手取り30万円で月10万円返済はきつい?住宅ローンの適正額とは

公開日:2025.10.01

手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するのは、果たして現実的なのでしょうか?

この記事では、返済負担率という指標から、無理なく返済できる借入額の目安(=適正額)を具体的にシミュレーションします。さらに、将来の家計に負担をかけないためにも、住宅ローンを組む際の注意点についてわかりやすく解説します。

手取り30万円で月10万円の返済はきつい?

手取り30万円で月10万円の返済はきつい?住宅ローンの適正額とは

手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済することは、数字だけみると可能に思えるかもしれません。しかし、実際には生活費や教育費、将来の支出も含めて考える必要があります。

住宅ローンの適正額を見極めるには、税金や社会保険料を差し引く前の額面年収を把握することが重要です。なお、額面年収とは、税金や社会保険料などを差し引く前の会社からの支給額を指します。

手取り30万円の額面年収はどれくらい?

一般的に、給与の手取り額は額面の75~85%程度です。仮に手取りが額面の80%だとすると、月の手取りが30万円の人の額面年収は以下のように計算できます。

  • 手取り年収:360万円(30万円×12ヵ月)
  • 額面年収 :450万円(360万円÷80%)

※ボーナスは考慮外

この結果から、手取り30万円の場合、額面年収は450万円程度と推定されます。実際の額面金額はボーナスや扶養家族の有無、税金の各種控除などによって異なるため、あくまで参考値としてください。

返済負担率は26.7%|年収450万円・月10万円返済の場合

返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合です。なお、この時の「年収」とは一般的に額面年収を指します。そのため、年収450万円の人が住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は以下のように計算できます。

  • 年間返済額:120万円(10万円×12ヵ月)
  • 額面年収 :450万円
  • 返済負担率:120万円÷450万円=26.7%

住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、返済負担率が「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。

国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」においても、世帯年収に占める返済負担率は、注文住宅で最も高く18.4%、最も低いのはリフォーム住宅で12.7%です。

物件種別返済負担率
注文住宅18.4%
分譲戸建住宅17.6%
分譲集合住宅16.1%
既存(中古)戸建住宅16.3%
既存(中古)集合住宅17.8%
リフォーム住宅12.7%

※国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.53」をもとに筆者作成

各調査データを踏まえると、手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済するケースは、平均的な返済負担率よりも高い水準といえるでしょう。

住宅ローン以外の教育費や生活費などの支出が増えると、家計は圧迫されて返済が難しくなることもあります。安心して返済を続けるためには、返済負担率を20%以内に抑えるのが望ましいでしょう。
たとえば、手取り30万円(額面年収:450万円)の場合、返済負担率を20%とすると、月の返済額は7.5万円(年間返済額:90万円)が目安となります。

出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7

手取り30万円の住宅ローンの適正額

手取り30万円の場合、住宅ローンを無理なく返済するためには、どのくらいの借り入れが適正なのでしょうか?金利別に住宅ローンの適正額をシミュレーションしてみましょう。

今回のシミュレーションでは、以下の条件をもとに計算しています。

【シミュレーション条件】

  • 月の返済額が10万円(返済負担率26.7%)と7.5万円(返済負担率20%)
  • 返済期間:35年
  • 返済方法:元利均等返済、ボーナス払いなし

【手取り30万円の住宅ローン適正額の目安(概算)】

適用金利月10万円返済
(返済負担率26.7%)
月7.5万円返済
(返済負担率20%)
0.5%3,852万円2,889万円
1.0%3,542万円2,656万円
1.5%3,266万円2,449万円
2.0%3,018万円2,264万円

【フラット35】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。

返済負担率を20%以内に抑える場合、住宅ローンの借入金額は2,000万円台が目安となります。ただ、適用金利に応じて、適正額の目安が変動する点に注意が必要です。

住宅ローンを組む際の注意点

手取り30万円で住宅ローンを組む際は、以下のポイントを意識しましょう。

総返済負担率を20%以内に抑える

住宅ローンを無理なく返済するには、返済負担率を20%以内に抑えるのが理想といえます。住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンといった他の借り入れも合算して考えましょう。

物件価格の2割以上の自己資金を準備する

自己資金を十分に確保することで、借入比率を抑え、返済負担を軽減できます。実際、国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資本比率は22.0%~34.6%程度が一般的です。

物件価格の2~3割程度を目安に、自己資金を多めに準備するとよいでしょう。ただし、頭金を多く入れすぎると、急な出費に対応できなくなる恐れがあるため、当面の生活費や緊急資金は確保しておきましょう。

出典)国土交通省「令和6年度 住宅市場動向調査(令和7年6月)p.48

諸費用やローン返済以外の支出も考慮に入れる

住宅購入では登記費用や仲介手数料、火災・地震保険料、引越し費用などの諸費用が発生し、購入後は固定資産税などの維持費もかかります。また、教育費や老後資金などの準備も進める必要があります。住宅ローン返済だけでなく、諸費用やその他の支出も考慮して無理のない返済計画を立てましょう。

まとめ

手取り30万円で住宅ローンを月10万円返済する場合、返済負担率は26.7%となり、一般的な目安である20%を上回ります。この水準では、家計に余裕がないと返済が厳しくなる場合があるため、慎重な資金計画が必要です。

住宅ローンは長期にわたる支出となるため、将来のライフイベントや収支の変化も見据えたうえで、無理のない借入額を設定することが大切です。この記事で紹介した返済負担率やシミュレーションを参考に、安心して返済を続けられる住宅ローン計画を立てましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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