更新日: / 公開日:2019.02.26
不動産担保ローンを利用して資金調達するには、金融機関の審査に通過する必要があります。不動産担保ローンの利用経験がないと、審査がどのように行われ、どうしたら審査に通過できるかわからないかもしれません。また、不動産担保ローンの審査に通過しなかった人も審査基準を理解することで、何故審査に落ちたのかを理解できる可能性もあります。
この記事では、不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイントを解説します。
不動産担保ローンを申し込むと、金融機関は必ず審査を行ないます。金融機関は審査結果に基づいて、「お金を貸してもよいか?」「融資できる金額はどのくらいか?」といった判断をします。
不動産担保ローンの場合、審査の対象は融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産の価値」の大きく二つに分かれます。この審査基準を理解することで、審査に通過しやすくなるでしょう。
審査対象の1つ目は信用力です。これは、ローン商品において必ず審査をされる対象で、不動産担保ローンであってもその重要性は変わりません。信用力を計る代表的な指標としては、まず収入が挙げられます。収入とは個人であれば年収、企業であれば利益のことです。
当然、収入は多ければ多いほど信用力は高くなります。一方で、収入が多いかだけで評価されるわけではなく、「返済負担率」も重要なポイントです。返済負担率とは、借入金の返済額が収入に占める割合を示す指標で、「年間返済額」÷「年収」×100で求められます。例えば年収が500万円で、ローンの返済額が150万円のとき、返済負担率は30%(150万÷500万×100)になります。返済負担率が高くなるほど評価は悪くなり、審査に通過する可能性も低くなります。
過去にローンを借りたことがあれば、その返済状況も審査されます。ローンを借りたこと自体が評価を落とすわけではなく、ローンの支払状況が悪いことで信用力は低くなります。ローンを延滞したことが信用情報に登録されると、金融機関側は融資金の回収リスクが高いと判断するため、審査に通過したとしても融資条件が悪くなる可能性があります。
信用力の審査では、個人の場合は勤続年数、法人の場合は事業年数も審査されます。勤続年数が長くなるほど、安定した収入が継続的に得られているとみなされるからです。反対に、転職したばかりの個人や設立間もない法人は、収入に安定性がないと判断はされやすくなります。
不動産担保ローンの返済期間は、長期にわたることも多いため、年齢も審査項目になります。一般的な商品では、ローンを借りるときの「申込時年齢」や何歳までに完済する必要があるかという「完済時年齢」が定められています。
金融機関によって条件は異なりますが、申込時年齢が60歳から70歳、完済時年齢が70歳から80歳までに設定されていることが一般的です。高齢になることで返済負担率の面から厳しいだけでなく、そもそも申し込むことができない可能性もあります。
また、他の金融機関からの借り入れの有無と、その借入金額、何社からの借り入れがあるのかも判断基準になります。不動産担保ローンの借入希望額だけではなく、すでに借りている金額も合算して返済負担率を判断するため、合計の借入金額がいくらなのかも留意しておく必要があります。
審査対象の2つ目は不動産の価値です。借り入れの担保とする不動産の価値が高いほど審査に通りやすく、まとまった金額のローンが組めます。不動産の価値を求める際にはいくつかの基準があり、実際に取引される価格である「実勢価格」のほか、国土交通省が発表している「公示地価」、都道府県による「基準地価」、国税庁の「路線価」、市町村の「固定資産税評価額」、の5つの指標で評価されることから、「一物五価」とも言われます。
土地の評価は金融機関によって重視する基準も異なりますが、比較的よく用いられるのは国税庁の路線価です。路線価の正式名称は「相続税路線価」といい、相続税を算定するときに使う地価のことです。
一般的な不動産の売買価格は公示地価や基準地価に基づいて算定されており、路線価は公示地価、基準地価よりも低く、その8割程度とされています。つまり、路線価は、公示地価、基準地価より2割程度は割安に評価されているわけです。
不動産担保ローンの審査の際に実態よりも低い路線価が採用されている理由は、金融機関のリスクヘッジのためです。不動産担保ローンでは、融資金の回収が不可能となった場合に、担保不動産を売却することで融資金を回収します。
しかし、地価の値下がりなどによって不動産の価値が下落すると、担保不動産を売却しても融資金を回収できない恐れがあります。そこで、より保守的な価格である路線価を採用し、将来的に不動産の価値が値下がりをしても、融資金を回収できる可能性が高まります。
土地に比べて建物の評価の方法は少し複雑です。まず、建物の「再調達価格」を算定するところから始まります。再調達価格とは、その建物を新たに建築、購入した場合に必要となる金額のことです。そして、建物の「延べ床面積」や「法定耐用年数」などを用いて、建物の評価額を決定します。
ただし、建物の築年月が法定耐用年数を超えていると、建物の価格は0円とみなされることが多い点には注意が必要です。例えば、住宅用の木造戸建ての場合、国税庁が定める法定耐用年数は22年です。すると、築22年を超えた戸建ての建物価格は0円とみなされます。したがって、注文住宅などの比較的建物にお金をかけている建物だとしても、築年数が古いことで建物の評価は大きく下がります。
不動産担保ローンの審査に通過するためには、事前準備が大切です。必要書類を早く集め、担当者からの質問には正確に回答して、なるべく多くの情報を提供することを心掛けましょう。担保不動産の評価や信用力も大切ですが、担当者への対応も審査結果に影響を与えます。
一般的に、不動産担保ローンの審査に進むためには金融機関のホームページから仮審査を申し込む必要があります。仮審査に申し込むとフォームで入力した内容をもとに、金融機関の担当者が仮審査を行います。
仮審査の段階では一般的に、担保の対象となる不動産をそもそも取り扱えるのか、また、担保としたときに希望金額を融資することができるのかを主軸に審査します。仮審査に通過すると、金融機関の担当者との面談や借り入れの本申し込みに進みます。
本申し込みに進むと前述した信用力や不動産の価値の審査に入り、必要に応じて以下のような必要書類を準備することとなります。
納税証明書や収入証明書は、自治体の窓口で即日発行が可能です。住宅ローンが残っている不動産を担保にする場合は、住宅ローンを組んでいる金融機関に借入残高証明書の発行を依頼します。法人の場合は商業登記謄本や決算書類、事業計画書なども提出しなくてはなりません。
不動産登記簿謄本は法務局の窓口のほか、郵送やオンラインによる交付請求も可能です。固定資産税納付書は手元に保管しているかを確認し、見つからない場合は自治体の窓口で相談しましょう。
すべての必要書類を準備するには時間がかかるので、余裕を持って対応することが大切です。金融機関や条件によって、上記以外の必要書類もあるので、担当者に必ず確認しましょう。
金融機関は日々多くの相談を受けており、担保不動産や信用力の調査を徹底的に行うため、虚偽の情報は逆効果です。仮に審査に通過したとしても、融資実行後に嘘が発覚した場合は一括返済を求められる恐れもあります。不利になることも正直に伝えるなど真摯に対応することで、金融機関から信頼を得ることができ、結果として審査に通過しやすくなるでしょう。
また、個人事業主や法人の場合は、事業計画書の内容も重要です。金融機関の信頼を得られるように、客観的な事業計画を具体的に作成することも審査通過のポイントです。内容がわかりやすく、根拠をもとに作られた事業計画であれば、金融機関は審査しやすくなります。
事業計画書を提出する前には、専門家などに内容を確認してもらうといいでしょう。自分ひとりで事業計画書を作成すると、金融機関の印象を少しでも良くしたいという思いから、売上などの見通しが甘くなることも考えられます。専門家の視点を取り入れることで、実現可能性が高い、説得力のある事業計画を作成できます。
不動産担保ローンを申し込む人の中には、急ぎで資金を借りたい人もいるかもしれません。しかし、不動産担保ローンは即日や数日での融資には向いていない商品です。キャッシングやカードローンなどの無担保ローンでは、融資金額が比較的少額であり、収入証明書などの限られた書類を基に最短30分での借り入れが可能な商品性を持っています。
一方で、不動産担保ローンでは、前述の信用力や不動産の価値を審査するための書類だけでなく、実際に担保となる不動産を調査するために現地に赴くなど、無担保ローンにくらべて一定の審査期間が必要です。
そのため、スピード融資を謳っている金融機関でも、一般的には2週間程度の期間がかかると思っていた方が良いでしょう。
不動産担保ローンの審査の対象は、融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産の価値」であることを説明しました。しかし、審査通過のためには正確な情報を真摯に担当者に伝え、金融機関からの信頼を得ることが大切です。これらのポイントを踏まえたうえで不動産担保ローンの審査に進むといいでしょう。
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