公開日:2023.08.30
介護老人保健施設は、介護保険施設のひとつです。老健とも称され、介護保険法に基づいてサービスが提供されます。介護老人保健施設への入所を検討しているなら、あらかじめ必要な情報を集めておくことが大切です。
この記事では、介護老人保健施設の特徴や費用、入所条件などの基本的な内容と、施設を選ぶ際のポイントと注意点について解説します。
介護老人保健施設とは、要介護者を対象に、在宅復帰や在宅療養支援を行うための施設です。リハビリを中心とした心身の機能維持と改善の役割を担っており、長く入所することを目的とした施設ではありません。介護保険法では、次のように定義されています。
介護老人保健施設は、施設の人員数や設備の基準が厚生労働省によって細かく定められています。
介護老人保健施設は、厚生労働省によって、サービスを提供するうえでの必要な人員が、以下のとおり定められています。
・介護老人保健施設の人員基準
介護老人保健施設は常勤の医師がおり、看護職員もしくは介護職員が24時間常駐しています。夜間対応の体制が整えられているため、専門職員による医療ケアを受けられます。
介護老人保健施設は、厚生労働省によって、サービスを提供するうえでの必要な設備が、以下のとおり定められています。
・介護老人保健施設の施設及び設備
介護老人保健施設は入所者が適切な環境で過ごせるよう、設備にも基準が設けられています。適切な環境で専門職員による、介護やリハビリ等のサービスを受けられます。
介護老人保健施設にかかる費用は、「施設サービス費」「居住費と食費」「その他日常生活費」の大きく3つに分けられます。
まず、「施設サービス費」は、介護保険の対象となるサービスに該当するため、利用者の自己負担額は1割~3割です。自己負担の割合は所得があるか否か、などによって変わります。たとえば、要介護5の人が多床室を利用し、自己負担額を1割とした時、1か月の自己負担額の目安は、約25,200円です。
次に、「居住費や食費」「その他日常生活費」は、介護保険の対象外となるため、全額が自己負担です。前述と同様に、たとえば、要介護5の人が多床室を利用した場合、居住費が約25,650円、食費が約43,350円、日常生活費が約10,000円です。
つまり、自己負担額1割の要介護5の人が介護老人保健施設の多床室を利用する場合、1か月の負担額は約104,000円です。なお、介護老人保健施設にかかる費用として、実際に自己負担額として支払った金額は、全て医療費控除の対象となります。
介護老人保健施設の「入所条件」として、一律で定められた案内はありません。一方で、介護老人保健施設を利用できる人は、前述のとおり「要介護者である」ことが条件となっています。そのため、要介護認定を受けていない人の最初の手続きは、「要介護認定を受けること」になるでしょう。
要介護認定の手続きは、市区町村を通じて以下の手順で行います。
厚生労働省が公表している、介護老人保健施設の要介護度別の入所者数のグラフを紹介します。結果は以下のとおりです。
・介護老人保健施設の要介護度別の入所者数
まずは、いずれの要介護者も年々増加していることがわかります。これは、日本人の平均年齢が上がっていることからも、当然の結果と言えるでしょう。また、介護度に注目すると、要介護1が少ないことが分かります。これは、要介護1の状況は軽度であるため、介護老人保健施設を利用するまでもないと考えている人が多いからかもしれません。
介護老人保健施設を選ぶときは、事前に押さえておくべきポイントがあります。
在宅復帰率とは、介護老人保健施設を退所して、在宅の暮らしに復帰できた割合を示すものです。介護老人保健施設はリハビリなどの医療ケアを通じて、在宅復帰を目指すことを目的としています。そのため、リハビリを受けた結果、どれくらいの割合で自宅に戻れるのかが、介護老人保健施設を選ぶポイントになります。
厚生労働省の公表している「介護老人保健施設における看取りの基本的な方針について」の調査結果によると、在宅復帰率が高い施設は積極的に施設内見取りを行っている傾向がある、という結果が出ています。
・介護老人保健施設における看取りの基本的な方針について
介護老人保健施設に入所後、必ずしも自宅に戻れるとは限りません。そのため、看取りに関する施設側の対応方針も確認しておきましょう。看取り対応の有無や、どのような体制で看取りを行ってもらえるかなど、細かな部分まで疑問点を解消しておきましょう。
施設を選ぶときは、できるだけ事前に見学を行うと安心です。実際に目でみることで、ホームページの情報だけでは分からない部分にも気付けます。見学を行う際は、入所者の様子や職員の対応、施設の清潔感や設備の安全性などを確認しましょう。気になる点は職員に直接尋ねられるので、不安の解消にも繋がります。
介護老人保健施設を利用する際、注意しておきたい点もあります。
介護老人保健施設の入所期間は、原則として3ヶ月です。入所期間が限られているのは、自宅への復帰を目的としたリハビリサービスの提供が中心であるためです。そのため、退所後にどのようなサポートを受けるか、についてもあらかじめ検討しておきましょう。
あくまで、リハビリサービスの提供を行う施設であるため、生活支援としての買い物や洗濯などには対応しない施設もあります。入所を検討している施設が、どの程度までの支援を受けられるのか、事前に確認しておきましょう。
医療費や薬代は施設側が負担してくれる一方で、施設に相談することなく、薬の処方や診療を受けてしまうと、全額自己負担となることもあります。施設自体に診療や薬の処方を受けられる環境は整っていますが、必要な薬の種類や量によっては、制限を受ける恐れもあるので注意しましょう。
介護老人保健施設は、介護保険法に基づく公的な施設であり、主にリハビリを中心にサービス提供を行っています。医師や看護師が常駐しており、利用者は手厚い医療ケアを受けられるのが特徴です。心身の機能維持と改善を図り、在宅復帰を目指すために上手に活用しましょう。
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