不動産を複数人で所有する「共有名義」の状態は、単独所有とは異なり、自身の判断だけで不動産全体を売却したり、建て替えたりすることができません。 「離婚した元配偶者と顔を合わせたくない」「兄弟間で遺産分割協議がまとまらない」といった理由から、自身の持分だけを手放したいと考える方は少なくありません。 結論から言えば、自身の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なく売却・放棄することが可能です。しかし、そこには法的な手順や、知っておかなければならない税務リスクが存在します。 この記事では、共有持分を単独で売却する4つの方法と、持分放棄の具体的な手続き、そしてトラブルを未然に防ぐための注意点について解説します。 共有持分の仕組みと放置するリスク 単独所有との違いと制限 共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する際に、各共有者が持つ所有権の割合のことです。 例えば、3,000万円の不動産を夫婦で購入し、それぞれ1,500万円ずつ負担した場合、持分割合は「2分の1ずつ」となります。共有者は、持分割合に応じて不動産を使用・管理する権利がありますが、同時に固定資産税や修繕費などの維持費を負担する義務もあります。 関連記事はこちら不動産の共有持分とは?共有名義で購入するメリット・デメリット、売却方法を解説 共有名義を放置するデメリット 共有持分の問題を先送りにして放置すると、以下のような問題が生じる場合があります。 不動産全体は共有者が単独で自由に売却することができない 共有者間で管理や費用負担をめぐるトラブルに発展する懸念がある 相続発生時に権利関係が複雑化し、売却や活用がさらに難しくなる 共有名義の不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも同意が得られない場合、売却はできません。 さらに、共有者の1人が亡くなるとその持分が相続され、共有者の人数がねずみ算式に増えてしまうことがあります。こうなると権利関係が複雑化し、解決が極めて困難になるリスクがあります。 共有持分だけを売却する4つの方法 共有名義の不動産であっても、ご自身の「共有持分のみ」であれば売却が可能です。他の共有者の許可は不要ですが、後のトラブルを避けるために対策を講じる必要があります。 ここでは、代表的な4つの売却方法を紹介します。 他の共有者への売却 最もスムーズな方法は、他の共有者に売却することです。共有者が2人の場合、一方がもう一方に売却すれば不動産は単独名義となり、自由に活用できます。共有者が3人以上いる場合は、誰にどれだけの持分を売却するかなど、複雑化する場合があります。 ただし、個人間での売買は契約条件や価格交渉でトラブルが起きやすいため、不動産仲介業者を介して契約することが望ましいでしょう。 第三者への仲介売却 不動産仲介会社を通じて、第三者(個人や投資家)に売却する方法もあります。自分で売り出し価格を決められるため、買取業者よりも高値で売却できる可能性があります。 ただし、共有持分は利用に制約があるため、一般的に流通性が低く、買い手が見つかるまで時間がかかる傾向があります。時間に余裕があり、できるだけ高値で売却したい場合に適した方法といえます。 専門買取業者への売却 共有持分の買取業者に依頼すれば、仲介による売却よりも短期間で現金化できる可能性が高いです。売却価格は仲介より低くなる傾向がありますが、早期売却を希望する場合には適した選択肢です。 依頼する際は、複数社に評価を依頼して条件を比較することが重要です。売却価格だけではなく、契約条件や手数料の確認も忘れないようにしましょう。 土地の分筆による売却 土地の場合は、「分筆(複数の土地に分割して登記)」を行い、単独所有にしたうえで売却する方法もあります。分筆を行えば、自分の土地として自由に売却できるようになります。 ただし、分筆を行うには他の共有者全員の同意が必要です。また、土地の形状や立地によっては分筆が難しい場合があり、測量や登記の手続きに費用や時間がかかります。まずは、土地家屋調査士などの専門家に相談して判断することをおすすめします。 売却方法の比較表 売却方法 メリット デメリット 向いている状況 他の共有者への売却 スムーズに話が進みやすい 価格交渉が難航する場合あり 共有者との関係が良好 第三者への仲介売却 買取業者より高値で売却できる可能性あり 買い手が見つかりにくい 時間に余裕がある 買取業者に売却 短期間で現金化可能 仲介より価格が低い傾向あり 早く売却したい 土地を分筆して売却 単独所有で売却可能 分筆費用・時間がかかる 土地の形状が適している ※筆者作成 持分放棄の手続きと税務リスク 「売れなくてもいいから手放したい」という場合、持分を「放棄」することも可能です。民法第255条に基づき、放棄した持分は他の共有者に帰属します。 (持分の放棄及び共有者の死亡)第二百五十五条共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。 内容証明郵便による意思表示 持分放棄は、単に口頭で「いらない」と伝えるだけでは不十分です。後日、「そんな話は聞いていない」と言われないよう、持分放棄の意思表示を証拠として残すことが重要です。 具体的には、郵便局が文書の内容と発送事実を証明してくれる「内容証明郵便(配達証明付)」などが有効です。これにより、「いつ、誰が、誰に対して、持分放棄の意思表示をしたか」が客観的に証明されます。 通知が相手に到達したことを確認した後、司法書士に依頼して持分移転登記の手続きへと進みます。 なお、持分移転登記は原則として「他の共有者と共同」で行う必要があります。相手が登記手続きへの協力を拒否した場合は、裁判所を通じた手続きが必要になることもあるため、強引に進める前に専門家への相談が不可欠です。 「みなし贈与」などの税務リスク 注意すべきは「税金」です。持分を受け取った側の共有者は、経済的利益を得たことになります。これが相続税法第7条に基づき「みなし贈与」とされ、「持分を受け取った側の共有者」に贈与税が課税される場合があります。 また、放棄を行っても登記手続きが完了していなければ、固定資産税や管理費の負担義務は消えません。放棄を行う際は、司法書士や税理士へ相談しましょう。 出典) ・e-Gov法令検索「民法」(第255条) ・e-Gov法令検索「相続税法」(第7条) トラブルを防ぐ注意点と「売らない」選択肢 共有持分の売却や買取を円滑に進めるためには、以下の点を確認してください。 売却・放棄を成功させる事前チェック 複数業者に評価を依頼する 共有持分は流通性が低く、業者によって評価額に差が出やすい特徴があります。1社だけで判断せず、複数社に評価を依頼し、条件を比較することで適正な価格を把握できます。 税務リスクを確認する(贈与税・譲渡所得税) 無償譲渡や低額譲渡は「みなし贈与」とされる可能性があります。また、売却益が出た場合は譲渡所得税が課税されます。税務判断は個別の状況により異なるため、事前の確認が不可欠です。 登記手続きまで確実に行う 口頭での合意だけでは不十分です。登記が完了していなければ、名義が残り続け、固定資産税や管理費の請求が来ることになります。司法書士に依頼するなどして、確実に名義変更を行いましょう。 専門家(弁護士・司法書士・税理士)に相談する 共有持分の取り扱いは、法的・税務的に複雑な判断を伴います。トラブルを未然に防ぎ、安全に取引を行うためにも、専門家の助言を得ることをおすすめします。 共有持分を担保にする不動産担保ローン もし、共有持分の売却を検討している理由が「人間関係の解消」ではなく、「まとまった資金調達」であるならば、売却以外の選択肢もあります。それは、ご自身の共有持分のみを担保にして融資を受ける「不動産担保ローン」です。 通常の銀行ローンでは共有者全員の同意(連帯保証)を求められることが一般的ですが、ノンバンク系の不動産担保ローンであれば、自身の共有持分のみを担保に、原則として他の共有者の同意不要で融資を受けられる場合があります。また、金融機関によっては郵送物や連絡方法に配慮してくれるため、他の共有者に知られないよう進められる場合もあります。 「愛着のある不動産を手放したくはないが、現金が必要」という場合では、有効な解決策となります。 関連記事はこちら不動産担保ローンは持分だけでも借りられる?特殊な不動産の融資可否も紹介 不動産共有持分に関するよくある質問 Q.他の共有者が反対していても売却できる? A.自分の持分のみであれば可能です。他の共有者の同意は必要ありません。ただし、売却後に買主と他の共有者との間でトラブルになることを避けるため、事前に相談しておくのが望ましいといえます。 Q.放棄に費用はかかる? A.はい、かかります。持分移転登記の手続きに必要な「登録免許税」や、手続きを代行する「司法書士報酬」などが必要です。 Q.一般的な不動産会社でも売却できますか? A.共有持分単独での売却は、断られる場合があります。通常の不動産会社は「不動産全体」の売買を前提としているため、権利関係が複雑な共有持分のみの取り扱いは避ける傾向にあります。相談する際は、共有持分を専門に扱う不動産会社や、弁護士などの専門家を探すのが一般的です。 まとめ 共有名義の不動産は、自身の持分だけであれば「売却」や「放棄」によって単独で手放すことが可能です。 現金化したい場合 なるべく高い金額での売却を目指す「仲介」や、早期解決が可能な「買取業者」など、優先順位に合わせて売却先を選ぶ。 手放したい場合 放棄が可能だが、他の共有者への「みなし贈与」などの税務リスクに注意する。 資金だけ必要な場合 売却せず、持分のみを担保にした「不動産担保ローン」の利用も検討する。 最も避けるべきは、問題を先送りにして権利関係をさらに複雑にしてしまうことです。ご自身の状況に合わせて、最適な出口戦略を選んでください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産買取のメリット・デメリットとは?不動産業者の選び方も解説 一般的に不動産を売却する場合は「不動産買取業者へ売却する方法」と「不動産仲介業者を通して売却する方法」の2種類があります。どのような場合に不動産買取を利用し、どのような不動産業者を選べばわか...
地震による被害に備えるため、建物だけでなく家財補償も重要です。しかし、地震保険で家財がどこまで守られるのか、補償範囲や保険金額の仕組みを正しく理解していないと、「保険金が支払われない」という事態になりかねません。 この記事では、地震保険で「実際にいくら保険金が支払われるのか(査定基準)」や、「テレビが1台壊れただけでも補償対象になるのか」といった、よくある疑問について解説します。地震保険の基本的な仕組みや火災保険との違いについては、以下の記事をご参考にしてください。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 地震保険で家財は補償される?基本の仕組みと補償範囲 地震保険は単独では契約できず、必ず火災保険とセットで加入する仕組みです。契約の形は次の3パターンから選べます。 建物のみ :建物だけを補償 家財のみ :家財だけを補償 建物+家財:建物・家財を補償 ここで注意したいのは、建物の地震保険に加入していても家財は自動的に補償されないという点です。まずは、どのようなものが「家財」として補償対象になるのか確認しましょう。 地震保険で補償される家財の具体例 地震保険で補償される家財は、居住用建物に収容されている生活用動産(普段の生活に使う動かせるもの)です。具体的には次のようなものが対象になります。 家電製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなど) 家具(ベッド、ソファ、タンス、食器棚など) 衣類・寝具 食器・調理器具 これらは日常生活に欠かせない「動かせるもの」です。逆に、キッチンや浴槽、備え付けのクローゼットなどの動かせない設備は「建物」の一部として扱われ、家財補償の対象外となります。 地震保険で補償されない家財と対象外になる理由 地震保険で補償されない家財には、次のようなものがあります。 自動車・バイク(総排気量125cc以下の原動機付自転車を除く) 現金や通貨類(小切手、株券、商品券など) 印紙・切手 高額な貴金属・宝石・骨とう品(1個または1組で30万円超) データやソフトウエア(パソコン内部のデータなど) これらが対象外となる理由は、価値の評価が難しいことや、地震による損害の確認が困難なためです。 特に注意が必要なのは「自動車」です。通常の自動車保険(車両保険)でも、地震・噴火・津波による損害は原則として補償されません。車を守るには、自動車保険に「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」などの特約を付帯する必要があります。 地震保険の家財補償はいくら?損害認定の仕組み 「家財が壊れたら修理代が出る」と思っている方もいるかもしれませんが、地震保険は実損払い(修理費の支払い)ではありません。保険金は、損害の程度に応じて定められた割合で支払われる仕組みです。 地震保険で補償される家財の支払基準 地震保険では、保険の対象である家財全体の時価に対する損害額の割合に応じて、次の4段階で認定されます。 損害の程度 認定基準(家財全体の時価に対する損害額) 支払われる保険金 全損 80%以上 地震保険金額の100%(時価額が限度) 大半損 60%~80%未満 地震保険金額の60%(時価額の60%が限度) 小半損 30%~60%未満 地震保険金額の30%(時価額の30%が限度) 一部損 10%~30%未満 地震保険金額の5%(時価額の5%が限度) ※平成29年1月1日以降保険始期の地震保険契約の場合 出典)財務省「地震保険制度の概要」をもとに筆者作成 重要なのは、「家財全体の中でどれくらいの割合が被害を受けたか」で判断されるという点です。食器や家具、家電などをカテゴリーごとに分類し、それぞれの被害状況をポイント化して算出します。 「1点だけ壊れた」では保険金が出ない理由と仕組み 地震保険は損害割合で認定されるため、家財の場合は1つだけ壊れても基準に達しない場合があります。例えば、地震により数十万円する大型テレビが壊れても、他の家財が無事なら損害割合が10%未満となり、「一部損」にも該当せず保険金は支払われません。「1点壊れたら補償される」という誤解に注意しましょう。 保険金が支払われないその他のケースと注意点 損害認定の基準以外にも、次のようなケースでは補償対象外となります。 地震発生日の翌日から10日経過後に生じた損害 時間が経過すると、地震との因果関係の証明が難しくなるためです。 紛失や盗難による損害 地震の混乱に乗じた盗難や、避難中の紛失は補償されません。 家財にも地震保険は必要?加入判断のポイント 建物への地震保険だけでなく、家財も補償対象にすべきかどうかは、次のポイントで判断しましょう。 生活再建に必要な自己資金を備えているか 被災後の生活では、避難費用や仮住まいの確保に加え、冷蔵庫や洗濯機、衣類などの買い直しに数十万円~百万円単位の出費が発生することもあります。これらの費用を貯蓄で賄えない場合は、家財を対象とした地震保険加入を検討しましょう。 高額な家財を所有しているか 大型家電や高級家具など、生活を構成する家財の総額が高い世帯ほど、被災時の経済的ダメージは大きくなります。家財の評価額(時価)を試算し、失った場合のインパクトを把握することが重要です。 地震保険に加入したらいくら受け取れるか 地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で設定されます(家財の上限は1,000万円)。例えば、家財の再調達価額が1,000万円の場合、火災・地震保険金額は以下のようになります。 火災保険金額:1,000万円 地震保険金額:最大500万円(50%設定の場合) つまり、地震保険だけでは生活を完全に元通りにすることはできません。地震などが起きた場合に「全額は出ないが、当面の生活再建費として数百万円が下りれば助かるかどうか」という視点で判断しましょう。 関連記事はこちら家財保険とは?補償内容と必要性を解説 まとめ 地震保険の家財補償は、被災後の生活を立て直すための重要な資金源になります。しかし、「自動車や現金は対象外」「1点だけ壊れても保険金が出ない場合がある」など、仕組みを正しく理解していないと期待した補償が受けられないこともあります。 加入を検討する際は、次の3つの視点で判断しましょう。 自己資金で生活再建が可能か 高額な家財を所有しているか 保険金額の上限を把握したうえで、生活再建にその資金が必要か 地震保険だけで「元通りの生活」を完全に取り戻すことはできませんが、数百万円の補償があることで生活再建の負担を大きく減らせる可能性があります。ご自身の家財の量や貯蓄額を確認し、必要な備えを検討してみてください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 日本は「地震大国」と言われており、過去には巨大地震が発生して住宅が倒壊するなどの被害が生じています。地震による建物や家財の被害に備えるには、地震保険を付帯するのが有効です。万が一被害にあった...
「転職して間もないけれど、住宅ローンは組めるのだろうか…」 そんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。実は、勤続年数が1年未満でも、条件次第では住宅ローンの審査に通る可能性があります。 この記事では、金融機関が審査で重視するポイントや、勤続年数が短くても通過しやすくなる対策について、わかりやすく解説します。 勤続年数と住宅ローン審査の関係 住宅ローンを利用するには、金融機関の審査に通過する必要があります。その審査項目の中でも「勤続年数」は、安定した収入を判断する重要な指標とされています。ここでは、勤続年数が審査に与える影響について詳しく見ていきましょう。 金融機関の9割以上が「勤続年数」を重視 国土交通省の調査によると、融資を行う際に考慮する項目の上位は以下のとおりです。 完済時年齢 98.4% 借入時年齢 96.0% 健康状態 95.1% 年収 93.4% 勤続年数 93.2% 出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査p.19」 このデータからもわかるように、勤続年数は年収や健康状態と並ぶ重要な審査項目であり、約9割の金融機関が重視しています。 勤続年数は「1年以上」が目安 では、具体的にどれくらいの勤続年数が求められるのでしょうか。以下は、金融機関が設定している勤続年数の基準です。 勤続年数の基準 回答数 回答率(複数回答) 3年以上 128 約14% 2年以上 53 約5% 1年以上 612 約67% その他 168 約18% ※回答機関数908 出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査p.32」をもとに筆者作成 この結果から、「勤続年数1年以上」がひとつの目安となっていることがわかります。もちろん、3年以上の勤続が望ましいとする金融機関もあります。しかし、1年未満でも条件次第では住宅ローンの審査に通る可能性があります。 勤続年数が短いと住宅ローン審査が難しい理由 住宅ローンの審査では、勤続年数は「収入の安定性」を判断するための重要な指標です。現在の勤務先で長く働いているほど、収入が途絶えるリスクが低いと見なされ、審査では有利になります。反対に、勤続年数が短い場合は「収入が安定していない」と判断され、審査に不利となる場合があります。 転職直後の申し込みは注意が必要 勤続年数が短い主な理由のひとつが「転職直後」です。近年は転職が一般的になってきましたが、住宅ローンの審査では依然として勤続年数が重視される傾向があります。そのため、転職してすぐのタイミングで住宅ローンを申し込むと、審査で不利に働く可能性が高いでしょう。 関連記事はこちら住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介 勤続年数1年未満でも住宅ローンを組むための選択肢と対策 勤続年数が1年未満でも、住宅ローンの審査に通る可能性はあります。ここでは、審査に通過しやすくなるローンの選び方と対策方法をまとめてご紹介します。 フラット35なら勤続年数の条件なし 【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、全期間固定金利型の住宅ローンです。勤続年数に関する条件が設けられておらず、年齢・総返済負担率・資金使途などの要件を満たせば、勤続年数が1年未満でも申し込み可能です。 申込要件の1つである「総返済負担率」は、以下の基準が設けられています。 年収400万円未満:30%以下 年収400万円以上:35%以下 この基準を満たしていれば、他の要件・審査項目(信用情報、物件評価など)と合わせて総合的に判断されます。 関連記事はこちらフラット35の審査基準を徹底解説!本当に審査が甘い? 勤続年数にこだわらない金融機関を選ぶ 勤続年数に厳格な基準を設けず、柔軟に審査する金融機関があります。そういった金融機関を選択したうえで、複数の住宅ローン商品を比較し、フラット35のような勤続年数の条件がないローン商品などを選ぶことで、審査通過の可能性を高めることができます。 勤続年数以外の条件を整える 勤続年数が短い場合でも、他の条件が良ければ審査に通る可能性は十分あります。例えば、以下のポイントを意識しましょう。 総返済負担率を抑える 年収に対する年間返済額を低めに設定する 信用情報に注意する 他のローンを返済する、クレジットカードの延滞を避ける 転職する場合は年収アップを狙う 収入が上がればプラス評価につながる可能性がある まとめ 住宅ローンの審査では、多くの金融機関が申込者の勤続年数を重視しています。転職などが理由で勤続年数が1年未満の場合、審査で不利になることはありますが、フラット35のように勤続年数の条件がないローン商品も存在します。 また、金融機関によって審査基準は異なるため、自分に合った選択肢を見つけることが大切です。勤続年数以外の条件(返済負担率、信用情報、年収など)を整えることで、審査通過の可能性を高めることもできます。 なお、勤続年数が短いからといって、虚偽の申告をするのは絶対に避けましょう。金融機関は審査の際に勤務先や勤務状況を確認します。虚偽が発覚すると、契約違反となり、債務の一括返済を求められるリスクもあるため、正確な情報で申し込むことが何より重要です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 期限の利益とは、住宅ローンを借り入れた際などに生じる債務者の利益のことです。債権者は期限が到来するまで履行を請求できず、債務者にとっては債務に猶予が生まれるため“利益”となります。一方で、契...
住宅ローンの返済日、うっかり口座の残高が足りずに返済できなかった。そんな経験はありませんか?実は、住宅ローンの口座残高不足による延滞状態を放置すると、遅延損害金の発生や信用情報への悪影響など、思わぬリスクにつながることがあります。 この記事では、住宅ローンが口座残高不足で返済できなかったときの再引き落としの有無や延滞によるリスク、今すぐできる対処法について、わかりやすく解説します。 住宅ローンが口座残高不足で返済できなかったときどうなる? 住宅ローンの返済日に口座残高が不足して返済できなかったとしても、すぐに重大な問題になることはありません。しかし、遅延損害金の発生、信用情報への影響など、放置すると将来的に大きなリスクにつながる恐れがあります。 まずは、速やかに金融機関に連絡し、指示に従って対応することが大切です。 遅延損害金が発生する 住宅ローン返済が遅れると、遅延損害金が発生する場合があります。これは、元金の償還が遅れた場合などに、返済期日を過ぎた日数に応じて課されたりする費用です。遅延損害金は、未払いの返済額に加えて支払う必要があるため、放置せず、速やかに対応することが重要です。 遅延損害金の計算例 遅延損害金は、以下の計算式で求められます。 遅延損害金=元金×遅延損害利率(年率)×延滞日数÷365 例) 元金10万円、遅延損害利率14.0%、延滞日数12日の場合 10万円×14.0%×12日÷365日=約460円 一度の延滞が少額だとしても、繰り返すことで合計額が大きくなり、家計への負担が増加します。特に、複数回の延滞が続くと信用情報にも記録されることがあるため、金融機関への早めの連絡と入金が欠かせません。 出典)一般財団法人 住宅金融普及協会「住宅ローン用語集」 口座残高不足で返済できなかったとき再引き落としはできる? 住宅ローンの返済が口座残高不足でできなかった場合、再引き落としが行われるかどうかは金融機関によって異なります。 まずは、口座残高不足で引き落としができなかったことが判明した時点で、速やかに金融機関へ連絡し、どのように対応すればよいかを確認することが重要です。放置すると遅延損害金が発生するだけでなく、信用情報にも影響することがあるため、早めの行動がカギとなります。 再引き落としが行われるケースが多い 多くの金融機関では、返済日に口座残高が不足していた場合、各金融機関の定めるタイミングで再引き落としが行われます。再引き落としの実施前までに返済口座に不足額を入金することで、返済を行うことができます。また、延滞期間に応じた遅延損害金も同時に引き落とされる場合もあるため、事前に返済額がいくらになるかを確認しておくことが重要です。 引き落としのタイミングについてなどは、金融機関のホームページや問い合わせ窓口にて確認しましょう。 指定口座への振り込みを求められることもある 一部の金融機関や住宅ローン商品では、再引き落としではなく、指定口座への振り込みを求められるケースもあります。この場合は、振込先の口座情報や金額を正確に確認し、速やかに対応しましょう。 なお、返済期日を過ぎてからの振り込みは、すでに延滞扱いとなっている可能性があります。延滞による遅延損害金が発生する場合もあるため、金融機関からの指示を受けたら、できるだけ早く対応することが重要です。 住宅ローン返済を放置するリスク 口座残高不足に気づいた時点で、速やかに金融機関へ連絡し、返済資金を入金すれば、大きな問題に発展することはほとんどありません。しかし、そのまま放置してしまうと、住宅ローンの延滞が深刻化し、以下のような重大なリスクにつながることがあります。 一括返済を求められる 延滞が一定期間続くと、住宅ローンを分割で返済する権利(=期限の利益)を失い、残債の一括返済を求められることがあります。一括返済ができない場合は、任意売却や競売によって自宅を手放すことになるケースもあるため、早期対応が不可欠です。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 他の借り入れや住宅ローンの借り換えが難しくなる 住宅ローンの延滞情報は個人信用情報機関に登録され、いわゆる「ブラックリスト入り」状態になる場合があります。その結果、車のローンや教育ローンなどの新たな借り入れはもちろん、住宅ローンの借り換えも難しくなるため、将来の選択肢が大きく制限されてしまう恐れがあります。 関連記事はこちらブラックリストでも住宅ローンは組める?審査への影響と解消までの流れを解説 最終的には自宅を手放すことになる 住宅ローンの延滞が長期化すると、金融機関から督促状や催告状が送付されます。それでも対応しない場合、保証会社による代位弁済が行われ、競売の申立てを受ける場合があります。最終的には、自宅が差し押さえられ、強制的に競売にかけられて売却されることになり、家を失う結果につながります。 関連記事はこちら競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 住宅ローンの返済が苦しいときの対処法 住宅ローンの返済をうっかり忘れただけでなく、そもそも今後の返済が厳しいといった場合には、早めに対策を講じることが重要です。ここでは、返済負担を軽減するための具体的な方法をいくつか紹介します。 返済スケジュールの見直し 住宅ローンの借り換え 任意売却 リースバック 返済スケジュールの見直し 金融機関によっては、返済期間の延長や毎月の返済額の調整など、返済スケジュールの見直しに応じてもらえる場合があります。たとえば、「フラット35」では、不況による収入減少などで返済が困難になった契約者を対象に、返済期間の延長や一時的な返済猶予の相談が可能です。 ただし、返済期間を延長することで、総返済額や利息が増えるため、事前にシミュレーションしておくと安心です。 住宅ローンの借り換え 他の住宅ローンに借り換えることで、金利や返済期間を見直し、毎月の返済額を抑えることができる場合があります。住宅ローンの借り換えが難しい場合は、不動産担保ローンや、シニア層向けのリ・バース60への借り換えも選択肢に入ります。 「リ・バース60」については、毎月の返済は利息のみで、元金は債務者の死後に一括返済される仕組みのため、老後の生活費の負担軽減が期待できます。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! 任意売却 任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際に、債権者と債務者が合意のうえで担保不動産を売却する方法です。競売とは異なり、市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。ただし、金融機関の同意が必要で、売却後も残債が残る場合があるため、事前に条件をよく確認しましょう。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 リースバック リースバックとは、自宅を売却したあとも、同じ家に住み続けられるサービスです。売却先のリースバック運営会社と賃貸借契約を結び、毎月家賃を支払うことで住み慣れた環境を維持できます。 「今の家を手放したくない」「生活環境を変えたくない」と考えている方には、リースバックも選択肢の一つとなるでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 まとめ 住宅ローンの返済が口座残高不足でできなかった場合、時間が経つほど遅延損害金が増え、信用情報にも影響を及ぼす場合があります。多くの金融機関では、再引き落としが行われますが、対応方法は金融機関によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。 住宅ローンをそのまま返済せずに放置すると、一括返済の請求や競売による自宅の売却など、深刻な事態に発展するリスクがあります。こうした事態を避けるためにも、口座残高不足で返済できなかったことに気づいたら速やかに金融機関へ連絡し、適切な対応を取ることが何よりも大切です。 不安な方は、まずは金融機関の窓口や相談センターに連絡してみましょう。また、住宅ローンの見直しや借り換えを検討している方は、専門家への相談もおすすめです。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンを滞納したらどうなる?対処法も併せて解説 収入の減少や、まとまった支出の発生で、住宅ローンが払えなくなってしまう人もいるでしょう。住宅ローンを滞納すると、自宅が競売にかけられる恐れがあります。住宅ローンの返済が苦しいと感じたら、なる...
住宅ローンを組むには、金融機関の審査に通過する必要があります。住宅ローンで審査されるとき、申込者に税金滞納があるとどのような影響があるのでしょうか。 この記事では、税金滞納が住宅ローンの審査に与える影響と対策について解説します。 税金滞納とは 税金滞納とは、納税義務者が法定の納期限までに税金を納めなかった状態を指します。税金を納期限までに支払わない場合、財産の差し押さえなどの滞納処分が科される恐れがあります。 税金を滞納していても審査に通る? 税金を滞納していても、必ずしも住宅ローンの審査に通らないわけではありません。しかし、審査のハードルが高くなると考えておくべきでしょう。金融機関は申込者の返済能力を重視するため、税金の滞納があると「返済能力に問題がある」と判断されやすくなります。 また、金融機関は申込者に納税証明書の提出を求めるなどして、国税や地方税の納税状況を確認します。そのため、税金を滞納している場合は金融機関に知られることになり、一般的に住宅ローンの審査に通るのが難しいといわれています。 さらに、税金以外にもローンや社会保険料の滞納にも注意が必要です。ローン返済の延滞は信用情報に記録されるほか、健康保険料や年金保険料などの社会保険料を滞納している場合も、返済能力に問題があるとみなされることがあります。 住宅ローン申込時の税金関連の必要書類 前述のとおり、住宅ローンの申し込み時には、納税証明書の提出を求められることがあります。会社員と個人事業主(自営業者)では、求められる書類が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。 会社員の場合、所得税や住民税は給与や賞与から源泉徴収されるため、納税状況を証明する書類として源泉徴収票や住民税決定通知書を提出します。 一方、個人事業主(自営業者)は、自身で納税手続きを行う必要があるため、確定申告書や住民税納税証明書、納税証明書「その1・その2」など、会社員よりも多くの書類を準備する必要があります。 納税証明書の対象税目 税金は、以下のように課税主体によって対象税目や納税証明書の申請窓口が異なります。 課税主体 対象税目 申請窓口 国所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税 など税務署 都道府県住民税(県民税)、事業税、自動車税、不動産取得税 など都道府県税事務所 市区町村住民税(市民税)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税 など市区町村役場 関連記事はこちら納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 税金を滞納した状態での住宅ローン審査への対策 もし、税金を滞納した状態で住宅ローンを組むことを検討しているのであれば、まずは税金滞納の解消を最優先に考えましょう。 最も確実な方法は、滞納している税金を一括で支払うことです。支払いの余裕がある場合は、速やかに納税手続きを進めるのが理想です。一方で、すぐに全額を支払うのが難しい場合でも、決して放置をせず、管轄の税務署や市区町村の窓口などに相談しましょう。 支払いが困難と認められる事情があれば、分割納付が認められることがあります。また、状況によっては、財産の差押え猶予や延滞税の免除が認められる可能性もあるため、早めの相談が重要です。 関連記事はこちら税金を滞納するとどうなる?払えないときの解決方法や対策を紹介 住宅ローン返済中の税金滞納にも注意 住宅ローン返済中に税金を滞納すると、重大な影響を及ぼすこともあるため、注意が必要です。税金を納期限までに支払わなかった場合、督促状が送付されます。一般的に、国税は納期限から50日以内、地方税は20日以内に督促状が発布されるのが原則です。 督促状が届いても納付しない場合、税務署や自治体から電話や訪問、文書による催告が行われます。滞納を放置すると財産の差し押さえなどの措置が取られることもあるため、早めに対応することが重要です。 出典)国税庁「第1編、第2章、第2節、督促」 法律の規定に基づき、納税者の所轄税務署の徴収職員は、本人の同意を得ることなく金融機関や勤務先、生命保険会社などに財産調査を行うことが可能です。調査の結果、預貯金や生命保険、自動車、給与、さらには住宅ローンで購入した不動産などの財産が差し押さえの対象となることがあります。 まとめ 税金滞納がある場合、金融機関から返済能力に問題があると判断されることが多く、住宅ローンの審査に通るのが難しくなるといわれています。ただし、滞納があるからといって必ず審査に落ちるわけではなく、条件次第ではローンを組めることもあります。 しかし、税金の滞納を抱えたまま住宅ローンを組むと、返済計画が不安定になりやすく、将来的な支払いに影響を及ぼすことも考えられます。特に、税金の滞納だけでなく住宅ローンの延滞が発生すると、個人信用情報に記録され、希望する条件での借り入れが難しくなるリスクもあります。 そのため、住宅ローンを申し込む前に、まずは税金の滞納を解消することを優先し、無理のない資金計画を立てることが重要です。安定した返済ができる状況を整えることで、住宅ローンを計画的に返済できる基盤を築くことができます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 支払督促とは?かかる費用と手続きの流れをわかりやすく解説 支払督促は、お金の未払いに関するトラブルを解決できる法的手続きのひとつです。お金を返してもらえなくて困っている場合、支払督促を利用すれば、裁判をしなくても迅速に問題を解決できる可能性がありま...
固定資産税は、土地や建物などの固定資産にかかる税金です。納税通知書を見て、「固定資産税が思ったより高い」と疑問を感じる人もいるでしょう。この記事では、固定資産税の計算方法や、固定資産税が高すぎると感じるケースの具体例とその対処法を解説します。 そもそも固定資産税の計算方法は? 固定資産税は、土地や建物を所有している人に課税される税金です。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となり、市区町村に納付します。一般的に、固定資産税は以下のような流れで計算します。 固定資産の評価 課税標準額の決定 固定資産税額の計算 詳細については以下で解説します。 固定資産の評価 固定資産税の評価額は、総務大臣が定めた固定資産税評価基準に基づいて、市区町村が土地や建物の評価を行い決定します。固定資産税の評価額は、固定資産税の課税標準額の基礎となるものです。 例えば、土地は売買実例価額、建物は再建築価格などを参考に評価されます。そして、土地や建物の固定資産税の評価額は、原則として3年ごとに評価替えが行われます。 課税標準額の決定 算出された建物の評価額をもとに、1月1日時点の資産価格を決定し、固定資産課税台帳に登録します。この価格が固定資産税の課税標準額です。一般的に、建物の固定資産税の課税標準額は、固定資産税の評価額と同じです。 ただし、土地の場合は、課税標準額が軽減される特例措置などがあり、固定資産税の標準額と固定資産税の課税標準額が異なる場合があります。例えば、200㎡以下の土地は、住宅用地の特例措置が適用されると、固定資産税の課税標準額が6分の1に軽減されます。 固定資産税額の計算 固定資産税額は「固定資産税の課税標準額×税率」で計算します。税率は原則1.4%ですが、自治体によって税率が異なる場合があります。また、新築建物のうち、一定の要件を満たす場合は、固定資産税額が軽減される制度もあります。詳細は、国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」 をご確認ください。 固定資産税の評価額がおかしいと感じたときの対処法 固定資産税の納税通知書を受け取り、評価額や税額に疑問を感じたら、まずは自治体の税務担当窓口に相談しましょう。固定資産税の評価額の根拠や固定資産税額の計算方法について、説明を受けることができます。 それでも不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から3ヵ月以内に、自治体に対して審査の申出ができます。なお、固定資産の価格について不服がある場合は、自治体に対してではなく、固定資産評価審査委員会に対する申出となります。 固定資産税が高すぎると感じるケースの具体例 固定資産税の評価額や固定資産税額が高すぎると感じるケースには、いくつかのパターンがあります。ここでは、具体例を4つ紹介します。 自宅が古くなっても評価額が下がらない 一般的に、築年数が経過するにつれて建物の価値は下がる傾向にあります。ただし建物の固定資産税の評価額は、再建築価格をもとに計算します。建築費が上昇すると固定資産税の評価額が減少せず、かえって上昇することがあります。 急に固定資産税が高くなった 前述のとおり、新築不動産には固定資産税額が2分の1に軽減される措置が適用されることがあります。例えば、令和8年3月31日までに新築された住宅について、床面積が120平方メートル以下の住宅であれば、新築後3年間(または5年間)、固定資産税が2分の1に軽減されます。新築から築年数が経過して軽減措置の適用期間が終了すると、本来の税額に戻るため、「固定資産税が急に高くなった」と感じることがあります。 用地変更をしたら固定資産税が高くなった 住宅用地の特例措置が適用された建物が建つ土地は、課税標準額が下がり、固定資産税が軽減されます。この特例は、住宅が存在することを条件としており、適用期間中に建物を解体するか、住宅以外の用途に変更すると、翌年以降は特例措置の適用から外れるため税額が高くなります。 地価が下がっているのに固定資産税が高くなった 固定資産税は、地域や土地による税負担の格差を調整する負担調整措置があります。負担水準が高い土地は税負担の引き下げ・据え置きが行われる一方で、負担水準が低い土地は税負担を引き上げる仕組みです。 地価が下落する中で固定資産税の評価額が上がっている場合、この負担調整措置によって、固定資産税の課税標準額の是正が行われていると考えられます。 自治体が固定資産税を誤って課税しているケースもある 総務省の調査によると、調査対象期間(平成21年度~平成23年度)の間に税額修正した納税義務者数が1人以上あった市町村は、調査回答団体の97.0%にのぼります。納税義務者総数に占める税額修正のあった人数の割合は、調査対象期間の平均で土地・建物のどちらも0.2%でした。 年度 税額修正団体数 団体数割合 平成21年度1,483団体93.2% 平成22年度1,485団体93.2% 平成23年度1,484団体93.2% 累計1,544団体97.0% ※団体数割合=各年度の税額修正団体数/調査回答団体数 出典)総務省「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果 自治体の課税ミスの原因は? 固定資産税の税額修正の要因として、土地は評価額の修正(29.9%)、負担調整措置・特例措置の適用の修正(22.9%)の割合が高くなっています。建物は評価額の修正(29.7%)、建物滅失の未反映(23.6%)、新増築建物の未反映(20.6%)などがあります。 上記は平成24年度のデータで古いものですが、近年でも課税誤りは発生しています。例えば、自治体単位だと令和6年度においても、以下のような課税誤りが実際に発生し過大徴収の事実が判明しています。 出典)和歌山県広川町「固定資産税(一部の雑種地)課税誤りに関する報告とお詫び」 出典)福岡県遠賀町「固定資産税の課税誤りについて(お詫び)」 まとめ 固定資産税の評価額や固定資産税額が高いと感じるのは、住宅用地の特例措置や固定資産税額の軽減措置が適用されなくなったことが原因かもしれません。ただし、自治体が誤って固定資産税を課税しているケースもあります。この記事の内容を踏まえても固定資産税が高いと感じる場合は、お住まいの自治体の税務担当窓口に相談してみるとよいでしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 固定資産税評価証明書とは?必要な場面や取得方法を解説 固定資産税評価証明書は、不動産の取引や手続きで必要となる公的な書類です。普段の生活ではあまりなじみのない書類のため、どのように活用すればよいかわからない人は多いのではないでしょうか。 この記...
固定資産税は、住宅などの不動産を所有している人に毎年課される税金です。固定資産税を払い忘れてしまうと延滞金が発生したり、最終的には財産を差し押さえられたりする場合もあります。この記事では、固定資産税の納期限や払い忘れたときに起こること、納期限を過ぎてしまったときの対処法を解説します。 固定資産税の納期限はいつ? 固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・家屋の所有者が納める税金です。納税義務者には、自治体から毎年納税通知書が届きます。原則として年4回の納期に分けて納めます。納期は条例によって定められるため、自治体によってことなります。例えば、東京23区の令和7年度の納期は以下のとおりです。 第1期:令和7年6月1日~6月30日(納期限6月30日) 第2期:令和7年9月1日~9月30日(納期限9月30日) 第3期:令和7年12月1日~令和8年1月5日(納期限1月5日) 第4期:令和8年2月1日~3月2日(納期限3月2日) 納税者が希望すれば、一度に全額を納めることも可能です。1年分の一括払用納付書には納期限の記載はありませんが、これは第1期から第4期までの税額をまとめて納めるためのものです。第1期納期限以降に納付した場合、納期限の翌日から納付日までの期間に応じて延滞金が発生する場合があるので、注意が必要です。 出典)東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」 固定資産税を払い忘れるとどうなる? 納期限を過ぎても固定資産税を納付しない場合、段階的にさまざまな対応が取られます。具体的には以下のとおりです。 督促状が届く 固定資産税を納期限までに納めないと、まずは自治体から督促状が届きます。督促状とは、税金の納付を促すために発行される書類です。地方税は、原則として納期限から20日以内に督促状が発行されます。督促状の送付後、電話や訪問などが行われる場合もあります。 催告書が届く 督促状が届いても納税しない場合は、自治体から催告書が届きます。催告書では法的措置を予告される場合があり、督促状よりも強く納税を求める意味合いがあります。また、財産の差し押さえを行うために、金融機関や勤務先などに対して財産調査が行われます。 本来の税額とは別に延滞金が発生する 納期限の翌日から納付日までの日数に応じて、本来の税額とは別に延滞金が発生します。延滞金の利率は、滞納期間や年によって異なります。令和7年分については、納期限の翌月から1ヵ月は税額に年2.4%、1ヵ月経過後は税額に年8.7%の割合を乗じた金額です。 関連記事はこちら税金を滞納するとどうなる?払えないときの解決方法や対策を紹介 固定資産税の納期限が過ぎてしまったときの対処法 もし固定資産税の納期限が過ぎてしまったことに気づいたら、放置せずにすぐ対処することが重要です。ここでは、具体的な対処法を紹介します。 納付書があれば金融機関などで納付できる 納期限が過ぎてしまっても、手元に納付書があれば金融機関やコンビニエンスストアなどで納付できる場合があります。納付書が使用できるかを確認したうえで、できるだけ早く納付しましょう。なお、滞納期間によっては、延滞金がかかる場合もあるので注意が必要です。 納付書をなくした場合は自治体に再発行を依頼する 固定資産税の納付書をなくした場合は、自治体の担当窓口に連絡して納付書の再発行を依頼しましょう。自治体の窓口に直接訪問する方法以外に、電話やインターネット(電子申請)で再発行の手続きができる場合もあります。再発行された納付書が手元に届き次第、速やかに納付を行いましょう。 払えない場合は自治体の窓口に相談する 経済的な理由などで固定資産税を払うのが難しい場合は決して放置せず、できるだけ早く自治体の窓口に相談しましょう。状況によっては、分割納付や差し押さえの猶予などが認められるかもしれません。相談する際は、事情を正直に伝えることが大切です。 固定資産税の払い忘れを防ぐための対策 最も確実な方法は、口座振替を利用することです。銀行口座から自動的に引き落とされるため、固定資産税を払い忘れる心配がありません。多くの自治体で口座振替が利用できるので、手続き方法を確認してみるとよいでしょう。 その他にも、近年ではQRコード決済を利用することで、納期に合わせた支払予約をできるサービスもあります。いずれにしても、納税通知書が届いたらすぐに納期限を確認しましょう。事前に資金を準備しておき、納期限を待つことなく速やかに納付することが重要です。 まとめ 固定資産税の払い忘れは、延滞金の発生やローン審査への影響だけでなく、最終的には財産の差し押さえという深刻な事態につながるリスクがあります。万が一納期限が過ぎてしまった場合は絶対に放置せず、自治体に相談することが大切です。口座振替を利用するなど、払い忘れを防ぐ対策を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 年金未納や税金滞納で差し押さえを受けたらどうなる? 国民年金保険料や税金などを滞納すると、財産を差し押さえられる恐れがあります。そもそも「差し押さえ」とはどういうもので、どのような財産が差し押さえの対象となるのでしょうか。 この記事では、差し...
収入の減少や、まとまった支出の発生で、住宅ローンが払えなくなってしまう人もいるでしょう。住宅ローンを滞納すると、自宅が競売にかけられる恐れがあります。住宅ローンの返済が苦しいと感じたら、なるべく早く対処することが重要です。 この記事では、住宅ローンの滞納で発生する問題点や返済できない場合の対処法について紹介します。 住宅ローンを滞納するとどうなる? 住宅ローンの返済が滞ると、最終的には競売によって相場よりも安い価格で自宅を手放さなければならない恐れがあります。各金融機関によって競売に至るまでのスケジュールは異なりますが、大まかな流れは以下のとおりです。 出典)一般社団法人 全国任意売却協会「住宅ローンが払えない場合どうなる?流れをわかりやすく解説」 支払督促が届く 住宅ローンを滞納してから支払督促が届くまでの期間は金融機関によって異なりますが、滞納から1~2か月が目安となります。 督促状とは、住宅ローンの返済が期日までに行われない場合に、速やかな支払いを求める請求書のことです。金融機関によっては、電話で支払督促が行われる場合もあります。この時点で適切に対応するようにしましょう。 なお、カードローンなどで立て替えるのは、逆に状況が悪化する恐れがあるので避けたほうがいいでしょう。 催告書が届く 住宅ローンの滞納から催告書が届くまでの期間も金融機関によって異なりますが、2~3か月程度が目安となります。催告書とは、督促状を送付しても対応しない場合に債務の履行(住宅ローンの返済)を強く要求する最終通告です。 この段階で何かしらの対策を行わないと、期限の利益喪失通知がきて、住宅ローンの一括返済を求められます。なお、期限の利益を喪失するタイミングは、契約ごとに異なります。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 この後何も対処せず競売手続きまで移行すると、自宅を差し押さえられ、相場よりも安い価格で売却される恐れがあります。 関連記事はこちら競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 住宅ローンが払えない場合どうする? 住宅ローンが払えない場合、支払督促や催告書を無視し続けてはいけません。返済が苦しいと感じたら、まずは住宅ローンを組んだ金融機関に相談しましょう。返済の目途が立たないなど、現在の状況を正直に伝えることが大切です。 住宅ローンを払えない状況が一時的なものである場合、きちんと説明すれば返済条件の見直し等に応じてもらえる可能性があります。 滞納の解消が見込めない場合は、競売にかけられる前に住宅ローンの借り換えや自宅の売却を検討しましょう。具体的には、次のような選択肢があります。 滞納したときの対処法①:住宅ローンの借り換え 住宅ローンを借り換えることによって、月々の返済額を軽減できる可能性があります。銀行の住宅ローンに借り換えることが、経済条件的には有利なことが多いですが、すでに滞納している場合の借り入れは難しいかもしれません。 銀行の住宅ローンが借り入れできなかったとしても、不動産担保ローンが選択肢になるかもしれません。 不動産担保ローン 不動産担保ローンとは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保に借り入れができるローン商品です。 現在の住宅ローンより返済期間を延ばして借り換えれば、総返済額は増えますが、月々の返済額を軽減することができます。ただし、不動産担保ローンの金利は、通常の住宅ローンに比べて高い傾向があるため、事前にシミュレーションを行うなど注意が大切です。 住宅ローンの月々の返済額を減らしたい場合は、不動産担保ローンへの借り換えも視野に入れるといいでしょう。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説 滞納したときの対処法②:自宅の売却 不動産仲介での売却 不動産仲介による売却ができれば、相対的に高値で売却できるため、負債を精算できる確率が高いでしょう。一方で、すでに住宅ローンの返済が滞ってしまい、ローンの完済ができないと思われる場合は、金融機関側に任意売却をすることを合意してもらう必要があります。 任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になったときに債権者と債務者の間で同意し、金融機関などの合意を得て担保不動産を売却することです。不動産が競売にかけられる前に、債務者が自分の意志で不動産を売却することから任意売却と呼ばれています。また、「任売」という略称を用いられることがあります。 関連記事はこちら競売を回避する「任意売却」とは?注意点や流れを解説 不動産会社への売却 不動産会社への売却であれば、仲介による売却よりも早く自宅を現金化することができます。ただし、不動産仲介による売却は時価で売りやすいのに対し、市場価格の7~8割程度となることが一般的です。 任意売却を認められなかった場合や、不動産仲介による売却が長引いてしまったときなどは、不動産会社への売却が選択肢となるでしょう。 リースバックという選択肢 リースバックとは、自宅をリースバック運営会社に売却すると同時にその会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックでの売却は、売却までの期間や価格は不動産会社への売却と大きく変わりません。 所有権は手放すことになりますが、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるのもメリットです。滞納解消のために自宅を売却した後も、引っ越しせずに住み続けたい場合はリースバックが向いているでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 まとめ 住宅ローンが払えないときは、支払督促や催告書を無視せず早く金融機関に相談することが大切です。払えない状況が一時的なものであれば、返済条件の見直し等に応じてもらえる可能性があります。 滞納の解消が見込めない場合は、任意売却や直接買取、住宅ローンの借り換えやリースバックなどで自宅の売却を検討しましょう。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 無料相談をしてみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 コロナ禍が追加!自然災害債務整理ガイドラインとは? コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...
ローンの返済が返済期日に間に合わず滞納した場合、金融機関などから代位弁済の通知が届く場合があります。代位弁済という言葉を聞いたことはあっても、その意味を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。 この記事では、代位弁済の仕組みや流れ、リスクについて詳しく解説します。 代位弁済とは まずは、代位弁済の仕組みと種類について確認していきましょう。 代位弁済の仕組み ※筆者作成 代位弁済とは、保証会社などの第三者がローンを滞納している債務者に代わって、金融機関に一括返済することです。代位弁済が行われた後は、債権者は金融機関から保証会社に代わります。 代位弁済によって、ローン残債(借金)がなくなるわけではなく、代位弁済を行った保証会社には求償権が生じます。求償権とは、代位弁済を行った場合に、債務者に対してその弁済額の返還を求める権利です。 つまり、代位弁済が行われると債務者は、ローンの返済を保証会社に行う必要があります。代位弁済は、債務者の返済を先延ばしにするものではなく、金融機関等の債権者の貸し倒れリスクを下げ、お金を貸しやすくするための仕組みといえるでしょう。 債権法の改正について 明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の内容については約120年間ほとんど改正がされていなかったことから、社会・経済の変化への対応と実務で通用している基本的なルールを適切に明文化するため、2020年4月1日に債権法が改正されました。 代位弁済に関わる旧法での問題点は以下の2点です。 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない 債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない これらの問題点に対し、改正後の民法では、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとしても、債権者が受けた弁済は有効となりました。また、見知らぬ第三者からの弁済を行いたい旨の申し出を債権者は拒絶できるようになりました。 なお、旧法での「利害関係を有しない第三者」の表現は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」に変更されました。 出典) ・民法第474条(第三者弁済) ・法務省「弁済に関する見直し(第三者弁済)」 代位弁済が行われるときの流れ 代位弁済が行われる場合は、一般的には以下のような流れで手続きが進められます。 貸主から借主への督促 ローンを滞納すると、まずは貸主である金融機関から借主に対して督促が行われます。電話や督促状の送付などの方法が一般的です。督促状が届くまでの期間は金融機関によって異なり、ホームページの「よくある質問等」に記載されている場合もあるので、確認してみるといいでしょう。 この段階で適切に対応し、滞納しているローンを返済すれば代位弁済を回避できるでしょう。 保証会社が貸主に代位弁済 貸主から借主へ督促を行っても返済がなされない場合、貸主が保証会社に対して借金残高の返済を求める代位弁済が行われます。なお、このタイミングで「期限の利益喪失」の予告通知も届きます。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 保証会社が借主へ返済の請求 代位弁済が行われると、債務者は金融機関から保証会社に代わります。保証会社から「代位弁済通知」が届き、借主に対して返済の請求が行われます。 代位弁済された時の時効はいつ? 代位弁済の消滅時効期間は、原則、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です。2020年3月以前は、職業別や商事などで起算点が異なっていましたが、2020年4月の民法改正により、シンプルに統一化されました。 民法上は以下のように定めています。 民法第166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。 出典)民法第166条「債権等の消滅時効」 権利を行使することができることを知った時と、権利を行使することができる時とが基本的に同一時点である場合の消滅時効期間は下記の図のとおりです。 【例】売買代金債権、飲食料債権、宿泊料債権など契約上の債権 ※筆者作成 出典)法務省「消滅時効に関する見直し」 代位弁済で生じるリスク 代位弁済が行われると、債務者には次のようなリスクが生じます。 一括返済の請求 代位弁済が行われ、債権者が保証会社に代わると残債の一括返済を求められます。数百万円~数千万円のローンが残っている場合、一括で返済するのは難しいでしょう。 遅延損害金の発生 遅延損害金とは、ローンを期日までに返済できなかったときに発生する賠償金です。代位弁済が行われるということは、滞納期間が長期化し、遅延損害金の額も高額になっている恐れが高いでしょう。 滞納している元本と利息だけでなく、遅延損害金も含めて返済する必要があります。 保証人への督促 ローンを組む際に保証人を設定している場合、代位弁済を行った保証会社は債務者本人だけでなく、保証人にも督促を行います。債務者が返済できない場合、保証人が一括返済を求められる恐れもあります。 代位弁済が行われたら、保証人と今後の返済について相談する必要があるでしょう。 信用情報の登録 代位弁済が行われると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。具体的には、「クレジットカードの新規発行ができない」「新たなローンを借りられない」などの影響が出ます。 なお、指定信用情報機関は以下の3つです。 株式会社日本信用情報機構(JICC) 株式会社シー・アイ・シー(CIC) 全国銀行個人信用情報センター 財産の差し押さえ 保証会社からの請求に対応せず放置していると、最終的には強制執行により財産の差し押さえが行われます。給与や預貯金、生命保険、不動産、自動車など、幅広い財産が差し押さえの対象となります。 まとめ ローンを滞納して代位弁済の通知を受けた場合は、弁護士に相談するといいでしょう。また、不動産担保ローンを提供している金融機関や任意売却を扱う不動産会社に相談することで、ローン返済の資金を調達できる可能性もあります。 ローンを組む際は現在の収入や支出を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが大切です。万が一、返済が困難になった場合は放置せず、早めに専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説 債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サー...
債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サービサーの概要や仕組み、債権回収の方法などについて解説します。 債権回収会社(サービサー)とは サービサーとは、金融機関等から委託を受け、または譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。(特定金銭債権の詳細は後述します。) 例えば、フラット35の融資を受けている債務者が全額繰上償還請求を行ったときの回収業務は、住宅金融支援機構が行うのではなく、以下のサービサーが行うものとされています。 エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社 オリックス債権回収株式会社 株式会社住宅債権管理回収機構 三菱HCキャピタル債権回収株式会社 出典)住宅金融支援機構「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」 債権回収業務は、従来は弁護士法の規定により、弁護士または弁護士法人以外の者が債権管理回収業務を行うことはできませんでした。しかし、1991年のバブル崩壊により発生した不良債権の処理等を促進するため、1999年に弁護士法の特例として「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、債権管理回収業が民間業者に解禁されました。 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」 債権者である金融機関等にとっては、サービサーを利用することで回収交渉などの業務負担の軽減、債権譲渡による不良債権の解消などが期待できます。 特定金銭債権とは 特定金銭債権とは、サービサーが取り扱うことができる以下のような金銭債権です。 <主な特定金銭債権> 金融機関等が有する、または有していた貸付債権 リース契約・クレジット契約に基づく金銭債権 資産の流動化に関する金銭債権 ファクタリング業者が有する金銭債権 法的倒産手続中の者が有する、または有していた金銭債権 求償権その他の債権 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の概要」 特定金銭債権の範囲は、サービサー法によって規定されています。不良債権の処理等を促進する観点から、サービサーが取り扱える金銭債権の範囲を限定しています。 債権回収会社(サービサー)の種類 法務省の資料によれば、2023年12月31日時点で、営業を行っているサービサー73社に調査した結果、出資母体等別の内訳は以下のとおりとなっています。 金融機関系(20社) 信販・貸金・リース系(16社) 外資系(4社) 不動産・独立系・その他(33社) 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について(概要)」 債権管理回収業の営業許可を受けている業者は、法務省のホームページで確認でき、2024年4月1日時点では、72社となっています。 出典)法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」 債権回収会社(サービサー)の仕組み サービサーはどのように運営され、どのような方法で債務者から債権を回収しているのでしょうか。ここでは、サービサーの仕組みと債権回収の方法について紹介します。 サービサーの仕組み ※筆者作成 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」3.法の仕組み サービサーとして債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要です。許可を受けるには、以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。 資本金が5億円以上あること 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること 暴力団員等反社会的勢力の関与がないこと 法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取し、弁護士会が取締役となる弁護士を推薦することで、サービサーの業務全般を適正に監督しています。 暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取、警察庁長官がサービサーに立入検査や援助等を行う仕組みになっています。 債権回収会社(サービサー)の業務 サービサーは金融機関等からの委託、債権譲渡を受けて次のような業務を行います。 債権管理 債務者への督促 法的手段の検討 債権回収後の処理 債権者である金融機関等に代わって、担当窓口として債務者への債権額の確認、返済交渉などを行います。債権を譲り受けた場合は債権者として自ら回収を行い、状況によっては法的手段も検討することになります。 サービサーとファクタリングの違い サービサーは前述のとおり、銀行や貸金業者などの金融会社が特定金銭債権の回収業務を委託され、後から債権を回収するものです。これに対し、ファクタリングは、企業がファクタリング会社に売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらうことで、本来の回収より前に資金調達を行えるという違いがあります。 詳しくは関連記事をご確認ください。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 サービサーと債務者の関係 サービサーと債務者の関係は、債権者から債権回収を委託されるか、債権を譲渡される(買い取る)かによって異なります。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合、サービサーが窓口として債務者と返済に関する交渉を行います。債権者は金融機関のまま変わりません。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合 ※筆者作成 一方、金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合、サービサーは債権者として債務者と回収交渉を行います。債権譲渡後、債務者は金融機関に対する返済義務はなくなりますが、サービサーへの返済義務が生じます。 金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合 ※筆者作成 債権回収会社(サービサー)の債権回収方法 サービサーは、次のような方法で債権回収を行います。 電話や面会での交渉 支払督促 内容証明郵便での督促 民事調停手続き 通常訴訟・少額訴訟 強制執行 まずは電話や書面などで通知が来るのが一般的です。その段階で対応しなければ、民事調停や訴訟などの法的手続きに移り、最終的には財産を差し押さえられるなどの強制執行が行われます。 ローン返済が滞った場合など、サービサーから通知が来たら、法務大臣の許可を受けている業者かどうかを確認しましょう。サービサーの名前をかたった業者による債権の架空請求などが発生しているため、心当たりのない請求には応じないことが大切です。 実際に返済が遅れているなど、サービサーからの通知に心当たりがある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら返済について交渉するといいでしょう。 まとめ ローンの返済が困難となった場合、返済交渉の窓口が借入先である金融機関等から民間業者のサービサーに移る場合があります。 サービサーは債権回収の専門知識を有しており、通知を無視していると最終的には財産を差し押さえられる恐れがあります。サービサーから連絡がきたら、まずは法務大臣の許可を受けた登録業者であることを確認することが大切です。 そのうえで、自身だけで返済交渉をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。