公開日:2025.07.23
住宅の購入と同時に車の買い替えを検討している人もいるでしょう。そんなとき、「住宅ローンに車のローンを上乗せしたい」と考える人もいるかもしれません。結論から言うと、住宅ローンに車のローンを上乗せすることは原則できません。しかし、住宅ローンと車のローンを併用することは可能です。
この記事では、住宅ローンに車のローンを上乗せできない理由や併用する際の審査基準、同じ金融機関で組むメリット、注意点を解説します。
そもそも住宅ローンは、住宅の購入や建築、借り換えなどに資金使途が限定されたローン商品です。一方で、車のローン(マイカーローン・自動車ローン)は、自動車の購入を目的とした融資であり、住宅ローンとは目的が異なります。そのため、住宅ローンで借りた資金を車の購入に充てることは契約違反となり、最悪の場合、一括返済を求められるリスクもあります。
なお、住宅ローンでは、事務手数料や保証料、登記費用などの諸費用をローンに含められることもあります。対応可否は金融機関ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
住宅ローンと車のローンは、同じ金融機関でも別々の金融機関でも、審査に通れば併用が可能です。併用する際に重要な判断基準となるのが「総返済負担率」です。
総返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示す指標で、住宅ローンの審査で重視されます。借入希望者が無理なく返済できるかどうかを判断するために重要な基準で、以下のように求められます。
総返済負担率=(年間返済額/年収)×100
例えば、住宅金融支援機構のフラット35の場合、総返済負担率の基準は以下のように定められています。
この基準に基づくと、年間返済額は以下のように計算されます。
この年間返済額には、住宅ローンだけでなく、車のローンや教育ローン、カードローンなどのすべての借り入れが含まれます。複数のローンを併用している場合は、年間の総返済額がこの基準を超えないよう注意しましょう。
出典)フラット35 年収による借入額などの制限はありますか。
すでに車のローンがある場合、住宅ローンの借入可能額にどのような影響があるのでしょうか。年収500万円の人が住宅ローンとしてフラット35を利用する場合を例に、車のローンの年間返済額が0円、36万円、60万円として、借入可能額がどのように変化するかシミュレーションしました。
車のローンの年間返済額 | フラット35の借入可能額 |
---|---|
0円 | 4,478万円 |
36万円 | 3,557万円 |
60万円 | 2,942万円 |
この表からわかるように、車のローンの返済額が増えるほど、住宅ローンの借入可能額は大きく減少します。これは、総返済負担率の上限を超えないようにするためであり、複数のローンを併用する際には、返済額のバランスを慎重に見極める必要があります。
住宅ローンと車のローンを同じ金融機関で組むメリットは以下のとおりです。
住宅ローンと車のローンを同じ金融機関で契約すると、返済日や引き落とし口座を一本化できるため、毎月の返済管理がしやすくなります。複数の金融機関でローンを組む場合に比べて、支払いの管理ミスや資金移動の手間を減らせます。
一部の金融機関では、住宅ローンの利用者に対して、車のローンを優遇する制度を設けている場合があります。例えば、住宅ローンを契約している人が同じ金融機関で車のローンを組むと、通常よりも低い金利が適用されるケースがあります。こうした優遇制度の有無は、事前に金融機関へ確認しておくと安心です。
すでに住宅ローンを組んでいる場合、金融機関はその人の返済実績や信用情報を把握しているため、追加で車のローンを申し込む際の審査がスムーズに進むことがあります。新たに別の金融機関で申し込むよりも、手続きや審査の負担が軽減される可能性があります。
住宅ローンと車のローンを併用する際には、返済能力や家計への影響を十分に考慮する必要があります。以下のポイントに注意して、無理のない借入計画を立てましょう。
一般的に総返済負担率は30~35%程度が上限とされています。住宅ローンと車のローンを併用する場合、それぞれの年間返済額を合算して総返済負担率を計算する必要があります。上限を超えると、ローンの審査に通らない可能性が高くなるため、事前にシミュレーションを行い、基準内に収まるよう調整しましょう。
住宅ローンと車のローンを併用すると、毎月の返済額が増え、家計への負担が大きくなります。特に、車のローンは返済期間が短めで月々の返済額が高くなりがちなため注意が必要です。
将来のライフイベントや予備費も考慮し、急な出費や収入の変動にも対応できるよう、無理のない範囲で借り入れを検討しましょう。
住宅ローンに車のローンを上乗せすることは、原則として認められません。ただし、住宅ローンと車のローンを併用することは可能です。併用する場合は、同じ金融機関で組むことで「管理がしやすい」「金利優遇」などのメリットを享受できる可能性があります。
一方で、過度な借り入れは家計を圧迫する可能性もあります。無理のない返済計画を立てたうえで、ローンをうまく活用しましょう。
執筆者紹介
次に読むべき記事
一般的に住宅ローンの返済期間は最長35年とされていますが、近年最長50年の住宅ローンを提供する金融機関が増えてきています。50年ローンはリスクが高いといった声もありますが、本当に利用を避ける...