不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説

更新日: / 公開日:2019.02.12

不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保として借り入れを行うローン商品のことです。不動産を担保にすることで、無担保ローンに比べてまとまった金額を低金利で借りることができます。

一方で、万が一返済ができなくなった場合に、担保にした不動産が競売となる恐れがあるため、利用前に仕組みや特徴を理解しておくことが大切です。この記事では、不動産担保ローンの仕組みやメリット・デメリットなどを解説します。

不動産担保ローンとは

不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にして、お金を借りられるローン商品です。金融機関によっては、築古や第二抵当の不動産のほか、家族や法人名義の不動産も担保にできます。

また、不動産担保ローンは有担保ローンの一種です。有担保ローンの中には不動産のほかに、有価証券を担保とする証券担保ローンや、企業の在庫や売掛債権を担保とする動産担保融資(ABL)などがあります。

有担保ローンに対してテレビCMなどで見かけるカードローンやキャッシングなどは無担保ローンに分類されます。無担保ローンは、一般的に不動産担保ローンよりも金利が高く、借入可能額が少額となりますが、手続きが簡単で即日で融資を受けることも可能です。

不動産担保ローンのメリット

不動産担保ローンは、一般的な無担保ローンに比べて以下のようなメリットがあります。

借入金利が低金利である

無担保ローンである個人向けのカードローンや法人向けのビジネスローンに比べて、不動産担保ローンは低金利で借りられます。ただし、実際に適用される金利は、金融機関ごとの商品や、申込人の与信や担保とする不動産によって異なります。

参考までに、日本貸金業協会が公表している令和6年6月の月次統計資料では、消無担保貸付の平均約定金利が14.93%であるのに対して、有担保貸付(住宅向を除く)の平均約定金利は3.66%です。

出典)日本貸金業協会「月次統計資料」

借入限度額が大きい

無担保ローンであるカードローンやキャッシングは、収入や他社からの借入状況などによって借入可能額が決まり、借入限度額は1,000万円ほどです。一方で、不動産担保ローンは、担保不動産の評価額によって変化し、1億円以上の借入限度額とされていることも珍しくありません。

長期間借りられる

カーローンや教育ローンなどのローンでは、借入期間は7年や10年程度に設定されています。一方で、不動産担保ローンは、返済期間を長く設定することができ、金融機関によっては35年ローンを提供しているところもあります。ただし、返済期間が長くなるほど、利息の負担額は大きくなる点には注意が必要です。

なお、カードローンやキャッシングなどで一般的に用いられる返済方式はリボルビング方式と呼ばれ、不動産担保ローンなどの返済方式とは異なります。

不動産担保ローンのデメリット

不動産担保ローンは、一般的な無担保ローンに比べて以下のようなデメリットもあります。

借り入れまでに時間がかかる

無担保ローンであるカードローンやキャッシングは、最短数分で審査が終了し、即日融資も可能なローン商品です。一方で、不動産担保ローンは審査の過程で与信に加えて不動産の審査も必要なため、スピードを重視する金融機関であったとしても、融資までに最短でも数日から数週間かかります。

ただし、すでに不動産担保ローンを借りている金融機関からの追加融資であれば、さらに早く借りられる可能性があります。

手数料がかかる

無担保ローンであるカードローンやキャッシングは、諸費用は基本的に利息のみで、他にかかる手数料などはありません。一方で、不動産担保ローンは事務手数料や不動産調査費用、印紙代、登記費用などの費用がかかります。

金融機関に支払う事務手数料は、融資金額の〇%のように定められており、借入金額によっては、数十万円かかる場合もあります。そのほか、不動産を担保とするための登記費用や司法書士費用を加味すると、諸費用は多額に及びます。

そのため、たとえ低金利の借り入れができても、結果的にカードローンよりも支払総額が大きくなることも考えられ、注意が必要です。

返済不能になると競売になる

無担保ローンであるカードローンやキャッシングは、たとえ支払いができなくなったとしても、金融機関から不動産を競売にかけられる恐れはありません。

しかし、不動産担保ローンでは、金融機関が融資時に担保とする不動産に抵当権の設定登記をします。抵当権は、債務者が返済出来なくなったときに、不動産を売却することで融資金を回収するために設定されます。

返済ができなくなって直ちに競売手続きが行われるとは限りませんが、延滞が続き、融資金を回収できないと金融機関が判断すれば、競売手続きに移行します。競売はさまざまなデメリットがあるため、返済が確実にできるかどうかあらかじめ考えておく必要があります。

不動産担保ローンの利用までの流れ

不動産担保ローンの利用までの流れは、以下のように進めます。

  1. 仮審査
  2. 面談・本申込
  3. 不動産調査
  4. 審査
  5. 契約
  6. 融資実行

まずは、金融機関のホームページなどから仮審査を申し込むと、簡易の不動産査定結果をもとに、融資の可否や概算の融資限度額などを回答されます。融資が可能となり、本申込に進む場合は営業担当者と面談を行います。

面談時に申込書の記入や本人確認書類、不動産に関する書類などを提出します。なお、面談したからといって、必ずしも本申込みをする必要はありません。本申込後に金融機関によって担保となる不動産の調査を行います。調査の方法は担保不動産や金融機関によって異なり、実際に対象物件の内覧まで必要な場合もあります。

不動産調査によって正式な物件の取扱いの可否や融資限度額が算出され、並行して与信面に問題がないかの審査となります。審査を終えると最終的な融資金額や適用金利が担当者から伝えられ、問題ないようであれば契約手続きに進みます。

契約当日は、金銭消費貸借契約や抵当権設定登記の手続きを行い、融資実行日に資金が振り込まれます。なお、借り入れにかかる手数料は、融資金から清算されるので、手数料分のお金を別途用意する必要はありません。

これら一連の手続きは、金融機関の店舗で行うのが一般的ですが、店舗に行くのが難しい場合は、担当者が自宅や事務所まで来てくれることもあるので、相談してみるといいでしょう。

不動産担保ローンの必要書類

不動産担保ローンの融資を受けるには、以下のような書類が必要となります。

  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 納税証明書、固定資産税納付書
  • 収入証明書(源泉徴収票・確定申告書など)
  • 不動産登記簿謄本
  • 不動産権利証
  • 借入残高証明書
  • 商業登記謄本、決算書類、事業計画書など ※法人の場合

本申込の際には、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類、契約の際には、印鑑証明書や実印などが必要です。審査の過程で、与信を判断するために、納税証明書や固定資産税納付書、収入証明書などが求められます。

また、担保不動産の状況を確認するために、不動産登記簿謄本や借入残高証明書も必要となる場合があります。不動産担保ローンの必要書類は、金融機関や担保となる不動産によって異なるため、担当者に確認して必要書類を用意しましょう。

不動産担保ローンの審査

不動産担保ローンの審査は、融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産」から総合的に判断されます。信用力の審査では、個人の場合は収入、法人の場合は利益をはじめとして、過去の返済状況や申込人の年齢、ほかの金融機関からの借入状況などを確認します。

不動産の審査では、担保不動産が対象物件として問題ないかを確認の上、担保評価額を算出します。基本的には、不動産の価値が高ければ高いほど審査に通りやすく、大きな金額を借りられます。

最終的な融資の可否は信用力と不動産によって決定されますが、ある金融機関では融資が出来なかったとしても、別の金融機関では融資が可能と判断される場合もあります。申込人や担保不動産の審査は、銀行かノンバンクかという点でも異なる傾向にあります。

不動産担保ローンの活用事例

不動産担保ローンは以下のような活用事例があります。

まとまった資金を確保して、資金繰りを改善

不動産担保ローンは、まとまった金額を長期間借りることができるため、返済に余裕を持った資金調達ができます。また、無担保ローンからの借り換え等で金利が下がれば、資金繰りの改善もできます。

一方で、返済期間を長くすると総返済額は増加するため、借入前に返済シミュレーションを必ず行いましょう。

赤字決算の法人が事業資金を確保

資金調達をしようとしても、決算が赤字の場合、無担保で事業資金融資を受けることは難しいかもしれません。しかし、不動産担保ローンを活用することで、信用力だけでなく担保不動産の価値を加味して審査が行われる、融資を受けられる可能性があります。

また、赤字決算の法人だけでなくこれから開業する法人や、開業後間もない法人でも融資を受けられる可能性があります。

相続不動産を担保に相続費用を確保

相続が発生すると、相続税をはじめとして、代償分割や遺留分減殺請求などによって多額の支払いが発生する場合があります。しかし、相続財産の中に不動産があれば、その不動産を担保にすることで、融資を受けられる可能性があります。

不動産担保ローンのよくある質問

不動産担保ローンは、金融機関によって基準が異なりますが、以下のような質問が代表的です。

住宅ローンを借りていても融資を受けられますか?

担保不動産に第二順位の抵当権を設定することで、融資を受けられる可能性があります。ただし、住宅ローンが多く残っている場合は、担保余力がないとみなされ融資を受けられません。

本人以外の所有不動産を担保にして融資を受けられますか?

不動産の所有者が親族、法人の場合は会社の役員等の特定の条件で融資を受けられる可能性があります。ただし、不動産の所有者は、融資の物上保証人や連帯保証人になることを求められます。

共有名義の不動産を担保にして融資を受けられますか?

所有者全員の同意があれば、融資を受けられる可能性があります。ただし、不動産を共有する人全員が連帯保証人になることを求められます。

信用情報に不安がありますが、融資を受けられますか?

信用情報に問題があっても、融資を受けられる可能性はあります。債務者へ融資をするかしないかは金融機関によって異なり、特定の金融機関で融資を断られたとしても、必ずしも審査に落ちるということはありません。

融資限度額はいくらですか?

融資限度額は金融機関によって異なり、1億円以上の金融機関も珍しくありません。ただし、不動産担保ローンの融資限度額は、個人の信用力や担保不動産の価値に左右されるので、実際に金融機関に問い合わせてみないと正確な金額はわかりません。

まとめ

不動産担保ローンには、一般的な無担保ローンと比較して大きな資金を、低金利かつ長期間にわたって借りることができます。一方で、融資までには時間と費用がかかるほか、万が一返済不能となったときには不動産を失う恐れがあります。こうしたメリットとデメリットを踏まえて、不動産担保ローンの利用を検討しましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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