物上保証人と連帯保証人の違いとは?

更新日: / 公開日:2020.01.07

「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保証人」「連帯保証人」では、責任範囲が異なることをご存知でしょうか。

この記事では、そもそも「保証人とは何か」や「物上保証人と連帯保証人の違い」について解説します。

そもそも保証人とは

そもそも保証人とは、債務者が債務不履行となったときに、その履行の責任を負う人です。融資とその返済を例に挙げると、債務者が返済できなくなった時に、債務者に代わって返済義務を負う人のことを言います。

ところで、何故保証人を立てる必要があるのでしょうか?例えば、金融機関から担保融資を受ける際、債務者本人が担保を提供して、その評価の範囲内でお金を借りることが一般的です。しかし、返済ができなくなった時に、担保の価値が減少していたら、金融機関は融資金を回収できなくなります。これは金融機関にとっての大きなリスクです。

このようなリスクを避けるために、保証人を立てることで、追加で担保を提供することや、債務を保証人が引き受けることができます。そのため、担保融資では、担保提供と共に保証人が必要になります。一方で、充分な担保が提供されている場合や、保証協会の保証付き融資などは、保証人が免除されることもあります。

出典)内閣府「保証人とは(法的整理)」

物上保証人とは

物上保証人とは、自分の財産を他人の債務の担保に提供する人のことです。あくまで「担保の提供」であり、債務を負担する訳ではないので、自身が提供した担保以上に返済の義務はありません。

担保融資を受ける際、債務者に担保として提供する物がない場合は、家族や親戚などが物上保証人になる方法もあります。その際は、物上保証人となることに同意し、本人の所有物である担保を提供することが必要です。物上保証人になると、債務者が返済できなくなった際には抵当権が実行され、自分が提供した担保の範囲内で物的有限責任を負うという特徴があります。

たとえば、債務者のAさんが3,000万円の借り入れを金融機関から行い、物上保証人のBさんが2,000万円の担保を提供したとします。債務者のAさんが返済できなくなり、債務不履行となった場合、金融機関は抵当権を実行して、物上保証人のBさんの担保から債権回収を行います。この場合、1,000万円の債務が残りますが、物上保証人のBさんは、残った債務まで返済する義務はありません。

連帯保証人とは

連帯保証人は、「催告の抗弁」「検索の抗弁」「分別の利益」という、通常「保証人」が持つ権利が認められない保証人のことです。順に説明します。

「催告の抗弁」とは、保証人が債権者から債務の履行を請求されたときに、まずは債務者に請求するよう求めることを指します。「検索の抗弁」とは、保証人が債権者に対し、債務者が弁済可能な資産などを所有しているときに、保証債務の履行を拒否できることを指します。「分別の利益」とは、保証人が複数存在する場合、その頭数で割った金額についてのみ支払義務が生じることです。

これらのことから、連帯保証人の責任範囲は債務者と同等となります。つまり、「連帯保証人」は、本来債務者が負担すべき債務についても、履行せざるを得なくなる恐れがあり、通常の「保証人」よりも重い責任が課されます。

物上保証人と連帯保証人の違い

債務者が債務不履行となった場合で考えてみましょう。物上保証人は自身が差し入れた担保の評価範囲内にのみ返済義務が生じます。一方で、連帯保証人は、債務者の債務が完済されるまで返済責任義務が生じます。つまり、担保提供の有無にかかわらず、金融機関に返済を命じられたら、すべての債務の返済義務が生じます。そのため、物上保証人と比べると責任範囲が広く、リスクも大きくなることがわかります。

このような違いがあるので、保証人となる依頼を受けている場合は、保証内容の範囲やリスクを充分理解しておく必要があります。安易に連帯保証人となることを引き受けないことが大切です。

不動産担保ローンでは保証人が必要?

不動産担保ローンでは、債務者の所有不動産である場合、保証人が原則不要という会社も多いです。なぜなら、担保として提供する不動産の評価が高ければ、債務者自身が責任を負うことができるからです。仮に債務不履行となったとしても、担保として提供している不動産の売却により、融資金を回収できるので、保証人は必要ないのです。

ただし、債務者以外の第三者から担保提供を受ける場合は、保証人が不要とは限りません。この場合、担保の提供者が物上保証人もしくは連帯保証人のどちらかになることが一般的です。

物上保証人になるか、連帯保証人になるかは、金融機関がリスクをどのように考えるかによって分かれます。物上保証人の場合、返済の責任は担保の評価内となります。そのため、債務不履行になったとき、担保の評価が債務残高を下回っていれば、残債分を回収できなくなります。

一方で、連帯保証人の場合、担保の評価が債務残高を下回っていたとしても、その残債までも支払う義務が発生します。このように、債務者自身の与信が低いと判断される場合などに、連帯保証人となることを求められるかもしれません。

まとめ

担保融資では、債務者以外の第三者から担保提供してもらう場合、担保の提供者に物上保証人または連帯保証人になってもらうことが一般的です。物上保証人の責任範囲が担保の評価内なのに対して、連帯保証人は債務が完済するまでが責任範囲となるので、連帯保証人のほうが物上保証人に比べると責任が重くなります。保証人の違いを正しく理解し、契約後に後悔しないよう気をつけましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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