公開日:2025.05.07
1つの不動産を複数人で所有する際、重要となるのが「共有持分」の考え方です。夫婦で不動産を購入する場合や相続などで共有持分となった場合、どんなことに注意すればよいのでしょうか。この記事では、共有持分の概要や不動産を共有名義で購入するメリット・デメリット、売却方法について解説します。
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有するときに、各共有者が持つ所有権の割合です。共有者は、この持分割合に応じて不動産の使用や管理などの権利を持つと同時に、固定資産税などの費用を負担する義務を負います。
一般的に、共有持分の割合は不動産購入時に負担した金額の割合で決まります。例えば、夫婦で3,000万円の住宅を購入する場合、夫が2,000万円、妻が1,000万円費用を負担した場合、夫の持分割合は3分の2、妻の持分割合は3分の1となります。
相続で共有持分となる場合は、法定相続分に基づいて持分割合が決まることが一般的ですが、遺産分割協議によって異なる割合を定めることもできます。
共有持分を持つ共有者は、共有物に対して権利が与えられるとともに、権利に対して制限も受けます。民法上の規定としては以下のように定められています。
共有物の使用 (民法第249条第1号) | 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 |
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共有物の変更 (民法第251条第1号) | 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。 |
共有物の管理 (民法第252条第1号) | 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。 |
共有物の管理者 (民法第252条の2 第1号) | 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。 |
出典)e-Gov法令検索「民法」(第249条第1項、第251条第1項、第252条第1項、第252の2条第1項)
不動産を共有名義で購入するメリットは以下のとおりです。
ペアローンは、1つの不動産に対して夫婦(または親子)がそれぞれ住宅ローンを組む方法です。不動産は夫婦の共有名義となり、それぞれの借入金額に応じて持分が決まります。
共有名義で購入する場合、夫婦や親子の収入を合算して住宅ローンの審査を受けられます。単独で契約するよりも借入可能額を増やすことができるため、物件の選択肢が広がります。
不動産を共有名義で購入する場合、一定の要件を満たすと、共有者がそれぞれ住宅ローン控除を利用できます。所得税や住民税の節税効果も期待することができます。
共有名義で不動産を購入する場合は、以下のようなデメリットもあります。
共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。共有者の中に反対する人がいる場合、単独では不動産全体を自由に売却できません。共有者全員で合意形成を図る必要があるため、時間と労力がかかります。
不動産の修繕の必要性や実施時期、費用負担の割合などに対する考え方は人によって異なります。そのため、共有名義の不動産は、使用や管理、費用の分担などについて共有者間でトラブルが発生しやすい傾向にあります。
共有者の1人が亡くなった場合、その持分は相続の対象となります。相続人が複数いる場合は権利関係がより複雑になるため、不動産を有効活用するのが難しくなるかもしれません。
共有名義の不動産であっても、他の共有者の許可を得ることなく、自分の持分のみを売却することは可能です。具体的には、以下4つの方法があります。
自身の持分を他の共有者に買い取ってもらう方法です。他の共有者が、不動産の単独所有を希望している場合に有効です。売却価格は共有者間の協議によって決定されます。
分筆とは、1つの土地を複数の土地に分割してそれぞれ登記することです。土地の場合は、分筆して持分相当の土地を単独所有とし、それを売却することも可能です。土地の分筆にあたって筆界確認が必要となる場合は、筆界特定制度の活用を検討するとよいでしょう。
一般的な不動産売買と同じように、仲介業者に依頼して共有持分の買主を探してもらう方法です。ただし、そもそも持分だけを買い取りたい買主が限られるため、買主を見つけるのに時間がかかったり、希望価格での売却が難しかったりします。
買取業者に共有持分を直接買い取ってもらう方法です。持分買取を専門としている不動産会社もいるため、仲介に比べると短期間で現金化できる可能性があります。ただし、買取価格は仲介での売却より低くなる傾向にあります。
共有持分をスムーズに売却するには、以下3つのポイントを押さえておくことが重要です。
共有持分での売却は需要がそもそも少ないため、売却自体が難航したり、希望価格での売却が難しかったりします。そのため、他の共有者と相談し不動産を売却することの合意を得る方がいいでしょう。
それでも話しがまとまらない場合などは、複数の不動産業者に相談し、経済条件だけでなく後々トラブルにならないように意思決定をするようにしましょう。
不動産を共有名義で購入するとローンを組みやすくなる一方で、「自由に売却できない」「共有者間でトラブルが発生しやすい」などのデメリットがあります。共有持分を売却する場合は、仲介業者や買取業者への依頼、他の共有者への売却などを検討しましょう。
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