公開日:2025.09.24
リ・バース60は、住宅金融支援機構によって提供されている、シニア世代の住まいと資金計画を支える住宅ローン制度です。「年齢を重ねても、安心して住み続けたい」といったニーズに応える一方で、利用には一定の条件や審査が伴います。
この記事では、リ・バース60の利用条件と審査のポイントについて、制度の仕組みや必要書類、審査の流れまでをわかりやすく解説します。制度の検討段階にある人や、将来的な選択肢として情報収集をされている人にとって、判断材料となる内容を網羅しています。
なお、リ・バース60の基本的な仕組みや特徴について詳しく知りたい人は、以下の関連記事をご覧ください。
リ・バース60を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、主に「年齢」「不動産」「資金使途」の3つの観点から、制度の利用要件を整理します。
原則として、リ・バース60の申込者は満60歳以上であることが求められます。これは、制度が高齢者の住まいの安定と資金確保を目的としているためです。
満50歳以上満60歳未満の人でも利用は可能ですが、融資の限度額が担保評価額の30%となるため、注意が必要です。商品性や審査基準、年齢の取り扱いなどは金融機関によって異なるため、事前に各社の公式情報や相談窓口で確認することが重要です。
リ・バース60の対象となる不動産は、以下のような条件を満たす必要があります。
※資金使途が入居一時金または子世帯等が居住する住宅取得資金の場合を除く
そのほか、借地や市街化調整区域の不動産などは取扱金融機関によって異なります。詳しくは金融機関にご確認ください。
リ・バース60は、資金使途が明確に定められている制度です。主な利用目的は以下のとおりです。
※セカンドハウスも対象
生活費や医療費など、住宅に直接関係しない目的での利用は原則として認められていません。そのため、申込時には資金使途を明確にし、リフォームの場合は工事見積書、借り換えの場合は既存の住宅ローンの残高証明などの資料を提出する必要があります。
リ・バース60を利用するには、金融機関による審査を受ける必要があります。ここでは、審査のステップ、提出書類、審査期間の目安と注意点について解説します。
リ・バース60の審査は、一般的な住宅ローンと同様に、以下のようなステップで進行します。
金融機関や提携不動産会社などで制度の説明を受け、仮審査を申し込みます。ここでは、年齢や不動産の条件、資金使途などの基本的な要件が確認されます。
提出された情報をもとに、融資の可否見込みや概算の融資額が判断されます。仮審査の結果は、金融機関によって異なりますが、通常1〜2週間程度で通知されます。
仮審査通過後、正式な申込を行い、必要書類を提出します。ここでは、収入状況や不動産の担保評価など、より詳細な審査が行われます。
本審査に通過すると、契約書の締結などの手続きに進みます。
審査にあたっては、金融機関によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下のような書類の提出が求められます。
書類の不備や不足があると、審査が遅れる場合があるため、事前にチェックリストを活用して準備することが推奨されます。
審査期間は金融機関や申込内容によって異なりますが、仮審査に1〜2週間程度、本審査に2〜3週間程度はかかると考えておくとよいでしょう。
ただし、提出書類の内容や不動産の評価状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。特に、共有名義や築年数が古い物件の場合は、追加資料の提出を求められることがあります。
また、審査中に金融機関から追加の質問や資料提出依頼があることもあるため、連絡が取りやすい状態を保っておくことが重要です。
リ・バース60では、一般的な住宅ローンとは異なり、団体信用生命保険(以下、団信)の取り扱いに特徴があります。ここでは、団信の基本的な仕組みと、リ・バース60における加入要否について解説します。
一般的な住宅ローンでは、債務者が死亡した場合に残債が保険で完済されるよう、団信への加入が義務付けられているケースが多くあります。これは、金融機関にとって貸し倒れリスクを軽減するための仕組みです。
一方、リ・バース60では、団信の付帯が制度上認められていないため、加入することができません。
リ・バース60では団体信用生命保険(団信)に加入することができません。その背景には、制度の設計上の特徴が関係しています。
まず、リ・バース60の返済方法は「元金据置・利息のみ支払い」型です。債務者が生存している間は利息のみを支払い、死亡後は相続人が元金を返済します。返済方法が「現金での一括返済」ではない場合には、「担保不動産を売却して返済」することで元金が精算されます。この仕組みにより、団信による残債保証の必要性がそもそもないのです。
さらに、住宅金融支援機構が債務回収を担保している点も重要です。制度設計では、不動産の担保価値を重視しており、債務者が亡くなった際には、債務が回収される仕組みとなっています。
このように、団信に加入できない代わりに、制度全体が不動産の担保価値を前提に設計されており、債務者の死亡後も残債が不動産価値を超えないよう配慮されています。
リ・バース60では、一般的な住宅ローンとは異なる担保評価や保証人の取り扱いが特徴です。ここでは、利用にあたっての保証人の要否、担保評価の基準、共有名義不動産の扱いについて解説します。
リ・バース60の保証人の可否は、金利タイプによって異なります。住宅金融支援機構によると、固定金利の場合、保証人は不要としています。一方で、変動金利の場合は、金融機関ごとに異なるとしています。
主に以下のようなケースでは、金融機関の判断により保証人が求められる場合があります。
保証人の要否は金融機関ごとに異なるため、事前に相談、確認することが重要です。
出典)住宅金融支援機構「Q保証人は必要ですか Q&A番号:7」
リ・バース60では、融資額の上限は担保となる不動産の評価額によって決定されます。評価基準は以下のような要素を含みます。
融資限度額は、不動産評価額の50〜60%程度に設定されることが一般的です。ただし、評価方法や上限率は金融機関によって異なるため、複数社で比較検討することが推奨されます。
担保不動産が共有名義である場合、リ・バース60利用には共有者全員の同意が必要です。特に、配偶者との共有名義の場合は、以下の点に注意が必要です。
リ・バース60の利用後も配偶者が安心して住み続けられるよう、事前に家族間での話し合いや金融機関との相談を行うことが望ましいです。
リ・バース60の審査では、年齢や収入だけでなく、不動産の担保価値や資金使途など、複数の要素から総合的に判断されます。ここでは、審査に通りやすい人・通りにくい人の傾向と、よくある審査落ちの理由、対策について解説します。
リ・バース60は、シニア世代の利用を前提とした制度であるため、公的年金のみの収入でも審査に通る可能性があります。ただし、年金額が極端に少ない場合や、生活費とのバランスなどが取れていないと判断された場合は、審査に影響することがあります。
審査では、以下のような点が確認されます。
年金以外にも収入がある場合(不動産収入、企業年金など)は、合算することができます。
リ・バース60の融資額は、担保となる不動産の評価額によって大きく左右されます。そのため、不動産の価値が高いほど、審査に通りやすく、希望額に近い融資が受けられる可能性が高まります。持ち家は、以下のような点で評価されます。
逆に、築年数が古く、郊外の物件など、評価額が低い不動産の場合は、融資額が希望に届かず、審査に通らないケースもあります。
リ・バース60の審査で否決される主な理由には、以下のようなものがあります。
これらの審査落ちの理由に対して、以下のような対策をとるといいでしょう。
審査に不安がある場合は、金融機関の無料相談窓口を活用することで、事前にリスクを把握し、対策を講じることが可能です。
リ・バース60は、シニア世代が安心して住み続けるための住まいと資金計画を支える制度です。利用には年齢や不動産の条件、資金使途などの要件を満たす必要があり、審査では収入や担保評価、信用情報などが総合的に判断されます。
また、団信の加入は制度上利用できないものの、商品設計の段階で、債務者の死亡後も残債が過大に残らないよう配慮されています。ただし、共有名義の際には、取り扱いにも注意が必要で、共有者との事前の話し合いや同意の取得が重要です。
審査に通るためには、不動産の評価額や収入状況、既存借り入れの確認など、事前準備が鍵となります。詳しくは、各金融機関の公式サイトや住宅金融支援機構のホームページをご確認ください。
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