2023.07.21

移住支援制度とは?移住先として人気の熱海を事例に紹介

公開日:2023.07.21

国は、地方での起業や東京圏からUIJターンにより起業・就業をする方へ支援金を支給する地方公共団体の取組を支援しています。この記事では、国による移住支援制度の一つである「移住支援金」について解説します。

移住支援制度とは?

移住支援制度とは、正式には「地方創生移住支援事業」という名称で、東京圏の一極集中是正と地方の担い手不足の解消を目的に創設されました。支援事業の詳細は、各地方自治体にゆだねられており、一律で決まっているものではありません。

対象者の詳細

各地方自治体によって詳細は異なるものの、一律の条件として定められているものは以下のとおりです。

  • 移住直前の10年間で通算5年以上かつ直近1年以上、東京23区内に在住または東京圏(条件不利地域を除く)*に在住し、東京23区へ通勤していた者。
  • 東京圏外または東京圏のうち条件不利地域の市町村に移住
  • 地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的企業などを実施

※東京圏及び条件不利地域の定義

東京圏及び条件不利地域の定義

出典)内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「移住支援金」

以上の条件には、「雇用者としての通勤の場合には、雇用保険の被保険者としての通勤に限る」や、「東京圏に在住しつつ、東京23区内の大学等へ通学し、東京23区内の企業等へ就職した者については、通学期間も本事業の移住元としての対象期間に加算可能」といった条件があります。詳細は国や地方自治体のホームページをご確認ください。

対象の要件

いつ移住しても対象になるわけではなく、以下のような条件があります。

  • 移住支援金の申請が転入後3か月以上1年以内であること。
  • 申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思があること

移住先の要件

詳細の条件は各地方自治体によって異なりますが、共通の条件として、以下の1~4のどれかに該当する必要があります。

    1.地域で中小企業等へ就業

  • 移住支援金の対象として都道府県のマッチングサイトに掲載されている求人に就業すること。
  • または、プロフェッショナル人材事業または先導的人材マッチング事業を利用して就業すること。
  • 2.テレワークによる業務継続

  • 自己の意思によって移住し、移住先で移住前の業務を引き続き行うこと。
  • 3.市町村ごとの独自要件

  • 市町村が地域や地域の人々と関わりがある者(関係人口)として認める要件を満たすこと。(要件は市町村によって異なるため、詳細は移住希望先都道府県・市町村へ直接お問い合わせください)
  • 4.地方創生起業支援事業を活用

  • 1年以内に起業支援金の交付決定を受けていること。

出典)内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生「移住支援金」

移住地希望ランキング1位は静岡県

これまで紹介してきた移住支援制度を受けて、移住地として人気のエリアを紹介します。地方移住(IJUターン)を支援する認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが実施したアンケートでは、移住希望地として静岡県が3年連続1位にランクインしています。

図:移住希望地ランキング(※セミナー参加者を除いた順位)

2020年2021年2022年
1位静岡県静岡県静岡県
2位山梨県福岡県長野県
3位長野県山梨県栃木県

出典)ふるさと回帰支援センターの移住希望地ランキング

ここからは移住先の例として、静岡県の代表的な都市である熱海市の特色や移住支援制度について紹介します。

熱海市ってどんな街?

まずは、熱海市の情報をご紹介します。

熱海市の基本情報

  • 面積:61.78km²
  • 人口:34,229人(令和5年5月末日現在)

2022年熱海市の年齢階級別の転入者推計数のデータを確認すると、「20~29 歳」の割合が高く、若手世代の移住先として支持されていることがわかります。

図:2022年熱海市の年齢階級別の転入者推計数

図:2022年熱海市の年齢階級別の転入者推計数

出典)2022年住民基本台帳人口移動報告(調査結果から著者が作成)

アクセス

熱海駅は、東京駅から東海道新幹線「ひかり」で最短38分、「こだま」でも45分~50分でアクセス可能です。近年、働き方改革によりリモートワークも普及し、通勤することが当たり前ではなくなりました。都心まで毎日出社しなくてもよい、都心では暮らしたくないが、都心の近くに住みたい、というニーズを持つ人は特に、熱海市は最適な都市と言えるのではないでしょうか。

熱海市の特徴

歴史ある温泉地

熱海市は、源泉総数が500を超える温泉場です。熱海温泉は、古来より療養地として人気で、かの徳川家康も訪れたと記録されています。熱海市史によれば、江戸時代、熱海には多くの文化人が訪れ、明和から慶応までの江戸時代約100年の間に代表的な紀行文だけでも36編存在すると言われております。

出典)熱海市「熱海の温泉」

花火大会

熱海市の海上花火大会は、1952年から開催されており、2023年夏で72年目を迎えます。熱海市の海上花火大会は、年間を通して10回以上開催します。熱海市観光協会の「アクセス・人気ランキング」においても、熱海市の海上花火大会は常に上位にランクインされており、熱海市の代表的なイベントとして位置づけられています。

出典)熱海市観光協会「熱海会場花火大会」

熱海市の温泉付き物件を取材

移住先として人気の静岡県、その代表的な都市である熱海市に、実際にどのような物件が販売されているのか、熱海駅に拠点を置く不動産会社(※)に取材協力をいただきました。この記事では、相模湾に面したオーシャンビューを楽しめるだけでなく、温泉を家で楽しめる特徴を備えた物件を紹介します。

物件概要

物件の写真

建物面積92.59m² (1階:52.85㎡ 2階:39.74㎡)
土地面積207.96㎡
場所伊豆山周辺、熱海駅から車で約13分
編集からひと言「伊豆山」は熱海市の中でも、頭一つ抜けたハイランクな土地と言われているそうです。

浴室には温泉が備え付きの場合もある

備え付き温泉の写真
上の写真では、左が温泉専用の蛇口、右が通常の蛇口となっています。このように、熱海では温泉付きの物件も珍しくはありません。今回取材した物件の温泉に関する主な条件は、以下のとおりです。

泉質ナトリウム、カルシウムが含まれた弱アルカリ性
温泉利用料月額7,040円 (10立米まで)
温泉更新料880,000円(税込)1口(10年毎に更新)

家で温泉を楽しむ上でのQ&A

取材協力させていただいた不動産会社の担当者に伺いました。

Q 温泉を維持するために配管清掃を行うなど、掃除は大変ではないのでしょうか?

A 温泉というと、湯の花(温泉の不溶性成分が析出・沈殿物)が出やすいと言われています。ただ、ユニットバスに温泉の湯の花の成分が染み出すことはないので、通常のお風呂掃除と同じで、温泉だから大変ということはありません。

Q 湯量制限とは何でしょうか?

A 本物件は、毎月10立米まで使用可能です。単純に「10」という数字を聞くと少なく感じるかもしれませんが、10,000リットルもの湯量を使用することができます。そのため、1日1回は温泉を楽しむことは可能で、特段湯量制限が生活の豊かさを損なうことはありません。

<取材協力>
株式会社エンゼル不動産 熱海店
〒413-0011 静岡県熱海市田原本町9番1号 熱海第一ビル2階
TEL:0557-85-5151

熱海市の支援制度を紹介

令和5年度の移住・就業支援金について紹介します。なお、令和5年7月時点の情報のため、変更が行われる場合もあるので、詳細は公式ホームページをご覧ください。

移住元の要件

要件1

以下の1,2のどれかに該当する必要があります。

  1. 熱海市へ移住する直前の10年間のうち通算5年以上かつ移住する直前に連続して1年以上、東京23区に在住していたこと。
  2. 熱海市へ移住する直前の10年間のうち通算5年以上かつ移住する直前に連続して1年以上、東京23区以外の東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)のうちの条件不利地域以外の地域に在住し、東京23区内の法人への通勤をしていたこと。

※「移住する直前の10年間のうち通算5年以上」は合算などでも算出することができます。

要件2

以下の1~3の全てに該当する必要があります。

  1. 暴力団などの反社会勢力又は反社会勢力と関係を有する者でないこと。
  2. 日本人、又は外国人で永住者、日本人の配偶者など、永住者の配偶者など、定住者、特別永住者のいずれかの在留資格を有すること。

  3. 移住する直前に在住していた市区町村において、最近1カ年市区町村税を滞納していないこと。

移住先の要件

就業に関する要件(一般の場合)

以下の1~7の全てに該当する必要があります。

  1. 勤務地が東京圏以外の地域又は東京圏内の条件不利地域に所在すること。
  2. 都道府県のマッチングサイトに掲載されている支援金対象求人に就業すること。

  3. 申請者にとって3親等以内の親族が代表者、取締役などの経営を担う職務を務めている中小企業などへの就業でないこと。

  4. 週20時間以上の無期雇用契約に基づいて中小企業などに就業し、かつ、申請時において当該中小企業などに連続して3月以上在職していること。

  5. マッチングサイトに求人が支援金の対象として掲載された日以降に同求人への応募をしたこと。

  6. 就業した当該中小企業などに、支援金の申請日から5年以上、継続して勤務する意思を有していること。

  7. 転勤、出向、出張、研修などによる勤務地の変更ではなく、新規の雇用であること。

起業に関する要件

静岡県が実施する地域創生起業支援事業に係る起業支援金の交付決定を1年以内に受けていることが必要です。

就業に関する要件(専門人材の場合)

プロフェッショナル人材事業又は先導的人材マッチング事業を利用して、令和3年3月1日以降に就業し、以下の1~5の全てに該当する必要があります。

  1. 勤務地が東京圏以外の地域又は東京圏内の条件不利地域に所在すること。
  2. 週20時間以上の無期雇用契約に基づいて就業し、申請時において連続して3カ月以上在職していること。

  3. 当該就業先において、移住支援金の申請日から5年以上、継続して勤務する意思を有していること。

  4. 転勤、出向、出張、研修などによる勤務地の変更ではなく、新規の雇用であること。

  5. 目的達成後の解散を前提とした個別プロジェクトへの参加など、離職することが前提でないこと。

就業に関する要件(テレワークの場合)

以下の1,2の全てに該当する必要があります。

  1. 所属先企業などからの命令でなく、自己の意思により住民票を熱海市に異動した場合であって、熱海市を生活の本拠とし、移住元での業務を引き続き行うこと。
  2. 内閣府地方創生推進室が実施する地方創生テレワーク交付金を活用した取組の中で、所属先企業などから資金提供されていないこと。

就業に関する要件(関係人口の場合)

以下の1~3の全てに該当する必要があります。

  1. 移住時の年齢が39歳以下であること。
  2. 熱海市に主たる事業所を有しかつ中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者及び社会福祉法人、医療法人、NPO法人などに就職し、かつ、申請時において当該中小企業者などに連続して3月以上在職していること。

  3. 当該中小企業などに、支援金の申請日から5年以上、継続して勤務する意思を有していること。

交付金額

支援金の交付金額は以下のとおりです。

区分支援金の額
単身での移住の場合60万円
2人以上の世帯での移住の場合100万円
18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合
(令和4年4月1日以降移住者が対象)
<令和5年3月31日以前の移住者>
18歳未満お一人につき30万円加算
<令和5年4月1日以降の移住者>
18歳未満お一人につき100万円加算

申請について

就業の場合熱海市へ転入後3カ月以上1年以内で、対象企業に就業して3カ月後から申請可能
起業の場合熱海市へ転入後3カ月以上1年以内で、静岡県の起業支援事業の交付決定から1年以内に申請可能

出典)熱海市「移住・就業支援金」

まとめ

移住支援制度は、地方自治体が主体となって実施します。実施期間、支給額等の制度の詳細は地方自治体により異なります。気になる移住先があれば、各地方自治体の移住支援制度のページをご確認ください。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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