不動産担保ローンやリースバック、リ・バース60など、「商品・サービス」に関するお役立ち情報を発信しています。
ゆとりある暮らしの実現に向けて、ぜひお役立てください。
手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するのは、果たして現実的なのでしょうか? この記事では、返済負担率という指標から、無理なく返済できる借入額の目安(=適正額)を具体的にシミュレーションします。さらに、将来の家計に負担をかけないためにも、住宅ローンを組む際の注意点についてわかりやすく解説します。 手取り30万円で月10万円の返済はきつい? 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済することは、数字だけみると可能に思えるかもしれません。しかし、実際には生活費や教育費、将来の支出も含めて考える必要があります。 住宅ローンの適正額を見極めるには、税金や社会保険料を差し引く前の額面年収を把握することが重要です。なお、額面年収とは、税金や社会保険料などを差し引く前の会社からの支給額を指します。 手取り30万円の額面年収はどれくらい? 一般的に、給与の手取り額は額面の75~85%程度です。仮に手取りが額面の80%だとすると、月の手取りが30万円の人の額面年収は以下のように計算できます。 手取り年収:360万円(30万円×12ヵ月) 額面年収 :450万円(360万円÷80%) ※ボーナスは考慮外 この結果から、手取り30万円の場合、額面年収は450万円程度と推定されます。実際の額面金額はボーナスや扶養家族の有無、税金の各種控除などによって異なるため、あくまで参考値としてください。 返済負担率は26.7%|年収450万円・月10万円返済の場合 返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合です。なお、この時の「年収」とは一般的に額面年収を指します。そのため、年収450万円の人が住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は以下のように計算できます。 年間返済額:120万円(10万円×12ヵ月) 額面年収 :450万円 返済負担率:120万円÷450万円=26.7% 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、返済負担率が「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。 国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」においても、世帯年収に占める返済負担率は、注文住宅で最も高く18.4%、最も低いのはリフォーム住宅で12.7%です。 物件種別 返済負担率 注文住宅 18.4% 分譲戸建住宅 17.6% 分譲集合住宅 16.1% 既存(中古)戸建住宅 16.3% 既存(中古)集合住宅 17.8% リフォーム住宅 12.7% ※国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.53」をもとに筆者作成 各調査データを踏まえると、手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するケースは、平均的な返済負担率よりも高い水準といえるでしょう。 住宅ローン以外の教育費や生活費などの支出が増えると、家計は圧迫されて返済が難しくなることもあります。安心して返済を続けるためには、返済負担率を20%以内に抑えるのが望ましいでしょう。 たとえば、手取り30万円(額面年収:450万円)の場合、返済負担率を20%とすると、月の返済額は7.5万円(年間返済額:90万円)が目安となります。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」 手取り30万円の住宅ローンの適正額 手取り30万円の場合、住宅ローンを無理なく返済するためには、どのくらいの借り入れが適正なのでしょうか?金利別に住宅ローンの適正額をシミュレーションしてみましょう。 今回のシミュレーションでは、以下の条件をもとに計算しています。 【シミュレーション条件】 月の返済額が10万円(返済負担率26.7%)と7.5万円(返済負担率20%) 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済、ボーナス払いなし 【手取り30万円の住宅ローン適正額の目安(概算)】 適用金利 月10万円返済(返済負担率26.7%) 月7.5万円返済(返済負担率20%) 0.5% 3,852万円 2,889万円 1.0% 3,542万円 2,656万円 1.5% 3,266万円 2,449万円 2.0% 3,018万円 2,264万円 ※【フラット35】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。 返済負担率を20%以内に抑える場合、住宅ローンの借入金額は2,000万円台が目安となります。ただ、適用金利に応じて、適正額の目安が変動する点に注意が必要です。 住宅ローンを組む際の注意点 手取り30万円で住宅ローンを組む際は、以下のポイントを意識しましょう。 総返済負担率を20%以内に抑える 住宅ローンを無理なく返済するには、返済負担率を20%以内に抑えるのが理想といえます。住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンといった他の借り入れも合算して考えましょう。 物件価格の2割以上の自己資金を準備する 自己資金を十分に確保することで、借入比率を抑え、返済負担を軽減できます。実際、国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資本比率は22.0%~34.6%程度が一般的です。 物件価格の2~3割程度を目安に、自己資金を多めに準備するとよいでしょう。ただし、頭金を多く入れすぎると、急な出費に対応できなくなる恐れがあるため、当面の生活費や緊急資金は確保しておきましょう。 出典)国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.48」 諸費用やローン返済以外の支出も考慮に入れる 住宅購入では登記費用や仲介手数料、火災・地震保険料、引越し費用などの諸費用が発生し、購入後は固定資産税などの維持費もかかります。また、教育費や老後資金などの準備も進める必要があります。住宅ローン返済だけでなく、諸費用やその他の支出も考慮して無理のない返済計画を立てましょう。 まとめ 手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は26.7%となり、一般的な目安である20%を上回ります。この水準では、家計に余裕がないと返済が厳しくなる場合があるため、慎重な資金計画が必要です。 住宅ローンは長期にわたる支出となるため、将来のライフイベントや収支の変化も見据えたうえで、無理のない借入額を設定することが大切です。この記事で紹介した返済負担率やシミュレーションを参考に、安心して返済を続けられる住宅ローン計画を立てましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
「リ・バース60ってやばいの?」 そんな不安を感じている人も少なくありません。SNSや口コミでは、制度の仕組みが誤解され、「怖い」「危険」といった声が見られることもあります。 しかし、そもそもリ・バース60は、高齢者の住まいや資金計画を支えるために、住宅金融支援機構が提供する安心して利用できる住宅ローン制度です。 この記事では、リ・バース60に対する誤解の背景や制度の安全性、他のローン商品やサービスとの違い、契約前に知っておきたいポイントなどを、わかりやすく解説します。 なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! 「リ・バース60はやばい」と言われる理由とは? ネガティブな印象を持たれる背景 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローンです。契約者が亡くなった後に元金を一括返済する仕組みを採用しているため、一般的な住宅ローンとは異なる点が多く、「契約内容が複雑」「返済方法がわかりにくい」といった印象を持たれることがあります。 特に、「亡くなった後に家を失い、負債が残るのでは?」という懸念は、リ・バース60の仕組みを十分に理解していないことから生じる誤解です。実際には、ノンリコース型を選択すれば、自宅の売却代金で残債が完済されなかったとしても、相続人に追加の返済義務は発生しません。 よくある誤解とその発信源 リ・バース60に対する誤解は、以下のような情報源から広がる傾向があります。 SNSや口コミでの断片的な情報 本来の仕組みを無視した一部の情報が拡散され、「家を失う」「借金が残る」といった不安を煽る表現が、商品への誤解を生んでいます。 過去のリバースモーゲージ制度との混同 民間金融機関が提供するリバースモーゲージと、住宅金融支援機構の「リ・バース60」は制度設計が異なります。過去に報道された返済トラブルなどと混同されることで、商品全体に対する不安が広がることがあります。 相続に関する不安の拡大 「相続人が借金を背負うのでは?」という懸念は、リコース型とノンリコース型の違いを理解していないことに起因します。商品設計上、ノンリコース型を選択すれば、相続人に返済義務は生じません。 このような誤解は、リ・バース60の仕組みを正しく理解することで解消できます。次のセクションでは、リ・バース60の実際のリスクと安全性について詳しく解説します。 リ・バース60のリスクと仕組みの安全性 元金一括返済のタイミングと仕組み リ・バース60では、契約者が亡くなった後に元金の一括返済が行われます。返済方法は、相続人が自己資金で支払うか、自宅を売却して返済するかを選択できます。 この仕組みは、契約者の生存中は利息のみを支払うことで月々の負担を軽減し、亡くなった後に元金を精算するという設計になっています。 ノンリコース型の安心設計 リ・バース60には「ノンリコース型」と「リコース型」の2種類があり、契約時に選択します。ノンリコース型では、担保不動産の売却代金で借入残高を返済し、それでも残債がある場合は、相続人に追加の返済義務は発生しません。 つまり、売却代金が不足しても、相続人が債務を引き継ぐことはありません。この設計により、相続人の経済的な負担を避けたいと考える契約者にとって、安心して利用できる商品となっています。 担保不動産の扱いと相続人の責任 一方、リコース型を選択した場合は、担保不動産の売却代金で借入残高を返済しきれないと、相続人が不足分を返済する義務を負うことになります。 リコース型は、ノンリコース型よりも金利が低く設定される傾向がありますが、相続人にとってはリスクがあるため、契約前に家族と十分に話し合い、商品の内容を理解したうえで選択することが重要です。 リ・バース60が向いている人・向いていない人 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローンであり、資金使途が住宅関連に限定されている点や、契約者の死亡後に元金を一括返済する仕組みなど、一般的な住宅ローンとは異なる特徴があります。 ここでは、商品設計上、リ・バース60が向いている人と、注意が必要な人を整理します。 リ・バース60が向いている人 以下のような人は、商品の目的や仕組みに合致しており、利用を検討する価値があります。 年金生活者で持ち家がある人 リ・バース60は、自宅を担保に住宅関連資金を借り入れる制度であり、月々の支払いが利息のみで済むため、年金収入など限られた収入でも利用しやすい設計です。 また、持ち家があることは制度の利用条件の一つであり、担保評価額に応じて融資額が決まるため、資金調達の選択肢として検討しやすいと言えます。 住み替えやリフォームを検討している人 リ・バース60は、住宅購入・建設・リフォーム・借り換えなど、住宅関連の資金使途に限定された制度です。そのため、老朽化した住まいの改修や、ライフスタイルの変化に伴う住み替えを検討している高齢者にとって、目的に合った資金調達手段として活用しやすい設計になっています。 特に、自己資金の負担を抑えながら住宅環境を整えたい人にとって、有力な選択肢となり得ます。 相続人と事前に話し合いができている人 リ・バース60は、契約者の死亡後に元金を一括返済する仕組みであるため、相続人の理解と協力が不可欠です。ノンリコース型を選択すれば、売却代金で残債が返済しきれない場合でも、相続人に追加の返済義務は発生しません。 とはいえ、契約内容や返済方法について事前に家族と共有しておくことで、将来的なトラブルや誤解を防ぎ、安心して制度を利用することができます。 注意が必要なケース 以下のような人は、制度の仕組みと目的に照らして、慎重な検討が必要です。 不動産を相続したい人 リ・バース60では、契約者の死亡後に元金を一括返済する必要があるため、担保となる自宅を売却して返済するケースも想定されます。そのため、自宅を相続財産として残したいと考えている人にとっては、制度の利用が相続計画に影響を及ぼす場合があります。 相続人との合意形成を図りつつ、資産全体の構成を踏まえた上で、制度の利用可否を慎重に見極めることが重要です。 自宅の評価額が低い人 リ・バース60の融資限度額は、自宅の担保評価額に基づいて決定されます。評価額が低い場合、希望する資金が借りられないことがあるため、商品の利用が制限されることがあります。 特に、評価額が下がる可能性がある物件については、仮審査を通じて事前に金融機関の判断を確認しておくと安心です。 生活資金としての利用を考えている人 リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途は住宅関連に限定されています。生活費や医療費、日常的な支出などには利用できないため、これらの目的で資金調達を検討している人には適していません。 住宅購入やリフォーム、借り換えなど、融資の対象となる資金使途を十分に理解したうえで、目的に合った商品を選ぶ必要があります。 リ・バース60とほかの商品・サービスとの比較 リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する住宅ローンであり、民間金融機関が提供するリバースモーゲージや、不動産取引に該当するリースバックとは、仕組みや目的が異なります。 ここでは、それぞれの商品・サービスの違いを整理し、利用目的に応じた選択の参考になるよう比較します。 リバースモーゲージとの違い リバースモーゲージは、主に民間金融機関が提供する商品で、生活費や医療費など幅広い資金使途に対応しています。一方、リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途が住宅関連に限定されている点が大きな違いです。 リ・バース60とリバースモーゲージの比較表 項目 リ・バース60 リバースモーゲージ 資金用途 住宅購入・リフォーム・借り換えなど住宅関連 生活費・医療費・旅行など 提供元 住宅金融支援機構と提携する金融機関 民間金融機関 所有権 維持 毎月の支払い 利息 リースバックとの違い リースバックは、自宅を不動産会社などに売却し、その後も賃貸契約を結んで住み続けられるサービスです。資金調達の手段としては共通点がありますが、契約形態や所有権の扱いが大きく異なります。 リ・バース60とリースバックの比較表 項目 リ・バース60 リースバック 所有権 維持 売却により手放す 契約形態 金銭消費貸借契約 売買契約+賃貸契約 毎月の支払い 利息 家賃 リ・バース60を検討する前に知っておきたいこと リ・バース60は、一般的な住宅ローンとは異なる仕組みを持つ商品です。契約前に確認しておきたいポイントを、よくある質問形式で整理しました。商品の基本的な特徴や注意点を理解することで、安心して検討することができます。 Q. リ・バース60を利用すると、自宅を手放すことになりますか? A.いいえ。 リ・バース60では、自宅を担保に資金を借り入れますが、契約者の生存中は所有権を維持したまま住み続けることができます。亡くなった後に元金を一括返済する際、自宅を売却するかどうかは相続人の判断によります。 Q. 生活費や医療費など、住宅以外の目的に使えますか? A. 使えません。 リ・バース60は住宅ローンの一種であり、資金使途は住宅関連に限定されています。具体的には、住宅の購入・建設・リフォーム・借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などが対象です。 Q. 相続人に返済義務はありますか? A. 契約の種類によって異なります。 ノンリコース型を選択した場合、自宅の売却代金で借入残高を返済しきれなくても、相続人に追加の返済義務は発生しません。一方、リコース型では、売却代金で不足が生じた場合、相続人がその差額を返済する必要があります。 Q. 金利はどのように決まりますか? A. 金利は金融機関ごとに異なります。 固定金利型と変動金利型があり、選択するタイプによって返済額が変わります。また、ノンリコース型とリコース型でも金利設定に差があるため、契約前に金融機関の条件を比較することが大切です。 まとめ リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向けの住宅ローン制度であり、住宅関連資金に特化した設計となっています。「やばい」「怖い」といった印象は、制度の仕組みや契約内容に対する誤解から生じることが多く、正しく理解することで不安は解消できます。 この記事では、制度に対する誤解の背景、実際のリスクと安全性、他制度との違い、そして契約前に確認すべきポイントを整理しました。特に、ノンリコース型を選択することで相続人の返済義務が発生しない仕組みや、資金使途が住宅関連に限定されている点など、制度の特徴を理解することが重要です。 リ・バース60は、住まいに関する課題を抱える高齢者にとって、有効な選択肢となり得ます。検討にあたっては、金融機関ごとの条件を比較し、家族と十分に話し合ったうえで、専門家への相談を活用することをおすすめします。
リ・バース60は、住宅金融支援機構によって提供されている、シニア世代の住まいと資金計画を支える住宅ローン制度です。「年齢を重ねても、安心して住み続けたい」といったニーズに応える一方で、利用には一定の条件や審査が伴います。 この記事では、リ・バース60の利用条件と審査のポイントについて、制度の仕組みや必要書類、審査の流れまでをわかりやすく解説します。制度の検討段階にある人や、将来的な選択肢として情報収集をされている人にとって、判断材料となる内容を網羅しています。 なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! リ・バース60の利用条件 リ・バース60を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、主に「年齢」「不動産」「資金使途」の3つの観点から、制度の利用要件を整理します。 リ・バース60の年齢要件 原則として、リ・バース60の申込者は満60歳以上であることが求められます。これは、制度が高齢者の住まいの安定と資金確保を目的としているためです。 満50歳以上満60歳未満の人でも利用は可能ですが、融資の限度額が担保評価額の30%となるため、注意が必要です。商品性や審査基準、年齢の取り扱いなどは金融機関によって異なるため、事前に各社の公式情報や相談窓口で確認することが重要です。 リ・バース60の融資対象住宅 リ・バース60の対象となる不動産は、以下のような条件を満たす必要があります。 新耐震基準相当の耐震性を有すること※ 融資対象住宅が法令を遵守した建築物であること ※資金使途が入居一時金または子世帯等が居住する住宅取得資金の場合を除く そのほか、借地や市街化調整区域の不動産などは取扱金融機関によって異なります。詳しくは金融機関にご確認ください。 リ・バース60の資金使途と注意点 リ・バース60は、資金使途が明確に定められている制度です。主な利用目的は以下のとおりです。 本人が居住する住宅の建設資金または購入資金※ 住宅のリフォーム資金※ サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金 住宅ローンの借換資金※ 子世帯などが居住する住宅の取得資金を借り入れるための資金 ※セカンドハウスも対象 生活費や医療費など、住宅に直接関係しない目的での利用は原則として認められていません。そのため、申込時には資金使途を明確にし、リフォームの場合は工事見積書、借り換えの場合は既存の住宅ローンの残高証明などの資料を提出する必要があります。 リ・バース60の審査の流れと必要書類 リ・バース60を利用するには、金融機関による審査を受ける必要があります。ここでは、審査のステップ、提出書類、審査期間の目安と注意点について解説します。 リ・バース60の審査のステップ リ・バース60の審査は、一般的な住宅ローンと同様に、以下のようなステップで進行します。 1. 事前相談・仮審査申込 金融機関や提携不動産会社などで制度の説明を受け、仮審査を申し込みます。ここでは、年齢や不動産の条件、資金使途などの基本的な要件が確認されます。 2. 仮審査(事前審査) 提出された情報をもとに、融資の可否見込みや概算の融資額が判断されます。仮審査の結果は、金融機関によって異なりますが、通常1〜2週間程度で通知されます。 3. 本審査申込・書類提出 仮審査通過後、正式な申込を行い、必要書類を提出します。ここでは、収入状況や不動産の担保評価など、より詳細な審査が行われます。 4. 本審査・契約手続き 本審査に通過すると、契約書の締結などの手続きに進みます。 リ・バース60で必要な書類一覧 審査にあたっては、金融機関によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下のような書類の提出が求められます。 本人確認書類(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど) 収入証明書類(年金証書、源泉徴収票、確定申告書など) 不動産関連資料(登記簿謄本、建物図面、固定資産税納税通知書など) 資金使途に関する資料(リフォームの場合は工事見積書、借り換えの場合は既存の住宅ローンの残高証明など) 書類の不備や不足があると、審査が遅れる場合があるため、事前にチェックリストを活用して準備することが推奨されます。 リ・バース60の審査期間の目安と注意点 審査期間は金融機関や申込内容によって異なりますが、仮審査に1〜2週間程度、本審査に2〜3週間程度はかかると考えておくとよいでしょう。 ただし、提出書類の内容や不動産の評価状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。特に、共有名義や築年数が古い物件の場合は、追加資料の提出を求められることがあります。 また、審査中に金融機関から追加の質問や資料提出依頼があることもあるため、連絡が取りやすい状態を保っておくことが重要です。 リ・バース60の団体信用生命保険(団信)の加入要否 リ・バース60では、一般的な住宅ローンとは異なり、団体信用生命保険(以下、団信)の取り扱いに特徴があります。ここでは、団信の基本的な仕組みと、リ・バース60における加入要否について解説します。 一般的な住宅ローンとリ・バース60における団信の違い 一般的な住宅ローンでは、債務者が死亡した場合に残債が保険で完済されるよう、団信への加入が義務付けられているケースが多くあります。これは、金融機関にとって貸し倒れリスクを軽減するための仕組みです。 一方、リ・バース60では、団信の付帯が制度上認められていないため、加入することができません。 団信加入ができない理由とその背景 リ・バース60では団体信用生命保険(団信)に加入することができません。その背景には、制度の設計上の特徴が関係しています。 まず、リ・バース60の返済方法は「元金据置・利息のみ支払い」型です。債務者が生存している間は利息のみを支払い、死亡後は相続人が元金を返済します。返済方法が「現金での一括返済」ではない場合には、「担保不動産を売却して返済」することで元金が精算されます。この仕組みにより、団信による残債保証の必要性がそもそもないのです。 さらに、住宅金融支援機構が債務回収を担保している点も重要です。制度設計では、不動産の担保価値を重視しており、債務者が亡くなった際には、債務が回収される仕組みとなっています。 このように、団信に加入できない代わりに、制度全体が不動産の担保価値を前提に設計されており、債務者の死亡後も残債が不動産価値を超えないよう配慮されています。 リ・バース60の保証人と担保の取り扱い リ・バース60では、一般的な住宅ローンとは異なる担保評価や保証人の取り扱いが特徴です。ここでは、利用にあたっての保証人の要否、担保評価の基準、共有名義不動産の扱いについて解説します。 保証人が必要なケース リ・バース60の保証人の可否は、金利タイプによって異なります。住宅金融支援機構によると、固定金利の場合、保証人は不要としています。一方で、変動金利の場合は、金融機関ごとに異なるとしています。 主に以下のようなケースでは、金融機関の判断により保証人が求められる場合があります。 不動産の担保評価が低い場合 不動産の所有権が共有名義である場合 債務者の収入状況や信用情報に不安がある場合 保証人の要否は金融機関ごとに異なるため、事前に相談、確認することが重要です。 出典)住宅金融支援機構「Q保証人は必要ですか Q&A番号:7」 担保評価の基準と融資限度額 リ・バース60では、融資額の上限は担保となる不動産の評価額によって決定されます。評価基準は以下のような要素を含みます。 物件の築年数・構造・耐震性 立地条件(駅からの距離、周辺環境など) 市場価格や路線価などの客観的指標 融資限度額は、不動産評価額の50〜60%程度に設定されることが一般的です。ただし、評価方法や上限率は金融機関によって異なるため、複数社で比較検討することが推奨されます。 担保不動産の共有名義の時の取り扱い 担保不動産が共有名義である場合、リ・バース60利用には共有者全員の同意が必要です。特に、配偶者との共有名義の場合は、以下の点に注意が必要です。 配偶者が制度の内容を理解し、同意を得られるか 死亡後の居住を継続するかどうか リ・バース60の利用後も配偶者が安心して住み続けられるよう、事前に家族間での話し合いや金融機関との相談を行うことが望ましいです。 リ・バース60の審査に通りやすい人・通りにくい人 リ・バース60の審査では、年齢や収入だけでなく、不動産の担保価値や資金使途など、複数の要素から総合的に判断されます。ここでは、審査に通りやすい人・通りにくい人の傾向と、よくある審査落ちの理由、対策について解説します。 公的年金のみでも融資可能 リ・バース60は、シニア世代の利用を前提とした制度であるため、公的年金のみの収入でも審査に通る可能性があります。ただし、年金額が極端に少ない場合や、生活費とのバランスなどが取れていないと判断された場合は、審査に影響することがあります。 審査では、以下のような点が確認されます。 年金受給額と生活費のバランス 他の借入状況(消費者金融・カードローンなど) 支払能力の継続性(年金の安定性) 年金以外にも収入がある場合(不動産収入、企業年金など)は、合算することができます。 持ち家の評価額が重要 リ・バース60の融資額は、担保となる不動産の評価額によって大きく左右されます。そのため、不動産の価値が高いほど、審査に通りやすく、希望額に近い融資が受けられる可能性が高まります。持ち家は、以下のような点で評価されます。 立地(駅近・商業施設へのアクセスなど) 築年数・構造・耐震性(築浅・耐久性の高さ・新耐震基準に適合しているなど) 逆に、築年数が古く、郊外の物件など、評価額が低い不動産の場合は、融資額が希望に届かず、審査に通らないケースもあります。 よくある審査落ちの理由と対策 リ・バース60の審査で否決される主な理由には、以下のようなものがあります。 不動産の担保評価が低い(老朽化、立地条件など) 収入が極端に少ない、または不安定である 他の借り入れが多く、返済能力に懸念がある 共有名義人の同意が得られていない 信用情報に延滞履歴や債務整理の記録がある これらの審査落ちの理由に対して、以下のような対策をとるといいでしょう。 事前に不動産の簡易査定を受ける 年金以外の収入がある場合は公的書類を準備する 信用情報を開示し、問題がないか確認する(CIC・JICCなど) 既存の借り入れを整理する 配偶者や共有者と事前に制度内容を共有し、同意を得る 審査に不安がある場合は、金融機関の無料相談窓口を活用することで、事前にリスクを把握し、対策を講じることが可能です。 まとめ リ・バース60は、シニア世代が安心して住み続けるための住まいと資金計画を支える制度です。利用には年齢や不動産の条件、資金使途などの要件を満たす必要があり、審査では収入や担保評価、信用情報などが総合的に判断されます。 また、団信の加入は制度上利用できないものの、商品設計の段階で、債務者の死亡後も残債が過大に残らないよう配慮されています。ただし、共有名義の際には、取り扱いにも注意が必要で、共有者との事前の話し合いや同意の取得が重要です。 審査に通るためには、不動産の評価額や収入状況、既存借り入れの確認など、事前準備が鍵となります。詳しくは、各金融機関の公式サイトや住宅金融支援機構のホームページをご確認ください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リ・バース60のよくある質問 リ・バース60は、満60歳以上の方向けの住宅ローンです。一般的な住宅ローンは、安定収入が必要で年齢制限もあるため、高齢になると借りるのが難しくなります。一方で、リ・バース60であれば、住宅ロ...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。日銀は9月19日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%に据え置くことを決めました。米国の関税強化策の影響が今後、日本経済に及ぼす可能性を慎重に見極めていく構えです。これを受けて、10月の【フラット35】金利はどう動くのでしょうか。 この記事では、新発10年国債と機構債の金利推移、2つの予測シナリオやその根拠などをわかりやすく解説します。 2025年10月の【フラット35】金利は 1.89% に決定しました(更新日:2025年10月1日)。 【フラット35】10月金利予想 日銀の金融政策決定会合に先立って行われた米国FOMCでは、0.25%の利下げが決定されました。声明では雇用の下振れリスクが高まったためとしています。市場はこれを好感し株価は急上昇していますが、執筆時点の新発10年国債利回りには大きな影響は出ていません。 新発10年国債利回りは、住宅ローンの固定タイプの金利に影響を与え、住宅金融支援機構が【フラット35】の資金調達方法としている機構債の表面利率にも影響してきます。 では早速、これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移と10月の【フラット35】の金利予想です。 9月の金利予想と実態 9月の金利予想では、機構債の表面利率と新発10年国債利回りがともに0.06ポイント上昇したため、【フラット35】の上昇は抑えられて、1.87~1.93%になると予想しました。結果【フラット35】の金利は、1.89%と予想の中央あたりの水準に落ち着きました。 10月の新発10年国債利回りは横ばいであるのに対し、ローンチスプレッドの拡大によって機構債の表面利率が0.04ポイント上昇しています。前月同様に10月の【フラット35】の金利上昇は抑えられることを見込んで、1.89%~1.93%と予想します。 主要データ(2025年9月19日時点) 機構債発表日 2025年6月20日 2025年7月18日 2025年8月21日 2025年9月19日 機構債の表面利率(※1) 1.88% 2.02% 2.08% 2.12% 新発10年国債利回り(※2) 1.43% 1.55% 1.61% 1.61% ローンチスプレッド(※1) 45bps(0.45%) 47bps(0.47%) 47bps(0.47%) 51bps(0.51%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 新発10年国債利回りは便宜上、機構債の表面利率からローンチスプレッドを差し引いた数値としています。 7月 8月 9月 10月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※3) 1.84% 1.87% 1.89% 1.89%~1.93%※10/1発表の金利は1.89%でした ※3 出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 なお、この予測ロジックは以下のとおりです。詳細は後述します。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 新発10年国債利回りと機構債の金利推移 9月の新発10年国債利回りは、8月と同じ1.61%で横ばいとなりました。これに対して、機構債の表面利率は、ローンチスプレッドが拡大したため、2.08%から2.12%へ0.04ポイント上昇しました。 ローンチスプレッドとは? 新発10年国債利回りと機構債の表面利率の差は、“ローンチスプレッド”といわれます。このローンチスプレッドは、拡大傾向にありました。これは、住宅ローンを借りるわたしたちにとって、新発10年国債利回りが上昇した際に、住宅ローン金利の上昇がより大きくなってしまうことを意味します。 2025年6月から9月までのローンチスプレッドの動き 2025年6月:0.45%(前月より+0.05ポイント) 2025年7月:0.47%(前月より+0.02ポイント) 2025年8月:0.47%(前月と横ばい) 2025年9月:0.51%(前月より+0.04ポイント) 6月から7月にかけては、0.02ポイント幅で拡大しましたが、8月は横ばいで上昇が止まり、9月には再び0.04ポイント拡大しています。これは、投資家の長期の金利に対する先高観が強まっていることを意味します。 機構債と【フラット35】の金利推移 機構債の表面利率は、2.08%から2.12%へ0.04ポイント上昇しました。これに対して、千日太郎の【フラット35】金利予想は、1.89%から1.93%とし、横ばいから0.04ポイントの上昇に抑えられるというものです。 なぜ金利が抑えられるのか? この予想は、過去4か月にわたって【フラット35】が機構債の表面利率を下回っていることにあります。これは、住宅金融支援機構は収益性を問わず、低金利を続けていることを意味します。 【フラット35】(買取型)の仕組みをおさらい 【フラット35】(買取型)は、住宅金融支援機構が機関投資家に「機構債」という債券を販売して資金を集め、その資金で住宅ローンを提供する仕組みです(詳細は後述)。簡単に言えば、機構債の表面利率は「仕入れ値」、【フラット35】の金利は「販売価格」にあたります。 2025年6月から9月まで異例のマイナス収支が続く 6月:機構債1.94% vs【フラット35】金利1.89%→0.05ポイント 7月:機構債1.88% vs【フラット35】金利1.84%→0.04ポイント 8月:機構債2.02% vs【フラット35】金利1.87%→0.15ポイント 9月:機構債2.08% vs【フラット35】金利1.89%→0.19ポイント(過去最大) 上記は直近4か月の動きですが、6月(機構債発表日5月22日)の機構債の表面利率は、【フラット35】の金利に対して、0.05%マイナスです。これは、住宅金融支援機構が1.94%で資金を仕入れて、1.89%の金利の住宅ローンとしてわたしたちに提供していることを意味します。 続いて、7月は0.04ポイントの差でしたが、8月は0.15ポイントまでマイナス幅が一気に拡大し、さらに9月は過去最大の0.19ポイントまでマイナス幅が拡大しました。つまり、4か月連続で異例のマイナス収支が続いているだけでなく、その幅も拡大傾向にあるのです。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えるか?2つの予想シナリオ 千日太郎の予想では、10月も収支がマイナスの状態が続くと見ています。そのため、金利の予想レンジを1.89%~1.93%とし、以下2つのシナリオを想定しています。 シナリオ①:1.89%「激変緩和」 9月は新発10年国債利回りが上昇していないにもかかわらず、機構債の表面利率が上昇しています。その上昇をあえて住宅ローンの金利に反映させないというシナリオです。 シナリオ②:1.93%「マイナス幅の限度」 8月の機構債の表面利率と9月の【フラット35】の金利差は、前述のとおり0.19ポイントでした。9月の機構債の表面利率が2.12%なので、仮にマイナス幅を0.19ポイントとすると10月の【フラット35】の金利は1.93%になるというシナリオです。 【フラット35】の金利が抑えられるのはいつまで? 【フラット35】の金利抑制は、日銀がマイナス金利政策を解除した2024年3月以降も続いていました。しかし、機構債の利率を下回る水準をつけたのは、2025年6月が初めてです。 この背景には、住宅金融支援機構は非営利の独立行政法人であり、国の政策的役割を担っているという特性があります。しかし、営利を目的としていない住宅金融支援機構といえども、このような状態を永続的に続けられるものではありません。 将来的には、金利ある世界への過渡期に限定した、ある種のボーナス期だったと振り返ることになるかもしれませんね。 【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み 住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。 出典)フラット35「Qフラット35のしくみを教えてください。」 この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入するので、その表面利率は新発10年国債利回りに連動する傾向があります。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する高齢者向け住宅ローン制度で、民間金融機関を通じて利用できます。資金使途は、住宅購入やリフォーム、借り換えなど、住宅関連に限定されており、生活費や医療費などには利用できません。 満60歳以上の人を対象に、自宅を担保に住宅関連資金を借り入れることができ、毎月の返済は利子のみ、一括返済する元金は契約者の死亡後に「担保不動産を売却して返済する」か「現金で返済する」かを選択できます。 この記事では、リ・バース60の金利タイプ、利子の仕組み、手数料の種類について、制度の正確な理解をもとに解説します。なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。 関連記事はこちら高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」を徹底解説! 金利タイプの基本 金利タイプの選択は、月々の利子額や将来的な返済総額に影響します。特に変動金利型を選ぶ場合は、金利上昇による負担増の可能性があるため、慎重な検討が必要です。 固定金利と変動金利の違い 固定金利型 契約時に決定した金利が契約期間中変わらないタイプ。将来の金利上昇リスクを避けたい方に向いています。 変動金利型 市場金利の動向に応じて金利が変動するタイプ。金利が低い時期には有利ですが、将来的な上昇リスクがあります。 ノンリコース型・リコース型による金利差 リ・バース60には 「ノンリコース型」と「リコース型」があり、契約時に選択します。一般的に、ノンリコース型は金利が高め、リコース型は金利が低めに設定される傾向があります。 ノンリコース型 相続人に残債務の返済義務が生じない代わりに、金利はやや高め。 リコース型 相続人が残債務を返済する義務を負う可能性があるが、金利は低め。 契約前に、金利タイプと返済責任の関係を理解しておくことが重要です。 利子の仕組みと支払いタイミング リ・バース60は、契約者の生存中は利子のみを毎月支払う仕組みです。元金は契約者の死亡後に一括返済されるため、月々の負担を抑えることができます。利子は元金に対して設定された利率に基づいて毎月支払います。 契約期間中に元金は減らないため、長期利用の場合は利子の累積額が大きくなる場合があります。返済総額の見通しを立てる際には、契約期間と金利水準の両方を考慮することが重要です。 固定金利型の場合は契約時の利率が維持され、変動金利型の場合は市場金利の動向に応じて利率が変動する可能性があります。なお、元金は契約終了時まで据え置かれるため、金利が変動しない限り、利子の支払額は基本的に一定です。 関連記事はこちら住宅ローンの返済額を計算する方法とは?金利と利子の違いを解説 リ・バース60の手数料の種類と発生タイミング リ・バース60の利用には、金利以外にも複数の手数料がかかります。これらは一般的に契約時や契約終了時の各タイミングで発生し、金融機関によって金額や項目が異なります。 特に、保証料や維持費用の有無は商品設計によって異なるため、契約前に詳細を確認することが重要です。売却による返済を選択する場合は、不動産仲介手数料や登記費用などの諸経費も考慮する必要があります。 リ・バース60における手数料の分類 手数料の種類 内容例 発生タイミング 備考 契約時費用 事務手数料、登記費用、保証料など 契約時 保証料は金融機関によって不要な場合も 契約終了時費用 繰上返済手数料、不動産仲介手数料、登記費用など 契約終了時 返済方法や契約形態により変動。譲渡所得税が発生する場合も リ・バース60とリースバックの違いと比較の視点 リ・バース60とリースバックは、いずれも高齢者が自宅を活用して資金を得る手段ですが、制度の目的や仕組みは大きく異なります。 資金使途の違い リ・バース60はあくまで住宅ローンであり、資金使途は住宅関連に限定されています。具体的には、住宅購入やリフォーム、借り換え、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などが対象です。一方、リースバックは売却によって得た資金を自由に使えるため、生活費や医療費、旅行などにも充てることが可能です。 所有権の違い リ・バース60では、契約者が自宅の所有権を維持したまま資金を借りることができます。契約者の生存中は住み続けることができ、亡くなった後に元金を一括返済する仕組みです。 一方、リースバックでは、所有権を不動産会社などに譲渡し、賃貸借契約を結ぶことで住み続ける形になります。将来的に退去が必要になることもあるため、長期的な住まいの安定性を重視する場合は注意が必要です。 相続人への影響 リ・バース60では、契約形態によって相続人の責任が異なります。まず、相続人は、契約者の死亡後に元金を「担保不動産の売却代金で返済する」か「現金で一括返済する」かの方法で返済する必要があり、前者の場合は自宅を残すことはできませんが、後者の場合には自宅を残すことができます。 また、「担保不動産の売却代金で返済する」場合には、契約時にノンリコース型を選択すれば、担保不動産の売却代金で元金が返済しきれなくても、相続人に追加の返済義務は発生しません。リコース型では、残債がある場合、相続人がその債務を返済する必要があります。 一方、リースバックは売却によって所有権が移転するため、相続財産として自宅を残すことはできません。ただし、その不動産に住み続ける権利である賃借権は相続の対象となります。 リ・バース60とリースバックの比較 比較項目 リ・バース60 リースバック 資金使途 住宅関連に限定(購入・リフォーム・借り換えなど) 自由(生活費・医療費・旅行など) 所有権 維持(契約者が所有者のまま) 売却により譲渡(第三者が所有) 毎月の支払い 利子 家賃 関連記事はこちらリースバック・リバースモーゲージ・リ・バース60の違いを徹底比較 よくある疑問(FAQ) Q. リ・バース60の金利はどのように決まりますか? A. 金利は契約時に選択する「固定型」または「変動型」によって異なります。固定型は契約時の利率が維持され、変動型は市場金利の動向に応じて変動します。また、「ノンリコース型」と「リコース型」の選択によっても金利水準が異なり、一般的にノンリコース型の方が金利は高めに設定されます。 Q. 毎月の支払い額は変動しますか? A. 固定金利型を選択した場合、毎月の利子額は基本的に一定です。変動金利型の場合は、市場金利の変動に応じて利子額が変動する可能性があります。ただし、元金は契約者の死亡時に一括返済されるため、契約期間中の支払いは利子のみです。 Q. 利子の計算方式は複利ですか? A. いいえ。リ・バース60はローン商品であり、利子が利子を生む「複利」のような仕組みではありません。利子は元金に対して一定の利率で算出され、契約期間中に支払われます。投資商品とは異なり、利子の累積による増加はありません。 Q. 手数料にはどんな種類がありますか? A. リ・バース60では、契約時に発生する初期費用(事務手数料、登記費用、保証料など)、契約終了時の費用(繰上返済手数料、売却時の諸費用など)などがあります。金融機関によって金額や項目が異なるため、事前に確認することが重要です。 Q. 手数料は借入額に含まれますか? A. 一部の手数料は借入額に含めることが可能な場合もありますが、基本的には契約時に別途支払う必要があります。詳細は金融機関ごとの商品設計によって異なります。 まとめ リ・バース60は、満60歳以上の方を対象に、自宅を担保に住宅関連資金を借り入れられる住宅ローン制度です。毎月の返済は利子のみで、元金は契約者の死亡後に一括返済されるため、年金生活でも利用しやすい設計となっています。 制度を理解するうえで重要なのは、金利の種類、利子の支払い方法、そして手数料の内訳です。金利は固定型と変動型があり、契約形態(ノンリコース型・リコース型)によっても水準が異なります。 利子は複利ではなく、元金に対して一定の利率で算出され、契約期間中に支払います。手数料は一般的に契約時・ 契約終了時にそれぞれ発生し、金融機関によって内容が異なるため、事前の確認が欠かせません。 これらの費用面を正しく理解することで、制度のメリットと注意点を把握し、自分に合った選択ができるようになります。検討の際は、家族との話し合いや専門家への相談も活用しながら、安心して制度を活用できるよう準備を進めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リ・バース60は住宅ローン控除等の優遇制度を受けられる? リ・バース60は、満60歳以上の方でも借り入れができる高齢者向けの住宅ローンです。毎月の返済は利息のみであるため、月々の返済負担が小さいのがメリットです。元本は、債務者が亡くなったときに担保...
住宅ローンの名義変更は、離婚や相続、収入の変化など、人生の転機に直面したときに検討される重要な手続きです。名義変更は単なる書類の差し替えではなく、金融機関の審査や税務上の影響も伴うため、慎重な対応が求められます。 この記事では、名義変更の基本的な考え方から、ケース別の対応方法や代替手段、注意点までをわかりやすく解説します。 住宅ローンの名義変更が原則NGな理由とその例外 住宅ローンは、契約者の信用情報や返済能力をもとに金融機関が融資を行う仕組みです。そのため、名義変更(契約者の変更)は原則として認められていません。名義変更によって審査の前提が崩れるため、金融機関は慎重な姿勢を取ります。 ただし、以下のようなやむを得ない事情がある場合には、例外的に名義変更が認められることもあります。 離婚によって住宅の所有者や居住者が変わるケース 相続によって住宅の所有権が移転するケース 収入減少により返済が困難となり、家族に引き継ぐケース これらの例外について、具体的なケースごとの対応方法を詳しく見ていきましょう。 ケース別|住宅ローンの名義変更対応方法と注意点 住宅ローンの名義変更が必要になる状況は、人生のさまざまな転機に伴って発生します。ここでは、代表的な3つのケースについて、それぞれの対応方法と注意点を詳しく解説します。 離婚時の住宅ローンの名義変更 離婚により夫婦の生活が分かれると、住宅の所有者や居住者が変わることがあります。特に、ペアローンを利用していた場合は、どちらが住宅を引き継ぐか、ローンの返済をどうするかが大きな課題となります。 たとえば、夫名義の住宅に妻が住み続ける場合、妻が住宅を買い取る形で、夫から妻への名義変更を行い、新たに住宅ローンを契約する必要があります。この際、金融機関による審査が行われ、収入や信用情報、物件の担保評価などが確認されます。 また、離婚協議書や財産分与の内容が審査に影響することもあるため、事前に専門家へ相談し、必要書類を整えておくことが重要です。 関連記事はこちらペアローンは離婚したらどうなる?よくある問題と対処法を紹介 相続時の住宅ローンの名義変更 住宅ローンの契約者が亡くなった場合、相続人が住宅ローンを引き継ぐことになります。このとき、団体信用生命保険(団信)の加入状況によって対応が大きく異なります。 団信に加入している場合 保険金によって住宅ローンが完済されるため、相続人に返済義務は発生しません。 団信に未加入の場合 残債は相続人が引き継ぐ必要があり、住宅ローンの継続か売却かを判断する必要があります。 住宅ローンを引き継ぐ場合には、金融機関の審査が必要となり、相続人の収入や信用情報、物件の担保評価などが確認されます。また、遺産分割協議書などの提出も求められるため、相続発生後は早めに対応を始めることが望ましいです。 関連記事はこちら住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説 収入減少時の住宅ローンの名義変更 病気や退職などにより収入が減少し、住宅ローンの返済が困難になるケースでは、家族への名義変更を検討することがあります。たとえば、親の収入が減った場合に、子が住宅ローンを引き継ぐ形で名義変更を行うケースです。 この場合、子が新たに住宅ローンを契約し、既存のローンを一括返済する「借り換え」が一般的な方法となります。借り換えには金融機関の審査があり、収入や信用情報、物件の担保評価などが確認されます。 また、借り換えによって名義変更が実現する場合でも、贈与税や登記費用などの負担が発生することがあるため、税理士や司法書士への相談をおすすめします。 関連記事はこちら住宅ローンの借り換えで忘れてはいけない注意点 住宅ローンの名義変更手続きと必要書類 住宅ローンの名義変更を進めるには、金融機関との調整や必要書類の準備、スケジュール管理が欠かせません。ここでは、手続きの流れと注意点を3つのステップに分けて解説します。 金融機関への事前相談 名義変更は、金融機関の承諾がなければ進めることができません。まずは、現在のローンを契約している金融機関に相談し、名義変更が可能かどうかを確認しましょう。金融機関によっては、名義変更そのものを認めていない場合もあります。その場合は、「借り換え」や「親子間売買」などの代替手段を提案されることもあります。 相談時には、以下のような情報を整理しておくとスムーズです。 名義変更の理由(離婚、相続、収入減少など) 新たに名義人となる予定の方の収入状況や勤務先 住宅の担保評価や残債額 また、手続きにかかる期間や必要書類、審査の流れについても事前に確認しておくと、後の準備がしやすくなります。 必要書類とスケジュール管理 名義変更には、状況に応じてさまざまな書類が必要になります。以下は主な例です。 【主な必要書類】 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) 収入証明書(源泉徴収票、給与明細、課税証明書など) 登記事項証明書(不動産の登記内容を確認する書類) 離婚協議書または遺産分割協議書(該当する場合) 住宅ローンの契約書や返済予定表 これらの書類は、提出時期や有効期限が決まっていることもあるため、スケジュール管理が非常に重要です。特に、相続や離婚などで複数の関係者が関わる場合は、書類の取り寄せや署名・押印に時間がかかることもあります。 余裕を持ったスケジュールを立て、必要に応じてチェックリストを作成しておくと安心です。 専門家への相談 名義変更には、税務や登記などの専門的な知識が求められる場面もあります。以下のような専門家に相談することで、手続きをより確実に、スムーズに進めることができます。 税理士 名義変更が贈与とみなされる場合の贈与税のリスクや、節税対策についてアドバイスを受けられます。 司法書士 不動産の登記変更手続きや、必要書類の確認・作成を代行してもらえます。 ファイナンシャルプランナー(FP) 家計全体の見直しや、ローン返済計画の再設計をサポートしてくれます。 専門家の力を借りることで、手続きの正確性と安心感が大きく高まります。特に初めて名義変更を行う方や、複雑な事情がある場合は、早めの相談をおすすめします。 住宅ローンの名義変更が難しい場合の代替手段 住宅ローンの名義変更は、金融機関の審査や契約条件によっては認められないケースもあります。そんなときは、名義変更に代わる方法を検討することで、実質的に同様の効果を得られる可能性があります。 ここでは、代替手段として「親子間売買」と「リースバック」の概要をご紹介します。 親子間売買の活用 親子間売買とは、親と子の間で不動産売買契約を結び、子が住宅を購入することで名義を変更する方法です。名義変更が難しい場合でも、所有権の移転を通じて実質的な名義変更が可能になります。 ただし、税務や住宅ローン審査の面で注意が必要です。詳しくは以下の記事で、メリット・デメリットや手続きの流れを解説しています。 関連記事はこちら不動産の親子間売買は難しい?デメリットと手続きについて解説 リースバックの活用 リースバックは、住宅を売却した後も同じ家に住み続けられる仕組みです。住宅ローンの返済が難しい場合や、名義整理をしたい場合に柔軟な選択肢となります。 契約内容や買い戻しの条件など、事前に確認すべきポイントがあります。詳しくは以下の記事で、仕組みやメリット・注意点を解説しています。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 住宅ローンの名義変更に関するよくある質問(FAQ) ここでは、住宅ローンの名義変更に関するよくある質問をまとめ、わかりやすくお答えします。本文では触れきれなかった細かなポイントも補足していますので、ぜひ参考にしてください。 Q. 名義変更をすると住宅ローンの金利は変わりますか? A. 名義変更そのものでは金利が変わることはありませんが、借り換えを伴う場合は新たな契約条件となるため、金利が変動する可能性があります。借り換え先の金融機関や契約内容によっては、金利が上がることも下がることもあるため、事前に比較検討が必要です。 Q. 名義変更後に住宅ローン控除は引き継げますか? A. 原則として、住宅ローン控除は契約者本人に適用されるため、名義変更後に新たな契約者が控除を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。たとえば、居住要件や所得要件、登記名義との一致などが求められます。税務署や税理士に確認することをおすすめします。 Q. 名義変更後、団信はどうなりますか? A. 名義変更により住宅ローン契約が新しくなる場合、団信も新たに契約し直す必要があります。既存の団信は前契約者に紐づいているため、引き継ぎはできません。新契約者の健康状態によっては、団信に加入できないケースもあるため、事前の確認が重要です。 Q. 名義変更をせずに住宅を共有名義にすることはできますか? A. 可能ですが、住宅ローン契約との整合性が必要です。共有名義にする場合は、登記上の持分割合やローンの返済責任が明確である必要があります。金融機関によっては、共有名義に対してペアローンや連帯債務型の契約を求めることもあります。 まとめ 住宅ローンの名義変更は、離婚や相続、収入減少といった人生の節目に直面したときに検討される重要な手続きです。原則として金融機関の承諾が必要であり、審査や税務面での確認も伴うため、安易に進めることはできません。 しかし、状況に応じて名義変更が認められるケースもあり、借り換えや親子間売買、リースバックなどの代替手段を活用することで、実質的な名義変更が可能になる場合もあります。 手続きを進める際は、金融機関への事前相談や必要書類の準備を丁寧に行い、税理士・司法書士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家の力を借りることで、安心して対応することができます。 名義変更は、住まいや家族の将来に関わる大切な選択です。焦らず、正しい情報と適切なサポートをもとに、最善の方法を見つけていきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 財産分与とは?対象となる財産や算定方法、注意点を解説 もし離婚をすることになった場合、財産分与をすることになるでしょう。円満に離婚を進めるためにも、財産分与の制度内容を知っておくことが大切です。 この記事では、財産分与の概要や対象となる財産、注...
住宅ローンを検討する際、「がん団信」に加入すべきか、また、加入するなら50%保障と100%保障のどちらを選ぶべきか迷う人は多いのではないでしょうか。がん団信は、がんと診断された場合に住宅ローンの返済負担を軽減できる保険であり、保障内容によって費用負担や保障範囲に差があるため、選び方が重要です。 この記事では、がん団信の基本的な仕組みから、50%・100%それぞれの保障内容、費用の違い、返済シミュレーションまで詳しく解説し、ライフスタイルやリスクへの備え方に応じた保障を選ぶためのヒントをお届けします。 がん団信とは そもそも団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になったときに、住宅ローンが完済される保険です。 その中でも「がん団信」は、がんに特化した保障を受けられる団信で、がんと診断され所定の条件を満たした場合に、住宅ローン残高の一部または全額が保障されます。金融機関によっては、がん診断給付金や入院一時給付金などが支払われる場合もあります。 関連記事はこちら住宅ローンの団体信用生命保険とは?保障内容や特約を解説 がん団信の種類 がん団信は主に50%保障と100%保障の2種類があり、それぞれ保障内容や費用負担が異なります。以下で詳しくみていきましょう。 がん50%保障団信 がん50%保障団信は、がんと診断され所定の条件を満たした場合に、住宅ローン残高の50%が保障されるプランです。保険料の上乗せ分が少なく、費用を抑えながら一定の保障を得たい人に適しています。金融機関によっては、金利の上乗せなしで提供される場合もあります。 がん100%保障団信 がん100%保障団信は、がんと診断され所定の条件を満たした場合に、住宅ローン残高の全額が保障されるプランです。住宅ローンの返済が不要になるため、治療費や生活費の不安を大きく軽減できるのが特徴です。 その分、保険料は高めに設定されており、一般的には金利が0.1~0.2%程度上乗せされます。毎月の返済額や総返済額がどれくらい増えるかを確認したうえで、加入を検討することが重要です。 がん団信とがん保険の違い がん団信とがん保険は、目的や保障範囲が異なります。両者の違いを整理すると、以下のようになります。 がん団信 住宅ローンの返済負担を軽減するための保険。がんと診断された際に、ローン残高の一部または全額が保障されます。 がん保険 医療費や収入減少への備えを目的とした保険。診断一時金、手術給付金、入院給付金などが支払われます。 がん団信は住宅ローン返済に特化した保障であるため、医療費や生活への備えを重視する場合は、がん保険との併用も検討すると安心です。 がん団信の必要性 厚生労働省の調査によると、日本人の死因1位はがん(悪性新生物)で、全体の24.3%を占めています。また、国立がん研究センターの統計では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性63.3%、女性50.8%とされており、2人に1人ががんになる恐れがあることがわかります。 さらに、国立がん研究センターの「患者体験調査報告書」によると、がんと診断された勤務者の19.4%が「退職・廃業した」と回答しており、就労上の問題を抱えていることが報告されています。つまり、がんの罹患は健康面だけでなく、収入面にも大きな影響を与えることがわかります。 住宅ローンは長期にわたる返済が前提となるため、万が一がんに罹患した場合の返済リスクに備えることは非常に重要です。こうした背景から、がん団信への加入は、住宅ローン返済の不安を軽減するための、現実的な備えといえます。 出典)厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」 出典)国立がん研究センター「最新がん統計」 出典)国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査 p.47」 がん団信は50%と100%のどちらを選ぶべき? がん団信の50%・100%保障のどちらかを選ぶうえで、保障内容が手厚くなることに対して、月々の返済額がどれだけ増加するかを確認することは重要です。 4,000万円の住宅ローンを金利1%、返済期間35年、元利均等返済(ボーナス払いなし)で借り入れた場合のシミュレーションは下表のとおりです。50%保障団信は金利の上乗せはなし、100%保障団信は金利の上乗せを0.2%としています。 項目 50%保障団信 100%保障団信 上乗せ金利なし0.2% 月々の返済額112,914円116,680円 総返済額約4,742万円約4,900万円 このシミュレーション結果から、月々の差額は約3,766円、総返済額の差は約158万円です。この差額で、がん罹患時に住宅ローンの返済が全額免除されるかどうかが決まると考えると、保障内容の違いは非常に大きな意味を持ちます。 保険料の負担を抑えつつ最低限の備えをしたい人は50%保障団信、万が一の際に住宅ローン返済の不安を完全に取り除きたい人は100%保障団信が適しています。 たとえば、教育費などの支出が多い子育て世帯には50%保障団信が現実的な選択肢となり、収入減少のリスクに備えたい自営業者や単身世帯には100%保障団信が安心材料となるでしょう。 保障内容や金利の詳細は金融機関によって異なります。実際の条件を比較したうえで、住宅ローンの申込時に担当者へ相談することをおすすめします。 がん団信に加入する場合の注意点 がん団信に安心して加入するためには、以下の点に注意しておくことが大切です。 対象外となる期間および疾病がある がん団信では、融資実行日から一定期間(例:90日以内)は「免責期間」となり、この期間中にがんと診断されても、保険金は支払われません。また、上皮内がんなど一部のがんは保障の対象外となることがあります。加入前に保障内容をよく確認しましょう。 生命保険料控除は使えない がん保険の保険料は生命保険料控除の対象となり、所得税・住民税の軽減につながります。しかし、がん団信の保険料は金利に上乗せする形式で支払うため、控除の対象外です。 住宅ローンの返済が終了したら保障期間も終了する がん団信の保障期間は、住宅ローンの返済期間と一致します。住宅ローン完済後もがんに備えたい場合は、医療保険やがん保険の加入を検討しましょう。 詳細な告知を求められる場合がある がん団信では、一般的な団信よりも詳細な健康状態の告知が求められることがあります。診断書の様式や告知項目は金融機関によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。 まとめ がん団信では死亡または高度障害状態に加え、がんに罹患して所定の状態に該当した場合も保険金が支払われます。がん団信の50%保障と100%保障の違いは、費用負担と保障範囲にあり、どちらを選ぶかはライフスタイルやリスクへの備え方によって異なります。 手厚い保障を重視するなら100%保障団信、保険料を抑えつつ最低限の備えをしたいなら50%保障団信が選択肢となります。自分に合った保障を選ぶためには、金融機関の条件や自身の生活設計を踏まえて、じっくり比較・検討することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35は団信なしだと金利はどれくらい変わる?注意点も解説 一般的に住宅ローンを組む時は、団体信用生命保険(以下「団信」という)の加入が必要となります。しかし、住宅金融支援機構の提供するフラット35は団信が任意加入です。団信なしの場合、フラット35の...
最近の金利上昇を受けて、「変動金利のままで大丈夫?」「固定金利に変えたほうが安心?」と悩む人も多いのではないでしょうか。 この記事では、変動金利から固定金利への借り換えが住宅ローンの返済額にどのような影響を与えるのか、シミュレーションも交えてわかりやすく解説します。さらに、借り換えにかかる諸費用やタイミングの見極め方など、判断に役立つポイントも紹介します。 住宅ローンの変動金利と固定金利の違い 住宅ローンを選ぶ際に重要なのが、金利タイプの選択です。ここでは「変動金利」と「固定金利」の違いについて、仕組みや特徴を解説します。 変動金利型の住宅ローンの特徴 変動金利型の住宅ローンは、多くの場合、各金融機関が半年ごとに金利の見直しを行います。また、変動金利は一般的に金融機関が設定する短期プライムレートの動きに連動しています。この短期プライムレートは、日本銀行の政策金利の影響を受けるため、利上げが行われると、一定期間を経て住宅ローン金利も上昇する傾向があります。 ただし、金利がすぐに上昇するとは限らず、金融機関の判断で据え置かれることもあります。変動金利は借入当初の金利が低く、月々の返済額を抑えられる点がメリットです。 また、多くの金融機関では、以下のような返済額を調整する仕組みを設けています。 5年ルール:金利が変動しても、5年間は返済額が変わらない 125%ルール:金利が上昇しても、返済額の増加は最大125%までに抑えられる これらの仕組みは、利息の支払いを免除するものではなく、支払いが先送りされるだけである点に注意が必要です。将来の金利変動に備え、こうした仕組みを理解したうえで、返済計画を立てることが大切です。 関連記事はこちら住宅ローンの5年ルールと125%ルールとは?メリット・デメリットを解説 固定金利型の住宅ローンの特徴 固定金利型の住宅ローンは、一般的に新発10年国債利回りなどの長期金利を参考に、金融機関が金利を設定します。契約時に決定した金利が返済期間中ずっと適用されるため、月々の返済額が変わらないのが特徴です。金利が上昇しても返済額に影響がないため、将来の支出計画が立てやすく、家計管理の面でも安心感があります。 ただし、以下のような注意点もあります。 借入時の金利は、変動金利よりも高めに設定される傾向がある 金利が下がっても返済額は変わらないため、結果的に割高になることがある とはいえ、金利上昇局面では返済額が固定されていることが大きなメリットとなり、長期的な安定を重視する方には適した選択肢といえるでしょう。 固定金利型の住宅ローンを選ぶ人が増加傾向にある 長く続いた低金利時代の日本では、住宅ローンの金利タイプとして変動金利を選ぶ人が多く見られました。しかし近年では、インフレの進行や賃上げの広がりを背景に、日本銀行が利上げに転じる動きが見られています。これに伴い、政策金利や長期金利が上昇し、住宅ローン金利にも影響が及んでいます。 こうした金利環境の変化を受けて、返済額が一定で安心感のある固定金利を希望する人が増えています。住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用予定者調査(2025年4月)」によると、希望する金利タイプは変動金利が37.1%、固定金利が30.7%でした。 前年(2024年4月)の調査と比較すると、変動金利は3.0ポイント減少し、固定金利は4.4ポイント増加しています。金利の先行きに不安を感じる人が、長期的な安定を重視して固定金利を選ぶ傾向が強まっていることがうかがえます。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用予定者調査(希望する金利タイプ)p.15」 変動金利と固定金利の違いで住宅ローンの返済額はどう変わる 金利が変動すると、住宅ローンの返済額も変化します。特に変動金利を利用している場合、将来的な金利上昇によって返済負担が増えることがあるため、注意が必要です。 一般的に、変動金利は固定金利よりも金利水準が低く、借入当初の返済額を抑えられるメリットがあります。ただし、金利が上昇した場合には、返済額が増えるリスクがあります。 一方、固定金利に借り換えることで、返済額が一定になり、将来の金利変動に左右されずに安定した返済計画を立てることができます。これは、家計管理のしやすさや安心感につながる選択肢です。 住宅ローンの返済額を4パターンで比較|金利上昇・借り換えの影響 ここでは、以下の融資条件で住宅ローンをすでに15年間返済しているケースを想定し、4つのパターンで月々の返済額と総返済額の違いをシミュレーションします。 融資条件 借入金額:3,000万円 返済期間:35年(15年経過) 金利タイプ:変動金利1.0% 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし) 上記の融資条件で返済が15年経過していると、借入残高は1,841万円です。ここから次の4つのケースでの返済シミュレーションを見ていきましょう。 融資条件 現状のまま返済を続け、金利が変動しない場合 現状のまま返済を続け、金利が上昇する場合(10年毎に0.5%) 現状のまま返済を続け、金利が上昇する場合(10年毎に1.0%) 固定金利(1.50%)に借り換えた場合(諸費用は60万円とし、借り換え後の残高に加算しない) ケース1.現状維持2.金利上昇(+0.5%)3.金利上昇(+1.0%)4.借り換え(固定金利) 金利推移 1.0%1.0%→1.5%→2.0%1.0%→2.0%→3.0%1.0%→1.5% 月々の返済額1〜15年 84,685円 月々の返済額16〜25年 84,685円 88,856円 93,154円 88,856円 月々の返済額26〜35年 84,685円 91,056円 97,757円 88,856円 総返済額 3,556万円 3,683万円 3,815万円 3,656万円 諸費用 - - - 60万円 総返済額+諸費用 3,556万円 3,683万円 3,815万円 3,716万円 ※住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成(千円以下切り捨て) 今回のシミュレーションから、金利が上昇した場合には返済額・総返済額ともに増加することがわかります。特に③のように10年毎に1.0%の金利上昇があった場合、総返済額は約259万円増加し、家計への影響も無視できません。 一方、④のように固定金利へ借り換えた場合は、諸費用を含めても総返済額は約3,716万円に抑えられ、③よりも約99万円少なくなります。返済額が一定であることから、将来の金利変動に左右されず、家計管理のしやすさや精神的な安心感も得られる点が大きなメリットです。 ただし、借り換えには諸費用がかかるため、金利差や残りの返済期間によっては、必ずしも得になるとは限りません。借り換えを検討する際は、金利の動向だけでなく、諸費用や返済期間、ライフプランも含めて総合的に判断することが重要です。借り換えを検討している人は、まずは金融機関のシミュレーションツールを活用し、諸費用を含めた総返済額を確認してみましょう。 変動から固定金利型住宅ローンへ借り換える前に確認したい注意点 変動金利から固定金利へ借り換える場合は、以下の点に注意する必要があります。 借り換え効果が得られない場合がある 住宅ローンの金利は、変動金利が政策金利、固定金利が長期金利の影響を受けて決まります。金利が上昇する局面では、先に長期金利が上がり、後から政策金利が上昇する傾向があります。 そのため、金利が上昇してから固定金利への借り換えを検討しても、すでに固定金利も上がってしまっている可能性があります。結果として、期待していたほど有利な条件で借り換えができないこともあります。 こうした事態を避けるためには、金利の上昇が予測されるタイミングで、早めに固定金利への借り換えを検討することが重要です。 借り換えには諸費用がかかる 住宅ローンの借り換えには、以下のような諸費用が発生します。 借り換え元のローンにかかる費用:繰上返済手数料、抵当権抹消費用など 借り換え先のローンにかかる費用:融資事務手数料、保証料、印紙税、抵当権設定費用など これらの費用は金融機関によって異なり、特に融資事務手数料の計算方法や保証料の有無によって大きな差が出ることがあります。借り換えを検討する際は、諸費用の総額を事前に確認し、総返済額にどの程度影響するかを把握しておくことが大切です。シミュレーションをする際に、実際の諸費用を含めた借り換え効果を確認するようにしましょう。 まとめ 住宅ローンの金利が上昇傾向にある今、変動金利から固定金利への借り換えは、将来の返済負担を抑える有効な手段となり得ます。特に、長期的な家計の安定を重視する方にとっては、返済額が一定になる固定金利は安心感のある選択肢です。 ただし、借り換えには諸費用がかかり、タイミングによってはメリットが小さくなる場合もあるため、慎重な検討が欠かせません。借り換えを検討している人は、まずは金融機関のシミュレーションツールを使って、諸費用を含めた総返済額を確認してみましょう。早めの行動が、将来の安心につながります。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
年収1,100万円の世帯が、安心してマイホームを購入するためには、どのくらいの住宅ローンを組むのが適切なのでしょうか?高収入であっても、借り入れが多すぎると、将来の家計に思わぬ負担がかかることもあります。 この記事では、年収1,100万円世帯が無理なく返済できる住宅ローンの「適正額」と、返済計画を立てる際に押さえておきたいポイントを、具体的なデータとともにわかりやすく解説します。 住宅ローンの借入金額の適正額を判断する2つのポイント 年収1,100万円の世帯が住宅ローンを検討する際、借入金額の「適正さ」を見極めるために重要な指標が2つあります。それが「年収倍率」と「総返済負担率」です。それぞれ見ていきましょう。 年収倍率とは 年収倍率とは、住宅購入に必要な資金が年収の何倍にあたるかを示す指標です。住宅金融支援機構の「2024年度 フラット35利用者調査」によると、住宅ローンであるフラット35利用者の年収倍率(住宅購入の所要資金を世帯年収で除した数値)は、住宅種別によって5.3倍〜7.5倍の範囲に分布しています。 仮に年収1,100万円としたとき、この年収倍率を掛け合わせると、「購入価格の目安」は下表のようになります。 住宅種別 年収倍率 購入価格の目安 土地付注文住宅 7.5倍 8,250万円 マンション 7.0倍 7,700万円 注文住宅 6.9倍 7,590万円 建売住宅 6.7倍 7,370万円 中古マンション 5.5倍 6,050万円 中古戸建 5.3倍 5,830万円 出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」をもとに筆者が作成 このように、住宅種別によって年収倍率は異なり、目安となる購入価格は変わります。ただし、年収倍率はあくまで「購入可能な金額の目安」であり、「無理なく返済できる金額(=適正額)」とは異なる点に注意が必要です。 また、今回のデータは住宅金融支援機構の調査結果に基づくものであり、実際の購入価格や借入額は、物件の条件や家計状況によって変動します。参考値として活用しつつ、個別の資金計画を立てることが重要です。 総返済負担率とは 総返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示す指標です。住宅ローンだけでなく、車のローンや教育ローンなど、他の借り入れも含めて計算します。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、返済負担率が「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。 年収1,100万円の世帯であれば、総返済負担率を20%とした場合、年間返済額は220万円(月々の返済額:約18.3万円)以内が目安となります。これを超えると、家計への負担が大きくなることがあるため、慎重な判断が求められます。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」 年収1,100万円世帯の住宅ローン適正額シミュレーション 年収1,100万円の世帯が、住宅ローンを無理なく返済するためには、どのくらいの借入額が適正なのでしょうか?ここでは、総返済負担率を「20%以内」に抑えることを前提に、金利別に住宅ローンの適正額をシミュレーションしてみましょう。 今回のシミュレーションでは、以下の条件をもとに計算しています。 年間返済額:220万円(1,100万円×20%) 月々の返済額:約18.3万円(220万円÷12か月) 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済、ボーナス払いなし 適用金利 住宅ローンの適正額(概算) 0.5% 7,049万円 1.0% 6,482万円 1.5% 5,976万円 2.0% 5,524万円 ※【フラット35】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。 この結果から、年収1,100万円世帯が住宅ローンを組む場合、借入額の目安は約5,500万円〜7,000万円となります。金利が低ければ借入可能額は増えますが、将来の支出や金利変動リスクも踏まえ、無理のない返済計画を立てることが、安心した住まい選びの第一歩です。 年収1,100万円世帯が陥りやすい住宅ローンの落とし穴と対策ポイント 年収1,100万円という高収入世帯でも、住宅ローンの返済において油断は禁物です。収入が多いからこそ、物件のグレードや生活水準が上がりやすく、結果として家計に負担がかかるケースも少なくありません。ここでは、年収1,100万円世帯が住宅ローンを無理なく返済するために、特に注意すべきポイントを3つに分けて解説します。 自己資金を多めに準備する 高収入世帯は、物件に対する期待値が高くなりがちです。注文住宅や都心のマンションなど、価格帯が高い物件を選ぶ傾向があるため、借入額が膨らみやすくなります。 そのため、住宅ローンを組む際には、頭金や諸費用などの自己資金を多めに用意することが重要です。自己資金をしっかり確保することで、借入比率を抑え、返済負担を軽減できます。 国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資金比率は20〜40%程度が一般的です。物件価格の2割以上の自己資金を目安に、余裕を持った資金計画を立てましょう。 出典)国土交通省「令和5年度 住宅調査報告書(一次取得・二次取得別の購入資金)p.50」 ローン返済以外の支出も見据える 年収1,100万円は高収入といえますが、税負担や教育費、生活費などの支出も比例して増える傾向があります。特に子育て世帯では、教育費が家計を圧迫する要因になりやすく、住宅ローンの返済に影響を及ぼすこともあります。 また、将来的には老後資金や介護費用など、まとまった支出が発生することも考えられます。住宅ローンだけでなく、ライフイベントに備えた資金計画を立てることが、長期的な安心につながります。 住宅ローン控除の活用も視野に入れる 夫婦ともに安定した収入がある場合は、ペアローンの活用も選択肢のひとつです。ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦それぞれが主債務者となり、2本のローンを組む方法です。 ペアローンを利用することで、借入可能額が増えるだけでなく、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるメリットもあります。控除額が増えることで、実質的な返済負担を軽減できる可能性があります。 ただし、諸費用が2本分かかる点や、離婚・収入変動などのリスクもあるため、慎重な検討が必要です。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 まとめ 年収1,100万円世帯が住宅ローンを検討する際は、「借りられる額」ではなく「無理なく返済できる額」を基準にすることが大切です。シミュレーションによる適正な借入額は約5,500万円〜7,000万円。総返済負担率を20%以内に抑えることで、家計への影響を最小限にできます。 住宅ローンは一人ひとりのライフスタイルや将来設計によって最適な選択が異なります。実際の借入可能額や返済プランを確認するために、返済シミュレーションなどを活用し、金融機関の事前審査も検討してみましょう。無理のない資金計画が、理想の住まいと安心した暮らしへの第一歩です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35で住宅ローンを組みたいときはどこに相談する?選び方と注意点を解説 住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。8月21日の新発10年国債利回りは一時1.61%まで上昇し、2008年以来およそ17年ぶりの高水準となりました。これを受けて、9月の【フラット35】金利はどう動くのでしょうか。 この記事では、新発10年国債と機構債の金利推移、2つの予測シナリオやその根拠などをわかりやすく解説します。 2025年9月の【フラット35】金利は 1.89% に決定しました(更新日:2025年9月16日)。 【フラット35】9月金利予想 市場関係者は、米関税政策による企業業績の下振れ懸念の後退が株価を押し上げ、日銀が次の利上げを早めるのではないかとの思惑から、金利の上昇圧力となっていると分析しています。新発10年国債利回りは、住宅ローンの固定タイプの金利に影響を与え、住宅金融支援機構が【フラット35】の資金調達方法としている機構債の表面利率にも影響してきます。 では早速、これまでの機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移と9月の【フラット35】の金利予想です。 8月の金利予想と実態 8月の金利予想では、機構債の表面利率と新発10年国債利回りがともに大幅上昇したので、【フラット35】の金利上昇は抑えられて、1.89~1.97%になると予想しました。ただ、私の予想を超えて金利上昇が抑えられ、【フラット35】の金利は1.87%と想定を下回りました。 9月も引き続き機構債の表面利率と新発10年国債利回りが上昇すると考え、前月同様に【フラット35】の金利上昇は抑えられると予想します。前月は予想以上に金利上昇が抑えられるという結果であったため、今月はさらなる抑制を見込んで1.87%~1.93%と予想しました。 主要データ(2025年8月21日時点) 機構債発表日 2025年5月22日 2025年6月20日 2025年7月18日 2025年8月21日 機構債の表面利率(※1)1.94%1.88%2.02%2.08% 新発10年国債利回り(※2)1.54%1.43%1.55%1.61% ローンチスプレッド(※1)40bps(0.40%)45bps(0.45%)47bps(0.47%)47bps(0.47%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 新発10年国債利回りは便宜上、機構債の表面利率からローンチスプレッドを差し引いた数値としています。 6月 7月 8月 9月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※3)1.89%1.84%1.87%1.87%~1.93%※9/1発表の金利は1.89%でした ※3 出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 なお、この予測ロジックは以下のとおりです。詳細は後述します。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) 新発10年国債利回りと機構債の金利推移 8月の新発10年国債利回りは、7月の1.55%から1.61%へ0.06ポイント上昇しました。これに対して、機構債の表面利率も2.02%から2.08%へ0.06ポイント上昇し、ほぼ同じ幅で動いたため、順当な結果といえます。 ローンチスプレッドとは? 新発10年国債利回りと機構債の表面利率の差は、“ローンチスプレッド”といわれます。このローンチスプレッドは、拡大傾向にありました。これは、住宅ローンを借りるわたしたちにとって、新発10年国債利回りが上昇した際に、住宅ローン金利の上昇がより大きくなってしまうことを意味します。 2025年5月から8月までの動き 2025年5月:0.40% 2025年6月:0.45%(前月より+0.05ポイント) 2025年7月:0.47%(前月より+0.02ポイント) 2025年8月:0.47%(前月と横ばい) 5月から7月にかけては、0.02~0.05ポイント幅で拡大していましたが、8月は横ばいで上昇が止まりました。これは、住宅ローン金利の急騰リスクがやや和らいだサインと言えます。 機構債と【フラット35】の金利推移 機構債の表面利率は、2.02%から2.08%へ0.06ポイント上昇しました。これに対して、千日太郎の【フラット35】金利予想は、1.87%から1.93%で、横ばいから0.06ポイントの上昇に抑えられるというものです。 なぜ抑えられるのか? この予想は、過去3か月にわたって【フラット35】の金利が、機構債の表面利率を下回っていることにあります。これは、住宅金融支援機構は収益性を問わず、低金利を続けていることを意味します。 【フラット35】(買取型)の仕組みをおさらい 【フラット35】(買取型)は、住宅金融支援機構が機関投資家に「機構債」という債券を販売して資金を集め、その資金で住宅ローンを提供する仕組みです(詳細は後述)。簡単に言えば、機構債の表面利率は「仕入れ値」、【フラット35】の金利は「販売価格」にあたります。 2025年6月から8月まで異例のマイナス収支が続く 6月:機構債1.94% vs【フラット35】金利1.89% 7月:機構債1.88% vs【フラット35】金利1.84% 8月:機構債2.02% vs【フラット35】金利1.87% → -0.15ポイント(過去最大) 上記は直近3か月の動きですが、6月(機構債発表日5月22日)の機構債の表面利率は、【フラット35】の金利に対して、0.05%のマイナスです。これは、住宅金融支援機構が1.94%で資金を仕入れて、1.89%の金利の住宅ローンとしてわたしたちに提供していることを意味します。 続いて、7月は0.04ポイントの差でしたが、8月は0.15ポイントまで拡大しています。つまり、3か月連続で異例のマイナス収支が続いているだけでなく、その幅も拡大傾向にあるのです。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えるか?2つの予想シナリオ 千日太郎の予想では、9月もマイナス収支が続くと見ています。そのため、予想レンジを1.87%~1.93%とし、以下の2つのシナリオを想定しています。 シナリオ①:1.87%「激変緩和」 8月は新発10年国債利回りと機構債の表面利率が上昇しましたが、住宅金融支援機構は住宅金融の円滑化のため、その上昇をあえて住宅ローンの金利に反映させないというシナリオです。 シナリオ②:1.93%「マイナス幅の限度」 7月の機構債の表面利率と8月の【フラット35】の金利差は、前述のとおり0.15ポイントでした。8月の機構債の表面利率が2.08%なので、仮にマイナス幅を0.15ポイントとすると9月の【フラット35】の金利は1.93%になるというシナリオです。 【フラット35】の金利がなぜここまで抑えられるか? 【フラット35】の金利抑制は、日銀がマイナス金利政策を解除した2024年3月以降も続いています。しかし、機構債の利率を下回る水準をつけたのは、2025年6月が初めてです。 この背景には、住宅金融支援機構は非営利の独立行政法人であり、国の政策的役割を担っているという特性があります。しかし、営利を目的としていない住宅金融支援機構といえども、このような状態を永続的に続けられるものではありません。少しでも長く、この低金利を続けてほしいものですね。 【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み 住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。 出典)【フラット35】 Q.フラット35のしくみを教えてください。 この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入するので、その表面利率は新発10年国債利回りに連動する傾向があります。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。
過去に延滞や債務整理をした経験があると、個人信用情報に「事故情報(異動情報)」が記録され、こうした情報が登録されている状態は、一般的に「ブラックリストに載っている」と表現されます。過去にこのような経験がある人は、住宅ローンの審査に不安を感じるかもしれません。 この記事では、そもそもブラックリストとは何か、その確認方法や、住宅ローン審査にどのような影響を及ぼすかについて、わかりやすく解説します。 ブラックリストとは? 「ブラックリスト」とは、信用情報機関が管理する個人信用情報に、延滞や債務整理などの事故情報が記録されている状態を指す俗称です。実際に「ブラックリスト」という名前のリストが存在するわけではありませんが、金融機関の審査においては重要な判断材料となります。 住宅ローンの審査では、申込者の返済能力を確認するために、金融機関が信用情報機関から個人信用情報を取得します。そして、過去の事故情報が記録されていると、審査にマイナスの影響を及ぼします。「自分はブラックリストに載っているのか?」と不安に感じる人は、信用情報を開示して確認することができます。 代表的な信用情報機関は3社 日本の代表的な信用情報機関は、以下の3社です。 信用情報機関 主な加盟会員 CIC(シー・アイ・シー) クレジットカード会社など JICC(日本信用情報機構) 消費者金融など KSC(全国銀行個人信用情報センター) 銀行など 銀行やクレジットカード会社などの金融機関は、上記のいずれかに加盟しています。3社(CIC・JICC・KSC)は情報交流協定を結んでおり、事故情報などは相互に共有される仕組みになっています。 ブラックリストに載る主なケース ブラックリストに載る主な事故情報は以下のとおりです。 クレジットやローンの長期延滞 債務整理(任意整理、個人再生、自己破産など) 携帯電話料金の滞納による強制解約 保証会社による代位弁済 これらの情報は、信用情報機関に一定期間記録されます。信用情報機関ごとの登録期間は以下のとおりです。 信用情報機関 登録期間 CIC(シー・アイ・シー) 契約期間中および完済日から 5年以内 JICC(日本信用情報機構) 契約継続中および完済日から 5年以内 KSC(全国銀行個人信用情報センター) 契約期間中および完済日から 5年以内 破産・民事再生手続開始決定から 7年以内 関連記事はこちら債務整理とは?メリット・デメリットを解説 関連記事はこちら代位弁済とは?仕組みや流れ、考えられるリスクについて解説 信用情報機関への情報開示の方法 信用情報機関に情報開示を申し込む方法は以下のとおりです。 CIC(シー・アイ・シー)の開示方法 CICでは、2025年8月現在、インターネットによる信用情報の開示が一時休止されていますが、郵送による開示は現在も利用可能です。郵送開示の手数料は500円~で、申し込みから約3週間で開示報告書が届きます。 なお、インターネット開示は2025年10月9日に再開予定とされています(※最新情報はCIC公式サイトをご確認ください)。 項目/開示方法 郵送 インターネット 必要書類 開示申込書、本人確認書類、手数料(開示利用券(コンビニチケット)または定額小為替証書) 休止中※2025年8月現在 手数料 500円~ 開示までの期間 約3週間 詳細は、株式会社シー・アイ・シーのホームページをご参照ください。 出典)株式会社シー・アイ・シー「郵送で開示する」 出典)株式会社シー・アイ・シー「インターネット開示のサービス再開予定時期のお知らせ」 JICC(日本信用情報機構)への開示方法 JICC(日本信用情報機構)では、スマートフォンアプリを使って信用情報の開示を申し込むことができます。専用アプリをダウンロードし、本人認証を行ったうえで、氏名や生年月日などを入力し、クレジットカードなどで手数料を支払うと、開示結果を受け取ることができます。 データ受け取りの場合は1,000円、郵送受け取りの場合は1,300円の手数料がかかり、取得までの期間はそれぞれ1~3日程度、5~7日程度が目安です。スマホアプリが利用できない場合は、郵送による開示手続きも可能です。 項目/開示方法 郵送 インターネット 必要書類 ・郵送申込:開示申込書、本人確認書類、手数料(郵送開示利用券)・アプリ:本人確認書類 マイナンバーカード 手数料 1,300円 1,000円 開示までの期間 ・郵送申込:7~10日程度・アプリ申込:5~7日程度 1~3日程度 詳細は、株式会社日本信用情報機構のホームページをご参照ください。 出典)株式会社日本信用情報機構「開示を申し込む」 KSC(全国銀行個人信用情報センター)の開示方法 KSC(全国銀行個人信用情報センター)では、インターネットまたは郵送による信用情報の開示が可能です。 インターネット開示では、メールアドレスを登録し、住所・氏名などの情報を入力したうえで、マイナンバーカードの電子証明書を使って本人確認を行います。手続き完了後、クレジットカードなどで手数料(1,000円)を支払うと、最短3~5営業日で開示報告書をダウンロードできます。 スマートフォンやマイナンバーカードが利用できない場合は、郵送による開示も可能です。申込書類の到着後、7~10日程度で報告書が届きます。 項目/開示方法 郵送 インターネット 必要書類 開示申込書、本人確認書類、手数料(本人開示・申告手続利用券) マイナンバーカード 手数料 1,679円~1,800円 1,000円 開示までの期間 7~10日程度 最短3~5営業日 詳細は、一般社団法人全国銀行協会のホームページをご参照ください。 出典)一般社団法人全国銀行協会「本人開示の手続き」 ブラックリストに載っていても住宅ローンは組める? ブラックリストに載った状態では住宅ローンの審査に通るのは難しいとされていますが、一定の条件を満たせば、審査に通る可能性が全くないわけではありません。ここでは、審査通過の可能性を高めるポイントや、柔軟な対応をしている金融機関の例をご紹介します。 審査通過の可能性を高める条件 事故情報が記録されている場合は、以下のような条件を満たしているかどうかが重要になります。 まず、事故情報の対象となった債務をすでに完済していることが前提となります。完済していない状態では、審査に通るのは非常に難しいでしょう。また、信用情報機関に記録された事故情報が削除されているかどうかも、審査の判断材料になります。 さらに、現在の収入が安定していて、返済能力があると判断されることも重要です。過去に問題があったとしても、現在の生活状況が改善されていれば、金融機関の評価も異なります。 加えて、事故情報の対象となった債務の他にクレジットカードやローンで延滞がないなど、信用情報全体が良好であることもプラス要素になります。そのほかにも、住宅ローンを利用する際に頭金を多めに用意することで借入金額を減らせば、金融機関にとってのリスクが下がり、審査通過の可能性が高まることがあります。 柔軟な対応をしている金融機関 保証会社が柔軟な金融機関 銀行の住宅ローンは、保証会社の審査を通過することが前提となります。ただし、保証会社によって審査基準が異なるため、事故情報があっても通過する可能性もゼロではありません。特に地方銀行や信用金庫などの地域密着型の金融機関では、申込者の個別事情を丁寧に考慮してくれることがあります。 ノンバンク系ローン(信販会社・消費者金融系) 一部のノンバンク系金融機関では、銀行よりも柔軟な審査基準を採用している場合があります。金利はやや高めになる傾向がありますが、過去に事故情報があっても、現在の収入や返済実績が良好であれば、審査対象となる可能性があります。 まとめ ブラックリストに載っている状態では、住宅ローンの審査に影響が出る可能性が大きいでしょう。しかし、事故情報は永遠に残るものではなく、一定期間が過ぎれば信用情報から削除されます。 まずは、自分の信用情報を開示して、現在の状況を正確に把握することが第一歩です。そのうえで、収入や返済履歴を整え、計画的に準備を進めていけば、住宅ローンの審査に通る可能性も十分にあります。 焦らず、着実にステップを踏むことが、安心して住宅ローンを組むための近道です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35の本審査はどんな人が落ちやすい?落ちた場合の対策も紹介 フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。本審査に落ちる確率は公表されていませんが、審査に落ちやすい人の傾向は把握することができます。 この記事では、フラット...
住宅ローンの本審査に通過した後、融資が実行される前に転職した場合、どのような影響があるのでしょうか。融資実行前の転職にはリスクがあり、思わぬトラブルを招くことがあります。 この記事では、住宅ローンの本審査後に転職した場合に起こり得るリスクと、金融機関との適切な対応方法について解説します。 住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる? 住宅ローンの本審査の結果は、融資の実行を保証するものではなく、あくまで審査時点の与信情報を基にした承認に過ぎません。国土交通省の調査によると、金融機関が住宅ローンの審査で重視する項目は以下のとおりです。 完済時年齢 98.4% 借入時年齢 96.0% 健康状態 95.1% 年収 93.4% 勤続年数 93.2% 出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」 転職によって、金融機関が重視するような「年収」や「勤続年数」に変化が生じるため、以下のようなリスクが生じる恐れがあります。 融資承認が取り消される 住宅ローンの本審査は、申込時点の収入や勤務先、勤続年数を前提に行われることが一般的です。転職によってこれらの条件が変わると、融資の承認が取り消されることがあります。 再審査が必要になる 融資実行前に転職した場合は、申請した勤続年数などの情報と実態に相違が発生するため、転職後の収入や勤務先、雇用形態などを基に再審査を受ける必要があります。再審査に通過できなければ融資を受けられない他、通過できたとしても融資実行までに時間がかかることがあります。 本審査後に転職して融資承認が取り消された場合のリスク 住宅ローンの本審査後に転職したことで、融資承認が取り消された場合、以下のような重大な影響が生じる場合があります。 転職はローン特約の対象外となる ローン特約とは、住宅ローンの審査に落ちた場合に、違約金なしで不動産売買契約を解除できる特約です。この特約が付いていれば手続きに不備がない限り、買主は保護されます。 しかし、本審査後の転職によって融資が実行されない場合は、買主側の事情によるものと判断され、原則としてローン特約の対象外となります。その結果、違約金が発生する場合や手付金の放棄が必要となる場合があります。 不動産売買契約が解除される 不動産売買契約を締結すると、契約で定められた期日までに売主へ購入代金の全額を支払う義務が生じます。しかし、住宅ローンの融資が実行されない場合、購入代金を支払えず、契約を解除せざるを得なくなります。 違約金が発生する 融資が実行されないと、場合によっては買主都合の解除とされ違約金が発生します。違約金の相場は物件価格の10~20%程度とされており、仮に物件価格が5,000万円の場合、500~1,000万円もの違約金が発生します。 また、違約金が発生しない場合でも、契約解除には手付金の放棄が必要です。手付金は物件価格の5~10%程度であり、いずれにしても金銭的な負担は大きくなります。 住宅ローンの本審査後に転職した場合の対処法 本審査後の転職は、融資に影響を及ぼすことがありますが、適切に対応すればトラブルを回避できる可能性もあります。 まずは金融機関に相談する 最初にすべきことは、金融機関の担当者へ転職の事実を正確に伝えることです。伝えるタイミングが早いほど、柔軟に対応してもらえる可能性が高まります。申告を怠ると契約違反とみなされることがあるので、必ず連絡しましょう。 金融機関の指示に従う 転職の事実を伝えると、金融機関から今後の具体的な手続きや必要書類などについて案内があります。再審査や追加の必要書類の提出など、金融機関からの指示に従って丁寧に対応しましょう。不明点があれば、確認することが大切です。 融資を受けられない場合は他の金融機関を検討する 再審査を受けた結果、融資承認が取り消されることもあります。その場合は、他の金融機関への申し込みを検討するのも一つの方法です。ただし、本審査には時間がかかるため、売買契約の相手方との調整が必要になる点に注意しましょう。 不動産会社や専門家にも相談する 金融機関だけでなく、不動産会社や司法書士などの専門家に相談することで、契約解除や違約金のリスクを最小限に抑える方法が見つかることもあります。一人で悩まず、早めに専門家の意見を聞くことが安心につながります。 転職は金融機関に知られる?融資実行後の注意点も解説 住宅ローンの本審査後に転職した場合、「黙っていれば問題ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、金銭消費貸借契約の締結時には、健康保険証の提出が求められることが一般的です。保険証には勤務先や資格取得日が記載されているため、転職の事実は金融機関に判明する可能性が高いです。 そのため、転職が決まった時点で、速やかに金融機関へ報告することが重要です。報告を怠ると、契約違反とみなされるリスクもあるため注意が必要です。 また、融資が実行された後に転職した場合でも、住宅ローンの契約約款では勤務先の変更を報告する義務が定められていることが一般的です。返済が滞らなければ大きな問題にはなりませんが、報告を怠ると後々のトラブルにつながることもあります。 いずれの場合も、転職が決まったら早めに金融機関へ相談し、必要な手続きを確認することが安心につながります。 まとめ 融資が実行される前の転職は、承認がおりた融資が取り消しになるリスクがあるため避けるべきです。転職が決まった方や検討中の方は、まずは金融機関や不動産会社に相談してみましょう。早めの対応が安心につながります。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの在籍確認はいつ行われる?タイミングや電話で聞かれることを解説 住宅ローンに限らず、融資の審査過程では、申込者の勤務先に対して在籍確認が行われることがあります。在籍確認の目的やタイミング、電話で確認される内容について、気になる人がいるかもしれません。この...
「5,000万円の家を買いたいけれど、自分の年収で本当に買えるのか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。 この記事では、フラット35を利用して5,000万円の家を購入する際の金利に基づく返済シミュレーションと、購入時に注意すべきポイントについて解説します。 フラット35の金利で見る5,000万円借入時の住宅ローン返済額 フラット35では、融資率(借入金額が物件価格に対して占める割合)によって金利が変動します。融資率が9割以下と9割超の場合で適用金利が異なるため、頭金の有無によって返済額に差が生じます。 2025年7月時点の、新機構団信付きのフラット35(借入期間21年以上35年以下)の金利水準は以下のとおりです。 フラット35の金利水準(2025年7月) 融資率 金利の範囲 最も多い金利 9割以下年1.840%~年3.970%年1.840% 9割超年1.950%~年4.080%年1.950% 出典)住宅金融支援機構金利情報をもとに筆者作成 ここでは、頭金なしと頭金を1割入れてローンを組む場合の2パターンでシミュレーションします。 頭金なしで5,000万円、頭金1割で4,500万円を借り入れた場合の返済額 返済期間35年、元利均等返済、ボーナス払いなしを前提に、頭金なし(融資率10割)と融資率9割を条件にシミュレーションすると下表のようになります。 条件 借入額 適用金利 毎月の返済額 総返済額 頭金なし5,000万円1.95%約16.4万円約6,902万円 頭金1割4,500万円1.84%約14.5万円約6,106万円 頭金なしの場合は、初期費用を抑えられるメリットがありますが、融資率が9割超となるため金利が高くなり、結果として毎月の返済額や総返済額が増加します。一方で、頭金を1割入れると融資率が9割となり、金利が低く抑えられるため、返済負担も軽減されます。 関連記事はこちらフラット35は頭金・自己資金なしで組める? 5,000万円の家を無理なく購入するために注意すべきポイント 5,000万円の家を購入する場合は、住宅ローンの返済だけでなく、将来の生活も見据えた資金計画が重要です。以下のポイントを押さえて、無理のない住宅購入を目指しましょう。 自己資金を多めに準備する 自己資金が多ければ多いほど、借入金額を抑えることができ、毎月の返済額や総返済額の負担を軽減できます。国土交通省の調査によると、住宅購入者の自己資金比率は平均30%~50%程度です。可能な限り自己資金は多めに準備をし、住宅ローンの借入額を適切に設定しましょう。 住宅種別 自己資金比率 土地付注文住宅29.0% マンション48.3% 注文住宅42.5% 建売住宅30.4% 中古マンション47.9% 中古戸建住宅47.3% 出典)国土交通省令和5年度住宅市場動向調査をもとに筆者作成 諸費用や維持費を考慮する 住宅購入では、物件価格以外にもさまざまな費用がかかります。借入額を決める場合は、購入時の「諸費用」や、購入後に継続して発生する「維持費」も含めて、総合的に資金計画を立てることが重要です。 購入時にかかる主な諸費用 住宅ローンの事務手数料 登記費用(登録免許税・司法書士報酬など) 火災保険料(数年分を一括払いするケースが多い) 引越し費用・家具家電の購入費用 購入後にかかる主な維持費 戸建住宅:固定資産税、修繕費(屋根・外壁など) マンション:管理費、修繕積立金、駐車場代など これらの費用は、住宅ローンの返済とは別に必要となるため、月々の支出や将来の負担を見越して、余裕のある資金計画を立てましょう。 返済負担率を20%程度に抑える 返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示す指標で、住宅ローンの審査でも重視されます。この数値が高くなるほど、毎月の返済額や総返済額の負担が重くなり、生活費や将来の支出に影響を及ぼす恐れがあります。 国土交通省の調査によると、住宅ローンを利用している世帯の返済負担率は、平均で15~20%程度です。借入希望額を決める場合は、教育ローンや自動車ローンなどの他の借り入れも含めた総返済負担率が20%を超えないように意識すると安心です。以下は、住宅種別ごとの平均的な返済負担率です。 住宅種別 返済負担比率 マンション15.5% 注文住宅19.4% 建売住宅17.6% 中古マンション15.7% 中古戸建住宅16.1% 出典)国土交通省令和5年度住宅市場動向調査をもとに筆者作成 定年までに完済できる計画を立てる 一般的に、住宅ローンは長期にわたって返済が続くため、定年退職後も住宅ローンが残っていると、老後の生活に大きな負担になる場合があります。返済期間中には、病気やケガ、転職などで収入が減少するリスクもあるため、安定した収入があるうちに完済できるよう、計画的に返済期間を設定することが大切です。 例えば、30歳で住宅ローンを組む場合は、返済期間を35年に設定すると完済は65歳になります。60歳を定年として収入が減少することを考えると、最後の5年間は返済負担が大きくなることが想定されます。そのため、繰上返済を活用したり、返済期間を短めに設定したりすることで、定年までの完済を目指すことが現実的です。 まとめ 5,000万円の家を購入するための住宅ローンの返済額は、適用金利や頭金の有無などによって大きく変動します。購入を検討する場合は、事前に返済シミュレーションを行い、月々の支出や将来の生活設計を踏まえた資金計画を立てることが大切です。 特に、定年までに無理なく完済できるよう、返済期間や自己資金の準備、諸費用・維持費の見積もりを含めて、総合的に判断しましょう。安心して自宅を購入するためには、「借りられる金額」だけでなく、「返せる金額」を見据えた計画が欠かせません。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35の金利引き下げメニューについて詳しく解説 フラット35には、家族構成や住宅の性能などに応じて利用できる金利引き下げメニューがあります。最大で年1.0%の金利引き下げを受けられるため、住宅ローンの返済負担の軽減が期待できます。 この記...
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。本審査に落ちる確率は公表されていませんが、審査に落ちやすい人の傾向は把握することができます。 この記事では、フラット35の主な審査基準と本審査に落ちやすい人の特徴、落ちた場合の対策を紹介します。 フラット35の主な審査基準 フラット35は、申込者の収入や信用情報、購入する物件によって本審査で否決になることがあります。まずはフラット35の主な審査基準についてみていきましょう。 年齢・国籍 フラット35は、申し込み時の年齢が満70歳未満の人が対象です。ただし、親子リレー返済を利用する場合は満70歳以上でも申し込みできます。親子リレー返済とは、申込者本人とその子・孫などの後継者が2世代でローンを返済していく制度です。 関連記事はこちら親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説 また、日本国籍であることも申込要件です。外国籍の場合は、永住許可を受けている人または特別永住者の人であれば申し込みできます。 収入状況 収入状況は、年収に応じて総返済負担率の基準が定められています。総返済負担率とは、年収に占める年間合計返済額の割合で、フラット35以外の住宅ローンや自動車ローン、教育ローン、カードローンなどの返済額も含めて計算します。 ・年収400万円未満:総返済負担率30%以下 ・年収400万円以上:総返済負担率35%以下 年収は、原則として申込年度の前年の収入で確認されます。会社員は給与収入金額、自営業者などは事業所得や不動産所得などを合計した所得金額をもとに判断します。 信用情報 信用情報は、申込者の返済能力を判断するために確認されます。金融機関は、税金や他のローンの滞納などがないかを確認します。クレジットカードやローンの滞納歴が信用情報に記録されていると返済能力を問題視され、審査に通過しにくくなる恐れがあります。 資金使途 フラット35の資金使途は、申込者本人またはその親族が居住する新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に限定されます。第三者への賃貸を目的とした投資用物件、店舗・事務所用の物件などの取得資金には利用できません。 住宅の技術基準 フラット35は、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅が対象です。例えば、住宅規模の基準では、床面積は戸建てが70㎡以上、マンションが30㎡以上と定められています。また、基準を満たしていることを証明するために、物件検査をして適合証明書を取得しなくてはなりません。 フラット35の主な審査基準のまとめ フラット35の主な審査基準をまとめると下記のとおりです。 主な審査基準 年齢・国籍 申込時の年齢が満70歳未満(親子リレー返済で70歳以上も可) 日本国籍、永住許可、特別永住者が対象 収入と返済負担率 年収400万円未満:総返済負担率30%以下 年収400万円以上:総返済負担率35%以下 年収は申込年の前年の収入を基に判断会社員:給与収入金額自営業者 等:事業所や不動産所得などを合計した金額 信用情報 税金や他のローンの滞納履歴の有無 資金使途 自身または親族が居住する住宅の購入・建築が対象 投資用物件や店舗・事務所用物件は対象外 新築住宅の主な技術基準 住宅の規模(戸建て:70㎡以上、マンション30㎡以上) 適合証明書の取得が必要 関連記事はこちらフラット35の審査基準を徹底解説!本当に審査が甘い? フラット35の本審査に落ちやすい人の特徴 フラット35の主な審査基準を踏まえ、本審査に落ちやすい人の特徴も見ていきます。 勤続年数が短い フラット35は、勤続年数の最低期間を定めていないため、転職して間もないケースでも収入があれば申し込みは可能です。ただし、転職して数ヵ月など、勤続年数があまりに短い場合は「継続した安定収入がない」と判断されることがあります。 フラット35以外に借り入れがある フラット35の審査基準である総返済負担率は、すべての借り入れを含めて計算されます。すでに自動車ローンやカードローンなどの借り入れがある場合は、総返済負担率が高くなり、本審査に影響が出ることがあります。 自己資金が少ない フラット35は、一定の要件を満たせば頭金・自己資金なしでも借り入れが可能です。ただし、金利は高めに設定され、審査が厳しくなることがあります。 関連記事はこちらフラット35は頭金・自己資金なしで組める? 物件の担保評価が低い 住宅ローンの審査では、物件の担保評価も重要視されます。フラット35の技術基準はクリアしていても、築年数が古い物件や立地が悪い物件は担保価値が低く見積もられ、審査に影響を与えることがあります。 フラット35の本審査に落ちた場合の対策 フラット35の本審査に落ちた場合は、以下の対策を検討しましょう。 一定期間をあけて再度申し込みを行う 住宅ローン審査において、金融機関は申込者の支払能力を調査するために、信用情報機関に照会をします。例えば信用情報機関の株式会社シー・アイ・シーは、申込情報を照会日より6か月間保有します。 申込情報に審査の可否は記載されませんが、フラット35に再度申し込む場合は、審査に落ちた理由を分析・改善したうえで、一定期間をあけてから申請しましょう。 出典)株式会社シー・アイ・シー「信用情報早わかり!」 ペアローンや収入合算を検討する 配偶者などに収入がある場合は、ペアローンや収入合算を利用することが可能です。ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦・親子・パートナーなどがそれぞれ主たる債務者となって住宅ローンを組む方法です。一方収入合算とは、申込者本人の収入に、配偶者や親子の収入を合算して住宅ローンを組む方法です。 ペアローンや収入合算を活用することで、単独で住宅ローンを組むよりも借入可能額を増やせるため、審査に通過しやすくなります。 関連記事はこちら住宅ローンのペアローンと収入合算の違いとは? 物件を変更する 担保評価の低さが原因で本審査に落ちた場合は、別の物件を購入することで解決できるかもしれません。新築物件や立地のよい中古物件などを選択すれば担保評価が上がることもあります。 フラット35以外の住宅ローンに申し込む 住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なります。フラット35の審査に不安を感じている人や、審査に落ちた人は、ノンバンクの住宅ローンの利用を選択肢に加えておくとよいでしょう。 ノンバンクの住宅ローンは、銀行の住宅ローンと比べて、独自の審査基準を設けて柔軟性が高い傾向があります。ただし、銀行に比べて金利が高めに設定されていることには注意が必要です。 関連記事はこちら不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い まとめ フラット35の本審査では、申込者の収入状況や信用情報、物件の担保評価など、さまざまな要素が総合的に判断されます。そのため、審査に落ちやすい人には一定の傾向が見られます。しかし、そのすべてがすぐに改善できるとは限りません。 どうしても購入したい物件がある場合は、たとえ審査に落ちたとしても、冷静に原因を分析し、前向きに対策を進めることが重要です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35の金利引き下げメニューについて詳しく解説 フラット35には、家族構成や住宅の性能などに応じて利用できる金利引き下げメニューがあります。最大で年1.0%の金利引き下げを受けられるため、住宅ローンの返済負担の軽減が期待できます。 この記...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。今月から【フラット35】の金利予想を「住まいとお金の知恵袋」で連載します。7月に入ってから参院選の影響からか、債券価格は下がり長期金利が上昇しつづけています。 新発10年国債利回りは住宅ローンの固定タイプの金利に影響を与え、住宅金融支援機構が【フラット35】の資金調達方法としている機構債の表面利率にも影響してきます。 2025年8月【フラット35】金利予想 では早速、直近4カ月の機構債の表面利率や新発10年国債利回りの推移と8月の【フラット35】の金利予想です。8月は機構債の表面利率と新発10年国債利回りがともに大幅上昇しましたが、【フラット35】の金利上昇は抑えられて、1.89~1.97%になると予想しました。 機構債発表日 2025年4月17日 2025年5月22日 2025年6月20日 2025年7月18日 機構債の表面利率(※1)1.65%1.94%1.88%2.02% 新発10年国債利回り(※2)1.30%1.54%1.43%1.55% ローンチスプレッド(※1)35bps(0.35%)40bps(0.40%)45bps(0.45%)47bps(0.47%) ※1 出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2 新発10年国債利回りは便宜上、機構債の表面利率からローンチスプレッドを差し引いた数値としています。 5月 6月 7月 8月千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※3)1.82%1.89%1.84%1.89~1.97% ※3 出典)【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 新発10年国債利回りと機構債の表面利率の推移 新発10年国債利回りの上昇幅は、1.43%から1.55%へ0.12ポイントの上昇となりました。これに対して、機構債の表面利率は1.88%から2.02%へ0.14ポイントの上昇です。今月はほぼ同じ幅で動いたので、順当な結果と言えます。 機構債の表面利率と新発10年国債利回りの表面利率の差は“ローンチスプレッド”といわれます。機構債は35年という長期の住宅ローン債権を裏付けとしています。そのため、金利が一定以上出なければ、債券としての成立が難しくなります。 最近では、このローンチスプレッドが拡大傾向にありました。これは、住宅ローンを借りるわたしたちにとって、新発10年国債の利回りが上昇した際に、それ以上に住宅ローン金利が上昇する可能性が高まることを意味します。 4月0.35ポイント、5月0.40ポイント、6月0.45ポイントと約0.05ポイント幅で拡大し続けていたのですが、7月は0.47ポイントと上昇ペースが落ちたので、これは良い傾向です。 機構債と【フラット35】の金利推移 機構債の表面利率は1.88%から2.02%へ0.14ポイントの上昇に対して千日太郎の【フラット35】の金利予想は1.84%から1.89%へ0.05ポイントの上昇に抑えられるというものです。 この予想を支えているのは、過去2か月にわたって【フラット35】の金利が機構債の表面利率を下回っていることにあります。一言で言うと、住宅金融支援機構は収益性を問わず、低金利を続けているのです。 【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(詳細は後述)によると、住宅金融支援機構は、機関投資家に対して「機構債」と呼ばれる債券を販売することで資金を集め、その資金をもとに個人向けの住宅ローンを提供するという仕組みになっています。つまり、機構債の表面利率はいわば資金の仕入値にあたり、【フラット35】の金利が売値にあたります。 5月に発行された機構債の表面利率は1.65%で【フラット35】の金利は1.82%でした。これは、住宅金融支援機構が1.65%で資金を調達し、それを1.82%の金利で住宅ローンとして提供していることを意味します。 この差額は、住宅金融支援機構の運営費用やリスク管理などに充てられるものであり、利益を目的としたものではありません。実際、住宅金融支援機構は非営利の独立行政法人であり、営利を目的していない点にご留意ください。 一方で、5月に発行された機構債の表面利率は1.94%で【フラット35】の金利は1.89%でした。この差の0.05%は、住宅金融支援機構にとって純粋な損失となります。さらに6月も、機構債の表面利率が1.88%であるのに対し、【フラット35】の金利が1.84%となっており、0.04%の差が生じています。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? 住宅金融支援機構がどこまで金利を抑えるか?2つの予想シナリオ 千日太郎の予想としては、8月も収支がマイナスの状態を維持すると見ています。予想に1.89%~1.97%という幅を持たせているのには、それぞれの予想シナリオがあるためです。 シナリオ①「激変緩和」 これは、金利が急激に上昇した局面でも【フラット35】の金利上昇が1カ月あたり0.05ポイント程度に抑えられてきた過去の傾向を踏まえ、今月も同様の抑制が行われるとするシナリオです。 シナリオ②「マイナス幅の限度」 過去2か月、機構債と【フラット35】の金利差は0.04~0.05ポイントでした。7月に発行された機構債の表面利率が2.02%でしたから、仮にマイナス幅を0.05ポイントとすると【フラット35】の金利は1.97%になるというシナリオです。 【フラット35】の金利抑制と機構債との関係 【フラット35】の金利が長期金利や機構債の上昇に対して抑えられる傾向は、日銀がマイナス金利政策を解除した2024年3月19日から一貫して継続してきました。しかし、機構債の表面利率を下回る水準をつけたのは、2025年6月が初めてです。 このように金利を抑えられている主な理由は、住宅金融支援機構が国の政策実施機関に位置づけられる独立行政法人であり、営利を目的としない非営利団体であることにあります。とはいえ、収益が減少することが明らかな施策を行うことは、極めて異例な対応と言えるでしょう。 金利抑制の持続性と機構債の発行動向 このような状態はいつまでも続くとは考えにくく、いつかは終わるだろうと見ています。しかし、7月の機構債の発行額は605億円と、4,5月の102億円、6月の295億円から大きく増加しています。 日銀が利上げを開始してもなお、変動金利を選択する人の割合が増えつづけ、住宅金融支援機構の債権残高が減少傾向にありました。その中でのこの7月の発行額の増加は、【フラット35】の需要回復の兆しとも言えます。 【フラット35】を利用する立場としては、こうした低金利の傾向が少しでも長く続くことを期待したいところです。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(金利タイプ)」 【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み 住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。 出典)【フラット35】Qフラット35のしくみを教えてください。 この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入するので、その表面利率は新発10年国債の利回りに連動する傾向があります。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。