2023.03.29

地目変更を検討すべきケースとは?手続きの方法と費用も解説

公開日:2023.03.29

土地は、その用途によって地目が定められています。保有している土地の使用方法が変わった場合は、地目変更の手続きが必要です。地目変更はどんなときに求められるのでしょうか。また、自分で行うことは可能なのでしょうか。

この記事では、地目変更の概要や検討すべきケース、手続き方法などを解説します。

地目変更とは

地目とは、土地の用途による分類のことです。地目変更は、土地の用途に変更があったときに登記上の地目を変更することを意味します。

地目:土地の用途による分類であって、第三十四条第二項の法務省令で定めるものをいう。(不動産登記法 第2条18)

出典)e-Gov法令検索(不動産登記法)

地目の種類

不動産登記事務取扱手続準則第68条において、地目は23種類に区分されています。主な地目とその用途は以下のとおりです。

地目用途
農耕地で用水を利用して耕作する土地
農耕地で用水を利用しないで工作する土地
宅地建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
学校用地校舎、附属施設の敷地及び運動場
山林耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
水道用地専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地
公衆用道路一般交通の用に供する道路(道路法による道路であるかどうかを問わない。)
公園公衆の遊楽のために供する土地
雑種地他の22地目のいずれにも該当しない土地

出典)法務省「不動産登記事務取扱手続準則 第68条」

なお、地目には「登記地目」と「課税地目」があります。

登記地目は、上述した不動産登記法で定められている地目のことで、登記簿で確認することができます。土地の利用状況が変化しても、申請を行わないと登記地目は変更されません。

一方、課税地目は、固定資産税の算出根拠となる地目のことで、毎年送られてくる固定資産税納税通知書や、市役所等で取得できる固定資産評価証明書で確認することができます。市区町村や税務署が現地調査によって判定しており、現況に変化があれば自動的に変更されるため、登記地目と課税地目が異なる場合もあります。

地目変更を検討すべきケース

地目変更を検討すべきケースは以下のとおりです。

土地の利用目的を変更したとき

所有している土地の利用目的を変更する場合は、地目変更が必要です。例えば、田や畑として使っていた土地を宅地に造成して家を建てるようなケースが該当します。

土地を担保に融資を受けたいとき

土地を担保に融資を受けるときは、地目と土地の使用目的が一致していることが条件となる場合があります。不一致の場合は融資を受けられない恐れがあるため、地目変更をしておくと安心です。

土地を売却したいとき

地目と土地の使用目的が異なる場合、売却前に地目変更をしておく必要があります。

田・畑などの農地は買い手が農家に限られるため、思うように売却できないかもしれません。場所や周辺環境にもよりますが、宅地に造成し、地目変更してから売りに出すほうが買い手を見つけやすいでしょう。

地目変更登記に関する注意点

地目変更の登記手続きを行う場合は、以下の点に注意が必要です。

期限までに変更しないと罰則がある

土地の用途に変更があった場合、その変更があった日から1ヵ月以内に地目変更登記の申請を行わなくてはなりません。申請を怠ると10万円以下の過料が科されるので、忘れずに手続きを行いましょう。

地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。(不動産登記法 第37条)
第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。(不動産登記法 第164条)

出典)e-Gov法令検索(不動産登記法)

固定資産税は地目ではなく現況で判断される

上述のとおり、地目には「登記地目」と「課税地目」があり、固定資産税の計算上は土地の現況(課税地目)で判断されます。例えば、登記地目が「畑」である土地を宅地として使用していれば、宅地とみなして課税されます。

農地と宅地の固定資産税額(本則)は、どちらも「課税標準額×1.4%」で変わりません。しかし、課税標準額は宅地のほうが大きくなることが多いため、結果として宅地は税額が高い傾向にあります。

地目変更の手続き方法

地目変更は、内容を正しく理解できれば自分で手続きを行うことも可能です。手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 土地の登記地目を調べる
  2. 土地の現況を確認する
  3. 地目変更登記の申請を行う

まずは、手元にある登記識別情報などで土地の登記地目を調べましょう。土地の現況を確認し、地目と現況が違っている場合は地目変更登記の申請を行います。申請から登記完了までは、1~2週間程度かかるのが一般的です。

地目変更登記の必要書類

地目変更登記の主な必要書類は以下のとおりです。

  • 土地地目変更登記申請書
  • 登記事項証明書
  • 農地転用許可書(農地を変更する場合)

土地地目変更登記申請書を法務局の窓口またはホームページで入手し、必要事項を記入して法務局に提出します。登記記録の内容を記入するため、土地の登記事項証明書も取得しておきましょう。

なお、田や畑などの農地を農地以外の地目に変更する場合は、都道府県知事の許可書も添付する必要があります。

地目変更登記にかかる費用

地目変更登記に登録免許税はかかりませんが、登記事項証明書を取得する際に、1通につき480円~600円の発行手数料がかかります。また、他の書類が必要な場合は、その発行費用がかかる場合があります。

地目変更登記を土地家屋調査士などに依頼する場合は、別途報酬を支払う必要があります。依頼先によって異なりますが、土地1筆(1個)につき5万円程度が相場となっています。

まとめ

保有している土地の用途に変更があった場合は、地目変更登記が必要です。申請を怠ると過料を科される可能性があり、売却などに支障が出る恐れもあります。地目変更を自分で行うのが難しい場合は、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。

執筆者紹介

大西 勝士(Katsushi Onishi)
金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。
<運営ブログ>
https://www.katsushi-onishi.com/

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