住宅ローンを検討する際、「30年」と「35年」のどちらの返済期間を選ぶべきか迷う方は多いのではないでしょうか。毎月の返済額や総返済額、完済時の年齢などを比較し、自分のライフプランに合った期間を選ぶことが大切です。 この記事では、30年ローンと35年ローンの違いをわかりやすく解説し、選び方のポイントを具体的にご紹介します。 返済期間35年で住宅ローンを組む人が多い 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、返済期間「30年超~35年以内」を選ぶ人が全体の45.8%と最も多く、次に多い「35年超~40年以内」でも18.4%にとどまっています。一方、「25年超~30年以内」は8.5%と少数派であり、35年ローンを選ぶ人が圧倒的に多いことがわかります。 これはあくまで「年数の範囲」での集計ですが、30年よりも長い返済期間を選ぶ傾向が強いことは明らかです。 返済期間 割合 10年以内 3.6% 10年超~15年以内 3.7% 15年超~20年以内 6.3% 20年超~25年以内 6.6% 25年超~30年以内 8.5% 30年超~35年以内 45.8% 35年超~40年以内 18.4% 40年超~50年以内 7.1% 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査 p.5」 住宅の種類ごとの返済期間の傾向 国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、住宅の種類によって平均返済期間に差があることがわかります。 住宅の種類 平均返済期間 注文住宅(建築) 33.9年 注文住宅(土地) 35.6年 分譲戸建住宅 30.9年 分譲集合住宅 28.2年 既存(中古)戸建住宅 25.5年 既存(中古)集合住宅 27.7年 リフォーム住宅 12.3年 出典)国土交通省「住宅市場動向調査 p.53」 注文住宅は土地の購入が先行し、建築費が高額になりやすいため、返済期間が長くなる傾向があります。一方で、リフォーム住宅を含む中古住宅は購入費用を抑えられるため、短期間での返済が多いようです。 住宅ローンの返済額は30年と35年でどう変わる? 借入金額4,000万円と6,000万円のケースで、「元利均等返済、ボーナス払いなし」の条件で返済シミュレーションを行うと、以下のようになります。 毎月の返済額 毎月の返済額がどれくらい変化するか確認しましょう。 借入金額4,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(月額) 35年ローン(月額) 月額差 0.5% 119,675円 103,834円 ▲15,841円 1.0% 128,655円 112,914円 ▲15,741円 1.5% 138,048円 122,473円 ▲15,575円 2.0% 147,847円 132,505円 ▲15,342円 借入金額6,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(月額) 35年ローン(月額) 月額差 0.5% 179,513円 155,751円 ▲23,762円 1.0% 192,983円 169,371円 ▲23,612円 1.5% 207,072円 183,710円 ▲23,362円 2.0% 221,771円 198,757円 ▲23,014円 出典)住宅保証機構株式会社「返済額の試算」をもとに筆者作成。 返済期間を30年から35年に延ばすと、月々の返済額は軽減されます。借入金額が4,000万円の場合15,000円強、6,000万円の場合23,000円強と、借り入れが大きいほど月々の差額も増え、家計の負担を抑える効果があります。 総返済額 次に同様の条件で総返済額がどれくらい変化するかを確認しましょう。 借入金額4,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(総返済額) 35年ローン(総返済額) 総返済額差 0.5% 43,083,107円 43,610,126円 +527,019円 1.0% 46,315,920円 47,423,753円 +1,107,833円 1.5% 49,697,092円 51,438,816円 +1,741,724円 2.0% 53,225,058円 55,651,862円 +2,426,804円 借入金額6,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(総返済額) 35年ローン(総返済額) 総返済額差 0.5% 64,624,757円 65,415,305円 +790,548円 1.0% 69,473,978円 71,135,774円 +1,661,796円 1.5% 74,545,747円 77,158,299円 +2,612,552円 2.0% 79,837,661円 83,478,019円 +3,640,358円 出典)住宅保証機構株式会社「返済額の試算」をもとに筆者作成。 借入金額4,000万円では、金利2.0%の場合で約240万円、6,000万円では約364万円の差が生じます。借入金額の差も当然ながら、金利が高いほど差額は顕著に大きくなります。 このように長期にわたる住宅ローンでは、「毎月の返済額の減少」と「総返済額の増加」のバランスをどう取るかが重要になります。 住宅ローンの返済期間を決める4つのチェックポイント 住宅ローンの返済期間は、月々の支払いだけでなく、将来のライフプランにも大きく影響します。以下の4つの視点から、自分に合った返済期間を見極めましょう。 1. 完済時年齢 金融機関で設定されている住宅ローンの年齢制限(完済時年齢)は、75~80歳が一般的です。定年(65歳)までに完済したい場合は、現在の年齢から逆算して返済期間を設定するのがポイントです。たとえば、現在30歳なら35年ローン、35歳なら30年ローンを組むことで、定年までに完済可能です。 なお、35歳で35年ローンを組んだとしても、計画的に繰り上げ返済を活用することで、定年時に住宅ローンを完済するプランを立ててもいいでしょう。 2. 毎月の返済額と金利タイプ 返済期間が長くなるほど、毎月の返済額は少なくなります。ただし、長期のローンでは金利変動の影響を受けやすくなるため、金利タイプの選択が重要です。フラット35などの全期間固定金利なら毎月の返済額が固定され、変動金利なら金利次第で返済額が変動するため、将来的なリスクを抱えます。 関連記事はこちら住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 3. 総返済額 同じ借入金額でも、返済期間が長くなるほど利息の支払いが増え、総返済額が高くなります。金利や借入金額によっては、30年と35年で数百万円の差が生じることもあるため、慎重な比較が必要です。 4. 収入の安定性とライフイベントとのバランス 長期にわたる住宅ローンでは、安定した収入が欠かせません。以下のようなライフイベントも踏まえて、無理のない返済期間を設定しましょう。 ・転職・独立・退職などの収入変化 ・教育費・車の買い替え・老後資金などの支出 ・将来の資産形成や貯蓄とのバランス 返済期間を長めに設定することで、毎月の負担を軽減し、他の支出に余裕を持たせる選択も可能です。 住宅ローンの返済期間は後から変更できる? 住宅ローンの返済期間は、契約時に決定するのが基本です。しかし、ライフスタイルや収入状況の変化に応じて、借入後でも返済期間を調整できるケースがあります。ここでは、主な2つの方法をご紹介します。 返済期間を延長する方法 収入の減少や支出の増加などで返済が厳しくなった場合、返済期間の延長を相談できる金融機関もあります。たとえば、【フラット35】では、返済中の金融機関にて返済期間の延長に関する相談を受け付けています。事前に制度の有無や条件を確認しておくことで、万が一のときにも安心です。 出典)【フラット35】「月々の返済でお困りになったときは」 繰り上げ返済で期間を短縮する方法 手元資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済によって返済期間を短縮することが可能です。繰り上げ返済には、以下の2つのタイプがあります。 期間短縮型 返済期間を短くすることで、利息の支払いを減らす効果が大きいタイプです。総返済額を減らしたい人に向いています。 返済額軽減型 返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らすタイプです。月々の負担を軽くしたい人に向いています。 まとめ 住宅ローンの返済期間は、30年と35年で毎月の返済額や総返済額に大きな違いが生じます。どちらを選ぶべきか迷ったときは、金利や借入金額によるシミュレーションをしながら、収入の安定性や将来のライフイベントも踏まえて判断することが大切です。 また、返済期間は契約後でも延長や繰り上げ返済によって調整できる場合があるため、柔軟な選択肢があることも知っておきましょう。自分のライフプランに合った返済期間を選ぶことが、安心して住宅ローンを返済していく第一歩です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35は頭金・自己資金なしで組める? フラット35は、最長35年間の全期間固定金利の住宅ローンです。マイホーム購入でフラット35を検討する際に、「頭金なしでローンを組めるのか」という疑問を持つ人もいるでしょう。この記事では、頭金...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。2025年10月、自民党の新総裁に利上げ慎重派とされる高市早苗氏が選ばれ、衆議院本会議で第104代内閣総理大臣に正式に指名されました。日本維新の会との連立により過半数を確保し、憲政史上初の女性首相として高市内閣が発足しています。 高市政権の経済・金融政策は、財政出動と持続的な賃上げを重視するスタンスであり、住宅ローン金利にも影響を与える可能性があります。 この記事では、【フラット35】の11月金利予測を中心に、新発10年国債と機構債の金利推移、2つの予測シナリオとその根拠について、わかりやすく解説していきます。 【フラット35】11月金利予想 高市氏が新総裁に選ばれた直後は「高市トレード」で株価は高騰、新発10年国債利回りも一時は1.7%を超える勢いでしたが、10月中旬頃には、利回りは以前の水準に戻りました。 新発10年国債利回りについては、住宅ローンの固定金利に影響を与え、住宅金融支援機構が【フラット35】の資金調達方法としている機構債の表面利率にも影響してきます。 では早速、これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移と【フラット35】の金利予想です。 10月の金利予想と実態 10月の金利予想では、機構債の表面利率は0.04ポイント上昇したものの、新発10年国債利回りが横ばいであったため、【フラット35】の上昇は抑えられて、1.89%~1.93%の間と予想しました。結果、【フラット35】の金利は予想レンジの下限である1.89%に落ち着きました。 11月の新発10年国債利回りは0.03ポイント上昇し、ローンチスプレッドは横ばいで機構債の表面利率は0.03ポイント上昇しています。前月同様に【フラット35】の金利上昇は抑えられることを見込んで、1.89%~1.92%と予想します。 主要データ(2025年10月17日時点) 機構債発表日 2025年7月18日 2025年8月21日 2025年9月19日 2025年10月17日 機構債の表面利率(※1) 2.02% 2.08% 2.12% 2.15% 新発10年国債利回り(※2) 1.55% 1.61% 1.61% 1.64% ローンチスプレッド(※1) 47bps(0.47%) 47bps(0.47%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 新発10年国債利回りは便宜上、機構債の表面利率からローンチスプレッドを差し引いた数値としています。 8月 9月 10月 11月 【フラット35】の金利(※3) 1.87% 1.89% 1.89% 千日太郎の予想1.89%~1.92% ※3 出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 なお、この予測ロジックは以下のとおりです。詳細は後述します。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 新発10年国債利回りと機構債の金利推移 10月の新発10年国債利回りは、1.61%から1.64%へ0.03ポイント上昇し、機構債の表面利率も2.12%から2.15%へ0.03ポイント上昇しました。 ローンチスプレッドとは? 新発10年国債利回りと機構債の表面利率の差は“ローンチスプレッド”といわれます。このローンチスプレッドは、拡大傾向にありました。これは、住宅ローン利用者にとって、新発10年国債利回りが上昇した際に、住宅ローン金利の上昇幅がより大きくなることを意味します。 2025年7月から10月までのローンチスプレッドの動き 2025年7月 :0.47%(前月より+0.02ポイント) 2025年8月 :0.47%(前月と横ばい) 2025年9月 :0.51%(前月より+0.04ポイント) 2025年10月:0.51%(前月と横ばい) 7月から8月にかけては、横ばいで推移しましたが、9月には0.04ポイント拡大し、10月は再び横ばいとなりました。これは、投資家の長期金利の先高観が強まっていることを意味します。 機構債と【フラット35】の金利推移 機構債の表面利率は2.12%から2.15%へ0.03ポイント上昇しました。これに対して、千日太郎の【フラット35】金利予想は、1.89%から1.92%とし、横ばいから0.03ポイントの上昇に抑えられるというものです。 なぜ金利が抑えられるのか? この予想は、過去5か月にわたって【フラット35】が機構債の表面利率を下回っていることにあります。これは、住宅金融支援機構が収益性を問わず、低金利政策を維持していることを意味します。 【フラット35】(買取型)の仕組みをおさらい 【フラット35】(買取型)は、住宅金融支援機構が機関投資家に「機構債」という債券を販売して資金を集め、その資金で住宅ローンを提供する仕組みです(詳細は後述)。簡単に言えば、機構債の表面利率は「仕入れ値」、【フラット35】の金利は「販売価格」にあたります。 2025年6月から10月まで異例のマイナス収支が続く 対象月 機構債(前月) 【フラット35】金利 金利差 6月1.94%1.89%-0.05ポイント 7月1.88%1.84%-0.04ポイント 8月2.02%1.87%-0.15ポイント 9月2.08%1.89%-0.19ポイント 10月2.12%1.89%-0.23ポイント(過去最大) 上記は直近5か月の動きです。5月の機構債の表面利率は、【フラット35】の金利に対して、0.05%マイナスです。これは、住宅金融支援機構が1.94%で資金を仕入れて、1.89%の金利の住宅ローンとしてわたしたちに提供していることを意味します。 続いて、7月は0.04ポイントの差でしたが、8月は0.15ポイントにマイナス幅が一気に拡大し、さらに9月は0.19ポイント、10月は過去最大の0.23%までマイナス幅が拡大しました。つまり5か月連続で異例のマイナス収支が続いているだけでなく、その幅も拡大傾向にあるのです。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えるか?2つの予想シナリオ 千日太郎の予想としては11月も収支がマイナスの状態が続くと見ています。そのため、金利の予想レンジを1.89%~1.92%とし、以下2つの予想シナリオを想定しています。 シナリオ①:1.89%「激変緩和」 10月は新発10年国債利回りが上昇していないにもかかわらず、機構債の表面利率が上昇しています。その上昇をあえて住宅ローンの金利に反映させないというシナリオです。 シナリオ②:1.93%「マイナス幅の限度」 9月の機構債の表面利率と10月の【フラット35】の金利差は、前述のとおり0.23ポイントでした。10月の機構債の表面利率が2.15%なので、仮にマイナス幅を0.23ポイントとすると11月の【フラット35】の金利は1.92%になるというシナリオです。 【フラット35】の金利が抑えられるのはいつまで? 【フラット35】の金利抑制は、日銀がマイナス金利政策を解除した2024年3月以降も続いていました。しかし、機構債の利率を下回る水準をつけたのは2025年6月が初めてです。 この背景には、住宅金融支援機構は非営利の独立行政法人であり、国の政策的役割を担っているという特性があります。しかし、営利を目的としていない住宅金融支援機構といえども、このような状態を永続的に続けられるものではありません。 政局は流動的ですが、高市氏も玉木氏も財政重視の立場をとっているため、今後も住宅金融支援機構がコストを上回る水準で【フラット35】を提供し続けることを期待しています。 【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み 住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。 出典)フラット35「Qフラット35のしくみを教えてください。」 この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入するので、その表面利率は新発10年国債利回りに連動する傾向があります。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
日本は世界でも有数の地震の多い国であり、住宅の「耐震性」は、安心して暮らすために欠かせない重要な要素です。特に中古住宅を購入する際には、その建物がどの耐震基準に基づいて建てられているかを確認することが重要です。 1981年に導入された「新耐震基準」は、震度6強〜7程度の大地震でも建物が倒壊・崩壊しないことを目指した設計基準です。1981年6月以降に建てられた住宅にはこの基準が適用されており、現在でも住宅の安全性を判断するうえで欠かせない指標となっています。 この記事では、「新耐震基準とは何か?」という基本から、中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイントまで、制度や補助金情報も交えてわかりやすく解説します。 耐震基準の変遷 日本の耐震基準は、過去の地震災害を受けて段階的に強化されてきました。以下の表では、それぞれの耐震基準の違いをわかりやすく整理しています。 耐震基準 適用期間 設計目安 主な特徴 旧耐震基準 ~1981年5月31日 震度5程度で倒壊しない 大地震への備えとして不十分 新耐震基準 1981年6月1日~ 震度6強~7程度でも倒壊・崩壊しない 地震力を分散する構造設計 2000年基準 2000年6月1日~ 木造住宅の耐震性向上 木造住宅が対象。地盤調査の原則義務化、接合部強化 など ※筆者作成 中古住宅を購入する際は、建築確認申請日や築年数だけでなく、どの耐震基準が適用されているかを確認することが、安心・安全な住まい選びの第一歩となります。 関連記事はこちら旧耐震基準とは?新耐震基準との違いやリスク、確認方法を解説 「2000年基準」とは 「2000年基準」とは、2000年(平成12年)6月1日の建築基準法改正により導入された、木造住宅の耐震性向上を目的とした設計基準の通称です。 公式な制度名として定義づけられているものではありませんが、住宅業界では広く使われています。地盤調査の原則義務化や接合部の強化など、実質的な耐震性能の向上が図られました。この基準は、1981年に導入された「新耐震基準」をさらに発展させたものであり、特に木造住宅において地震に対する安全性を高める重要な転換点となっています。 過去に起きた地震と耐震基準の関係 耐震基準の違いによって、地震時の被害状況には大きな差が見られます。以下は代表的な地震の事例です。 熊本地震(2016年) 建築年代 木造建築物 倒壊率 1981年以前 28.2% 1981~2000年 8.7% 2000年~ 2.2% 出典)国土交通省「「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント」 能登半島地震(2024年) 建築年代 木造建築物 倒壊・崩壊率 1981年以前 19.4% 1981~2000年 5.4% 2000年~ 0.7% 出典)国土交通省「令和6年能登半島地震の建築物構造被害について」 熊本地震や能登半島地震では、建物の建築年代によって木造建築物の倒壊率に大きな差が見られました。1981年以前に建てられた旧耐震基準の木造建築物の倒壊率が約20~30%、新耐震基準が適用された木造建築物では10%未満、2000年基準の木造建築物に至っては1%を切る水準でした。 これらの実例からも、耐震基準の違いが住宅の安全性に直結することがわかります。特に中古住宅を選ぶ際には、築年数だけでなく「どの耐震基準が適用されているか」を確認することが重要です。 中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント 中古住宅を購入する際は、以下の項目を確認することで、耐震性能を把握することができます。 建築確認申請日(耐震基準の適用日) 耐震診断・インスペクションの実施履歴 耐震等級(長期優良住宅など) 地盤調査の有無 接合部や基礎の施工状況 耐震補強工事の履歴 特にインスペクションは、住宅の劣化状況や構造の安全性を専門家が調査する制度であり、中古住宅購入時に実施することで、耐震性や修繕の必要性を把握することができます。 関連記事はこちら建物状況調査とは?メリット・デメリットと手続きの流れを解説 耐震診断・改修に利用できる補助制度 中古住宅の耐震性に不安がある場合、自治体の補助制度を活用することで、診断や改修にかかる費用を軽減することができます。ここでは一例として、東京都新宿区が実施している「木造住宅の耐震化に関する補助制度」の概要をご紹介します。 東京都新宿区の例(2025年9月現在) 項目 上限額 対象となる建築物 耐震診断+補強設計 助成上限額30万円※診断と設計がセットの場合 [1]旧耐震基準昭和56年5月31日以前に着工された木造2階建て以下の住宅、店舗併用住宅 [2]新耐震基準(令和5年度から助成対象)昭和56年6月1日から平成12年5月31日に着工された木造2階建て以下の在来軸組工法の住宅、店舗併用住宅 耐震改修工事(上部構造評点を1.0以上となるように耐震改修工事を行う場合) 助成対象工事費の3/4(上限額300万円) ※障害者等が居住する戸建住宅の場合:助成対象工事費(上限額300万円) 新宿区では、予備耐震診断や詳細耐震診断のための技術者の派遣は無料となっており、その診断結果から該当する改修工事にも助成金があります。 なお、申請には事前の相談や手続きが必要です。気になる物件が制度の対象かどうかは、購入前に早めに確認しておくと安心です。また、補助内容や条件は自治体によって異なるため、購入予定の地域の公式サイトや不動産会社に最新情報を確認するようにしましょう。 出典)新宿区「木造住宅の耐震化」 まとめ 中古住宅を選ぶ際は、建築年代と耐震基準の違いを確認することが重要です。1981年以降の新耐震基準、2000年基準以降の木造住宅は地震に強く、倒壊率も低い傾向があります。 耐震診断やインスペクションの履歴、地盤調査の有無、接合部の施工状況などを確認し、自治体の補助制度も活用しながら、安全で快適な住まい選びを進めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅購入時の優遇制度を解説 住宅を購入するときは、「住宅ローン控除」をはじめとしたさまざまな優遇制度が用意されています。一方で、どのような優遇制度があるのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。 この記事では、住...
住宅ローンを検討する際、「自分の年収でいくら借りられるのか」と気になる方は多いのではないでしょうか。この記事では、年収400万円〜1,800万円の世帯を対象に、住宅ローンの無理なく返済できる「借入適正額」の目安を早見表でわかりやすく紹介します。 また、将来の生活も見据えた住宅購入の注意点についても解説しています。年収別の詳細ページへのリンクも掲載しているので、ご自身の状況に合った情報をすぐに確認できます。 住宅ローンの「借入適正額」を判断する2つの指標 住宅ローンを検討する際、「いくら借りられるか」だけでなく、「無理なく返済できるか」も重要なポイントです。その判断には、以下の2つの指標が役立ちます。 年収倍率 年収倍率とは、住宅購入に必要な金額が世帯年収の何倍にあたるかを示す指標です。住宅金融支援機構の調査によると、フラット35利用者の年収倍率は、住宅の種類によって以下のように分布しています。 住宅の種類 年収倍率 土地付注文住宅 7.5倍 マンション 7.0倍 注文住宅 6.9倍 建売住宅 6.7倍 中古マンション 5.5倍 中古戸建 5.3倍 出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」 住宅金融支援機構の統計によれば、上図のように住宅の種類によって年収倍率は大きく異なります。ただし、この年収倍率は「購入可能な金額の目安」を示すものであり、必ずしも「無理なく返済できる金額」とは限りません。 また、今回のデータは住宅金融支援機構の調査結果に基づく【フラット35】に限ったものであるため、あくまで参考値として活用し、個別の資金計画を立てることが大切です。 総返済負担率 総返済負担率とは、年収に対して、住宅ローンを含むすべての借り入れの年間返済額が占める割合です。この借り入れには、自動車ローンや教育ローンなども加味して計算されます。この総返済負担率は借り入れの際の審査基準にも利用され、住宅金融支援機構の「フラット35」では、以下のような基準が設けられています。 年収400万円未満:総返済負担率30%以下 年収400万円以上:総返済負担率35%以下 上記の数値はあくまで基準を満たすかどうかのラインで、「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、実際には「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。 返済負担率が低いほど、教育費や老後資金など将来の支出にも余裕を持てます。「いくら借りられるか」ではなく「無理なく返済できる金額」を意識することが、後悔しない住宅購入につながります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」 【早見表】年収別の「借入適正額」 ここでは、総返済負担率20%を前提とした「借入適正額」を年収別に比較します。借入適正額は、以下の条件でシミュレーションしています。 総返済負担率:20% 返済期間 :35年間 返済期間 :35年間 適用金利 :1% 返済方法 :元利均等返済(ボーナス払いなし) 年収 借入適正額 詳細ページ 400万円 約2,361万円 ー 600万円 約3,542万円 ー 800万円 約4,723万円 ー 1,000万円 約5,904万円 ー 1,100万円 約6,494万円 詳細はこちら 1,400万円 約8,265万円 ー 1,600万円 約9,446万円 ー 1,800万円 約10,627万円 詳細はこちら ※【住宅保証機構株式会社】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。 ※詳細情報は順次公開予定です。公開後、リンクからご覧いただけます。 自宅購入で後悔しないための4つのポイント 住宅ローンの返済だけでなく、購入後の生活も見据えた資金計画が大切です。ここでは、無理のない住宅購入を実現するために、特に重要な4つのポイントをご紹介します。 自己資金をできるだけ多めに準備する 国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する方(一次取得者)の自己資金比率は、平均で20〜40%程度です。物件価格の2割以上の自己資金を準備できれば、借り入れを抑えられ、毎月の返済負担も軽減できます。 出典)国土交通省「令和5年度 住宅調査報告書(一次取得・二次取得別の購入資金)p.50」 金利タイプは将来の安定性も考慮する 近年、日銀の政策金利引き上げを受けて、住宅ローンで全期間固定金利を選ぶ人が増えています。2024年10月の調査では28.0%、2025年4月では30.7%と上昇傾向がみられます。一方、変動金利は借入時の金利が低く魅力的ですが、将来的な金利上昇によって返済額が増えるリスクもあります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用予定者調査(2025年4月調査)p.15」 住宅ローン控除の活用も視野に入れる 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得または増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状況に合わせてどういった条件でどのような控除が受けられるかを把握しておくことが大切です。 また、夫婦ともに安定した収入がある場合は、ペアローンを利用することで、借入可能額が増えるだけでなく、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるメリットもあります。控除額が増えることで、実質的な返済負担を軽減できる可能性があります。 ただし、諸費用が2本分かかる点や、離婚・収入変動などのリスクもあるため、慎重な検討が必要です。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 諸費用も考慮する 住宅購入には、物件価格以外にも多くの費用がかかります。仲介手数料、登記費用、火災・地震保険料、固定資産税、修繕費など、維持費や初期費用も見逃せません。住宅ローン契約前に、諸費用の総額をしっかり把握しておきましょう。 まとめ 住宅ローンは、単に「いくら借りられるか」ではなく、「無理なく返済できるか」を基準に考えることが大切です。年収倍率や総返済負担率といった指標を参考にしながら、将来のライフイベントや収入の変化も見据えた資金計画を立てましょう。 特に、総返済負担率を20%以内に抑えることで、教育費や老後資金など、将来の家計への影響を抑えることができます。また、自己資金の準備、金利タイプの選択、住宅ローン控除の活用、諸費用の把握など、購入前に確認すべきポイントも多岐にわたります。 「この金額なら無理なく返済できる」と思えるラインを見極めることが、後悔しない住宅購入への第一歩です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で5,000万円借りるとどうなる?金利別返済シミュレーション 「5,000万円の家を買いたいけれど、自分の年収で本当に買えるのか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。 この記事では、フラット35を利用して5,000万円の家を購入する際の金利...
旧耐震の物件は、価格の安さや立地の良さなどから一定の需要がある一方で、住宅ローンの審査では不利になることもあります。「審査に通らない」「希望額の融資が受けられない」といったケースの背景には、金融機関が耐震性や担保評価を重視している点が挙げられます。 この記事では、旧耐震物件でも住宅ローンを利用するための対策や、購入前に確認すべきポイントをわかりやすく解説します。 旧耐震でも住宅ローンは組める? 旧耐震の物件でも、一定の条件を満たせば住宅ローンを組める可能性があります。例えば、耐震診断を実施し、必要に応じて補強工事を行ったうえで、「耐震基準適合証明書」を取得すれば、住宅金融支援機構の【フラット35】などのローン商品が利用可能になるケースがあります。 関連記事はこちらフラット35の審査基準を徹底解説!本当に審査が甘い? 旧耐震の物件が住宅ローン審査で不利な理由 そもそも旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物に適用されていた耐震設計の基準です。この基準では、震度5程度の地震に耐える構造が求められていましたが、現在の「新耐震基準」と比べると安全性が劣るとされています。 そのため、金融機関は旧耐震物件に対して以下のような懸念を持つことがあります。 倒壊リスクの高さ 修繕コストの増加 資産価値の低下 流通性の低さ(売却・賃貸のしづらさ) これらの要因が重なることで、担保評価が低くなり、住宅ローン審査に通りづらくなることがあります。 関連記事はこちら旧耐震基準とは?新耐震基準との違いやリスク、確認方法を解説 旧耐震の物件でも住宅ローンを組むための対策 旧耐震の物件でも、適切な準備と対策を行うことで住宅ローンの審査に通る可能性があります。以下のポイントを意識して、事前に情報を整理しておきましょう。 耐震診断・補強工事の実施と「耐震基準適合証明書」の取得 まずは、物件の耐震性を確認するために「耐震診断」を実施しましょう。診断の結果に応じて補強工事を行い、「耐震基準適合証明書」を取得することで、【フラット35】などの住宅ローン商品が利用可能になるケースがあります。 この証明書には以下のようなメリットがあります。 【フラット35】の技術基準を満たす 地震保険料の割引 住宅ローン控除などの税制優遇 取得には費用と手続きが必要ですが、将来的な安心感や資産価値の維持にもつながるため、早めの検討がおすすめです。 関連記事はこちらフラット35を利用するために必要な適合証明書とは? 修繕履歴や管理状態を確認 マンションの旧耐震物件では、建物全体の管理状況が審査に影響します。以下のような資料があると、金融機関からの評価が高まりやすくなります。 過去の修繕履歴(大規模修繕の実施状況など) 長期修繕計画の有無 修繕積立金の残高 管理組合の活動記録 これらの資料を確認し、修繕の実績がある、長期修繕計画が策定されている、修繕積立金の残高が十分であるなど、管理状況が良好であれば、物件の維持管理が適切に行われている証拠となり、資産価値の安定性を示す材料になります。 リノベーション計画を事前に提示 購入後にリノベーションを予定している場合は、設計図や見積書などの資料を事前に準備しておきましょう。特に耐震補強を含む工事であれば、「安全性向上の意思がある」と金融機関に示すことができ、担保評価の向上につながる可能性があります。 また、リフォーム一体型ローンを利用する際にも、具体的な工事内容と費用が明記された資料が必要です。 頭金の準備 旧耐震物件は担保評価が低くなりやすく、審査で「担保割れ」と判断されると希望額の融資が受けられないことがあります。こうした場合でも、頭金を多めに用意することで金融機関のリスクを軽減でき、審査通過の可能性が高まります。 さらに、借入額が少なくなることで、金利優遇を受けやすくなったり、月々の返済負担を抑えられたりするメリットもあります。 複数の金融機関に相談 住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なります。特に地方銀行や信用金庫などは、地域性や物件の特性を考慮して柔軟に対応してくれる場合もあります。ある金融機関で断られたとしても、他の金融機関では通る可能性もあるため、複数の金融機関に相談することが重要です。 旧耐震の物件を購入前に確認すべきポイント 旧耐震の物件を購入する際は、将来的な資産価値や安全性を見据えて、以下のポイントを事前にしっかり確認しておきましょう。 耐震診断の有無と結果 物件が過去に耐震診断を受けているか、またその結果はどうだったかを確認しましょう。診断結果が「問題なし」または「補強済み」であれば、住宅ローン審査や地震保険の加入にも有利に働きます。 補強工事の実施状況 耐震診断の結果に基づいて、補強工事が行われているかどうかも重要です。工事が完了している場合は、「耐震基準適合証明書」の取得が可能となり、【フラット35】などのローン商品が利用しやすくなります。 周辺環境と流通性(駅近・再開発予定など) 物件の立地や周辺環境も、資産価値を左右する重要な要素です。以下の点をチェックしましょう。 駅や商業施設へのアクセス 再開発の予定や地域の将来性 周辺の治安や生活利便性 流通性が高いエリアであれば、将来的な売却や賃貸もスムーズに進められる可能性があります。 管理状態(マンションの場合) 前述のとおり、マンションの場合は、建物全体の管理状況が資産価値やローン審査に大きく影響します。以下のような資料があるかを確認しましょう。 大規模修繕の履歴 長期修繕計画の有無 修繕積立金の残高 管理組合の活動状況 まとめ 旧耐震物件でも、適切な対策を講じることで住宅ローンの利用は十分可能です。特に【フラット35】では、「耐震基準適合証明書」の取得によって技術基準を満たすことができ、税制優遇や地震保険料の割引などのメリットも受けられます。 また、物件の管理状態や周辺環境、補強工事の有無などを事前に確認し、必要な資料を整えておくことで、金融機関からの評価を高めることができます。旧耐震だからといって、住宅ローンの利用を諦める必要はありません。 購入前には、耐震性・資産価値・流通性などを総合的に判断し、安心して住まい選びができるよう、しっかりと準備を進めましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 ブラックリストでも住宅ローンは組める?審査のポイントを解説 過去に延滞や債務整理をした経験があると、個人信用情報に「事故情報(異動情報)」が記録され、こうした情報が登録されている状態は、一般的に「ブラックリストに載っている」と表現されます。過去にこの...
住宅ローンの審査に申し込んでも、必ずしもその金融機関で借りられるとは限りません。「1社だけの申し込みでは不安…」と感じる人もいるでしょう。実は、住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込むことが可能です。 この記事では、住宅ローンの本審査を複数の金融機関に申し込むメリット・デメリットや注意点を詳しく解説します。 住宅ローンの本審査とは 住宅ローンの本審査とは、金融機関に住宅ローンを正式に申し込むことで行われる最終的な審査です。この本審査に通過すれば、住宅ローンを契約して実際に融資を受けられます。 住宅ローン審査の一般的な流れは以下のとおりです。 事前審査の申し込み 事前審査 本申込(正式申し込み) 本審査 契約締結 融資実行 住宅ローン審査は、一般的に事前審査と本審査の2回に分けられます。まずは申込者が申告した年収、借入希望額などの情報をもとに事前審査が行われます。事前審査に通過した後は、本審査として、より厳密に申込者の返済能力が判断されます。本審査に通過すると金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、物件引き渡し日に融資実行となります。 関連記事はこちら住宅ローン本審査はなぜ遅れる?期間の目安と対処法 事前審査と本審査の違い 事前審査は、本審査の前に行われる簡易的な審査です。金融機関が正式に融資を決定するまでには時間がかかりますが、申込者は借り入れの見込みが立たないと住宅購入を進められません。審査結果を待っている間に、希望物件が他の人に購入されてしまう恐れもあります。このような事情から、申込者が住宅ローンを組める見通しや借入可能額を把握できるよう、事前審査が設けられています。 一方、本審査では、詳細な書類・情報を用いて金融機関や保証会社が申込者の返済能力や物件の担保価値をより厳密に審査します。そのため、事前審査に通過しても、本審査の結果次第では借り入れができない場合もあります。 住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込める 住宅ローンの本審査は、複数の金融機関に申し込むことができます。複数申し込むことで、より良い条件を比較・検討することができます。 事前審査と本審査通過後のキャンセルは可能 住宅ローンは事前審査や本審査に通過していても、金融機関と金銭消費貸借契約を締結する前であれば、原則として手数料不要でキャンセルが可能です。ただし、金融機関によっては手数料が発生する場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。 複数の金融機関の本審査に通過した場合は、希望する住宅ローン以外はキャンセルしても差し支えありませんが、金融機関への丁寧な連絡と配慮が重要です。できるだけ早く金融機関に断りの連絡を入れるようにしましょう。 なお、金銭消費貸借契約を締結した後でも、融資実行前であればキャンセルできる場合があります。ただし、住宅ローンの事務手数料や調査手数料などの費用負担が発生する場合があります。そのため、金融機関にも負担をかけることになるため、やむを得ない事情がない限り避けたほうがよいでしょう。 住宅ローンの本審査を複数申し込むメリット 複数の金融機関に住宅ローンの本審査を申し込むことには、次のようなメリットがあります。 審査落ちのリスクを軽減できる 住宅ローンの本審査では申込者の返済能力を厳密に確認するため、審査に通過できるとは限りません。特に自営業者や転職して間もない人、既存借り入れがある人は慎重な対応が求められます。 複数の金融機関に申し込んでおけば、万が一、1社で否決されても他で承認される可能性があるため、審査落ちのリスクの軽減につながります。 関連記事はこちら住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介 より良い条件で契約できる可能性がある 住宅ローンは、金融機関ごとに金利水準や手数料、団体信用生命保険の特約条件などが異なります。複数の金融機関から融資承認を得ておけば、条件を比較してより有利な住宅ローンを選ぶことができます。 住宅ローンの本審査を複数申し込むデメリット 複数の金融機関に住宅ローンの本審査を申し込むことで、次のようなデメリットもあります。 審査結果に影響が出る可能性がある 住宅ローンの審査では、金融機関が申込者の返済能力を確認するために、信用情報機関へ照会を行います。たとえば、信用情報機関の株式会社シー・アイ・シーでは、申込情報を照会日から6か月間保有しています。この期間中に複数の金融機関へ申し込むと、各金融機関は申込者が他社にも申し込んでいることを把握できます。 申込情報に審査の可否は記載されませんが、同時期に多くの金融機関に住宅ローンの申し込みを行うと、「何か審査に通過できない理由があるのではないか」と疑念を持たれる場合もあります。複数の金融機関に申し込むこと自体に問題はありませんが、2~3社に絞るのが無難といえます。 本審査への対応に時間と手間がかかる 本審査を受ける際は、収入証明書類や物件関連書類など、さまざまな必要書類を準備して提出しなくてはなりません。複数の金融機関に申し込みをすると、多くの書類を準備する必要があるため、対応に時間と手間がかかることになります。 まとめ 住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込むことが可能です。審査落ちのリスク軽減やより良い条件での契約につながる一方で、対応に時間や手間がかかるなどのデメリットもあります。メリット・デメリットを比較したうえで、複数の金融機関に本審査の申し込みをするか検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介 住宅ローンの本審査に通過した後、融資が実行される前に転職した場合、どのような影響があるのでしょうか。融資実行前の転職にはリスクがあり、思わぬトラブルを招くことがあります。 この記事では、住宅...
「子ども世帯と同居したいけれど、本当にうまくいくのか不安」と考える人も多いのではないでしょうか。二世帯住宅は、親世帯にとって安心感や孫とのふれあいといったメリットがある一方で、「やめた方がいい」という意見もあります。この記事では、二世帯住宅にデメリットがあると言われる理由と、成功の秘訣について解説します。 二世帯住宅とは?3つのタイプと近年の傾向 そもそも二世帯住宅とは、親世代と子世代が同じ建物内で生活することを前提に設計された住宅のことです。一言で二世帯住宅といっても、大きく3つのタイプに分類されます。 完全共有型(一体型二世帯) 生活空間をすべて共有 部分共有型(共用二世帯) 生活空間の一部を共有 完全分離型(独立二世帯) 生活空間を完全に分離 完全分離型は、さらに「上下分離型(1階と2階で分ける)」と「左右分離型(左右で分ける)」に分かれます。 ※筆者作成 親世帯の「同居したい」気持ちは減少傾向に 「孫と一緒に暮らせたら楽しそう」「老後も安心して過ごせそう」という期待を抱いて、二世帯住宅を検討する人は少なくありません。しかし、実際には親世帯で同居を希望する割合は年々減少しています。 令和6年度に内閣府が発表したデータによると、65歳以上の親世代は、子との同居・近居について、「同居したい、同居を続けたい」と回答した人の割合は23.2%と、平成30年の調査から13.9ポイントも減少しています。一方で「近居したい」と回答した人の割合は32.8%でした。この結果からも、距離感を保ちながらの関係性を求める傾向が高いことがわかります。 出典)内閣府「令和6年度版高齢社会白書 p.63」 二世帯住宅は本当にやめた方がいい?よくある課題と注意点 二世帯住宅には、家族のつながりや安心感といった魅力がある一方で、実際に暮らし始めてから「こんなはずじゃなかった」と感じるケースも少なくありません。ここでは、二世帯住宅を検討する際に知っておきたい、よくある課題と注意点について解説します。 プライバシーの確保が難しい 二世帯住宅で最も多く聞かれる不満が「プライバシーの確保が難しい」という点です。特に、玄関やキッチン、浴室などを共有する完全共有型や部分共有型では、生活音や来客の頻度、家事のやり方など、日常の些細な違いがストレスの原因になります。 たとえば、早朝に出勤する子世帯の物音が親世帯の睡眠を妨げたり、孫の泣き声が気になったりと、生活リズムの違いが積み重なることで、関係性に影響を及ぼすこともあります。 建築費用や維持費が高くなる 二世帯住宅は、一般的な住宅と比べて建築費用が高くなる傾向があります。特に完全分離型の場合、玄関・キッチン・浴室・トイレなどをそれぞれの世帯に設ける必要があり、建築費用はその分かかります。 また、光熱費や固定資産税、メンテナンス費用なども世帯ごとにかかるため、長期的な維持費も無視できません。住宅ローンの返済に加え、将来的なリフォーム費用も見込んでおく必要があります。 相続で揉める場合がある 二世帯住宅は、親子で共有する資産であるがゆえに、相続時のトラブルが発生しやすいという側面もあります。たとえば、親世帯が亡くなった後に名義や持ち分を巡って兄弟間で揉めるケースや、相続税の負担が想定以上に大きくなる場合もあります。 また、住宅ローンの名義や登記の方法によっては、贈与税が発生する場合もあるため、事前に税理士や司法書士などの専門家に相談しておくことで、安心して二世帯住宅を検討できます。 二世帯住宅のデメリットを回避するための設計と間取りの工夫 二世帯住宅のデメリットを回避するには、設計段階での工夫が不可欠です。間取りのタイプによって、プライバシーや費用、生活の自由度に大きな差が生まれます。ここでは、代表的な3つのタイプ(完全共有型・部分共有型・完全分離型)それぞれの特徴と、設計上の工夫ポイントを解説します。 完全共有型の二世帯住宅 完全共有型は、玄関・キッチン・浴室などすべてを共有するスタイルで、建築費用を抑えられるのが大きなメリットです。家族のつながりを感じやすく、介護や育児のサポートもしやすい反面、生活音や家事のやり方などでストレスが生じやすい傾向があります。 対策としては、生活ルールの明確化や防音対策の強化、共有スペースの使い方の合意形成が重要です。 部分共有型の二世帯住宅 部分共有型は、玄関や浴室など一部の設備を共有し、その他は分離するスタイルです。コストとプライバシーのバランスが取れた設計が可能ですが、共有スペースの使い方や掃除・管理のルールが曖昧だとトラブルの原因になります。 対策としては、共有スペースを明確に区分けする「ゾーニング」や、掃除の分担ルールの設定などを事前に検討することが有効です。 完全分離型の二世帯住宅 完全分離型は、玄関・キッチン・浴室などをすべて分けることで、プライバシーを最大限に確保できるスタイルです。上下分離型は敷地が限られている場合に有効で、左右分離型は生活音の問題が少ないのが特徴です。 生活空間を完全に分けることでストレスを軽減できる一方、建築費用や土地の広さが必要になるため、予算計画をしっかり立てることが重要です。なお、国や自治体の助成制度や税制優遇措置を活用することで、費用負担を抑える工夫も可能です。 二世帯住宅を成功させる秘訣 二世帯住宅を成功させるためには、以下の点を意識しましょう。 ルールを明確化する 二世帯住宅を成功させるためには、親世帯と子世帯の関係性や生活ルールの明確化が不可欠です。事前に「どこまで共有するか」「どんな距離感が心地よいか」を話し合い、生活音や来客対応、家事分担などのルールを決めておくことで、日常のストレスを減らせます。また、将来の相続や介護についても事前に合意形成をしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。 制度を活用して費用負担を軽減する 二世帯住宅の新築やリフォームには、補助金や税制優遇制度を活用できます。たとえば、東京都新宿区では、「多世代近居同居助成」という制度の中で、子世帯とその親世帯が、区内で新たに近居又は同居を開始する際の、初期費用の一部を助成しています。 助成額 複数世帯最大20万円、単身世帯最大10万円まで 対象費用 引越し代、不動産登記費用、礼金、権利金、仲介手数料の合計額 出典)新宿区「多世代近居同居助成」 まとめ 二世帯住宅は、親世帯にとって安心感や、家族とのつながりを感じられる住まいの形です。孫の成長をそばで見守りたい、老後も子ども世帯と支え合って暮らしたいと考える人にとって、大きな魅力があります。 一方で、生活リズムの違いやプライバシーの問題、費用や相続など、慎重に検討すべき課題もあります。「やめた方がいい」と言われる背景には、事前の準備や設計の工夫が不足していたケースが多く見られます。 対策としては、生活ルールの明確化、資金計画の立案が有効です。まずはご家族と理想の暮らし方について話し合い、共有の範囲や心地よい距離感、将来のことまで含めて考えることで、後悔のない選択につながります。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 シニアがリフォームする際のポイントや間取り事例を紹介 年齢を重ねてくると、購入当時の住まいでは生活のしづらさを感じる場面が増えてくるものです。ライフスタイルに合った住環境を作るために、選択肢の1つとしてリフォームを考えることもあるでしょう。しか...
手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するのは、果たして現実的なのでしょうか? この記事では、返済負担率という指標から、無理なく返済できる借入額の目安(=適正額)を具体的にシミュレーションします。さらに、将来の家計に負担をかけないためにも、住宅ローンを組む際の注意点についてわかりやすく解説します。 手取り30万円で月10万円の返済はきつい? 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済することは、数字だけみると可能に思えるかもしれません。しかし、実際には生活費や教育費、将来の支出も含めて考える必要があります。 住宅ローンの適正額を見極めるには、税金や社会保険料を差し引く前の額面年収を把握することが重要です。なお、額面年収とは、税金や社会保険料などを差し引く前の会社からの支給額を指します。 手取り30万円の額面年収はどれくらい? 一般的に、給与の手取り額は額面の75~85%程度です。仮に手取りが額面の80%だとすると、月の手取りが30万円の人の額面年収は以下のように計算できます。 手取り年収:360万円(30万円×12ヵ月) 額面年収 :450万円(360万円÷80%) ※ボーナスは考慮外 この結果から、手取り30万円の場合、額面年収は450万円程度と推定されます。実際の額面金額はボーナスや扶養家族の有無、税金の各種控除などによって異なるため、あくまで参考値としてください。 返済負担率は26.7%|年収450万円・月10万円返済の場合 返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合です。なお、この時の「年収」とは一般的に額面年収を指します。そのため、年収450万円の人が住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は以下のように計算できます。 年間返済額:120万円(10万円×12ヵ月) 額面年収 :450万円 返済負担率:120万円÷450万円=26.7% 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、返済負担率が「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。 国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」においても、世帯年収に占める返済負担率は、注文住宅で最も高く18.4%、最も低いのはリフォーム住宅で12.7%です。 物件種別 返済負担率 注文住宅 18.4% 分譲戸建住宅 17.6% 分譲集合住宅 16.1% 既存(中古)戸建住宅 16.3% 既存(中古)集合住宅 17.8% リフォーム住宅 12.7% ※国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.53」をもとに筆者作成 各調査データを踏まえると、手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するケースは、平均的な返済負担率よりも高い水準といえるでしょう。 住宅ローン以外の教育費や生活費などの支出が増えると、家計は圧迫されて返済が難しくなることもあります。安心して返済を続けるためには、返済負担率を20%以内に抑えるのが望ましいでしょう。 たとえば、手取り30万円(額面年収:450万円)の場合、返済負担率を20%とすると、月の返済額は7.5万円(年間返済額:90万円)が目安となります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」 手取り30万円の住宅ローンの適正額 手取り30万円の場合、住宅ローンを無理なく返済するためには、どのくらいの借り入れが適正なのでしょうか?金利別に住宅ローンの適正額をシミュレーションしてみましょう。 今回のシミュレーションでは、以下の条件をもとに計算しています。 【シミュレーション条件】 月の返済額が10万円(返済負担率26.7%)と7.5万円(返済負担率20%) 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済、ボーナス払いなし 【手取り30万円の住宅ローン適正額の目安(概算)】 適用金利 月10万円返済(返済負担率26.7%) 月7.5万円返済(返済負担率20%) 0.5% 3,852万円 2,889万円 1.0% 3,542万円 2,656万円 1.5% 3,266万円 2,449万円 2.0% 3,018万円 2,264万円 ※【フラット35】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。 返済負担率を20%以内に抑える場合、住宅ローンの借入金額は2,000万円台が目安となります。ただ、適用金利に応じて、適正額の目安が変動する点に注意が必要です。 住宅ローンを組む際の注意点 手取り30万円で住宅ローンを組む際は、以下のポイントを意識しましょう。 総返済負担率を20%以内に抑える 住宅ローンを無理なく返済するには、返済負担率を20%以内に抑えるのが理想といえます。住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンといった他の借り入れも合算して考えましょう。 物件価格の2割以上の自己資金を準備する 自己資金を十分に確保することで、借入比率を抑え、返済負担を軽減できます。実際、国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資本比率は22.0%~34.6%程度が一般的です。 物件価格の2~3割程度を目安に、自己資金を多めに準備するとよいでしょう。ただし、頭金を多く入れすぎると、急な出費に対応できなくなる恐れがあるため、当面の生活費や緊急資金は確保しておきましょう。 出典)国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.48」 諸費用やローン返済以外の支出も考慮に入れる 住宅購入では登記費用や仲介手数料、火災・地震保険料、引越し費用などの諸費用が発生し、購入後は固定資産税などの維持費もかかります。また、教育費や老後資金などの準備も進める必要があります。住宅ローン返済だけでなく、諸費用やその他の支出も考慮して無理のない返済計画を立てましょう。 まとめ 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は26.7%となり、一般的な目安である20%を上回ります。この水準では、家計に余裕がないと返済が厳しくなる場合があるため、慎重な資金計画が必要です。 住宅ローンは長期にわたる支出となるため、将来のライフイベントや収支の変化も見据えたうえで、無理のない借入額を設定することが大切です。この記事で紹介した返済負担率やシミュレーションを参考に、安心して返済を続けられる住宅ローン計画を立てましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
「リ・バース60ってやばいの?」 そんな不安を感じている人も少なくありません。SNSや口コミでは、制度の仕組みが誤解され、「怖い」「危険」といった声が見られることもあります。 しかし、そもそもリ・バース60は、高齢者の住まいや資金計画を支えるために、住宅金融支援機構が提供する安心して利用できる住宅ローン制度です。 この記事では、リ・バース60に対する誤解の背景や制度の安全性、他のローン商品やサービスとの違い、契約前に知っておきたいポイントなどを、わかりやすく解説します。 なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! 「リ・バース60はやばい」と言われる理由とは? ネガティブな印象を持たれる背景 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローンです。契約者が亡くなった後に元金を一括返済する仕組みを採用しているため、一般的な住宅ローンとは異なる点が多く、「契約内容が複雑」「返済方法がわかりにくい」といった印象を持たれることがあります。 特に、「亡くなった後に家を失い、負債が残るのでは?」という懸念は、リ・バース60の仕組みを十分に理解していないことから生じる誤解です。実際には、ノンリコース型を選択すれば、自宅の売却代金で残債が完済されなかったとしても、相続人に追加の返済義務は発生しません。 よくある誤解とその発信源 リ・バース60に対する誤解は、以下のような情報源から広がる傾向があります。 SNSや口コミでの断片的な情報 本来の仕組みを無視した一部の情報が拡散され、「家を失う」「借金が残る」といった不安を煽る表現が、商品への誤解を生んでいます。 過去のリバースモーゲージ制度との混同 民間金融機関が提供するリバースモーゲージと、住宅金融支援機構の「リ・バース60」は制度設計が異なります。過去に報道された返済トラブルなどと混同されることで、商品全体に対する不安が広がることがあります。 相続に関する不安の拡大 「相続人が借金を背負うのでは?」という懸念は、リコース型とノンリコース型の違いを理解していないことに起因します。商品設計上、ノンリコース型を選択すれば、相続人に返済義務は生じません。 このような誤解は、リ・バース60の仕組みを正しく理解することで解消できます。次のセクションでは、リ・バース60の実際のリスクと安全性について詳しく解説します。 リ・バース60のリスクと仕組みの安全性 元金一括返済のタイミングと仕組み リ・バース60では、契約者が亡くなった後に元金の一括返済が行われます。返済方法は、相続人が自己資金で支払うか、自宅を売却して返済するかを選択できます。 この仕組みは、契約者の生存中は利息のみを支払うことで月々の負担を軽減し、亡くなった後に元金を精算するという設計になっています。 ノンリコース型の安心設計 リ・バース60には「ノンリコース型」と「リコース型」の2種類があり、契約時に選択します。ノンリコース型では、担保不動産の売却代金で借入残高を返済し、それでも残債がある場合は、相続人に追加の返済義務は発生しません。 つまり、売却代金が不足しても、相続人が債務を引き継ぐことはありません。この設計により、相続人の経済的な負担を避けたいと考える契約者にとって、安心して利用できる商品となっています。 担保不動産の扱いと相続人の責任 一方、リコース型を選択した場合は、担保不動産の売却代金で借入残高を返済しきれないと、相続人が不足分を返済する義務を負うことになります。 リコース型は、ノンリコース型よりも金利が低く設定される傾向がありますが、相続人にとってはリスクがあるため、契約前に家族と十分に話し合い、商品の内容を理解したうえで選択することが重要です。 リ・バース60が向いている人・向いていない人 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローンであり、資金使途が住宅関連に限定されている点や、契約者の死亡後に元金を一括返済する仕組みなど、一般的な住宅ローンとは異なる特徴があります。 ここでは、商品設計上、リ・バース60が向いている人と、注意が必要な人を整理します。 リ・バース60が向いている人 以下のような人は、商品の目的や仕組みに合致しており、利用を検討する価値があります。 年金生活者で持ち家がある人 リ・バース60は、自宅を担保に住宅関連資金を借り入れる制度であり、月々の支払いが利息のみで済むため、年金収入など限られた収入でも利用しやすい設計です。 また、持ち家があることは制度の利用条件の一つであり、担保評価額に応じて融資額が決まるため、資金調達の選択肢として検討しやすいと言えます。 住み替えやリフォームを検討している人 リ・バース60は、住宅購入・建設・リフォーム・借り換えなど、住宅関連の資金使途に限定された制度です。そのため、老朽化した住まいの改修や、ライフスタイルの変化に伴う住み替えを検討している高齢者にとって、目的に合った資金調達手段として活用しやすい設計になっています。 特に、自己資金の負担を抑えながら住宅環境を整えたい人にとって、有力な選択肢となり得ます。 相続人と事前に話し合いができている人 リ・バース60は、契約者の死亡後に元金を一括返済する仕組みであるため、相続人の理解と協力が不可欠です。ノンリコース型を選択すれば、売却代金で残債が返済しきれない場合でも、相続人に追加の返済義務は発生しません。 とはいえ、契約内容や返済方法について事前に家族と共有しておくことで、将来的なトラブルや誤解を防ぎ、安心して制度を利用することができます。 注意が必要なケース 以下のような人は、制度の仕組みと目的に照らして、慎重な検討が必要です。 不動産を相続したい人 リ・バース60では、契約者の死亡後に元金を一括返済する必要があるため、担保となる自宅を売却して返済するケースも想定されます。そのため、自宅を相続財産として残したいと考えている人にとっては、制度の利用が相続計画に影響を及ぼす場合があります。 相続人との合意形成を図りつつ、資産全体の構成を踏まえた上で、制度の利用可否を慎重に見極めることが重要です。 自宅の評価額が低い人 リ・バース60の融資限度額は、自宅の担保評価額に基づいて決定されます。評価額が低い場合、希望する資金が借りられないことがあるため、商品の利用が制限されることがあります。 特に、評価額が下がる可能性がある物件については、仮審査を通じて事前に金融機関の判断を確認しておくと安心です。 生活資金としての利用を考えている人 リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途は住宅関連に限定されています。生活費や医療費、日常的な支出などには利用できないため、これらの目的で資金調達を検討している人には適していません。 住宅購入やリフォーム、借り換えなど、融資の対象となる資金使途を十分に理解したうえで、目的に合った商品を選ぶ必要があります。 リ・バース60とほかの商品・サービスとの比較 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する住宅ローンであり、民間金融機関が提供するリバースモーゲージや、不動産取引に該当するリースバックとは、仕組みや目的が異なります。 ここでは、それぞれの商品・サービスの違いを整理し、利用目的に応じた選択の参考になるよう比較します。 リバースモーゲージとの違い リバースモーゲージは、主に民間金融機関が提供する商品で、生活費や医療費など幅広い資金使途に対応しています。一方、リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途が住宅関連に限定されている点が大きな違いです。 リ・バース60とリバースモーゲージの比較表 項目 リ・バース60 リバースモーゲージ 資金用途 住宅購入・リフォーム・借り換えなど住宅関連 生活費・医療費・旅行など 提供元 住宅金融支援機構と提携する金融機関 民間金融機関 所有権 維持 毎月の支払い 利息 リースバックとの違い リースバックは、自宅を不動産会社などに売却し、その後も賃貸契約を結んで住み続けられるサービスです。資金調達の手段としては共通点がありますが、契約形態や所有権の扱いが大きく異なります。 リ・バース60とリースバックの比較表 項目 リ・バース60 リースバック 所有権 維持 売却により手放す 契約形態 金銭消費貸借契約 売買契約+賃貸契約 毎月の支払い 利息 家賃 リ・バース60を検討する前に知っておきたいこと リ・バース60は、一般的な住宅ローンとは異なる仕組みを持つ商品です。契約前に確認しておきたいポイントを、よくある質問形式で整理しました。商品の基本的な特徴や注意点を理解することで、安心して検討することができます。 Q. リ・バース60を利用すると、自宅を手放すことになりますか? A.いいえ。 リ・バース60では、自宅を担保に資金を借り入れますが、契約者の生存中は所有権を維持したまま住み続けることができます。亡くなった後に元金を一括返済する際、自宅を売却するかどうかは相続人の判断によります。 Q. 生活費や医療費など、住宅以外の目的に使えますか? A. 使えません。 リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途は住宅関連に限定されています。具体的には、住宅の購入・建設・リフォーム・借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などが対象です。 Q. 相続人に返済義務はありますか? A. 契約の種類によって異なります。 ノンリコース型を選択した場合、自宅の売却代金で借入残高を返済しきれなくても、相続人に追加の返済義務は発生しません。一方、リコース型では、売却代金で不足が生じた場合、相続人がその差額を返済する必要があります。 Q. 金利はどのように決まりますか? A. 金利は金融機関ごとに異なります。 固定金利型と変動金利型があり、選択するタイプによって返済額が変わります。また、ノンリコース型とリコース型でも金利設定に差があるため、契約前に金融機関の条件を比較することが大切です。 まとめ リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローン制度であり、住宅関連資金に特化した設計となっています。「やばい」「怖い」といった印象は、制度の仕組みや契約内容に対する誤解から生じることが多く、正しく理解することで不安は解消できます。 この記事では、制度に対する誤解の背景、実際のリスクと安全性、他制度との違い、そして契約前に確認すべきポイントを整理しました。特に、ノンリコース型を選択することで相続人の返済義務が発生しない仕組みや、資金使途が住宅関連に限定されている点など、制度の特徴を理解することが重要です。 リ・バース60は、住まいに関する課題を抱える高齢者にとって、有効な選択肢となり得ます。検討にあたっては、金融機関ごとの条件を比較し、家族と十分に話し合ったうえで、専門家への相談を活用することをおすすめします。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リ・バース60の金利・利子・手数料を徹底比較 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向け住宅ローン制度で、民間金融機関を通じて利用できます。資金使途は、住宅購入やリフォーム、借り換えなど、住宅関連に限定されており、生活費や医...
リ・バース60は、住宅金融支援機構によって提供されている、シニア世代の住まいと資金計画を支える住宅ローン制度です。「年齢を重ねても、安心して住み続けたい」といったニーズに応える一方で、利用には一定の条件や審査が伴います。 この記事では、リ・バース60の利用条件と審査のポイントについて、制度の仕組みや必要書類、審査の流れまでをわかりやすく解説します。制度の検討段階にある人や、将来的な選択肢として情報収集をされている人にとって、判断材料となる内容を網羅しています。 なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! リ・バース60の利用条件 リ・バース60を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、主に「年齢」「不動産」「資金使途」の3つの観点から、制度の利用要件を整理します。 リ・バース60の年齢要件 原則として、リ・バース60の申込者は満60歳以上であることが求められます。これは、制度が高齢者の住まいの安定と資金確保を目的としているためです。 満50歳以上満60歳未満の人でも利用は可能ですが、融資の限度額が担保評価額の30%となるため、注意が必要です。商品性や審査基準、年齢の取り扱いなどは金融機関によって異なるため、事前に各社の公式情報や相談窓口で確認することが重要です。 リ・バース60の融資対象住宅 リ・バース60の対象となる不動産は、以下のような条件を満たす必要があります。 新耐震基準相当の耐震性を有すること※ 融資対象住宅が法令を遵守した建築物であること ※資金使途が入居一時金または子世帯等が居住する住宅取得資金の場合を除く そのほか、借地や市街化調整区域の不動産などは取扱金融機関によって異なります。詳しくは金融機関にご確認ください。 リ・バース60の資金使途と注意点 リ・バース60は、資金使途が明確に定められている制度です。主な利用目的は以下のとおりです。 本人が居住する住宅の建設資金または購入資金※ 住宅のリフォーム資金※ サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金 住宅ローンの借換資金※ 子世帯などが居住する住宅の取得資金を借り入れるための資金 ※セカンドハウスも対象 生活費や医療費など、住宅に直接関係しない目的での利用は原則として認められていません。そのため、申込時には資金使途を明確にし、リフォームの場合は工事見積書、借り換えの場合は既存の住宅ローンの残高証明などの資料を提出する必要があります。 リ・バース60の審査の流れと必要書類 リ・バース60を利用するには、金融機関による審査を受ける必要があります。ここでは、審査のステップ、提出書類、審査期間の目安と注意点について解説します。 リ・バース60の審査のステップ リ・バース60の審査は、一般的な住宅ローンと同様に、以下のようなステップで進行します。 1. 事前相談・仮審査申込 金融機関や提携不動産会社などで制度の説明を受け、仮審査を申し込みます。ここでは、年齢や不動産の条件、資金使途などの基本的な要件が確認されます。 2. 仮審査(事前審査) 提出された情報をもとに、融資の可否見込みや概算の融資額が判断されます。仮審査の結果は、金融機関によって異なりますが、通常1〜2週間程度で通知されます。 3. 本審査申込・書類提出 仮審査通過後、正式な申込を行い、必要書類を提出します。ここでは、収入状況や不動産の担保評価など、より詳細な審査が行われます。 4. 本審査・契約手続き 本審査に通過すると、契約書の締結などの手続きに進みます。 リ・バース60で必要な書類一覧 審査にあたっては、金融機関によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下のような書類の提出が求められます。 本人確認書類(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど) 収入証明書類(年金証書、源泉徴収票、確定申告書など) 不動産関連資料(登記簿謄本、建物図面、固定資産税納税通知書など) 資金使途に関する資料(リフォームの場合は工事見積書、借り換えの場合は既存の住宅ローンの残高証明など) 書類の不備や不足があると、審査が遅れる場合があるため、事前にチェックリストを活用して準備することが推奨されます。 リ・バース60の審査期間の目安と注意点 審査期間は金融機関や申込内容によって異なりますが、仮審査に1〜2週間程度、本審査に2〜3週間程度はかかると考えておくとよいでしょう。 ただし、提出書類の内容や不動産の評価状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。特に、共有名義や築年数が古い物件の場合は、追加資料の提出を求められることがあります。 また、審査中に金融機関から追加の質問や資料提出依頼があることもあるため、連絡が取りやすい状態を保っておくことが重要です。 リ・バース60の団体信用生命保険(団信)の加入要否 リ・バース60では、一般的な住宅ローンとは異なり、団体信用生命保険(以下、団信)の取り扱いに特徴があります。ここでは、団信の基本的な仕組みと、リ・バース60における加入要否について解説します。 一般的な住宅ローンとリ・バース60における団信の違い 一般的な住宅ローンでは、債務者が死亡した場合に残債が保険で完済されるよう、団信への加入が義務付けられているケースが多くあります。これは、金融機関にとって貸し倒れリスクを軽減するための仕組みです。 一方、リ・バース60では、団信の付帯が制度上認められていないため、加入することができません。 団信加入ができない理由とその背景 リ・バース60では団体信用生命保険(団信)に加入することができません。その背景には、制度の設計上の特徴が関係しています。 まず、リ・バース60の返済方法は「元金据置・利息のみ支払い」型です。債務者が生存している間は利息のみを支払い、死亡後は相続人が元金を返済します。返済方法が「現金での一括返済」ではない場合には、「担保不動産を売却して返済」することで元金が精算されます。この仕組みにより、団信による残債保証の必要性がそもそもないのです。 さらに、住宅金融支援機構が債務回収を担保している点も重要です。制度設計では、不動産の担保価値を重視しており、債務者が亡くなった際には、債務が回収される仕組みとなっています。 このように、団信に加入できない代わりに、制度全体が不動産の担保価値を前提に設計されており、債務者の死亡後も残債が不動産価値を超えないよう配慮されています。 リ・バース60の保証人と担保の取り扱い リ・バース60では、一般的な住宅ローンとは異なる担保評価や保証人の取り扱いが特徴です。ここでは、利用にあたっての保証人の要否、担保評価の基準、共有名義不動産の扱いについて解説します。 保証人が必要なケース リ・バース60の保証人の可否は、金利タイプによって異なります。住宅金融支援機構によると、固定金利の場合、保証人は不要としています。一方で、変動金利の場合は、金融機関ごとに異なるとしています。 主に以下のようなケースでは、金融機関の判断により保証人が求められる場合があります。 不動産の担保評価が低い場合 不動産の所有権が共有名義である場合 債務者の収入状況や信用情報に不安がある場合 保証人の要否は金融機関ごとに異なるため、事前に相談、確認することが重要です。 出典)住宅金融支援機構「Q保証人は必要ですか Q&A番号:7」 担保評価の基準と融資限度額 リ・バース60では、融資額の上限は担保となる不動産の評価額によって決定されます。評価基準は以下のような要素を含みます。 物件の築年数・構造・耐震性 立地条件(駅からの距離、周辺環境など) 市場価格や路線価などの客観的指標 融資限度額は、不動産評価額の50〜60%程度に設定されることが一般的です。ただし、評価方法や上限率は金融機関によって異なるため、複数社で比較検討することが推奨されます。 担保不動産の共有名義の時の取り扱い 担保不動産が共有名義である場合、リ・バース60利用には共有者全員の同意が必要です。特に、配偶者との共有名義の場合は、以下の点に注意が必要です。 配偶者が制度の内容を理解し、同意を得られるか 死亡後の居住を継続するかどうか リ・バース60の利用後も配偶者が安心して住み続けられるよう、事前に家族間での話し合いや金融機関との相談を行うことが望ましいです。 リ・バース60の審査に通りやすい人・通りにくい人 リ・バース60の審査では、年齢や収入だけでなく、不動産の担保価値や資金使途など、複数の要素から総合的に判断されます。ここでは、審査に通りやすい人・通りにくい人の傾向と、よくある審査落ちの理由、対策について解説します。 公的年金のみでも融資可能 リ・バース60は、シニア世代の利用を前提とした制度であるため、公的年金のみの収入でも審査に通る可能性があります。ただし、年金額が極端に少ない場合や、生活費とのバランスなどが取れていないと判断された場合は、審査に影響することがあります。 審査では、以下のような点が確認されます。 年金受給額と生活費のバランス 他の借入状況(消費者金融・カードローンなど) 支払能力の継続性(年金の安定性) 年金以外にも収入がある場合(不動産収入、企業年金など)は、合算することができます。 持ち家の評価額が重要 リ・バース60の融資額は、担保となる不動産の評価額によって大きく左右されます。そのため、不動産の価値が高いほど、審査に通りやすく、希望額に近い融資が受けられる可能性が高まります。持ち家は、以下のような点で評価されます。 立地(駅近・商業施設へのアクセスなど) 築年数・構造・耐震性(築浅・耐久性の高さ・新耐震基準に適合しているなど) 逆に、築年数が古く、郊外の物件など、評価額が低い不動産の場合は、融資額が希望に届かず、審査に通らないケースもあります。 よくある審査落ちの理由と対策 リ・バース60の審査で否決される主な理由には、以下のようなものがあります。 不動産の担保評価が低い(老朽化、立地条件など) 収入が極端に少ない、または不安定である 他の借り入れが多く、返済能力に懸念がある 共有名義人の同意が得られていない 信用情報に延滞履歴や債務整理の記録がある これらの審査落ちの理由に対して、以下のような対策をとるといいでしょう。 事前に不動産の簡易査定を受ける 年金以外の収入がある場合は公的書類を準備する 信用情報を開示し、問題がないか確認する(CIC・JICCなど) 既存の借り入れを整理する 配偶者や共有者と事前に制度内容を共有し、同意を得る 審査に不安がある場合は、金融機関の無料相談窓口を活用することで、事前にリスクを把握し、対策を講じることが可能です。 まとめ リ・バース60は、シニア世代が安心して住み続けるための住まいと資金計画を支える制度です。利用には年齢や不動産の条件、資金使途などの要件を満たす必要があり、審査では収入や担保評価、信用情報などが総合的に判断されます。 また、団信の加入は制度上利用できないものの、商品設計の段階で、債務者の死亡後も残債が過大に残らないよう配慮されています。ただし、共有名義の際には、取り扱いにも注意が必要で、共有者との事前の話し合いや同意の取得が重要です。 審査に通るためには、不動産の評価額や収入状況、既存借り入れの確認など、事前準備が鍵となります。詳しくは、各金融機関の公式サイトや住宅金融支援機構のホームページをご確認ください。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リ・バース60のよくある質問 リ・バース60は、満60歳以上の方向けの住宅ローンです。一般的な住宅ローンは、安定収入が必要で年齢制限もあるため、高齢になると借りるのが難しくなります。一方で、リ・バース60であれば、住宅ロ...