不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして資金を借りるローンのことです。無担保ローンに比べて、まとまった金額を低金利で借りられる一方、返済が滞ると不動産が競売にかけられるリスクもあります。 「住宅ローン返済中でも借りられる?」「家族名義の不動産でも使える?」など、気になるポイントも多いため、利用前に仕組みや特徴をしっかり理解しておくことが大切です。 この記事では、不動産担保ローンの仕組みやメリット・デメリット、必要書類や審査の流れまで、初めての方にもわかりやすく解説します。 不動産担保ローンとは 不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にして、資金を借りられるローン商品です。金融機関によっては、築古や第二抵当の不動産のほか、家族や法人名義の不動産も担保にできます。 また、不動産担保ローンは有担保ローンの一種で、不動産のほかに、有価証券を担保とする証券担保ローンや、企業の在庫や売掛債権を担保とする動産担保融資(ABL)などがあります。 有担保ローンに対して、テレビCMなどで見かけるカードローンやキャッシングなどは無担保ローンに分類されます。無担保ローンは、一般的に不動産担保ローンよりも金利が高く、借入可能額が少額となりますが、手続きが簡単で即日融資が可能な商品もあります。 不動産担保ローンのメリット 不動産担保ローンの金利は低い?他ローンとの比較 不動産担保ローンは、カードローンやビジネスローンなどの無担保ローンに比べて、金利が低く設定される傾向があります。これは、不動産という資産を担保にすることで、金融機関にとってリスクが低くなるためです。 実際に、日本貸金業協会が公表した令和7年6月の統計によると、無担保貸付の平均約定金利が15.07%であるのに対し、有担保貸付(住宅向を除く)の平均約定金利は3.73%と、大きな差があります。 出典)日本貸金業協会「月次統計資料 令和7年6月発行」 借入限度額はどれくらい?最大1億円以上も可能 不動産担保ローンでは、担保となる不動産の評価額に応じて、借入限度額が大きく設定されることがあります。一般的なカードローンの限度額が数百万円〜1,000万円程度であるのに対し、不動産担保ローンでは1億円以上の融資が可能なケースもあります。 事業資金・相続対策などでまとまった資金を確保したい方にとって、大きなメリットとなります。 返済期間は最長35年?長期借入のメリットと注意点 不動産担保ローンは、返済期間を長く設定できる点も魅力のひとつです。金融機関によっては、住宅ローンと同様に最長35年の返済期間を選べる場合もあります。 長期借入によって月々の返済負担を軽減できる一方で、返済期間が長くなるほど利息の総額が増えるため、借入前に返済シミュレーションを行い、総返済額や月々の負担を確認しておくことが重要です。 なお、カードローンなどで一般的に採用される「リボルビング方式」とは異なり、不動産担保ローンでは元利均等返済や元金均等返済などの方式が用いられることが多く、返済計画の立てやすさも特徴です。 不動産担保ローンのデメリット 借り入れまでに時間がかかる 不動産担保ローンは、カードローンやキャッシングなどの無担保ローンと比べて、融資までに時間がかかる傾向があります。無担保ローンでは、最短数分で審査が完了し、即日融資が可能な商品もありますが、不動産担保ローンでは与信審査に加えて、不動産の調査や評価が必要です。 そのため、スピードを重視する金融機関であっても、融資実行までには数日〜数週間程度かかるのが一般的です。ただし、すでに同じ金融機関で不動産担保ローンを利用している場合は、追加融資が比較的早く受けられる可能性もあります。 登記費用や手数料などの諸費用が発生する 不動産担保ローンでは、金利が低く設定されている一方で、さまざまな初期費用が発生します。主な費用には、事務手数料、不動産調査費用、印紙代、登記費用、司法書士報酬などが含まれます。 事務手数料は融資金額の数%で設定されることが多く、借入額によっては数十万円に達することもあります。さらに、担保設定に必要な登記費用や専門家への報酬を加えると、諸費用の総額は無担保ローンよりも高くなります。 そのため、低金利で借りられるメリットがあっても、総支払額では無担保ローンより高くなるケースもあるため、事前に費用の見積もりを確認しておくことが重要です。 返済不能時の競売リスクがある 不動産担保ローンでは、融資を受ける際に担保不動産に「抵当権」が設定されます。抵当権とは、債務者が返済できなくなった場合に、金融機関が不動産を売却して融資金を回収する権利のことです。 返済が滞ったからといってすぐに競売にかけられるわけではありませんが、延滞が続き、金融機関が回収困難と判断した場合には、競売手続きに移行する恐れがあります。 競売には、売却価格が市場価格より低くなる、所有権を失う、家族に知られるなどのリスクが伴うため、返済計画を慎重に立てることが求められます。 関連記事はこちら競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 不動産担保ローンの申し込みから融資までの流れ 不動産担保ローンの申し込みから融資実行までの一般的な流れは、以下の6ステップで進みます。 仮審査 面談・本申込 不動産調査 審査 契約 融資実行 ① 仮審査 まずは、金融機関のホームページや窓口から仮審査を申し込みます。仮審査では、簡易的な不動産査定と申込者の基本情報をもとに、融資の可否や概算の融資限度額が提示されます。 ② 面談・本申込 仮審査に通過すると、営業担当者との面談に進みます。面談では、申込書の記入や本人確認書類、不動産関連書類の提出が必要です。なお、面談を行ったからといって、必ず本申込をしなければならないわけではありません。 ③ 不動産調査 本申込後、金融機関が担保にする不動産について詳細な調査を行います。調査方法は金融機関や物件の種類によって異なり、現地訪問や内覧が必要な場合もあります。 ④ 審査 不動産調査と並行して、申込者の信用情報や収入状況などをもとに与信審査が行われます。審査結果に基づき、最終的な融資金額や適用金利が決定されます。 ⑤ 契約 審査に通過すると、金銭消費貸借契約や抵当権設定登記などの契約手続きに進みます。契約は金融機関の店舗で行うのが一般的ですが、希望すれば自宅や事務所での対応も可能な場合があります。 ⑥ 融資実行 契約完了後、指定された融資実行日に資金が振り込まれます。なお、事務手数料などの諸費用は融資金から差し引かれるため、別途現金を用意する必要はありません。 不動産担保ローンの必要書類一覧と準備のポイント 不動産担保ローンの申し込みには、本人確認や収入状況、不動産の権利関係などを証明するための各種書類が必要です。以下は、一般的に求められる書類の一覧です。 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) 実印 印鑑証明書 納税証明書、固定資産税納付書 収入証明書(源泉徴収票・確定申告書など) 不動産登記簿謄本 不動産権利証(登記識別情報) 借入残高証明書(他社借入がある場合) 商業登記簿謄本、決算書類、事業計画書など(法人の場合) 書類の提出タイミングと注意点 本申込時には、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類の提出が必要です。契約時には、印鑑証明書や実印を用意する必要があります。 審査の過程では、申込者の信用力を判断するために、納税証明書や固定資産税納付書、収入証明書などが求められます。また、担保となる不動産の状況を確認するために、不動産登記簿謄本や借入残高証明書の提出を求められることもあります。 金融機関によって異なる書類要件 必要書類は、金融機関の審査基準や担保とする不動産の種類によって異なる場合があります。特に法人名義の不動産を担保にする場合や、共有名義の物件を利用する場合は、追加書類が必要になることもあります。 事前に金融機関の担当者に確認し、漏れなく準備することで、審査や契約がスムーズに進みます。 不動産担保ローンの審査基準 不動産担保ローンの審査では、申込者の「信用力」と担保となる「不動産」の2つの要素を総合的に判断して、融資の可否が決定されます。 信用力の審査 個人の場合は、収入や年齢、過去の返済履歴、他社からの借入状況などが確認されます。法人の場合は、利益や財務状況、事業計画などが審査対象となります。 より詳しい審査項目や通過のポイントについては、以下の記事をご覧ください。 関連記事はこちら不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイント 不動産の審査 担保として提供される不動産が、対象物件として問題ないかを確認したうえで、担保評価額が算出されます。一般的に、不動産の価値が高いほど審査に通りやすく、借入可能額も大きくなります。 関連記事はこちら不動産担保ローンの担保評価額を解説!いくら借りられるかの目安を知る方法とは? 金融機関による審査基準の違い 同じ申込内容でも、金融機関によって審査結果が異なることがあります。ある金融機関では融資が難しい場合でも、別の金融機関では可能と判断されるケースもあります。銀行とノンバンクでは審査の傾向や基準が異なるため、複数の選択肢を比較することが重要です。 関連記事はこちら不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 不動産担保ローンの活用事例 まとまった資金を確保して資金繰りを改善 不動産担保ローンは、担保不動産の評価額に応じて高額な融資が可能であり、返済期間も長く設定できるため、資金繰りに余裕を持った調達ができます。特に、無担保ローンからの借り換えによって金利が下がれば、毎月の返済負担を軽減し、キャッシュフローの改善につながります。 ただし、返済期間が長くなるほど利息の総額は増えるため、借入前には返済シミュレーションを行い、総支払額を確認しておくことが重要です。 赤字決算でも事業資金を確保できる可能性 法人が赤字決算の場合、無担保での融資は難しいケースが多いですが、不動産担保ローンであれば、信用力だけでなく担保不動産の価値を加味して審査が行われるため、融資を受けられる可能性があります。 また、開業直後の法人や、これから創業する企業でも、事業計画や担保物件の内容によっては融資が可能なケースもあります。事業資金の確保手段として、不動産担保ローンは柔軟な選択肢となり得ます。 相続不動産を担保にして相続税や費用を準備 相続が発生すると、相続税や代償分割、遺留分の支払いなど、まとまった資金が必要になることがあります。相続財産の中に不動産が含まれている場合、その不動産を担保にすることで、相続に伴う費用を融資でまかなうことが可能です。 現金が手元にない場合でも、不動産担保ローンを活用することで、納税資金や分割資金を確保でき、円滑な相続手続きにつながります。 不動産担保ローンに関するよくある質問と回答 住宅ローン返済中でも借りられる?第二抵当権の活用 住宅ローンが残っている不動産でも、第二順位の抵当権を設定することで不動産担保ローンを利用できる可能性があります。ただし、住宅ローンの残債が多い場合は、担保余力が不足していると判断され、融資が難しくなるケースもあります。 関連記事はこちら住宅ローン返済中でも不動産担保ローンは使える?借り入れ可能な人の条件 本人以外の不動産を担保にできる?家族名義や法人名義のケース 親族や法人名義の不動産でも、一定の条件を満たせば担保として利用できる場合があります。その際、不動産の所有者が物上保証人や連帯保証人になることが求められるのが一般的です。 共有名義の不動産でも融資可能?必要な同意と保証人 共有名義の不動産を担保にする場合は、所有者全員の同意が必要です。また、共有者全員が連帯保証人となることが求められるケースが多いため、事前に関係者との調整が重要です。 信用情報に不安があっても融資可能?審査のポイント 信用情報に不安がある場合でも、融資を受けられる可能性はゼロではありません。金融機関によって審査基準が異なるため、ある機関で断られても、別の機関では融資が可能と判断されることもあります。 融資限度額はどれくらい?評価額と信用力で決まる 融資限度額は金融機関によって異なりますが、1億円以上の融資が可能なケースもあります。限度額は、申込者の信用力と担保不動産の評価額によって決定されるため、正確な金額を知るには金融機関への相談が必要です。 関連記事はこちら不動産担保ローンの相談でよくある悩みと解決策|第二抵当や信用情報に不安がある場合は? まとめ|不動産担保ローンのメリット・デメリットを理解して賢く活用 不動産担保ローンは、土地や建物などの不動産を担保にすることで、無担保ローンよりも低金利かつ高額な資金を長期間にわたって借りられるローン商品です。資金繰りの改善や事業資金の確保、相続税対策など、さまざまな目的で活用されています。 一方で、融資までに時間がかかることや、登記費用・手数料などの初期費用、返済不能時の競売リスクといった注意点も存在します。審査では、申込者の信用力と担保不動産の評価が重視され、金融機関によって基準が異なるため、複数の選択肢を比較することが重要です。 不動産担保ローンのメリット・デメリットを正しく理解し、自分の目的や状況に合った形で賢く活用しましょう。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 無料相談をしてみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローン金利の基礎知識と低金利で借りるコツ 不動産担保ローンの金利は、一般的に「○%~○%」というように上限と下限の金利が表示されます。このような表示は、申込金額等の条件によって適用金利が変わることを表しています。当然、ローンを借りる...