公開日:2025.07.02
住宅ローンを利用して自宅を購入する場合、「年収1,800万円の世帯は、どのくらい借りられるのか」と気になる方もいるかもしれません。共働き世帯では、世帯年収を合算できるため、借入可能額が単身世帯より高くなる傾向があります。
この記事では、年収1,800万円の世帯が借りられる住宅ローンの目安を解説します。さらに、返済シミュレーションや住宅ローンを組む場合の注意点も紹介します。
住宅ローンの借入可能額は、金融機関が申込人の返済能力や不動産の価値などを総合的に判断して決定します。一般的には、以下のような項目が重要視されます。
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。住宅ローンは給与などの収入から返済されるため、申込者の返済能力を判断する指標となります。例えば、住宅金融支援機構の全期間固定金利フラット35では、返済負担率の基準が以下のとおり設定されています。
融資率とは、不動産の購入金額に対する住宅ローンの借入金額の割合です。以下の算式で計算します。
融資率の上限は、金融機関や住宅ローン商品ごとに異なります。最近では融資率100%で融資を受けることができる住宅ローン商品もありますが、一般的に不動産価格の10~20%程度の頭金を準備したほうが良いともされています。融資率が高いほど自己資金は少なく済む一方で、金融機関から提示される金利が高くなったり、審査が厳しくなったりします。
金融機関は、申込者の年収や勤務先、勤続年数をもとに返済能力を判断します。そのため、収入の安定性や勤務先、勤続年数、預貯金などが審査の対象となり、借入可能額に影響を与えます。
一般的に金融機関は、申込者が住宅ローンを組む際、購入する不動産に抵当権を設定します。申込者が万が一住宅ローンを返済できなくなると、金融機関は抵当権を実行して担保不動産を売却し、借入金の返済に充当します。このような仕組みのため、不動産の担保価値も住宅ローンの借入可能額を決定する重要な要素となります。
金融機関は、住宅ローンの申込条件として、借入期間や完済時年齢を設定しています。借入期間は最長35年、完済時年齢は80歳未満とする金融機関が一般的です。若いうちに借り入れをするほうが、借入期間を長く設定できるため、借入可能額を増やすことができます。
ここでは、住宅金融支援機構のデータを用いて、年収1,800万円の世帯の住宅ローン借入可能額の目安を紹介します。
住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローン利用者の年収倍率は住宅の種類に応じて5.3倍~7.6倍となっています。年収倍率とは、住宅購入の所要資金を年収で割った数値です。仮に融資率が100%だとすると、年収1,800万円の世帯の借入可能額は以下のように計算できます。
住宅種別 | 年収倍率 | 年収1,800万円の世帯の借入可能額 (1,800万円×年収倍率) |
---|---|---|
土地付注文住宅 | 7.6倍 | 1億3,680万円 |
マンション | 7.2倍 | 1億2,960万円 |
注文住宅 | 7.0倍 | 1億2,600万円 |
建売住宅 | 6.6倍 | 1億1,880万円 |
中古マンション | 5.6倍 | 1億80万円 |
中古戸建 | 5.3倍 | 9,540万円 |
出典)住宅金融支援機構「2023年度 フラット35利用者調査」をもとに筆者作成
ただし、これらはあくまでもデータをもとに算出した金額です。実際の借入可能額は、個人の返済能力や不動産の条件などによって変動します。
前述の年収倍率から借入可能額を1億3,680万円、9,540万円としたときの「返済期間35年、元利均等返済、ボーナス払いなし」を条件にシミュレーションすると以下のようになります。
適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
1.0% | 約26.9万円 | 約1億1,310万円 |
1.5% | 約29.2万円 | 約1億2,268万円 |
2.0% | 約31.6万円 | 約1億3,273万円 |
適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
1.0% | 約38.6万円 | 約1億6,218万円 |
1.5% | 約41.8万円 | 約1億7,592万円 |
2.0% | 約45.3万円 | 約1億9,033万円 |
年収1,800万円の世帯は一般的な家庭よりも高所得であるため、高額な住宅ローンを組めます。一方で、以下の点に注意しながら計画することが重要です。
教育費や老後資金など、住宅購入の他にもまとまったお金が必要な場面があります。また、万が一の病気やケガなどにより収入が減少することもあるでしょう。無理なく返済を続けられるように、将来のライフイベントにおける支出や収入の変化も考慮に入れて住宅ローンの借入金額を決めることが重要です。
住宅ローンの金利タイプは、大きく変動金利と固定金利の2つに分けられます。変動金利は金利が低めに設定されていますが、将来金利が上昇して返済負担が増えるリスクがあります。
一方、固定金利は将来の金利上昇リスクを回避できますが、借入時の金利は比較的高めです。それぞれメリット・デメリットがあるため、比較検討したうえで自身に合った金利タイプを選択しましょう。
不動産を購入する場合、不動産価格以外にもさまざまな諸費用がかかります。具体的には、仲介手数料、事務手数料、登記費用、火災保険料、地震保険料などがあります。住宅ローンを契約する前に、諸費用がいくらかかるかを把握しておきましょう。
年収1,800万円の世帯は、年収倍率が6倍以上ともなれば住宅ローンを1億円以上借りられます。しかし、将来のライフイベントや収入減少のリスクも考慮に入れて、無理のない返済計画を立てることが重要です。「借りられる金額」ではなく、「無理なく返済できる金額」を意識して住宅ローンを組むようにしましょう。
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