2019.07.09

地価LOOKレポートとは?地価の先行指標として活用しよう

公開日:2019.07.09

国土交通省は、2019年6月に『地価LOOKレポート』を発表しました。このレポートは、それほど知名度は高くありませんが、主要都市の地価動向をタイムリーに明らかにしてくれる貴重な調査となっています。そもそもどんなレポートなのか、今回の結果はどんな内容になっているのかについて、順を追って解説をしていきましょう。

不動産業界が注目する速報性を重視した地価の統計

国内の地価に関する統計としては、公示地価をはじめとして、基準地価や路線価といったものが広く知られています。地価 LOOK レポート(正式名称は「主要都市の高度利用地等の地価動向報告」)は、そうした統計と比べると一般的ではありませんが、不動産業界では地価の〝先行指標〟として非常に注目されています。

地価 LOOK レポートは、国土交通省が四半期ごとに発表している統計。実際には、「一般財団法人 日本不動産研究所」に委託して、100名以上の不動産鑑定士によって調査されているものです。公示地価や路線価との違いは、調査対象となる地域を絞っている点です。対象地域は、主要都市とその周辺に限定しており、全国 の100地区となっています。公示地価の調査地点は2万6000地点(2018年)、基準地価は2万1644地点(2017年)、路線価は約33万1000地点 (2018年)ですから、大きな差があります。

また、前述した全国100地区の内訳は、東京圏43 地区、大阪圏25 地区、名古屋圏9地区、地方圏23 地区となっていますが、その地区内において、細かく場所が特定されてはいません。例えば、東京都新宿区では、「新宿三丁目」と「歌舞伎町」の2か所が調査対象地区で、新宿三丁目であれば、「東京メトロ丸ノ内線・副都心線の新宿三丁目駅周辺。新宿通り沿いを中心に百貨店、中高層の店舗ビル等が集積する高度商業地区。」という所までしか、場所は特定されていないのです。ほぼ住所まで特定されている、公示地価や基準地価とは対照的なデータとなっています。

このように、地価 LOOK レポートは、調査対象地点が少なく、場所も住所までは特定されていないという〝欠点〟があります。それにも関わらず、不動産業界で注目されているのは、地価の動向について先行性があるからです。公示地価や基準地価、路線価は年1回しか発表されません。それに対して、地価 LOOK レポートは年4回発表されます。3か月ごとに調査されているので、地価が上昇しているのか下落しているのか、あるいは、横ばいになっているのかといった、傾向がつかみやすいのです。

したがって、地価LOOKレポートを継続して追っていると、公示地価や基準地価、路線価といった代表的な地価が、どういう動きをするのかが、ある程度予想できるようになります。調査対象地点を絞り、細かい住所までは特定できませんが、その分調査回数を増やすことで、地価の動向をいち早く明らかにする――これが地価LOOKレポートの役割といえるでしょう。

都心の一部では地価の上昇傾向が強まる

そこで、改めて6月に発表されたデータを見てみます。調査時期は2019 年1 月1日~4 月1日です。まず、国土交通省の総括としては、「主要都市の地価は全体として緩やかな上昇基調が継続」といったものですが、注目されるのは、地価が横ばいとなっている地区が減少する一方、上昇率が3%以上6%未満(前期比/四半期の変動率。以下同)という、国土交通省が「比較的高い上昇」と規定している上昇率を記録した地区が増えていることです(グラフ参照)。

上昇のおもな要因として、国土交通省は次のような点を挙げています。
・空室率の低下、賃料の上昇等堅調なオフィス市況
・再開発事業の進展による魅力的な空間・賑わいの創出
・訪日外国人の増加による旺盛な店舗、ホテル需要
・利便性の高い地域等での堅調なマンション需要
上記の要因が、「景気回復、雇用・所得環境の改善、低金利環境」という国内景気の現状と相まって、オフィス、店舗、ホテル、マンションといった不動産投資全般が堅調にある、とまとめています。

東京都内の地区を個別に見てみると、43地区中、地価の上昇率が3%以上6%未満と「比較的高い上昇」となったのは、新宿区の歌舞伎町(JR山手線の新宿駅の北方に位置し、西武新宿駅東側、靖国通りの北側一帯)と渋谷区の渋谷(JR山手線の渋谷駅周辺一帯)の2地区でした。この3%以上6%未満という上昇率は、3か月ごとの四半期の変動率ですので、年率に換算するとかなり高い上昇率ということになります。

都心部は、すでに2020年の東京オリンピックに関連するさまざまな不動産投資がピークを越えたと言われ、不動産市況もいったん落ち着くのではないか、といった見方もありました。しかし、現状は、地価の底上げが続いており、一部では過熱に近い状況にあるということができるでしょう。このように、地価LOOKレポートは、タイムリーな地価の動向を教えてくれるデータとなっているのです。

令和元年第1四半期の地価LOOKレポート
 

出典)国土交通省「主要都市の地価は97%の地区で上昇基調
~令和元年第1四半期の地価LOOKレポートの結果~」(2019)よりグラフを抜粋


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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