相続で不動産担保ローンを活用する4つの事例を紹介

更新日: / 公開日:2021.07.07

不動産を含む相続が発生した時、相続税の支払いや遺産分割の方法によっては、まとまったお金が必要になることがあるでしょう。そのような時、不動産担保ローンを活用できるかもしれません。

この記事では、相続時に不動産担保ローンを活用する4つの方法をご紹介していきます。

相続で不動産担保ローンを活用する4つの事例

一口に「相続で不動産担保ローンを活用できる」と言っても、「相続が発生してから」活用する場合と「相続が発生する前に」活用する場合の大きく2つが考えられます。

また、相続が発生してから不動産担保ローンを利用するケースは、「相続税の支払いに利用する」「法定相続分の支払いに利用する(代償分割)」「遺留分の支払いに利用する」ケースの3つにわかれます。さらに、相続が発生する前に不動産担保ローンを利用するケースは、「親族間売買をする」ケースが考えられます。順に解説します。

相続税の支払いに利用する

相続が発生し、その相続財産の価値が控除分を超えるとき、相続税を支払う必要があります。そして、相続税として納める税金は基本的に現金で用意しなければなりません。相続財産として不動産だけでなく、まとまった現金も相続した場合では、相続税の支払いを現金で用意できるかもしれません。一方で、相続財産が不動産だけの場合など、現金が足りないこともあるでしょう。

相続税は相続があったことを知ったときから10カ月以内に納める必要があります。流通性の高い不動産であれば、期間内に相続不動産を売却して相続税の支払いをすることもできますが、流通性が低く売却までに時間がかかることもあります。このような時に、不動産担保ローンの活用は有効な手段の一つです。

法定相続分の支払いに利用する(代償分割)

相続方法にはいくつかの種類がありますが、代償分割を選んだ場合にも、不動産担保ローンを活用できます。代償分割とは、相続人の内の誰かひとりまたは数人が不動産などの現物を相続し、その他の相続人に対して相続分に応じた現金を支払う方法です。

法定相続分の支払いに利用する事例

たとえば、相続財産が3,000万円で、配偶者と子2人の相続人がいるケースを考えてみましょう。配偶者と子の場合の法定相続分は配偶者と子が2分の1ずつです。そのため、子供が2人のとき、配偶者の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は4分の1ずつとなります。

相続財産3,000万円が全て現金であれば、配偶者に1,500万円、子に750万円ずつ相続させることが可能です。しかし、相続財産が不動産しかない場合、簡単に分割することができません。こうした場合に、ひとりの子が不動産を相続して、不動産を相続しなかった配偶者や子に法定相続分に応じた支払いをするといった方法があります。この方法を代償分割と呼びます。

上記の場合、他の相続人に支払うための資金を現金で用意しなければなりませんが、多額の現金を手元から支払うのは難しいでしょう。不動産担保ローンを活用すれば、相続不動産を担保に代償分割のための資金を借りられます。

遺留分の支払いに利用する

遺留分の支払いに不動産担保ローンを活用することも考えられます。遺留分とは配偶者や子、直系尊属(※1)など、一部の法定相続人(※2)が取得できる一定割合の相続財産のことです。その遺留分の総額は相続財産全体の2分の1で、法定相続人が直系尊属のみの場合は3分の1となります。また、遺留分の総額から法定相続人の法定相続分に応じて遺留分が決定します。

※1被相続人の父母、父母がどちらも亡くなっている場合は祖父母

※2兄弟姉妹や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合に相続人となる甥姪には遺留分が認められていません。

法定相続人にはそれぞれ法定相続分が決められていますが、遺言によって、法定相続人以外や法定相続分とは異なる配分で相続がなされることがあります。しかし、遺留分が認められている法定相続人は、自分に認められた遺留分までであれば、相続後に遺留分減殺請求を求めることができます。

遺留分の支払いに利用する事例

例えば、先ほどと同様に相続財産が3,000万円で、配偶者と子2人の相続人がいる場合で、被相続人の遺言によって、子の内の1人だけにこの3,000万円の相続がされるケースを考えてみましょう。

相続人が配偶者と子なので、相続財産全体の2分の1が遺留分の総額として扱われます。そして、法定相続分は配偶者と子ともに2分の1となるので、遺留分は配偶者が4分の1、子が8分の1ずつとなります。つまり、相続財産を受け取れない配偶者は、相続財産の4分の1である750万円、子は相続財産の8分の1である375万円分の遺留分減殺請求できます。

遺留分減殺請求を受けた側は現金で支払わなければなりませんので、相続不動産を担保とした、不動産担保ローンを活用することで問題を解決できるかもしれません。

親族間売買をする

相続発生前に、あらかじめ不動産の親族間売買をする場合には、不動産担保ローンの利用が考えられます。居住用財産で、自己居住用であれば住宅ローンを利用することも考えられますが、そうでない場合には住宅ローンの利用はできません。また、銀行などの金融機関では一般的に親族間売買を取り扱っていません。

一方で、不動産担保ローンであれば住宅ローンのように自己居住用でなければならないといった制約はなく、親族間売買でも取り扱うことの出来る可能性があります。ただし、住宅ローンと比べると金利が高いなど、融資条件が悪くなってしまう点には注意が必要です。

まとめ

相続時に不動産担保ローンを利用する4つの事例を解説しました。不動産の相続では相続税の支払いに現金を用意できず困る場合があるでしょう。また、速やかに売却活動を行っても、中々買い手が見つからず、相続税の支払いに間に合わない場合もあります。

このような場合、不動産担保ローンを有効に活用出来るかもしれません。その他にも、遺留分や代償分割など活用できる機会は多いため、手元資金が不足する時には、不動産担保ローンを検討してみるといいでしょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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