がん団信は50%と100%のどちらを選ぶべき?

公開日:2025.09.10

住宅ローンを検討する際、「がん団信」に加入すべきか、また、加入するなら50%保障と100%保障のどちらを選ぶべきか迷う人は多いのではないでしょうか。がん団信は、がんと診断された場合に住宅ローンの返済負担を軽減できる保険であり、保障内容によって費用負担や保障範囲に差があるため、選び方が重要です。

この記事では、がん団信の基本的な仕組みから、50%・100%それぞれの保障内容、費用の違い、返済シミュレーションまで詳しく解説し、ライフスタイルやリスクへの備え方に応じた保障を選ぶためのヒントをお届けします。

がん団信とは

そもそも団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になったときに、住宅ローンが完済される保険です。

その中でも「がん団信」は、がんに特化した保障を受けられる団信で、がんと診断され所定の条件を満たした場合に、住宅ローン残高の一部または全額が保障されます。金融機関によっては、がん診断給付金や入院一時給付金などが支払われる場合もあります。

がん団信の種類

がん団信は主に50%保障と100%保障の2種類があり、それぞれ保障内容や費用負担が異なります。以下で詳しくみていきましょう。

がん50%保障団信

がん50%保障団信は、がんと診断され所定の条件を満たした場合に、住宅ローン残高の50%が保障されるプランです。保険料の上乗せ分が少なく、費用を抑えながら一定の保障を得たい人に適しています。金融機関によっては、金利の上乗せなしで提供される場合もあります。

がん100%保障団信

がん100%保障団信は、がんと診断され所定の条件を満たした場合に、住宅ローン残高の全額が保障されるプランです。住宅ローンの返済が不要になるため、治療費や生活費の不安を大きく軽減できるのが特徴です。

その分、保険料は高めに設定されており、一般的には金利が0.1~0.2%程度上乗せされます。毎月の返済額や総返済額がどれくらい増えるかを確認したうえで、加入を検討することが重要です。

がん団信とがん保険の違い

がん団信とがん保険は、目的や保障範囲が異なります。両者の違いを整理すると、以下のようになります。

がん団信住宅ローンの返済負担を軽減するための保険。
がんと診断された際に、ローン残高の一部または全額が保障されます。
がん保険医療費や収入減少への備えを目的とした保険。
診断一時金、手術給付金、入院給付金などが支払われます。

がん団信は住宅ローン返済に特化した保障であるため、医療費や生活への備えを重視する場合は、がん保険との併用も検討すると安心です。

がん団信の必要性

厚生労働省の調査によると、日本人の死因1位はがん(悪性新生物)で、全体の24.3%を占めています。また、国立がん研究センターの統計では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性63.3%、女性50.8%とされており、2人に1人ががんになる恐れがあることがわかります。

さらに、国立がん研究センターの「患者体験調査報告書」によると、がんと診断された勤務者の19.4%が「退職・廃業した」と回答しており、就労上の問題を抱えていることが報告されています。つまり、がんの罹患は健康面だけでなく、収入面にも大きな影響を与えることがわかります。

住宅ローンは長期にわたる返済が前提となるため、万が一がんに罹患した場合の返済リスクに備えることは非常に重要です。こうした背景から、がん団信への加入は、住宅ローン返済の不安を軽減するための、現実的な備えといえます。

出典)厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況

出典)国立がん研究センター「最新がん統計

出典)国立がん研究センター「患者体験調査報告書 令和5年度調査 p.47

がん団信は50%と100%のどちらを選ぶべき?

がん団信の50%・100%保障のどちらかを選ぶうえで、保障内容が手厚くなることに対して、月々の返済額がどれだけ増加するかを確認することは重要です。

4,000万円の住宅ローンを金利1%、返済期間35年、元利均等返済(ボーナス払いなし)で借り入れた場合のシミュレーションは下表のとおりです。50%保障団信は金利の上乗せはなし、100%保障団信は金利の上乗せを0.2%としています。

項目50%保障団信100%保障団信
上乗せ金利なし0.2%
月々の返済額112,914円116,680円
総返済額約4,742万円約4,900万円

このシミュレーション結果から、月々の差額は約3,766円、総返済額の差は約158万円です。この差額で、がん罹患時に住宅ローンの返済が全額免除されるかどうかが決まると考えると、保障内容の違いは非常に大きな意味を持ちます。

保険料の負担を抑えつつ最低限の備えをしたい人は50%保障団信、万が一の際に住宅ローン返済の不安を完全に取り除きたい人は100%保障団信が適しています。
たとえば、教育費などの支出が多い子育て世帯には50%保障団信が現実的な選択肢となり、収入減少のリスクに備えたい自営業者や単身世帯には100%保障団信が安心材料となるでしょう。

保障内容や金利の詳細は金融機関によって異なります。実際の条件を比較したうえで、住宅ローンの申込時に担当者へ相談することをおすすめします。

がん団信に加入する場合の注意点

がん団信に安心して加入するためには、以下の点に注意しておくことが大切です。

対象外となる期間および疾病がある

がん団信では、融資実行日から一定期間(例:90日以内)は「免責期間」となり、この期間中にがんと診断されても、保険金は支払われません。また、上皮内がんなど一部のがんは保障の対象外となることがあります。加入前に保障内容をよく確認しましょう。

生命保険料控除は使えない

がん保険の保険料は生命保険料控除の対象となり、所得税・住民税の軽減につながります。しかし、がん団信の保険料は金利に上乗せする形式で支払うため、控除の対象外です。

住宅ローンの返済が終了したら保障期間も終了する

がん団信の保障期間は、住宅ローンの返済期間と一致します。住宅ローン完済後もがんに備えたい場合は、医療保険やがん保険の加入を検討しましょう。

詳細な告知を求められる場合がある

がん団信では、一般的な団信よりも詳細な健康状態の告知が求められることがあります。診断書の様式や告知項目は金融機関によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

まとめ

がん団信では死亡または高度障害状態に加え、がんに罹患して所定の状態に該当した場合も保険金が支払われます。がん団信の50%保障と100%保障の違いは、費用負担と保障範囲にあり、どちらを選ぶかはライフスタイルやリスクへの備え方によって異なります。

手厚い保障を重視するなら100%保障団信、保険料を抑えつつ最低限の備えをしたいなら50%保障団信が選択肢となります。自分に合った保障を選ぶためには、金融機関の条件や自身の生活設計を踏まえて、じっくり比較・検討することが大切です。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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