2024年3月の日本銀行(以下、日銀)によるマイナス金利政策解除以降、段階的な利上げを背景に、現在住宅ローン金利の先行きへの関心が高まっています。 住宅ローンの金利タイプの選択や借り入れのタイミングを検討する際は、ネット上の噂や不確実な予測に惑わされず、金利決定のメカニズムと歴史的な推移を客観的に把握することが重要です。 この記事では、住宅ローン金利の主な変動要因、過去35年の金利推移、変動金利・固定金利の決定メカニズムの違いを踏まえ、「金利のある世界」において今取るべき具体的な戦略(ミックスローンの活用や団信の見直し)について解説します。 ■住宅ローン金利の仕組みと傾向 変動金利 固定金利(フラット35など) 金利変動の主な要因 日銀の政策金利 10年国債利回り(長期金利) 金利水準の傾向 固定金利と比べ低い 変動金利と比べ高い 変動の傾向 緩やかに変動する傾向がある(過去の傾向に基づく) 日銀の政策金利に先行して変動し、市場動向により急激に変動するリスクがある 住宅ローン適用金利が決まる仕組みと3つの変動要因 住宅ローンの適用金利は、変動金利型と固定金利型で決定のメカニズムが異なります。 適用金利を左右する主な要因は以下の3点です。 「短期プライムレート」と変動金利の連動 変動金利型の住宅ローン適用金利は、「短期プライムレート」に一定幅を上乗せした「基準金利」から「引下げ幅(優遇幅)」を差し引いて決まります。 <住宅ローン適用金利の決定イメージ(変動金利型)> ※住まいとお金の知恵袋編集部作成 短期プライムレートとは、金融機関が信用力の高い企業へ期間1年以内の短期貸し出しに適用する金利です。短期プライムレートは日銀の政策金利に連動する傾向にあるため、日銀が利上げを行うと住宅ローンの変動金利も上がる傾向にあります。 そのため、変動金利型を選択する場合は、日銀の政策金利の動向に注視が必要です。 「長期金利(10年国債利回り)」と固定金利(フラット35など)の連動 一方、固定金利型の住宅ローン適用金利は、「長期金利(10年国債利回り)」の動向に影響を受けます。 例えば、全期間固定金利型のフラット35の住宅ローン金利は、以下のメカニズムで長期金利に連動する傾向にあります。 長期金利とMBS(資産担保証券)の連動 フラット35の仕組みは、住宅金融支援機構が投資家向けに発行する証券「MBS(資産担保証券)」を通じて資金調達されます。投資家がこのMBSを買う際の利回りの基準(ベンチマーク)として参照されるのが、日本の長期金利です。この長期金利に「リスクプレミアム」分が上乗せされ、市場での需給を踏まえて「MBSの表面利率(投資家に支払う利息)」が決まります。そのため、長期金利が上昇すると、MBSの表面利率も連動して高く設定される傾向があります。 MBSからフラット35への波及 フラット35の住宅ローン適用金利は、このMBSの表面利率に、住宅金融支援機構のコストや金融機関の運営コスト・販売方針などを加味した上乗せ金利を反映して決定されるのが基本的な考え方です。なお、急激な長期金利の上昇局面などにおいては、激変緩和措置によりMBSの表面利率よりも住宅ローンの適用金利が低いこともあります。 <住宅ローン適用金利の決定イメージ(フラット35)> ※住まいとお金の知恵袋編集部作成 ※所定の条件充足で一定期間金利引下げ幅が適用(詳細はフラット35ホームページ参照) また、長期金利は、将来の景気や物価予測といった「市場の期待値」を反映して日々変動するため、日銀の政策金利に先行して上昇・下落し、市場動向によっては急激に変動することもあります。 米国債の金利動向が日本の住宅ローンに与える間接的な影響 日本の住宅ローン金利は、米国債の金利動向にも間接的な影響を受けます。 米国債の金利が上がると、投資家はより高い利回りを求め、米国債を購入する資金確保のため日本国債の売却圧力が高まります。 債券市場には「国債が売られて価格が下がると利回りが上昇する」という逆相関の原則があるため、日本国債の売却圧力はそのまま日本の長期金利上昇(=固定金利の上昇)へと直結しやすくなります。 フラット35など固定金利型の住宅ローンの利用を検討している場合は、日本の長期金利と併せて米国債の金利動向や米国の連邦準備制度理事会(FRB)による金融政策にも目を向けておくことが大切です。 過去35年で見る住宅ローン金利推移グラフ 過去35年の政策金利および住宅ローン金利の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「“金利のある世界”でどう変わる?これからの住宅ローン選びを考えよう」 バブル期の高金利(約8%)から超低金利時代への変遷 1990年のバブル期末期には、変動金利型(優遇前)の基準金利は8%を超える水準でした。その後のバブル崩壊と長期デフレを受け、日銀は1999年に「ゼロ金利政策」を導入し、以降、基準金利は2.475%の水準で長く高止まりしつつも、金融機関同士の顧客獲得競争や販売戦略などによって金利引下げ幅(優遇幅)が拡大したため、実際の適用金利は低水準で推移しました。 さらに、2016年に日銀が「マイナス金利政策」および「長短金利操作(YCC:イールドカーブコントロール)」を導入したことにより、政策金利だけでなく長期金利も強力に抑制され、固定金利であるフラット35の住宅ローン最低金利は一時1.0%を下回る歴史的な超低金利時代を迎えました。 この長きにわたる低金利トレンドの中、物価上昇を受けて2024年に日銀がマイナス金利政策を解除し、長短金利操作を終了したことが転換点となりました。その後、日銀が複数回にわたって利上げを実施し、結果として、変動金利・固定金利はどちらも上昇傾向に転じています。 変動金利と固定金利(フラット35など)の推移の違い 過去35年を振り返ると、変動金利と固定金利ともに低下傾向をたどりました。 変動金利は日銀の設定する政策金利に連動しますが、固定金利が連動する長期金利は市場取引で決まる点に違いがあります。市場動向によっては固定金利が大きく変動することもあります。 関連記事はこちら【2026年最新】フラット35金利推移グラフと今後の動向分析 今後の政策金利の見通しと中長期シナリオ 過去および今回の利上げペースから推測すると、今回の利上げ局面においても、日銀は景気動向を見極めながら慎重に利上げを実施すると見込まれます。 過去の利上げ局面では、2000年は0.25%程度、2006年~2007年は0.50%程度までの利上げに留まりました。今回は2024年3月から複数回利上げが実施され、2026年6月現在で政策金利は1.00%程度となっています。 過去の「利上げ局面(2000年・2006年)」金利上昇のペース 過去の利上げ局面では、急激な引き上げは実体経済へのショックが大きいため回避されています。 2000年8月:ゼロ金利政策を解除し0.25%程度へ引き上げ(翌年再利下げ) 2006年7月〜2007年2月:ゼロ金利政策を解除し0.50%程度まで段階的引き上げ(翌年再利下げ) 金利の引き上げは企業の設備投資意欲の減退や住宅ローン検討者の住宅購入意欲の減退を招く可能性があるため、日銀は景気動向を見極めながら0.25%刻みで慎重に実施する方針を採ってきました。 【2026年最新】日銀の利上げシナリオがもたらす実体経済への影響 以下は、2024年以降の日銀の利上げを時系列で整理したものです。(2026年6月現在) 年月 日銀の政策金利動向 2024年3月 マイナス金利政策を解除し、政策金利を0.10%程度に引き上げ(約17年ぶりの利上げ) 2024年7月 0.25%程度に追加利上げ(約15年ぶりの金利水準) 2025年1月 0.50%程度に追加利上げ(約17年ぶりの金利水準) 2025年12月 0.75%程度に追加利上げ(約30年ぶりの金利水準) 2026年6月 1.00%程度に追加利上げ(約31年ぶりの金利水準) 2024年3月にマイナス金利政策を解除してからは、一貫して利上げが続いています。 2026年6月の日銀の金融政策決定会合で1.00%程度への追加利上げが決定され、今後も「現在の金融環境が緩和的である」として、経済・物価・金融情勢に応じて利上げを継続する姿勢は崩していません。 一方で日銀は、中東情勢がもたらす経済や物価への影響を踏まえ利上げを検討する方針としています。 「変動」と「固定」の戦略的選び方 これまでの金利推移および今後の見通しを踏まえた住宅ローンの変動金利型と固定金利型の選び方として以下2つの戦略が考えられます。 教育費のピークから逆算した「ミックスローン」の活用 手厚い団信付き住宅ローンへの借り換えで保険料を圧縮 教育費のピークから逆算する「ミックスローン」の活用 『10年後に子どもの大学進学を控えている』など、将来まとまったお金が必要になる時期が予測できている場合、変動金利型と固定金利型を組み合わせる「ミックスローン」が戦略として考えられます。 ミックスローンとは、1人の契約者が異なる金利タイプを組み合わせて住宅ローンを組むことを指します。例えば、「借入金額3,000万円のうち、2,000万円を固定金利型(返済期間30年)、1,000万円を変動金利型(返済期間10年)」で住宅ローンを組むことが可能です。 変動金利型と固定金利型の比率は、「金利が上昇した際に、家計の余力でカバーできる金額」を変動金利型とし、絶対に増やしたくないベース部分を固定金利型にすることで双方のメリットを享受しつつ、無理のない返済計画が期待できます。 変動金利型:借入時の当初金利は低めだが、金利上昇で支払利息が増えるリスクがある 固定金利型:借入時の当初金利は高めだが、今後金利が上昇しても返済額は変わらない <10年後に子どもの大学進学で教育費がピークを迎える場合の例> 出典)SBIアルヒ株式会社「ミックスローンとは」 また、短期的には急騰しにくい変動金利型の住宅ローンを早期完済し、固定金利型で中長期的な金利上昇リスクを排除するミックスローンは、上述の金利見通しを踏まえた選択肢の一つといえます。 ただし、ミックスローンは住宅ローンを2本契約することになるため、印紙代や抵当権設定費用などの諸経費も原則2倍になります。また、将来借り換える際に抵当権が2本になっていると手続きが煩雑になるのもデメリットです。 この戦略は今後のライフプランが明確で、資金が必要になる時期が予測しやすい人に向いています。 手厚い団信を活用した保険料圧縮 2つ目の戦略は、手厚い団信付き住宅ローンに借り換えることによる保険料負担の圧縮を図る方法です。 金利が上昇傾向にある現在、単に『より低い金利に乗り換えて利息を減らす』という従来の方法では、借り換えのメリットを実感しにくくなっています。そこで、住宅ローン単体のコストダウンだけでなく家計全体の固定費削減を期待するのが、手厚い団信を活用し保険料を圧縮する戦略です。 一般的に、住宅ローンの借り換えにより返済負担の軽減が期待できる目安として、以下の三点が挙げられます。 借換前後の金利差1.0%以上 残返済期間10年以上 住宅ローン残高1,000万円以上 しかし、仮に借換前後の金利差が1.0%未満であってもメリットが出るケースがあります。 例えば、がん100%保障など保障が手厚い団信付きの住宅ローンに借り換えることで、別途加入している生命保険を解約・減額すると、家計全体の実質負担額を軽減することが可能です。 ここでは、以下の前提条件をもとに、別途加入の生命保険料も踏まえた実質負担額を試算します。 【前提条件】 <当初借入条件> 借入金額:3,000万円 金利:変動金利型1.5% 返済期間:35年 返済方式:元利均等返済・ボーナス払いなし 毎月の返済額:約9.2万円 別途加入保険(生命保険・がん保険)の支払保険料:月1万円 <借換条件> 借換金額:約2,297万円(借換時のローン残高) 金利:変動金利型1.2%(がん100%保障団信付き) 返済期間:25年 返済方式:元利均等返済・ボーナス払いなし 借換諸費用:約80万円 借換なし (金利1.5%) 借換あり (金利1.2%) 差額 毎月の返済額 約9.2万円 約8.9万円 ▲約0.3万円 毎月の支払保険料 約1.0万円 -(解約) ▲約1.0万円 借換諸費用 - 約80万円 +約80万円 残り25年の 実質負担額 約3,056万円 (総返済額約2,756万円 +支払保険料300万円) 約2,740万円 (総返済額約2,660万円 +借換費用80万円) ▲約316万円 出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 金利差が上述の目安に満たない0.3%分であっても借り換えに伴い保険契約を見直すことで、残り25年の実質負担額は約316万円減少となりました。 この戦略は、生命保険やがん保険に別途加入しており、保険料の負担が重いと感じている人に向いています。 なお、支出軽減効果は、借換前後の住宅ローンの条件や加入中の生命保険の内容によって異なります。金融機関や生命保険会社などに相談し、事前にシミュレーションを行ったうえで借り換えの判断を行うことが重要です。 また、借り換えには改めて健康状態の審査(告知)が行われます。現在の健康状態によっては、希望する団信に加入できない恐れがある点には注意が必要です。 関連記事はこちら住宅ローン借り換えの手数料・諸費用はいくら?費用対効果の考え方と注意点 まとめ 日銀がマイナス金利政策を解除した2024年3月以降、金利は上昇傾向が続いています。日銀は景気動向を見極めながら、慎重に利上げを検討すると見込まれます。ただし、経済・物価情勢によっては、今後も利上げを継続することも考えられます。 また、固定金利は長期金利に連動するため、日銀の政策だけでなく、海外の金利動向など市場の期待値によって急激に変動するリスクがある点も押さえておきましょう。 「金利のある世界」における住宅ローン選びは、単なる金利タイプや金利水準だけではなく、ライフプランに合わせた「ミックスローンの活用」や、「団信への切り替えを絡めた家計全体の固定費削減」といった、多角的な視点を持った戦略が不可欠です。まずは金融機関や専門家への相談を通じ、ご自身の家計状況に即したシミュレーションを精緻に行うことから始めましょう。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】2026年6月金利は3.21%に決定|公認会計士の予測と機構債分析)では、【フラット35】の2026年6月金利を3.02%~3.12%と予想し、3.21%となり予想レンジから外れる結果となりました。 まずは、最新の機構債と市場動向から分析した2026年7月の【フラット35】金利予想の結論をお伝えします。 2026年7月【フラット35】金利予想 予想レンジ:3.16%~3.26% 傾向:横ばい 要因:新発10年国債利回りの低下と逆ザヤの縮小 日本銀行(以下、日銀)は6月15、16日の金融政策決定会合(以下、会合)で、政策金利を1.00%程度へ引き上げる決定を行いました。通常、政策金利の引き上げは金利上昇要因と受け止められます。しかし今回は、利上げが事前に相当程度織り込まれていたことに加え、日銀が物価上振れリスクに対応する姿勢を明確にしたことで、金融政策が後手に回るとの警戒が和らぎ、新発10年国債利回りは会合後に一時低下しました。 一方で、住宅金融支援機構はここ数か月、【フラット35】金利を機構債表面利率より低く抑える「逆ザヤ」を縮小させています。新発10年国債利回りの低下がそのまま【フラット35】金利の低下につながるとは限らず、7月の【フラット35】金利は前月比横ばい圏にとどまると予想します。 この記事では、金利上昇の根拠となる国債・機構債の動きと、借り手にとって重要な「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の現状について解説します。 【フラット35】2026年6月金利予想の結果と検証 2026年6月の金利決定結果(3.21%) 2026年6月の【フラット35】金利は前月から0.50ポイント上昇の3.21%に決定し、5月下旬での予想レンジ(3.02%~3.12%)を上回る結果となりました。この予想は、機構債表面利率の0.35ポイント上昇に加え、直近の「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の縮小傾向を加味したものでした。 しかし、実際にはこの逆ザヤ縮小が想定の範囲を超え、0.50ポイントもの上昇となりました。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) このうち「新発10年国債利回り + ローンチスプレッド」は、機構債の表面利率として発表されます。つまり、金利予想において最も重要なのは、機構の裁量による調整幅(逆ザヤ)の動向です。 縮小する逆ザヤ 2026年5月まで新発10年国債利回りは上昇トレンドにあり、これに連動して機構債の表面利率も大きく上昇しました。その間【フラット35】の金利上昇は、機構債表面利率の上昇幅に比べ抑えられる場面がありました。結果として、過去12か月連続で【フラット35】の金利が機構債の表面利率を下回る「逆ザヤ」状態が維持されました。 2025年6月に0.05ポイントから始まった逆ザヤは拡大を続け、2026年2月には0.52ポイントに達しました。しかし、3月以降は縮小に転じ、6月時点では0.11ポイントまで縮小しています。 今はまさに住宅金融支援機構が、逆ザヤから0.10ポイント前後の利ザヤへ転換していく過程にあるとみています。そうだとすれば、調達金利の低下分がそのまま【フラット35】金利の低下に反映されるとは限りません。 ここまでの推移を踏まえ、次のようなシナリオが想定されます。 2月の逆ザヤ「0.52ポイント」で機構の許容上限を超えた 3月から逆ザヤから利ザヤへの正常化へ舵を切る段階 ただし、急激な金利上昇を避ける観点から、逆ザヤ縮小のペースに調整が入る可能性もある 機構債表面利率 vs 【フラット35】金利の推移(2025年4月以降) ※出典) ・住宅金融支援機構「既発債情報」 ・住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 ※上記出典を基に「住まいとお金の知恵袋編集部」作成 逆ザヤの推移(2025年4月以降) ※上記出典を基に「住まいとお金の知恵袋編集部」作成 【フラット35】2026年7月金利予想 2026年6月から7月にかけて、新発10年国債利回りは2.74%から2.62%(※)へ、0.12ポイントの低下となりました。これに伴い、機構債の表面利率は3.32%から3.21%へと0.11ポイントと同程度低下しています。 さらに逆ザヤから利ザヤへ推移していくペースを加味した、7月の【フラット35】金利予想の詳細は以下のとおりです。 ※10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】金利推移(直近3か月)と2026年7月予想 2026年4月 2026年5月 2026年6月 2026年7月 千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 2.49% 2.71% 3.21% 3.16%~3.26% ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:利ザヤへの転換を目前に0.05ポイント程度の逆ザヤを維持(3.16%) 下限の3.16%は、機構債の低下幅(0.11ポイント)を反映しつつ、逆ザヤを0.11ポイントから0.05ポイントに縮小する想定のシナリオです。 逆ザヤ幅は5月から6月にかけて0.15ポイントの縮小であったため、これと同程度の幅で縮小するならば、7月からは0.05ポイント前後の利ザヤへ転換することになります。しかしここで逆ザヤが維持されるとすれば、0.05ポイント前後ではないかとみています。機構債表面利率が低下した2025年6月から7月には0.05ポイント前後の逆ザヤが維持されました。 国民の住生活を支える公的使命を持つ住宅金融支援機構としては、調達金利が低下した局面であっても、直ちに利ザヤへ転換するのではなく、金利上昇後の利用者負担を見ながら段階的に正常化を進める可能性があると考えます。 シナリオ②:直前の逆ザヤ縮小ペースが続き、利ザヤへ転換する場合(3.26%) 上限の3.26%は、機構債の低下幅(0.11ポイント)を反映しつつ、6月時点の0.11ポイントの逆ザヤから7月時点には0.05ポイントの利ザヤへ転換する想定です。 5月から6月への逆ザヤ縮小は0.15ポイントでした。6月から7月も同程度の0.16ポイント縮小するとすれば、0.05ポイントの利ザヤへ転じて7月の【フラット35】金利は3.26%となります。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移(直近4か月) 主要データ(2026年6月19日時点) 機構債発表日 2026年3月18日 2026年4月17日 2026年5月21日 2026年6月19日 機構債の表面利率(※1) 2.79% 2.97% 3.32% 3.21% 新発10年国債利回り(※2) 2.24% 2.42% 2.74% 2.62% ローンチスプレッド(※1) 0.55% 0.55% 0.58% 0.59% ※1:出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2:10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 まとめ 6月の日銀の会合では政策金利が1.00%程度へ引き上げられました。通常、利上げは金利上昇要因ですが、今回は事前に相当程度織り込まれていたことに加え、日銀が物価上振れリスクに対応する姿勢を明確にしたことで、金融政策が後手に回るとの警戒がいったん和らぎました。 また、国債買入れ減額ペースへの過度な警戒も後退したことなどにより、新発10年国債利回りは低下し、機構債表面利率も前月から低下しました。 一方で、住宅金融支援機構が逆ザヤから利ザヤへ転換する過程にあるとすれば、調達金利の低下幅がそのまま【フラット35】金利の低下につながるとは限りません。機構債表面利率の低下と逆ザヤ縮小の継続が相殺し、前月比で横ばい圏になると見ています。 住宅ローンの決定は金利を当てるマネーゲームではなく、生活を守るための長期のプロジェクトです。重要なのは最終的な損得ではなく、金利が変動しても生活を安定して維持できるかどうかです。金利水準だけでなく複数の金利タイプで事前にシミュレーションを行い、自身のライフプランに合ったリスクの取り方で住宅ローンを選ぶ視点が求められます。 ※この記事は2026年6月19日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。 次に読むべき記事 【2026年最新】フラット35金利推移グラフと今後の動向分析 2026年現在、長引く低金利環境から一転し、フラット35の金利は急ピッチで上昇しています。「金利が上がっている」というニュースを見て、全期間固定金利の住宅ローンの動向が気になっている人もいる...
住宅の住み替えを検討する際に、「ダブルローン」という言葉を目にすることがあります。ダブルローンとは、旧居の住宅ローンを残したまま新居を購入し、一時的に2本のローンの契約・返済が重複する状態を指します。 仮住まいが不要になるメリットがある反面、一時的な返済負担率の上昇により家計の圧迫要因となるため、資金計画における慎重な判断が求められます。 ■本記事の結論(要約) ・ダブルローンの壁: 返済負担率の上限(目安:30〜35%)と旧居の売却リスクにより、審査は通常の住宅ローンよりも厳格化する傾向にある。 ・審査通過が難しい場合の代替手段: 自身の状況に合わせて「売り先行」「売却つなぎ融資」「買取保証」「住み替えローン」の4つから最適な手段へ方針転換する。 この記事では、ダブルローンの基本構造から金融機関の審査基準、そして審査の壁を越えられない場合の具体的な代替手段まで、詳しく解説します。 ダブルローンとは?発生するタイミングとペアローンとの違い ダブルローンとは、住み替えなどで一時的に2つの住宅ローンを同時に契約・返済する状態です。 「住宅ローンが2本」という共通点から、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約するペアローンとよく混同されますが、両者は仕組みや目的が異なります。 ダブルローンは、新居を決めてから自宅を売却する「買い先行」の住み替えで発生することが多いです。旧居の売却が完了し、その売却代金で旧住宅ローンを完済すれば、ダブルローン状態は解消されます。 よくある誤解:「ペアローン」との違い ダブルローンとペアローンの主な違いは以下の通りです。 ダブルローン ペアローン 内容 住み替えで一時的に2つの住宅ローンを同時に契約・返済する状態 夫婦や親子などがそれぞれ住宅ローンを契約・返済する状態 対象となる住宅 2つの住宅(旧居と新居) 1つの住宅 契約者(債務者) 1人 2人 ローンの本数 2本(旧居と新居) 2本(夫婦などがそれぞれ契約) 目的 「買い先行」による住み替えの円滑化 借入可能額の増加 ダブルローンは、「買い先行」による住み替えをスムーズに進めるために、1人の契約者が2本の住宅ローンを契約します。 一方、ペアローンは、1つの物件に対して、夫婦や親子などがそれぞれ住宅ローンを契約します。主に借入可能額を増やすことを目的に利用されます。 関連記事はこちら住宅ローンのペアローンと収入合算の違いとは? ダブルローンのメリット・デメリット ダブルローンを活用すれば、仮住まい不要で新居への引っ越しが可能です。 一方で、旧居の売却が完了するまでは住宅ローンの二重払いが発生するため、一時的に家計を圧迫する恐れがあります。 【メリット】仮住まい不要で新居へ引っ越し可能 ダブルローンのメリットは、旧居の売却完了を待たずに新居を購入、転居できる点です。これにより、仮住まいへの転居費用や賃料負担、引っ越し作業の労力を削減できます。 また、希望条件に合う物件が見つかったときに、旧居の売却を待つことなく、すぐに購入手続きに移行できるのもメリットです。 【デメリット】売却までの「二重払い」が家計を圧迫 ダブルローンのデメリットは、旧居が売れるまで住宅ローンの返済が二重になることです。一時的に返済額が膨らみ家計を圧迫します。 また、旧居の売却活動が想定より長期化した場合、手元資金が枯渇する恐れがあります。 収入や手元資金と返済額のバランス、旧居の売却時期などを検討し、計画的な売却活動と余裕をもった返済計画を立てることが重要です。 ダブルローンの審査は厳しい?審査に影響する2つのポイント 金融機関は貸し倒れリスクを回避するため、一般的にダブルローン状態での審査は通常の住宅ローン審査よりも厳しい傾向にあります。 金融機関の審査では、「返済負担率」と「旧居の売却予定の確実性」の2つがポイントです。 審査のカギ:「返済負担率」の上限(目安:30〜35%) 返済負担率とは、年収に対するすべての借り入れの年間返済額の割合です。住宅ローンの審査では、この返済負担率が重視されます。 金融機関によって基準は異なりますが、一般的には30%〜35%程度が上限の目安です。 住宅金融支援機構が提供するフラット35の基準を例に挙げると、年収400万円未満は30%、400万円以上は35%が上限と規定されています。 また、金融機関は将来の金利上昇リスクなどを加味し、実際の適用金利よりも高い「審査金利」を用いて返済負担率を算出することがある点にも注意が必要です。 【具体例での計算シミュレーション】 例えば、年収600万円の人が、旧居のローン(月8万円)と新居のローン(月10万円)を抱えた場合、年間の合計返済額は216万円(月18万円×12ヶ月)となります。この場合、返済負担率は36%(216万円÷600万円)となり、一般的な上限である35%を超過します。 <例:返済負担率の上限が35%の場合> 年収 新旧住宅ローン 年間合計返済額の上限額 400万円 約140万円(月額約11.6万円) 600万円 約210万円(月額約17.5万円) 800万円 約280万円(月額約23.3万円) 1,000万円 約350万円(月額約29.1万円) ※住宅ローン以外の目的別ローン(自動車ローンや教育ローンなど)の返済額も「年間合計返済額」に含まれる場合があります。 一般的な金融機関では、ダブルローン状態となることで返済負担率が基準を超過し、新居の住宅ローンを組めないケースが少なくありません。 関連記事はこちら住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介 関連記事はこちら【早見表】年収別・住宅ローンの借入適正額 審査の補完要素:旧居の完済予定(売却の確実性) ダブルローンの審査では、旧居が確実に売却できるかどうかも重要な判断材料になります。 売却代金で旧住宅ローンを完済すれば、ダブルローン状態が解消されて返済負担率が下がり、新住宅ローンの返済の確実性が高まるからです。 売却見込みが不透明と判断されると審査落ちのリスクもあります。売却の確実性を証明するために、金融機関から以下の書類などの提出が求められることがあります。 不動産会社との媒介契約書(すでに売却活動を開始している証明) 買主との売買契約書(引き渡し日が確定している証明) また、売出価格が市場相場から乖離しており、売却見込みが不透明と判断された場合においても審査落ちのリスクが高まります。 ダブルローンが組めない・難しい場合の「4つの代替手段」 ダブルローンを組むのが難しい場合は、以下4つの代替手段が考えられます。ご自身の状況に合わせ最適な手段への方針転換を検討しましょう。 売り先行での住み替え 売却つなぎ融資の活用 買取保証の活用 住み替えローンの活用 対策①「売り先行」での住み替えによる確実な資金計画 売り先行とは、旧居を売却してから新居を購入する住み替え方法です。 旧居の住宅ローンを完済してから物件を探すため、資金計画や返済計画に確実性が増し、新居の住宅ローン審査に通りやすくなります。 ただし、新居が見つかるまでの仮住まいの確保や引っ越し作業など、時間や手間がかかるのがデメリットです。 対策②「売却つなぎ融資」の活用による資金不足の解消 売却つなぎ融資とは、売却予定の不動産を担保にして、融資を受けられるローンです。 買い先行で住み替えをする場合、旧居の売却代金は新居の購入後に受け取ることになるため、新居の手付金や頭金などに使うことができません。 売却つなぎ融資を活用すれば、一時的な資金不足を解消できるため、住み替えを進めやすくなります。 ただし、売却つなぎ融資の金利水準は、短期間のつなぎ資金という性質上、一般的に住宅ローンより高く設定されており、取り扱う金融機関も限定される点に注意が必要です。 関連記事はこちらつなぎ融資とは?メリット・デメリットや利用時の注意点を解説 対策③「買取保証」の活用による期限を決めた売却 買取保証は、一定期間は不動産仲介会社等を通じて市場で売却活動を行い、一定期間内に買主が見つからない場合、あらかじめ約束した保証金額で不動産仲介会社等が物件を直接買い取る仕組みです。 「いつまでに・いくらで売れるか」が確定するため、新居の資金計画が立てやすくなります。 ただし、買取保証は取り扱っている不動産仲介会社が限られ、不動産仲介会社の買取保証金額は相場より安い価格になる傾向があり注意が必要です。 関連記事はこちら住み替えの方法と成功させるポイント 関連記事はこちら不動産買取保証とは?メリット・デメリットや注意点を解説 対策④「住み替えローン」の活用によるローンの一本化 住み替えローンとは、旧居の売却額が現在の住宅ローン残高を下回る「オーバーローン」状態の際に、旧居の残債と新居の購入資金を合算して新たに借り入れる住宅ローンです。 ダブルローンが「2本のローンを並行して返済する」のに対し、住み替えローンは「新たな1本のローンにまとめて返済する」という明確な違いがあります。 住み替えローンは、残債の返済に自己資金を充てる必要のない点がメリットです。 ただし、金融機関としては通常の住宅ローンと比べ貸し倒れリスクが高くなるため、住み替えローンにおいても金融機関の審査は厳しくなる点に注意が必要です。 また、旧居の売却と新居の購入を同時に進めることが求められるため、金融機関や不動産業者など複数の関係者と協力し計画的に進める必要があります。 まとめ ダブルローンは住み替えをスムーズに進められますが、一定期間は二重返済になるため大きな負担を伴います。また、一般的な金融機関では返済負担率の基準を超過する場合があり、審査落ちのリスクが高まります。 万が一ダブルローンでの審査通過が難しい、あるいは返済計画に不安が残る場合は、「売り先行」への切り替えや、「売却つなぎ融資」「買取保証」「住み替えローン」といった代替手段を検討し、無理のない資金計画へ方針を転換しましょう。 なお、金融機関によってローンの審査基準(審査金利の設定や既存ローンの扱いなど)は大きく異なります。まずは複数の金融機関へ事前審査を申し込み、ご自身の正確な借入可能額と選択肢を客観的に把握することから始めてみてください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込める?メリット・デメリットを解説 住宅ローンの審査に申し込んでも、必ずしもその金融機関で借りられるとは限りません。「1社だけの申し込みでは不安…」と感じる人もいるでしょう。実は、住宅ローンの本審査は複数の金融機関に申し込むこ...
「住宅ローンの返済負担軽減のために借り換えを検討しているが、手数料や諸費用がいくらかかるか気になる」という人もいるでしょう。借り換えによって金利は下がっても、手数料などを考慮すると費用対効果に見合わないこともあります。 実質的な金銭コストを把握・試算し、加えて時間的コスト(手間)を考慮した負担軽減効果を加味したうえで借り換えを判断することが大切です。 この記事では、住宅ローンの借換費用の内訳と相場、実質的な借換効果の試算方法を解説します。自身の状況に合わせた最適解を導き出すための判断材料としてご活用ください。 借換費用の内訳と相場 住宅ローンの借換費用は、借換時の残高や金融機関によって変動します。まずは自身の借入残高を基に概算費用を算出し、予算感を把握することが重要です。 借換先の金融機関に支払う費用 借換先の金融機関では主に以下の費用がかかります。 事務手数料 保証料 抵当権設定費用(登録免許税、司法書士報酬) 印紙税 団体信用生命保険料 事務手数料と保証料 住宅ローン契約時に借換先の金融機関へ事務手数料を支払います。支払方法には以下の2種類があります。 <事務手数料の種類> 特徴 費用の目安 定率型 借入金額に対して一定割合を支払う方式 借入金額×2.2%(税込)が一般的 借入金額に比例して高額になる 定額型 借入金額にかかわらず一定額を支払う方式 3.3万円(税込)~ 定率型は、借入金額が大きいほど手数料が増えることになりますが、余剰資金があり自己資金を充当して借入額を抑えることができれば、手数料を低減させることも可能です。また、定率型の方が定額型よりも金利が低い金融機関もあります。 さらに、金融機関によっては事務手数料に加えて保証会社宛ての「保証料」が必要です。保証料の支払方法には以下の2種類があります。 <保証料の種類> 特徴 費用の目安 一括前払い方式 (外枠方式) 借入時に現金で一括して支払う方式 借入金額と借入期間に比例して変動する 金利上乗せ方式 (内枠方式) 毎月の返済金利に一定割合を上乗せして支払う方式 適用金利に年0.2%程度の上乗せが一般的 事務手数料のみの場合もあれば、事務手数料と保証料の両方が必要な場合もあります。 初期費用を抑えたい場合は「定額型」や「金利上乗せ方式」が有効ですが、借入総額が増加する恐れがあります。事務手数料と保証料の合計額を算出し、自身の資金計画に沿った選択をしてください。 関連記事はこちら住宅ローンの事務手数料はいつ支払う?支払時期や負担を軽減する方法を解説 関連記事はこちら住宅ローンの保証料型と融資手数料型の違いとは? 抵当権設定費用 新たな借入先金融機関が不動産に抵当権を設定するための費用です。法務局へ納める「登録免許税」と、登記手続きを代行する司法書士への「司法書士報酬」で構成されます。 費用の目安 登録免許税 原則借入金額×0.4%(軽減措置適用の場合は0.1%) 司法書士報酬 5万円〜15万円程度(依頼先・地域により変動) 仮にローン残高2,000万円を借り換える場合、登録免許税は8万円(2,000万円×0.4%)です。 司法書士報酬は依頼先の事務所等によって異なりますが、手続きの確実性を担保するため、借換先の金融機関が司法書士を指定することが一般的です。 関連記事はこちら抵当権とは?根抵当権との違いや設定・抹消登記について解説 印紙税 借入金額に応じて印紙税がかかります。金銭消費貸借契約書に税額分の収入印紙を貼付するかたちで納めます。印紙税額は以下の通りです。 契約金額 印紙税額 1,000万円超 5,000万円以下 2万円 5,000万円超 1億円以下 6万円 出典)国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」 なお、Web上で電子契約をする場合は、紙の契約書がないため印紙税は不要ですが、電子契約手数料がかかることがあります。電子契約手数料は金融機関ごとに異なり、5,000円~1万円程度が目安です。 団体信用生命保険(団信特約料) 借換時には、原則として団信に再加入する必要があります。団信保険料は、適用金利に含まれていることも少なくありません。ただし、「がん団信」「8大疾病団信」など、特約を付加する場合は、適用金利に年0.1%〜0.3%程度が上乗せされるのが一般的です。 現在契約中の金融機関に払う費用 一方、現在住宅ローンを契約している金融機関に支払う費用は以下の通りです。 一括繰上げ返済手数料 抵当権抹消費用 一括繰上げ返済手数料 契約中の住宅ローンを全額返済(完済)する際の手数料です。金融機関や手続き方法(窓口、電話、Web)によって異なり、無料〜5万円程度が相場です。Web手続きを利用することで手数料を抑えられることがあります。 抵当権抹消費用 契約中の住宅ローンに設定されている抵当権を抹消するために、以下の費用がかかります。 費用の目安 登録免許税 不動産1件につき1,000円(土地1筆・建物1棟なら合計2,000円) 司法書士報酬 数万円程度~(依頼先によって異なる) 借換先の金融機関が指定する司法書士が、新たな抵当権設定と併せて抹消登記も担当するケースもあります。 借り換えの「経済的合理性」を判断する視点 諸費用を考慮したうえで、借り換えに経済的合理性(実質的な負担軽減)が生じる一般的な目安は以下の通りです。 当初借入金利と借換金利との差が1.0%以上 住宅ローン残高が1,000万円以上 住宅ローン残返済期間が10年以上 ※上記はあくまで目安であり、個別の条件や詳細なシミュレーションによって異なります。上記目安に当てはまらない項目がある場合においても、他の個別の条件や借換費用によっては経済合理性があることもあります。 借換費用を含めた「借換効果」の試算方法 借換費用を含めた実質的な借換効果は、以下の計算式で求められます。 借換効果 = (削減できる利息額) - (借換費用) ここでは、下記の前提条件をもとに、「借換費用を含めない試算」と「借換費用を含める試算」の2パターンの借換効果を比較します。 【前提条件】 <当初借入条件> 借入金額:3,000万円 金利:変動金利型1.7% 返済期間:35年 返済方式:元利均等返済・ボーナス払いなし 毎月の返済額(借換前):9万4,822円 <借換条件> 借換金額:2,317万円(借換時のローン残高) 金利:変動金利型1.0%※金利は将来にわたり変動しないと仮定 返済期間:25年 返済方式:元利均等返済・ボーナス払いなし <主な借換費用> 借り換えに伴う諸費用が以下のとおり約80万円発生し、あわせて団体信用生命保険の特約により年0.2%の金利上乗せがあるケースを想定します。 事務手数料:51万円※ローン借入金額(残高)×定率2.2%(税込)の概算額 保証料:なし 抵当権設定費用:20万円(登録免許税9万円+司法書士報酬11万円) 印紙税:2万円 8大疾病団信:年0.2%の金利上乗せ 一括繰上げ返済手数料:3.3万円 抵当権抹消費用:3.7万円(登録免許税0.2万円+司法書士報酬3.5万円) <借換費用を含めない試算結果> 借換なし (金利1.7%) 借換あり (金利1.0%) 差額 残り25年の 総返済額 約2,845万円 約2,620万円 ▲約225万円 毎月の返済額 9万4,822円 8万7,321円 ▲7,501円 出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 借換費用を含めないで試算すると、総返済額は約225万円、毎月の返済額は約7,500円の減少となりました。 <借換費用を含めた試算結果> 借換なし (金利1.7%) 借換あり (金利1.2%) 差額 残り25年の 実質負担額 約2,845万円 約2,764万円 (総返済額約2,684万円 +借換費用約80万円) ▲約81万円 毎月の返済額 9万4,822円 8万9,435円 ▲5,387円 出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 一方、借換費用を含めて試算すると、実質的な負担軽減額は約81万円、毎月の返済額は約5,400円の減少となりました。 このように、借換費用を含めるか次第で試算結果は大きく変わります。表面的な金利だけで判断せず、借換費用も含めた実質的な借換効果を確認することが大切です。 また、今回の試算では借換後の金利変動を考慮していませんが、変動金利へ借り換えた場合は金利変動による返済額変動の可能性があります。金利変動の影響や固定金利への借り換えのシミュレーションについては、以下の記事で説明をしていますので、ご参考にしてください。 関連記事はこちら住宅ローン借り換えシミュレーション | 金利上昇局面における「変動」と「固定」の比較 借換費用試算で見落としがちなポイント 住宅ローンの借換費用を試算する際に、見落としがちなポイントは以下の3つです。 戻り保証料(返還保証料)の有無 住宅ローン控除への影響 手続きにかかる時間的コスト 戻り保証料(返還保証料)の有無 契約中の住宅ローンで保証料を「一括前払い方式(外枠方式)」で支払いしている場合、借換時に一括繰上げ返済を行うことで保証料の一部が返還される可能性があります。 ただし、返戻の計算手続きにおいて、所定の保証会社事務手数料や振込手数料が差し引かれるのが一般的です。 戻り保証料(返還保証料)があれば、借換費用の補てんになるため、借り換えのハードルを下げるプラス要因となります。契約中の住宅ローンで保証料を一括払いしている場合は、あらかじめ戻り保証料(返還保証料)の有無と金額を確認しましょう。 住宅ローン控除への影響(借入期間要件など) 以下2つの要件を満たせば、借換後も引き続き住宅ローン控除を受けられます。 新しい住宅ローンが当初の住宅ローンの返済のためのものであること 新しい住宅ローンが住宅ローン控除の対象要件に当てはまること 出典)国税庁「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」 上記の証明として、新しい住宅ローンで当初の住宅ローンを一括返済したことがわかる書類を残しておきましょう。 また、住宅ローン控除には「返済期間が10年以上あること」などの要件があります。借り換えのタイミングで返済期間が10年未満になり控除を受けられなくなると、実質負担軽減効果が低下してしまうので注意が必要です。 関連記事はこちら【令和7年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 手続きにかかる「時間的コスト(手間)」 借り換えには、事務手数料や保証料など金銭的コストだけでなく、各種証明書の取得手続き、審査申込手続き、面談などの「時間的コスト(手間)」を要します。また、手続きの進め方によっても手間の内容が異なります。 対面型:担当者に直接相談できるが、金融機関の店舗に出向く必要がある Web完結型:来店不要で手続きがWeb上で完結するが、必要書類のアップロードや規定の確認など、自身で管理・進行する必要がある サポートの必要性や自身が手続きに割ける時間を考慮して選択することが、スムーズな借り換えの鍵となります。 まとめ 住宅ローンの借り換えは、表面的な適用金利の水準だけを見て判断してはなりません。事務手数料や保証料、抵当権設定費用といった諸費用を踏まえ、実質的にどれだけの負担軽減効果があるかを試算することが求められます。 また、金銭的なコストだけでなく、契約手続きの手間といった時間的コストも考慮し、自身にとって最適な借換計画を検討しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説 最近の金利上昇を受けて、「変動金利のままで大丈夫?」「固定金利に変えたほうが安心?」と悩む人も多いのではないでしょうか。 この記事では、変動金利から固定金利への借り換えが住宅ローンの返済額に...
「住宅ローンの返済が厳しくなってきた」 「老後の生活資金や事業資金が必要だが、愛着のある家は離れたくない」 「引っ越しをする費用も体力もないし、家族の生活環境も変えたくない」 これらの悩みへの選択肢の一つとして、自宅を売却した後も賃貸として住み続けられる「リースバック」が検討されることがあります。リースバックは有効な資金確保の手段になり得る一方、契約条件の理解が不十分なまま進めると、後々想定と異なる結果となることがあります。 この記事では、目先の金額だけに偏らず、生活再建に向けた資金計画の観点から、リースバックの正しい選び方と注意点を解説します。 ※本記事は、当社グループ会社であるSBIスマイル株式会社のサービスについてご紹介するPR記事です。 1.SBIスマイルの担当者が解説:リースバックと他の資金調達の違い 持ち家を活用して資金を調達する方法には、リースバックの他にもいくつかの選択肢があります。まずはそれぞれの性質の違いを正しく把握しましょう。 ■不動産担保ローン 自宅を担保にお金を借りる方法です。 主なメリット:自宅の所有権を手放すことなく、まとまった資金を調達できます。 留意点・制約:金融機関による厳格な融資審査があり、融資額は物件や条件等により異なりますが、目安として評価額の5〜7割程度にとどまることが一般的です。また、何より「新たな借り入れ(毎月のローン返済)」が増えるため、すでにキャッシュフローが厳しい状況での抜本的な生活再建には不向きな側面があります。 ■リバースモーゲージ 自宅を担保に融資を受け、毎月利息のみを支払い、契約者が亡くなった際に家を売却して元本を返済するシニア向けの仕組みです。 主なメリット:毎月の支払いを利息のみに抑えられるため、老後の生活資金を確保しながら今の家に住み続けられます。 留意点・制約:対象年齢の条件に加え、「対象物件が首都圏や主要都市などに限られる」といったエリア制限が設けられているケースが多く、将来の金利上昇リスクなども考慮する必要があります。 ■リースバック 自宅を不動産会社に売却してまとまった現金を確保し、その後は「家賃」を払って今の家に住み続ける仕組みです。 主なメリット:ローンではなく「資産の売却」であるため、新たな借り入れをせずに財務状況の見直しを進めることができます。また、自宅の所有権はリースバック事業者に移転するため、固定資産税や修繕積立金といった所有者としての直接的な支払いが不要となり、毎月の支出が賃料に一本化されるため、資金管理をシンプルにしやすい点も特徴です。 留意点・制約:自宅の所有権がリースバック事業者に移転することに伴い、前述の通り直接的な維持費の支払いはなくなりますが、これらは月々の賃料設定に一定程度織り込まれる形となります。また、一般的な不動産売却(仲介)に比べて「買取価格は市場相場より低くなる」傾向があるほか、取扱会社や物件の状況、エリアによっては対応できないケース(エリア制限)も存在します。 このように、それぞれの性質は大きく異なります。新たな借り入れ(返済負担)を増やすことなく、まとまった資金を得て生活を再構築したいという場合には、リースバックが有効な選択肢の一つとなります。 2.リースバック選びの注意点:「高く売れる=正解」ではない理由 リースバックを検討する際、「自分の家がいくらで売れるのか(買取価格)」に目が向きやすいものです。もちろん、手元に入る現金が多いに越したことはありません。 しかし、ここに大きなリスクがあります。それは、リースバックの仕組み上、「買取価格が高いほど、その後の毎月の家賃も高くなる」傾向があるという点です。 リースバックを利用する目的には、「目先の現金の確保」だけでなく、「無理のない範囲で生活や資金計画を整えること」もあると考えられます。一時的にまとまった資金が手に入っても、毎月の家賃負担が重いと、遠くない将来に生活が立ち行かなくなる恐れがあります。 買取価格だけでなく「家賃」と「契約形態」を確認する 比較検討すべきは、長期的な収支のバランスです。さらに「賃貸借契約の契約形態」も極めて重要です。 リースバックを提供する会社の中には、期間満了によって退去の可能性がある「定期借家契約(2年・3年など)」を採用しているケースがあります。長く住み続けたい場合は、原則として更新が認められ、借主の居住権が保護されやすい「普通借家契約」を結べるかどうかが、将来の安心を左右する大きな鍵となります。 3.結論:生活再建という「長い軸」で選ぶなら、SBIスマイル ここまでお伝えした通り、リースバックを検討する際は、「無理のない家賃」と「長く住み続けられる権利」といった観点が重要です。 このような観点を踏まえ、短期的な資金化にとどまらず、お客様の長期的な安心を見据え、金融グループとしての立場でサービスを展開しているのが、東証プライム上場グループであるSBIスマイルのリースバック「ずっと住まいる」です。同社が展開するリースバックの主な特長は、以下の3点に集約されます。 ①「安くて、ずっと変わらない家賃」を優先する経済合理性 多くの不動産会社が「売買金額」を重視する中、SBIスマイルは買取価格と賃料のバランスを踏まえ、「月々の家賃を周辺の賃料相場よりも低く設定する(※1)」という提案を行います。さらには、「契約開始から将来にわたって、家賃が値上げされない(※2)」という点も大きな特長です。 短期的な資金化にとどまらず、お客様に5年、10年と長く安定して住み続けてもらうことを前提としているからこそできる、生活再建の一助となり得る仕組みです。 ※1 家賃は物件・エリア等により異なります。比較対象となる賃料相場や条件は個別にご確認ください。 ※2 ご選択いただく契約内容により家賃の取扱いは異なります。適用条件等の詳細は契約時にご確認ください。 ②「普通借家契約」と「更新料ゼロ」 終の棲家としての安心 SBIスマイルは、お客様の住む権利を守るため原則として「普通借家契約」を締結します。 それに加え、賃貸借契約の更新時にかかる更新料が「無料(ゼロ)」です。家を売却した後も「仮住まい」ではなく「終の棲家」として、長期的な居住を見据えた住まい方を検討できる点が特長です。 ※更新の可否は契約条件および借地借家法等の法令によります。賃料不払いなどの重大な契約違反がある場合や、建物の著しい老朽化等により貸主からの更新拒絶に正当事由が認められる場合は、更新できないことがあります。 ③SBIグループの資本力と、建築士による「品質へのこだわり」 なぜ、SBIスマイルは家賃を安く固定し、更新料まで無料にできるのか? それは、同社が東証プライム上場のSBIグループの一員として、短期的に収益確保を最優先にするのではなく、お客様に長期間安定して住み続けていただくための長期的な視点に基づいた賃貸運用を行っているからです。 目先の利益率にとらわれず、お客様との長期的な信頼関係を築く資本力と体力があるからこそ、生活再建の一助となり得る仕組みが実現できています。 また、契約前にはグループの建築士が建物を検査し、入居後のトラブルを未然に防ぐ配慮も徹底されています。水回り等のリフォーム相談にも柔軟に応じるなど、マニュアル通りではない「オーダーメイドの提案力」が強みです。 4.まずは「今の家での新しい暮らし」をシミュレーションしてみませんか? リースバックは、家を「売って終わり」ではなく、その先の「暮らし」を再構築するためのスタートです。少しでもご興味があれば、まずはSBIスマイルに相談してみてください。 「自分の家の場合、いくらで買い取ってもらえて、毎月の家賃はいくらになるのか?」 この具体的な数字を知ることが、不安を安心に変える第一歩です。 対面不要で、営業時間内の問い合わせであれば最短即日で仮査定の結果がわかります(※ただし物件や状況により異なります)。もちろん相談や査定は無料です。まずは以下のフォームから、あなたの状況に合わせた無理のないシミュレーションを受け取ってみてください。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。 ※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。
宅地建物取引業者(以下、事業者)が入会する業界団体としては、全日本不動産協会(以下、全日)と全国宅地建物取引業協会連合会(以下、全宅連)が代表的です。 事業者が開業する際は、保証協会との関係上、いずれかの業界団体へ入会するケースが一般的です。開業後の事業運営を円滑に進めるためにも、それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った団体を選ぶことが重要です。 また、消費者としても業界団体の会員である事業者と取引することでメリットもあります。 この記事では、全日と全宅連との違いや事業者および消費者としてのメリットを整理したうえで、今回は全日の基本概要や入会手続きの流れをわかりやすく解説します。 ※本記事で紹介している『全日ローンコンシェルジュ』は、全日とSBIアルヒ株式会社・SBIエステートファイナンス株式会社の提携によるサービスです。 全日 全宅連 シンボルマーク うさぎマーク ハトマーク 加盟数 約3万7,000社 約10万社 特徴 開業支援や会員向けシステムなど、 実務面のサポートに特徴 会員数が多く地域ネットワークの 広さが特徴 全日本不動産協会(全日)の基本概要と保証協会の役割 今回は、全日の基本概要を確認します。 シンボルマーク「うさぎ」に込められた理念と安心感 全日は、1952年に建設大臣(現在の国土交通大臣)の許可を受けて設立された不動産業界団体です。2013年からは内閣総理大臣認定の公益社団法人として活動を開始しました。宅建業の健全な発展を目指し、全国規模で活動しています。 全日は会員事業者に対する研修や情報提供を通じて、適正な不動産取引の推進や不動産流通の円滑化を支援しています。 また、全日のシンボルマークは情報を的確にキャッチする耳、未来を見る眼、躍進するジャンプ力ある足を備えた「うさぎ」です。 オレンジ色は明るい未来を、緑色は豊かな大地と自然を表現されています。 変化の多い不動産業界において、「法改正や市場動向を的確に捉えながら事業成長を目指す」という理念を表現したシンボルマークといえます。 消費者としては、事業者が全日の会員であることを「うさぎ」のシンボルマークで識別できます。 出典)公益社団法人 全日本不動産協会「協会シンボルマークとラビーちゃんについて」 宅建業の必須インフラ「レインズ(REINS)」の利用 事業者が全日や全宅連に加盟することで、「レインズ(REINS)」や大手民間ポータルサイトとの連携機能などを利用でき、営業活動の効率化を実現できます。 レインズは、国土交通大臣から指定を受けた「不動産流通機構」の運営する物件情報や取引事例の不動産業者間におけるスムーズな共有が可能なシステムです。消費者としてもレインズを有効活用できる事業者であれば効率的な取引が期待できます。 出典)公益財団法人 東日本不動産流通機構 東日本レインズ「レインズってなに?」 最新法令に対応した契約書式のダウンロード機能 全日および全宅連では、最新法令に対応した契約書式を会員事業者向けに提供しています。民法改正や宅建業法改正などが行われた際には最新法令に対応した書式を使用する必要があります。全日や全宅連の会員になることで必要な書式をダウンロードできるため、法改正対応の負担軽減につながります。 「全日 書式」や「全宅連 書式」と検索される背景には、このような実務対応へのニーズがあります。 特に独立開業直後は、契約書作成や条項確認に不安を感じるケースが想定されるため、最新の法令に対応した契約書式を利用できる点は、事業者にとって実務上の安心材料といえます。 宅地建物取引業保証協会の役割と入会メリット 事業者は、宅建業法の規定に基づく「宅地建物取引業保証協会(以下、保証協会)」にも入会することが一般的です。全日に入会した場合は、「不動産保証協会」に入会することになります。この「不動産保証協会」は、全日を母体として設立された保証協会です。各種保証制度を実施し、消費者保護を推進するとともに、宅建業法の適正な運営と取引の公正を確保することを目的として活動しています。 全宅連に入会した場合は、「全国宅地建物取引業保証協会」に入会することになります。 保証協会・事業者・消費者の関係図 ※住まいとお金の知恵袋編集部作成 保証協会に入会し弁済業務保証金分担金を納付することで、事業者は営業保証金の供託が免除されるメリットがあります。その他、研修や講演を受講することができ、法改正の最新情報などを把握することができます。 消費者としても保証協会に入会した事業者と取引するメリットがあります。 例えば、不動産の売買契約時に「手付金」を事業者に預けることがあります。万が一、契約直後に事業者が倒産するなど不測の事態で手付金が返還されない場合において、損害額の還付にかかる弁済業務の対応を保証協会に申請することができます。 全日本不動産協会(全日)と全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)の違い 次に、事業者から見た全日と全宅連の違いを確認していきます。 組織規模の比較 全日の会員数は約3万7,000社で、全宅連と比較すると規模は小さいものの、全国本部の方針に基づき各都道府県の地方本部が運営され、全国で統一的な運営が実施しやすい体制といえます。 全宅連は、全日と同様に公益社団法人として不動産業界の健全化を目的に活動している不動産業界団体です。全国47都道府県の宅建協会を傘下にもつ連合会組織で、約10万社が加盟する最大規模の団体です。 また、全宅連のシンボルマークは「ハト」です。 2羽のハトは、全国10万社にのぼるグループ会員と、その先にいる地域の人々が、ともに繁栄し同じ方向を向いて未来へ進んでいくことを表現しています。 色については、太陽を象徴する赤、大地を表す緑、そして取引の公正を意味する白として表現しています。 消費者としては、事業者が全宅連の会員であることを「ハト」のシンボルマークで識別できます。 出典)公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会「新しくなったハトマークのご紹介」 入会費用・ランニングコストは全日が抑えやすい傾向 全日、全宅連いずれも入会費や年会費などのランニングコストがかかります。また、それぞれ入会する保証協会や関連団体が指定されており、それらの入会金などでも差が生じます。 金額は各都道府県によって異なるため、各地域の窓口で確認する必要がありますが、全日のほうが全宅連よりも費用負担を抑えやすい傾向にあります。 以下は、東京都の場合を比較した表です。 <入会時の諸費用(本店(主たる事務所)・東京都の場合)> 全日 全宅連 入会金 465,000円 500,000円 入会金(保証協会) 80,000円 200,000円 弁済業務保証金分担金 600,000円 600,000円 年会費 43,200円 48,000円 年会費(保証協会) 9,000円 6,000円 その他費用(関連団体の入会金・年会費等) 134,800円 201,000円 合計 1,332,000円 1,555,000円 出典)全日本不動産協会 東京都本部「入会金について」 出典)東京都宅地建物取引業協会「入会メリット」 ※2026年5月時点の金額です。減額キャンペーンなどは反映していません。最新の費用は各協会の公式ホームページなどをご確認ください。 ※年会費は入会月によって月割り計算により変動することがあります。 なお、入会するタイミングによっては、諸費用減額などのキャンペーンが実施されているため、入会を検討する際はキャンペーンを調査することをおすすめします。 全日本不動産協会(全日)に入会する独自の2つのメリット 全日に入会する独自のメリットは主に以下の2つです。 実務支援システム「ラビーネット」が提供される 資金調達の情報提供や紹介サービスを受けられる 実務支援システム「ラビーネット」による業務効率化 全日では、会員事業者向け実務支援システム「ラビーネット」を提供しています。 ラビーネットでは、物件情報の登録や間取り図作成、顧客管理など、不動産実務に必要な機能が利用可能です。 開業直後は限られた人数で業務を回すケースも多いため、ITツールによる業務効率化は重要な要素といえます。 資金調達の情報提供や紹介サービスの活用 宅建業を運営する上では、事務所費用や広告宣伝費、運転資金など、まとまった資金が必要です。 全日では会員事業者向けの支援策として、融資相談窓口である「全日ローンコンシェルジュ」を通じて金融機関等との提携ローンを提供しています(※『全日ローンコンシェルジュ』は全日とSBIアルヒ株式会社・SBIエステートファイナンス株式会社の提携によるサービスです。)。 提携ローンは融資審査の通過を保証するものではありませんが、資金調達の相談先や選択肢が広がる点が特徴です。特に独立開業して間もない時期は、実績不足から資金調達に苦戦するケースも想定されるため、全日経由で情報収集や相談ができることはメリットといえます。 関連記事はこちら開業資金はいくら必要?実績がなくても資金調達できる7つの方法 全日本不動産協会(全日)への入会手続きと開業時の資金計画 全日に入会する場合は、宅建業免許の取得手続きと並行して準備を進めることで、営業保証金の供託が免除されるなど開業までの流れがスムーズになります。 ここでは手続きの流れや免許証交付までの期間、供託金(弁済業務保証金分担金)の仕組みについて説明します。 全日本不動産協会(全日)への入会および開業までの基本フロー 全日への入会申し込みから営業開始までの流れは以下の通りです。 事務所の設置・開業準備 宅建業免許の申請 地方本部への入会申し込み・必要書類提出 事務所調査・入会審査 入会費用・弁済業務保証金分担金等の納付 免許証受領(営業開始) 入会申し込みから営業開始までの期間は、約1~2ヵ月が目安です。地方本部によって手続きが異なることがあるため、各地方本部のホームページなどで事前に確認しておくことが大切です。 「弁済業務保証金分担金」による初期費用の負担軽減 宅建業を営む際は、宅建業法に基づき、原則的に営業保証金として主たる事務所につき1,000万円(その他の事務所は500万円)を法務局に供託しなくてはなりません。営業保証金の目的は、不動産取引の相手方に損害が生じた場合に、その損害を弁済できるようにするためです。 しかし、全日に入会し、保証協会へ弁済業務保証金分担金として主たる事務所につき60万円(その他の事務所は30万円)を納入すると、営業保証金の供託が免除となります。開業時の経済的負担が大幅に軽減されるのは、大きなメリットといえます。 なお、宅地建物取引業保証協会(全宅連)への入会に伴い保証協会へ弁済業務保証金分担金を納入することで、同様に営業保証金の供託が免除されます。 <弁済業務保証金分担金と営業保証金の比較> 弁済業務 保証金分担金 営業保証金 制度の仕組み 事業者が保証協会に入会し、 協会を通して供託する制度 事業者が直接供託する原則的な制度 直接の納付先・供託先 指定の宅地建物取引業保証協会 法務局 主たる事務所の負担額 60万円 1,000万円 その他の事務所の負担額(1事務所につき) 30万円 500万円 保証協会への入会 必須 不要 その他の主な費用 上述の不動産協会の入会金、 年会費、地方本部会費などが別途必要 特になし 弁済業務保証金分担金の納入により営業保証金の供託は免除となりますが、上述の入会時の諸費用や運転資金など、開業時の資金計画を策定しておくことが重要です。 また、全日や全宅連では開業にかかるセミナーの開催なども行っているため、まずはどのような支援を実施しているか確認してみることをおすすめします。 まとめ:協会の入会は目的に合った選択を 全日は、比較的初期コストを抑えやすい傾向があり、実務・ITサポート体制も充実しています。 また、会員限定の融資相談窓口である「全日ローンコンシェルジュ」を提供している点も魅力です。 一方で、協会によって費用体系や支援内容、地域ネットワークには違いがあります。宅建業で独立開業する際は、重視したいサポート内容を踏まえて所属する協会を比較検討することが重要です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 三為契約とは?不動産仲介との違いや注意点を解説 三為(さんため)契約は、不動産売買で用いられることがある契約形態の1つです。一般的な不動産仲介とは仕組みが異なるため、不動産を売買する予定があるなら三為契約の仕組みを理解しておくと安心です。...
「住宅ローンの金利が上がるかもしれない」というニュースを見て、借り換えのシミュレーションを試した方も多いのではないでしょうか。 住宅ローンの借り換えを検討する際、私たちはつい「月々の支払いや総返済額がいくら減るか」という”数字”に目を奪われがちです。しかし、借り換えには数字には表れないもう一つの重要な論点があります。 それは、将来の金利変動に怯えなくて済むという「安心感」です。 この記事では、金利上昇局面における借り換えを「経済合理性の追求(数字の損得)」と「安心感の確保(見えない不安の解消)」という2つの本質的な軸からシミュレーションし、後悔しないための判断基準を解説します。 借り換えにおける2つの戦略(経済合理性の追求と安心感の確保) 変動金利からの住宅ローン借り換えには、以下2つの戦略が考えられます。 より低金利の変動金利へ借り換え(経済合理性の追求) 固定金利へ借り換え(安心感の確保) 比較項目 変動金利への借り換え (経済合理性の追求) 固定金利への借り換え (安心感の確保) 基本特性 当面の金利水準を低く抑え、返済額を軽減する 将来の金利上昇リスクの影響を受けなくなる 内在するリスク 市場金利の上昇に伴い、将来的に返済額が増加するリスク 変動金利より高めに設定されるため、総返済額が増加するリスク 適した人 経済合理性を最優先し、金利上昇時は繰上げ返済などで対応可能な人 支出を確定させ、金利変動による家計への影響をゼロにしたい人 金利上昇時の影響 市場金利に連動して返済額が増加する 完済まで影響なし より低金利の変動金利へ借り換え(経済合理性の追求) 変動金利からより低い変動金利への借り換えは、当面の返済額が軽減される経済合理性のある戦略といえます。金利水準が維持される限り、返済額の軽減効果は継続します。 一方で、変動金利は市場金利の変動に連動するため、将来の金利上昇による返済額増加のリスクを伴います。 「5年ルール」や「125%ルール」を採用している金融機関であれば、金利が上昇しても5年間は毎月の返済額が変わりません。また、5年ごとに毎月の返済額が増えるときも、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。 ただし、「5年ルール」や「125%ルール」は返済額の増加を繰り延べるものであり、利息そのものを免除するものではありません。急激な金利上昇時には、元金の返済が進みにくくなるだけでなく、本来支払うべき利息が毎月の返済額を上回り「未払利息」が発生する恐れがあります。 その後の金利動向や返済状況次第では、未払利息が解消されないまま繰り越されることもあります。繰上げ返済などで元金を償還しないと、最終返済日まで繰り越される恐れもあるため、毎月の支払いにおける元金と利息の支払内訳を把握しておくと安心です。 関連記事はこちら住宅ローンの5年ルールと125%ルールとは?メリット・デメリットを解説 固定金利へ借り換え(安心感の確保) 変動金利から固定金利への借り換えは、将来の金利上昇による返済額増加を回避できる安心感を確保する戦略といえます。一般的に、固定金利は変動金利より高めになる傾向にあり、結果として総返済額が増えることもあります。この追加負担は、金利変動による返済額増加の不安を解消するためのコストと整理できます。 返済額が完済まで確定するため、金利上昇局面でも返済額は増加せず家計は安定し、元金が予定どおりに減少します。将来の支出を見据え、安心感の確保を重視する人に向いています。 諸費用を踏まえた借り換え「3つの判断基準」の目安 住宅ローンの借り換えは返済額だけでなく、借り換え時の諸費用も踏まえて検討する必要があります。3つの判断基準について確認しましょう。 無視できない「諸費用」の内訳と実質コスト 住宅ローンの借り換えでは、新たに借り入れるローンの保証料や事務手数料に加え、既存のローンの繰上げ返済手数料などの諸費用がかかります。借り換え効果を正しく判断するには、諸費用を含めてシミュレーションを行い、「実質的にどれだけ負担が減るのか」を確認することが重要です。 借り換え効果が期待できる3つの目安 一般的に、諸費用の負担を踏まえた住宅ローンの借り換え効果が期待できる目安は以下の3つです。以下の条件を満たしているか確認してみましょう。 金利差1.0%以上 住宅ローン残高1,000万円以上 残存返済期間10年以上 ※あくまで目安のため、実際には個別のシミュレーションをしたうえで判断することが重要です。 1.金利差:利息削減の直接要因 金利差が大きいほど、元本に対する利息が減少し、諸費用の回収が容易になります。ただし、固定金利へ借り換える場合は、金利差だけでなく、金利上昇リスク回避のコストとしての判断が必要です。 2.ローン残高:削減額の規模要因 同じ金利差でも、残高が大きいほど削減される利息総額は増加します。残高が小さい場合、利息削減額が諸費用を下回り、借り換え効果が限定される傾向があります。 3.残存返済期間:金利差による削減効果の蓄積要因 返済期間が長いほど、利息が発生する期間が長く、金利差による削減効果が累積します。 返済終盤では利息割合が低下するため、借り換えによる効果は小さくなります。 関連記事はこちら住宅ローンの借り換えで忘れてはいけない注意点 【実例比較】借入残高3,000万円・残り30年での借り換え効果をシミュレーション ここでは、具体的な条件を設定し、金利変動や借り換えによって返済額がどう変化するのかをシミュレーションします。 <シミュレーションの前提条件> 当初借入金額:3,000万円 当初借入金利:変動1.2% 返済期間:35年 返済方法:元利均等返済・ボーナス払いなし 借入後5年間は金利変動なし 5年経過後(残り30年)に借り換えを実行 借り換え時のローン残高は約2,645万円 借り換えにかかる諸費用:70万円 段階的に1%金利上昇:総返済額約400万円増加 まずは借り換えせずに金利上昇した場合のシミュレーション結果です。 返済期間 (フェーズ) 借り換えなし (金利1.2%固定の場合) 借り換えなし (段階的金利上昇シナリオ) 上昇シナリオ による差額 1〜5年目 金利:1.2% 月額:87,510円 金利:1.2% 月額:87,510円 差異なし 6〜10年目 金利:1.2% 月額:87,510円 金利:1.7% 月額:93,828円 +6,318円/月 11〜35年目 金利:1.2% 月額:87,510円 金利:2.2% 月額:99,387円 +11,877円/月 35年間の 総返済額 約3,675万円 約4,070万円 +約394万円 出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 上記試算では、金利が上昇すると総返済額は約394万円増加します。金利上昇は利息負担を累積的に押し上げるため、影響は長期にわたり総返済額に反映されます。金利リスクは「月額増加」だけではなく「総返済額の増加」として評価が必要です。金利上昇した場合の総返済額を踏まえ借り換えを検討しましょう。 低金利の変動金利へ借り換えた場合の効果と留意点 次に、より金利の低い変動金利へ借り換えた場合のシミュレーション結果です。 返済期間 (フェーズ) 借り換えなし (段階的金利上昇シナリオ) 借り換えあり (より低い変動金利へ) 借り換え による差額 1〜5年目 金利:1.2% 月額:87,510円 金利:1.2% 月額:87,510円 差異なし 6〜10年目 金利:1.7% 月額:93,828円 金利:1.0% 月額:85,059円 ▲8,769円/月 11〜35年目 金利:2.2% 月額:99,387円 金利:1.5% 月額:90,264円 ▲9,123円/月 35年間の 総返済額 約4,070万円 約3,743万円 ▲約326万円 借り換え 諸費用 - 70万円 +70万円 実質的な 削減効果 - - 実質負担▲約256万円 (総返済差額▲326万円 +諸費用70万円) 出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 上記の試算では、借り換えることで総返済額は約326万円減少し、借り換え諸費用70万円を含めても約256万円程度負担軽減する結果となります。また、毎月の返済額は約9,000円程度減少します。 ただし、変動金利への借り換えのため、シミュレーション以上の金利上昇により、返済額が増加する恐れもあります。さらに、5年ルール・125%ルールを採用している住宅ローンへ借り換える場合は、繰上げ返済の検討など未払利息のリスクへの備えも必要です。 固定金利(2.0%)へ借り換えた場合の効果と不確実性の回避 最後に固定金利へ借り換えた場合のシミュレーション結果です。 返済期間 (フェーズ) 借り換えなし (段階的金利上昇シナリオ) 借り換えあり (固定金利2.0%へ固定) 借り換え による差額 1〜5年目 金利:1.2% 月額:87,510円 金利:1.2% 月額:87,510円 差異なし 6〜10年目 金利:1.7% 月額:93,828円 金利:2.0% 月額:97,748円 +3,920円/月 (一時的な負担増) 11〜35年目 金利:2.2% 月額:99,387円 金利:2.0%(固定) 月額:97,748円 ▲1,639円/月 (後半の負担軽減) 35年間の 総返済額 約4,070万円 約4,044万円 ▲約26万円 借り換え 諸費用 - 70万円 +70万円 実質的な 削減効果 - - 実質負担+約44万円 (総返済差額▲26万円 +諸費用70万円) 出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算 ※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。 上記の試算結果では、借り換えなしの場合と比べて、固定金利へ借り換えることで総返済額は約26万円減少する一方で、借り換え諸費用を含めると約44万円の負担増加となります。ただし、想定以上に市場金利が上昇してもこれ以上返済額が増加しない安心感を確保できます。 シミュレーション通りにいかないケースと留意点 住宅ローンの借り換えを検討する際、いかなる前提に基づくシミュレーションであっても、将来の金利水準を正確に予測することは極めて困難であり、常に「金利予測の不確実性」という大前提のリスクを伴います。 金利は金融政策や物価動向、為替など複数の要因で変動するため、単一の試算結果のみで判断せず、複数のシナリオを想定しておく必要があります。 このマクロな金利変動リスクに加えて、実務上、個別の条件によって「事前のシミュレーション通りに事が進まないケース」として、主に以下の3つの具体的要因が挙げられます。 1.諸費用を含めた「実質コスト」の計算漏れ 事前に行ったシミュレーションほど実質的な負担額軽減効果が得られない場合、諸費用などの計算漏れが考えられます。自分で計算するのが難しい場合は、借り換え先の金融機関に相談しましょう。 2.健康状態変化による「団体信用生命保険(団信)」の再加入不可 借り換え時には、原則として団体信用生命保険(団信)の再加入が必要です。健康状態や既往歴によっては団信の再加入が認められず、借り換えができない恐れがあります。 3.収入状況や転職による「再審査」での条件悪化 借り換え時には、新たな借入先であらためて審査を受ける必要があります。年収や勤続年数、他の借入状況などが再確認されます。転職直後や収入が減少している場合、審査が厳しくなることもあるため注意が必要です。 関連記事はこちら住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介 まとめ 住宅ローンの借り換えには、「経済合理性の追求」だけでなく「安心感の確保」の視点も考える必要があります。どちらを重視するかを明確にし、諸費用を含めてシミュレーションを行うことが重要です。 また、返済額軽減効果だけでなく、再審査や団信加入の可否も含めて、借り換えを実行すべきか冷静に判断しましょう。ご自身の状況に合わせた最適なプランを立てるために、金融機関の担当者や不動産の専門家に一度相談してみることをおすすめします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 【2026年最新】フラット35金利推移グラフと今後の動向分析 2026年現在、長引く低金利環境から一転し、フラット35の金利は急ピッチで上昇しています。「金利が上がっている」というニュースを見て、全期間固定金利の住宅ローンの動向が気になっている人もいる...
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】2026年5月金利は2.71%に決定|公認会計士の予測と機構債分析)では、【フラット35】の2026年5月金利を2.67%~2.77%と予想し、2.71%となり予想レンジ内に収まりました。 まずは、最新の機構債と市場動向から分析した、2026年6月の【フラット35】金利予想の結論からお伝えします。 【2026年6月 フラット35金利予想】 予想レンジ:3.02%~3.12% 傾向:上昇 要因:新発10年国債利回りの上昇 中東情勢の不確実性や物価上昇、日銀の利上げ観測を背景に、新発10年国債利回りは上昇傾向で推移しています。これに伴い、固定金利タイプの住宅ローンにも上昇圧力がかかっています。 この記事では、金利上昇の根拠となる国債・機構債の動きと、借り手にとって重要な「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の現状について解説します。 2026年6月の【フラット35】金利は3.21%に決定しました(更新日:2026年6月1日)。 【フラット35】2026年5月金利予想の結果と検証 2026年5月の金利決定結果(2.71%) 2026年5月の【フラット35】金利は前月から0.22ポイント上昇の2.71%に決定し、4月下旬での予想レンジ(2.67%~2.77%)の中央あたりの結果となりました。この予想は、機構債表面利率の0.18ポイント上昇に加え、直近の「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の縮小傾向を加味したものでした。 なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。 ・予測ロジック(簡易式) 予測金利 ≒新発10年国債利回り + ローンチスプレッド – 調整幅(機構裁量) このうち「新発10年国債利回り + ローンチスプレッド」は、機構債の表面利率として発表されます。つまり、金利予想において最も重要なのは、機構の裁量による調整幅(逆ザヤ)の動向です。 金利上昇に加えて縮小する逆ザヤ 市場金利の上昇傾向は続いていますが、国債利回りの上昇幅に比べると【フラット35】の金利上昇は緩やかです。これは、過去11か月連続で【フラット35】の金利が機構債の表面利率を下回る「逆ザヤ」状態が維持されているためです。 2025年6月に0.05ポイントから始まった逆ザヤは毎月拡大し、2026年2月には0.52ポイントに達しました。しかし、3月以降は縮小に転じ、5月時点では0.26ポイントまで縮小しています。 住宅金融支援機構が、自身の収益を圧迫してでもどこまでこの「逆ザヤ」を許容し、貸付金利の上昇を抑制するかが今後の予想の焦点となります。 2月から5月までの推移を踏まえ、次のようなシナリオが想定されます。 2月の逆ザヤ「0.52ポイント」で機構の許容上限を超えた 2026年3月以降、新たな許容上限を模索している段階 機構債表面利率 vs フラット35金利の推移(2025年4月以降) ※出典) ・住宅金融支援機構「既発債情報」 ・住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 ※上記出典を基に「住まいとお金の知恵袋編集部」作成 逆ザヤの推移(2025年4月以降) ※上記出典を基に「住まいとお金の知恵袋編集部」作成 【フラット35】2026年6月金利予想 2026年5月から6月にかけて、新発10年国債利回りは2.42%から2.74%(※)へ、0.32ポイントの大幅な上昇となりました。これに伴い、機構債の表面利率は2.97%から3.32%へと0.35ポイント上昇しています。これまでの数値を踏まえた、6月の【フラット35】金利予想の詳細は以下のとおりです。 ※10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 【フラット35】金利推移(直近3ヶ月)と2026年6月予想 2026年3月 2026年4月 2026年5月 2026年6月 千日太郎の予想 【フラット35】の金利(※) 2.25% 2.49% 2.71% 3.02%~3.12%※6/1発表の金利は3.21%でした ※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」 シナリオ①:激変緩和措置を織り込んだ想定下限(3.02%) 下限の3.02%は、機構債の上昇幅(0.35ポイント)を反映しつつ、逆ザヤを0.26ポイントから0.30ポイントに再拡大する想定のシナリオです。 融資実行の3ヵ月前に住宅ローンの契約を行うケースもあり、2026年3月時点の金利(2.25%)を前提に計画を立てていた借り手も存在します。契約時からの金利上昇幅が大きいほど、毎月の返済負担は当初の想定を超えて増加する恐れがあります。 国民の住生活を支える公的使命を持つ住宅金融支援機構としては、このような局面において、逆ザヤを再拡大させて金利上昇を抑制する激変緩和措置を取る可能性が考えられます。 シナリオ②:逆ザヤ縮小ペースの継続(3.12%) 上限の3.12%は、機構債の上昇幅(0.35ポイント)を反映しつつ、逆ザヤを0.20ポイントへと縮小する想定のシナリオです。 2月から4月までは毎月0.10ポイント程度ずつ逆ザヤが縮小してきましたが、5月は0.04ポイントの縮小(逆ザヤ0.26ポイント)に留まりました。6月の逆ザヤの縮小幅が2026年2月以降の平均(0.09ポイント)と同等となれば、0.17ポイントに縮小となりますが、激変緩和措置を織り込み、0.20ポイントまでの縮小を想定します。逆ザヤが0.20ポイントに縮小する場合、6月の【フラット35】金利は3.12%となります。 機構債の表面利率・新発10年国債利回り・ローンチスプレッドの推移(直近4ヶ月) 主要データ(2026年5月21日時点) 機構債発表日 2026年2月18日 2026年3月18日 2026年4月17日 2026年5月21日 機構債の表面利率(※1) 2.65% 2.79% 2.97% 3.32% 新発10年国債利回り(※2) 2.12% 2.24% 2.42% 2.74% ローンチスプレッド(※1) 0.53% 0.55% 0.55% 0.58% ※1:出典)住宅金融支援機構「既発債情報」 ※2:10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。 まとめ 今回の機構債表面利率は大幅な上昇となりました。ただし、住宅金融支援機構は依然として逆ザヤを維持しており、市場の金利上昇分をそのまま利用者に転嫁しているわけではありません。今回も一定の激変緩和措置が講じられる可能性はあると考えられます。 住宅購入を検討するにあたり、目先の金利動向だけで焦って判断する必要はありません。変動金利と固定金利の双方にメリットとリスクが存在します。重要なのは最終的な損得ではなく、金利が変動しても生活を安定して維持できるかどうかです。金利の低さだけでなく、自身のライフプランに合ったリスクの取り方で住宅ローンを選ぶ視点が求められます。 ※この記事は2026年5月21日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 千日太郎(Sennichi Taro) 公認会計士としての専門知識を活かし、YouTubeなどを通じて住宅ローンの仕組みや金利動向についての情報を発信。住宅購入を検討する人に向けた実務的な内容を中心に、金融に関する知識をわかりやすく解説している。 著書『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』では、住宅ローンの選び方や返済計画に関する基本的な考え方を丁寧に紹介しており、実用的な入門書として一定の評価を得ている。 住宅ローンに関する独自の視点や分析は、利用者や一部の業界関係者からも注目されており、継続的に情報提供を行っている点が特徴。 次に読むべき記事 【2026年最新】フラット35金利推移グラフと今後の動向分析 2026年現在、長引く低金利環境から一転し、フラット35の金利は急ピッチで上昇しています。「金利が上がっている」というニュースを見て、全期間固定金利の住宅ローンの動向が気になっている人もいる...
J-REIT(ジェイ・リート)は、少額から不動産に投資できる金融商品であり、「不動産投資信託」の一種です。不動産投資に関心があるものの、多額の資金投下や流動性の低さに課題を感じる投資家にとって、有力な選択肢の一つとなります。一方で、市場商品特有の価格変動リスクなども内包しているため、投資開始前にその特徴とリスクを正確に把握することが重要です。 この記事では、J-REITの仕組みからメリット・デメリット、実物不動産投資との違いに至るまで、投資判断の基本的な理解に役立つ情報を客観的な視点で解説します。 J-REITの仕組みと市場指標 まずは、投資判断の前提として、J-REITが備える独自の分配構造と、市場全体の潮流を正確に捉えるための主要指標について整理します。 出典)一般社団法人資産運用業協会「J-REITの仕組み」 「不動産投資法人」による収益還元の仕組み REITは「Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)」の略称です。「不動産投資法人」という特別な法人が運用主体となり、オフィスビルや物流施設などの不動産に投資を行い、そこから得られる賃貸収入や売却益を「投資主(投資家)」に分配する金融商品です。米国で誕生したこの仕組みは、日本では「JAPAN」の頭文字を冠して「J-REIT」と呼ばれています。 J-REITは「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づく投資法人であり、一般的に「会社型投資信託」と呼ばれる形態をとっています。一般的な株式会社とは異なり、法律により使用人の雇用が禁じられているため、実際の不動産運用や資産管理、一般事務などの実務は外部の専門機関に委託されるのが構造的な特徴です。 投資主は、投資法人が発行する「投資口(株式に相当)」を保有することで、保有口数に応じた分配金を受け取ることが期待されます。投資口は東京証券取引所に上場されており、証券会社を通じて株式と同様の手法で売買可能です。なお、投資法人は物件購入の際、投資主からの出資だけでなく、金融機関からの借り入れや「投資法人債(社債に相当)」の発行などにより資金を調達することもあります。 出典)一般社団法人資産運用業協会「J-REITの仕組み」 市場動向を映す「東証REIT指数」の活用 投資判断の重要なベンチマークとなるのが「東証REIT指数」です。これは、東京証券取引所に上場するJ-REIT全銘柄を対象とした時価総額加重平均型の市場指数であり、株式市場における日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)のJ-REIT版に相当します。 同指数は、基準日(2003年3月31日)の時価総額を1,000として算出され、現在の市場動向や価格水準が基準時点からどの程度変動したかを客観的に示す指標です。 投資家にとっての「具体的な活用術」としては、単に市場全体の価格トレンドを把握するだけでなく、個別銘柄の予想分配金利回りが「市場全体の利回り水準と比較してどの程度乖離しているか」を評価する際の参考指標として用いるのが一般的です。また、記事後半で解説する「東証REIT指数に連動するETF(上場投資信託)」を通じて、市場全体へ効率的に分散投資を行う際の対象指標としても機能します。 出典)株式会社日本取引所グループ「REITって何?」 J-REITの4つのメリット 実物不動産投資と比較した際、J-REITが投資対象として備える主なメリットを4つのポイントで整理します。特に「流動性の高さ」や「収益の還元構造」における制度上の特徴は、効率的な資産運用を目指す投資家にとって合理的な判断基準となります。 出典)一般社団法人資産運用業協会「J-REITのメリット」 「導管性要件」が支える高い利回り J-REITは、保有物件から得られる賃貸収入を分配金の主な原資とします。「配当可能利益の90%超を投資家に分配する」などの一定要件を満たすことで、分配金の損金算入が認められ、投資法人にかかる法人税が実質的に回避される「導管性(ペイスルー)要件」という特例が適用されています。 一般的な株式会社の配当は「法人税が差し引かれた後の利益」から支払われます。一方で、J-REITでは、利益の大部分が法人税を引かれることなくそのまま投資家に還元される構造となっているため、一般的な株式投資と比較して相対的に高い分配金利回りを追求できる点が大きな特徴です。 NISA制度活用による分配金の非課税化 J-REITから得られる分配金には、通常20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税金が課されます。例えば、1万円の分配金を受け取る場合、約2,000円が税金として源泉徴収され、手取り額は約8,000円となります。 しかし、NISA制度における「成長投資枠」を活用してJ-REITの個別銘柄に投資した場合、この分配金および売却益が非課税の対象となります。前述の例であれば、約2,000円の税金が控除されず、分配金1万円をそのまま受け取ることが可能となるため、手元資金の効率化や再投資効率の向上が期待できます。 関連記事はこちら新NISA運用か住宅ローンの繰上げ返済か?経済合理性とリスクから考える判断基準 少額投資と上場商品特有の「高換金性」 J-REITの最低投資金額は銘柄によって異なりますが、数万円程度から投資可能な銘柄も存在します。さらに、東証REIT指数などに連動するETF(上場投資信託)を活用すれば、より少額から市場全体への分散投資を行うことも可能です。数百万円から数千万円単位の自己資金を要する実物不動産投資と比較して、初期投資のハードルを抑えつつ不動産市場へアクセスできる点が大きな特徴です。 また、実物不動産は一般的に売却手続き(買主探索、価格交渉、契約締結など)に数か月以上の期間を要し、換金性が低いという課題があります。一方、J-REITは証券取引所に上場しているため、取引時間中であれば株式と同様に「指値注文」や「成行注文」を用いて、原則としてリアルタイムでの売買注文が可能です。 売却が成立(約定)した場合、通常はその2営業日後(約定日から起算して3営業日目)に資金が受け渡されるため、高い流動性と換金性を備えています。 「優良物件」へのアクセスと分散投資効果 J-REITは、多数の投資家から集めた大規模な資金を活用するため、個人投資家が単独で取得することは実質的に困難な数十億円〜数百億円規模の優良な大型物件(都心部のプライムオフィスビル、大型商業施設、最新の物流施設など)を投資対象に組み込むことが可能です。 また、1つの銘柄の中でエリア(地域)や用途が異なる複数の不動産へ分散投資を行っている点も大きな特徴です。これにより、特定の物件における退去(空室)や賃料下落、あるいは自然災害などによる局所的な収益毀損のダメージがポートフォリオ全体で吸収されます。単一の物件に依存しやすい実物不動産投資と比較して、個別不動産特有の収益変動リスクを効果的に低減させることが期待できます。 J-REITの3大リスクと対策 当然ながら元本や利回りが保証された商品ではないため、市場環境によっては投資元本を割り込む恐れがあります。ここでは、運用を開始する前に事前に把握しておきたい3つの主なリスクと対策について解説します。 「金利上昇」に伴う収益減と価格下落 J-REITの運用主体である不動産投資法人は、物件取得資金の一部を金融機関からの借り入れや投資法人債の発行によって調達しています。そのため、市場金利が上昇する局面では、借入金の利息負担が増加し、運用収益が圧迫されて投資家への分配金が減少する恐れがあります。 加えて、金融市場のメカニズムとして、金利上昇に伴い「比較的安全性が高いとされる10年物国債」などの利回りが上昇すると、相対的にリスクを伴うJ-REITの利回りの魅力が低下しやすくなります。その結果、投資資金が国債などのより安全な資産へシフトし、J-REITが売られて投資口価格が下落する要因となります。 こうした金利上昇リスクへの対策として、各銘柄が公表している決算資料などで「固定金利での借入比率」を確認することが有効です。借入金の大半を中長期の固定金利で調達している銘柄であれば、急激な金利上昇局面においても利息負担の増加を一定期間抑えることが期待できます。 市場変動への備えと「LTV」の適正確認 J-REITにおいても、運用主体である不動産投資法人は物件取得時に金融機関から資金を調達しており、間接的なレバレッジ効果を活かした運用を行っています。ただし、投資家が個別に金融機関から不動産投資ローンを利用する実物不動産投資とは異なり、投資家側で個別にレバレッジをコントロールすることはできません。 J-REITの投資口価格は、実物不動産の価値だけでなく、市場全体の需給、投資家心理、金融環境の変化によって日々変動します。特に、不動産投資法人が管理する「LTV(借入金比率)」の推移は極めて重要です。LTVが高すぎると金利上昇や不動産価格下落時の耐性が弱まるため、投資先を選定する際は、各法人が健全なLTV水準(一般的に40〜50%程度が目安)を維持しているかを確認することがリスク管理の要となります。 また、J-REITは上場商品であるため、時には不動産本来の価値とは乖離して価格が下落することもあります。例えば2020年のコロナショック時は、収益性に大きな変化がなくても、市場のパニック的売りによって東証REIT指数が一時的に急落しました。こうした「市場心理による価格変動」を避けられない点は、金融商品特有のリスクとして認識しておく必要があります。 運用主体の「倒産・上場廃止リスク」への備え J-REITの運用主体である不動産投資法人は、一般の事業会社と同様に法的整理(倒産)や、上場基準への抵触に伴う上場廃止のリスクを内包しています。経営状態の悪化などによりこうした事態が懸念される局面では、投資口価格が著しく下落し、証券取引所での円滑な売買が困難となる恐れがあります。 個別銘柄の信用リスクを評価する際は、投資法人の背後にある「スポンサー企業」の資金力や実績、および第三者機関による「格付け(発行体格付け)」を確認することが実務的な備えとなります。また、特定の投資法人に依存するリスクを抑える手法として、東証REIT指数に連動するETFを活用し、市場全体へ分散投資を行うことも、不測の事態に対する合理的な回避策となります。 J-REITと実物不動産の比較 J-REITと実物不動産投資は、同じ不動産を投資対象としながらも、その運用実態は「金融商品への投資」と「賃貸事業の経営」というほど大きな隔たりがあります。 運用・出口で比べる「7つの違い」 上述の特徴を踏まえたJ-REITと実物不動産投資の違いをまとめると以下のとおりです。 J-REIT 実物不動産投資 主な投資対象 オフィス・物流施設・ホテルなど アパート・区分マンションなど 最低投資金額 数万円~(少額から可能) 数百万円~(多額の初期費用) 管理・運用の主体 投資法人が選定したプロに一任 オーナー自身または管理会社 流動性(換金性) 高い(数日) 低い(数か月を要する場合も) 融資(レバレッジ) 個人でのローン利用は不可 投資用ローンの活用が可能 相続税評価 原則として「時価(市場価格)」 土地:公示価格の8割程度 建物:公示価格の7割程度 NISA活用 成長投資枠の利用が可能 対象外 ※筆者作成 実物不動産ならではの「レバレッジ」・「税負担の軽減効果」 実物不動産投資の大きな特徴の一つは、金融機関からの融資(不動産投資ローン)を引くことで、手元資金を大きく上回る規模の運用を可能にする「レバレッジ効果」にあります。少ない自己資金で効率的に資産形成を目指せる点は、J-REITにはない実物不動産特有の魅力です。 また、税務面におけるメリットも無視できません。実物不動産は相続税評価において、土地は路線価(一般的に公示価格の約8割程度)、建物は固定資産税評価額(概ね建築費の5〜7割程度)を基準に評価されることが多く、時価との「評価差額」を利用した相続対策としての有効性が期待されます。 ※上記の水準は一般的な目安です。実際の評価額は物件の状況や立地条件等によって異なる場合があります。 ただし、これらは「賃貸経営者」としての責任を伴うものです。多額の負債を抱えるリスクや、管理委託費・大規模修繕といった継続的なコスト発生を織り込んだ、緻密な収支計画が不可欠となります。 関連記事はこちら不動産投資とは?仕組みやメリット・デメリット、始め方を解説 関連記事はこちら相続時の不動産評価方法は?評価に関する特例も併せて解説 J-REITのポートフォリオ戦略 上述の特徴を踏まえて、ここではJ-REITを活用したポートフォリオ戦略例を紹介します。 株式などとの相関性を意識したリスク分散 J-REITは不動産収益が利益の源泉であり、企業利益を源泉とする株式とは異なる収益構造を有します。そのため、株式とは異なる値動きを示すことがあり、J-REITを組み合わせることによりポートフォリオ全体のリスク軽減が期待できます。 また、株式の成長性と、J-REITのインカム特性を組み合わせることで、収益機会の幅を広げつつ、市場環境の変化に対応しやすいポートフォリオ構築が期待できます。なお、金融ショックなどの極端な市場変動時には、資産クラス間の相関性が高まり同時に下落するリスクがある点には留意が必要です。 実物不動産の「流動性不足」を補う配分 実物不動産とJ-REITのそれぞれの利点を活かし、相互に補完する戦略が考えられます。不動産投資ローンを利用した実物不動産投資により家賃収入を得ながら、J-REITへの投資により流動性を確保しつつ分配金と値上がり益も狙う、という戦略が挙げられます。ポートフォリオ全体のリスクを下げたいときは、比較的迅速に売却可能なJ-REITを換金して現金比率を増やすなど、状況に応じた調整がしやすいのもメリットです。 「指数連動型ETF」による市場全体への投資 東証REIT指数に連動するETFを活用し、J-REIT市場全体に分散投資を行うのも選択肢です。J-REITの個別銘柄を自分で選ぶよりも手間がかからず、少額から幅広い銘柄に分散投資ができるため、リスク軽減が期待できます。 また、東証REIT指数の平均利回り水準に概ね連動した分配金が期待できることもメリットです。さらに、NISA制度を利用すれば分配金は非課税になります。ただし、ETF保有中は「信託報酬(運用管理費用)」が運用資産から差し引かれます。ETFを選定する際は、信託報酬の低さに加え、市場での売買が成立しやすいよう「純資産総額(ファンドの規模)」が十分に大きい銘柄を選ぶことが実務上のポイントとなります。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品や投資行動を勧誘するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の判断と責任において行ってください。 まとめ J-REITは、少額から複数の優良不動産への分散投資を実現し、上場商品としての高い流動性を備える点が最大のメリットです。一方で、金利動向に伴う価格変動リスクや、運用主体の信用リスク(倒産・上場廃止など)を内包する金融商品である点には留意が必要です。 不動産投資を検討する際は、手元の資金流動性を重視する場合はJ-REIT(または指数連動型ETF)を、融資(レバレッジ)を活用した中長期的な資産規模の拡大や相続税対策を見据える場合は実物不動産投資を選ぶなど、自身の資産状況と投資目的に合わせて手法を使い分けることが求められます。 まずは、それぞれの運用シミュレーションを通じて「どの投資手法が自身のライフプランに最適か」を客観的なデータに基づいて比較検討することから始めてみてください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 証券担保ローンとは?株を売らずに現金化する仕組みやメリット・デメリット 「株を売りたくないけれど、まとまった現金が必要」という場面で役立つのが、保有株を担保に資金を借りられる「証券担保ローン」です。売却による運用の中断や課税を避けつつ、比較的短期間で現金を確保で...
「株を売りたくないけれど、まとまった現金が必要」という場面で役立つのが、保有株を担保に資金を借りられる「証券担保ローン」です。売却による運用の中断や課税を避けつつ、比較的短期間で現金を確保できるため、不動産購入の手付金や教育資金など、幅広い用途で活用されています。 一方で、担保割れによる追証リスクなど、利用にあたって注意すべき点も存在します。 本記事では、証券担保ローンの基本的な仕組みを中心に、メリット・デメリットや不動産担保ローンとの使い分けについて、一般的な情報として解説します。 証券担保ローンとは まずは証券担保ローンの概要や利用シーンを確認しておきましょう。 仕組みと基本概要 証券担保ローンは、本人名義の有価証券を担保として差し入れ、その時価評価額の一定範囲内で融資を受ける仕組みです。 融資の形態には、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。 日本証券金融株式会社(以下、日証金)などの提携金融機関が融資を行うパターン 証券会社自身が直接融資を行うパターン 以下の図は、多くのネット証券などで採用されている、提携金融機関である「日証金」が融資主体となるパターンの全体像です。 ※筆者作成 日証金は、証券市場の円滑な運営をサポートする専門の金融機関です。多くの証券会社と提携しており、個人投資家向けには、証券会社を通じて「コムストックローン」などの名称で証券担保ローンが提供されるケースがあります。一方、証券会社が自社で直接融資を行うサービスもあり、その場合は証券会社と直接ローン契約を結ぶ形となります。 担保の対象としては、国内上場株式のほか、国内ETFや国内REITなども担保対象に含まれます。ただし、すべての銘柄が担保にできるとは限りません。また、NISA(少額投資非課税制度)口座やiDeCo(個人型確定拠出年金)で保有している資産は、原則として担保にできない点に注意が必要です。融資主体がどこかによっても詳細な条件が異なるため、詳しくは、証券担保ローンを取り扱っている証券会社に確認することが重要です。 出典)日本証券金融株式会社「証券担保ローン」 証券担保ローンの利用シーン 証券担保ローンの借入金は、原則として資金使途に制限がなく、幅広い用途で利用可能です。 【利用シーンの具体例】 住宅のリフォーム資金 車の購入代金 子どもの教育資金 旅行・レジャー費用 冠婚葬祭費用 投資用不動産の購入資金など ただし、「事業性資金や保険契約資金には利用できない」など、金融機関によっては制限が設けられていることもあります。 証券担保ローンのメリット 証券担保ローンは保有株式を売却せずに資金調達が可能なため、利益確定に伴う課税を繰り延べつつ、資産の資金効率を高める効果が期待できます。ここでは、資産運用と資金調達を両立させるための具体的なメリットについて解説します。 株を売らずに現金を確保できる(運用継続) 証券担保ローンを利用すれば、運用中の株式を売却することなく資金を調達できます。そのため、預貯金だけで必要な資金を準備できなくても、株式を保有したまま資金を確保する手段となり得ます。 将来的な株価上昇を見込んでいる場合や、長期保有を前提としたポートフォリオを崩したくない場面において、検討すべき選択肢の一つとなります。 株式売却益への課税(20.315%)を先送り(繰り延べ)できる 株式を売却すると、売却益に対して原則20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税金が課されます。しかし、証券担保ローンを利用すれば、株式を売却することなく資金調達が可能です。売却益への課税を先送り(繰り延べ)しながら必要な資金を確保できるため、特に株価の値上がりで含み益が膨らんでいるときに有効です。 例えば、含み益が100万円ある株式を売却すると約20万円の税金が引かれますが、証券担保ローンであれば税金を引かれることなく時価をベースとした融資枠を活用できるため、資金効率を落とさずに現金を確保できます。 配当金・株主優待は引き続き受け取れる 証券担保ローンを利用している間も、株主としての権利を失うことはありません。そのため、担保に入れた銘柄の配当金や株主優待は引き続き受け取れます。 なお、担保株式を売却することも可能です。その場合、一般的に売却代金が融資金の返済に充当されます。株価が大きく値上がりした場合は、売却も選択肢といえます。 資金使途が原則自由 前述のとおり、証券担保ローンの資金使途については、一般的に大きな制限が設けられていない場合が多く、日々の生活費から医療費などの緊急資金、教育資金など、さまざまな用途に利用できます。 証券担保ローンのデメリット・注意点 証券担保ローンには「相場変動」に起因する特有のリスクが潜んでいます。予期せぬ損失(担保割れなど)を防ぎ、自身の資産を安全に管理するためにも、主なデメリットや注意点を事前に理解しておくことが重要です。 株価下落時の追加担保(追証)リスク 担保株式の株価が下落し、融資割合(時価評価額に対する融資残高の割合)が一定の基準を超えると、追加担保の差し入れを求められます。さらに値下がりすると担保株式を強制的に売却され、融資金の返済に充当されます。 例えば、担保掛目60%で借り入れる場合、「担保株式の値下がりで融資割合が70%以上になると追加担保が必要になり、90%以上になると担保株式を強制売却される」といったイメージです。 証券担保ローンを利用する際は、担保株式の値動きに十分注意する必要があります。追証リスクを軽減するためには、「借入金額を限度額の半分程度に抑える」「値動きの激しい銘柄の担保掛目を下げる」といった、無理のない資金管理を心がけることが重要です。 「信用取引」との違い 証券担保ローンは、株式を担保にお金を動かすという点では「信用取引」と似ていますが、その性質は大きく異なります。信用取引は「元手以上の株式を売買する(レバレッジをかける)」ための仕組みであるのに対し、証券担保ローンは「手元の株を売らずに資金を調達する」ための仕組みです。証券担保ローンで借り入れた資金をそのまま株式投資に充てることを禁止している金融機関も多いため、混同しないよう注意が必要です。 借りられる金額に制限がある 一般的に、証券担保ローンの担保掛目は50%~70%程度です。仮に株式の時価評価額が500万円、担保掛目が60%の場合、融資限度額は300万円(500万円×60%)となります。保有株式の時価評価額や金融機関が設定する担保掛目によっては、希望額の借り入れができません。 金利水準と変動リスク 金融機関によって異なりますが、証券担保ローンの金利水準は2.0%~5.0%程度が目安です。利用を検討する際は、利息額などをシミュレーションしたうえで判断することをおすすめします。また、金利情勢によっては利率が変更されることもある点にも注意が必要です。 信用情報への影響と返済計画の重要性 証券担保ローンを利用すると、借り入れなどの情報が信用情報機関へ提供される場合があります。そのため、利用状況によっては住宅ローンなどの審査に影響を与えるケースがあります。 無担保のカードローンなどとは性質が異なるものの、CICやJICCなどの指定信用情報機関に借入残高として記録されるため、将来の住宅ローンなどの審査において、返済負担率(収入に対する年間返済額の割合)の計算に影響を及ぼす恐れがあります。 また、株価下落による追加担保リスクや金利変動リスクもあるため、これらの点を踏まえ、無理のない返済計画を立てることが重要です。 不動産購入における活用事例と不動産担保ローンとの使い分け 証券担保ローンは、資金調達までのスピードや資金使途の柔軟性といった点から、不動産購入や不動産投資の場面で検討されることがあります。ここでは、具体的な不動産購入での活用事例と、不動産を担保とする「不動産担保ローン」との違いや一般的な使い分けの考え方について解説します。 不動産購入で証券担保ローンが活用される2つのケース 不動産取引、特に優良物件の取得においては「資金調達のスピード」が成否を分ける要因となります。住宅ローンや不動産担保ローンは低金利である反面、審査から実行までに時間を要するのが一般的です。 その点、証券担保ローンは「手元の資産を活かした短期間での現金化」が可能であり、不動産実務においては主に以下の2つの戦略的なケースで活用されています。 ケース1:即金性が求められる「手付金」の準備 競合の多い人気物件や、好条件の投資用物件の購入申し込みでは、数日以内に「手付金(売買代金の5〜10%程度)」を現金で用意しなければならないケースがあります。 保有株を売却して現金化する場合、約定日を含めて受渡日まで3営業日(国内株の場合)かかるため、急な好機に対応できないリスクがあります。最短即日で資金化が可能な証券担保ローンは、いわば「機会損失を防ぐための機動的な資金源」として有効です。 ※なお、購入物件で住宅ローンを利用する場合、手付金が証券担保ローンによる「借入金」であることを金融機関へ申告する必要があり、住宅ローンの審査結果に影響を及ぼす恐れがあります。トラブルを避けるためにも、事前に住宅ローンの借入先金融機関へ相談することを強く推奨します。 ケース2:不動産担保ローンへとつなぐ「ブリッジ資金(つなぎ融資)」 「物件の購入期限」と「不動産担保ローンの融資実行時期」にズレが生じる際、そのギャップを埋める「つなぎ資金」として証券担保ローンを活用する手法です。 例えば、まず融資実行の早い証券担保ローンで決済を完了させ、物件を確実に確保します。その後、時間をかけて不動産担保ローンの審査を通し、低金利・長期の融資に切り替えることで、トータルの返済コストを最適化できる可能性があります。 ただし、不動産担保ローンの審査承認が確約されていない段階での審査が長期化した場合の返済負担やリスクについては十分に考慮する必要があります。 証券担保ローンと不動産担保ローンの違い どちらの手段が自身の資金計画に適しているか、以下の比較表でそれぞれの特徴を確認してみましょう。 証券担保ローン 不動産担保ローン 担保資産 株式などの有価証券 土地、建物、マンションなど 資金調達スピード 最短即日~数日程度 数日~1か月程度 金利 2.0%~5.0%程度 2.0%~9.0%程度 借入期間 短期(1年・更新制など) 中長期(最長20〜35年など) 主なリスク 株価変動による追証リスク 担保権の実行リスク ※不動産担保ローンの金利は一般的なノンバンク系商品の目安です。 証券担保ローンは、比較的低金利かつ短期間で資金調達が可能な点が長所のひとつですが、日々の価格変動に伴う「追証リスク」への備えが不可欠です。対して不動産担保ローンは、融資実行までに時間を要するものの、安定した担保価値を背景に「まとまった資金を長期で借り入れできる」という強みがあります。 どちらを選ぶべきか?目的別の判断基準 証券担保ローンと不動産担保ローンは、どちらかが一方的に優れているというわけではなく、利用者の「保有資産の種類」と「資金が必要なタイミング・期間」によって適切な選択肢が分かれます。 検討にあたっては、目先の利便性だけでなく、将来の資産運用や返済計画への影響を正しく評価することが重要です。ここでは、それぞれのローンがどのようなニーズを持つ方に適しているのか、具体的な判断基準を整理します。 証券担保ローンを選ぶべきケース:運用の継続とスピードを優先する場合 まず、機動力を重視するなら証券担保ローンが候補となります。例えば、不動産の手付金支払いや期限が迫った納税など、「数日以内に現金が必要だが、保有株を売却してポートフォリオを崩したくない」という場面で価値を発揮します。 また、今後も株価の上昇や配当を期待している場合、売却による利益確定を避けながら現金を確保できるため、将来的な資産形成を阻害せずに資金調達を行いたい方に適しています。 ただし、株価変動に伴う追加担保のリスクなどがあるため、短期的な利用を前提とするかどうかも含めて慎重に判断する必要があります。 不動産担保ローンを選ぶべきケース:多額の資金を長期で安定した借り入れを希望する場合 一方、担保価値の高い不動産を所有しており、比較的高額な資金を必要とするなら、不動産担保ローンが向いています。 融資実行までに相応の時間はかかりますが、金融機関や対象物件の条件によっては、最長35年といった長期の返済期間を設定できる場合もあり、毎月の返済負担を抑えながら安定したキャッシュフローを維持することが可能です。証券担保ローンのような日々の時価変動による追証リスクを避け、腰を据えた長期的な資金計画を立てたい場合に最適な選択肢となります。 まとめ 証券担保ローンは、株などの有価証券を売らずに必要な資金を確保できる柔軟な手段の一つです。売却益への課税を先送りできるため、税負担の調整や資金効率の向上につながるのも魅力といえます。一方で、追加担保リスクや掛目制限、金利変動リスクなどの注意点もあります。利用前に証券会社の条件を比較し、無理のない返済計画を立てることが重要です。 また、担保価値の高い不動産を所有しているなら、まとまった資金の長期借り入れが可能な不動産担保ローンも選択肢のひとつといえます。 ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品や投資行動を勧誘するものではありません。金融商品の取引やローンの利用にはリスクが伴います。最終的な判断は、ご自身の判断と責任において行ってください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 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