フラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つのポイント

更新日: / 公開日:2024.05.03

フラット35で住宅ローンを組んだ人の中には、返済中に手元資金が増えたことで、繰り上げ返済を検討する方もいるのではないでしょうか。手元資金に余裕ができたタイミングで繰り上げ返済を検討するのは自然な流れですが、実際には得するケースもあれば、損するケースもあるため、慎重な判断が求められます。

この記事では、フラット35の繰り上げ返済をする前に確認すべき重要なポイントをわかりやすく解説します。

そもそも住宅ローンの繰り上げ返済とは

住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に借入額の一部を返済する方法です。繰り上げ返済は全て元金に充てられるため、減少した分の元金に対する支払利息がなくなり、結果として住宅ローンの総返済額を抑えられます。

繰り上げ返済の方法は以下2つです。

  • 期間短縮型:返済期間を短縮する方法
  • 返済額軽減型:毎月の返済額を軽減する方法

総返済額を抑える効果がより高いのは期間短縮型です。どちらの方法を選択しても、繰り上げ返済の金額が大きく、繰り上げ返済をした時期が早いほど得られる効果は高くなります。

住宅ローンの総返済額を少しでも減らしたい場合は期間短縮型、毎月の返済額を減らしたい場合は返済額軽減型を選ぶと良いでしょう。

繰り上げ返済のメリット

繰り上げ返済を行うことで、住宅ローンの総返済額を減らすことができます。特に、返済初期にまとまった金額を返済すると、より利息の軽減効果が大きくなり、場合によっては100万円以上の差が生じることもあります。また、返済期間を短縮することで、早期完済による安心感を得られる点もメリットのひとつです。

繰り上げ返済の効果は、金額が大きいほど、そして早い時期に行うほど高くなります。事前にシミュレーションツールを活用して、どれくらい得になるかを確認しておくと安心です。

繰り上げ返済のデメリット

一方で、繰り上げ返済には手元資金が減るというデメリットがあります。生活費や急な出費に備える余裕がなくなると、病気やケガ、退職など予期せぬ事態に対応できなくなる恐れがあります。

繰り上げ返済を検討する際は、無理のない範囲で行うことが大切です。生活資金や予備費を十分に確保したうえで判断するようにしましょう。

フラット35の繰り上げ返済の特徴

フラット35では、繰り上げ返済時の手数料が原則としてかかりません。これは、民間の住宅ローンと比べて大きなメリットのひとつです。ただし、フラット35を「保証型」で利用している場合は、金融機関によって手数料が発生することがあります。契約形態によって条件が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

フラット35の繰り上げ返済の流れ

繰り上げ返済を希望する場合は、返済希望日の1か月前までに金融機関へ申し出る必要があります。その後、指定された期日までに必要書類を提出し、手続きが完了すると、予定日に繰り上げ返済が実行されます。

また、フラット35の「買取型」を利用している場合は、住宅金融支援機構が提供するWebサービス「住・MyNote」を使って、繰り上げ返済の手続きをオンラインで完結させることも可能です。事前登録が必要ですが、窓口に出向くことなく申し込みができるため、利便性の高い方法です。ただし、「保証型」で契約している場合は、「住・MyNote」は利用できません。

フラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つの判断ポイント

繰り上げ返済をした方が良いかどうかは、個人の考え方や状況によって異なります。これまでに紹介したメリットとデメリットを踏まえたうえで、以下の3つのポイントを確認しながら、繰り上げ返済をするかどうかを判断していきましょう。

ポイント①:住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の0.7%を所得税(一部は翌年の住民税)から最大13年間控除できる制度です。控除期間中に繰り上げ返済を行うと、年末残高が減るため、控除額が少なくなる恐れがあります。

では、控除期間が終了した13年目以降に繰り上げ返済をすれば良いのかというと、必ずしもそうとは限りません。以下では、4,000万円を35年固定金利で借り入れた場合に、「5年後に400万円を繰り上げ返済するケース」と「15年後に同額を繰り上げ返済するケース」を比較したシミュレーション結果を紹介します。

金利0.5%の住宅ローンに400万円分繰り上げ返済した場合※1

5年後15年後
A.繰り上げ返済による利息軽減額607,226円384,534円
B.住宅ローン控除額※22,709,688円2,966,799円
A+B3,316,914円3,351,333円

※1 借り入れは1月、繰り上げ返済は12月に行うと仮定してシミュレーションしています。
※2 各年12月時点の残高に0.7%を乗算した金額の総和を、住宅ローン控除額としています。

まず、金利が低い場合は、5年目(控除期間中)と15年後(控除期間終了後)にほとんど差がないことから、手元資金を残しておくという観点で、15年後に繰り上げ返済をした方が良いと言えるでしょう。

金利2.0%の住宅ローンに400万円分繰り上げ返済した場合※1

5年後15年後
A.繰り上げ返済による利息軽減額2,987,026円1,766,093円
B.住宅ローン控除額※22,822,276円3,095,609円
A+B5,809,302円4,861,702円

※1 借り入れは1月、繰り上げ返済は12月に行うと仮定してシミュレーションしています。
※2 各年12月時点の残高に0.7%を乗算した金額の総和を、住宅ローン控除額としています。

一方で、金利が高い場合は、15年後(控除期間終了後)よりも5年目(控除期間中)に繰り上げ返済をした方が有利なことが分かります。

このように、借入額が同じでも、住宅ローンの金利によっては、控除期間中に繰り上げ返済をした方が有利な場合と、控除期間終了後に行った方が有利な場合があります。

金銭的にどちらが効果的かを判断するには、住宅ローン控除の影響を含めたシミュレーションを行うことが重要です。加えて、繰り上げ返済手数料の有無や、所得税と住民税の合計額から控除を十分に活用できるかどうかも、併せて確認しておきましょう。

ポイント②:団体信用生命保険

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金によってローン残高が完済される仕組みです。

団信を生命保険の一種と捉えると、一般的な生命保険と比べて、かなり低い保険料で保障を受けられているとも言えます。繰り上げ返済をせずにローン残高を残しておけば、万が一の際には、ローンが完済されるだけでなく、手元資金を家族に残すことも可能です。

ただし、一般的な生命保険は、住宅ローンの返済以外にも、生活費や教育費など、幅広い目的で加入するものです。目的が異なるため、団信と一般の生命保険を単純に比較することは適切ではないとも考えられます。

団信と生命保険は、それぞれの役割を理解したうえで、併用も含めて検討することが重要です。実際に万が一のことが起きるかどうかは誰にも分かりませんが、繰り上げ返済によって保障の範囲が狭まる恐れがあることは、判断材料のひとつとして押さえておくべきでしょう。

ポイント③:資産運用

手元資金を繰り上げ返済に充てるのではなく、資産運用に回すという選択肢もあります。資産運用によって、繰り上げ返済による利息軽減効果以上のリターンを得ることを目指す考え方です。2024年から新NISAがスタートし、積立投資を始めやすい環境が整っていることも追い風となっています。

ただし、投資には元本割れのリスクがあり、必ずしも利益が得られるとは限りません。住宅ローンの金利よりも高い利回りで安定的に運用できるのであれば、繰り上げ返済よりも資産運用の方が有利になる可能性があります。しかし、金利が高いほどそれを上回るリターンを得るのは難しくなり、リスクも大きくなる点には注意が必要です。

リスクを受け入れて資産運用によるリターンを追求するか、確実に利息を減らせる繰り上げ返済を選ぶかは、個人のリスク許容度や価値観によって異なります。どちらが正しいという答えはなく、自分に合った方法を選ぶことが重要です。

まとめ

繰り上げ返済をした方がいいかどうかは、金銭的な損得だけでなく、個人の価値観やライフスタイルによっても異なります。損得を重視する場合は、「住宅ローン控除」「団信(団体信用生命保険)」「資産運用」の3つのポイントを確認し、シミュレーションを行ったうえで判断することが重要です。

一方で、「借金が残っていると不安だから、早く返済して安心したい」といった気持ちを優先するなら、金銭的なメリットにこだわりすぎず、自分の意思を尊重して繰り上げ返済を選ぶのもひとつの判断です。

ただし、病気やケガ、退職などで急に資金が必要になる恐れもあるため、繰り上げ返済をする場合は無理のない範囲で行い、生活費や予備資金など、一定の手元資金を残しておくことが大切です。

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執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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