こんにちは、公認会計士の千日太郎です。 衆院選後の過度な財政不安や日銀の早期利上げ観測が後退し、新発10年国債利回りが急低下しています。市場金利が下がれば、固定金利タイプの住宅ローンも下がるのが基本セオリーであり、【フラット35】も低下が予想されます。 まずは、最新の機構債と市場動向から分析した、2026年3月の【フラット35】金利予想の結論からお伝えします。 【2026年3月 フラット35金利予想】 予想レンジ:2.13% ~ 2.17% 傾向:前月比 ▲0.09%~▲0.13%の低下 要因:新発10年国債利回りの低下 前回の記事(【フラット35】2026年2月金利は2.26 %に決定|公認会計士の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の2026年2月金利を2.18%~2.28%と予想し、結果は2.26%となりました。 この記事では、急変する市場の中で「なぜ3月はこの金利予想になるのか」、その根拠となる国債・機構債の動きと、私たち借り手にとって重要な「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の現状について詳しく解説します。 【フラット35】2026年2月金利予想の結果と検証 2026年2月の【フラット35】金利は2.26%に決定 2026年2月の【フラット35】金利は2.26%に決定し、2026年1月下旬での予想レンジ(2.18%~2.28%)の中で、上限に近い結果となりました。 金利上昇の背景として、2月は新発10年国債利回りが0.33ポイント上昇し、それに伴い機構債の表面利率も0.33ポイント上昇したことが挙げられます。これに対し、【フラット35】の金利上昇は引き続き抑えられている状況です。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 金利上昇が抑えられた要因(拡大する逆ザヤ) 予想以上に市場金利が上昇したとはいえ、その上昇幅に比べれば【フラット35】の上昇はかなり抑制されています。これを支えているのは、過去連続9か月にわたって【フラット35】の金利が機構債の表面利率(調達コスト)を下回っている、いわゆる「逆ザヤ」現象です。 昨年の6月に0.05ポイントから始まった逆ザヤは毎月拡大を続け、2026年2月には10倍の0.52ポイントに達しています。特に衆院選直前の1月から2月にかけての拡大幅は大きく、住宅金融支援機構が自らの利益を犠牲にして、どこまでこの「逆ザヤ」を容認して金利を抑え込むかが、今後の予想の核となります。 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 年月 機構債表面利率 機構債発表日 フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%5月22日1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%6月20日1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%7月18日1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%8月21日1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%9月19日1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%10月17日1.90%-0.25ポイント 2025年12月2.30%11月20日1.97%-0.33ポイント 2026年1月2.45%12月17日2.08%-0.37ポイント 2026年2月2.78%1月22日2.26%-0.52ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※筆者作成 【フラット35】2026年3月金利予想 衆院選の自民大勝によって株価は高騰し、上がるかと思われた新発10年国債利回りは静観、その後低下傾向となっています。日銀の植田総裁は2月16日に高市首相と会談しましたが「一般的な経済、金融情勢の意見交換であった」とし、具体的な内容については明言しませんでした。 実際、2026年3月に向けての市場動向を見ると、新発10年国債利回りは2.27%から2.12%(※)へ、0.15ポイントの大幅低下となりました。これに伴い、機構債の表面利率は2.78%から2.65%へと0.13ポイント低下しています。 単純計算すれば、3月の【フラット35】は0.13~0.15%の低下となります。しかし、今回は逆ザヤの抑制(機構側の赤字縮小)が働き、実際の低下幅は若干抑えられると見込んでいます。 これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移を踏まえた、【フラット35】の金利予想は以下のとおりです。 ※10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】金利推移と2026年3月予想 2025年12月 2026年1月 2026年2月 2026年3月 【フラット35】の金利(※) 1.97% 2.08% 2.26% 千日太郎の予想2.13% ~ 2.17% ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:2.13%(機構債の低下を素直に反映) 下限の2.13%は、機構債の表面利率の低下が最大限に発揮されるシナリオです。10年国債利回りの低下幅は0.15ポイントですが、こちらはあくまで指標であるため、住宅金融支援機構が実際に資金調達する「機構債の低下幅(0.13ポイント)」を採用しました。 シナリオ②:2.17%(「激変緩和」の反動で下げ幅を抑える) 上限の2.17%は、機構側がこれまでの「激変緩和」の反動として、金利の低下幅をあえて抑えるというシナリオです。 1月から2月にかけては、積極財政を警戒した10年国債利回りの上昇がピークを迎え、機構債表面利率に対する【フラット35】の逆ザヤが-0.52ポイントという異常値に達していました。このまま、機構債の低下幅と同じ幅で【フラット35】を下げてしまうと、今後も0.52ポイントという大きな逆ザヤ(機構側の赤字)水準を維持・拡大することになってしまいます。 歴史的な長期金利の上昇を住宅ローン利用者が被らないようにするための、例外的な「激変緩和」措置であったとするならば、今回の金利低下局面では、低下幅を少し渋る(抑える)動きに出ると予想されます。 ただし、低下幅が抑えられて2.17%となったとしても、逆ザヤは-0.48ポイントとなり、依然として大幅な利用者優遇状態であることに変わりはありません。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移 主要データ(2026年2月18日時点) 機構債発表日 2025年11月20日 2025年12月17日 2026年1月22日 2026年2月18日 機構債の表面利率(※1) 2.30% 2.45% 2.78% 2.65% 新発10年国債利回り(※2) 1.79% 1.94% 2.27% 2.12% ローンチスプレッド(※1) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 53bps(0.53%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 まとめ 衆院選後は、過度な財政不安や日銀の早期利上げ観測が後退し、新発10年国債利回りは低下傾向にあります。しかし植田総裁は依然として利上げ路線を継続する意向を示しており、住宅ローンの金利が一本調子で下がるシナリオを描きにくい状況です。 引き続き【フラット35】については、公的融資という側面から急激な変動(上昇)が抑えられ、借り手にとって有利な「逆ザヤ」状態が続くとみていますが、早めの資金計画や仮審査の申し込みなど、金利上昇リスクへの備えを進めておくことをお勧めします。 ※この記事は2026年2月18日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
地震保険から支払われる保険金額は、建物や家財の損害の程度によって決定されます。その損害の程度は「一部損」「全損」などの区分がありますが、区分ごとにどのような違いがあるのでしょうか。 この記事では、地震保険の損害区分とそれぞれの違い、申請から給付までの流れ、具体的な支払い例を紹介します。 損害認定の仕組みと4つの区分 地震保険では、建物や家財の損害状況によって変わる損害の程度を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つに区分し、その区分に応じて保険金が決まる仕組みになっています。 損害の程度は、損害保険会社の専門の調査員(または鑑定人)が原則として目視により判定します。なお、大規模災害時は写真等による自己申告で認定される場合もあります。 その際、認定の基準となる「時価」と、実際に支払われる「保険金額」には明確な違いがあります。のちの判定基準を正しく理解するために、まずはこの2つの違いを押さえておきましょう。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 認定は「時価」、支払いは「契約金額」が基準 地震保険の仕組みを理解するポイントは、認定と支払いで「基準にする金額」が異なる点です。 認定のモノサシは「時価」 損害区分(全損~一部損)の判定は、建物の経年劣化を考慮した「現在の価値(時価)」に対し、どの程度の被害が出たかで行います。 支払いのベースは「契約金額(保険金額)」 実際に受け取るお金は、修理費用や時価額そのものではなく、「契約した保険金額」に対する一定割合(5%~100%)で決まります。 「全損」から「一部損」までの認定基準と割合 各区分の認定基準と、支払われる保険金の割合は以下のとおりです。 2017年1月1日以降に保険期間が始まる契約に適用 損害の状況 支払われる保険金 建物 家財 全損 基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の50%以上 家財の損害額が家財の時価の80%以上 契約金額の100%(時価が限度) 焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の70%以上/td> 大半損 基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の40~50%未満 家財の損害額が家財の時価の60%~80%未満 契約金額の60%(時価の60%が限度) 焼焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の50~70%未満/td> 小半損 基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の20~40%未満 家財の損害額が家財の時価の30%~60%未満 契約金額の30%(時価の30%が限度) 焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の20~50%未満/td> 一部損 基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の3~20%未満 家財の損害額が家財の時価の10%~30%未満 契約金額の5%(時価の5%が限度) 全損・大半損・小半損・一部損に至らない建物が床上浸水又は地盤面から45cmを超える浸水 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「備えて安心地震の話」 建物の損害認定(主要構造部・基礎など) 建物の調査は、建物を支えるために重要な主要構造部(基礎、柱、壁、屋根)に着目して行われます。そのため、門、塀、垣、エレベーター、給排水設備など、主要構造部に該当しない部分のみに損害が生じている場合は、補償の対象外となるため注意が必要です。 ■主要構造部(イメージ図) ※筆者作成 また、構造に関わらない内壁(クロスなど)や天井の損傷は、地震保険においては「主要構造部」の損害としてカウントされないケースが一般的です。あくまで「建物の構造」に関わる部分(外壁や基礎など)が重視されます。 なお、津波による浸水被害の場合は「浸水の深さ」、地盤の液状化による被害の場合は「建物の傾斜の角度や沈下の深さ」によって認定されます。また、木造建物、非木造建物など、建物の種類によって認定基準は異なります。 出典) ・一般社団法人日本損害保険協会「(地震保険 損害の認定基準について」 ・一般社団法人 日本損害保険協会「(備えて安心 地震保険の話」 家財の損害認定 家財(家具や家電など)の損害認定は、一つひとつの購入価格ではなく、家財全体を以下の5つに分類し、それぞれの「構成割合」を加味して損害額を算出します。 なお、すべての家財がチェックされるわけではなく、基本的にはこの5分類の中で一般的に所有されていると考えられる品目の損傷状況から、家財全体の損害割合を算出して判定します。 【家財の5分類】 1.食器類(食器、花瓶など) 2.電気器具類(テレビ、パソコン、冷蔵庫など) 3.家具類(タンス、棚、テーブルなど) 4.身回品その他(カメラ、楽器、靴など) 5.寝具・衣類(洋服、布団など) 例えば、地震により「テレビ、パソコン、冷蔵庫(電気器具類3品目)」と「タンス(家具類1品目)」が転倒して破損したとします。この4品目の損害割合の合計が家財全体の時価の10%以上に達すれば「一部損」、30%以上に達すれば「小半損」といった形で認定されます。一つ一つの被害は小さくても、複数の分類で損害が重なることで認定基準(10%以上)を満たすケースがあります。 出典)一般社団法人日本損害保険協会「地震保険 損害の認定基準について p.3」 保険金の支払い例と補償額の目安 ここでは、具体的な金額を用いて保険金の支払い例を紹介します。前提として、地震保険の契約金額は「火災保険の契約金額の30%~50%」の範囲で設定されます。 ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。たとえ時価がそれ以上の価値であっても、上限を超える契約はできません。 【モデルケース】 建物の評価額:2,000万円 家財の評価額:1,000万円 地震保険の契約金額(火災保険の50%で設定した場合): ・建物:1,000万円 ・家財:500万円 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「地震保険の保険金額の設定にあたっては、どのような制限がありますか。」 ケース1:全損(建物・家財が消失・倒壊) 地震による火災や倒壊で、建物と家財がともに「全損」となった場合の受取額です。 この状況での受取額は以下のとおりです。 建物分:1,000万円(契約金額の100%) 家財分:500万円(契約金額の100%) 公的支援(被災者生活再建支援金):最大300万円(基礎支援金+加算支援金) 受取総額:1,800万円 被害総額(3,000万円)に対し、受け取れる金額は1,800万円となります。地震保険はあくまで「生活再建の資金」を補うものであり、元通りに再建するための費用が全額補償されるわけではない点に留意が必要です。 地震保険と公的支援だけで生活再建費用をすべてカバーするのは難しいため、別途不足分を補うための地震補償保険の上乗せなどが有効といえます。 出典) ・一般社団法人日本損害保険協会「(地震保険とは」 ・内閣府「(公的支援制度について」 ケース2:一部損(ひび割れや家財の破損) 建物の一部や家財の一部が壊れ、ともに「一部損」と認定された場合の受取額です。 以下のような被害状況が目安となります。 建物 基礎や柱、外壁のひび割れ、屋根瓦のずれなどが生じ、建物全体の時価の3%~20%未満の損失が発生した場合 家財 「食器類の大半が割れた」「テレビやエアコンが落下して破損した」などの被害を受け、家財全体の時価の10%~30%未満の損失が発生した場合 この状況での受取額は以下のとおりです。 建物分:50万円(契約金額の5%) 家財分:25万円(契約金額の5%) 公的支援:原則なし 受取総額:75万円 一部損の場合、受け取れる保険金は契約金額の5%に限られます。実際の修理費用がこの金額を上回る場合でも、支払われる金額は変わりません。特に、基礎のひび割れ修理などは高額になりやすいため、5%の保険金だけでは修理費を賄いきれないケースも少なくありません。 また、原則として公的支援の対象外となるため、修理費用が保険金額を上回る場合は、自己資金での持ち出しとなります。 出典)財務省「地震保険制度の概要」 請求手続きの流れと必要書類 地震による損害が発生した場合の、一般的な請求フローと必要書類について解説します。 請求から保険金支払いまでの流れ 1.保険会社への連絡 加入している保険会社、または保険代理店の窓口へ連絡します。 2.損害調査の実施 保険会社の専門調査員が訪問し、建物や家財の被害状況を確認します。 3.調査結果の連絡・確定 調査結果に基づき損害区分(全損~一部損)が認定され、支払われる保険金額が確定します。 4.必要書類の提出 保険金請求書などの書類を提出します。 5.保険金の入金 指定した口座に保険金が支払われます。 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「台風・大雪・地震などの自然災害により建物・家財が損傷した場合の一般的な保険金請求手続き」 申請に必要な書類 一般的に以下の書類が必要となりますが、状況によって異なるため保険会社の案内に従ってください。 保険金請求書 損害状況がわかる写真や画像データ 修理見積書 など 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「台風・大雪・地震などの自然災害により建物・家財が損傷した場合の一般的な保険金請求手続き」 請求手続きの注意点と適切な認定を受けるためのポイント 地震保険をスムーズに請求し、適正な認定を受けるために知っておきたいポイントを紹介します。 保険証券がない場合の対処法 地震保険の保険証券が手元になくても保険金を請求することは可能です。まずは加入中の保険会社に相談しましょう。加入した保険会社がわからない場合は、日本損害保険協会に相談すると損害保険会社に照会してくれます。 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「自然災害損保契約のご照会」 片付け前に「被害状況の写真」を撮る 地震によって建物や家財が壊れたら、できる限りその状況を写真に撮っておくことが大切です。損害調査を受ける前に壊れたものを片づけてしまうと、調査員が目視で損害状況を確認できず、査定内容が変わってしまいます。 自己申告ではなく「鑑定人の調査」で決まる 地震保険で支払われる保険金は、損害保険会社による損害認定によって決まります。自己申告した損害金額、支払った修理費用などを基準に支払われるわけではない点に注意しましょう。 「罹災証明書」発行のための被害認定と地震保険の損害認定は別物 罹災証明書とは、災害による被害の程度を自治体が証明する書面です。被災者生活再建支援金などの申請時に必要になりますが、自治体が行う罹災証明書発行のための「被害認定調査」と保険会社が行う地震保険の「損害調査」とは、目的や基準が大きく異なります。そのため、地震保険請求時に罹災証明書の提出は基本的に不要です。 「罹災証明が出るまで請求を待つ」必要はありませんので、被害が出たら早めに保険会社へ連絡しましょう。 認定結果に納得できない場合は「再調査」を依頼できる もし「一部損にもならない(無責)」と判定されたり、認定区分に納得がいかなかったりする場合は、保険会社に「再調査」を依頼することができます。その際は、納得できない箇所の写真や、工務店の意見書などを添えて相談するとよいでしょう。諦めずに交渉することも大切な権利です。 まとめ 地震保険は、建物や家財の損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)に応じて保険金が支払われます。ただし、全損であっても受け取れる金額は火災保険金額の50%が上限であり、一部損の場合は契約金額の5%にとどまります。 前述したシミュレーションのとおり、地震保険と公的支援だけでは、元の生活を取り戻すための資金が不足する可能性があります。「現在の補償内容で住宅ローンを払いながら生活を再建できるか」を一度確認し、不安が残る場合は、地震保険の上乗せ補償などの検討をおすすめします。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。 SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...
不動産を複数人で所有する「共有名義」の状態は、単独所有とは異なり、自身の判断だけで不動産全体を売却したり、建て替えたりすることができません。 「離婚した元配偶者と顔を合わせたくない」「兄弟間で遺産分割協議がまとまらない」といった理由から、自身の持分だけを手放したいと考える方は少なくありません。 結論から言えば、自身の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なく売却・放棄することが可能です。しかし、そこには法的な手順や、知っておかなければならない税務リスクが存在します。 この記事では、共有持分を単独で売却する4つの方法と、持分放棄の具体的な手続き、そしてトラブルを未然に防ぐための注意点について解説します。 共有持分の仕組みと放置するリスク 単独所有との違いと制限 共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する際に、各共有者が持つ所有権の割合のことです。 例えば、3,000万円の不動産を夫婦で購入し、それぞれ1,500万円ずつ負担した場合、持分割合は「2分の1ずつ」となります。共有者は、持分割合に応じて不動産を使用・管理する権利がありますが、同時に固定資産税や修繕費などの維持費を負担する義務もあります。 関連記事はこちら不動産の共有持分とは?共有名義で購入するメリット・デメリット、売却方法を解説 共有名義を放置するデメリット 共有持分の問題を先送りにして放置すると、以下のような問題が生じる場合があります。 不動産全体は共有者が単独で自由に売却することができない 共有者間で管理や費用負担をめぐるトラブルに発展する懸念がある 相続発生時に権利関係が複雑化し、売却や活用がさらに難しくなる 共有名義の不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも同意が得られない場合、売却はできません。 さらに、共有者の1人が亡くなるとその持分が相続され、共有者の人数がねずみ算式に増えてしまうことがあります。こうなると権利関係が複雑化し、解決が極めて困難になるリスクがあります。 共有持分だけを売却する4つの方法 共有名義の不動産であっても、ご自身の「共有持分のみ」であれば売却が可能です。他の共有者の許可は不要ですが、後のトラブルを避けるために対策を講じる必要があります。 ここでは、代表的な4つの売却方法を紹介します。 他の共有者への売却 最もスムーズな方法は、他の共有者に売却することです。共有者が2人の場合、一方がもう一方に売却すれば不動産は単独名義となり、自由に活用できます。共有者が3人以上いる場合は、誰にどれだけの持分を売却するかなど、複雑化する場合があります。 ただし、個人間での売買は契約条件や価格交渉でトラブルが起きやすいため、不動産仲介業者を介して契約することが望ましいでしょう。 第三者への仲介売却 不動産仲介会社を通じて、第三者(個人や投資家)に売却する方法もあります。自分で売り出し価格を決められるため、買取業者よりも高値で売却できる可能性があります。 ただし、共有持分は利用に制約があるため、一般的に流通性が低く、買い手が見つかるまで時間がかかる傾向があります。時間に余裕があり、できるだけ高値で売却したい場合に適した方法といえます。 専門買取業者への売却 共有持分の買取業者に依頼すれば、仲介による売却よりも短期間で現金化できる可能性が高いです。売却価格は仲介より低くなる傾向がありますが、早期売却を希望する場合には適した選択肢です。 依頼する際は、複数社に評価を依頼して条件を比較することが重要です。売却価格だけではなく、契約条件や手数料の確認も忘れないようにしましょう。 土地の分筆による売却 土地の場合は、「分筆(複数の土地に分割して登記)」を行い、単独所有にしたうえで売却する方法もあります。分筆を行えば、自分の土地として自由に売却できるようになります。 ただし、分筆を行うには他の共有者全員の同意が必要です。また、土地の形状や立地によっては分筆が難しい場合があり、測量や登記の手続きに費用や時間がかかります。まずは、土地家屋調査士などの専門家に相談して判断することをおすすめします。 売却方法の比較表 売却方法 メリット デメリット 向いている状況 他の共有者への売却 スムーズに話が進みやすい 価格交渉が難航する場合あり 共有者との関係が良好 第三者への仲介売却 買取業者より高値で売却できる可能性あり 買い手が見つかりにくい 時間に余裕がある 買取業者に売却 短期間で現金化可能 仲介より価格が低い傾向あり 早く売却したい 土地を分筆して売却 単独所有で売却可能 分筆費用・時間がかかる 土地の形状が適している ※筆者作成 持分放棄の手続きと税務リスク 「売れなくてもいいから手放したい」という場合、持分を「放棄」することも可能です。民法第255条に基づき、放棄した持分は他の共有者に帰属します。 (持分の放棄及び共有者の死亡)第二百五十五条共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。 内容証明郵便による意思表示 持分放棄は、単に口頭で「いらない」と伝えるだけでは不十分です。後日、「そんな話は聞いていない」と言われないよう、持分放棄の意思表示を証拠として残すことが重要です。 具体的には、郵便局が文書の内容と発送事実を証明してくれる「内容証明郵便(配達証明付)」などが有効です。これにより、「いつ、誰が、誰に対して、持分放棄の意思表示をしたか」が客観的に証明されます。 通知が相手に到達したことを確認した後、司法書士に依頼して持分移転登記の手続きへと進みます。 なお、持分移転登記は原則として「他の共有者と共同」で行う必要があります。相手が登記手続きへの協力を拒否した場合は、裁判所を通じた手続きが必要になることもあるため、強引に進める前に専門家への相談が不可欠です。 「みなし贈与」などの税務リスク 注意すべきは「税金」です。持分を受け取った側の共有者は、経済的利益を得たことになります。これが相続税法第7条に基づき「みなし贈与」とされ、「持分を受け取った側の共有者」に贈与税が課税される場合があります。 また、放棄を行っても登記手続きが完了していなければ、固定資産税や管理費の負担義務は消えません。放棄を行う際は、司法書士や税理士へ相談しましょう。 出典) ・e-Gov法令検索「民法」(第255条) ・e-Gov法令検索「相続税法」(第7条) トラブルを防ぐ注意点と「売らない」選択肢 共有持分の売却や買取を円滑に進めるためには、以下の点を確認してください。 売却・放棄を成功させる事前チェック 複数業者に評価を依頼する 共有持分は流通性が低く、業者によって評価額に差が出やすい特徴があります。1社だけで判断せず、複数社に評価を依頼し、条件を比較することで適正な価格を把握できます。 税務リスクを確認する(贈与税・譲渡所得税) 無償譲渡や低額譲渡は「みなし贈与」とされる可能性があります。また、売却益が出た場合は譲渡所得税が課税されます。税務判断は個別の状況により異なるため、事前の確認が不可欠です。 登記手続きまで確実に行う 口頭での合意だけでは不十分です。登記が完了していなければ、名義が残り続け、固定資産税や管理費の請求が来ることになります。司法書士に依頼するなどして、確実に名義変更を行いましょう。 専門家(弁護士・司法書士・税理士)に相談する 共有持分の取り扱いは、法的・税務的に複雑な判断を伴います。トラブルを未然に防ぎ、安全に取引を行うためにも、専門家の助言を得ることをおすすめします。 共有持分を担保にする不動産担保ローン もし、共有持分の売却を検討している理由が「人間関係の解消」ではなく、「まとまった資金調達」であるならば、売却以外の選択肢もあります。それは、ご自身の共有持分のみを担保にして融資を受ける「不動産担保ローン」です。 通常の銀行ローンでは共有者全員の同意(連帯保証)を求められることが一般的ですが、ノンバンク系の不動産担保ローンであれば、自身の共有持分のみを担保に、原則として他の共有者の同意不要で融資を受けられる場合があります。また、金融機関によっては郵送物や連絡方法に配慮してくれるため、他の共有者に知られないよう進められる場合もあります。 「愛着のある不動産を手放したくはないが、現金が必要」という場合では、有効な解決策となります。 関連記事はこちら不動産担保ローンは持分だけでも借りられる?特殊な不動産の融資可否も紹介 不動産共有持分に関するよくある質問 Q.他の共有者が反対していても売却できる? A.自分の持分のみであれば可能です。他の共有者の同意は必要ありません。ただし、売却後に買主と他の共有者との間でトラブルになることを避けるため、事前に相談しておくのが望ましいといえます。 Q.放棄に費用はかかる? A.はい、かかります。持分移転登記の手続きに必要な「登録免許税」や、手続きを代行する「司法書士報酬」などが必要です。 Q.一般的な不動産会社でも売却できますか? A.共有持分単独での売却は、断られる場合があります。通常の不動産会社は「不動産全体」の売買を前提としているため、権利関係が複雑な共有持分のみの取り扱いは避ける傾向にあります。相談する際は、共有持分を専門に扱う不動産会社や、弁護士などの専門家を探すのが一般的です。 まとめ 共有名義の不動産は、自身の持分だけであれば「売却」や「放棄」によって単独で手放すことが可能です。 現金化したい場合 なるべく高い金額での売却を目指す「仲介」や、早期解決が可能な「買取業者」など、優先順位に合わせて売却先を選ぶ。 手放したい場合 放棄が可能だが、他の共有者への「みなし贈与」などの税務リスクに注意する。 資金だけ必要な場合 売却せず、持分のみを担保にした「不動産担保ローン」の利用も検討する。 最も避けるべきは、問題を先送りにして権利関係をさらに複雑にしてしまうことです。ご自身の状況に合わせて、最適な出口戦略を選んでください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産買取のメリット・デメリットとは?不動産業者の選び方も解説 一般的に不動産を売却する場合は「不動産買取業者へ売却する方法」と「不動産仲介業者を通して売却する方法」の2種類があります。どのような場合に不動産買取を利用し、どのような不動産業者を選べばわか...
地震などの自然災害で住宅が損壊した際、被災者生活再建支援金などの公的支援を受けるために欠かせないのが「罹災(りさい)証明書」です。 被災時に「地震保険金を請求する際にも、罹災証明書が必要なのでは?」と疑問に思う方も多いでしょう。実は、自治体が行う罹災証明書発行のための「被害認定調査」と保険会社が行う地震保険の「損害調査」とは、目的や基準が大きく異なります。この違いを正しく理解していないと、いざという時に「思ったより保険金が少なくて生活再建が難しい」といった事態を招きかねません。 この記事では、罹災証明書の定義や地震保険金請求との関係、具体的な発行手続きの手順を整理して解説します。さらに、地震保険の補償不足を補い、確実に住まいを守るための備えについても詳しく紹介します。 罹災証明書の定義と地震保険金請求の際の証明書の要否 まずは罹災証明書の役割と、地震保険を請求する際に罹災証明書が必要になるかどうかを整理していきましょう。 罹災証明書の定義と役割 罹災証明書とは、地震や風水害などの自然災害によって住宅が被害を受けた際、その被害の程度を自治体が認定・証明する書類です。 市区町村の職員などが現地調査を行い、被害状況に応じて「全壊」から「一部損壊」までの6区分で判定されます。この判定結果は、被災者生活再建支援金の受給や義援金の配分、税金の減免など、公的な支援を受けるための「共通の尺度」として用いられます。 ■災害の被害認定基準(令和3年6月24日付府政防670号内閣府政策統括官(防災担当)) 住家の主要な構成要素(屋根、壁、柱など)の損害が、住家全体に占める割合によって以下のように区分されます。 損害の区分 損害基準判定(住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合) 全壊 50%以上 大規模半壊 40%以上50%未満 中規模半壊 30%以上40%未満 半壊 20%以上30%未満 準半壊 10%以上20%未満 準半壊に至らない(一部損壊) 10%未満 出典)内閣府「災害に係る住家の被害認定」 罹災証明書と被災証明書との違い 罹災証明書と混同されやすいものに「被災証明書」があります。最大の違いは、「証明の対象」が住居(家)であるかどうかです。 書類名称 主な対象物 判定の有無 罹災証明書 現に居住している住宅(持ち家・借家) 「全壊」「半壊」などの判定あり 被災証明書 住宅以外の建物(店舗、空き家)、工作物(塀、門扉)、動産(車、家財) 被災した事実のみを証明(判定なし) 地震保険金請求における必要性 地震保険金を請求する際、罹災証明書の提出は原則として不要です。地震保険は損害保険会社が独自の基準で調査を行うため、自治体の調査結果を待たずに請求手続きを進めることができます。 ただし、大規模な災害などで現地調査が困難な場合に限り、保険会社から参考資料として提示を求められたり、罹災証明書を調査の代わり(援用)として活用したりするケースがあります。 地震保険と罹災証明書で査定結果が異なる理由 地震保険と罹災証明書では、損害を判定する際の査定対象や範囲、認定基準などが大きく異なります。そのため、「罹災証明書は半壊なのに、地震保険は一部損(または支払いなし)だった」というズレが生じることがあります。 地震保険:主要構造部の損害を査定 地震保険の査定対象は、建物の骨組みにあたる「主要構造部」に限定されています。主要構造部とは、建築基準法等で定められた以下の部分を指します。 査定の対象: 軸組(柱・梁)、基礎、屋根、外壁(耐力壁) 査定の対象外: 窓ガラス、ドア、内装(壁紙)、キッチン・バス等の設備、ベランダ たとえ内装や設備がボロボロになっても、基礎や柱といった骨組みに被害がなければ、地震保険の判定は低くなる仕組みです。なお、津波による浸水被害の場合は、例外的に「浸水の高さ」に基づいて損害を判定します。 罹災証明書:住家全体の損害を査定 罹災証明書は、主要構造部だけでなく、非主要構造部を含めた「住家全体」の損害を査定します。 内閣府の指針に基づき、屋根や柱などの部位ごとに細かく損害額(経済的被害)を算出し、それらを合算して建物全体の被害割合を決定します。地震保険では無視される「建具(窓・ドア)」「給排水設備」「内装」なども判定に含まれるため、地震保険よりも範囲が広くなります。 地震保険と罹災証明書の査定対象の比較 地震保険と罹災証明での査定対象を一覧にすると、以下のようになります。 査定対象(例) 地震保険 罹災証明書 主要構造部 柱 〇 〇 梁 〇 〇 屋根 〇 〇 耐力壁 〇 〇 基礎 〇 〇 非主要構造部 雑壁 × 〇 外部仕上材 × 〇 建具 ドア × 〇 扉 × 〇 サッシ × 〇 設備 バルコニー × 〇 エレベーター × 〇 受水槽設備 × 〇 給排水設備 × 〇 外部階段 × 〇 出典)財務省「地震保険制度の概要」および内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を基に筆者作成 マンションで判定のズレが生じる原因 マンションの場合、「どこを見て判定するか」のルールが根本的に異なるため、戸建て以上にズレが生じやすくなります。 地震保険(建物) 個人の専有部ではなく、マンション全体(柱・梁など)の共用部の被害状況で判定が決まります。そのため、部屋の内装がボロボロでも、建物の骨組みが無事なら「支払対象外」となるケースが一般的です。 罹災証明書 生活再建が目的のため、建物の構造だけでなく、エントランスの破損やライフラインの状況など、マンション全体の「居住機能」も加味して判定されます。 このように「建物としては丈夫(保険は対象外)」だが「生活には支障がある(罹災証明書は認定)」というケースが発生するため、結果に大きな差が出ることがあるのです。 罹災証明書の発行手続きと必要書類 罹災証明書は自動的に送られてくるものではなく、被災者自身が自治体に申請する必要があります。 申請窓口と申請方法 住宅のある市区町村の担当窓口(防災課や資産税課など)で申請します。 近年は「オンライン申請」を導入する自治体が増えており、マイナポータルなどを通じてスマートフォンやパソコンから手続きが可能です。発行手数料は原則として無料です。 必要書類と申請条件 申請ができるのは、被害を受けた住宅の所有者や居住者、またはその代理人です。手続きには以下の書類を用意しましょう。 交付申請書:窓口または自治体ホームページで入手 本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など 被害状況がわかる写真:現地調査の代わりや補足として重要(プリントアウトまたは画像データ) 委任状:代理人が申請する場合 出典) ・政府広報オンライン「住まいが被害を受けたとき 最初にすること」 ・マイナポータル「【災害】罹災証明書の発行申請」 発行までの期間と注意点 発行までの期間は通常1週間〜数週間程度です。ただし、大規模な災害で調査件数が多い場合は、1か月以上かかることもあります。 正確な被害認定を受けるためには、片付けや修理を始める前に現場を記録することが不可欠です。自治体調査の前に修繕してしまうと、本来の被害区分が認められない恐れがあります。写真は引きの写真と寄りの写真を撮っておくと安心です。 引きの写真:建物の外観4方向(全景)や、各部屋の全景 寄りの写真:壁の亀裂、屋根のズレ、浸水の跡など被害箇所がはっきりわかるもの 地震保険の補償限度と上乗せの備え 地震保険は被災後の生活を支える大切な制度ですが、実は「家を元通りに建て直す」ためのものではありません。ここでは補償の限界と、それを補うための選択肢を解説します。 地震保険の補償限度 地震保険で支払われる保険金には、法律に基づいた独自のルールがあります。 まず、設定できる保険金額は、主契約である火災保険の30%〜50%(建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円)と決められています。つまり、最大でも火災保険の半分までしか補償されません。 また、実際の支払額は以下の4つの損害区分に応じて機械的に決まります。 損害の区分 支払われる保険金(契約金額に対して) 全損 100% 大半損 60% 小半損 30% 一部損 5% このように、地震保険だけでは建物の再建費用や住宅ローンの完済には不足するケースが多いため、不足分をどう補うかが重要になります。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 地震保険の不足分をカバーする手段 地震保険の不足分をカバーする手段は、大きく2つに分けられます。ひとつは既存の地震保険に「特約」として上乗せする方法、もう一つは「単独」で加入できる保険を利用する方法です。 これらは、保険金の支払い基準によって以下の3つのタイプに分類できます。特に、記事前半で解説した「罹災証明書」の判定結果がそのまま支払いの根拠となるタイプがある点は知っておくとよいでしょう。 商品タイプ(分類) 支払いの基準 罹災証明書 特徴 上乗せ特約(損保会社の特約など) 保険会社の損害調査 不要 地震保険に上乗せする特約。保険会社の査定結果に連動して支払われる。 震度連動型 観測された震度 不要 地震の震度に応じて、定額の保険金が支払われるため、受け取りが速い。 罹災証明書連動型 罹災証明書の認定 必要 保険会社の調査とは異なる、行政の被害認定に基づいて保険金が支払われる。 出典)主要な損害保険会社および少額短期保険会社の商品概要を基に筆者作成 最適な備えの選び方 重視するポイントによって、選ぶべき備えは変わります。 「とにかく手続きを簡単に、早く現金が欲しい」 保険会社の調査や自治体の判定を待つ必要がない「震度連動型」が適しています。 「マンション共用部や、内装・設備の被害までしっかりカバーしたい」 「罹災証明書連動型」の組み合わせがおすすめです。 地震保険の査定基準と、罹災証明書の認定基準は異なります。そのため、地震保険では「対象外」や「一部損」となった場合でも、自治体の調査では生活への支障が考慮され「半壊」以上と判定されるケースもあります。 このように、「異なる2つの査定基準」を持つことで、認定のズレによる「もらいそびれ」のリスクをカバーできる点が最大のメリットです。 まとめ 罹災証明書は、公的支援を受けるために不可欠な書類ですが、地震保険の請求には原則として不要です。最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。 項目 重要なポイント 役割の違い 罹災証明書は「公的支援」のため、地震保険は「保険金支払い」のために、それぞれ異なる基準で調査が行われます。 査定範囲のズレ 地震保険は「骨組み(主要構造部)」のみを査定しますが、罹災証明書は「家全体(内装・設備含む)」を判定するため、結果に差が出ることがあります。 写真撮影の重要性 正確な被害認定を受けるには、片付けや修理を始める前に、建物の全景と損壊箇所のアップを必ず撮影して保存してください。 生活再建への備え 地震保険の補償は火災保険の最大50%です。不足分を補うために、罹災判定と連動する民間保険などで備えを強化しましょう。 地震などの大規模災害が発生した際、住宅ローンだけが残り、再建資金が足りないという事態は避けなければなりません。万が一の際、自分や家族の生活をどう守るのか。今のうちに地震保険の契約内容を確認し、「上乗せの備え」を整えておくことが、安心への第一歩となります。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。 SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。 まずは、最新の機構債と市場動向から2026年2月の【フラット35】金利予想を以下のように分析しました。 【2026年2月 フラット35金利予想】 予想:2.18%~2.28% 傾向:前月比+0.10%~+0.20% の上昇 要因:新発10年国債利回りの急上昇(2.27%へ到達) 前回の記事(【フラット35】日銀利上げ直後の2026年1月金利は2.08%に決定|公認会計士の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の2026年1月金利を1.99%~2.04%と予想し、結果は2.08%となりました。 解散総選挙後を織り込んで、新発10年国債利回りが急上昇しています。積極財政・赤字国債増発への警戒から国債売りが出ているという見方です。新発10年国債利回りが上がれば、固定金利タイプの住宅ローンは上がります。【フラット35】も例外ではありません。 この記事では、急変する市場の中で「なぜこの予想になるのか」、その根拠となる国債・機構債の動きと、私たち借り手にとって重要な「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の現状について解説します。 2026年2月の【フラット35】金利は2.26% に決定しました(更新日:2026年2月2日)。 【フラット35】2026年1月金利予想の結果と検証 2026年1月の金利は2.08%に決定 2026年1月の【フラット35】金利は2.08%に決定し、12月下旬での予想(1.99%~2.04%)を上回る結果となりました。 背景には、1月は新発10年国債利回りが0.15ポイント上昇し、機構債の表面利率も0.15ポイント上昇したことがあります。これに対し、【フラット35】の上昇はある程度抑えられましたが、予想レンジを超える上げ幅となりました。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 金利上昇が抑えられた要因(拡大する逆ザヤ) 予想以上に金利が上昇したとはいえ、市場金利の上昇幅に比べれば【フラット35】の上昇は抑制されています。これを支えているのは、過去連続8か月にわたって【フラット35】が機構債の表面利率を下回っている、いわゆる「逆ザヤ」現象です。 昨年6月に初めて0.05ポイントの逆ザヤを目の当たりにしたときは驚いたものですが、今年の1月ではその幅が0.37ポイントまで拡大しています。現在は住宅金融支援機構が利益を犠牲にして、どこまでこの「逆ザヤ」を容認して金利を抑え込むかが予想の核となっています。 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 年月 機構債表面利率(機構債発表日) フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%(5月22日)1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%(6月20日)1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%(7月18日)1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%(8月21日)1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%(9月19日)1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%(10月17日)1.90%-0.25ポイント 2025年12月2.30%(11月20日)1.97%-0.33ポイント 2026年1月2.45%(12月17日)2.08%-0.37ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※筆者作成 【フラット35】2026年2月金利予想 1月22日・23日の日銀会合では政策金利据え置きが決定されましたが、植田総裁は最近の新発10年国債利回りの動向について「かなり速いスピードで上昇している」との認識を示しました。 実際、2026年2月に向けての市場動向を見ると、新発10年国債利回りは1.94%から2.27%へ、0.33ポイントの大幅上昇となりました。これに伴い、機構債の表面利率も2.45%から2.78%へと、同じく0.33ポイント上昇しています。市場金利通りに計算すれば、2月の【フラット35】は2.40%を超えてくる水準です。しかし、今回は急激な変動を避けるための政策的配慮が働き、上昇幅は一定程度抑えられると見込みます。 これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移を踏まえた、【フラット35】の金利予想は以下のとおりです。 【フラット35】金利推移と2026年2月予想 2025年11月 2025年12月 2026年1月 2026年2月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 1.90% 1.97% 2.08% 2.18%~2.28%※2/2発表の金利は2.26%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:2.18%「激変緩和」 下限の2.18%は、機構による「激変緩和措置」が最大限に発揮されるシナリオです。10年国債利回りの急上昇に対し、その上昇分をそのまま住宅ローン金利に転嫁すれば、住宅市場への悪影響は避けられません。 日銀総裁も金利上昇スピードをけん制している局面であり、住宅金融支援機構がさらに逆ザヤ幅を拡大させてでも、金利上昇を0.1%程度に抑え込む(2.08%→2.18%)という読みです。 シナリオ②:2.28%「上昇圧力の反映」 上限の2.28%は、市場金利の上昇圧力を一定程度反映せざるを得ないシナリオです。 2月機構債が決まった時点の新発10年国債利回りは2.27%まで上昇しています。 これまで【フラット35】の金利が新発10年国債利回りを下回ったことはありません。そのため、いくら政策的に金利を抑えるとしても、この「新発10年国債利回り(2.27%)」よりは低くできないのではないか?という読みです。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移 主要データ(2026年1月22日時点) 機構債発表日 2025年10月17日 2025年11月20日 2025年12月17日 2026年1月22日 機構債の表面利率(※1) 2.15% 2.30% 2.45% 2.78% 新発10年国債利回り(※2) 1.64% 1.79% 1.94% 2.27% ローンチスプレッド(※1) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 まとめ 昨年の利上げをきっかけに新発10年国債利回りは大幅に上昇し、さらに解散総選挙後の積極財政による国債増発を警戒した金利上昇に拍車がかかっています。 日銀は1月会合で金利を据え置きましたが、植田総裁は今後も利上げ路線を継続する意向を示しており、住宅ローンの変動金利も固定金利も上昇基調が続く公算が大きいと言えます。 民間銀行は住宅ローンの金利を上げざるを得ない中、【フラット35】については独自の緩和措置により、急激な上昇はある程度抑えられるとみていますが、早めの資金計画や仮審査の申し込みなど、金利上昇リスクへの備えを進めておくことをお勧めします。 ※この記事は2026年1月22日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
住宅ローンを組んだ後に、転職や独立、あるいは勤務先の倒産などで退職の機会が訪れることは誰にでも起こり得ます。そんなとき、「退職したことを銀行に連絡すべきか」「もし連絡したら、一括返済を求められるのではないか」という不安に思うかもしれません。 結論から申し上げると、退職したことだけを理由に、住宅ローンの一括返済を求められたり、契約を解除されたりすることはありません。 ただし、金融機関への報告義務や、退職後に見落としがちなリスクについては正しく理解しておく必要があります。 この記事では、住宅ローン返済中に退職した場合の金融機関への連絡の要否、退職後のリスク、そして万が一返済が厳しくなった際の具体的な解決策を解説します。 住宅ローン返済中の退職・転職、金融機関への連絡は「必須」 住宅ローン返済中に退職や転職をした場合、金融機関への連絡は「必須」です。 住宅ローンの契約時、多くの方が目にする「金銭消費貸借契約証書(または契約約款など)」には、氏名・住所・勤務先などに変更があった際には速やかに届け出る旨の条項が記載されています。退職・転職はこれに該当するため、報告は契約上の義務となります。 なぜ金融機関への報告が必要なのか 金融機関は、債務者(借り手)の返済能力を常に把握しておく必要があります。退職して収入が途切れたり、転職して給与水準が変わったりすることは、返済の継続性に影響を与える重要な変化だからです。 「連絡すると何かペナルティがあるのでは?」と不安になるかもしれませんが、返済を遅延なく続けられるのであれば、報告を理由に金利が引き上げられたり、一括返済を迫られたりすることはまずありません。 連絡を怠った場合のリスク もし報告をせずに、後から金融機関に退職や転職が発覚した場合、以下のようなリスクが生じます。 信頼関係の悪化 万が一、将来的に返済の相談(返済期間の延長など)が必要になった際、「不誠実な利用者」とみなされ、柔軟な対応を受けにくくなる可能性があります。 緊急時の連絡不通 返済遅延などの緊急時に、自宅や携帯電話で連絡がつかない場合、登録された勤務先に連絡が入ることがあります。その際に退職しており連絡が取れないと、所在不明とみなされ、銀行の不信感を招く原因になります。 後のトラブルを避けるためにも、退職や転職先が決まり次第、速やかに手続きを行うのが安心です。 退職しても一括返済を求められない2つの理由 住宅ローン契約中に退職しても、即座に一括返済を求められないのには、明確な理由があります。 物件(不動産)という「担保」があるから 住宅ローンは、購入した物件を「担保」として金融機関が資金を貸し出す仕組みです。万が一返済が滞った場合でも、金融機関はその物件に設定された抵当権により、優先的に資金を回収することができます。 そのため、借り手が退職したこと自体よりも、「担保価値がある状態で、毎月の返済が滞りなく行われているか」が重視されます。 返済能力の判定は「総合的」に行われるから 勤務先や年収などの審査時の属性は重要ですが、一度融資が実行された後は、契約者が「返済を続けている実績」そのものが強い信用となります。 一時的に退職しても、十分な貯蓄があったり、すぐに次の職が決まっていたりして返済が継続できるのであれば、金融機関があえて契約を打ち切るメリットは少ないのです。 【ケース別】退職が住宅ローンに与える影響と注意点 退職の理由によって、その後の返済計画で注意すべきポイントが異なります。 転職の場合:収入の増減に合わせた調整 転職で年収が上がる場合は、これまで通り返済を続ければ問題ありません。一方、年収が下がる場合は、返済比率(年収に対する年間返済額の割合)が高まり、家計を圧迫するリスクがあります。 資金に余裕があるなら「返済額軽減型」の繰上返済を行い、毎月の負担を減らすのも一つの手です。 独立・起業の場合:数年間の「信用力低下」を覚悟する 独立直後は、会社員時代に比べて収入が不安定とみなされ、金融機関からの信用力が一時的に低下します。 特に注意したいのが、独立後しばらくは他のローンへの借り換えや追加融資が極めて難しくなる点です。 独立を考えている場合は、会社員という「信用」があるうちに、現在のローンの条件見直しや借り換えを検討しておくとよいでしょう。 定年退職の場合:退職金の使い道は慎重に 定年退職後は、給与収入がなくなるため、退職金で一括完済を目指す方が多いでしょう。しかし、手元資金をすべて完済に充ててしまうと、その後の老後資金や急な医療費が不足する恐れがあります。 完済するか、あえてローンを残して手元に現金を置くか、ライフプランに基づいた慎重な判断が求められます。 返済が厳しくなったときの3つの解決策 退職によって予定していた収入が得られず、返済が苦しくなったとしても、決して放置してはいけません。早めに対処すれば、自宅を手放さずに済む可能性も十分にあります。 金融機関に返済条件の変更を相談する まずは、現在ローンを借りている金融機関の窓口に相談しましょう。「条件変更(リスケジュール)」が認められれば、一定期間は利息のみの支払いにしたり、返済期間を延長して月々の支払額を減らしたりできる場合があります。 相談時には、「なぜ現在の返済が困難になっているのか(退職の経緯や家計の状況)」に加えて、「いつまでに再就職し、いくらであれば無理なく払い続けられるのか(今後の収支見通し)」を明確に伝えましょう。 他のローンへの借り換えや一時的な追加ローンの利用を検討する 現在のローンよりも低金利な住宅ローンへ借り換えることができれば、毎月の返済額を軽減できる可能性があります。ただし、銀行の住宅ローン審査では「勤続年数」や「安定した収入」が厳しくチェックされるため、退職・転職直後は審査に通りにくいという現実があります。 もし、転職後に年収が下がった、あるいは独立して銀行の住宅ローンが組めない状況になった場合に、資金繰りを改善したいのであれば、短期間のつなぎ資金の借り入れや、複数のローンを一本化する借り換えとして「不動産担保ローン」も選択肢の一つとして検討できます。 住宅ローンに比べると金利は高くなる傾向があり、返済期間によっては総返済額が増える場合があります。 しかし、与信だけでなく不動産の価値を加味して審査が行われるため、銀行で断られた場合でも、生活を立て直す手段として活用できる場合があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説 売却やリースバックで住居費を見直す 返済の目途が立たない場合には、これ以上の借入を増やすのではなく、家を手放してローンを整理するという選択肢もあります。 不動産仲介による売却・任意売却 家を売却した代金でローンを完済する方法です。売却価格がローン残高を下回る場合でも、金融機関の同意を得て「任意売却」を行えば、競売よりも高い価格で売却できる可能性があり、結果として残債を抑えて、より有利な条件で再出発できることがあります。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 リースバック 「家を売却してローンを完済したいが、引越しはしたくない」という場合に有効な手段です。自宅をリースバック運営会社に売却し、その後は賃貸として同じ家に住み続けることができます。まとまった売却代金を手にしながら、住環境を変えずに生活を立て直せるのが大きなメリットです。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 融資実行前の退職は要注意 ここまで「返済中の退職」について解説してきましたが、最も注意しなければならないのが、「住宅ローンの本審査に通過した後、融資が実行される(家のお金が振り込まれる)までの退職」です。 なぜ融資が取り消されるのか 住宅ローンの審査は、あくまで「現在の勤務先で、現在の年収が継続すること」を前提に行われています。融資実行前に退職してしまうと、審査の前提条件が崩れたとみなされ、再審査が必要になります。 特に、転職直後で試用期間中であったり、独立直後で収入実績がなかったりする場合、返済能力が不安定と判断され、結果的に「否決(融資不可)」となるケースが少なくありません。 やむを得ず退職・転職する場合 どうしても融資実行前に環境が変わる場合は、隠さずに早めに金融機関へ相談しましょう。事後報告になると「虚偽の申告」とみなされ、契約解除となるリスクもありますが、事前に相談することで、転職先の条件(同業種でのキャリアアップなど)によっては再審査に通る可能性もあります。 関連記事はこちら住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介 まとめ 住宅ローンの返済中に退職・転職しても、毎月の返済が滞りなく行われていれば、即座に一括返済を求められたり家を追い出されたりすることはありません。ただし、金融機関への報告は契約上の義務であり、将来の信頼関係にも関わるため、速やかに届け出ることが大切です。 退職によって返済が厳しくなりそうなときは、以下の3つのステップを検討してください。 金融機関への相談 返済期間の延長などの条件変更(リスケジュール)を相談する。 借り換えや追加ローンの検討 低金利な住宅ローンへの借り換えや、不動産担保ローン(一本化など)を活用して、毎月の返済額や資金繰りを改善する。 家を売却して住居費を見直す 任意売却やリースバックなどの方法を用いて家を売却し、売却代金でローンを完済して生活を再建する。 退職は人生の大きな転機です。住まいの不安を1人で抱え込まず、早めに専門家や金融機関へ相談することが、無理のない返済と安定した生活を守るための第一歩となります。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンを滞納したらどうなる?対処法も併せて解説 収入の減少や、まとまった支出の発生で、住宅ローンが払えなくなってしまう人もいるでしょう。住宅ローンを滞納すると、自宅が競売にかけられる恐れがあります。住宅ローンの返済が苦しいと感じたら、なる...
地震による被害に備えるため、建物だけでなく家財補償も重要です。しかし、地震保険で家財がどこまで守られるのか、補償範囲や保険金額の仕組みを正しく理解していないと、「保険金が支払われない」という事態になりかねません。 この記事では、地震保険で「実際にいくら保険金が支払われるのか(査定基準)」や、「テレビが1台壊れただけでも補償対象になるのか」といった、よくある疑問について解説します。地震保険の基本的な仕組みや火災保険との違いについては、以下の記事をご参考にしてください。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 地震保険で家財は補償される?基本の仕組みと補償範囲 地震保険は単独では契約できず、必ず火災保険とセットで加入する仕組みです。契約の形は次の3パターンから選べます。 建物のみ :建物だけを補償 家財のみ :家財だけを補償 建物+家財:建物・家財を補償 ここで注意したいのは、建物の地震保険に加入していても家財は自動的に補償されないという点です。まずは、どのようなものが「家財」として補償対象になるのか確認しましょう。 地震保険で補償される家財の具体例 地震保険で補償される家財は、居住用建物に収容されている生活用動産(普段の生活に使う動かせるもの)です。具体的には次のようなものが対象になります。 家電製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなど) 家具(ベッド、ソファ、タンス、食器棚など) 衣類・寝具 食器・調理器具 これらは日常生活に欠かせない「動かせるもの」です。逆に、キッチンや浴槽、備え付けのクローゼットなどの動かせない設備は「建物」の一部として扱われ、家財補償の対象外となります。 地震保険で補償されない家財と対象外になる理由 地震保険で補償されない家財には、次のようなものがあります。 自動車・バイク(総排気量125cc以下の原動機付自転車を除く) 現金や通貨類(小切手、株券、商品券など) 印紙・切手 高額な貴金属・宝石・骨とう品(1個または1組で30万円超) データやソフトウエア(パソコン内部のデータなど) これらが対象外となる理由は、価値の評価が難しいことや、地震による損害の確認が困難なためです。 特に注意が必要なのは「自動車」です。通常の自動車保険(車両保険)でも、地震・噴火・津波による損害は原則として補償されません。車を守るには、自動車保険に「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」などの特約を付帯する必要があります。 地震保険の家財補償はいくら?損害認定の仕組み 「家財が壊れたら修理代が出る」と思っている方もいるかもしれませんが、地震保険は実損払い(修理費の支払い)ではありません。保険金は、損害の程度に応じて定められた割合で支払われる仕組みです。 地震保険で補償される家財の支払基準 地震保険では、保険の対象である家財全体の時価に対する損害額の割合に応じて、次の4段階で認定されます。 損害の程度 認定基準(家財全体の時価に対する損害額) 支払われる保険金 全損 80%以上 地震保険金額の100%(時価額が限度) 大半損 60%~80%未満 地震保険金額の60%(時価額の60%が限度) 小半損 30%~60%未満 地震保険金額の30%(時価額の30%が限度) 一部損 10%~30%未満 地震保険金額の5%(時価額の5%が限度) ※平成29年1月1日以降保険始期の地震保険契約の場合 出典)財務省「地震保険制度の概要」をもとに筆者作成 重要なのは、「家財全体の中でどれくらいの割合が被害を受けたか」で判断されるという点です。食器や家具、家電などをカテゴリーごとに分類し、それぞれの被害状況をポイント化して算出します。 「1点だけ壊れた」では保険金が出ない理由と仕組み 地震保険は損害割合で認定されるため、家財の場合は1つだけ壊れても基準に達しない場合があります。例えば、地震により数十万円する大型テレビが壊れても、他の家財が無事なら損害割合が10%未満となり、「一部損」にも該当せず保険金は支払われません。「1点壊れたら補償される」という誤解に注意しましょう。 保険金が支払われないその他のケースと注意点 損害認定の基準以外にも、次のようなケースでは補償対象外となります。 地震発生日の翌日から10日経過後に生じた損害 時間が経過すると、地震との因果関係の証明が難しくなるためです。 紛失や盗難による損害 地震の混乱に乗じた盗難や、避難中の紛失は補償されません。 家財にも地震保険は必要?加入判断のポイント 建物への地震保険だけでなく、家財も補償対象にすべきかどうかは、次のポイントで判断しましょう。 生活再建に必要な自己資金を備えているか 被災後の生活では、避難費用や仮住まいの確保に加え、冷蔵庫や洗濯機、衣類などの買い直しに数十万円~百万円単位の出費が発生することもあります。これらの費用を貯蓄で賄えない場合は、家財を対象とした地震保険加入を検討しましょう。 高額な家財を所有しているか 大型家電や高級家具など、生活を構成する家財の総額が高い世帯ほど、被災時の経済的ダメージは大きくなります。家財の評価額(時価)を試算し、失った場合のインパクトを把握することが重要です。 地震保険に加入したらいくら受け取れるか 地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で設定されます(家財の上限は1,000万円)。例えば、家財の再調達価額が1,000万円の場合、火災・地震保険金額は以下のようになります。 火災保険金額:1,000万円 地震保険金額:最大500万円(50%設定の場合) つまり、地震保険だけでは生活を完全に元通りにすることはできません。地震などが起きた場合に「全額は出ないが、当面の生活再建費として数百万円が下りれば助かるかどうか」という視点で判断しましょう。 関連記事はこちら家財保険とは?補償内容と必要性を解説 まとめ 地震保険の家財補償は、被災後の生活を立て直すための重要な資金源になります。しかし、「自動車や現金は対象外」「1点だけ壊れても保険金が出ない場合がある」など、仕組みを正しく理解していないと期待した補償が受けられないこともあります。 加入を検討する際は、次の3つの視点で判断しましょう。 自己資金で生活再建が可能か 高額な家財を所有しているか 保険金額の上限を把握したうえで、生活再建にその資金が必要か 地震保険だけで「元通りの生活」を完全に取り戻すことはできませんが、数百万円の補償があることで生活再建の負担を大きく減らせる可能性があります。ご自身の家財の量や貯蓄額を確認し、必要な備えを検討してみてください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...
日本は世界有数の地震多発国です。万が一の被災後に生活を立て直すため、地震保険は重要な備えといえます。しかし、「保険料の負担が大きい」「建物が耐震化されているから大丈夫」といった理由で、加入を迷う人も少なくありません。 この記事では、地震保険の仕組みや公的支援の限界、保険料の決まり方などを整理し、自分にとって必要かどうか判断できる情報をわかりやすく解説します。 地震保険の必要性と補償の仕組み 地震保険が必要かどうか判断するためには、過去の被害状況と補償の仕組みを理解することが重要です。 過去の大地震と住宅被害の実態 日本では過去30年で、震度6~7の大地震が全国各地で発生しています。 出典)一般社団法人日本損害保険協会「地震保険」 直近では、2024年1月1日に発生した能登半島地震(最大震度7)において、以下のような甚大な被害が出ました。 住家全壊:6,536棟 半壊 :23,693棟 一部破損:135,122棟 このように、耐震住宅でも被害を免れないケースが多く、地震保険の必要性は高いといえます。 出典) ・気象庁「日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)」 ・内閣府 防災情報のページ「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」 地震保険の補償範囲と保険金額 地震保険は、火災保険では補償されない地震・噴火・津波による損害を対象とします。損害の程度に応じて、保険金は次のとおり支払われます。 損害の程度 支払われる保険金 全損 地震保険金額の100%(時価額が限度) 大半損 地震保険金額の60%(時価額の60%が限度) 小半損 地震保険金額の30%(時価額の30%が限度) 一部損 地震保険金額の5%(時価額の5%が限度) 出典)損害保険料率算出機構「地震保険基準料率」 重要な点は、地震保険の保険金額は、火災保険の30~50%の範囲内で設定する必要があることです。また、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限額となります。 つまり、建物が全壊しても、地震保険の保険金だけでは再建費用を全額カバーできません。これは、地震は一度に広範囲で甚大な被害をもたらすことがあり、民間の保険会社だけでは保険金の支払いを賄いきれなくなるリスクがあるためです。 そのため、地震保険は国と保険会社が共同で運営し、万が一の際も確実に保険金が支払われるよう、あえて補償額に上限を設けて制度の安定性を維持しています。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 出典)一般社団法人 日本損害保険協会「地震保険の保険金額の設定にあたっては、どのような制限がありますか。」 公的支援制度の内容と限界 「国からの支援があるから保険は不要」と考える人もいますが、公的支援には上限があります。地震などの災害で住宅が全壊するなどの著しい被害を受けた場合、「被災者生活再建支援制度」により、最大300万円の支援金を受け取ることができます。地域によっては、自治体独自の支援制度を設けている場合もあります。 しかし、昨今の建築費の高騰を考慮すると、最大300万円の支援金だけで住宅を再建することはほぼ不可能です。地震保険は、この不足分を補うための重要な手段といえます。 出典)内閣府「公的支援制度について」 地震リスクと地震保険加入率の地域差 地震保険の必要性を判断するうえで、自分が住む地域の地震リスクを把握することは重要です。ここでは、地域別の地震リスクと地震保険の加入率を紹介します。 地震リスクが高い地域の分布 国立研究開発法人 防災科学技術研究所の「J-SHIS Map」によると、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高い地域は下図のとおりです。 出典)国立研究開発法人 防災科学技術研究所「J-SHIS Map」 中でも千島海溝に面している北海道東部、南海トラフ地震が想定される九州から四国、関東までの太平洋側地域の地震リスクが特に高いことがわかります。 地震保険加入率の都道府県別データ 損害保険料率算出機構のデータによると、地震保険の世帯加入率は地域によって大きく異なります。 出典)損害保険料率算出機構「地震保険 世帯加入率」 2024年のデータでは、最も加入率が高いのが宮城県の53.5%、次いで愛知県の44.8%、熊本県の43.4%となっており、過去に大地震を経験した地域やリスクが高いとされる地域で加入率が高い傾向にあります。 ※上記統計は、居住用建物および家財を対象として損害保険会社が取り扱っている「地震保険」のみの数値であり、各種共済については含みません。 地震保険料を決める建物構造と耐震性能 地震保険の保険料は、所在地と建物構造によって大きく変わります。さらに、耐震性能による割引制度を活用すれば、負担を大きく減らすことが可能です。 地震保険料の決定要因|所在地と建物構造 地震保険料は、建物の所在地(都道府県)と建物の構造区分(イ構造・ロ構造)によって決まります。 【年間保険料の例】(注)契約金額1,000万円当たり(割引適用なしの場合) 建物の所在地(都道府県) 建物の構造区分 イ構造(主として鉄骨・コンクリート造) ロ構造(主として木造) 北海道・青森県・岩手県・秋田県・山形県・栃木県・群馬県・新潟県・富山県・石川県・福井県・長野県・岐阜県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・鹿児島県 7,300 円 11,200 円 宮城県・福島県・山梨県・愛知県・三重県・大阪府・和歌山県・香川県・愛媛県・宮崎県・沖縄県 11,600 円 19,500 円 茨城県・徳島県・高知県 23,000 円 41,100 円 埼玉県 26,500 円 41,100 円 千葉県・東京都・神奈川県・静岡県 27,500 円 41,100 円 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を」 東京・神奈川など地震リスクが高い地域は保険料も高額で、さらに木造住宅は鉄骨造より約1.5倍~2倍高い傾向があります。加入前に、自分の居住エリアと建物構造を確認し、年間保険料の目安を把握しておきましょう。 耐震性能による地震保険料の割引制度 建物に所定の免震・耐震性能がある場合、以下の割引制度を利用して保険料の負担を減らすことができます。 制度 割引率 要件 免震建築物割引 50% 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく免震建築物である場合 耐震等級割引・耐震等級3 50% 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)又は国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有している場合 耐震等級割引・耐震等級2 30% 耐震等級割引・耐震等級1 10% 耐震診断割引 10% 地方公共団体等による耐震診断又は耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年(1981年)6月1日施行)における耐震基準を満たす場合 建築年割引 10% 昭和56年(1981年)6月1日以降に新築された建物である場合 出典)政府広報オンライン「被災後の生活再建を助けるために。もしものときの備え「地震保険」を」 ※割引制度の適用を受けるためには、所定の確認資料の提出が必要です。 ※上記の割引は重複して適用することはできません。 新築や耐震等級が高い住宅なら、保険料は半額になる可能性があります。加入前には、免震建築物割引や耐震等級割引など、適用できる割引条件を必ず確認しましょう。 地震保険加入判断のためのチェックポイント ここまでの情報を踏まえ、地震保険に加入すべき人の特徴を整理します。 自己資金と住宅再建費用の関係 自宅が全壊した場合、公的支援(最大300万円)だけでは再建費用を賄うことはほぼ不可能です。預貯金や自己資金で建て直しや仮住まいの費用をカバーできない場合、地震保険の必要性は非常に高いといえます。 地震リスクが高い地域での備え 南海トラフ地震など、マグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率は70~80%と予測されています。地震リスクが高い地域に住んでいる場合、経済的な備えとして地震保険は重要です。 ただし、地震は予測できないため、リスクマップだけで判断せず、万が一に備える姿勢が必要です。 家財の損害と地震保険の必要性 地震保険は建物だけでなく、家財も補償対象です。高額な家具や家電が多い場合、損害額も大きくなるため、家財を対象とした地震保険の加入も検討しましょう。 地震補償保険などで不足分を補う方法 通常の地震保険は火災保険の最大50%までしか補償されません。住宅ローンが残っている場合や、元の生活水準を維持したい場合は、地震補償保険などの上乗せ商品や地震保険に追加できる上乗せ特約を検討することが有効です。これにより、再建費用を確実に確保できます。 ※筆者作成 まとめ 日本は世界有数の地震多発国であり、過去には幅広い地域で震度6~7規模の大地震が発生しています。公的支援制度だけで自宅を再建するのは難しく、十分な自己資金がない場合は地震保険の必要性は非常に高いといえます。 ただし、地震保険は火災保険の最大50%までしか補償されません。備えが不十分と感じる場合は、地震補償保険などの上乗せ商品や地震保険に追加できる上乗せ特約を検討し、再建費用を確保することが安心につながります。万が一に備えるため、保険料の目安や割引制度を確認し、自分に合った補償を選ぶことが生活再建のカギとなります。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。 SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 新耐震基準とは?中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント 日本は世界でも有数の地震の多い国であり、住宅の「耐震性」は、安心して暮らすために欠かせない重要な要素です。特に中古住宅を購入する際には、その建物がどの耐震基準に基づいて建てられているかを確認...
地震保険料控除は、年末調整や確定申告で適用できる所得控除制度のひとつです。地震保険料を支払っている方が一定の条件を満たすことで、所得税や住民税の課税所得から控除され、税負担を軽減できます。 この記事では、制度の概要・対象条件・控除額の計算方法・証明書の取得手順・記入例・注意点まで、わかりやすく解説します。 地震保険料控除とは?制度概要と対象条件 地震保険料控除は、1月1日から12月31日までの1年間に支払った地震保険料に応じて、所得税や住民税の課税所得から一定額を差し引ける制度です。これにより、地震への備えをしながら税負担を軽減できます。 この制度は、2006年の税制改正で「損害保険料控除」が廃止されたことを受け、2007年1月から新たに導入されました。地震保険に加入している方は、年末調整や確定申告でこの控除を適用することで節税効果が得られます。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 控除の対象となる契約条件 地震保険料控除を受けるには、次の条件を満たす必要があります。 居住用として常時使用する建物、または生活に必要な家財が補償対象であること 契約者本人、または生計を一にする配偶者や親族が所有する建物や家財であること なお、空き家やセカンドハウスなど、居住用として使用していない不動産は対象外です。申告前に契約内容を必ず確認しましょう。 出典)国税庁「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」 旧長期損害保険契約の経過措置 2006年12月31日以前に契約した「長期損害保険契約」は、以下の条件をすべて満たす場合に限り、経過措置として控除対象となります。 契約日が2006年12月31日以前であること 保険期間又は共済期間が10年以上で、満期返戻金等があること 2007年1月1日以降に契約内容の変更(異動)を行っていないこと この経過措置は、古い契約を継続している方にとって重要なポイントです。自身が加入している地震保険がどちらに該当するのか確認するようにしましょう。 出典) ・国税庁「No.1145 地震保険料控除」 ・国税庁「地震保険料控除に関する経過措置」 地震保険料控除の金額と計算方法 地震保険料控除の控除額は、契約の種類によって異なります。「地震保険契約」と「旧長期損害保険契約(経過措置)」で計算方法が変わるため、以下で詳しく解説します。 地震保険契約の場合 2007年以降に契約した地震保険はこちらに該当します。控除額は、年間の支払保険料に応じて次のように決まります。控除額には上限があり、5万円を超える部分は一律で5万円となります。 税の種類 年間の支払保険料 控除額 所得税 5万円以下 支払保険料全額 5万円超 一律5万円 住民税 5万円以下 支払保険料×1/2 5万円超 一律2万5,000円 旧長期損害保険契約(経過措置)の場合 2006年12月31日以前に契約した長期損害保険契約は、一定条件を満たす場合に限り控除対象です。控除額は次のとおりです。旧契約は控除額の計算が複雑なので、証明書に記載された金額をよく確認するようにしましょう。 税の種類 年間の支払保険料 控除額 所得税 1万円以下 支払保険料全額 1万円超2万円以下 支払保険料×1/2+5,000円 2万円超 一律1万5,000円 住民税 5,000円以下 支払保険料全額 5,000円超1万5,000円以下 支払保険料×1/2+2,500円 1万5,000円超 一律1万円 両方の契約がある場合の上限 地震保険契約と旧長期損害保険の両方を契約している場合、それぞれの控除額を合算できます。ただし、合算後の上限額は所得税が5万円、住民税が2万5,000円です。複数契約がある場合でも、上限を超える控除はできないので注意しましょう。 出典) ・国税庁「No.1145 地震保険料控除」 ・東京都主税局「個人住民税(地震保険料控除)」 【早見表】支払い保険料ごとの控除額シミュレーション ご自身の「地震保険料控除証明書」に記載されている「年間支払保険料」を以下の表に当てはめると、所得控除される金額の目安がわかります。 ※ここでは一般的な「地震保険契約(2007年以降の契約)」の場合を記載しています。 ■地震保険料控除額 早見表 年間の支払い保険料 所得税の控除額 住民税の控除額 10,000円 10,000円 5,000円 20,000円 20,000円 10,000円 30,000円 30,000円 15,000円 40,000円 40,000円 20,000円 50,000円以上 50,000円(上限) 25,000円(上限) 60,000円以上 50,000円(上限) 25,000円(上限) 所得税では支払った保険料の全額(最高5万円)、住民税では半額(最高2万5,000円)が控除額となります。 そのため、年間保険料が5万円を超えている場合、それ以上いくら支払っても控除額は上限(所得税5万円、住民税2万5,000円)で固定される点に注意しましょう。 また、上記の表で算出されるのは、あくまで税金の計算元となる所得から差し引かれる「控除額」です。この金額がそのまま手元に戻ってくるわけではありません。実際の節税効果(還付額)は、ご自身の年収(所得税率)によって異なります。正確な還付金額については、源泉徴収票を確認するか、所轄の税務署へお問い合わせください。 地震保険料控除証明書の取得方法と提出書類 地震保険料控除を受けるためには、保険会社が発行する「地震保険料控除証明書」が必須です。証明書がないと控除を適用できないため、手元に届いているか必ず確認しましょう。 控除証明書の取得方法 地震保険料控除を受けるには、保険会社から発行される「地震保険料控除証明書」が必要です。一般的に、毎年10月頃に保険会社から契約者宛てにハガキ形式などで郵送されます。もし手元に届かない場合や紛失した場合は、速やかに保険会社のホームページやコールセンターを通じて再発行を申し込みましょう。 また、一部の保険会社では電子データでの交付にも対応しています。e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用する場合は、電子データの活用が便利です。 年末調整と確定申告での提出書類の違い 地震保険料控除を受けるには、会社員などが勤務先で行う「年末調整」と、自営業者などが自身で行う「確定申告」の2種類のどちらかの手続きが必要です。 年末調整 勤務先に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に、保険会社名や支払保険料、控除額などを記入し、控除証明書を添付して提出します。 確定申告 確定申告書の第一表および第二表に必要事項を記入し、控除証明書を添付して提出します。なお、マイナポータル連携を利用してe-Taxで申告する場合は、控除証明書の添付を省略可能です。 出典)国税庁「No.1145 地震保険料控除」 確定申告における地震保険料控除の記入例 ここでは、年間の地震保険料と控除額が「25,000円」の場合を例に、確定申告書の記入箇所を解説します。 確定申告書(第一表)の記入例 下図左側の「所得から差し引かれる金額」の項目にある「地震保険料控除」の欄に、控除額「25,000」を記入します。 確定申告書(第二表)の記入方法 「保険料等の種類」の欄にある「地震保険料控除」の箇所に、地震保険料「25,000」を記入します。 e-Taxの入力手順 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って金額を入力するだけで、自動的に控除額が計算され、確定申告書に反映されます。「控除の入力」画面にある「地震保険料控除」の項目から手続きを進められます。 出典) ・国税庁「令和6年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」 ・国税庁「令和6年分確定申告書作成コーナー(地震保険料を支払った場合)」 地震保険料控除に関する注意点とよくある間違い 確定申告の内容に誤りがあると、税務署から確認の連絡がきたり、修正申告が必要になったりする場合があります。以下の点に注意しましょう。 火災保険料部分は控除対象外 地震保険は多くの場合、火災保険とセットで契約しますが、控除の対象となるのは「地震保険料」の部分のみです。火災保険料は地震保険料控除の対象にはなりません。控除証明書の控除対象保険料をよく確認し、金額を間違えないよう注意しましょう。 一括払い契約の控除額計算 長期契約で保険料を一括払いしている場合、その年に控除できるのは「1年分相当」の保険料のみです。この場合、控除対象額は「一括払い保険料 ÷ 保険期間(年)」で算出します。 正確な金額は、毎年送付される控除証明書に記載されています。 店舗併用住宅の控除額計算 店舗や事務所と自宅が一体となった「店舗併用住宅」の場合、控除対象となるのは「居住用部分」のみです。建物全体に対する保険料ではなく、「地震保険料 × 住居部分の延床面積 / 建物全体の延床面積」で算出した金額をもとに申告する必要があります。 ただし、住居として使用している面積が建物全体の90%以上である場合は、居住専用とみなされ、地震保険料の全額を控除対象とすることができます。 出典)国税庁「法第77条《地震保険料控除》関係」 地震補償保険が控除対象外となる理由 地震への備えとして、単独で加入できる「地震補償保険」という商品(保険会社により名称は異なります)がありますが、これは税制上の地震保険料控除の対象外です。 出典)国税庁「No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約」 地震保険との違いと補償範囲 地震補償保険(保険会社により名称は異なります)は、民間保険会社が提供する任意の補償商品であり、公的制度である「地震保険」とは異なります。地震保険は法律に基づき、火災保険とセットで契約し、補償額や条件に制限があります。 一方、地震補償保険は、地震保険の不足分を補うために設計されており、補償範囲や金額は保険会社ごとに異なります。 なぜ税制優遇がないのか 控除のメリットがないにもかかわらず検討される背景には、公的な仕組みである「地震保険」特有の補償限度額があります。 通常の地震保険は、法律により「火災保険金額の30%~50%」の範囲内でしか設定できません。また、建物は5,000万円、家財は1,000万円という上限もあります。そのため、万が一の大震災で自宅が全壊した場合でも、受け取れる保険金は最大で建物の再調達価格の半額程度にとどまります。 こうした「地震保険だけではカバーしきれない費用」への備えとして、上乗せで保険金を受け取れる地震補償保険が存在します。税制優遇はありませんが、リスク対策手段のひとつとして理解しておくとよいでしょう。 出典)損害保険協会「地震保険の保険金額の設定にあたっては、どのような制限がありますか。」 まとめ 地震保険料控除は、地震への備えをしながら税負担を軽減できる重要な制度です。 年末調整や確定申告で正しく申告するためには、次のポイントを押さえておきましょう。 控除対象は「地震保険料」のみ。火災保険料は対象外 毎年10月頃に届く「地震保険料控除証明書」を必ず確認 年末調整では勤務先に提出、確定申告では申告書に記入し添付 e-Taxを利用すれば控除証明書の添付を省略できる場合あり 一括払い契約や店舗併用住宅の場合は計算方法に注意 正しい手続きを行うことで、所得税は最大5万円、住民税は最大2万5,000円の控除が受けられます。控除証明書を紛失した場合は早めに再発行を依頼し、申告期限までに準備を整えましょう。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。 SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 新耐震基準とは?中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント 日本は世界でも有数の地震の多い国であり、住宅の「耐震性」は、安心して暮らすために欠かせない重要な要素です。特に中古住宅を購入する際には、その建物がどの耐震基準に基づいて建てられているかを確認...
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、16万件を超える大規模な住宅被害が発生しました。日本は地震大国であり、今後も大地震が発生するリスクがあります。地震による住宅被害を最小限に抑え、生活を再建するにはどのような備えが必要なのでしょうか。 この記事では、能登半島地震のデータをもとに、住宅被害の実態や復興の進捗、今後の課題、地震保険や防災対策の備えについて解説します。 能登半島地震による住宅被害の実態 能登半島地震では、住宅被害が16万件を超え、生活基盤に深刻な影響を与えました。特に古い木造住宅の倒壊が目立ち、耐震化の遅れが課題として浮き彫りになっています。ここでは、被害規模とライフラインへの影響を整理し、なぜこれほどの被害が発生したのかを考えます。 被害規模と住宅倒壊の状況 2024年1月1日午後4時10分、石川県能登地方でマグニチュード7.6、最大震度7の地震が発生しました。その後半年間で震度5強以上の地震が12回観測され、被害は石川県を中心に新潟・富山・福井にも広がりました。 内閣府の報告による住宅被害の状況は次のとおりです。 被害区分 棟数 全壊 6,536棟 半壊 2万3,693棟 一部破損 13万5,122棟 出典)内閣府 防災情報のページ「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」 合計16万件超の住宅が損壊し、生活再建に大きな課題を残しました。 火災発生やライフラインへの影響 地震の揺れだけでなく、二次災害も深刻でした。発生から約2か月間で火災は17件、交通網は寸断され、電気・水道などライフラインの復旧に時間を要しました。 断水 最大約13万5,000戸 停電 最大約4万4,000戸 長期の避難生活を余儀なくされた世帯も多く、災害時のライフライン確保の重要性が改めて浮き彫りになりました。 出典)内閣府 防災情報のページ「特集① 令和6年能登半島地震」 復興の進捗と現在の住まいの状況 能登半島地震の発生から1年以上が経過し、被災地は「避難」から「復旧」、そして「生活再建」へと移行しています。しかし、復興は長期化しており、高齢化や建設業者不足などの課題が影響しています。ここでは、仮設住宅の設置状況、公費解体とインフラ復旧、災害公営住宅の整備、不動産市場の変化を整理します。 仮設住宅の設置状況 生活の基盤となる住まいの確保は、復興の第一歩です。能登半島地震では住宅の全壊・半壊が相次ぎ、自力で住居を確保できない世帯に対し、災害救助法に基づく応急仮設住宅が提供されました。必要戸数6,882戸は2024年12月23日にすべて建設完了しました。 仮設住宅はプレハブ型が中心で、入居条件は「住宅が全壊し居住できない」など所定の要件を満たすことが必要です。しかし、長期入居によるコミュニティの分断や孤独問題など、生活再建には新たな課題も生じています。 出典) ・石川県「応急仮設住宅(建設型)について(災害救助法:令和6年(2024年)能登半島地震)」 ・内閣府 防災情報のページ「能登半島地震・豪雨におけるこれまでの取組と今後の対応方針について」 公費解体とインフラ復旧の現在地 仮設住宅の整備と並行して、倒壊した家屋の処理やインフラ復旧も進められています。公費解体は、所有者に代わって自治体が解体を行う制度で、放置された家屋による防災・衛生リスクを防ぐために重要です。2025年10月末時点で申請棟数約4万棟のうち95%が完了し、街の景観は「倒壊家屋」から「更地」へと変わりつつあります。 インフラについては、上下水道の応急復旧は完了しましたが、耐震化を含む本復旧は2028年度末を目標に進行中です。完全復旧まで時間を要するため、住民の帰還や生活再建には長期的な課題が残っています。 出典) ・石川県「公費解体の進捗状況(令和7年10月末)p.1」 ・国土交通省「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し (令和7年9月末時点)p.4」 災害公営住宅の整備と将来を見据えた工夫 仮設住宅の次のステップとして、恒久的な住まいとなる災害公営住宅の整備が進められています。能登半島地震では、石川県と富山県の10市町で約3,000戸の建設が計画され、2026年夏頃から順次入居が始まる予定です。 災害公営住宅は、長期的な生活再建を支える重要な施策ですが、人口減少や高齢化を踏まえた工夫も求められています。具体的には、将来的に「移住者への分譲」や「福祉施設等への転用」が可能な設計を採用するなど、資産価値を維持する取り組みが検討されています。 また、コミュニティの維持や高齢者支援のため、共用スペースや見守り体制の整備も課題となっています。 出典) ・国土交通省「令和6年能登半島地震による被災者の住まいの確保」 ・国土交通省「中長期的活用を見据えた災害公営住宅の供給上の工夫についてp.8」 ・国土交通省「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し (令和7年9月末時点)p.15」 不動産市場や賃貸需要の変化 震災は地域の不動産市場にも大きな影響を与えています。国土交通省の「令和7年地価公示」によると、石川県全体では住宅地の地価変動率が前年比+0.6%とわずかに上昇しましたが、甚大な被害を受けた能登地方では地価が大きく下落しました。 全国の地価変動率下位10地点はすべて能登地方が占めており、被災リスクの高まりや再建コスト増、人口流出が背景にあります。賃貸市場では、震災直後に仮住まい需要が急増し、家賃の上昇や空室率の低下が見られました。 しかし、長期的には人口減少や経済活動の停滞により、空室率の上昇や家賃の下落が懸念されています。こうした不動産価値の変動は、生活再建や資産形成に大きな影響を与えるため、今後の動向を注視する必要があります。 出典) ・国土交通省「令和7年地価公示の概要 p.5,p.8」 ・公益社団法人 石川県宅地建物取引業協会「第19回不動産市況DI調査」 今後の課題と生活再建に必要な資金と支援策 能登半島地震では、公的支援や保険金が生活再建を支えましたが、受け取れる金額には限度があります。住宅再建には数千万円単位の費用がかかることもあり、資金不足や二重ローン問題が深刻化しています。ここでは、公的支援の課題と地震保険の現状を整理し、今後の備えについて考えます。 公的支援の課題と「二重ローン」のリスク 能登半島地震では「被災者生活再建支援金」や「災害援護資金」などの公的支援が用意されましたが、これだけで元の生活を取り戻すことは困難です。支援金は最大300万円、自治体の上乗せを含めても数百万円規模にとどまり、住宅再建には数千万円単位の費用がかかるケースが多いためです。 特に深刻なのが「二重ローン」の問題です。自宅が全壊しても既存の住宅ローンは免除されず、再建のために新たな借り入れを行うと返済負担が二重になります。国や自治体は「災害援護資金」の貸付や「フラット35」の返済猶予措置を設けていますが、あくまで一時的な支援であり、最終的な返済負担は残ります。 こうした現状から、生活再建には公的支援だけでなく、自助努力による備えが不可欠です。 出典) ・石川県「令和6年能登半島地震における被災者生活再建支援金について」 ・石川県「令和6年能登半島地震 被災者生活再建支援制度 市町独自制度一覧」 ・珠洲市「珠洲市住まい再建支援金」 ・内閣府 防災情報のページ「災害援護資金の貸付」 地震保険の現状と課題 能登半島地震では、地震保険の重要性が改めて浮き彫りになりました。損害保険協会によると、2024年5月31日時点の支払保険金額は約910億円、支払件数は10万3,439件に上りました。しかし、2022年度の石川県の世帯加入率は30.2%、富山県は27.0%であり、生活再建資金の不足が深刻な課題となっています。 地震保険は火災保険に付帯する形で加入しますが、補償額は火災保険の30~50%に制限され、建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円までです。再建費用を全額カバーすることはできず、保険料負担や補償額の制限が加入率の低さにつながっています。 今後は、上乗せ補償や民間保険の活用、加入促進策が課題です。次章では、地震への備えと保険の重要性をさらに詳しく解説します。 出典) ・一般社団法人 日本損害保険協会「令和6年能登半島地震に係る地震保険の 支払件数・支払保険金等について」 ・損害保険料率算出機構「2022年度 地震保険世帯加入率」 地震への備えと保険の重要性 能登半島地震では、住宅被害が16万件を超え、生活再建には公的支援だけでなく保険や自助努力が不可欠であることが明らかになりました。ここでは、地震への備えとして、ハザードマップの活用、保険の見直し、経済的な準備のポイントを整理します。 ハザードマップで災害リスクを確認する重要性 能登半島地震では、地盤の弱い地域や津波リスクのある沿岸部で住宅被害が集中しました。こうした被害を防ぐために重要なのがハザードマップです。ハザードマップは、洪水・津波・土砂災害などのリスクや避難場所、避難経路を示した地図で、自治体や国土交通省のサイトで確認できます。 マイホームを購入する際は、必ずハザードマップで災害リスクを確認し、できるだけ安全な立地を選ぶことが生活再建の第一歩です。また、現在の住まいでも避難経路や避難所を事前に把握しておくことが重要です。 関連記事はこちらハザードマップとは?使い方や活用ポイントを解説 火災保険と地震保険の違いと補償の限界 火災保険と地震保険では補償範囲に大きな違いがあります。火災保険は火災や風水害などによる損害を補償しますが、地震・噴火・津波による損害は対象外です。一方、地震保険は地震・噴火・津波を原因とする火災や損壊、埋没、流失を補償します。 ただし、地震保険の補償額は法律で制限されており、火災保険の30~50%の範囲で設定されます。建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円が上限です。これは、巨大災害時に保険金総額が膨らみすぎないよう国と民間が共同で運営しているためです。 能登半島地震では、地震保険の支払保険金額は約910億円に達しましたが、再建費用を全額カバーするには不十分なケースが多く、自己資金や追加補償の必要性が浮き彫りになりました。こうした補償の限界を理解し、上乗せ保険や資金計画を検討することが重要です。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 地震保険の加入率と見直しのポイント 地震保険の世帯加入率は2024年の全国平均で35.4%、火災保険契約における地震保険付帯率は70.4%と過去最高を記録しました。しかし、能登半島地震では加入率が低い地域で生活再建資金の不足が深刻化し、保険の重要性が改めて浮き彫りになりました。 地震保険を見直す際は、次のポイントを確認しましょう。 居住エリアのリスク ハザードマップで地震・津波・液状化リスクを確認。 再建資金の有無 自己資金だけで生活再建が可能か。 資産の保全 建物や家財が高額な場合、失った際の経済的ダメージに耐えられるか。 地震保険は火災保険の30~50%しか補償されないため、上乗せ補償や特約の活用も検討し、万が一に備えた資金計画を立てることが重要です。 出典) ・損害保険料率算出機構「2024年度 地震保険付帯率、世帯加入率」 ・損害保険料率算出機構「火災保険契約のうち70.4%が地震保険を付帯(2024年度地震保険付帯率)」 まとめ 能登半島地震の被害と復興の状況から、生活再建には公的支援だけでは不十分であることがわかります。万が一に備えて耐震補強や防災グッズの準備に加え、地震保険の見直しや資金計画を検討することが重要です。 万が一の際に資金不足に陥らないよう、今のうちから以下の対策を検討しておきましょう。 耐震補強や防災グッズの準備 ハザードマップでリスク確認 地震保険や火災保険の補償内容を見直す 上乗せ補償や生活再建資金の計画を検討 災害はいつ起こるかわかりません。物理的・経済的な備えの両面から、ご家族の暮らしを守る準備を始めましょう。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 保険料は月々1,210円※から ※栃木・マンション・保険金額300万円タイプの場合です。 SBIリスタ少短のWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 新耐震基準とは?中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント 日本は世界でも有数の地震の多い国であり、住宅の「耐震性」は、安心して暮らすために欠かせない重要な要素です。特に中古住宅を購入する際には、その建物がどの耐震基準に基づいて建てられているかを確認...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】2025年12月は1.97%に決定|公認会計士の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の12月金利を1.90%~1.95%と予想し、結果は1.97%となりました。 12月19日の日銀会合では、政策金利の0.75%への引き上げが決定され、約30年ぶりの水準となりました。この決定を受け、債券市場では新発10年国債利回りが2%超に急騰した一方で、為替市場では1ドル=157円の円安に振れ、金融市場全体に大きな変動が生じています。 この記事では、この環境の変化を踏まえた【フラット35】の2026年1月の金利予想を、最新データと機構への取材情報から解説します。 2026年1月の【フラット35】金利は2.08% に決定しました(更新日:2026年1月5日)。 【フラット35】2025年12月金利予想の結果と検証 2025年12月の金利は1.97%に決定 2025年12月の【フラット35】金利は1.97%に決定し、11月下旬での予想(1.90%~1.95%)をやや上回る結果です。 背景には、新発10年国債利回りと機構債の表面利率がともに0.15ポイント上昇したことがありますが、住宅金融支援機構の調整により急騰は回避されました。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 金利上昇が抑えられた要因 金利上昇が抑えられた最大の理由は、住宅金融支援機構が逆ザヤを許容して低金利を維持していることです。逆ザヤとは、機構債の「仕入金利」が【フラット35】の貸出金利を上回る状態を指します。 この状態は2025年6月に初めて確認され、たいそう驚いたものですが、直近の2025年12月では逆ザヤの幅が0.33ポイントまで拡大しています。つまり、住宅金融支援機構は収益を犠牲にしてでも、急激な【フラット35】金利上昇を利用者に転嫁しない方針を取っています。 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 月 機構債表面利率(機構債発表日) フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%(5月22日)1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%(6月20日)1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%(7月18日)1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%(8月21日)1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%(9月19日)1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%(10月17日)1.90%-0.25ポイント 2025年12月2.30%(11月20日)1.97%-0.33ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 【フラット35】2026年1月金利予想 2026年1月の金利は1.99%~2.04%と予想 12月の日銀会合で政策金利が0.75%に引き上げられた影響で、新発10年国債利回りは会合前の1.95%前後から週明けには2.10%まで急騰しました。市場は今回の決定を「タカ派寄り」と受け止め、長期金利に強い上昇圧力がかかっています。 この国債利回りの上昇は、住宅金融支援機構が【フラット35】の資金調達に用いる機構債の表面利率にも直結します。12月時点で機構債は2.30%でしたが、1月は2.45%へ上昇。ローンチスプレッドは0.51%で横ばいです。 こうした状況を踏まえ、千日太郎の【フラット35】予想レンジは1.99%~2.04%としました。急騰局面でも、機構の「激変緩和」策により上昇幅は抑えられると見ています。 【フラット35】金利推移と2026年1月予想 2025年10月 2025年11月 2025年12月 2026年1月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 1.89% 1.90% 1.97% 1.99%~2.04%※1/5発表の金利は2.08%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:1.99%「激変緩和」 1.99%のシナリオは「激変緩和」措置への期待です。10年国債利回りの上昇に伴う機構債の表面利率の上昇を、住宅ローンの金利に反映させないことで、住宅金融の円滑化を図るというシナリオです。金利が2.00%を超えるかどうかは心理的な壁として作用するため、願わくば2%台に抑えてほしいという期待も込めての予想です。 シナリオ②:2.04%「マイナス幅の限度+激変緩和」 逆ザヤの限界を考慮した場合、【フラット35】金利の理論値は2.12%ですが、前月比で+0.15ポイントの急上昇は避けたいところです。そこで、「激変緩和」により上昇幅を+0.07ポイント程度に抑え、2.04%とするシナリオです。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移 主要データ(2025年12月22日時点) 機構債発表日 2025年9月19日 2025年10月17日 2025年11月20日 2025年12月17日 機構債の表面利率(※1) 2.12% 2.15% 2.30% 2.45% 新発10年国債利回り(※2) 1.61% 1.64% 1.79% 1.94% ローンチスプレッド(※1) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】2026年1月金利予想の背景要因と機構の戦略 千日太郎の予想として、今回は「市場金利は急上昇したが、フラット35の金利上昇は最小限に抑えられる(1.99%~2.04%)」と見ています。その根拠は、金利決定に影響する3つの要素を分析した結果です。 市場要因(上昇要因) 機構債の表面利率(上昇要因) 機構債の戦略的判断(抑制要因:逆ザヤとE55債) それぞれの動きを順に見ていきます。 市場要因(国債利回り・ローンチスプレッド) まず、金利のベースとなる「新発10年国債利回り」は、日銀の利上げを受けて1.79%から1.94%へ0.15ポイント上昇しました。 一方で、投資家の期待利回りである「ローンチスプレッド(国債との金利差)」は、直近3ヶ月間0.51%で横ばいを維持しています。 これは、国債の金利が上がった分だけ、機械的に調達コスト(機構債)も上がったことを意味します。 機構債の表面利率の動向 住宅金融支援機構の資金調達コストにあたる「機構債の表面利率」は、2.30%から2.45%へ0.15ポイント上昇しました。 通常であれば、仕入値(機構債)の0.15ポイントの上昇を売値(フラット35)に転嫁し、【フラット35】金利は2.12%まで上がる計算です。しかし、今回はそこまでは上がらないと予想しています。その理由が次の要素です。 機構の戦略的判断 住宅金融支援機構は以下の2つの手段で金利上昇を抑えていると考えられます。 ①「逆ザヤ」の許容(短期的対策) 2025年12月の逆ザヤ幅は-0.33ポイントと過去最大に達しました。ここから、急激な金利上昇(激変)を緩和するために、逆ザヤ幅を維持、あるいは一時的に拡大させてでも、急激な金利転嫁を防ぐはずです。 ②「E55債」による調達コスト圧縮(中長期的対策) 赤字(逆ザヤ)を垂れ流し続けることはできません。そこで切り札となるのが、新たな資金調達手段「E55(イーゴーゴー)債」です。 E55債の概要と特徴 2025年11月に、住宅金融支援機構への直接取材でその実務面を聞く機会を得ました。E55債は、長期金利が上昇する環境下でも低金利の住宅ローンを提供するために開発された新たな資金調達方法です。2025年10月発行分では、通常の機構債よりも実際に低コストでの調達を実現しています。 E55債の概要 発表日 表面利率 10年国債利回り ローンチスプレッド 2025年10月22日1.63%1.27%0.36% ※出典)住宅金融支援機構「発行実績-E55債」 E55債が低金利で調達できる理由は、「未償還残高が一定割合(55%)を下回ると全額繰上償還される」という特殊なルールにあります。 通常の機構債 機構債の未償還残高総額が当初発行総額の10%以下になるまで、原則として全額繰上償還されません。 E55債 機構債の未償還残高総額が当初発行総額の55%以下となった場合、1年以内に全額繰上償還をする義務があります。 投資家にとっては通常の機構債よりも「早くお金が返ってくる可能性が高い」ため、リスクが低く、そのぶん低い金利でも買ってくれるのです。この仕組みにより投資家のリスクが低下し、低金利での発行が可能になります。E55債の発行が増えれば、【フラット35】の金利上昇はさらに抑えられる見込みです。 ■機構債の種類と償還ルールの違い 出典:S&P Global Ratings 住宅金融支援機構債券の概要 2025年11月17日 まとめ 12月の日銀利上げにより、市場金利は急騰しました。新発10年国債利回りは2%超、機構債の表面利率も2.45%まで上昇しています。通常であれば【フラット35】の金利は大幅に引き上げられる局面ですが、住宅金融支援機構は逆ザヤの許容とE55債による低コスト調達という戦略で、急激な上昇を抑えています。 2026年1月の予想レンジは1.99%~2.04%。心理的な「2%超え」を避ける調整が働く可能性が高く、長期固定金利の安定性は維持される見込みです。 今後もインフレや追加利上げで市場金利は上昇圧力を受けますが、【フラット35】は政策的な役割と新たな資金調達手段により、利用者にとって安心感のある選択肢であり続けるでしょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
急にまとまったお金が必要。でも住み慣れた自宅から離れたくない──そんなときに活用できるサービスとして「リースバック」があります。自宅を売却しても、そのまま住み続けられる便利な仕組みですが、インターネットで検索すると「リースバック やばい」「後悔した」という不安な声を目にすることがあります。 リースバックは、信頼のできる不動産事業者を選び、うまく活用すれば、有用なサービスとなり得ます。しかし、デメリットや注意点を把握しないまま利用してしまうと、あとから後悔する恐れがあります。 この記事では、リースバックがやばいと言われる理由や知っておくべきデメリット、後悔しないための対策についてわかりやすく解説します。この記事を読めば、リースバックの不安を解消し、安心して賢い選択ができます。 そもそもリースバックとは? リースバックとは、自宅を売却した後、賃貸契約を結びそのまま同じ家に住み続けられる仕組みです。まとまった資金が必要なときや、老後の生活費を確保したいときに利用されることが多いです。詳しい仕組みやメリットや活用事例については以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 なお、リースバックとよく比較される商品に「リバースモーゲージ」があります。どちらも資金調達の手段という点では共通していますが、仕組みや対象年齢などに違いがあります。詳しい比較は以下の記事で解説しています。 関連記事はこちらリースバック・リバースモーゲージ・リ・バース60の違いを徹底比較 なぜリースバックは「やばい」と言われるのか まず、リースバックが「やばい」と言われる背景について、代表的なポイントを整理します。リースバックが不安視される理由を知ることで、情報の真偽を見極めやすくなります。 情報が少なく仕組みがわかりにくい リースバックというサービスの仕組み自体は、不動産の売買契約と賃貸借契約という世間でも広く認知されている契約に基づいた体系です。しかし、この売買と賃貸借という契約が複合的に行われていることが、仕組みをわかりにくくしている要因の一つです。 また、リースバックはまだ普及して間もないサービスであるため、国や地方自治体で設けている制度や仕組みに関する情報が、まだ十分に浸透しているとは言えません。 そのため、初めて聞く人にとっては「売却しても住み続けられる」という仕組みを理解できず、中には不透明に感じる人もいると考えられます。 一部の不動産事業者によるトラブル事例がある さまざまなメディアでも取り上げられるように、過去には一部の不動産事業者による不適切な対応や契約トラブルが報告されています。こうした事例は決して多くはないものの、金銭が絡む取引であるため、利用者にとって大きな不安要素となっています。 想定外の条件で後悔する人がいる リースバックは契約時にまとまったお金を手に入れて、以後家賃を支払っていくという仕組みですが、契約後に「家賃の支払いが想定より厳しかった」など、事前計画が甘く後悔する場合もあります。この後、注意すべきデメリットについて詳しく解説します。 知っておくべきリースバックのデメリット リースバックはうまく活用すれば便利な仕組みですが、契約内容によっては思わぬ落とし穴があります。ここでは、後悔しないために知っておくべきデメリットを詳しく解説します。 家賃が高くなる リースバックでは、周辺の賃料相場だけでなく、不動産の売却価格とのバランスで家賃が決まります。売却価格が高いと家賃も高くなる傾向があるため、注意が必要です。 また、契約後に固定資産税の上昇や、土地、建物の価格上昇などの理由から、家賃の引き上げを求められる場合もあります。契約書の内容を事前に確認し、担当者に不明点を必ず確認しましょう 家賃について納得しておかないと、「資金が多めに手に入ったところまでは良かったが、結局毎月の支払いが大変」という後悔につながる恐れがあります。リースバックの家賃設定については以下の記事で詳しく解説しているので、契約前に必ず確認しましょう。 関連記事はこちらリースバックの家賃設定を解説!家賃相場よりも高い? 売却価格が市場価格より安くなる リースバックにおける売却価格は基本的に市場価格70%前後まで下がることが一般的です。これは、買主である不動産事業者が、借主の家賃滞納リスクや、購入後も不動産を自由に扱えない制約を抱えることなどが要因です。 さらに、不動産事業者によっては、相場価格よりも大幅に低額な売却価格を提示する場合もあります。そのため、リースバックを利用する際は、必ず複数の不動産事業者に相談し、売却価格を比較しておきましょう。 こうした確認を十分にしないと、「本当はもっと高く売れたのではないか」という後悔につながる恐れがあります。 長期的に住み続けられない場合がある 賃貸借契約は、「定期借家契約」と「普通借家契約」に分類されます。定期借家契約の場合、当初の契約期間が終了すると貸主と借主の双方の合意がないと再契約できず、住み続けることができません。 一方、普通借家契約は借主の希望のみで更新が可能ですが、リースバックにおいては、定期借家契約を採用している場合が多いため注意が必要です。 「ずっと住めると思っていたのに、契約期間が終わったら退去しなければならなかった」という後悔を防ぐためには、契約形態を必ず確認しましょう。長期的な居住を希望する場合は、普通借家契約を選べるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? 買い戻しが難しい場合がある リースバックでは「将来、家を買い戻したい」と考える人も少なくありません。しかし、契約条件によっては買い戻しができない場合があります。買い戻しが可能な場合でも、売却時より高い価格が設定されることが多く、資金計画を誤ると大きな負担になります。 さらに、買い戻しの条件は事業者ごとに異なり、契約書に明記されていないケースもあります。「買い戻せると思っていたのに、実際はできなかった」という後悔を防ぐためには、契約前に必ず契約書に記載されている買戻し条件を確認し、将来の資金計画も含めて慎重に判断しましょう。 関連記事はこちらリースバックは買い戻しできる?仕組みや買い戻し価格の目安を解説 リースバックを利用する際の注意点 リースバックを利用する際には、以下のポイントをチェックしましょう。 信頼できる不動産事業者を選ぶ 事前に契約内容を確認する 複数の不動産事業者を比較する リースバックを利用する際には、サービス利用後の資金計画も大切です。賃料を支払いながらどれくらいの期間住み続けられるか、老後の資金計画に影響がないかなど、長期的な視点で判断しましょう。 信頼できる不動産事業者を選ぶ リースバックを安心して利用するためには、信頼できる不動産事業者を選びましょう。特に取扱実績の多い大手企業は、契約内容が明確で、トラブルが発生した場合でも適切に対応してくれるため、安心して任せられます。 また、事前に口コミや評判をチェックし、信頼性を確認しておくことも忘れないようにしましょう。信頼できる不動産事業者を選ぶことで、不透明な条件や不利な契約を避けられます。 事前に契約内容を確認する リースバックの契約には、売買価格や賃料、買い戻し条件などの経済条件のほか、賃貸借の期間や維持費用など重要な内容が多く含まれています。特に目先の倍場価格ではなく、賃料の値上げや違約金については、事前にしっかりと確認しておく必要があります。 他にも、居住期間中には修繕費用や退去時の原状回復費用が発生することもあります。築年数の古い物件は修繕費が高額になることがあるため、事前に費用やどちらが負担するのかを確認しておくと安心です。 複数の不動産事業者を比較する 上述のようにリースバックの仕組みは、不動産売買契約と不動産賃貸借契約という二種類の契約から成っています。ただし、同じリースバックでも不動産事業者によって、売買に関連して買戻し条項(不動産売買予約契約)の有無や、不動産賃貸借契約が普通借家契約なのか定期借家契約なのかなど、条件面で違いがあります。 サービスの利用時には、わかりやすい「売買価格」や「家賃」に着目してしまいますが、その裏には様々な条件が設けられており、一社だけで判断することは難しいでしょう。そのため、必ず複数の不動産事業者に問い合わせをして、経済条件や会社・担当者の信頼性を見極める必要があります。 まとめ リースバックは、自宅を売却しながら住み続けられる便利な仕組みですが、契約内容や条件を十分に理解しないまま利用すると、後悔やトラブルにつながる恐れがあります。 安心して利用するためには、信頼できる事業者を選び、契約書の内容を細部まで確認することが不可欠です。この記事で紹介した注意点を参考に、複数の業者を比較し、納得できる条件で契約するかどうかを慎重に判断しましょう。 Appendix:国土交通省ガイドブック リースバックを検討する際は、国土交通省が公開している「住宅のリースバックに関するガイドブック」も参考になります。このガイドブックでは、契約時の確認不足によるトラブルを防ぐため、以下の点に注意するよう呼びかけています。 違約金や解約条件を事前に確認する 賃料や契約期間の取り決めを明確にする 契約内容は必ず書面で確認する 営業トークを鵜呑みにせず、家族や専門家に相談する また、以下の記事でもリースバックのトラブル事例と対策について詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。 関連記事はこちらリースバックのトラブル事例と後悔しないためのポイントを解説 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。 ※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックのよくあるご相談7選 リースバックは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。老後資金を確保したい高齢者を中心に、リースバックの利用者...
「住宅ローンは1人につき1本だけ」と思っていませんか? 実は、返済期間の異なる2本のローンを組み合わせることで、将来の返済負担を軽減できる方法があります。 それが、住宅金融支援機構が提供するフラット35「ダブルフラット」という制度です。この記事では、ダブルフラットの仕組みやメリット、注意点を解説します。 フラット35「ダブルフラット」の仕組みとは? 一般的には「住宅ローンは1人につき1本」が基本ですが、金融機関によっては複数のローンを組み合わせることも可能です。代表的な例が「ミックスローン」で、固定金利と変動金利を組み合わせたり、返済期間を分けたりすることで、柔軟な返済プランが設計できます。 ダブルフラットは、返済期間の異なる2本のフラット35を組み合わせて利用する住宅ローンです。例えば、返済期間が最長20年のフラット20と最長35年のフラット35を組み合わせることで、将来の返済額を減らすことができます。 そのほかにも、フラット35を2本組み合わせたり、フラット20を2本組み合わせたりすることもできます。なお、フラット20は、返済期間が15年以上20年以下のフラット35商品です。一度20年以下で契約すると、後から21年以上に変更することは原則できません。 出典) ・【フラット35】「ダブルフラット」 ・【フラット35】「【フラット35】」 ・【フラット35】「【フラット20】」 ダブルフラットの利用条件と金利の仕組み ダブルフラットを利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、申込者の利用条件の一部や金利の仕組みについて解説します。 申込者は同一人物であること ダブルフラットは、1人の申込者が返済期間の異なる2本のフラット35を組み合わせて利用する制度です。制度上、申込者は同一人物であることが条件となっており、夫婦それぞれが1本ずつ契約する「ペアローン」のような形では利用できません。 関連記事はこちらフラット35のペアローンとは?夫婦で住宅ローンを組むメリットと注意点を解説 返済負担率の基準を満たすこと 返済負担率とは、年収に対する住宅ローンなどの年間返済額の割合です。以下の基準を満たしていることが求められます。 年収 返済負担率の上限 400万円未満 30%以下 400万円以上 35%以下 この基準を超えると、審査に通るのは難しくなります。そのため、事前に返済額をシミュレーションし、返済負担率が基準内に収まるように計画を立てることが重要です。 融資率によって適用金利が変わる 融資率とは、物件価格に対してどれくらいの金額を借りるかを示す割合です。住宅金融支援機構の【フラット35】では、融資率が9割以下か9割超かによって、適用される金利が異なります。 例えば、2025年12月時点の金利では以下のような差があります。 【フラット35】借入期間:21年以上35年以下 融資率 金利の範囲 最も多い金利 9割以下 年1.970%~年4.510% 年1.970% 9割超 年2.080%~年4.620% 年2.080% 出典)【フラット35】「借入期間:21年以上35年以下」 このように、融資率が9割を超えると0.11ポイント金利が上昇するため、総返済額にも大きな影響を与えます。ダブルフラットでも、2本のローンの合計が物件価格の9割を超える場合、「融資率9割超」の金利が適用されます。そのため、借入額の設定は慎重に行い、事前にシミュレーションしておくことが重要です。 ダブルフラットのメリット ダブルフラットには、将来の返済負担を軽減できることや、金利の低いローンを活用することで総返済額を抑えられるといったメリットがあります。さらに、返済方法の選択肢も広がるため、ライフプランに合わせた柔軟な返済設計が可能です。ここでは、ダブルフラットを利用することで得られる主なメリットについて詳しく解説します。 将来の返済負担を軽減できる 返済期間が20年のフラット20と、35年のフラット35を組み合わせた場合を考えてみましょう。借り入れから20年間は、2本のローンを同時に返済するため、毎月の返済額はやや高くなります。しかし、21年目以降はフラット20が完済されることで、返済額が減り、将来的な負担を軽減できます。 たとえば、フラット20の完済時期を60歳に設定すれば、定年後の収入減少を見据えた返済計画を立てることも可能です。ライフステージに合わせた設計ができる点は、ダブルフラットの大きなメリットといえるでしょう。 出典)【フラット35】「ダブルフラット」 総返済額を抑えられる フラット20は返済期間が短いため、フラット35よりも金利が低めに設定されています。 この特徴を活かして、フラット35とフラット20を組み合わせることで、金利の低いローンを一部に充てることができ、結果として総返済額を抑えることにつながります。 たとえば、同じ3,000万円を借りる場合でも、フラット20を併用することで、フラット35単独よりも数百万円単位で返済額が少なくなるケースもあります。(後述する「ダブルフラットの返済シミュレーション」で詳しく紹介します。) 返済方法を柔軟に選べる ダブルフラットでは、元利均等返済と元金均等返済を組み合わせたり、ボーナス併用払いと毎月払いを併用したりすることができます。2本のローンそれぞれで返済方法を選べるため、家計の状況や収入のタイミングに合わせて、無理のない返済プランを設計することが可能です。 たとえば、フラット20は元金均等返済で早めに元本を減らし、フラット35は元利均等返済で安定した支払いを続けるなど、目的に応じた使い分けもできます。 ダブルフラットの返済シミュレーション ダブルフラットを使った場合と、通常のフラット35だけを使った場合で、返済額がどれくらい違うのかを比較してみましょう。 ■フラット35の融資条件 ・借入金額:3,000万円(融資率9割以下) ・借入金利:年1.97%(2025年12月時点) ・元利均等返済、ボーナス払いなし ■ダブルフラットの融資条件 〇フラット35 ・借入金額:1,500万円(融資率9割以下) ・借入金利:年1.97%(2025年12月時点) ・元利均等返済、ボーナス払いなし 〇フラット20 ・借入金額:1,500万円(融資率9割以下) ・借入金利:年1.58%(2025年12月時点) ・元利均等返済、ボーナス払いなし 借入内容 借入期間 毎月返済額 総返済額 フラット35 35年 98,917円 41,545,177円 ダブルフラット ・フラット35 ・フラット20 当初20年 121,373円 ・49,458円(フラット35) ・72,935円(フラット20) 38,276,787円 (約326万円削減) 21年〜35年 49,458円 ※住宅保証機構株式会社「返済額の試算」を基に筆者作成 試算の結果、フラット35単独利用時との差は以下のとおりです。 総返済額:約 326万円 抑えられる 月々の返済額(当初20年):約 2万2,000円 増える 月々の返済額(21年目以降):約 4万9,000円 減る つまり、「当面の負担は増えても、総返済額と将来の負担を確実に減らしたい」という方に適したプランです。教育費のピークや定年退職の時期など、ライフプランに合わせて検討しましょう。 ダブルフラットの注意点 ダブルフラットを利用する際は、以下の点に注意が必要です。 同一金融機関での申込が必要 2本のローンは同じ金融機関で申し込む必要があります。ダブルフラットを取り扱っていない金融機関もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。 諸費用が1本のローンよりも多くかかる それぞれのローンに対して、金銭消費貸借契約、抵当権設定などの手続が必要となり、融資手数料、金銭消費貸借契約書の印紙税、抵当権設定のための費用などが1本のローンの場合と比べて多くかかります。返済額の軽減効果と諸費用を含めた総コストの比較も忘れずに行いましょう。 団信はそれぞれの契約に紐づく 団体信用生命保険は、ローン契約者が死亡・高度障害になった場合に残債が免除される保険です。2本のローンそれぞれに個別で加入する必要があります。加入は任意ですが、2本とも加入するか、しないかを選ぶ必要があります。 関連記事はこちら住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説 ペアローンでは利用不可 夫婦がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンでは、1人につき1本の契約となるため、ダブルフラットは利用できません。 まとめ ダブルフラットは、2本の住宅ローンを組み合わせることで、将来の返済額を抑えられる制度です。特に、定年後の生活を見据えた返済計画を立てたい方におすすめです。 ただし、諸費用や団信の加入など、単独ローンとは異なる点もあるため、事前のシミュレーションと比較検討が重要です。まずは金融機関に相談し、ライフプランに合った返済方法を検討してみてください。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35とは?初心者にもわかりやすく特徴やメリットを解説 フラット35は、自宅購入時に利用できる住宅ローン商品の一つです。住宅ローンを検討する際、全期間固定金利で自宅を購入したい場合は、フラット35が有力な選択肢となるでしょう。 この記事では、フラ...
住宅ローンを組もうとしたけど、希望物件の価格に対して借入額が足りない… そんな悩みを抱える方にとって、フラット35のペアローンは有力な選択肢です。ペアローンを利用すれば、借入可能額を増やすことができ、返済方法や団体信用生命保険(以下、団信)の設計も柔軟に対応可能です。 この記事では、ペアローンの仕組みや申込条件、収入合算との違い、団信の取り扱い、そしてメリット・注意点まで、住宅ローン選びの判断材料として活用できる情報を詳しく解説します。 ペアローンとは ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦や親子などがそれぞれ主たる債務者となり、住宅ローンを組む方法です。単独でローンを組むよりも借入可能額が増えるため、取得する住宅の選択肢が広がります。 ペアローンは、特に若い世代で多く利用されています。住宅金融支援機構の調査によると、ペアローンの利用割合は全体で25.9%ですが、年代別では20代が44.0%、30代が29.6%となっています。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2025年4月調査)p.10」 収入合算との違い(連帯保証型・連帯債務型) 収入合算とは、申込者本人の収入に、配偶者や親などの収入を加えて、1本の住宅ローンを組む方法です。主に以下の二つのタイプがあります。 連帯保証型:合算者は連帯保証人となり、申込者本人が返済できなくなった場合にのみ返済義務を負います。 連帯債務型:合算者は連帯債務者となり、申込者本人と同等の返済義務を負います。 一方、ペアローンでは、2人がそれぞれ主たる債務者となり、2本の独立した住宅ローンを組む点が大きな違いです。これにより、団信の加入方法や返済設計にも柔軟性が生まれます。 項目 ペアローン 収入合算(連帯債務型) 契約 2本 1本 債務者 主債務者2人 主債務者+連帯債務者 団信 個別加入 ペア連生団信あり 出典)フラット35「収入合算できる方」 関連記事はこちら住宅ローンのペアローンと収入合算の違いとは? フラット35ペアローンの申込要件や借入・返済の仕組み フラット35では、2024年10月からペアローンの取り扱いが開始されました。夫婦や親子などがそれぞれ主たる債務者となることで、借入可能額が増え、返済方法や団信の設計も柔軟に対応できるのが特徴です。 ここでは、申込要件から借入額・金利、返済方法まで、基本的な仕組みを簡潔に解説します。 申込要件と対象者の範囲 ペアローンを利用するための申込要件と対象者の範囲は、主に次のとおりです。 申込者と配偶者、または親や子などの親族であること 申込時の年齢が満70歳未満であること ※その他の申込要件などは、【フラット35】のWebサイトをご確認ください。 借入額・期間・金利の考え方 ペアローンでは、各人100万円以上8,000万円以下(1万円単位)で借入可能です。夫婦で利用すれば、最大1億6,000万円まで借りられます。借入期間は15年以上で、「80歳−申込時年齢」または「35年」の短い方が上限です。夫婦それぞれ異なる期間を設定でき、ライフプランに合わせた設計が可能です。 金利は借入期間や融資率(借入額合計 ÷ 住宅の建設費または購入価額)などにより決まり、融資率が9割以下の場合は低金利となる傾向があります。また、住宅性能や家族構成に応じた金利引き下げ制度も利用可能で、ペアローンでは2人それぞれに同じ条件が適用されます。 関連記事はこちらフラット35の金利引き下げメニューについて詳しく解説 返済方法と家計管理の工夫 ペアローンでは、返済方法や返済口座をそれぞれ個別に設定できます。たとえば、元利均等返済と元金均等返済を夫婦で分けることで、収入状況に応じた柔軟な返済が可能です。返済口座を分けることで、共働き世帯の資金管理もスムーズになります。 担保は、借入対象の住宅および敷地全体に対して、2本の融資それぞれに、住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位(同順位)の抵当権を設定する必要があります。 ペアローンにおける団信の取り扱い 住宅ローンを組む際には、万が一の事態に備えるための団信の加入が重要です。ペアローンでは、夫婦それぞれが主たる債務者となるため、団信もそれぞれの契約に対して個別に加入する必要があります。 一方、収入合算(連帯債務型)では、「ペア連生団信」という制度が利用可能です。これは、どちらか一方に万が一のことがあった場合、残りの住宅ローン残高が全額保障される仕組みです。 ペアローンではこの制度が使えないため、パートナーの債務は団信で完済されても、自身の債務は残り、返済を継続する必要があります。 関連記事はこちら住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説 ペアローンでの団信加入の仕組み ペアローンでは、2人それぞれが独立したローン契約を結ぶため、団信も個別に加入する形になります。たとえば、夫は三大疾病保障型、妻は一般団信といったように、健康状態や希望に応じて異なる保障内容を選択できるのが特徴です。 また、団信への加入は任意です。保険料を抑えたい場合や、他の生命保険で保障を確保している場合は、加入しない選択もできます。 フラット35のペアローンのメリット フラット35のペアローンには、単独ローンや収入合算にはない、いくつかの大きなメリットがあります。ここでは主な3つの利点を紹介します。 借入期間を個別に設定できる 収入合算(連帯債務型)では、借入期間を夫婦で同一にする必要がありますが、ペアローンではそれぞれが別々の借入期間を設定できます。たとえば、夫は35年、妻は20年といったように、ライフプランや収入状況に応じて柔軟に設計できるのが特徴です。 団信プランを柔軟に選べる 前述のとおり、ペアローンでは団信に個別加入する必要がありますが、これは柔軟な保障設計が可能であるというメリットにもつながります。たとえば、夫は三大疾病保障型、妻は一般団信といったように、それぞれの健康状態や希望に応じたプランを選択できます。 また、団信への加入は任意であり、保険料を抑えたい場合や他の保険でカバーしている場合は、加入しない選択も可能です。 返済口座を分けて家計管理しやすい ペアローンの場合、2本のローン契約がそれぞれ独立しているため、返済口座も別々に設定できます。返済口座を分けられることで、資金移動の手間が省け、共働き世帯などの家計管理にも適しています。 フラット35ペアローンの注意点とリスク フラット35のペアローンを利用する際は、以下の点に注意が必要です。 パートナーの返済滞納による一括返済リスク ペアローンでは、夫婦それぞれが主たる債務者としてローン契約を結んでいるため、どちらか一方が返済を滞納すると、金融機関からもう一方にも一括返済を求められる可能性があります。 このような事態を防ぐためには、日頃から返済状況を共有し、万が一の際に金融機関がもう一方に通知できるよう、事前に同意を取っておくことが重要です。 万が一の際も自身の返済は継続される ペアローンでは、団信によりパートナーの債務は完済されますが、自身の返済義務は残るため、万が一の事態にも対応できるよう、余裕を持った返済計画を立てておくことが大切です。 契約が2本になることで諸費用が増える ペアローンは2人それぞれがローン契約を結ぶため、登記費用や事務手数料などの諸費用も2本分必要になります。単独ローンや収入合算型に比べて、初期費用の負担が大きくなる点には注意が必要です。 費用面での比較を事前に行い、総コストを把握したうえでペアローンを選択することが望ましいでしょう。 まとめ|ペアローンを選ぶ際の判断ポイント フラット35のペアローンは、単独ローンに比べて借入可能額が大きく、夫婦それぞれが異なる借入期間や団信プランを選択できるなど、柔軟な住宅ローン設定が可能です。返済口座を分けられる点も、共働き世帯などにとっては資金管理の面でメリットがあります。 一方で、ローン契約が2本になることで諸費用が増えるほか、パートナーが返済を滞納した場合や万が一の事態が起きた際には、自身の債務が残るなどのリスクもあります。ペア連生団信が利用できない点も、収入合算型との大きな違いです。 このようなメリット・デメリットがあることを理解したうえで、フラット35のペアローンを利用するかを判断しましょう。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 「フラット50」とは? 2025年制度改正で住宅の対象が拡大 「人生100年時代」を見据え、住宅ローンの返済期間も長期化しています。住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する「フラット50」は、その名のとおり最長50年という長期返済が可能な全期間...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】11月金利は1.90%に決定|千日太郎の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の11月金利を1.89%~1.92%と予想し、結果は1.90%となりました。予測は的中しましたが、その背景には国債利回りや機構債の動き、そして住宅金融支援機構の「激変緩和」策がありました。 今回は、2025年12月の【フラット35】金利を予想します。11月20日に発表された機構債の表面利率は2.30%と大幅に上昇し、新発10年国債利回りも1.79%まで急伸。さらに、逆ザヤ問題が過去最大に拡大する中、住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えられるのかが焦点です。 この記事では、12月の金利予想レンジと2つのシナリオ、その背景にある国債利回り・機構債・ローンチスプレッド・E55債の影響をわかりやすく解説します。 2025年12月の【フラット35】金利は1.97% に決定しました(更新日:2025年12月1日)。 【フラット35】2025年11月金利予想の結果とその検証 2025年11月の金利は1.90%に決定|金利予想は的中 2025年11月の【フラット35】金利は1.90%に決定しました。これは、前回の記事で提示した予想レンジ(1.89%~1.92%)の下限に収まる結果です。 予想が的中した背景には、国債利回りや機構債の動き、そして住宅金融支援機構による「激変緩和」策がありました。急激な金利変動を避けるため、機構は過去の事例同様、上昇幅を最小限に抑える調整を行ったと考えられます。 フラット35金利の決定ロジックと背景 【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 2025年10月の主要データは以下のとおりです。 新発10年国債利回り:1.64%(前月比+0.03ポイント) 機構債の表面利率:2.15%(前月比+0.03ポイント) ローンチスプレッド:0.51%(横ばい) このデータから、機構債の表面利率は前月比で0.03ポイント上昇していますが、【フラット35】の10月から11月にかけての金利は、住宅金融支援機構が調整幅を広げることで、0.01ポイントの上昇で抑えられました。これは、住宅ローン利用者の負担増を避けるための政策的判断といえます。 なぜ金利上昇が抑えられたのか? 最大の理由は、住宅金融支援機構が逆ザヤを許容して低金利を維持していることです。 逆ザヤとは、機構債の「仕入れ金利」が【フラット35】の「貸出金利」を上回る状態を指します。 2025年10月の機構債の表面利率が2.15%に対し、2025年11月の【フラット35】は1.90%。その差は0.25ポイントで、過去最大の逆ザヤ幅となっています。営利を目的としない住宅金融支援機構だからこそ可能な調整ですが、この状態が長期化すれば、今後の金利政策に影響を与える可能性があります。 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 月 機構債表面利率(機構債発表日) フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%(5月22日)1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%(6月20日)1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%(7月18日)1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%(8月21日)1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%(9月19日)1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%(10月17日)1.90%-0.25ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 【フラット35】2025年12月金利予想 2025年12月の金利予想レンジは1.90%~1.95% 2025年11月は、新発10年国債利回りが1.79%まで急上昇し、機構債の表面利率も2.30%と過去半年で最大の上昇幅を記録しました。 通常であれば、この水準の機構債利率に連動して【フラット35】の金利も大きく上昇するはずですが、住宅金融支援機構は過去の傾向から急激な変化を避ける調整を行うと見られます。 そのため、2025年12月の【フラット35】金利は1.90%~1.95%と予想します。これは、前月比で最大でも+0.05ポイント程度の上昇にとどまる見込みです。 【フラット35】金利推移と2025年12月予想 9月 10月 11月 12月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 1.89% 1.89% 1.90% 1.90%~1.95%※12/1発表の金利は1.97%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:1.90%「激変緩和」 このシナリオでは、住宅金融支援機構が国債利回りや機構債の急騰をあえて反映させず、金利を据え置く、または最小限の上昇に抑えると想定します。 背景には、住宅ローン利用者の負担増を避ける政策的意図があります。過去の事例でも、急騰局面では「激変緩和」が適用され、金利上昇幅は0.00~0.03ポイント程度に抑えられたケースが多く見られます。この場合、2025年12月の金利は前月と同じ1.90%となる可能性があります。 シナリオ②:1.95%「マイナス幅の限度+激変緩和」 もう一つのシナリオは、逆ザヤの限度を考慮しつつ、過去の調整パターンを踏まえたものです。2025年10月の機構債の表面利率と2025年11月の【フラット35】の金利差は0.25ポイントと過去最大に拡大しました。 もしこの差を維持するなら、2025年12月の【フラット35】金利は2.05%になる計算ですが、これは前月比で+0.15ポイントと急激な上昇です。過去の事例では、こうした急騰局面では「激変緩和」により上昇幅を0.05ポイント程度に抑える傾向があるため、1.95%が現実的な上限と考えられます。 主要データ(機構債・国債・ローンチスプレッドの推移) 主要データ(2025年11月20日時点) 機構債発表日 2025年8月21日 2025年9月19日 2025年10月17日 2025年11月20日 機構債の表面利率(※1) 2.08% 2.12% 2.15% 2.30% 新発10年国債利回り(※2) 1.61% 1.61% 1.64% 1.79% ローンチスプレッド(※1) 47bps(0.47%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】2025年12月金利予想の背景にある4つの要素 新発10年国債利回りの急上昇(+0.15ポイント) 2025年10月から11月にかけて、新発10年国債利回りは1.64%から1.79%へ急伸しました。この背景には、高市政権による積極的な財政出動と、インフレ期待の高まりがあります。 特に、2025年度補正予算案の規模拡大が議論され、国債増発観測が強まったことで、長期金利に上昇圧力がかかりました。国債利回りは【フラット35】の金利決定に直結するため、この急騰は12月金利予想において最も重要な要素です。 機構債の表面利率と逆ザヤ問題(過去最大0.25ポイント) 機構債の表面利率は、2025年10月の2.15%から11月には2.30%へと0.15ポイント上昇しました。これに対して、【フラット35】の金利は10月から11月に1.90%へわずかに上昇しただけで、両者の差は0.25ポイントに拡大しました。 この「逆ザヤ」は過去最大であり、住宅金融支援機構が収益を犠牲にして低金利を維持している状態です。非営利の政策機関だからこそ可能な対応ですが、この状況が長期化すれば、今後の金利政策に影響を与える可能性があります。 ローンチスプレッドの横ばい傾向と意味 ローンチスプレッドとは、機構債の表面利率と新発10年国債利回りの差であり、2025年12月時点で0.51%の横ばいです。この横ばい傾向は、機構債のリスクプレミアムが安定していることを示し、市場が長期金利の急騰を一時的な現象と見ている可能性を示唆します。 つまり、スプレッドが拡大していないことは、【フラット35】の金利が急騰するリスクをやや緩和する要因となっています。 E55債の登場|低コスト資金調達の可能性 2025年10月に導入されたE55債は、住宅金融支援機構が新たに採用した資金調達手段です。従来の機構債と同様、住宅ローン債権を裏付けに発行されますが、特徴はより低コストである点にあります。 具体的には、表面利率が1.63%と機構債よりも低く、ローンチスプレッドも0.36%と小さいため、発行額が拡大すれば、機構はより安価に資金を調達でき、【フラット35】の低金利維持に寄与する可能性があります。今後、E55債の発行動向は、フラット35の金利動向を占う重要な指標となるでしょう。 E55債の概要 発表日 表面利率 10年国債利回り ローンチスプレッド 2025年10月22日1.63%1.27%0.36% ※1 出典)住宅金融支援機構「貸付債権担保E55債発行条件」 【フラット35】2025年12月金利予想の再確認と今後の見通し 住宅ローン利用者への影響|返済額はどう変わる? 2025年12月の【フラット35】金利は、前月比で最大+0.05ポイント程度の上昇が見込まれます。仮に金利が1.90%から1.95%に上昇した場合、借入金額3,000万円・返済期間35年のケースでは、月々の返済額が764円増加します。 一見すると小幅な増加ですが、長期的には総返済額で約320,000円の差が生じるため、金利動向を注視することが重要です。 借り換え検討のタイミングと注意点 今後の金利上昇局面では、以下のポイントを押さえておく必要があります。 固定金利の早期確保:変動金利から固定金利への切り替えを検討するタイミング 借り換えシミュレーションの実施:金利差だけでなく、諸費用や残債額を考慮した総合判断 フラット35の特徴を理解:長期固定で安心感がある一方、借り換え時の手数料や団信条件も確認 特に、今後の国債利回りの動向次第では、民間銀行の固定金利が先に上昇する可能性があるため、早めの行動がリスク回避につながります。 低金利はいつまで続く?政策と市場動向を徹底分析 高市政権の積極財政とインフレ圧力により、長期金利は上昇傾向にあります。しかし、住宅金融支援機構は政策的役割を担う非営利機関であり、「住宅金融の円滑化」を目的に、急激な金利上昇を抑える調整を続けています。 さらに、2025年10月に導入されたE55債による低コスト資金調達が進めば、【フラット35】の低金利維持に寄与する可能性があります。ただし、逆ザヤが長期化すれば、将来的には金利引き上げ圧力が強まるため、2026年以降は緩やかな上昇トレンドに入る可能性も視野に入れておくべきでしょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。