな費用や税金がかかります。長期にわたる安定収入を確保するには、物件取得前にどのような費用や税金がかかるかを把握し、シミュレーションをしたうえで、物件を選ぶことが大切です。 この記事では、不動産投資でかかる費用や税金の種類と注意点を解説します。 不動産投資でかかる費用の種類 まずは、不動産投資でかかる費用の種類を確認していきましょう。 購入時にかかる費用 不動産投資で物件を購入する際にかかる費用は以下のとおりです。 費用 内容 金額の目安 仲介手数料 仲介業者に支払う手数料 売買価格×3.0%+6万円+消費税 司法書士報酬 司法書士に所有権移転登記や抵当権設定登記を依頼する場合に支払う費用 10~20万円程度 融資手数料 融資を利用する際に必要な事務手数料や保証料 金融機関によって異なる。 仲介手数料は、不動産の売買価格によって変わります。仮に物件価格が3,000万円であれば、仲介手数料の金額は「96万円+消費税」となります。なお、仲介業者なしで不動産を購入する場合は不要です。 所有権移転登記や抵当権設定登記(融資を利用する場合に必要)を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬が必要になります。10~20万円程度が目安ですが、実際にかかる費用は司法書士によって異なります。また、融資を利用して購入をする場合には、融資事務手数料が発生します。 所有中にかかる費用 不動産投資で物件の所有中にかかる費用は下記のとおりです 。 費用 内容 金額の目安 修繕費 不定期で発生する修繕費、設備交換費用など 物件種別や築年数、管理状況などに左右される 管理費・修繕積立金 区分マンションの場合に毎月支払う費用 管理費:月額220円/㎡程度修繕積立金:月額180円/㎡程度 業務委託手数料 賃貸管理及び収納代行を依頼する場合に管理会社に支払う費用 家賃の5.0%程度 ローンの支払利息 不動産投資ローンの支払利息 借入残高の2.0~5.0%程度 火災保険料、地震保険料 加入する火災保険・地震保険の保険料 年数万円程度 税理士報酬 税理士に確定申告を依頼する場合に支払う費用 3万円程度(確定申告のみを依頼する場合) その他費用 不動産投資に必要な交通費、通信費、教材費、交際費など 支出内容によって異なる 区分マンションに投資する場合は、管理費・修繕積立金の支払いが必要です。金額はあくまで目安であり、実際には物件種別や築年数、管理状況などに左右されます。 賃貸管理を依頼する際の業務委託手数料や不動産投資ローンの支払利息も、管理会社や金融機関によって異なるため、購入前に確認しておくことが大切です。税理士報酬は、顧問契約を締結する場合は月数万円程度の顧問料が発生し、決算時に追加費用がかかることもあります。 そのほか、会計上は減価償却費も費用として計上されます。実際に手元のお金を支払うものではありませんが、確定申告などでは知っておく必要があります。 売却時にかかる費用 不動産投資で物件を売却する場合は、以下の費用がかかります。 費用 内容 金額の目安 仲介手数料 仲介業者に支払う手数料 売買価格×3.0%+6万円+消費税 司法書士報酬 司法書士に抵当権抹消登記を依頼する場合に支払う費用 2万円程度 ローン返済手数料 不動産投資ローンの残債を一括返済するための費用 金融機関によって異なる 不動産投資では、基本的に物件売却時にも仲介手数料がかかります。ただし、仲介なしで不動産を売却する場合は不要です。 また、抵当権抹消登記(融資を利用していた場合に必要)を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬も必要になります。加えて、ローンが残っている不動産を売却する場合は、ローン返済手数料も発生します。 不動産投資でかかる税金の種類 次に、不動産投資でかかる税金の種類を確認していきましょう。 購入時にかかる税金 物件購入時にかかる税金は下記のとおりです。 税金 内容 税額の目安 印紙税 売買契約書に貼付する収入印紙 契約金額による※1 登録免許税 土地・建物の所有権移転登記、抵当権設定登記にかかる税金※2 所有権移転登記:固定資産税評価額×2.0%抵当権設定登記:借入金額×0.4% 不動産取得税 不動産を取得した際にかかる税金 固定資産税評価額×4.0% 固定資産税 購入した年の残日数分の日割り計算分 固定資産税額×購入した年の残日数/365日 ※1 契約金額1,000万円超 5,000万円以下の場合は2万円 ※2 融資を利用していた場合のみ必要 印紙税は売買契約時、登録免許税は司法書士報酬に含めて支払うのが一般的です。不動産取得税は、物件取得から半年~1年後に都道府県から納税通知書が届きます。また、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課される税金であるため、購入した年の残日数分を購入時に支払う必要があります。 なお、上記の税額は本則税率の場合であり、軽減税率が適用される場合もあります。 所有中にかかる税金 物件を所有している間は以下の税金がかかります。 税金 内容 税額の目安 固定資産税・都市計画税 毎年1月1日現在の土地・建物の所有者にかかる税金 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%都市計画税:固定資産税評価額×0.3% 所得税・住民税 1年間の不動産所得(不動産投資の利益)にかかる税金 所得税:所得金額×5.0~45.0%復興特別所得税:その年の基準所得税額×2.1%住民税:所得金額×10.0% 物件を所有している間は、固定資産税・都市計画税を毎年支払います。 市区町村から納税通知書が届くため、自分で税額を計算する必要はありません。 不動産所得については、給与所得や事業所得などと合算して所得税額を計算し、確定申告をして税額を納めます。確定申告をすれば、住民税は市区町村から納税通知書が届きます。 売却時にかかる税金 不動産を売却する際は、以下の税金がかかります。 税金 内容 税額の目安 印紙税 売買契約書に貼付する収入印紙 契約金額による※1 登録免許税 抵当権抹消登記にかかる税金※2 不動産1個につき1,000円(土地と建物で合計2,000円) 譲渡所得税(所得税・住民税) 不動産の譲渡所得(売却益)にかかる税金 短期譲渡所得:譲渡所得×39.63%長期譲渡所得:譲渡所得×20.315% ※1 契約金額1,000万円超 5,000万円以下の場合は2万円 ※2 融資を利用していた場合のみ必要 印紙税は売買契約時、登録免許税は司法書士報酬に含めて支払うのが一般的です。 譲渡所得(売却益)が発生する場合は、確定申告をして譲渡所得税を納めなくてはなりません。譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年超の場合は「長期譲渡所得」となります。 不動産投資の費用・税金に関する注意点 不動産投資の費用や税金に関する注意点は主に以下2つです。 必要経費になる支出とならない支出がある 不動産投資では、関連支出を経費に計上すると課税所得が減額され、所得税・住民税の負担軽減が期待できます。 ただし、必要経費になる支出とならない支出があります。たとえば、不動産所得にかかる所得税や住民税、不動産投資に直接関係ない支出は必要経費になりません。 必要経費になるか判断できない場合は、税務署や税理士に相談しましょう。 期限内に確定申告を行う 不動産所得や譲渡所得が生じた場合は、必ず期限内に確定申告を行いましょう。確定申告期間は毎年2月16日~3月15日です。期限内に申告を行わないと、延滞税などがかかる恐れがあります。 自分で確定申告をするのが難しい場合は、税理士に依頼することも可能です。 関連記事はこちら確定申告とは?手続きの流れや方法を解説 まとめ 不動産投資では、さまざまな費用や税金が発生します。物件を購入する場合は、これらの費用を踏まえた収支シミュレーションをした上で投資判断を行うことが大切です。不動産投資でかかる費用や税金を理解して、優良物件を探しましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む
不動産投資は、安定収入が期待できる投資方法です。ゆとりある老後生活を送るための資産形成手段として注目されています。ただし、不動産投資にはリスクもあるため、不動産を購入する前に、正しい知識を身につけておくことが大切です。 この記事では、不動産投資の仕組みやメリット・デメリット、始め方について詳しく解説します。 不動産投資とは? 不動産投資とは、所有する不動産を貸し出して家賃収入を得る投資のことです。入居者がいれば、 自らが働くことなく毎月家賃収入を受け取れます。 「不動産投資は難しそう」と思うかもしれませんが、不動産選びから賃貸管理まで全てひとりで行う必要はありません。不動産を探す際には、不動産会社から紹介してもらいながら探すことができます。また、賃貸管理を管理会社に任せられるため、仕事をしながら副業として不動産投資に取り組むことも可能です。 不動産投資の利益は2種類 不動産投資の利益は、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つに分かれます。 インカムゲインとは、不動産の所有中に継続して得られる利益のことです。家賃収入や更新料などの、安定的・継続的な利益が該当します。 キャピタルゲインとは、不動産の売却によって得られる利益(売却益)のことです。不動産価格が上昇し、取得時より高い価格で売却できれば、取得価額と売却価額の差額が利益となります。 投資対象不動産の種類 不動産投資の対象となる主な不動産の種類は以下のとおりです。 一棟マンション 一棟アパート 区分マンション 戸建て 一棟マンション・アパートの投資は貸し出せる部屋数が多い分、相対的に大きな利益が期待できます。ただし、不動産価格が高額で、多額の資金が必要になります。 区分マンションの投資は、マンションの1室を貸し出す方法です。一棟物件に比べると価格は低額ですが、戸数が少ない分、一棟物件ほどの大きな利益は期待できなくなります。 また、戸建てを貸し出す方法もあります。戸建てを貸し出す場合、主な入居者としてファミリー層が想定されます。ファミリー層は入居期間が長い傾向にあるため、長期的な安定収入が期待できます。一方で、アパートやマンションに比べると入居者が見つかりにくい側面もあります。 それぞれの特徴を理解して、投資の対象とする不動産を選びましょう。 新築と中古の違い 不動産投資は、「新築」と「中古」の違いを理解しておくことも重要です。 新築は建物や設備が新しいので、入居者が見つかりやすく、長く稼働できます。一方で、購入して中古になると、すぐに資産価値が大きく下がるデメリットもあります。 中古は新築より不動産価格が低額ですが、築年数が経過していると、購入後すぐに多額の修繕費がかかることもあるので注意が必要です。 不動産投資のメリット 不動産投資には、以下のようなメリットがあります。 安定収入を得られる 不動産投資は、入居者がいれば毎月家賃が得られます。一般的な仕事とは異なり、労働時間や場所などに収入が左右されません。うまく運用できれば、大きな労力をかけることなく安定収入を確保できるでしょう。 他人資本を活用できる 不動産投資では、借入金で不動産を取得可能です。また、入居者からの家賃収入でローンを返済できます。まとまった自己資金を準備しなくても、他人資本を活用して効率的に資産を形成できます。 働かずに収入が得られる 不動産投資は、入居者がいれば、自らが働くことなく毎月家賃収入を受け取れます。不動産購入後の賃貸管理も管理会社に任せられるため、本業の仕事以外に余分な手間やコストをかけることなく収入を得ることができます。 生命保険効果がある 不動産投資で金融機関から融資を受けるときは、「団体信用生命保険(団信)」に加入するのが一般的です。返済中に契約者が死亡した場合は、団信の保険金で残債が弁済されるため、家族にローンのない不動産を残せます。 インフレに強い インフレ(物価上昇)時は、実物資産である不動産の資産価値は下がりにくく、家賃は上昇しやすい傾向にあります。また、物価が上昇しても額面金額は変わらないため、借入金額は実質的に目減りします。これらの特徴から、不動産投資はインフレに強いと言えます。 不動産投資のデメリット 一方で、不動産投資は以下のようなデメリットもあります。 さまざまな費用がかかる 不動産投資は購入時や所有中、売却時に次のような費用がかかります。 購入時 仲介手数料印紙税登録免許税(所有権移転、抵当権設定)司法書士報酬ローン事務手数料不動産取得税など 所有中 管理費・修繕積立金(区分マンションの場合)業務委託費(賃貸管理を業者に任せる場合)固定資産税・所得税住民税退去時の原状回復費用・修繕費など 売却時 仲介手数料印紙税登録免許税(抵当権抹消)ローン繰上返済手数料譲渡所得税(所得税・住民税) など 費用が収入を上回る場合、損失が生じてしまいます。購入時の費用だけでなく、投資期間中にかかる全ての費用も確認し、 収益を確保できるか見極めることが大切です。 関連記事はこちら不動産投資でかかる費用と税金の種類、注意点を解説 さまざまなリスクがある 不動産投資にはさまざまなリスクが存在します。「空室リスク」「災害リスク」「流動性リスク」の3つが代表的です。 空室リスクは、入居者が見つからず家賃収入を得られなくなるリスクです。空室期間が長期化すると、ローン返済に支障が出る恐れがあります。 災害リスクは、地震や火事、台風などによって建物が被害を受けるリスクです。空室の長期化、家賃・資産価値の低下を招く恐れがあります。 流動性リスクは、不動産を売却できなくなるリスクです。不動産を売却するには、不動産会社と媒介契約を締結して買い手を見つけなければなりません。なかなか買い手が見つからず、現金化に時間がかかることもあります。 関連記事はこちら不動産投資の8つのリスクとその対策 不動産投資の始め方 「不動産投資を始めたい」と思ったら、以下の流れで手続きを進めましょう。 十分な 知識を身につける 不動産会社を探して不動産を紹介してもらう 売買契約、融資契約、賃貸管理契約を締結する 入居者を募集し、賃貸借契約を締結する(空室の不動産を購入する場合) 関連書籍やセミナーなどで十分な知識を身につけてから、不動産会社を探して不動産を紹介してもらいます。不動産会社を選ぶときは、実績や業績、評判などを確認し、複数の不動産会社を比較・検討しましょう。 不動産が見つかったら売買契約や融資契約を行い、必要に応じて賃貸管理を依頼します。既に入居者がいれば、契約後すぐに家賃収入を得られます。空室の不動産を購入する場合は、入居者募集を行いましょう。 関連記事はこちら不動産投資の始め方 まとめ 不動産投資は安定収入が期待でき、他人資本を活用して効率的に資産を形成できるのが魅力です。一方で、購入時だけでなく所有中や売却時にも費用がかかり、空室リスク、災害リスク、流動性リスクといったさまざまなリスクも存在します。不動産投資の成功率を高めるためにも、十分な知識を身につけてから不動産投資を始めましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む
不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増やすことが出来る自宅購入も不動産投資の一種といえるでしょう。 不動産投資には空室リスクをはじめ、さまざまなデメリットが存在しますが、自宅購入ならこれらのデメリットをカバーできます。自宅購入で失敗を避けるには、不動産投資と同様に物件選びやローンの借り方に注意することが大切です。 この記事では、自宅購入が不動産投資より優れている理由や自宅購入の失敗例について解説します。 自宅購入が不動産投資より優れている5つの理由 自宅購入が不動産投資より優れている理由は以下の5つです。 空室リスクがない マンションやアパートといった収益不動産への投資では、入居者がいれば毎月家賃収入を得られますが、空室になってしまうと家賃は入ってきません。不動産投資では家賃収入でローンを返済していくこととなりますが、空室期間が長くなると自己資金の持ち出しが発生し、返済が困難になる可能性があります。 一方で自宅購入の場合は、自身が居住するため空室はありません。もちろん自身が居住するため家賃収入は得られませんが、ローンを完済すれば自宅は資産となります。そのまま住み続けられるのはもちろん、ある程度残債が減ることで「売却してまとまった現金を手に入れる」「自宅を担保にお金を借りる」など、資金調達手段として活用できるのも魅力です。 自らの努力で資産価値を維持できる 不動産投資の場合、たとえオーナーであっても、賃貸中は入居者の許可なく部屋に入ることはできません。入居者やその使い方によっては資産価値を低下させる恐れがありますが、賃貸中にオーナーができることは限られてしまいます。 一方で自宅購入であれば、自らの努力で資産価値を維持することが可能です。定期的にメンテナンスをしたり、必要に応じてリフォームをしたりすることで、建物を健全な状態に保てます。 ローンをより低金利で借りることができる 不動産投資ローンに比べると、住宅ローンは低金利で借りることができます。不動産は物件価格が高額なので、少しの金利差で総返済額は大きく変わります。 不動産投資ローンの場合、物件の担保評価や債務者の属性などによって適用金利は変わってきます。一般的に金利は2%以上になることが多く、住宅ローンのような低金利で借りることは難しいでしょう。 一方で住宅ローンの場合、変動金利なら0.5%未満で借りることも可能です。また、最長35年間固定金利で借りられる「フラット35」の適用金利は1.310%~2.060%(返済期間21~35年の場合:2020年11月現在)で、固定金利でも低金利で借りられます。 出典) ・価格.COM 住宅ローン商品一覧 ・【フラット35】 団信がより優れている 不動産の購入でローンを借りる場合、万一に備えて団体信用生命保険(団信)に加入するのが一般的です。そして、団信の保証内容は、不動産投資ローンより住宅ローンのほうが手厚い傾向にあります。 団信の仕組みとして、被保険者が死亡または所定の高度機能障害になったときに、ローン残高を保険金で一括返済するのは同じです。しかし、住宅ローンの場合は「がん保障特約」「疾病保障付き」など内容が充実しており、上乗せされる金利も比較的低くなっています。 税制面での優遇が非常に大きい 自宅購入は、不動産投資に比べて税制面での優遇も非常に大きいものがあります。具体的には、以下2つの税制優遇が受けられます。 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) 売却時の3,000万円の特別控除 住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して自宅を購入した場合に当初10年間(2020年12月31日までに居住した場合は13年間)、住宅ローン年末残高の1%(控除限度額40万円)が所得税から控除される制度です。所得税の節税によって、金利負担を軽減できます。 また、自宅を売却したときは、所有期間にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。自宅を売却して利益が出たとしても、譲渡所得が3,000万円までは税金がかかりません。 出典) ・国税庁 所得税 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除) ・国税庁 譲渡所得 No.3302 マイホームを売ったときの特例 自宅購入の3つの失敗例を紹介 このように、自宅購入は不動産投資にはないメリットがありますが、購入物件やローンの借り方によっては失敗してしまうこともあります。ここでは、自宅購入の失敗例を3つ紹介します。 必要以上の家を購入する たとえば、こだわりの注文住宅を建てるなど、必要以上の家を購入すると失敗しやすくなります。注文住宅は、あくまでも建てた人にとって利便性が高いだけで、一般に受け入れられるとは限りません。 そのため、建築に係るコストと市場評価との乖離が広がり、思うような価格で売却できなくなる恐れがあります。将来の売却を視野に入れるのであれば、必要以上の家を購入するのは避けたほうがいいでしょう。 今買える物件を買ってしまう 購入物件を十分に検討せず、今買える物件を買ってしまうのも失敗例のひとつです。たとえば、長期間売れ残っている物件は、需要が少ないと考えられます。このような物件は市場の流通性が低いので、なかなか買い手が見つからず、売却時に苦労する可能性があります。 そのため、購入したいと思った時に売り出している物件の中から選ぶのではなく、市場価値のある(=需要のある)不動産の売り出しを待つことが良いと言えるでしょう。 今借りれるローンを借りてしまう 住宅ローンは、金利によって数年後の残債が大きく変わります。転職直後など条件が悪くなりやすいときに高い金利で住宅ローンを借りると、毎月の返済額や総返済額が増えてしまいます。 今住宅ローンを借りれたとしても、状況によっては、もう少し待ったほうがより良い条件で借りれるケースもあります。住宅ローンを借りる際は、より有利な条件で借りられるタイミングを見極めることも大切です。 まとめ ここまで紹介したように、自宅購入は不動産投資にはないメリットがたくさんあります。もし賃貸暮らしのまま、不動産投資を始めようとしているのであれば、収益不動産を購入して家賃収入を得ることと、自宅を購入して家賃の支出を無くすことと、どちらがお得かを検討してみましょう。また、自宅を購入する方がより安全な投資になるかもしれないということを頭に入れておいてください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンが残っていても自宅を賃貸に出せる? 住宅ローンを借りて自宅を購入した後、急な転勤などで、住み替えが必要になった場合、いずれは元の自宅に戻りたいと考え、自宅を賃貸に出せないか検討することもあるかもしれません。この記事では、住宅ロ...記事を読む
老後の資金作りや副業として、不動産投資を始める会社員が増えています。マンションやアパートといった投資物件は、安定した家賃収入を得られるのが魅力です。一方で、不動産投資に興味はあっても、投資経験がないと何から始めたらいいかわからないのではないでしょうか。 不動産投資は投資金額が高額なので、その資金を多額のローンで賄う場合は、大きな損失を抱えるリスクもあります。不動産投資に取り組むのであれば、しっかりと準備をしたうえで始めることが大切です。この記事では、不動産投資を始めるための事前準備と基礎知識の学び方について解説します。 不動産投資を始めるための事前準備 不動産投資を始める前に、事前準備として以下4つに取り組んでおきましょう。 不動産投資の基礎知識を習得する 実際に投資物件を購入する前に、まずは不動産投資の基礎知識を習得することが大切です。不動産投資で成功するには、安定して家賃収入を得られる物件に投資する必要があります。万が一、不動産会社に収益性の低い物件を勧められた場合に、知識がないと物件の良し悪しを判断できません。 しかし、経験がなくても知識があれば、投資すべき物件かどうかは判断できます。不動産投資は物件選びに失敗すると大きな損失を抱えるリスクがあるので、基礎知識の習得は必須です。基礎知識の学び方については、後ほど詳しく解説します。 投資資金を貯める 不動産投資は投資金額が高額なので、ある程度まとまったお金が必要になります。金融機関の融資を利用することもできますが、仮に物件価格の全額を融資で賄う(フルローン)場合であっても、諸費用は用意しなくてはなりません。 物件価格が比較的安いワンルームマンションでも、都内の物件なら諸費用だけで100万円程度かかることもあります。多額の借金はリスクが高くなるので、融資を利用する場合でも、諸費用や頭金を用意できるように投資資金を貯めておきましょう。 転職はしないで収入を増やす(安定した企業に勤務している場合) 不動産投資では、金融機関の融資を利用して物件を購入するのが一般的です。勤務先や年収、勤続年数などの属性によって、金融機関の審査結果は変わります。たとえば、東証プライム上場企業などの安定した企業に勤務している場合は、融資してもらえる可能性は高くなります。 しかし、転職して勤続年数が短いと、金融機関の評価が下がって審査に通らなくなるかもしれません。安定した企業に勤務している場合は、転職はしないで収入を増やすことに取り組みましょう。 収入を減らさずに安定した企業へ転職する 現在の勤務先によっては、収入を減らさずに安定した企業へ転職するほうが有利なケースもあります。たとえば、創業したばかりの企業や業績不振の企業に勤務していると、安定収入がないとみなされて、融資審査に通らない恐れがあります。 しかし、勤務先が安定した企業であれば、たとえ勤務年数が短くても、金融機関からの評価は高くなります。現在の勤務先では融資を受けるのが厳しいと思われる場合は、なるべく収入を減らさずに安定した企業への転職を検討しましょう。 不動産投資の基礎知識の学び方 ここでは、不動産投資の基礎知識を学ぶ方法を4つ紹介します。 不動産投資に関する本を読む 不動産投資の基礎知識を学ぶなら、まずは不動産投資に関する本を読むのがおすすめです。タイトルに「教科書」という言葉が入っている初心者向けの本や、個人投資家の成功体験が書かれたものなど、さまざまな内容の本が出版されています。また、ワンルームマンションやアパート一棟、戸建て、競売物件など、物件の種類で分類することもできます。 まずは、基礎知識が学べる初心者向けの本を1冊読んでみましょう。著者によって投資方法や考え方は異なるので、数冊読むとさらに理解が深まります。ただし、「~億円の資産を築いた方法」のようなタイトルの本は、多額の借金をして物件を購入していることが多いので注意が必要です。 不動産投資サイト・ブログを読む 不動産投資サイトやブログは基礎知識だけでなく、最新情報や投資家の体験談を無料で読めるのが魅力です。1記事あたりのボリュームは少ないので、空いた時間にパソコンやスマートフォンから気軽にチェックできます。ただし、個人ブログは本当に正しい情報なのか判断できないこともあるので、参考程度に読むのがいいでしょう。不動産投資サイトやブログは本と併せて読むことで、基礎知識を深めることができます。また、最近では、Youtubeで不動産投資の解説をする動画も増えているため、動画を活用するのもおすすめです。 セミナーに参加する 不動産投資の基礎知識を学ぶには、セミナーに参加する方法もあります。セミナーは講師が直接説明してくれるので、ひとりで学ぶのが苦手な方でも理解しやすいのがメリットです。また、不動産会社によっておすすめの物件や地域は異なるので、複数のセミナーに参加することで、自分に合った投資方法を見つけやすくなります。 セミナー終了後は、個別の無料相談会が行われ、非公開物件などを紹介されることもあります。ほとんどの不動産会社は強引な勧誘を行いませんが、物件購入を強く勧められる可能性もゼロではありません。主催会社やセミナーの評判について、事前に確認してから参加しましょう。 不動産投資を始めている人の話を聞く 友人や知人など、周囲に不動産投資を始めている人がいれば、直接話を聞くのもおすすめです。基本的に不動産会社は物件を購入してほしいので、不動産投資のメリットを強調して説明する可能性があります。 しかし、利害関係がない友人・知人であれば、本やセミナーではわからない不動産投資のデメリットや注意点なども教えてもらうことができます。無理に探す必要はありませんが、可能であれば、実際に不動産投資を始めている人の話を聞いてみましょう。 不動産投資10のリスクとその対策 不動産投資を成功させるには、物件を購入する前にリスクについて理解しておくことが大切です。ここでは、不動産投資における10のリスクと対策方法を紹介します。 空室リスク 不動産投資で最も避けたいのが空室リスクです。投資物件を購入しても、入居者がいなければ家賃収入を得ることはできません。空室リスクを下げるには、利回りだけで判断せず、地域や立地、周辺環境、築年数などを考慮して物件を選ぶことが大切です。たとえば、以下のような物件は、空室リスクが低い傾向にあります。 ・人口が多い首都圏にある ・最寄り駅から近い ・スーパーやコンビニなど生活に必要な施設が揃っている ・築年数が比較的新しい 家賃滞納リスク 入居者がいても、家賃を滞納されてしまうと家賃収入を得られません。仮に入居者が家賃滞納を繰り返しても、入居者の権利は法律で保護されているため、物件所有者の判断で退去させるのは難しいでしょう。 家賃滞納リスクを回避するには、賃貸契約の際に、入居者に保証会社を利用してもらうことが大切です。入居者が家賃を滞納しても、保証会社が家賃を立て替えてくれます。また、家賃滞納に強い管理会社を選んで物件管理を依頼すれば、家賃滞納が発生したときに、管理会社が対応してくれるので安心です。 災害(地震・火事・水害)リスク 不動産投資では、地震や火事、水害によって建物が損壊するリスクがあります。地震については、1981年以降に建てられた新耐震基準の物件を選ぶと安心です。新耐震基準は「震度6強以上の地震でも倒れない住宅」とされており、大きな地震が発生しても、建物倒壊を回避できる可能性が高くなります。 不動産投資では物件を売却することも考慮し、売却しやすい物件を選ぶことが大切です。 火事や水害については、ハザードマップで火事や水害のリスクが低い地域を確認しておくことで、災害に強い地域の物件を選ぶことができます。ハザードマップは物件の所在地である市役所や区役所などのHPから簡単に調べることができます。また、もしもの時に備えて、火災保険や地震保険にも必ず加入しておきましょう。 設備(クーラー、風呂)老朽化リスク 不動産投資には、物件の設備が老朽化するリスクもあります。クーラーや給湯器は約10年が交換の目安になり、ワンルームマンションの場合でそれぞれ10万円程度かかります。また、キッチンや風呂など水回りのトラブルで漏水が発生した場合は、下階の損害も補填しなくてはなりません。 入居者の過失の場合、復旧関連費用は全て入居者負担となり、入居者が加入する火災保険(家財保険)から支払われます。賃貸契約時には、入居者に必ず火災保険に加入してもらい、万が一のトラブルに備えましょう。 流動性リスク 不動産投資には、購入した投資物件が売れなくなってしまう流動性リスクがあります。築年数が古い物件や地方の空室リスクが高い物件などは、なかなか買い手が見つかりません。また、首都圏にある駅近のマンションであっても、1階の物件は売れにくい傾向にあります。マンションの1階は比較的日当たりが悪く、防犯やプライバシーの面から敬遠されることが多いからです。不動産投資では物件を売却することも考慮し、売却しやすい物件を選ぶことが大切です。 信用力低下リスク ローンを利用して不動産投資をしていると、住宅ローンを借りられなくなるリスクがあります。住宅ローンでは、ローンの返済原資は債務者の年収のみです。不動産投資では、空室や修繕によって債務者に自己負担が発生し、住宅ローンの返済に影響が出る恐れが加味され、金融機関は信用力(返済能力)が低下したとみなします。住宅ローンを利用してマイホームを購入する予定があるなら、不動産投資を始めるかどうか慎重に判断しましょう。 金利上昇リスク 不動産投資ローンを利用する場合は、金利上昇リスクがあります。変動金利の場合、金利が上昇すると金利負担が増えて、ローン返済が困難になる恐れがあります。現在は低金利の状況が続いていますが、いつ金利が上昇するかは予測できません。適用金利はやや高くなりますが、金利上昇リスクに備えるなら、固定金利でローンを組むことを検討しましょう。 税金リスク 不動産投資で得られる家賃収入は、所得税の計算上は不動産所得に該当します。不動産所得は総合課税の対象で、給与所得などと合算して所得税が計算されるため、人によっては高い税率がかかります。また、投資物件を売却するときには、売却益に対して税金がかかります。 投資物件の建物部分は、年数が経過すると減価償却によって帳簿価格が下がるので、思った以上に売却益が出て課税されることが多いです。また、物件購入後5年以内の短期売却の場合は、税率が高くなるので注意が必要です。 管理状況悪化リスク 投資先がマンションの場合、管理状況が悪化するリスクがあります。マンションでは、共有部分の清掃や設備点検、大規模修繕への備えとして、毎月管理費と修繕積立金を支払います。しかし、管理組合が機能していないと、修繕積立金の不足や管理費の延滞が発生する恐れがあります。また、入居者が外国人の場合、文化の違いやコミュニケーション不足が原因で、ゴミ出しや騒音、ペット飼育などのトラブルが発生することもあります。 投資物件としてマンションを購入するときは、重要事項説明書などで修繕積立金や管理費などの状況を確認しましょう。また、外国人の入居者に対しても、しっかりと対応できる管理会社に物件管理を依頼することも大切です。 家賃・物件価格下落リスク 不動産投資には、家賃・物件価格が下落するリスクもあります。新築物件の場合、家賃や物件価格にはいわゆる「新築プレミアム」が上乗せされます。最初の入居者に対しては家賃を高めに設定できますが、退去すると中古物件となり、家賃の下落率は高くなります。 また、新築物件は物件価格の下落率も大きく、購入から数年で2割程度下落することもあります。投資物件の家賃や物件価格は、築年数が経過するほど下落率が緩やかになるため、家賃・物件価格の下落リスクに備えるなら、新築よりも中古物件がおすすめです。 投資物件と不動産事業者の選び方 ここでは、不動産投資における投資物件と不動産事業者の選び方について解説します。 複数のセミナーに参加する まずは、複数の不動産投資セミナーに参加することから始めましょう。セミナーを主催する不動産事業者によって、おすすめの投資方法や物件の種類、考え方などは異なります。たとえば、中古ワンルームに強い事業者もいれば、アパートなどの一棟ものに強い事業者もいます。 また、経験・実績が豊富な会社から、設立されたばかりの新しい会社まで、さまざまな不動産事業者が存在します。複数のセミナーに参加して比較・検討すると、選択すべき投資方法が明確になり、自分にあった投資物件と不動産事業者を見つけやすくなります。 身の丈にあった不動産投資方法を選択する 複数のセミナーに参加して情報収集できたら、身の丈にあった不動産投資方法を選択しましょう。収入に対してあまりにも高額な借り入れをするような投資方法はリスクが高く、万が一失敗したときは大きな損失が発生します。しかし、身の丈にあった投資方法を選択すれば、たとえうまくいかなかったとしても、それほど大きな損失を抱えずに済みます。 たとえば、物件価格が比較的手頃な中古ワンルームであれば、不動産投資初心者でも取り組みやすいでしょう。ただし、資産が潤沢にある場合は、最初からアパートなどの一棟ものに投資するのも選択肢のひとつです。 複数の不動産事業者と関係を持つ 不動産投資方法が決まったら、複数の不動産事業者と関係を持ちましょう。担当者との面談では、以下のような点を確認することが大切です。 ・自分にあった投資方法や物件を提案してくれる ・メリットだけでなく、デメリットやリスクも詳しく説明してくれる ・こちらの話をしっかり聞いてくれる ・強引なセールスや勧誘がない セミナーと同じく、複数の不動産事業者を比較・検討します。面談で強引なセールス・勧誘があった場合、その事業者と取引するとトラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。また、少しでも違和感を覚える不動産事業者についても、関係を続けるのは避けたほうが無難です。 不動産事業者に物件を紹介してもらう 対応に問題がなく、信頼できそうな不動産事業者を見つけたら投資物件を紹介してもらいましょう。不動産事業者によって、取り扱っている物件の数や種類、地域などは異なります。また、不動産情報サイトには公開されていない「非公開物件」を多く取り扱っている事業者もいます。まずは、不動産事業者が紹介する物件の癖を見抜くことが大切です。紹介された物件は安定した収益を見込めるか、選んだ投資方法に合っているかを見極めましょう。 不動産事業者を選別する 物件を紹介してもらったら、担当者の対応や提案内容、物件の特徴などを比較・検討して、付き合う不動産事業者を選別していきます。担当者の対応や提案内容に問題がなくても、紹介された物件が選んだ投資方法と合っていない場合は、無理に付き合う必要はありません。不動産投資を成功させるために、自分が選んだ投資方法にあった物件を紹介してくれる不動産事業者を選びましょう。 ただし、収益性が高い物件は数が少なく、事業者によっては物件を紹介してもらえるまで時間がかかることもあります。投資方法にあった物件を取り扱っている不動産事業者については、優良物件が出てくるまでじっくり待つことも大切です。 実際の物件を見に行く、周辺の物件を見極める 不動産事業者の選別が終わったら、紹介してもらった物件を見に行ってみましょう。現地では最寄り駅からの距離や物件設備、周辺環境などが、担当者の説明と違っていないか確認します。現地に行って初めてわかる情報も多いので、物件情報だけで投資判断せず、必ず実際の物件を確認しましょう。 また、紹介された物件だけではなく、周辺の物件を見極めることも大切です。周辺にどのような物件があるか、賃料の相場、空室があるかどうかなど、可能な範囲で周辺の物件情報についても確認しておきましょう。紹介された物件と周囲の物件を比較することで、より投資判断をしやすくなります。 投資物件を購入するまでの流れとポイント 不動産事業者からの説明を鵜呑みにするのではなく、紹介された物件を自分で比較・分析したうえで購入判断することが大切です。ここでは、物件の比較表の作成や不動産投資ローンの比較、返済シミュレーションの作成について解説します。 紹介された物件の比較表を作成する まずは、不動産事業者から紹介された物件の比較表を作成しましょう。希望をすべて満たすような優良物件は、それほど多くありません。物件の比較表を作成することで、各物件の良し悪しがはっきり見えてくるのはもちろん、どのような項目を重視して物件を選ぶべきかが見えてきます。比較表で確認すべき主な項目は以下のとおりです。 ・物件価格 ・築年数 ・家賃(空室の場合は想定家賃) ・管理費・修繕積立金(マンションの場合) ・表面利回り ・実質利回り ・間取り・広さ ・賃貸状況(入居中または空室) ・最寄り駅・地域 ・最寄り駅からの距離 ・周辺環境 ・修繕状況(マンションの場合は修繕積立金残高も確認) ・管理会社 収益性の高い物件を選ぼうとすると、利回りだけに注目してしまいがちですが、他の項目も重要です。たとえ利回りが高くても、築年数があまりに古いと空室リスクが高くなるほか、いざというときに買い手がつかない恐れもあります。一方で、築年数が新しいと物件価格が高くなって利回りは低下します。 不動産投資で大切なのは、自分に合った物件を見つけることです。初めての投資であることや投資金額を踏まえて、身の丈に合った物件を選ぶことが大切です。安心して長期保有できるように、物件の修繕状況や管理会社等についてもしっかり確認しておきましょう。 不動産投資ローンを使う場合はローンを比較する 不動産投資ローンを使う場合は、ローンを比較するのも大切なポイントです。金融機関によって融資金額や適用金利、返済期間などの融資条件は異なります。金利や返済期間によって月々の返済額や総返済額は大きく変わるので、ローン選びは不動産投資の収支に大きな影響を与えます。複数の金融機関を比較・分析して、融資条件の良いローンを利用しましょう。 返済シミュレーションを作成する 利用する不動産投資ローンが決まったら、返済シミュレーションを作成します。不動産投資を成功させるには、家賃収入の範囲でローン返済を行い、なるべく自己資金の持ち出しが発生しないようにすることが大切です。通常は定期的に退去が発生するので、満室を前提にせず、退去に伴う費用や入居者募集にかかる費用、修繕費、税金などを考慮しても問題なく返済できるかを見極めましょう。空室率を変更したり、繰り上げ返済の金額を調整したりして、複数の返済シミュレーションを作成すると投資判断しやすくなります。 勝てる条件が整ったら思い切って決断する 物件や不動産投資ローンの比較、返済シミュレーションを行い、勝てる条件が整ったら思い切って物件購入を決断しましょう。不動産投資は、株式や投資信託などの金融商品と比べると投資金額が高額なので、たとえ好条件の物件が見つかったとしても、なかなか一歩を踏み出せないかもしれません。 「やっぱり難しい」と思うなら、無理に不動産投資を始める必要はないでしょう。しかし、不動産投資に取り組んでみたい気持ちがあり、時間をかけて投資物件を探して勝てる条件が整ったのであれば、思い切って決断してみてはいかがでしょうか。 投資物件が見つからない場合の対処法 物件探しに取り組んでも、投資したいと思える物件がなかなか見つからないこともあります。ここでは、投資物件が見つからない場合の対処法を2つ紹介します。 不景気になるまで待つ 投資物件が見つからない場合の対処法1つ目は、不景気になるまで待つことです。一般的に景気がよいときは、不動産価格が上昇して利回りが低下するため、収益性の高い物件は少なくなります。景気は一定の周期で後退と回復を繰り返しているので、好景気の後は不景気になって不動産価格は下落します。焦って投資を始めても成功する確率が低くなるので、投資物件が見つからないときは、投資資金を貯めながら不景気になるまで待ちましょう。 最低半年程度は物件を見続ける 投資物件が見つからない場合の対処法2つ目は、不動産への目利きをつけるために、最低半年程度は物件を見続けることです。不動産事業者から紹介される物件だけでなく、インターネットに掲載されている物件情報もチェックし、気になる物件があれば直接見に行ってみましょう。物件情報を見るときは、自分で作成した比較表を有効活用するのがおすすめです。気になる物件が見つかったときは、比較表に追記してより多くの物件を比較・分析することで収益性の高い物件を見つけやすくなります。 まとめ 不動産投資で物件を購入するときは、紹介された物件の比較表を作成して投資すべき物件かどうかを見極めましょう。不動産投資ローンを比較し、返済シミュレーションも作成したうえで勝てる条件が整ったら、思い切って決断することが大切です。ただし、投資したい物件が見つからない場合は、焦って物件を購入しても成功する確率は低くなるので、「不景気になるまで待つ」「最低半年程度は物件を見続ける」といった方法で対処しましょう。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンの審査はココをみる(1) 賃貸アパートやマンション等の収益物件を担保とした貸出しは、金融機関の不動産関連融資の中では主力商品のひとつです。2013年から始まったアベノミクスによって、国内の金融市場は超低金利状態に突入...記事を読む
投資用の賃貸アパートおよびマンション向けのアパートローンは、事業用資金の融資という側面が強い、ということを前回述べました。したがって、金融機関は、担保となるアパートやマンションの評価をする際、不動産の担保価値に加えて、不動産賃貸業としての収益性や継続性を判断することになります。 この記事では、アパートローンなど不動産担保ローンによる不動産投資を検討している人に向けて、収益性や事業性についてどんなポイントが審査されるのか、具体的にお話しします。現状、金融機関は、個人に対する新規の投資用不動産向け融資を抑制していますが、前回述べた相続税対策としてのアパートローンの活用は、今後も根強いニーズがあると考えられます。 収益性を左右するのは立地条件 アパート経営、あるいは、マンション賃貸業の収益力は、どんな要因に影響されるのでしょうか。さまざまな要因が挙げられますが、まずは入居者の確保が大前提となります。しかも、一般的にアパートローンは融資期間が長期にわたることから、長期間継続的に入居者が確保されることが重要になります。したがって、アパート経営などを検討する際には、必ず建設予定地周辺の賃貸用不動産に対する需要動向をチェックしなければなりません。 この賃貸需要は立地条件に大きく左右されます。例えば、都心近郊の鉄道路線の駅に近い立地であれば、継続的な賃貸需要が見込めます。具体的には、最寄り駅からの距離は、「徒歩10分」が目安になるとされています。ただし、乗降客の多いターミナル駅であれば、「徒歩15分」程度でも許容範囲と言われています。 以前は、あまり駅に近すぎていると、繁華街や幹線道路の騒音や電車の音がうるさいといったネガティブな要素もありましたが、最近は、防音性に優れた二重サッシの窓が普及しており、騒音を抑えられるようになっています。傾向として、駅に近いほど賃貸需要が見込めるようになりつつあります。 また、駅からのアクセスが良好でなければ、周辺に学校や大きな病院などの施設があるかどうか、といったことがポイントになってきます。前回紹介した、60歳以上の高齢者や要介護認定を受けた60歳未満の方を対象とした「サービス付き高齢者向け住宅」などは、総合病院が近くにあれば、居住者の利便性が大きくアップすると考えられるからです。 さらに、地域の人口動態も考慮すべきです。人口や世帯数が減少している市区町村や地域については、継続的な賃貸需要は見込めません。地域の人口動態をチェックするためには、総務省が発表している「住民基本台帳」が便利です。毎年、都道府県はもとより、全国の市区町村の人口や世帯数を記載しており、増減がわかるようになっています。 2018年1月時点のデータをみると、東京都では、八王子市、青梅市、町田市、福生市といった市で、前年から人口が減少しています。東京都全体では人口流入が続いていますが、このように市区町村レベルでは減少している地域もあります。ここ数年では、23区内でも足立区は減少する年が目立ってきました。都心部でも人口動態には差が生じています。「住民基本台帳」は総務省のホームページで閲覧できるので、ぜひチェックしてください。 長期的な視野に立って収益性を判断する 地域の賃貸需要がある程度把握できた後は、実際に部屋を借りてくれる賃借人を想定することが必要です。賃借人となるのは、単身者が多いのか、それともファミリー層なのか、あるいは高齢者なのか、といったことを想定します。具体的に借り手を想定することで、建築するアパートの間取りや専有面積を決めていくわけです。賃貸アパートやマンションは、いったん建築をしてしまうと、間取りや専有面積を変えることは困難です。最も多くの借り手として見込める層に見合った間取りや専有面積で建築しなければなりません。 例えば、学生や若手サラリーマンがおもな借り手として想定できるのであれば、間取りはワンルームあるいは1K、専有面積は18~20㎡が平均的な広さとなってきます。また、サービス付高齢者向け住宅の場合、単身者はワンルームか1K、専有面積は20~25㎡が妥当といえるでしょう。 こうしたステップを経れば、おのずと賃料も決まってきます。周辺にある同じような条件の物件と比較することで、賃料の〝相場〟がつかめるからです。ただし、ここで注意しなければならないのは、築年数が経過することによる賃料の値下げです。新築の物件であれば、当初は、同じような物件よりも賃料を高く設定しても賃貸需要は見込めるでしょう。しかし、築年数が経過すると、値下げをせざるを得ません。長期にわたるアパートローンの場合、そうした将来的な賃料の値下げも想定して、収益性を判断することが重要です。 実際、築年数が経過して、賃料を大幅に値下げせざるを得なくなった、さらには空室が頻繁に発生している、といったことが起きています。こうなると、当初見込んでいた賃料収入がローンの支払額を下回る、つまり、赤字の状態になりかねません。築年数の経過による値下げを織り込んだ収支計画を作ることができれば、ローンの審査にも通りやすくなると考えられます。 今回は、アパートローンなどで新築の賃貸物件を建築する人を念頭において解説をしてきましたが、投資用の中古アパートやマンションの購入を考えている人にも、内容はすべてあてはまります。購入を検討している物件が賃貸需要に合っているか、地域の人口は増えているかといったことは、中古物件でも何ら重要性は変わりません。建築当初は満室が続いていた単身者向けのワンルームの物件が、近接していた大学や企業が移転したことで空室ばかりになった、というケースも少なくないのです。やはり、長期的に収益性を考えることが大事なのです。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンの審査はココをみる(2) 投資用の賃貸アパートおよびマンション向けのアパートローンは、事業用資金の融資という側面が強い、ということを前回述べました。したがって、金融機関は、担保となるアパートやマンションの評価をする際...記事を読む ▼シリーズ「不動産投資ローンの審査はココをみる」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンの審査はココをみる(1) ・第2回:不動産投資ローンの審査はココをみる(2)
賃貸アパートやマンション等の収益物件を担保とした貸出しは、金融機関の不動産関連融資の中では主力商品のひとつです。2013年から始まったアベノミクスによって、国内の金融市場は超低金利状態に突入し、一般の個人が投資目的でマンションを購入したり、賃貸アパート経営に乗り出したりするケースが増加しました。それに伴って、金融機関の投資用不動産向け融資も伸びていったのです。 2015年には、相続税が課税強化されたことで、賃貸アパート建設が全国各地で拡大しました。保有する土地に賃貸用の不動産物件を建設すると、相続税評価額が小さくなるという優遇措置を活用するためです。しかし、2018年に、地方銀行の賃貸アパート投資向けの不正融資が明らかとなって以降は、個人に対する新規の投資用不動産向け融資は急減しています。 こうした状況下、すでに保有している投資用不動産を担保としたローンの申し込みは増加傾向にあるようです。また、依然として、個人による不動産投資のニーズも衰えてはいません。そこで、賃貸アパートやマンションに対する評価について、足元の動向を踏まえながら改めて解説をしていきましょう。なお、投資用の賃貸アパートやマンション購入向けの融資は、金融機関では「アパートローン」と呼ぶことが多いので、以下、アパートローンと表記します。 「アパートローン」は事業用資金の融資に近い 借り入れる本人や家族が住むために住宅を購入する際の住宅ローンと、投資用アパートおよびマンション向け融資であるアパートローンの最も違う点はどこか? それは、アパートローンには事業用資金の融資という側面が強いことです。 賃貸用アパートおよびマンションへの投資は、単に不動産を取得するだけでは終わりません。用地の取得から始まり、建物の建設、賃借人の募集、家賃の徴収、建物の維持や管理といったさまざまな業務が伴います。 このように、中身は事業性資金の貸出しに近いといえますので金融機関としては採算性を重視することになります。通常、不動産業者が手掛ける商業ビルやオフィスビルへの投資と比較すると、金額的には小さくなりますが、個人としての借入金額はかなり大きいはずです。投資をする個人にとっては、大きなリスクを抱えることになります。 また、ここ数年、「サービス付き高齢者向け住宅」の建設するための資金として、アパートローンを活用するケースも増えています。サービス付き高齢者向け住宅とは、おもに民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅のことです。2011年に創設された制度により生まれた施設で、60歳以上の高齢者や要介護認定を受けた60歳未満の方を対象とした賃貸住宅です。 超高齢化社会を迎えつつある日本では、社会的なニーズも高く、現在も高水準の建設が続いています。建設にあたっては国からの補助金制度もあり、個人でも保有する土地に建設をするケースが少なくありません。冒頭で言及した、所有する土地に建設をすると相続税評価額を引き下げる効果もあるからです。ただし、そうした社会的なニーズに合致し、優遇制度が利用できる物件であっても、収益性が求められることには変わりありません。 「サブリース」方式の問題点 近年の賃貸用アパートおよびマンション投資ブームの背景には、「サブリース」契約の流行も影響しています。サブリースとは、サブリースを手掛ける会社がアパートを一括で借り上げ、各戸についてはそのサブリース会社が個人などに〝転貸〟をする、という仕組みです。一般的には、住宅メーカーや住宅メーカーの関連会社がサブリースを手がけているパターンが多いようです。 サブリース会社が建物全体を借り上げるため、賃借人の募集や家賃の徴収といった業務はサブリース会社が行ってくれます。アパートのオーナーはそうした煩わしい業務を自分でする必要はありません。オーナーにはサブリース会社から一定の賃料が支払われます。そのため、不動産投資の経験が浅い個人のアパートオーナーなどを中心に、積極的に活用されてきました。 しかし、サブリース方式によるアパート、マンション経営が上手くいかないケースが出てくるようになり、オーナー側に負債が発生している物件が増えてきました。サブリースの契約は、個人が適切な判断をするのが難しく、当事者間で問題が解決できずに裁判に持ち込まれるケースも少なくありません。次回以降では、サブリース契約の注意ポイントについても解説をしたいと思います。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンの審査はココをみる(2) 投資用の賃貸アパートおよびマンション向けのアパートローンは、事業用資金の融資という側面が強い、ということを前回述べました。したがって、金融機関は、担保となるアパートやマンションの評価をする際...記事を読む ▼シリーズ「不動産投資ローンの審査はココをみる」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンの審査はココをみる(1) ・第2回:不動産投資ローンの審査はココをみる(2)