住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?リスクと注意点、対処法を紹介

公開日:2025.08.13

住宅ローンの本審査に通過した後、融資が実行される前に転職した場合、どのような影響があるのでしょうか。融資実行前の転職にはリスクがあり、思わぬトラブルを招くことがあります。

この記事では、住宅ローンの本審査後に転職した場合に起こり得るリスクと、金融機関との適切な対応方法について解説します。

住宅ローンの本審査後に転職したらどうなる?

住宅ローンの本審査の結果は、融資の実行を保証するものではなく、あくまで審査時点の与信情報を基にした承認に過ぎません。国土交通省の調査によると、金融機関が住宅ローンの審査で重視する項目は以下のとおりです。

完済時年齢98.4%
借入時年齢96.0%
健康状態95.1%
年収93.4%
勤続年数93.2%

出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書

転職によって、金融機関が重視するような「年収」や「勤続年数」に変化が生じるため、以下のようなリスクが生じる恐れがあります。

融資承認が取り消される

住宅ローンの本審査は、申込時点の収入や勤務先、勤続年数を前提に行われることが一般的です。転職によってこれらの条件が変わると、融資の承認が取り消されることがあります。

再審査が必要になる

融資実行前に転職した場合は、申請した勤続年数などの情報と実態に相違が発生するため、転職後の収入や勤務先、雇用形態などを基に再審査を受ける必要があります。再審査に通過できなければ融資を受けられない他、通過できたとしても融資実行までに時間がかかることがあります。

本審査後に転職して融資承認が取り消された場合のリスク

住宅ローンの本審査後に転職したことで、融資承認が取り消された場合、以下のような重大な影響が生じる場合があります。

転職はローン特約の対象外となる

ローン特約とは、住宅ローンの審査に落ちた場合に、違約金なしで不動産売買契約を解除できる特約です。この特約が付いていれば手続きに不備がない限り、買主は保護されます。

しかし、本審査後の転職によって融資が実行されない場合は、買主側の事情によるものと判断され、原則としてローン特約の対象外となります。その結果、違約金が発生する場合や手付金の放棄が必要となる場合があります。

不動産売買契約が解除される

不動産売買契約を締結すると、契約で定められた期日までに売主へ購入代金の全額を支払う義務が生じます。しかし、住宅ローンの融資が実行されない場合、購入代金を支払えず、契約を解除せざるを得なくなります。

違約金が発生する

融資が実行されないと、場合によっては買主都合の解除とされ違約金が発生します。違約金の相場は物件価格の10~20%程度とされており、仮に物件価格が5,000万円の場合、500~1,000万円もの違約金が発生します。

また、違約金が発生しない場合でも、契約解除には手付金の放棄が必要です。手付金は物件価格の5~10%程度であり、いずれにしても金銭的な負担は大きくなります。

住宅ローンの本審査後に転職した場合の対処法

本審査後の転職は、融資に影響を及ぼすことがありますが、適切に対応すればトラブルを回避できる可能性もあります。

まずは金融機関に相談する

最初にすべきことは、金融機関の担当者へ転職の事実を正確に伝えることです。伝えるタイミングが早いほど、柔軟に対応してもらえる可能性が高まります。申告を怠ると契約違反とみなされることがあるので、必ず連絡しましょう。

金融機関の指示に従う

転職の事実を伝えると、金融機関から今後の具体的な手続きや必要書類などについて案内があります。再審査や追加の必要書類の提出など、金融機関からの指示に従って丁寧に対応しましょう。不明点があれば、確認することが大切です。

融資を受けられない場合は他の金融機関を検討する

再審査を受けた結果、融資承認が取り消されることもあります。その場合は、他の金融機関への申し込みを検討するのも一つの方法です。ただし、本審査には時間がかかるため、売買契約の相手方との調整が必要になる点に注意しましょう。

不動産会社や専門家にも相談する

金融機関だけでなく、不動産会社や司法書士などの専門家に相談することで、契約解除や違約金のリスクを最小限に抑える方法が見つかることもあります。一人で悩まず、早めに専門家の意見を聞くことが安心につながります。

転職は金融機関に知られる?融資実行後の注意点も解説

住宅ローンの本審査後に転職した場合、「黙っていれば問題ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、金銭消費貸借契約の締結時には、健康保険証の提出が求められることが一般的です。保険証には勤務先や資格取得日が記載されているため、転職の事実は金融機関に判明する可能性が高いです。

そのため、転職が決まった時点で、速やかに金融機関へ報告することが重要です。報告を怠ると、契約違反とみなされるリスクもあるため注意が必要です。

また、融資が実行された後に転職した場合でも、住宅ローンの契約約款では勤務先の変更を報告する義務が定められていることが一般的です。返済が滞らなければ大きな問題にはなりませんが、報告を怠ると後々のトラブルにつながることもあります。

いずれの場合も、転職が決まったら早めに金融機関へ相談し、必要な手続きを確認することが安心につながります。

まとめ

融資が実行される前の転職は、承認がおりた融資が取り消しになるリスクがあるため避けるべきです。転職が決まった方や検討中の方は、まずは金融機関や不動産会社に相談してみましょう。早めの対応が安心につながります。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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