2023.02.22

終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

公開日:2023.02.22

終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借契約の概要やメリット・デメリット、手続きの流れについて解説します。

終身建物賃貸借契約とは?

終身建物賃貸借契約とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢者単身・夫婦世帯等が終身にわたり安心して賃貸住宅に居住することができる仕組みとして、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する相続のない一代限りの借家契約です。

賃借人は生涯同じ家で安心して生活でき、一代限りの契約であるため、死亡時に相続は発生しません。基本的に入居できるのは60歳以上に限られます。ただし、60歳以上の配偶者との同居であれば、60歳未満でも入居ができます。

なお、終身建物賃貸借契約をするには、対象となる不動産が都道府県知事の認可を受けている必要があります。また、賃貸住宅が一定の基準に適合していることも要件です。

出典)東京都住宅政策本部「終身建物賃貸借制度」

終身建物賃貸借契約のメリット

終身建物賃貸借契約のメリットは以下のとおりです。

死亡するまで住み続けられる

終身建物賃貸借契約は契約期間が終身であるため、賃借人が死亡するまで同じ家に住み続けられ、賃貸人からの解約は、原則以下のとおりです。

  • 老朽や損傷などにより、住宅を維持できない場合
  • 入居者が長期にわたり居住しておらず、住宅の管理が困難な場合
  • 入居者に不正行為や公序良俗に反する行為、事実が判明した場合

中途解約は基本的に都道府県知事の承認が必要です。それに加え、6か月前に入居者に対して解約の申入れを行わなければならず、急に賃貸人から退去を求められることが少ない点も安心です。

なお、老人ホームへの入所や親族との同居などの理由で居住できなくなった場合は、1ヵ月前に申入れを行うことで、賃借人からの解約が可能です。

契約終了後の手続きが簡単

終身建物賃貸借契約は、賃借人の死亡によって契約が終了します。相続が発生せず、契約終了の手続きが不要のため、相続人に迷惑をかけずに済みます。同居配偶者は、賃借人の死亡を知った日から1ヵ月以内に申し出れば、引き続き居住が可能です。

バリアフリーの要件を満たしている

終身建物賃貸借契約の対象不動産は、一定のバリアフリー基準を満たしています。「段差のない床」「浴室等の手すり」などが備わっており、高齢者にとっては住みやすいでしょう。

高齢者でも家を借りられる

一般的な賃貸住宅では、健康面や金銭面の不安から高齢者の入居を敬遠するケースもあります。それに対し、終身建物賃貸借契約は、高齢者が生涯にわたって賃貸住宅に居住できる制度であるため、高齢を理由に入居を断られる心配がありません。

更新料がかからない

普通建物賃貸借契約では契約期間が定められており、契約更新の際に家賃1ヵ月分の更新料がかかるのが一般的です。一方、終身建物賃貸借契約は契約期間が終身のため、更新料はかかりません。同じ家に長く住む場合は、住居費の負担軽減が期待できます。

終身建物賃貸借契約のデメリット

終身建物賃貸借契約には、以下のようなデメリットもあります。

事前に認可されている不動産でないと利用できない

終身建物賃貸借契約を利用できるのは、都道府県知事から認可を受けた不動産に限られます。認可されている不動産はまだ少ないので、住みたいエリアに終身建物賃貸借契約に対応した物件がない可能性もあります。

同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できない

終身建物賃貸借契約は、賃借人や同居人に一定の制限があります。賃借人は、基本的に60歳以上の高齢者に限られます。また、同居配偶者や60歳以上の親族以外は入居できないので注意が必要です。

終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違い

終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約、定期建物賃貸借契約の違いは以下のとおりです。

区分終身建物賃貸借契約普通建物賃貸借契約定期建物賃貸借契約
契約の方法公正証書等の書面による契約に限る書面でも口頭でも可公正証書等の書面による契約に限る
期間または期限賃借人の死亡に至るまで1年以上または期間の定めなし期間の定めなし
契約の更新無し正当事由がない限り更新更新なし、再契約が必要
賃料増減額請求権増減を請求できる※1増減を請求できる※2増減を請求できる※3
相続の有無無し有り有り

※1 賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない
※2 賃料を増額しない特約があるときは増額を請求できない
※3 増減額請求権を排除する特約を定めることが可能

終身建物賃貸借契約は、契約方法が公正証書等に限られ、契約期間が終身で更新や相続がないのが特徴です。

終身建物賃貸借契約の手続き方法

終身建物賃貸借契約は、賃借人側に特別な準備は必要ありません。都道府県ごとに、終身建物賃貸借契約が利用できる住宅一覧が公表されているため、確認して問い合わせてみましょう。入居したい物件が見つかったら、賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結します。

出典)東京都終身認可住宅一覧(令和5年4月1日現在)

賃貸人の手続き

賃貸人が終身建物賃貸借契約をするには、事前に都道府県知事の認可を受ける必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。

  • 賃貸住宅の概要や賃貸条件等を記載した「事業認可申請書」を作成する
  • 間取図等の必要な書類を添付する
  • 都道府県知事等の自治体の長に提出する

一定のバリアフリー基準等に適合していることが要件となるため、物件の状況によっては手すりの設置などの対応も必要です。

出典)国土交通省住宅局安心居住推進課「終身建物賃貸借契約の手引き」

まとめ

高齢者は、健康面や金銭面の問題で賃貸住宅の入居を断られるケースが少なくありません。しかし、終身建物賃貸借契約を利用できる不動産であれば、高齢者でも安心して同じ家に住み続けられます。老後も賃貸暮らしを続けたい場合は、終身建物賃貸借契約に対応した物件を探してみてはいかがでしょうか。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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