市街化区域とは?市街化調整区域との違いを解説

公開日:2022.05.25

住宅や土地の購入を検討している中で、「市街化区域」「市街化調整区域」という言葉を聞くことはないでしょうか。

どちらも都市計画法で定められた地域で、土地の使いみちや建築できる建物に制限があります。マイホームを購入してから後悔しないように、各区域の特徴を理解しておくことが大切です。

この記事では、市街化区域の概要や市街化調整区域の違いについて解説します。

市街化区域とは?

市街化区域とは、都市計画法で分類されている都市計画区域の1つです。都市計画区域は以下の3種類があります。

  • 住宅を建てる際の制約が少ない
  • 生活インフラが整っている
  • 売却しやすい
  • 都市計画税がかかる

市街化区域は、基本的に住宅を自由に建てることが可能です。電気や水道、交通といった生活インフラも整っているため、需要が高く、売却しやすい特徴があります。

一方で、市街化区域内に住宅(土地・家屋)を所有すると都市計画税がかかります。1月1日現在で住宅を所有している人が対象です。税額は「課税標準額×0.3%」で、固定資産税と併せて課税されます。

用途地域とは?

用途地域とは、市街化地域内の土地の用途を13種類に区分し、建築できる建物や規模などを制限するものです。大きくは「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分けられます。各用途地域の特徴は以下のとおりです。

区分用途地域概要
住居第一種低層住居
専用地域
低層住宅のための地域。
小規模な店舗兼用住宅、小中学校などが建てられる
第二種低層住居
専用地域
主に低層住宅のための地域。
小中学校、150㎡以下の店舗などが建てられる
第一種中高層住居
専用地域
中高層住宅のための地域。
病院や大学、500㎡以下の店舗などが建てられる
第二種中高層住居
専用地域
主に中高層住宅のための地域。
病院や大学、1,500㎡以下の店舗などが建てられる
第一種住居地域住居の環境を守るための地域。
3,000㎡以下の店舗やホテルなどは建てられる
第二種住居地域主に住居の環境を守るための地域。
店舗やホテル、カラオケボックスなどは建てられる
準住居地域国道や幹線道路と調和した住居の環境を守るための地域。
田園住居地域農地や農業関連施設と調和した住居の環境を守るための地域。
商業近隣商業地域周辺住民が日用品の買い物などをするための地域。
住宅や店舗、小規模工場なども建てられる
商業地域銀行や映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域。
住宅や小規模工場も建てられる
工業準工業地域主に軽工業の工場や施設が立地する地域。
環境悪化のおそれがある工場以外はほぼ建てられる
工業地域どんな工場でも建てられる地域。
住宅や店舗は建てられるが、学校や病院などは建てられない
工業専用地域どんな工場でも建てられる、工場のための地域。
住宅や店舗、学校などは建てられない

市街化調整区域とは?

市街化調整区域は、都市計画法では「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。原則として開発行為や都市施設の整備は行われず、基本的に住宅は建てられません。すでに建築されている物件の購入後のリフォームや、建て替えをする場合も自治体の許可が必要です。

市街化調整区域であっても、自治体によっては開発行為が一部認められるケースもあります。

市街化調整区域の特徴

市街化調整区域の主な特徴は下記のとおりです。

  • 価格が割安な傾向にある
  • 固定資産税が低い
  • 都市計画税がない
  • 建て替え、増改築などが制限される
  • インフラ整備が進んでいないことがある
  • 売却しにくい
  • 住宅ローンが借りづらい

市街化調整区域は、市街化区域に比べると価格が安く、固定資産税が低い傾向にあります。都市計画税は課税されないため、取得費用や維持費用の軽減が期待できます。

一方で、住宅の建て替えや増改築を行うには自治体の許可が必要になるなどの制限があります。また、周辺のインフラ施設の整備が進んでおらず、生活するには不便を感じるかもしれません。このような事情から売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。

非線引き区域とは?

非線引き区域は、都市計画法では「区域区分が定められていない都市計画区域」と定義されています。区域区分が定められていないため、土地利用の制限が緩いのが特徴です。ただし、自治体が土地利用方針を策定しているケース もあります。

出典)成田市「非線引き都市計画区域における土地利用方針」

非線引き区域の特徴

非線引き区域の特徴は以下のとおりです。

  • 土地利用の制限が緩い
  • 用途地域が指定されていることもある
  • インフラ整備が進んでいないことがある
  • 地域住民が望まない土地利用の恐れがある
  • 売却しにくい
  • 住宅ローンが借りづらい

非線引き区域は制限が緩いため、基本的には自由に土地利用が可能です。ただし、市街化地域と同じように用途地域が指定されていることもあります。

市街化区域とは異なり、積極的に開発行為や都市施設の整備が進められる地域ではないため、インフラ整備が進んでいない可能性があります。また、規制が緩い分、地域住民が望まない形で土地が利用される恐れがあるのもデメリットです。

このような事情から市街化調整区域と同様に売却しにくく、住宅ローンを借りづらい傾向にあります。

区域区分や用途地域の調べ方

区域区分や用途地域は、自治体のホームページで確認できます。住所を指定すると、その区域の詳細がわかる地図情報を提供している自治体もあります。 担当部署(例:都市計画課)に問い合わせて教えてもらうことも可能です。

住宅や土地を売買する際は、不動産業者に確認してもらうのも一つの方法です。

出典)成田市「都市計画情報(なりた地図情報等)について」

まとめ

住宅や土地を売買する場合、市街化区域であればスムーズに取引できます。マイホームの購入を予定しているなら、物件が市街化区域内にあるかを確認しておきましょう。

執筆者紹介

大西 勝士(Katsushi Onishi)
金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。
<運営ブログ>
https://www.katsushi-onishi.com/

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