iDeCo加入時に住宅ローン控除との併用で注意すること

節税効果が大きなメリットのiDeCoと住宅ローン控除。しかし、「税額控除」と「所得控除」という違いがあることをご存じでしょうか。また、併用する際には、それぞれの控除が打ち消し合うことがないかなどにも注意しましょう。

iDeCoの掛金は「所得控除」

個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は原則60歳まで(2022年5月からは原則65歳まで)加入できる老後資金を準備するための制度で、拠出した掛金は「所得控除」の対象となり、所得税と住民税の節税効果につながる点がメリットの1つとされています。拠出したお金は投資信託や元本確保型商品(預金や保険)で運用できます。

拠出できる掛金には上限があり、自営業者等であれば国民年金基金と合算して月68,000円、会社員は企業型確定拠出年金や企業年金等の有無により月12,000~23,000円です(条件によりiDeCoに加入できない人もいます)。公務員は月12,000円、配偶者の扶養に入っている専業・パート主婦(夫)は月23,000円まで拠出できます。ここでは月額で示しましたが、実際は年額で上限が定められています。

下図は、所得税の課税額算出の流れです。所得税は、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。

iDeCoで拠出した掛金は、図からわかるように、所得税と住民税(所得割額)を算出する課税所得から控除できます。例えば、所得税率10%の人が23,000円のiDeCo積立を行った場合、年掛金276,000円に対し、節税効果は年55,200円(所得税27,600円、住民税27,600円)です。

図:課税所得算出の流れ

課税所得算出の流れ

住宅ローン控除は「税額控除」

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを借りてマイホームを取得・リフォームした場合に、一定要件を満たせば、所得税から控除できる仕組みです。年末のローン残高に応じて、2021年は1%、2022~2024年は0.7%が所得税額から控除できます。

控除できる上限も、物件が新築か中古かで適用となる年数が異なるほか、2022年以降は、物件が認定住宅かどうかによっても変わります。

国税庁 No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除は、図を見ていただくとわかるように、算出された所得税から控除できます。控除額が所得税を上回った場合は、翌年の住民税から一定額まで控除することもできます。

そもそもどのような人がiDeCoを活用すべき?

ところで、そもそもどのような人がiDeCoを活用すべきなのでしょうか。
iDeCoは現在、原則60歳まで(2022年5月からは原則65歳まで)が加入できる制度で、前述のように、自営業者等や会社員、公務員、専業・パート主婦(夫)など、国民年金加入者(第1号~第3号)であれば加入できます。

「iDeCoを活用すべき人」を明確にするために、まず、iDeCoに加入できない人や、iDeCoが向かない人を整理してみましょう。

iDeCoに加入できない人

iDeCoに加入できないのは下記3通りです。

  • 国民年金の未納がある場合
  • 年齢要件を満たさない場合
  • 勤務先が企業型年金との併用を認めていない場合

iDeCoはあくまで公的年金を補完する役割であるため、国民年金保険料を支払っていることが条件となります。また、加入のためには20歳以上60歳未満(2022年10月からは65歳未満)という年齢制限があります。

他にも会社員の場合には勤務先の企業年金の規約を確認する必要があります。勤務先によっては企業型年金とiDeCoの併用を認めていない場合があり、その場合にはiDeCoへの加入ができません。

iDeCoが向かない人

また、iDeCoに加入できたとしても向いていない人もいます。

  • 20代や30代前半の専業主婦(夫)
  • 配偶者の扶養の範囲で働くパート主婦(夫)
  • 結婚資金や子どもの教育資金などを先に貯める必要がある人

上記のように、収入が少なく所得控除の恩恵を受けづらい人や、老後資金の準備よりも目先でまとまったお金が必要になる人は、中途解約や引き出しのできないiDeCoは向いていません。

これらの人で資産形成を考えているのであれば、当面は必要な時に引き出せる「NISA」の方が向きます。30代後半や40代になり、本格的に老後資金作りを進める際には、iDeCoが候補になります。所得控除による恩恵がない主婦(夫)等でも、口座維持手数料が低い金融機関を選べば、運用益は非課税、受取時は所得控除の適用対象などのメリットは享受できます。

他にも、毎月の収支に余裕がない人や、金利の高い借り入れがある人は、まずは家計の正常化を図ることが先決です。

住宅ローン控除とiDeCoの併用時はここに注意!

住宅ローン控除とiDeCoはいずれも節税効果があるものの、併用することで支払う所得税や住民税の上限を超えてしまうと、節税効果が薄れてしまう点は注意が必要です。

実際のケースで考えてみましょう。

iDeCo加入者が住宅ローン控除対象になる場合

すでにiDeCoを始めている30代後半の共働き夫婦が、マイホーム購入を検討。夫が1人で住宅ローンを組んで住宅ローン控除を利用しようとしたところ、両方の控除が重なることで所得税・住民税の納税額を控除額が越えることに気づいた。

このようなケースでは、iDeCoの拠出額の見直しを検討しましょう。iDeCoは国民年金の加入区分ごとに上限金額が決まっていますが、いずれの区分でも最低金額は5,000円からの拠出が可能です。ただし、iDeCoは原則途中解約ができない点や、掛け金の変更は年に一回までである点には注意が必要です。

住宅ローン控除対象者がiDeCoに加入する場合

住宅ローン控除を受けている30代半ばの正社員夫婦(住宅ローンは夫が組んでいる)がiDeCoを始めようと検討したところ、夫の方はiDeCoによる節税金額が少ないと判明。

⇒このようなケースでは、以下のような加入を検討しましょう。

  • 妻がiDeCoに加入をする
  • 夫が所得控除のメリットがある範囲内で掛金を設定する
  • 当面のiDeCoの加入を見送る

夫側に加入のメリットが少ないのであれば、妻が加入をするもしくは所得控除のメリットがある範囲内での加入が良いでしょう。また、住宅ローン控除で受けられる控除額は年々減っていくうえ、受けられる期間も決まっているので当面は加入を見送るというのも選択肢の一つです。

まとめ

iDeCoをうまく活用することで節税効果が見込める一方で、住宅ローン控除と併用した際には思ったよりも効果が得られない場合もあります。また、加入できたとしてもiDeCoを活用することがベストな選択肢とならない人もいるでしょう。単に運用益の非課税メリットだけで考えるのであれば、iDeCoよりも流動性が高いNISAを活用することをおすすめします。

執筆者紹介

豊田 眞弓( Mayumi Toyoda )
マネー誌ライターを経て、94年より独立系ファイナンシャルプランナー。
個人相談、講演・研修講師、コラム寄稿などを行う。座右の銘は「笑う門には福もお金もやってくる」。趣味は講談、投資。
<主な著書>
「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)、ほか著書多数。

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