急にまとまったお金が必要。でも住み慣れた自宅から離れたくない──そんなときに活用できるサービスとして「リースバック」があります。自宅を売却しても、そのまま住み続けられる便利な仕組みですが、インターネットで検索すると「リースバック やばい」「後悔した」という不安な声を目にすることがあります。 リースバックは、信頼のできる不動産事業者を選び、うまく活用すれば、有用なサービスとなり得ます。しかし、デメリットや注意点を把握しないまま利用してしまうと、あとから後悔する恐れがあります。 この記事では、リースバックがやばいと言われる理由や知っておくべきデメリット、後悔しないための対策についてわかりやすく解説します。この記事を読めば、リースバックの不安を解消し、安心して賢い選択ができます。 そもそもリースバックとは? リースバックとは、自宅を売却した後、賃貸契約を結びそのまま同じ家に住み続けられる仕組みです。まとまった資金が必要なときや、老後の生活費を確保したいときに利用されることが多いです。詳しい仕組みやメリットや活用事例については以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 なお、リースバックとよく比較される商品に「リバースモーゲージ」があります。どちらも資金調達の手段という点では共通していますが、仕組みや対象年齢などに違いがあります。詳しい比較は以下の記事で解説しています。 関連記事はこちらリースバック・リバースモーゲージ・リ・バース60の違いを徹底比較 なぜリースバックは「やばい」と言われるのか まず、リースバックが「やばい」と言われる背景について、代表的なポイントを整理します。リースバックが不安視される理由を知ることで、情報の真偽を見極めやすくなります。 情報が少なく仕組みがわかりにくい リースバックというサービスの仕組み自体は、不動産の売買契約と賃貸借契約という世間でも広く認知されている契約に基づいた体系です。しかし、この売買と賃貸借という契約が複合的に行われていることが、仕組みをわかりにくくしている要因の一つです。 また、リースバックはまだ普及して間もないサービスであるため、国や地方自治体で設けている制度や仕組みに関する情報が、まだ十分に浸透しているとは言えません。 そのため、初めて聞く人にとっては「売却しても住み続けられる」という仕組みを理解できず、中には不透明に感じる人もいると考えられます。 一部の不動産事業者によるトラブル事例がある さまざまなメディアでも取り上げられるように、過去には一部の不動産事業者による不適切な対応や契約トラブルが報告されています。こうした事例は決して多くはないものの、金銭が絡む取引であるため、利用者にとって大きな不安要素となっています。 想定外の条件で後悔する人がいる リースバックは契約時にまとまったお金を手に入れて、以後家賃を支払っていくという仕組みですが、契約後に「家賃の支払いが想定より厳しかった」など、事前計画が甘く後悔する場合もあります。この後、注意すべきデメリットについて詳しく解説します。 知っておくべきリースバックのデメリット リースバックはうまく活用すれば便利な仕組みですが、契約内容によっては思わぬ落とし穴があります。ここでは、後悔しないために知っておくべきデメリットを詳しく解説します。 家賃が高くなる リースバックでは、周辺の賃料相場だけでなく、不動産の売却価格とのバランスで家賃が決まります。売却価格が高いと家賃も高くなる傾向があるため、注意が必要です。 また、契約後に固定資産税の上昇や、土地、建物の価格上昇などの理由から、家賃の引き上げを求められる場合もあります。契約書の内容を事前に確認し、担当者に不明点を必ず確認しましょう 家賃について納得しておかないと、「資金が多めに手に入ったところまでは良かったが、結局毎月の支払いが大変」という後悔につながる恐れがあります。リースバックの家賃設定については以下の記事で詳しく解説しているので、契約前に必ず確認しましょう。 関連記事はこちらリースバックの家賃設定を解説!家賃相場よりも高い? 売却価格が市場価格より安くなる リースバックにおける売却価格は基本的に市場価格70%前後まで下がることが一般的です。これは、買主である不動産事業者が、借主の家賃滞納リスクや、購入後も不動産を自由に扱えない制約を抱えることなどが要因です。 さらに、不動産事業者によっては、相場価格よりも大幅に低額な売却価格を提示する場合もあります。そのため、リースバックを利用する際は、必ず複数の不動産事業者に相談し、売却価格を比較しておきましょう。 こうした確認を十分にしないと、「本当はもっと高く売れたのではないか」という後悔につながる恐れがあります。 長期的に住み続けられない場合がある 賃貸借契約は、「定期借家契約」と「普通借家契約」に分類されます。定期借家契約の場合、当初の契約期間が終了すると貸主と借主の双方の合意がないと再契約できず、住み続けることができません。 一方、普通借家契約は借主の希望のみで更新が可能ですが、リースバックにおいては、定期借家契約を採用している場合が多いため注意が必要です。 「ずっと住めると思っていたのに、契約期間が終わったら退去しなければならなかった」という後悔を防ぐためには、契約形態を必ず確認しましょう。長期的な居住を希望する場合は、普通借家契約を選べるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? 買い戻しが難しい場合がある リースバックでは「将来、家を買い戻したい」と考える人も少なくありません。しかし、契約条件によっては買い戻しができない場合があります。買い戻しが可能な場合でも、売却時より高い価格が設定されることが多く、資金計画を誤ると大きな負担になります。 さらに、買い戻しの条件は事業者ごとに異なり、契約書に明記されていないケースもあります。「買い戻せると思っていたのに、実際はできなかった」という後悔を防ぐためには、契約前に必ず契約書に記載されている買戻し条件を確認し、将来の資金計画も含めて慎重に判断しましょう。 関連記事はこちらリースバックは買い戻しできる?仕組みや買い戻し価格の目安を解説 リースバックを利用する際の注意点 リースバックを利用する際には、以下のポイントをチェックしましょう。 信頼できる不動産事業者を選ぶ 事前に契約内容を確認する 複数の不動産事業者を比較する リースバックを利用する際には、サービス利用後の資金計画も大切です。賃料を支払いながらどれくらいの期間住み続けられるか、老後の資金計画に影響がないかなど、長期的な視点で判断しましょう。 信頼できる不動産事業者を選ぶ リースバックを安心して利用するためには、信頼できる不動産事業者を選びましょう。特に取扱実績の多い大手企業は、契約内容が明確で、トラブルが発生した場合でも適切に対応してくれるため、安心して任せられます。 また、事前に口コミや評判をチェックし、信頼性を確認しておくことも忘れないようにしましょう。信頼できる不動産事業者を選ぶことで、不透明な条件や不利な契約を避けられます。 事前に契約内容を確認する リースバックの契約には、売買価格や賃料、買い戻し条件などの経済条件のほか、賃貸借の期間や維持費用など重要な内容が多く含まれています。特に目先の倍場価格ではなく、賃料の値上げや違約金については、事前にしっかりと確認しておく必要があります。 他にも、居住期間中には修繕費用や退去時の原状回復費用が発生することもあります。築年数の古い物件は修繕費が高額になることがあるため、事前に費用やどちらが負担するのかを確認しておくと安心です。 複数の不動産事業者を比較する 上述のようにリースバックの仕組みは、不動産売買契約と不動産賃貸借契約という二種類の契約から成っています。ただし、同じリースバックでも不動産事業者によって、売買に関連して買戻し条項(不動産売買予約契約)の有無や、不動産賃貸借契約が普通借家契約なのか定期借家契約なのかなど、条件面で違いがあります。 サービスの利用時には、わかりやすい「売買価格」や「家賃」に着目してしまいますが、その裏には様々な条件が設けられており、一社だけで判断することは難しいでしょう。そのため、必ず複数の不動産事業者に問い合わせをして、経済条件や会社・担当者の信頼性を見極める必要があります。 まとめ リースバックは、自宅を売却しながら住み続けられる便利な仕組みですが、契約内容や条件を十分に理解しないまま利用すると、後悔やトラブルにつながる恐れがあります。 安心して利用するためには、信頼できる事業者を選び、契約書の内容を細部まで確認することが不可欠です。この記事で紹介した注意点を参考に、複数の業者を比較し、納得できる条件で契約するかどうかを慎重に判断しましょう。 Appendix:国土交通省ガイドブック リースバックを検討する際は、国土交通省が公開している「住宅のリースバックに関するガイドブック」も参考になります。このガイドブックでは、契約時の確認不足によるトラブルを防ぐため、以下の点に注意するよう呼びかけています。 違約金や解約条件を事前に確認する 賃料や契約期間の取り決めを明確にする 契約内容は必ず書面で確認する 営業トークを鵜呑みにせず、家族や専門家に相談する また、以下の記事でもリースバックのトラブル事例と対策について詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。 関連記事はこちらリースバックのトラブル事例と後悔しないためのポイントを解説 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。 ※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックのよくあるご相談7選 リースバックは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。老後資金を確保したい高齢者を中心に、リースバックの利用者...
「住宅ローンは1人につき1本だけ」と思っていませんか? 実は、返済期間の異なる2本のローンを組み合わせることで、将来の返済負担を軽減できる方法があります。 それが、住宅金融支援機構が提供するフラット35「ダブルフラット」という制度です。この記事では、ダブルフラットの仕組みやメリット、注意点を解説します。 フラット35「ダブルフラット」の仕組みとは? 一般的には「住宅ローンは1人につき1本」が基本ですが、金融機関によっては複数のローンを組み合わせることも可能です。代表的な例が「ミックスローン」で、固定金利と変動金利を組み合わせたり、返済期間を分けたりすることで、柔軟な返済プランが設計できます。 ダブルフラットは、返済期間の異なる2本のフラット35を組み合わせて利用する住宅ローンです。例えば、返済期間が最長20年のフラット20と最長35年のフラット35を組み合わせることで、将来の返済額を減らすことができます。 そのほかにも、フラット35を2本組み合わせたり、フラット20を2本組み合わせたりすることもできます。なお、フラット20は、返済期間が15年以上20年以下のフラット35商品です。一度20年以下で契約すると、後から21年以上に変更することは原則できません。 出典) ・【フラット35】「ダブルフラット」 ・【フラット35】「【フラット35】」 ・【フラット35】「【フラット20】」 ダブルフラットの利用条件と金利の仕組み ダブルフラットを利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。ここでは、申込者の利用条件の一部や金利の仕組みについて解説します。 申込者は同一人物であること ダブルフラットは、1人の申込者が返済期間の異なる2本のフラット35を組み合わせて利用する制度です。制度上、申込者は同一人物であることが条件となっており、夫婦それぞれが1本ずつ契約する「ペアローン」のような形では利用できません。 関連記事はこちらフラット35のペアローンとは?夫婦で住宅ローンを組むメリットと注意点を解説 返済負担率の基準を満たすこと 返済負担率とは、年収に対する住宅ローンなどの年間返済額の割合です。以下の基準を満たしていることが求められます。 年収 返済負担率の上限 400万円未満 30%以下 400万円以上 35%以下 この基準を超えると、審査に通るのは難しくなります。そのため、事前に返済額をシミュレーションし、返済負担率が基準内に収まるように計画を立てることが重要です。 融資率によって適用金利が変わる 融資率とは、物件価格に対してどれくらいの金額を借りるかを示す割合です。住宅金融支援機構の【フラット35】では、融資率が9割以下か9割超かによって、適用される金利が異なります。 例えば、2025年12月時点の金利では以下のような差があります。 【フラット35】借入期間:21年以上35年以下 融資率 金利の範囲 最も多い金利 9割以下 年1.970%~年4.510% 年1.970% 9割超 年2.080%~年4.620% 年2.080% 出典)【フラット35】「借入期間:21年以上35年以下」 このように、融資率が9割を超えると0.11ポイント金利が上昇するため、総返済額にも大きな影響を与えます。ダブルフラットでも、2本のローンの合計が物件価格の9割を超える場合、「融資率9割超」の金利が適用されます。そのため、借入額の設定は慎重に行い、事前にシミュレーションしておくことが重要です。 ダブルフラットのメリット ダブルフラットには、将来の返済負担を軽減できることや、金利の低いローンを活用することで総返済額を抑えられるといったメリットがあります。さらに、返済方法の選択肢も広がるため、ライフプランに合わせた柔軟な返済設計が可能です。ここでは、ダブルフラットを利用することで得られる主なメリットについて詳しく解説します。 将来の返済負担を軽減できる 返済期間が20年のフラット20と、35年のフラット35を組み合わせた場合を考えてみましょう。借り入れから20年間は、2本のローンを同時に返済するため、毎月の返済額はやや高くなります。しかし、21年目以降はフラット20が完済されることで、返済額が減り、将来的な負担を軽減できます。 たとえば、フラット20の完済時期を60歳に設定すれば、定年後の収入減少を見据えた返済計画を立てることも可能です。ライフステージに合わせた設計ができる点は、ダブルフラットの大きなメリットといえるでしょう。 出典)【フラット35】「ダブルフラット」 総返済額を抑えられる フラット20は返済期間が短いため、フラット35よりも金利が低めに設定されています。 この特徴を活かして、フラット35とフラット20を組み合わせることで、金利の低いローンを一部に充てることができ、結果として総返済額を抑えることにつながります。 たとえば、同じ3,000万円を借りる場合でも、フラット20を併用することで、フラット35単独よりも数百万円単位で返済額が少なくなるケースもあります。(後述する「ダブルフラットの返済シミュレーション」で詳しく紹介します。) 返済方法を柔軟に選べる ダブルフラットでは、元利均等返済と元金均等返済を組み合わせたり、ボーナス併用払いと毎月払いを併用したりすることができます。2本のローンそれぞれで返済方法を選べるため、家計の状況や収入のタイミングに合わせて、無理のない返済プランを設計することが可能です。 たとえば、フラット20は元金均等返済で早めに元本を減らし、フラット35は元利均等返済で安定した支払いを続けるなど、目的に応じた使い分けもできます。 ダブルフラットの返済シミュレーション ダブルフラットを使った場合と、通常のフラット35だけを使った場合で、返済額がどれくらい違うのかを比較してみましょう。 ■フラット35の融資条件 ・借入金額:3,000万円(融資率9割以下) ・借入金利:年1.97%(2025年12月時点) ・元利均等返済、ボーナス払いなし ■ダブルフラットの融資条件 〇フラット35 ・借入金額:1,500万円(融資率9割以下) ・借入金利:年1.97%(2025年12月時点) ・元利均等返済、ボーナス払いなし 〇フラット20 ・借入金額:1,500万円(融資率9割以下) ・借入金利:年1.58%(2025年12月時点) ・元利均等返済、ボーナス払いなし 借入内容 借入期間 毎月返済額 総返済額 フラット35 35年 98,917円 41,545,177円 ダブルフラット ・フラット35 ・フラット20 当初20年 121,373円 ・49,458円(フラット35) ・72,935円(フラット20) 38,276,787円 (約326万円削減) 21年〜35年 49,458円 ※住宅保証機構株式会社「返済額の試算」を基に筆者作成 試算の結果、フラット35単独利用時との差は以下のとおりです。 総返済額:約 326万円 抑えられる 月々の返済額(当初20年):約 2万2,000円 増える 月々の返済額(21年目以降):約 4万9,000円 減る つまり、「当面の負担は増えても、総返済額と将来の負担を確実に減らしたい」という方に適したプランです。教育費のピークや定年退職の時期など、ライフプランに合わせて検討しましょう。 ダブルフラットの注意点 ダブルフラットを利用する際は、以下の点に注意が必要です。 同一金融機関での申込が必要 2本のローンは同じ金融機関で申し込む必要があります。ダブルフラットを取り扱っていない金融機関もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。 諸費用が1本のローンよりも多くかかる それぞれのローンに対して、金銭消費貸借契約、抵当権設定などの手続が必要となり、融資手数料、金銭消費貸借契約書の印紙税、抵当権設定のための費用などが1本のローンの場合と比べて多くかかります。返済額の軽減効果と諸費用を含めた総コストの比較も忘れずに行いましょう。 団信はそれぞれの契約に紐づく 団体信用生命保険は、ローン契約者が死亡・高度障害になった場合に残債が免除される保険です。2本のローンそれぞれに個別で加入する必要があります。加入は任意ですが、2本とも加入するか、しないかを選ぶ必要があります。 関連記事はこちら住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説 ペアローンでは利用不可 夫婦がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンでは、1人につき1本の契約となるため、ダブルフラットは利用できません。 まとめ ダブルフラットは、2本の住宅ローンを組み合わせることで、将来の返済額を抑えられる制度です。特に、定年後の生活を見据えた返済計画を立てたい方におすすめです。 ただし、諸費用や団信の加入など、単独ローンとは異なる点もあるため、事前のシミュレーションと比較検討が重要です。まずは金融機関に相談し、ライフプランに合った返済方法を検討してみてください。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35とは?初心者にもわかりやすく特徴やメリットを解説 フラット35は、自宅購入時に利用できる住宅ローン商品の一つです。住宅ローンを検討する際、全期間固定金利で自宅を購入したい場合は、フラット35が有力な選択肢となるでしょう。 この記事では、フラ...
住宅ローンを組もうとしたけど、希望物件の価格に対して借入額が足りない… そんな悩みを抱える方にとって、フラット35のペアローンは有力な選択肢です。ペアローンを利用すれば、借入可能額を増やすことができ、返済方法や団体信用生命保険(以下、団信)の設計も柔軟に対応可能です。 この記事では、ペアローンの仕組みや申込条件、収入合算との違い、団信の取り扱い、そしてメリット・注意点まで、住宅ローン選びの判断材料として活用できる情報を詳しく解説します。 ペアローンとは ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦や親子などがそれぞれ主たる債務者となり、住宅ローンを組む方法です。単独でローンを組むよりも借入可能額が増えるため、取得する住宅の選択肢が広がります。 ペアローンは、特に若い世代で多く利用されています。住宅金融支援機構の調査によると、ペアローンの利用割合は全体で25.9%ですが、年代別では20代が44.0%、30代が29.6%となっています。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2025年4月調査)p.10」 収入合算との違い(連帯保証型・連帯債務型) 収入合算とは、申込者本人の収入に、配偶者や親などの収入を加えて、1本の住宅ローンを組む方法です。主に以下の二つのタイプがあります。 連帯保証型:合算者は連帯保証人となり、申込者本人が返済できなくなった場合にのみ返済義務を負います。 連帯債務型:合算者は連帯債務者となり、申込者本人と同等の返済義務を負います。 一方、ペアローンでは、2人がそれぞれ主たる債務者となり、2本の独立した住宅ローンを組む点が大きな違いです。これにより、団信の加入方法や返済設計にも柔軟性が生まれます。 項目 ペアローン 収入合算(連帯債務型) 契約 2本 1本 債務者 主債務者2人 主債務者+連帯債務者 団信 個別加入 ペア連生団信あり 出典)フラット35「収入合算できる方」 関連記事はこちら住宅ローンのペアローンと収入合算の違いとは? フラット35ペアローンの申込要件や借入・返済の仕組み フラット35では、2024年10月からペアローンの取り扱いが開始されました。夫婦や親子などがそれぞれ主たる債務者となることで、借入可能額が増え、返済方法や団信の設計も柔軟に対応できるのが特徴です。 ここでは、申込要件から借入額・金利、返済方法まで、基本的な仕組みを簡潔に解説します。 申込要件と対象者の範囲 ペアローンを利用するための申込要件と対象者の範囲は、主に次のとおりです。 申込者と配偶者、または親や子などの親族であること 申込時の年齢が満70歳未満であること ※その他の申込要件などは、【フラット35】のWebサイトをご確認ください。 借入額・期間・金利の考え方 ペアローンでは、各人100万円以上8,000万円以下(1万円単位)で借入可能です。夫婦で利用すれば、最大1億6,000万円まで借りられます。借入期間は15年以上で、「80歳−申込時年齢」または「35年」の短い方が上限です。夫婦それぞれ異なる期間を設定でき、ライフプランに合わせた設計が可能です。 金利は借入期間や融資率(借入額合計 ÷ 住宅の建設費または購入価額)などにより決まり、融資率が9割以下の場合は低金利となる傾向があります。また、住宅性能や家族構成に応じた金利引き下げ制度も利用可能で、ペアローンでは2人それぞれに同じ条件が適用されます。 関連記事はこちらフラット35の金利引き下げメニューについて詳しく解説 返済方法と家計管理の工夫 ペアローンでは、返済方法や返済口座をそれぞれ個別に設定できます。たとえば、元利均等返済と元金均等返済を夫婦で分けることで、収入状況に応じた柔軟な返済が可能です。返済口座を分けることで、共働き世帯の資金管理もスムーズになります。 担保は、借入対象の住宅および敷地全体に対して、2本の融資それぞれに、住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位(同順位)の抵当権を設定する必要があります。 ペアローンにおける団信の取り扱い 住宅ローンを組む際には、万が一の事態に備えるための団信の加入が重要です。ペアローンでは、夫婦それぞれが主たる債務者となるため、団信もそれぞれの契約に対して個別に加入する必要があります。 一方、収入合算(連帯債務型)では、「ペア連生団信」という制度が利用可能です。これは、どちらか一方に万が一のことがあった場合、残りの住宅ローン残高が全額保障される仕組みです。 ペアローンではこの制度が使えないため、パートナーの債務は団信で完済されても、自身の債務は残り、返済を継続する必要があります。 関連記事はこちら住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説 ペアローンでの団信加入の仕組み ペアローンでは、2人それぞれが独立したローン契約を結ぶため、団信も個別に加入する形になります。たとえば、夫は三大疾病保障型、妻は一般団信といったように、健康状態や希望に応じて異なる保障内容を選択できるのが特徴です。 また、団信への加入は任意です。保険料を抑えたい場合や、他の生命保険で保障を確保している場合は、加入しない選択もできます。 フラット35のペアローンのメリット フラット35のペアローンには、単独ローンや収入合算にはない、いくつかの大きなメリットがあります。ここでは主な3つの利点を紹介します。 借入期間を個別に設定できる 収入合算(連帯債務型)では、借入期間を夫婦で同一にする必要がありますが、ペアローンではそれぞれが別々の借入期間を設定できます。たとえば、夫は35年、妻は20年といったように、ライフプランや収入状況に応じて柔軟に設計できるのが特徴です。 団信プランを柔軟に選べる 前述のとおり、ペアローンでは団信に個別加入する必要がありますが、これは柔軟な保障設計が可能であるというメリットにもつながります。たとえば、夫は三大疾病保障型、妻は一般団信といったように、それぞれの健康状態や希望に応じたプランを選択できます。 また、団信への加入は任意であり、保険料を抑えたい場合や他の保険でカバーしている場合は、加入しない選択も可能です。 返済口座を分けて家計管理しやすい ペアローンの場合、2本のローン契約がそれぞれ独立しているため、返済口座も別々に設定できます。返済口座を分けられることで、資金移動の手間が省け、共働き世帯などの家計管理にも適しています。 フラット35ペアローンの注意点とリスク フラット35のペアローンを利用する際は、以下の点に注意が必要です。 パートナーの返済滞納による一括返済リスク ペアローンでは、夫婦それぞれが主たる債務者としてローン契約を結んでいるため、どちらか一方が返済を滞納すると、金融機関からもう一方にも一括返済を求められる可能性があります。 このような事態を防ぐためには、日頃から返済状況を共有し、万が一の際に金融機関がもう一方に通知できるよう、事前に同意を取っておくことが重要です。 万が一の際も自身の返済は継続される ペアローンでは、団信によりパートナーの債務は完済されますが、自身の返済義務は残るため、万が一の事態にも対応できるよう、余裕を持った返済計画を立てておくことが大切です。 契約が2本になることで諸費用が増える ペアローンは2人それぞれがローン契約を結ぶため、登記費用や事務手数料などの諸費用も2本分必要になります。単独ローンや収入合算型に比べて、初期費用の負担が大きくなる点には注意が必要です。 費用面での比較を事前に行い、総コストを把握したうえでペアローンを選択することが望ましいでしょう。 まとめ|ペアローンを選ぶ際の判断ポイント フラット35のペアローンは、単独ローンに比べて借入可能額が大きく、夫婦それぞれが異なる借入期間や団信プランを選択できるなど、柔軟な住宅ローン設定が可能です。返済口座を分けられる点も、共働き世帯などにとっては資金管理の面でメリットがあります。 一方で、ローン契約が2本になることで諸費用が増えるほか、パートナーが返済を滞納した場合や万が一の事態が起きた際には、自身の債務が残るなどのリスクもあります。ペア連生団信が利用できない点も、収入合算型との大きな違いです。 このようなメリット・デメリットがあることを理解したうえで、フラット35のペアローンを利用するかを判断しましょう。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット50とは?メリット・デメリットや条件について解説 フラット50は、最長50年の借り入れが可能な全期間固定金利の住宅ローンです。一般的に住宅ローンの借入期間は最長35年ですが、フラット50ならより長期の借り入れが可能です。この記事では、フラッ...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】11月金利は1.90%に決定|千日太郎の予測と機構債分析!)では、【フラット35】の11月金利を1.89%~1.92%と予想し、結果は1.90%となりました。予測は的中しましたが、その背景には国債利回りや機構債の動き、そして住宅金融支援機構の「激変緩和」策がありました。 今回は、2025年12月の【フラット35】金利を予想します。11月20日に発表された機構債の表面利率は2.30%と大幅に上昇し、新発10年国債利回りも1.79%まで急伸。さらに、逆ザヤ問題が過去最大に拡大する中、住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えられるのかが焦点です。 この記事では、12月の金利予想レンジと2つのシナリオ、その背景にある国債利回り・機構債・ローンチスプレッド・E55債の影響をわかりやすく解説します。 2025年12月の【フラット35】金利は1.97% に決定しました(更新日:2025年12月1日)。 【フラット35】2025年11月金利予想の結果とその検証 2025年11月の金利は1.90%に決定|金利予想は的中 2025年11月の【フラット35】金利は1.90%に決定しました。これは、前回の記事で提示した予想レンジ(1.89%~1.92%)の下限に収まる結果です。 予想が的中した背景には、国債利回りや機構債の動き、そして住宅金融支援機構による「激変緩和」策がありました。急激な金利変動を避けるため、機構は過去の事例同様、上昇幅を最小限に抑える調整を行ったと考えられます。 フラット35金利の決定ロジックと背景 【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 2025年10月の主要データは以下のとおりです。 新発10年国債利回り:1.64%(前月比+0.03ポイント) 機構債の表面利率:2.15%(前月比+0.03ポイント) ローンチスプレッド:0.51%(横ばい) このデータから、機構債の表面利率は前月比で0.03ポイント上昇していますが、【フラット35】の10月から11月にかけての金利は、住宅金融支援機構が調整幅を広げることで、0.01ポイントの上昇で抑えられました。これは、住宅ローン利用者の負担増を避けるための政策的判断といえます。 なぜ金利上昇が抑えられたのか? 最大の理由は、住宅金融支援機構が逆ザヤを許容して低金利を維持していることです。 逆ザヤとは、機構債の「仕入れ金利」が【フラット35】の「貸出金利」を上回る状態を指します。 2025年10月の機構債の表面利率が2.15%に対し、2025年11月の【フラット35】は1.90%。その差は0.25ポイントで、過去最大の逆ザヤ幅となっています。営利を目的としない住宅金融支援機構だからこそ可能な調整ですが、この状態が長期化すれば、今後の金利政策に影響を与える可能性があります。 逆ザヤの推移(機構債 vs フラット35) 月 機構債表面利率(機構債発表日) フラット35金利 金利差(逆ザヤ) 2025年6月1.94%(5月22日)1.89%-0.05ポイント 2025年7月1.88%(6月20日)1.84%-0.04ポイント 2025年8月2.02%(7月18日)1.87%-0.15ポイント 2025年9月2.08%(8月21日)1.89%-0.19ポイント 2025年10月2.12%(9月19日)1.89%-0.23ポイント 2025年11月2.15%(10月17日)1.90%-0.25ポイント ※出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 【フラット35】2025年12月金利予想 2025年12月の金利予想レンジは1.90%~1.95% 2025年11月は、新発10年国債利回りが1.79%まで急上昇し、機構債の表面利率も2.30%と過去半年で最大の上昇幅を記録しました。 通常であれば、この水準の機構債利率に連動して【フラット35】の金利も大きく上昇するはずですが、住宅金融支援機構は過去の傾向から急激な変化を避ける調整を行うと見られます。 そのため、2025年12月の【フラット35】金利は1.90%~1.95%と予想します。これは、前月比で最大でも+0.05ポイント程度の上昇にとどまる見込みです。 【フラット35】金利推移と2025年12月予想 9月 10月 11月 12月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 1.89% 1.89% 1.90% 1.90%~1.95%※12/1発表の金利は1.97%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:1.90%「激変緩和」 このシナリオでは、住宅金融支援機構が国債利回りや機構債の急騰をあえて反映させず、金利を据え置く、または最小限の上昇に抑えると想定します。 背景には、住宅ローン利用者の負担増を避ける政策的意図があります。過去の事例でも、急騰局面では「激変緩和」が適用され、金利上昇幅は0.00~0.03ポイント程度に抑えられたケースが多く見られます。この場合、2025年12月の金利は前月と同じ1.90%となる可能性があります。 シナリオ②:1.95%「マイナス幅の限度+激変緩和」 もう一つのシナリオは、逆ザヤの限度を考慮しつつ、過去の調整パターンを踏まえたものです。2025年10月の機構債の表面利率と2025年11月の【フラット35】の金利差は0.25ポイントと過去最大に拡大しました。 もしこの差を維持するなら、2025年12月の【フラット35】金利は2.05%になる計算ですが、これは前月比で+0.15ポイントと急激な上昇です。過去の事例では、こうした急騰局面では「激変緩和」により上昇幅を0.05ポイント程度に抑える傾向があるため、1.95%が現実的な上限と考えられます。 主要データ(機構債・国債・ローンチスプレッドの推移) 主要データ(2025年11月20日時点) 機構債発表日 2025年8月21日 2025年9月19日 2025年10月17日 2025年11月20日 機構債の表面利率(※1) 2.08% 2.12% 2.15% 2.30% 新発10年国債利回り(※2) 1.61% 1.61% 1.64% 1.79% ローンチスプレッド(※1) 47bps(0.47%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】2025年12月金利予想の背景にある4つの要素 新発10年国債利回りの急上昇(+0.15ポイント) 2025年10月から11月にかけて、新発10年国債利回りは1.64%から1.79%へ急伸しました。この背景には、高市政権による積極的な財政出動と、インフレ期待の高まりがあります。 特に、2025年度補正予算案の規模拡大が議論され、国債増発観測が強まったことで、長期金利に上昇圧力がかかりました。国債利回りは【フラット35】の金利決定に直結するため、この急騰は12月金利予想において最も重要な要素です。 機構債の表面利率と逆ザヤ問題(過去最大0.25ポイント) 機構債の表面利率は、2025年10月の2.15%から11月には2.30%へと0.15ポイント上昇しました。これに対して、【フラット35】の金利は10月から11月に1.90%へわずかに上昇しただけで、両者の差は0.25ポイントに拡大しました。 この「逆ザヤ」は過去最大であり、住宅金融支援機構が収益を犠牲にして低金利を維持している状態です。非営利の政策機関だからこそ可能な対応ですが、この状況が長期化すれば、今後の金利政策に影響を与える可能性があります。 ローンチスプレッドの横ばい傾向と意味 ローンチスプレッドとは、機構債の表面利率と新発10年国債利回りの差であり、2025年12月時点で0.51%の横ばいです。この横ばい傾向は、機構債のリスクプレミアムが安定していることを示し、市場が長期金利の急騰を一時的な現象と見ている可能性を示唆します。 つまり、スプレッドが拡大していないことは、【フラット35】の金利が急騰するリスクをやや緩和する要因となっています。 E55債の登場|低コスト資金調達の可能性 2025年10月に導入されたE55債は、住宅金融支援機構が新たに採用した資金調達手段です。従来の機構債と同様、住宅ローン債権を裏付けに発行されますが、特徴はより低コストである点にあります。 具体的には、表面利率が1.63%と機構債よりも低く、ローンチスプレッドも0.36%と小さいため、発行額が拡大すれば、機構はより安価に資金を調達でき、【フラット35】の低金利維持に寄与する可能性があります。今後、E55債の発行動向は、フラット35の金利動向を占う重要な指標となるでしょう。 E55債の概要 発表日 表面利率 10年国債利回り ローンチスプレッド 2025年10月22日1.63%1.27%0.36% ※1 出典)住宅金融支援機構「貸付債権担保E55債発行条件」 【フラット35】2025年12月金利予想の再確認と今後の見通し 住宅ローン利用者への影響|返済額はどう変わる? 2025年12月の【フラット35】金利は、前月比で最大+0.05ポイント程度の上昇が見込まれます。仮に金利が1.90%から1.95%に上昇した場合、借入金額3,000万円・返済期間35年のケースでは、月々の返済額が764円増加します。 一見すると小幅な増加ですが、長期的には総返済額で約320,000円の差が生じるため、金利動向を注視することが重要です。 借り換え検討のタイミングと注意点 今後の金利上昇局面では、以下のポイントを押さえておく必要があります。 固定金利の早期確保:変動金利から固定金利への切り替えを検討するタイミング 借り換えシミュレーションの実施:金利差だけでなく、諸費用や残債額を考慮した総合判断 フラット35の特徴を理解:長期固定で安心感がある一方、借り換え時の手数料や団信条件も確認 特に、今後の国債利回りの動向次第では、民間銀行の固定金利が先に上昇する可能性があるため、早めの行動がリスク回避につながります。 低金利はいつまで続く?政策と市場動向を徹底分析 高市政権の積極財政とインフレ圧力により、長期金利は上昇傾向にあります。しかし、住宅金融支援機構は政策的役割を担う非営利機関であり、「住宅金融の円滑化」を目的に、急激な金利上昇を抑える調整を続けています。 さらに、2025年10月に導入されたE55債による低コスト資金調達が進めば、【フラット35】の低金利維持に寄与する可能性があります。ただし、逆ザヤが長期化すれば、将来的には金利引き上げ圧力が強まるため、2026年以降は緩やかな上昇トレンドに入る可能性も視野に入れておくべきでしょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
住宅ローンは金利が低く、住宅ローン控除などの優遇措置もあるため、「投資用物件の購入に使えたら」と考える方もいるかもしれません。しかし、住宅ローンはあくまで自己居住用の住宅を購入するためのローンであり、投資目的での利用は契約違反となります。 この記事では、住宅ローンで不動産投資をすると「なぜばれるのか」、契約違反によって生じる影響、そしてやむを得ない事情がある場合に賃貸が認められる条件について解説します。 住宅ローンで不動産投資をしてはいけない理由 住宅ローンは、自己居住用の住宅を購入するためのローンです。投資目的で利用すると、契約違反となり、金融機関から一括返済の請求や信用情報への影響など、厳しい対応を受けることがあります。 たとえば、全期間固定金利のフラット35では、利用条件に「第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金にはご利用いただけません」と明記されています。 このように、住宅ローンはあくまで「自分や親族が住む家」のためのローン商品であり、投資用物件の購入には使えません。 出典)【フラット35】「ご利用条件」 住宅ローンと不動産投資ローンの違い 住宅ローンと不動産投資ローンでは、資金使途や金利相場、税制優遇などに明確な違いがあります。 項目 住宅ローン 不動産投資ローン 主な担保対象 自己居住用住宅 賃貸用不動産 金利相場 一般的に低め 一般的に高め 住宅ローン控除 あり なし ※筆者作成 住宅ローンは金利が低く、一定の条件を満たせば住宅ローン控除も受けられます。一方、不動産投資ローンは住宅ローン控除の対象外で、金利も高めです。 つまり、住宅ローンを不正に使って投資を行うことは、制度の趣旨に反する行為であり、発覚した場合には重大なペナルティを受けるリスクがあります。 住宅ローンの不正利用が発覚する主な理由 金融機関は、住宅ローンの契約者の居住実態を複数の方法で確認しています。そのため、投資目的での不正利用は意外なところから発覚することもあります。 以下に、発覚する場合の具体例を紹介します。 金融機関からの郵便物が届かない 住宅ローンの返済中は、年末残高証明書や返済予定表などの書類が契約者宛に郵送されます。しかし、投資目的で物件を賃貸に出していると、これらの郵便物が届かず返送されることがあります。 これらの郵便物は「転送不要郵便」で送られるため、転送届を出しても新住所には届かず、結果として居住実態が明らかになる場合があります。 契約者の自宅訪問で発覚 金融機関の担当者が、居住確認のために現地を訪問する場合もあります。これは、ローン契約時や返済中の定期的な確認として行われることがあります。 このとき、契約者以外の人物が住んでいることや、空室であることが判明した場合、不正利用が疑われ、調査が行われることがあります。 確定申告で発覚 不動産投資による家賃収入がある場合、不動産所得として確定申告が必要です。住宅ローンを組んだ直後から不動産所得が発生していると、税務署が不正利用の疑念を持つ場合があります。 特に、住宅ローン控除を受けている場合は、「居住の実態」が要件となるため、家賃収入との整合性が取れないと、控除の否認や調査の対象になることもあります。 フラット35における不正利用事案と機構の対応 2018年、フラット35において「投資用物件を自己居住用と偽る」「住宅購入価格を水増しした売買契約書で融資申し込みを行う」といった不正利用の疑いが多数確認されました。 この問題を受けて、住宅金融支援機構は、特定の住宅売主や不動産仲介業者が関与した113件の融資案件について調査を実施し、その結果、105件で不適正利用の事実が確認されました。 ■不正利用の主な内容 投資目的での利用 自己居住用と偽ってフラット35を申し込み、実際には投資目的で物件を取得。 売買価格の水増し 実際の住宅購入価格より高額な売買契約書を作成し、過剰な融資を受ける。 出典)住宅金融支援機構「フラット35の不適正利用懸念事案に係る調査結果の公表」 住宅金融支援機構の対応 上記のような事案に対し、住宅金融支援機構は以下のような厳正な対応を行いました。 借入金の一括返済請求など、法的措置も含めた厳正な処置 関係機関の調査等への協力 再発防止策の実施(お客さまへの注意喚起の徹底・融資審査の強化) また、お客さまが融資住宅に居住していない可能性のある案件については、不適正利用のモニタリングも継続的に実施していく方針が示されています。 住宅ローンを使った不動産投資の契約違反による影響 住宅ローンを投資目的で利用することには、契約違反による重大な影響を受ける可能性があります。以下に、契約違反によって生じる主な影響を解説します。 一括返済を求められる 住宅ローン契約では「期限の利益の喪失条項」が設けられています。これは、契約違反があった場合に、分割返済の権利(期限の利益)を失い、残債の一括返済を求められるというものです。 「期限の利益」とは、契約通りに返済している限り、毎月の分割返済が認められる権利のことです。しかし、資金使途違反(=投資目的での利用)が発覚すると、この権利を失い、金融機関から残債の一括返済を迫られる場合があります。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 新たな借り入れが難しくなる 住宅ローンの不正利用が発覚し契約解除や延滞が発生した場合、その情報が個人信用情報に記録されます。金融機関はローン審査時に信用情報を確認するため、将来的な住宅ローンやその他の融資の審査に通りにくくなることがあります。 住宅ローンを利用していても賃貸が認められる条件 住宅ローンは基本的に自己居住用の住宅を対象としていますが、一定の条件を満たす場合に限り、賃貸が認められる場合もあります。ここでは、代表的な2つの賃貸が認められる場合について紹介します。 転勤などで自宅に住めなくなった場合 転勤や長期入院など、やむを得ない事情により契約者が住宅に居住できなくなった場合、金融機関の承諾を得ることで、一定期間の賃貸が認められる可能性があります。 ただし、対応は金融機関によって異なるため、事前に必ず相談することが重要です。また、居住していない期間は原則として住宅ローン控除の対象外となります。 なお、転勤後に再び住宅に戻って居住する場合は、一定の要件を満たせば、控除の再適用が認められる場合もあります。詳しくは所轄の税務署などに確認しましょう。 出典) ・【フラット35】「年収による借入額などの制限はありますか。」 ・国税庁「No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等」 賃貸併用住宅を取得する場合 賃貸併用住宅とは、自己居住スペースと賃貸用スペースが同じ建物内に共存する住宅のことです。この場合、以下のような条件を満たすことで住宅ローンの利用が認められる可能性があります。 居住部分の床面積が建物全体の床面積の2分の1以上であること 自己居住用としての利用が明確であること これらの条件を満たしていれば、住宅ローンの対象として認められる場合がありますが、金融機関によって判断基準が異なるため、事前に確認が必要です。 出典)【フラット35】「対象となる住宅・技術基準」 まとめ 住宅ローンは自己居住用を前提とした制度であり、賃貸などの投資目的での利用は契約違反となります。不正が発覚すれば、一括返済や信用情報への影響など、重大な契約違反の結果を招く恐れがあります。 一方で、住宅ローンを利用していても、転勤などやむを得ない事情がある場合や、賃貸併用住宅の条件を満たす場合には、金融機関の承諾を得て賃貸が認められることもあります。ただし、自己判断せず、事前に金融機関や税務署に相談し、正しい手続きを踏むことが重要です。 「金利が低いから」「控除があるから」と安易に住宅ローンを投資に使うのではなく、目的に合ったローンを選ぶことが、将来のトラブルを防ぎ、安心した資産形成につながります。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローンとは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説 不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして資金を借りるローンのことです。無担保ローンに比べて、まとまった金額を低金利で借りられる一方、返済が滞ると不動産が競売にかけられるリスク...
新築住宅の購入にあわせて、門扉や塀、駐車場などの外構工事を検討する方は少なくありません。ところが、外構工事費用は数十万円〜数百万円と高額になることもあり、「住宅ローンに組み込めるのか?」と悩む人も多いのではないでしょうか。 この記事では、外構工事費用を住宅ローンに含めるための条件や注意点、リフォームローンとの違いまでわかりやすく解説します。 外構工事とは 外構工事とは、住宅の建物本体以外に施す工事のことで、一般的には「エクステリア工事」とも呼ばれます。門扉や塀、駐車場、玄関アプローチなど、住まいの外回りを整える工事が対象となり、住宅の機能性・安全性・美観を高める重要な役割を担います。 代表的な外構工事には、以下のようなものがあります。 駐車場の舗装やカーポートの設置 門扉・塀・フェンスの設置 玄関アプローチの整備 ウッドデッキや庭の造園 外構工事費用は、工事の内容や範囲、デザイン、使用する素材などに応じて変動します。費用を正確に把握するには、複数の業者から見積もりをとることが重要です。 特に新築住宅の場合、外構工事の検討タイミングによって予算や工事がスムーズに進むかが左右されます。物件の引き渡し直前では打ち合わせの時間が限られるため、建物工事の着工前後に外構も含めて早めに相談することが理想的です。これにより、予算の確保や工事スケジュールの調整がしやすくなり、後々のトラブルも防ぎやすくなります。 外構工事費用は住宅ローンに組み込める? 外構工事費用を住宅ローンに組み込めるかどうかは、依頼方法と金融機関の取り扱い方針によって異なります。以下の2つの観点から確認しておきましょう。 依頼先による違い 外構工事の依頼方法には、主に以下の2つがあります。 住宅建築と外構工事を工務店やハウスメーカーに一括して依頼する方法 外構工事のみを別の専門業者に依頼する方法 一括依頼の場合は、外構工事費用も住宅ローンに含めることが可能なケースが多く、外構工事にかかる具体的な内容や費用が契約書等に明記されていれば金融機関も対応しやすくなります。 一方、外構工事を別の専門業者に依頼する場合は、住宅ローンに組み込めないことが一般的です。その場合は、リフォームローンやフリーローンなど、別の資金調達手段を検討する必要があります。 金融機関による取り扱いの違い 外構工事費用を住宅ローンに組み込めるかどうかは、金融機関の審査基準や契約書類等の内容によって異なります。 例えば、以下のような条件を満たすと、住宅ローンに外構工事費用を組み込める可能性があります。 請負契約書・売買契約書・注文書などに外構工事費用が明記されていること 物件の引き渡しまでに外構工事が完了していること 住宅購入資金と同時に外構工事費用を支払うこと これらの条件を満たす場合、金融機関に契約書類の原本を提示し、写しを提出することで、外構工事費用も住宅ローンの対象として認められることがあります。 出典)フラット35「対象となる住宅の建設費・購入価額とはどのようなものですか?」 外構工事費用を住宅ローンに組み込む際の注意点 外構工事費用を住宅ローンに組み込むことを検討する際は、返済負担、税制優遇、業者選定の自由度など、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。 返済負担に問題がないか 外構工事費用を住宅ローンに含めると、当然ながら借入総額が増加します。これにより、月々の返済額や総返済額がどれくらい増えるのかを事前に試算し、家計への影響を確認しておくことが重要です。 目安として、住宅ローンの返済比率(年収に対する年間返済額の割合)は20%以内に抑えられているか確認しましょう。国土交通省の調査によると、注文住宅の平均返済比率は18.4%です。 将来的な教育費や老後資金などの支出も踏まえ、無理のない返済計画を立てましょう。 出典)国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査p.53」 住宅ローン控除の対象になるか 原則として、外構工事は住宅の取得費用には含まれないため、住宅ローン控除の対象外です。ただし、以下の条件を満たす場合は控除対象となる可能性があります。 外構工事費用が建物の建築費用の10%未満であること 住宅本体と外構工事を同一の事業者に一括して依頼していること(外構工事費用を住宅ローンに組み込んでいること) なお、リフォームローンで外構工事費用を支払った場合は、控除の対象にはなりません。控除の有無によって税負担が大きく変わる可能性があるため、事前に確認しておくことが大切です。 出典)国税庁「門や塀等の取得対価の額」 関連記事はこちら【令和7年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 施工のこだわりが満たされるか 住宅ローンに外構工事費用を組み込むには、基本的に住宅建築工事と外構工事を一括で依頼する必要があります。そのため、外構工事を自分で選んだ専門業者に依頼したい場合は、住宅ローンに含めるのが難しくなることがあります。 一括依頼には、スケジュール調整がしやすく、工事がスムーズに進むというメリットもありますが、依頼先の選択肢が限られることで、価格や品質の比較がしづらくなるリスクもあります。 自分にとって最適な方法を選ぶためには、外構工事の自由度と利便性のバランスをよく検討することが重要です。 外構工事における住宅ローンとリフォームローンの比較 外構工事費用の資金調達方法としては、住宅ローンに組み込む方法のほか、住宅ローンとは別にリフォームローンを利用する方法があります。どちらを選ぶかは、依頼先の専門業者の種類や金融機関の取扱方針、工事のタイミングなどによって異なります。 前述のとおり、住宅ローンは、建物の建築費用とあわせて外構工事費用を一括で借り入れる際に利用されるもので、一定の条件を満たせば外構工事費用も組み込むことが可能です。一方、住宅ローンに外構工事費用を組み込めない場合は、リフォームローンを別途利用することで資金を確保することができます。 以下の表で、住宅ローンとリフォームローンの主な違いを比較してみましょう。 住宅ローン リフォームローン 金利 低め 高め 住宅ローン控除 原則対象外(例外あり) 対象外 業者の自由度 低い 高い ※筆者作成 なお、住宅取得に関連するローンとして「諸費用ローン」があります。これは、住宅ローンに組み込めない事務手数料や登記費用などの借り入れに利用されますが、外構工事費用は基本的に対象外です。 また、資金使途に制限のない「フリーローン」を利用する方法もあります。こちらは外構工事費用にも使えますが、住宅ローンやリフォームローンに比べて金利が高めに設定されているため、慎重な検討が必要です。 まとめ 外構工事費用は、住宅ローンに組み込めるケースと組み込めないケースがあります。建築工事と外構工事を一括で依頼し、契約書類等で金額が確認できる場合は、住宅ローンに含められる可能性があります。一方、別の専門業者に依頼する場合は、リフォームローンなどの利用が必要です。 それぞれのローンには、金利や控除の対象、業者選定の自由度などに違いがあるため、返済負担や将来の支出も含めて慎重に検討しましょう。外構工事の内容や費用は早めに計画し、資金調達方法を含めて、自分に合った選択をすることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 手取り30万円で月10万円返済はきつい?住宅ローンの適正額とは 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するのは、果たして現実的なのでしょうか? この記事では、返済負担率という指標から、無理なく返済できる借入額の目安(=適正額)を具体的にシミュレーショ...
住宅ローンを考えるとき、「最大でいくら借りられるか」ではなく、「将来も安心して返済できるか」が大切なポイントです。この記事では、年収1,400万円の方に向けて、借入可能額や月々の返済額のシミュレーションを具体的にご紹介します。 この記事は関連記事の「年収別・住宅ローンの借入適正額早見表」の中でも、年収1,400万円の方向けの解説記事です。「年収別・住宅ローンの借入適正額早見表」では、他の年収層の目安も確認できますので、併せてご覧ください。 関連記事はこちら【早見表】年収別・住宅ローンの借入適正額 年収1,400万円の返済負担率別にみる借入可能額と家計への影響 年収1,400万円の方が住宅ローンを検討する際、借入額は「返済負担率」によって大きく変わります。ここでは、返済負担率15%〜35%までの借入可能額の目安をシミュレーションします。 【条件】 返済期間:35年 適用金利:1.0% 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 返済負担率 年間返済額 借入可能額の目安 15% 210万円 約6,199万円 20% 280万円 約8,265万円 25% 350万円 約1億332万円 30% 420万円 約1億2,398万円 35% 490万円 約1億4,465万円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 ※本試算は、住宅保証機構株式会社の「住宅ローンシミュレーション」をもとに算出した参考値です。実際の借入可能額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 返済負担率が高くなるほど借入可能額は増えますが、将来の支出やライフプランを踏まえた慎重な資金計画が重要です。無理のない返済額を見極めるためにも、複数のシミュレーションを行い、家計への影響を具体的に把握しておきましょう。 年収倍率から見る年収1,400万円の購入価格の目安 住宅購入の予算を考える際に参考になる指標のひとつが「年収倍率」です。これは、住宅購入にかかる所要資金を世帯年収で除した数値で、住宅金融支援機構の調査によると、フラット35利用者の年収倍率は、住宅の種類によって平均的な倍率が異なります。 住宅金融支援機構の調査データを基に年収1,400万円の場合を算出すると、各住宅の種類ごとに、過去の購入実績に基づく「平均的な購入価格」は以下のようになります。 住宅の種類 年収倍率 平均的な購入価格(年収×年収倍率) 土地付注文住宅 7.5倍 1億500万円 マンション 7.0倍 9,800万円 注文住宅 6.9倍 9,660万円 建売住宅 6.7倍 9,380万円 中古マンション 5.5倍 7,700万円 中古戸建 5.3倍 7,420万円 出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」をもとに筆者作成 ただし、年収倍率は住宅購入の予算を考える際に参考になる指標のひとつであり、実際に無理なく返済できる金額とは異なります。資金計画を立てる際には、返済負担率や将来の支出も踏まえたシミュレーションを併せて行うことが重要です。 頭金1,500万円で購入した場合の返済額シミュレーション 年収1,400万円の方であれば、土地付き注文住宅やマンションなど、比較的高額な物件も現実的な選択肢になります。実際、首都圏では新築マンションの平均価格が9,000万円を超えていますが、十分に手が届く水準です。 ここでは、頭金1,500万円を用意した場合に、物件価格ごとにどれくらいの借入額と月々の返済額になるのかを試算します。家計への影響をイメージするための参考にしてください。 【条件】 返済期間:35年 適用金利:1.0% 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 物件価格 借入額 月々の返済額 総返済額 8,000万円 6,500万円 183,485円 77,063,810円 9,500万円 8,000万円 225,828円 94,847,799円 1億1,000万円 9,500万円 268,171円 112,631,772円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 変動金利と固定金利で月々の返済額はどう変わる? 住宅ローンの金利タイプは、月々の返済額に大きく影響します。たとえば、変動金利は初期の返済額を抑えられる一方で、将来的に金利が上がると返済額も増えるリスクがあります。一方、固定金利は金利が一定のため、返済額が変わらず、長期的な資金計画を立てやすいのが特徴です。 将来の収入や支出の見通しを踏まえて、無理のない返済ができる金利タイプを選びましょう。 以下は、仮に変動金利型の当初の金利を0.5%、固定金利型の金利を1.5%とした場合の月々の返済額をシミュレーションしたものです。 【条件】 借入額:6,500万円 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 金利タイプ 金利 月々の返済額 変動金利型 0.5% 168,730円 固定金利型 1.5% 199,019円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 関連記事はこちら住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 500万円の繰り上げ返済でどれだけの差が出る? 繰上返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があります。どちらも住宅ローンの元金を前倒しで返済することで利息負担を軽減できますが、目的や効果が異なります。 特長 期間短縮型 返済額軽減型 返済期間 短縮される 変わらない 月々の返済額 変わらない 減少する イメージ図(例) ※筆者作成 関連記事はこちらフラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つのポイント 以下の表は、5年後に500万円を繰上返済したとき、実際にどれくらいの差が出るのか、シミュレーションしたものです。 【条件】 借入額:6,500万円 適用金利:1.0% 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 通常返済 繰上返済 期間短縮型 返済額軽減型 月々の返済額 183,485円 183,485円 167,403円(軽減額16,082円) 返済期間 35年 約32年(約3年短縮) 35年 総返済額 77,063,810円 75,424,465円 76,274,287円 利息軽減額 ー 1,639,345円 789,523円 出典)住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成 繰上返済は、家計に余裕があるときに活用することで、将来の負担を軽くする有効な手段です。ライフプランや資金の流動性を踏まえ、無理のない範囲で計画的に進めましょう。 まとめ 年収1,400万円の方は、比較的高額な物件も選択肢に入るため、住宅購入の幅が広がります。しかし、借入額や返済額は慎重に検討することが重要です。返済負担率や年収倍率、金利タイプの違いによって、月々の返済額は大きく変わります。 また、繰上返済の活用によって、返済期間を短縮したり毎月の返済額を減らしたりすることも可能です。住宅ローンは長期にわたる支出だからこそ、ライフプランや将来の支出も見据えた資金計画が欠かせません。 複数のシミュレーションを行い、「無理なく返せるか」を軸に、納得のいく住宅購入を目指しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
住宅ローンを検討していると、「事務手数料はいつ支払うのか?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。実際、事務手数料は数十万~数百万円にのぼることもあり、支払時期や金額を把握しておくことは、資金計画を立てるうえで非常に重要です。 この記事では、住宅ローンの事務手数料の支払時期や負担を軽減する具体的な方法について、わかりやすく解説します。 住宅ローンの事務手数料とは 住宅ローンの事務手数料とは、ローン契約時に金融機関に支払う手数料のことです。「融資手数料」や「事務取扱手数料」と呼ばれることもあり、金融機関によって名称が異なります。 この手数料は、住宅ローンの審査や契約手続きなどにかかる事務コストをカバーするためのもので、借入金額や契約内容によって金額が異なります。 事務手数料には、主に以下の2種類があります。 定額型 借入金額にかかわらず、一定額の手数料を支払う方式 定率型 借入金額に対して、一定の割合で手数料が決まる方式 関連記事はこちら住宅ローンの保証料型と融資手数料型の違いとは? 事務手数料と保証料との違い 事務手数料とは別に、「保証料」が必要になる場合もあります。保証料は、借主が万が一返済できなくなった場合に、保証会社が代わりに返済を行うための費用です。 保証料の支払方法には、以下の2種類があります。 一括前払い方式(外枠方式) 住宅ローンの借入時に、保証料をまとめて支払う方式 金利上乗せ方式(内枠方式) 金利に一定割合の保証料を上乗せし、毎月の返済に含めて支払う方式 金融機関によっては、保証料が不要な場合もあれば、事務手数料と保証料の両方が必要な場合もあります。そのため、事務手数料と保証料の合計額を確認し、総額の費用として比較検討することが大切です。 関連記事はこちら住宅ローンの保証会社とは?役割や種類、利用時の注意点を解説 住宅ローンの事務手数料の支払時期と支払方法 支払時期 住宅ローンの事務手数料は、融資実行時に一括で支払うのが一般的です。この手数料は、融資を受けるための事務手続きにかかる費用であり、毎月のローン返済に含まれるものではありません。そのため、契約時点でまとまった金額を準備しておく必要があります。 支払方法の違い 事務手数料の支払方法は金融機関によって異なり、主に次の2つのパターンがあります。 借入金額から事務手数料を差し引いた金額が、振り込まれる方式 借入金額が全額振り込まれた後、事務手数料が引き落とされる方式 例えば、借入金額が3,000万円で事務手数料が66万円の場合、前者の方式では、実際に振り込まれる金額は2,934万円となります。対して、後者の方式では、一時的に3,000万円が振り込まれますが、すぐに手数料分の金額が引き落とされます。 どちらの方式になるかは金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。 出典)フラット35「融資金は、融資手数料等の諸経費が差し引かれて交付されるのですか?」 住宅ローンの事務手数料が支払えない場合の対処法 住宅ローンの事務手数料が高額になり、一括で支払うのが難しい場合は、以下のような方法を検討しましょう。 住宅ローンに組み込む 金融機関によっては、事務手数料をはじめとする諸費用(保証料、登記関連費用など)も含めて借り入れが可能です。この方法を選べば、契約時にまとまった金額を用意する必要がなくなります。ただし、借入金額の増加によって、総返済額が増加する点に注意しましょう。 諸費用ローンを組む 諸費用ローンとは、住宅ローンとは別に、登記費用や事務手数料など、住宅購入時に発生する諸費用をカバーするためのローンです。一般的に、住宅ローンよりも金利が高めに設定されています。そのため、検討する際は金利や返済期間を比較し、本当に必要かどうかも踏まえて検討することが大切です。 住宅ローンの事務手数料の負担を軽減する3つの方法 住宅ローンの事務手数料は、借入金額や契約内容によって高額になることがあります。少しでも負担を軽減するためには、以下の3つのポイントを押さえておくと安心です。 借入金額を抑える 手数料タイプが定率型の場合、借入金額に応じて事務手数料が決まります。そのため、借入金額を抑えることで、事務手数料の負担軽減につながります。以下は、事務手数料率2.2%とした場合のシミュレーションです。 【手数料率(2.2%)の場合】 借入金額 事務手数料 2,000万円 440,000円 2,500万円 550,000円 3,000万円 660,000円 ※筆者作成 上表のように、借入金額を500万円減らすと、11万円の手数料軽減につながります。また、借入金額を抑えることで利息の支払いも減るため、総返済額の軽減にも効果があります。 手数料が有利になる支払方式を選ぶ 金融機関によっては、定額型と定率型のどちらかを選べる場合があります。借入金額が多い場合は、定額型の方が割安になることもあるため、事前に比較しておきましょう。 例えば、借入金額が3,000万円で定率型の手数料率が2.2%の場合、事務手数料は66万円です。一方、定額型では手数料が一定(例:33万円など)であるため、借入金額が多いほど有利になる可能性があります。 ただし、定額型を選ぶと別途保証料が必要になるケースがあるほか、借入金利が定率型よりも高めに設定される傾向があります。そのため、事務手数料だけでなく、保証料を含めた総費用で比較することが重要です。 複数の金融機関を比較検討する 住宅ローンの事務手数料や保証料の設定は、金融機関によって大きく異なります。同じ借入金額でも、手数料の差で数万円〜十万円以上の違いが出ることもあります。 事務手数料だけでなく、保証料・金利・その他の諸費用も含めて、トータルコストで比較検討することが、負担を軽減するためのポイントです。比較サイトや金融機関の公式ページを活用し、複数社の条件を確認してから申し込むようにしましょう。 まとめ 住宅ローンの事務手数料は、融資実行時に一括で支払うのが一般的です。金額は数十万~数百万円にのぼることもあり、支払方法やタイミングを事前に把握しておくことで、資金計画に余裕が生まれます。 一括での支払いが難しい場合は、事務手数料を住宅ローンに組み込む、または諸費用ローンを利用するなどの対処法もあります。また、借入金額を抑える、支払方式を選ぶ、複数の金融機関を比較するなどの工夫によって、負担を軽減することも可能です。 事務手数料は金融機関によって条件が異なります。保証料などの諸費用も含めて総費用で比較検討し、自分にとって最適な住宅ローンを選びましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 マイホームの購入予算はどう決める?頭金や住宅ローンの考え方 マイホームは高額の買い物であるため、あらかじめ予算を決めておく必要があります。資金計画を立てずに購入し、住宅ローンの返済が滞るようなことがあれば、最悪の場合はマイホームを手放すことになるかも...
住宅ローンを検討する際、「30年」と「35年」のどちらの返済期間を選ぶべきか迷う方は多いのではないでしょうか。毎月の返済額や総返済額、完済時の年齢などを比較し、自分のライフプランに合った期間を選ぶことが大切です。 この記事では、30年ローンと35年ローンの違いをわかりやすく解説し、選び方のポイントを具体的にご紹介します。 返済期間35年で住宅ローンを組む人が多い 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、返済期間「30年超~35年以内」を選ぶ人が全体の45.8%と最も多く、次に多い「35年超~40年以内」でも18.4%にとどまっています。一方、「25年超~30年以内」は8.5%と少数派であり、35年ローンを選ぶ人が圧倒的に多いことがわかります。 これはあくまで「年数の範囲」での集計ですが、30年よりも長い返済期間を選ぶ傾向が強いことは明らかです。 返済期間 割合 10年以内 3.6% 10年超~15年以内 3.7% 15年超~20年以内 6.3% 20年超~25年以内 6.6% 25年超~30年以内 8.5% 30年超~35年以内 45.8% 35年超~40年以内 18.4% 40年超~50年以内 7.1% 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査 p.5」 住宅の種類ごとの返済期間の傾向 国土交通省の「住宅市場動向調査」によると、住宅の種類によって平均返済期間に差があることがわかります。 住宅の種類 平均返済期間 注文住宅(建築) 33.9年 注文住宅(土地) 35.6年 分譲戸建住宅 30.9年 分譲集合住宅 28.2年 既存(中古)戸建住宅 25.5年 既存(中古)集合住宅 27.7年 リフォーム住宅 12.3年 出典)国土交通省「住宅市場動向調査 p.53」 注文住宅は土地の購入が先行し、建築費が高額になりやすいため、返済期間が長くなる傾向があります。一方で、リフォーム住宅を含む中古住宅は購入費用を抑えられるため、短期間での返済が多いようです。 住宅ローンの返済額は30年と35年でどう変わる? 借入金額4,000万円と6,000万円のケースで、「元利均等返済、ボーナス払いなし」の条件で返済シミュレーションを行うと、以下のようになります。 毎月の返済額 毎月の返済額がどれくらい変化するか確認しましょう。 借入金額4,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(月額) 35年ローン(月額) 月額差 0.5% 119,675円 103,834円 ▲15,841円 1.0% 128,655円 112,914円 ▲15,741円 1.5% 138,048円 122,473円 ▲15,575円 2.0% 147,847円 132,505円 ▲15,342円 借入金額6,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(月額) 35年ローン(月額) 月額差 0.5% 179,513円 155,751円 ▲23,762円 1.0% 192,983円 169,371円 ▲23,612円 1.5% 207,072円 183,710円 ▲23,362円 2.0% 221,771円 198,757円 ▲23,014円 出典)住宅保証機構株式会社「返済額の試算」をもとに筆者作成。 返済期間を30年から35年に延ばすと、月々の返済額は軽減されます。借入金額が4,000万円の場合15,000円強、6,000万円の場合23,000円強と、借り入れが大きいほど月々の差額も増え、家計の負担を抑える効果があります。 総返済額 次に同様の条件で総返済額がどれくらい変化するかを確認しましょう。 借入金額4,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(総返済額) 35年ローン(総返済額) 総返済額差 0.5% 43,083,107円 43,610,126円 +527,019円 1.0% 46,315,920円 47,423,753円 +1,107,833円 1.5% 49,697,092円 51,438,816円 +1,741,724円 2.0% 53,225,058円 55,651,862円 +2,426,804円 借入金額6,000万円の場合(元利均等返済・ボーナス払いなし) 適用金利 30年ローン(総返済額) 35年ローン(総返済額) 総返済額差 0.5% 64,624,757円 65,415,305円 +790,548円 1.0% 69,473,978円 71,135,774円 +1,661,796円 1.5% 74,545,747円 77,158,299円 +2,612,552円 2.0% 79,837,661円 83,478,019円 +3,640,358円 出典)住宅保証機構株式会社「返済額の試算」をもとに筆者作成。 借入金額4,000万円では、金利2.0%の場合で約240万円、6,000万円では約364万円の差が生じます。借入金額の差も当然ながら、金利が高いほど差額は顕著に大きくなります。 このように長期にわたる住宅ローンでは、「毎月の返済額の減少」と「総返済額の増加」のバランスをどう取るかが重要になります。 住宅ローンの返済期間を決める4つのチェックポイント 住宅ローンの返済期間は、月々の支払いだけでなく、将来のライフプランにも大きく影響します。以下の4つの視点から、自分に合った返済期間を見極めましょう。 1. 完済時年齢 金融機関で設定されている住宅ローンの年齢制限(完済時年齢)は、75~80歳が一般的です。定年(65歳)までに完済したい場合は、現在の年齢から逆算して返済期間を設定するのがポイントです。たとえば、現在30歳なら35年ローン、35歳なら30年ローンを組むことで、定年までに完済可能です。 なお、35歳で35年ローンを組んだとしても、計画的に繰り上げ返済を活用することで、定年時に住宅ローンを完済するプランを立ててもいいでしょう。 2. 毎月の返済額と金利タイプ 返済期間が長くなるほど、毎月の返済額は少なくなります。ただし、長期のローンでは金利変動の影響を受けやすくなるため、金利タイプの選択が重要です。フラット35などの全期間固定金利なら毎月の返済額が固定され、変動金利なら金利次第で返済額が変動するため、将来的なリスクを抱えます。 関連記事はこちら住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 3. 総返済額 同じ借入金額でも、返済期間が長くなるほど利息の支払いが増え、総返済額が高くなります。金利や借入金額によっては、30年と35年で数百万円の差が生じることもあるため、慎重な比較が必要です。 4. 収入の安定性とライフイベントとのバランス 長期にわたる住宅ローンでは、安定した収入が欠かせません。以下のようなライフイベントも踏まえて、無理のない返済期間を設定しましょう。 ・転職・独立・退職などの収入変化 ・教育費・車の買い替え・老後資金などの支出 ・将来の資産形成や貯蓄とのバランス 返済期間を長めに設定することで、毎月の負担を軽減し、他の支出に余裕を持たせる選択も可能です。 住宅ローンの返済期間は後から変更できる? 住宅ローンの返済期間は、契約時に決定するのが基本です。しかし、ライフスタイルや収入状況の変化に応じて、借入後でも返済期間を調整できるケースがあります。ここでは、主な2つの方法をご紹介します。 返済期間を延長する方法 収入の減少や支出の増加などで返済が厳しくなった場合、返済期間の延長を相談できる金融機関もあります。たとえば、【フラット35】では、返済中の金融機関にて返済期間の延長に関する相談を受け付けています。事前に制度の有無や条件を確認しておくことで、万が一のときにも安心です。 出典)【フラット35】「月々の返済でお困りになったときは」 繰り上げ返済で期間を短縮する方法 手元資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済によって返済期間を短縮することが可能です。繰り上げ返済には、以下の2つのタイプがあります。 期間短縮型 返済期間を短くすることで、利息の支払いを減らす効果が大きいタイプです。総返済額を減らしたい人に向いています。 返済額軽減型 返済期間はそのままで、毎月の返済額を減らすタイプです。月々の負担を軽くしたい人に向いています。 まとめ 住宅ローンの返済期間は、30年と35年で毎月の返済額や総返済額に大きな違いが生じます。どちらを選ぶべきか迷ったときは、金利や借入金額によるシミュレーションをしながら、収入の安定性や将来のライフイベントも踏まえて判断することが大切です。 また、返済期間は契約後でも延長や繰り上げ返済によって調整できる場合があるため、柔軟な選択肢があることも知っておきましょう。自分のライフプランに合った返済期間を選ぶことが、安心して住宅ローンを返済していく第一歩です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35は頭金・自己資金なしで組める? フラット35は、最長35年間の全期間固定金利の住宅ローンです。マイホーム購入でフラット35を検討する際に、「頭金なしでローンを組めるのか」という疑問を持つ人もいるでしょう。この記事では、頭金...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。2025年10月、自民党の新総裁に利上げ慎重派とされる高市早苗氏が選ばれ、衆議院本会議で第104代内閣総理大臣に正式に指名されました。日本維新の会との連立により過半数を確保し、憲政史上初の女性首相として高市内閣が発足しています。 高市政権の経済・金融政策は、財政出動と持続的な賃上げを重視するスタンスであり、住宅ローン金利にも影響を与える可能性があります。 この記事では、【フラット35】の11月金利予測を中心に、新発10年国債と機構債の金利推移、2つの予測シナリオとその根拠について、わかりやすく解説していきます。 2025年11月の【フラット35】金利は 1.90% に決定しました(更新日:2025年11月4日)。 【フラット35】11月金利予想 高市氏が新総裁に選ばれた直後は「高市トレード」で株価は高騰、新発10年国債利回りも一時は1.7%を超える勢いでしたが、10月中旬頃には、利回りは以前の水準に戻りました。 新発10年国債利回りについては、住宅ローンの固定金利に影響を与え、住宅金融支援機構が【フラット35】の資金調達方法としている機構債の表面利率にも影響してきます。 では早速、これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移と【フラット35】の金利予想です。 10月の金利予想と実態 10月の金利予想では、機構債の表面利率は0.04ポイント上昇したものの、新発10年国債利回りが横ばいであったため、【フラット35】の上昇は抑えられて、1.89%~1.93%の間と予想しました。結果、【フラット35】の金利は予想レンジの下限である1.89%に落ち着きました。 11月の新発10年国債利回りは0.03ポイント上昇し、ローンチスプレッドは横ばいで機構債の表面利率は0.03ポイント上昇しています。前月同様に【フラット35】の金利上昇は抑えられることを見込んで、1.89%~1.92%と予想します。 主要データ(2025年10月17日時点) 機構債発表日 2025年7月18日 2025年8月21日 2025年9月19日 2025年10月17日 機構債の表面利率(※1) 2.02% 2.08% 2.12% 2.15% 新発10年国債利回り(※2) 1.55% 1.61% 1.61% 1.64% ローンチスプレッド(※1) 47bps(0.47%) 47bps(0.47%) 51bps(0.51%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 新発10年国債利回りは便宜上、機構債の表面利率からローンチスプレッドを差し引いた数値としています。 8月 9月 10月 11月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※3) 1.87% 1.89% 1.89% 1.89%~1.92%※11/1発表の金利は1.90%でした ※3 出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 なお、この予測ロジックは以下のとおりです。詳細は後述します。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 新発10年国債利回りと機構債の金利推移 10月の新発10年国債利回りは、1.61%から1.64%へ0.03ポイント上昇し、機構債の表面利率も2.12%から2.15%へ0.03ポイント上昇しました。 ローンチスプレッドとは? 新発10年国債利回りと機構債の表面利率の差は“ローンチスプレッド”といわれます。このローンチスプレッドは、拡大傾向にありました。これは、住宅ローン利用者にとって、新発10年国債利回りが上昇した際に、住宅ローン金利の上昇幅がより大きくなることを意味します。 2025年7月から10月までのローンチスプレッドの動き 2025年7月 :0.47%(前月より+0.02ポイント) 2025年8月 :0.47%(前月と横ばい) 2025年9月 :0.51%(前月より+0.04ポイント) 2025年10月:0.51%(前月と横ばい) 7月から8月にかけては、横ばいで推移しましたが、9月には0.04ポイント拡大し、10月は再び横ばいとなりました。これは、投資家の長期金利の先高観が強まっていることを意味します。 機構債と【フラット35】の金利推移 機構債の表面利率は2.12%から2.15%へ0.03ポイント上昇しました。これに対して、千日太郎の【フラット35】金利予想は、1.89%から1.92%とし、横ばいから0.03ポイントの上昇に抑えられるというものです。 なぜ金利が抑えられるのか? この予想は、過去5か月にわたって【フラット35】が機構債の表面利率を下回っていることにあります。これは、住宅金融支援機構が収益性を問わず、低金利政策を維持していることを意味します。 【フラット35】(買取型)の仕組みをおさらい 【フラット35】(買取型)は、住宅金融支援機構が機関投資家に「機構債」という債券を販売して資金を集め、その資金で住宅ローンを提供する仕組みです(詳細は後述)。簡単に言えば、機構債の表面利率は「仕入れ値」、【フラット35】の金利は「販売価格」にあたります。 2025年6月から10月まで異例のマイナス収支が続く 対象月 機構債(前月) 【フラット35】金利 金利差 6月1.94%1.89%-0.05ポイント 7月1.88%1.84%-0.04ポイント 8月2.02%1.87%-0.15ポイント 9月2.08%1.89%-0.19ポイント 10月2.12%1.89%-0.23ポイント(過去最大) 上記は直近5か月の動きです。5月の機構債の表面利率は、【フラット35】の金利に対して、0.05%マイナスです。これは、住宅金融支援機構が1.94%で資金を仕入れて、1.89%の金利の住宅ローンとしてわたしたちに提供していることを意味します。 続いて、7月は0.04ポイントの差でしたが、8月は0.15ポイントにマイナス幅が一気に拡大し、さらに9月は0.19ポイント、10月は過去最大の0.23%までマイナス幅が拡大しました。つまり5か月連続で異例のマイナス収支が続いているだけでなく、その幅も拡大傾向にあるのです。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えるか?2つの予想シナリオ 千日太郎の予想としては11月も収支がマイナスの状態が続くと見ています。そのため、金利の予想レンジを1.89%~1.92%とし、以下2つの予想シナリオを想定しています。 シナリオ①:1.89%「激変緩和」 10月は新発10年国債利回りが上昇していないにもかかわらず、機構債の表面利率が上昇しています。その上昇をあえて住宅ローンの金利に反映させないというシナリオです。 シナリオ②:1.93%「マイナス幅の限度」 9月の機構債の表面利率と10月の【フラット35】の金利差は、前述のとおり0.23ポイントでした。10月の機構債の表面利率が2.15%なので、仮にマイナス幅を0.23ポイントとすると11月の【フラット35】の金利は1.92%になるというシナリオです。 【フラット35】の金利が抑えられるのはいつまで? 【フラット35】の金利抑制は、日銀がマイナス金利政策を解除した2024年3月以降も続いていました。しかし、機構債の利率を下回る水準をつけたのは2025年6月が初めてです。 この背景には、住宅金融支援機構は非営利の独立行政法人であり、国の政策的役割を担っているという特性があります。しかし、営利を目的としていない住宅金融支援機構といえども、このような状態を永続的に続けられるものではありません。 政局は流動的ですが、高市氏も玉木氏も財政重視の立場をとっているため、今後も住宅金融支援機構がコストを上回る水準で【フラット35】を提供し続けることを期待しています。 【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み 住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。 出典)フラット35「Qフラット35のしくみを教えてください。」 この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入するので、その表面利率は新発10年国債利回りに連動する傾向があります。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
住宅ローンを検討する際、「自分の年収でいくら借りられるのか」と気になる方は多いのではないでしょうか。この記事では、年収400万円〜1,800万円の世帯を対象に、住宅ローンの無理なく返済できる「借入適正額」の目安を早見表でわかりやすく紹介します。 また、将来の生活も見据えた住宅購入の注意点についても解説しています。年収別の詳細ページへのリンクも掲載しているので、ご自身の状況に合った情報をすぐに確認できます。 住宅ローンの「借入適正額」を判断する2つの指標 住宅ローンを検討する際、「いくら借りられるか」だけでなく、「無理なく返済できるか」も重要なポイントです。その判断には、以下の2つの指標が役立ちます。 年収倍率 年収倍率とは、住宅購入に必要な金額が世帯年収の何倍にあたるかを示す指標です。住宅金融支援機構の調査によると、フラット35利用者の年収倍率は、住宅の種類によって以下のように分布しています。 住宅の種類 年収倍率 土地付注文住宅 7.5倍 マンション 7.0倍 注文住宅 6.9倍 建売住宅 6.7倍 中古マンション 5.5倍 中古戸建 5.3倍 出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」 住宅金融支援機構の統計によれば、上図のように住宅の種類によって年収倍率は大きく異なります。ただし、この年収倍率は「購入可能な金額の目安」を示すものであり、必ずしも「無理なく返済できる金額」とは限りません。 また、今回のデータは住宅金融支援機構の調査結果に基づく【フラット35】に限ったものであるため、あくまで参考値として活用し、個別の資金計画を立てることが大切です。 総返済負担率 総返済負担率とは、年収に対して、住宅ローンを含むすべての借り入れの年間返済額が占める割合です。この借り入れには、自動車ローンや教育ローンなども加味して計算されます。この総返済負担率は借り入れの際の審査基準にも利用され、住宅金融支援機構の「フラット35」では、以下のような基準が設けられています。 年収400万円未満:総返済負担率30%以下 年収400万円以上:総返済負担率35%以下 上記の数値はあくまで基準を満たすかどうかのラインで、「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、実際には「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。 返済負担率が低いほど、教育費や老後資金など将来の支出にも余裕を持てます。「いくら借りられるか」ではなく「無理なく返済できる金額」を意識することが、後悔しない住宅購入につながります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」 【早見表】年収別の「借入適正額」 ここでは、総返済負担率20%を前提とした「借入適正額」を年収別に比較します。借入適正額は、以下の条件でシミュレーションしています。 総返済負担率:20% 返済期間 :35年間 返済期間 :35年間 適用金利 :1% 返済方法 :元利均等返済(ボーナス払いなし) 年収 借入適正額 詳細ページ 400万円 約2,361万円 ー 600万円 約3,542万円 ー 800万円 約4,723万円 ー 1,000万円 約5,904万円 ー 1,100万円 約6,494万円 詳細はこちら 1,400万円 約8,265万円 詳細はこちら 1,600万円 約9,446万円 ー 1,800万円 約10,627万円 詳細はこちら ※【住宅保証機構株式会社】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。 ※詳細情報は順次公開予定です。公開後、リンクからご覧いただけます。 自宅購入で後悔しないための4つのポイント 住宅ローンの返済だけでなく、購入後の生活も見据えた資金計画が大切です。ここでは、無理のない住宅購入を実現するために、特に重要な4つのポイントをご紹介します。 自己資金をできるだけ多めに準備する 国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する方(一次取得者)の自己資金比率は、平均で20〜40%程度です。物件価格の2割以上の自己資金を準備できれば、借り入れを抑えられ、毎月の返済負担も軽減できます。 出典)国土交通省「令和5年度 住宅調査報告書(一次取得・二次取得別の購入資金)p.50」 金利タイプは将来の安定性も考慮する 近年、日銀の政策金利引き上げを受けて、住宅ローンで全期間固定金利を選ぶ人が増えています。2024年10月の調査では28.0%、2025年4月では30.7%と上昇傾向がみられます。一方、変動金利は借入時の金利が低く魅力的ですが、将来的な金利上昇によって返済額が増えるリスクもあります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用予定者調査(2025年4月調査)p.15」 住宅ローン控除の活用も視野に入れる 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得または増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状況に合わせてどういった条件でどのような控除が受けられるかを把握しておくことが大切です。 また、夫婦ともに安定した収入がある場合は、ペアローンを利用することで、借入可能額が増えるだけでなく、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるメリットもあります。控除額が増えることで、実質的な返済負担を軽減できる可能性があります。 ただし、諸費用が2本分かかる点や、離婚・収入変動などのリスクもあるため、慎重な検討が必要です。 関連記事はこちら【令和7年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 諸費用も考慮する 住宅購入には、物件価格以外にも多くの費用がかかります。仲介手数料、登記費用、火災・地震保険料、固定資産税、修繕費など、維持費や初期費用も見逃せません。住宅ローン契約前に、諸費用の総額をしっかり把握しておきましょう。 まとめ 住宅ローンは、単に「いくら借りられるか」ではなく、「無理なく返済できるか」を基準に考えることが大切です。年収倍率や総返済負担率といった指標を参考にしながら、将来のライフイベントや収入の変化も見据えた資金計画を立てましょう。 特に、総返済負担率を20%以内に抑えることで、教育費や老後資金など、将来の家計への影響を抑えることができます。また、自己資金の準備、金利タイプの選択、住宅ローン控除の活用、諸費用の把握など、購入前に確認すべきポイントも多岐にわたります。 「この金額なら無理なく返済できる」と思えるラインを見極めることが、後悔しない住宅購入への第一歩です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で5,000万円借りるとどうなる?金利別返済シミュレーション 「5,000万円の家を買いたいけれど、自分の年収で本当に買えるのか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。 この記事では、フラット35を利用して5,000万円の家を購入する際の金利...
旧耐震の物件は、価格の安さや立地の良さなどから一定の需要がある一方で、住宅ローンの審査では不利になることもあります。「審査に通らない」「希望額の融資が受けられない」といったケースの背景には、金融機関が耐震性や担保評価を重視している点が挙げられます。 この記事では、旧耐震物件でも住宅ローンを利用するための対策や、購入前に確認すべきポイントをわかりやすく解説します。 旧耐震でも住宅ローンは組める? 旧耐震の物件でも、一定の条件を満たせば住宅ローンを組める可能性があります。例えば、耐震診断を実施し、必要に応じて補強工事を行ったうえで、「耐震基準適合証明書」を取得すれば、住宅金融支援機構の【フラット35】などのローン商品が利用可能になるケースがあります。 関連記事はこちらフラット35の審査基準を徹底解説!本当に審査が甘い? 旧耐震の物件が住宅ローン審査で不利な理由 そもそも旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物に適用されていた耐震設計の基準です。この基準では、震度5程度の地震に耐える構造が求められていましたが、現在の「新耐震基準」と比べると安全性が劣るとされています。 そのため、金融機関は旧耐震物件に対して以下のような懸念を持つことがあります。 倒壊リスクの高さ 修繕コストの増加 資産価値の低下 流通性の低さ(売却・賃貸のしづらさ) これらの要因が重なることで、担保評価が低くなり、住宅ローン審査に通りづらくなることがあります。 関連記事はこちら旧耐震基準とは?新耐震基準との違いやリスク、確認方法を解説 旧耐震の物件でも住宅ローンを組むための対策 旧耐震の物件でも、適切な準備と対策を行うことで住宅ローンの審査に通る可能性があります。以下のポイントを意識して、事前に情報を整理しておきましょう。 耐震診断・補強工事の実施と「耐震基準適合証明書」の取得 まずは、物件の耐震性を確認するために「耐震診断」を実施しましょう。診断の結果に応じて補強工事を行い、「耐震基準適合証明書」を取得することで、【フラット35】などの住宅ローン商品が利用可能になるケースがあります。 この証明書には以下のようなメリットがあります。 【フラット35】の技術基準を満たす 地震保険料の割引 住宅ローン控除などの税制優遇 取得には費用と手続きが必要ですが、将来的な安心感や資産価値の維持にもつながるため、早めの検討がおすすめです。 関連記事はこちらフラット35を利用するために必要な適合証明書とは? 修繕履歴や管理状態を確認 マンションの旧耐震物件では、建物全体の管理状況が審査に影響します。以下のような資料があると、金融機関からの評価が高まりやすくなります。 過去の修繕履歴(大規模修繕の実施状況など) 長期修繕計画の有無 修繕積立金の残高 管理組合の活動記録 これらの資料を確認し、修繕の実績がある、長期修繕計画が策定されている、修繕積立金の残高が十分であるなど、管理状況が良好であれば、物件の維持管理が適切に行われている証拠となり、資産価値の安定性を示す材料になります。 リノベーション計画を事前に提示 購入後にリノベーションを予定している場合は、設計図や見積書などの資料を事前に準備しておきましょう。特に耐震補強を含む工事であれば、「安全性向上の意思がある」と金融機関に示すことができ、担保評価の向上につながる可能性があります。 また、リフォーム一体型ローンを利用する際にも、具体的な工事内容と費用が明記された資料が必要です。 頭金の準備 旧耐震物件は担保評価が低くなりやすく、審査で「担保割れ」と判断されると希望額の融資が受けられないことがあります。こうした場合でも、頭金を多めに用意することで金融機関のリスクを軽減でき、審査通過の可能性が高まります。 さらに、借入額が少なくなることで、金利優遇を受けやすくなったり、月々の返済負担を抑えられたりするメリットもあります。 複数の金融機関に相談 住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なります。特に地方銀行や信用金庫などは、地域性や物件の特性を考慮して柔軟に対応してくれる場合もあります。ある金融機関で断られたとしても、他の金融機関では通る可能性もあるため、複数の金融機関に相談することが重要です。 旧耐震の物件を購入前に確認すべきポイント 旧耐震の物件を購入する際は、将来的な資産価値や安全性を見据えて、以下のポイントを事前にしっかり確認しておきましょう。 耐震診断の有無と結果 物件が過去に耐震診断を受けているか、またその結果はどうだったかを確認しましょう。診断結果が「問題なし」または「補強済み」であれば、住宅ローン審査や地震保険の加入にも有利に働きます。 補強工事の実施状況 耐震診断の結果に基づいて、補強工事が行われているかどうかも重要です。工事が完了している場合は、「耐震基準適合証明書」の取得が可能となり、【フラット35】などのローン商品が利用しやすくなります。 周辺環境と流通性(駅近・再開発予定など) 物件の立地や周辺環境も、資産価値を左右する重要な要素です。以下の点をチェックしましょう。 駅や商業施設へのアクセス 再開発の予定や地域の将来性 周辺の治安や生活利便性 流通性が高いエリアであれば、将来的な売却や賃貸もスムーズに進められる可能性があります。 管理状態(マンションの場合) 前述のとおり、マンションの場合は、建物全体の管理状況が資産価値やローン審査に大きく影響します。以下のような資料があるかを確認しましょう。 大規模修繕の履歴 長期修繕計画の有無 修繕積立金の残高 管理組合の活動状況 まとめ 旧耐震物件でも、適切な対策を講じることで住宅ローンの利用は十分可能です。特に【フラット35】では、「耐震基準適合証明書」の取得によって技術基準を満たすことができ、税制優遇や地震保険料の割引などのメリットも受けられます。 また、物件の管理状態や周辺環境、補強工事の有無などを事前に確認し、必要な資料を整えておくことで、金融機関からの評価を高めることができます。旧耐震だからといって、住宅ローンの利用を諦める必要はありません。 購入前には、耐震性・資産価値・流通性などを総合的に判断し、安心して住まい選びができるよう、しっかりと準備を進めましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 ブラックリストでも住宅ローンは組める?審査のポイントを解説 過去に延滞や債務整理をした経験があると、個人信用情報に「事故情報(異動情報)」が記録され、こうした情報が登録されている状態は、一般的に「ブラックリストに載っている」と表現されます。過去にこの...
住宅ローンの審査に申し込んでも、必ずしもその金融機関で借りられるとは限りません。「1社だけの申し込みでは不安…」と感じる人もいるでしょう。実は、住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込むことが可能です。 この記事では、住宅ローンの本審査を複数の金融機関に申し込むメリット・デメリットや注意点を詳しく解説します。 住宅ローンの本審査とは 住宅ローンの本審査とは、金融機関に住宅ローンを正式に申し込むことで行われる最終的な審査です。この本審査に通過すれば、住宅ローンを契約して実際に融資を受けられます。 住宅ローン審査の一般的な流れは以下のとおりです。 事前審査の申し込み 事前審査 本申込(正式申し込み) 本審査 契約締結 融資実行 住宅ローン審査は、一般的に事前審査と本審査の2回に分けられます。まずは申込者が申告した年収、借入希望額などの情報をもとに事前審査が行われます。事前審査に通過した後は、本審査として、より厳密に申込者の返済能力が判断されます。本審査に通過すると金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、物件引き渡し日に融資実行となります。 関連記事はこちら住宅ローン本審査はなぜ遅れる?期間の目安と対処法 事前審査と本審査の違い 事前審査は、本審査の前に行われる簡易的な審査です。金融機関が正式に融資を決定するまでには時間がかかりますが、申込者は借り入れの見込みが立たないと住宅購入を進められません。審査結果を待っている間に、希望物件が他の人に購入されてしまう恐れもあります。このような事情から、申込者が住宅ローンを組める見通しや借入可能額を把握できるよう、事前審査が設けられています。 一方、本審査では、詳細な書類・情報を用いて金融機関や保証会社が申込者の返済能力や物件の担保価値をより厳密に審査します。そのため、事前審査に通過しても、本審査の結果次第では借り入れができない場合もあります。 住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込める 住宅ローンの本審査は、複数の金融機関に申し込むことができます。複数申し込むことで、より良い条件を比較・検討することができます。 事前審査と本審査通過後のキャンセルは可能 住宅ローンは事前審査や本審査に通過していても、金融機関と金銭消費貸借契約を締結する前であれば、原則として手数料不要でキャンセルが可能です。ただし、金融機関によっては手数料が発生する場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。 複数の金融機関の本審査に通過した場合は、希望する住宅ローン以外はキャンセルしても差し支えありませんが、金融機関への丁寧な連絡と配慮が重要です。できるだけ早く金融機関に断りの連絡を入れるようにしましょう。 なお、金銭消費貸借契約を締結した後でも、融資実行前であればキャンセルできる場合があります。ただし、住宅ローンの事務手数料や調査手数料などの費用負担が発生する場合があります。そのため、金融機関にも負担をかけることになるため、やむを得ない事情がない限り避けたほうがよいでしょう。 住宅ローンの本審査を複数申し込むメリット 複数の金融機関に住宅ローンの本審査を申し込むことには、次のようなメリットがあります。 審査落ちのリスクを軽減できる 住宅ローンの本審査では申込者の返済能力を厳密に確認するため、審査に通過できるとは限りません。特に自営業者や転職して間もない人、既存借り入れがある人は慎重な対応が求められます。 複数の金融機関に申し込んでおけば、万が一、1社で否決されても他で承認される可能性があるため、審査落ちのリスクの軽減につながります。 関連記事はこちら住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介 より良い条件で契約できる可能性がある 住宅ローンは、金融機関ごとに金利水準や手数料、団体信用生命保険の特約条件などが異なります。複数の金融機関から融資承認を得ておけば、条件を比較してより有利な住宅ローンを選ぶことができます。 住宅ローンの本審査を複数申し込むデメリット 複数の金融機関に住宅ローンの本審査を申し込むことで、次のようなデメリットもあります。 審査結果に影響が出る可能性がある 住宅ローンの審査では、金融機関が申込者の返済能力を確認するために、信用情報機関へ照会を行います。たとえば、信用情報機関の株式会社シー・アイ・シーでは、申込情報を照会日から6か月間保有しています。この期間中に複数の金融機関へ申し込むと、各金融機関は申込者が他社にも申し込んでいることを把握できます。 申込情報に審査の可否は記載されませんが、同時期に多くの金融機関に住宅ローンの申し込みを行うと、「何か審査に通過できない理由があるのではないか」と疑念を持たれる場合もあります。複数の金融機関に申し込むこと自体に問題はありませんが、2~3社に絞るのが無難といえます。 本審査への対応に時間と手間がかかる 本審査を受ける際は、収入証明書類や物件関連書類など、さまざまな必要書類を準備して提出しなくてはなりません。複数の金融機関に申し込みをすると、多くの書類を準備する必要があるため、対応に時間と手間がかかることになります。 まとめ 住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込むことが可能です。審査落ちのリスク軽減やより良い条件での契約につながる一方で、対応に時間や手間がかかるなどのデメリットもあります。メリット・デメリットを比較したうえで、複数の金融機関に本審査の申し込みをするか検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介 住宅ローンの本審査に通過した後、融資が実行される前に転職した場合、どのような影響があるのでしょうか。融資実行前の転職にはリスクがあり、思わぬトラブルを招くことがあります。 この記事では、住宅...
手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するのは、果たして現実的なのでしょうか? この記事では、返済負担率という指標から、無理なく返済できる借入額の目安(=適正額)を具体的にシミュレーションします。さらに、将来の家計に負担をかけないためにも、住宅ローンを組む際の注意点についてわかりやすく解説します。 手取り30万円で月10万円の返済はきつい? 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済することは、数字だけみると可能に思えるかもしれません。しかし、実際には生活費や教育費、将来の支出も含めて考える必要があります。 住宅ローンの適正額を見極めるには、税金や社会保険料を差し引く前の額面年収を把握することが重要です。なお、額面年収とは、税金や社会保険料などを差し引く前の会社からの支給額を指します。 手取り30万円の額面年収はどれくらい? 一般的に、給与の手取り額は額面の75~85%程度です。仮に手取りが額面の80%だとすると、月の手取りが30万円の人の額面年収は以下のように計算できます。 手取り年収:360万円(30万円×12ヵ月) 額面年収 :450万円(360万円÷80%) ※ボーナスは考慮外 この結果から、手取り30万円の場合、額面年収は450万円程度と推定されます。実際の額面金額はボーナスや扶養家族の有無、税金の各種控除などによって異なるため、あくまで参考値としてください。 返済負担率は26.7%|年収450万円・月10万円返済の場合 返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合です。なお、この時の「年収」とは一般的に額面年収を指します。そのため、年収450万円の人が住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は以下のように計算できます。 年間返済額:120万円(10万円×12ヵ月) 額面年収 :450万円 返済負担率:120万円÷450万円=26.7% 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、返済負担率が「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。 国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」においても、世帯年収に占める返済負担率は、注文住宅で最も高く18.4%、最も低いのはリフォーム住宅で12.7%です。 物件種別 返済負担率 注文住宅 18.4% 分譲戸建住宅 17.6% 分譲集合住宅 16.1% 既存(中古)戸建住宅 16.3% 既存(中古)集合住宅 17.8% リフォーム住宅 12.7% ※国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.53」をもとに筆者作成 各調査データを踏まえると、手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するケースは、平均的な返済負担率よりも高い水準といえるでしょう。 住宅ローン以外の教育費や生活費などの支出が増えると、家計は圧迫されて返済が難しくなることもあります。安心して返済を続けるためには、返済負担率を20%以内に抑えるのが望ましいでしょう。 たとえば、手取り30万円(額面年収:450万円)の場合、返済負担率を20%とすると、月の返済額は7.5万円(年間返済額:90万円)が目安となります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」 手取り30万円の住宅ローンの適正額 手取り30万円の場合、住宅ローンを無理なく返済するためには、どのくらいの借り入れが適正なのでしょうか?金利別に住宅ローンの適正額をシミュレーションしてみましょう。 今回のシミュレーションでは、以下の条件をもとに計算しています。 【シミュレーション条件】 月の返済額が10万円(返済負担率26.7%)と7.5万円(返済負担率20%) 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済、ボーナス払いなし 【手取り30万円の住宅ローン適正額の目安(概算)】 適用金利 月10万円返済(返済負担率26.7%) 月7.5万円返済(返済負担率20%) 0.5% 3,852万円 2,889万円 1.0% 3,542万円 2,656万円 1.5% 3,266万円 2,449万円 2.0% 3,018万円 2,264万円 ※【フラット35】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。 返済負担率を20%以内に抑える場合、住宅ローンの借入金額は2,000万円台が目安となります。ただ、適用金利に応じて、適正額の目安が変動する点に注意が必要です。 住宅ローンを組む際の注意点 手取り30万円で住宅ローンを組む際は、以下のポイントを意識しましょう。 総返済負担率を20%以内に抑える 住宅ローンを無理なく返済するには、返済負担率を20%以内に抑えるのが理想といえます。住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンといった他の借り入れも合算して考えましょう。 物件価格の2割以上の自己資金を準備する 自己資金を十分に確保することで、借入比率を抑え、返済負担を軽減できます。実際、国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資本比率は22.0%~34.6%程度が一般的です。 物件価格の2~3割程度を目安に、自己資金を多めに準備するとよいでしょう。ただし、頭金を多く入れすぎると、急な出費に対応できなくなる恐れがあるため、当面の生活費や緊急資金は確保しておきましょう。 出典)国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.48」 諸費用やローン返済以外の支出も考慮に入れる 住宅購入では登記費用や仲介手数料、火災・地震保険料、引越し費用などの諸費用が発生し、購入後は固定資産税などの維持費もかかります。また、教育費や老後資金などの準備も進める必要があります。住宅ローン返済だけでなく、諸費用やその他の支出も考慮して無理のない返済計画を立てましょう。 まとめ 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は26.7%となり、一般的な目安である20%を上回ります。この水準では、家計に余裕がないと返済が厳しくなる場合があるため、慎重な資金計画が必要です。 住宅ローンは長期にわたる支出となるため、将来のライフイベントや収支の変化も見据えたうえで、無理のない借入額を設定することが大切です。この記事で紹介した返済負担率やシミュレーションを参考に、安心して返済を続けられる住宅ローン計画を立てましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
「リ・バース60ってやばいの?」 そんな不安を感じている人も少なくありません。SNSや口コミでは、制度の仕組みが誤解され、「怖い」「危険」といった声が見られることもあります。 しかし、そもそもリ・バース60は、高齢者の住まいや資金計画を支えるために、住宅金融支援機構が提供する安心して利用できる住宅ローン制度です。 この記事では、リ・バース60に対する誤解の背景や制度の安全性、他のローン商品やサービスとの違い、契約前に知っておきたいポイントなどを、わかりやすく解説します。 なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! 「リ・バース60はやばい」と言われる理由とは? ネガティブな印象を持たれる背景 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローンです。契約者が亡くなった後に元金を一括返済する仕組みを採用しているため、一般的な住宅ローンとは異なる点が多く、「契約内容が複雑」「返済方法がわかりにくい」といった印象を持たれることがあります。 特に、「亡くなった後に家を失い、負債が残るのでは?」という懸念は、リ・バース60の仕組みを十分に理解していないことから生じる誤解です。実際には、ノンリコース型を選択すれば、自宅の売却代金で残債が完済されなかったとしても、相続人に追加の返済義務は発生しません。 よくある誤解とその発信源 リ・バース60に対する誤解は、以下のような情報源から広がる傾向があります。 SNSや口コミでの断片的な情報 本来の仕組みを無視した一部の情報が拡散され、「家を失う」「借金が残る」といった不安を煽る表現が、商品への誤解を生んでいます。 過去のリバースモーゲージ制度との混同 民間金融機関が提供するリバースモーゲージと、住宅金融支援機構の「リ・バース60」は制度設計が異なります。過去に報道された返済トラブルなどと混同されることで、商品全体に対する不安が広がることがあります。 相続に関する不安の拡大 「相続人が借金を背負うのでは?」という懸念は、リコース型とノンリコース型の違いを理解していないことに起因します。商品設計上、ノンリコース型を選択すれば、相続人に返済義務は生じません。 このような誤解は、リ・バース60の仕組みを正しく理解することで解消できます。次のセクションでは、リ・バース60の実際のリスクと安全性について詳しく解説します。 リ・バース60のリスクと仕組みの安全性 元金一括返済のタイミングと仕組み リ・バース60では、契約者が亡くなった後に元金の一括返済が行われます。返済方法は、相続人が自己資金で支払うか、自宅を売却して返済するかを選択できます。 この仕組みは、契約者の生存中は利息のみを支払うことで月々の負担を軽減し、亡くなった後に元金を精算するという設計になっています。 ノンリコース型の安心設計 リ・バース60には「ノンリコース型」と「リコース型」の2種類があり、契約時に選択します。ノンリコース型では、担保不動産の売却代金で借入残高を返済し、それでも残債がある場合は、相続人に追加の返済義務は発生しません。 つまり、売却代金が不足しても、相続人が債務を引き継ぐことはありません。この設計により、相続人の経済的な負担を避けたいと考える契約者にとって、安心して利用できる商品となっています。 担保不動産の扱いと相続人の責任 一方、リコース型を選択した場合は、担保不動産の売却代金で借入残高を返済しきれないと、相続人が不足分を返済する義務を負うことになります。 リコース型は、ノンリコース型よりも金利が低く設定される傾向がありますが、相続人にとってはリスクがあるため、契約前に家族と十分に話し合い、商品の内容を理解したうえで選択することが重要です。 リ・バース60が向いている人・向いていない人 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローンであり、資金使途が住宅関連に限定されている点や、契約者の死亡後に元金を一括返済する仕組みなど、一般的な住宅ローンとは異なる特徴があります。 ここでは、商品設計上、リ・バース60が向いている人と、注意が必要な人を整理します。 リ・バース60が向いている人 以下のような人は、商品の目的や仕組みに合致しており、利用を検討する価値があります。 年金生活者で持ち家がある人 リ・バース60は、自宅を担保に住宅関連資金を借り入れる制度であり、月々の支払いが利息のみで済むため、年金収入など限られた収入でも利用しやすい設計です。 また、持ち家があることは制度の利用条件の一つであり、担保評価額に応じて融資額が決まるため、資金調達の選択肢として検討しやすいと言えます。 住み替えやリフォームを検討している人 リ・バース60は、住宅購入・建設・リフォーム・借り換えなど、住宅関連の資金使途に限定された制度です。そのため、老朽化した住まいの改修や、ライフスタイルの変化に伴う住み替えを検討している高齢者にとって、目的に合った資金調達手段として活用しやすい設計になっています。 特に、自己資金の負担を抑えながら住宅環境を整えたい人にとって、有力な選択肢となり得ます。 相続人と事前に話し合いができている人 リ・バース60は、契約者の死亡後に元金を一括返済する仕組みであるため、相続人の理解と協力が不可欠です。ノンリコース型を選択すれば、売却代金で残債が返済しきれない場合でも、相続人に追加の返済義務は発生しません。 とはいえ、契約内容や返済方法について事前に家族と共有しておくことで、将来的なトラブルや誤解を防ぎ、安心して制度を利用することができます。 注意が必要なケース 以下のような人は、制度の仕組みと目的に照らして、慎重な検討が必要です。 不動産を相続したい人 リ・バース60では、契約者の死亡後に元金を一括返済する必要があるため、担保となる自宅を売却して返済するケースも想定されます。そのため、自宅を相続財産として残したいと考えている人にとっては、制度の利用が相続計画に影響を及ぼす場合があります。 相続人との合意形成を図りつつ、資産全体の構成を踏まえた上で、制度の利用可否を慎重に見極めることが重要です。 自宅の評価額が低い人 リ・バース60の融資限度額は、自宅の担保評価額に基づいて決定されます。評価額が低い場合、希望する資金が借りられないことがあるため、商品の利用が制限されることがあります。 特に、評価額が下がる可能性がある物件については、仮審査を通じて事前に金融機関の判断を確認しておくと安心です。 生活資金としての利用を考えている人 リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途は住宅関連に限定されています。生活費や医療費、日常的な支出などには利用できないため、これらの目的で資金調達を検討している人には適していません。 住宅購入やリフォーム、借り換えなど、融資の対象となる資金使途を十分に理解したうえで、目的に合った商品を選ぶ必要があります。 リ・バース60とほかの商品・サービスとの比較 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する住宅ローンであり、民間金融機関が提供するリバースモーゲージや、不動産取引に該当するリースバックとは、仕組みや目的が異なります。 ここでは、それぞれの商品・サービスの違いを整理し、利用目的に応じた選択の参考になるよう比較します。 リバースモーゲージとの違い リバースモーゲージは、主に民間金融機関が提供する商品で、生活費や医療費など幅広い資金使途に対応しています。一方、リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途が住宅関連に限定されている点が大きな違いです。 リ・バース60とリバースモーゲージの比較表 項目 リ・バース60 リバースモーゲージ 資金用途 住宅購入・リフォーム・借り換えなど住宅関連 生活費・医療費・旅行など 提供元 住宅金融支援機構と提携する金融機関 民間金融機関 所有権 維持 毎月の支払い 利息 リースバックとの違い リースバックは、自宅を不動産会社などに売却し、その後も賃貸契約を結んで住み続けられるサービスです。資金調達の手段としては共通点がありますが、契約形態や所有権の扱いが大きく異なります。 リ・バース60とリースバックの比較表 項目 リ・バース60 リースバック 所有権 維持 売却により手放す 契約形態 金銭消費貸借契約 売買契約+賃貸契約 毎月の支払い 利息 家賃 リ・バース60を検討する前に知っておきたいこと リ・バース60は、一般的な住宅ローンとは異なる仕組みを持つ商品です。契約前に確認しておきたいポイントを、よくある質問形式で整理しました。商品の基本的な特徴や注意点を理解することで、安心して検討することができます。 Q. リ・バース60を利用すると、自宅を手放すことになりますか? A.いいえ。 リ・バース60では、自宅を担保に資金を借り入れますが、契約者の生存中は所有権を維持したまま住み続けることができます。亡くなった後に元金を一括返済する際、自宅を売却するかどうかは相続人の判断によります。 Q. 生活費や医療費など、住宅以外の目的に使えますか? A. 使えません。 リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途は住宅関連に限定されています。具体的には、住宅の購入・建設・リフォーム・借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などが対象です。 Q. 相続人に返済義務はありますか? A. 契約の種類によって異なります。 ノンリコース型を選択した場合、自宅の売却代金で借入残高を返済しきれなくても、相続人に追加の返済義務は発生しません。一方、リコース型では、売却代金で不足が生じた場合、相続人がその差額を返済する必要があります。 Q. 金利はどのように決まりますか? A. 金利は金融機関ごとに異なります。 固定金利型と変動金利型があり、選択するタイプによって返済額が変わります。また、ノンリコース型とリコース型でも金利設定に差があるため、契約前に金融機関の条件を比較することが大切です。 まとめ リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローン制度であり、住宅関連資金に特化した設計となっています。「やばい」「怖い」といった印象は、制度の仕組みや契約内容に対する誤解から生じることが多く、正しく理解することで不安は解消できます。 この記事では、制度に対する誤解の背景、実際のリスクと安全性、他制度との違い、そして契約前に確認すべきポイントを整理しました。特に、ノンリコース型を選択することで相続人の返済義務が発生しない仕組みや、資金使途が住宅関連に限定されている点など、制度の特徴を理解することが重要です。 リ・バース60は、住まいに関する課題を抱える高齢者にとって、有効な選択肢となり得ます。検討にあたっては、金融機関ごとの条件を比較し、家族と十分に話し合ったうえで、専門家への相談を活用することをおすすめします。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門家に相談してみる 住宅ローンや不動産売買の資金計画など、お客さまのご状況にあわせてサポートします。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リ・バース60の金利・利子・手数料を徹底比較 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向け住宅ローン制度で、民間金融機関を通じて利用できます。資金使途は、住宅購入やリフォーム、借り換えなど、住宅関連に限定されており、生活費や医...