公開日:2025.08.27
年収1,100万円の世帯が、安心してマイホームを購入するためには、どのくらいの住宅ローンを組むのが適切なのでしょうか?高収入であっても、借り入れが多すぎると、将来の家計に思わぬ負担がかかることもあります。
この記事では、年収1,100万円世帯が無理なく返済できる住宅ローンの「適正額」と、返済計画を立てる際に押さえておきたいポイントを、具体的なデータとともにわかりやすく解説します。
年収1,100万円の世帯が住宅ローンを検討する際、借入金額の「適正さ」を見極めるために重要な指標が2つあります。それが「年収倍率」と「総返済負担率」です。それぞれ見ていきましょう。
年収倍率とは、住宅購入に必要な資金が年収の何倍にあたるかを示す指標です。住宅金融支援機構の「2024年度 フラット35利用者調査」によると、住宅ローンであるフラット35利用者の年収倍率(住宅購入の所要資金を世帯年収で除した数値)は、住宅種別によって5.3倍〜7.5倍の範囲に分布しています。
仮に年収1,100万円としたとき、この年収倍率を掛け合わせると、「購入価格の目安」は下表のようになります。
住宅種別 | 年収倍率 | 購入価格の目安 |
---|---|---|
土地付注文住宅 | 7.5倍 | 8,250万円 |
マンション | 7.0倍 | 7,700万円 |
注文住宅 | 6.9倍 | 7,590万円 |
建売住宅 | 6.7倍 | 7,370万円 |
中古マンション | 5.5倍 | 6,050万円 |
中古戸建 | 5.3倍 | 5,830万円 |
出典)住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査(年収倍率(融資区分別)の推移)p.12」をもとに筆者が作成
このように、住宅種別によって年収倍率は異なり、目安となる購入価格は変わります。ただし、年収倍率はあくまで「購入可能な金額の目安」であり、「無理なく返済できる金額(=適正額)」とは異なる点に注意が必要です。
また、今回のデータは住宅金融支援機構の調査結果に基づくものであり、実際の購入価格や借入額は、物件の条件や家計状況によって変動します。参考値として活用しつつ、個別の資金計画を立てることが重要です。
総返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示す指標です。住宅ローンだけでなく、車のローンや教育ローンなど、他の借り入れも含めて計算します。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2025年4月)」によると、返済負担率が「15%超~20%以内」の利用者が最も多く、全体の24.3%を占めています。
年収1,100万円の世帯であれば、総返済負担率を20%とした場合、年間返済額は220万円(月々の返済額:約18.3万円)以内が目安となります。これを超えると、家計への負担が大きくなることがあるため、慎重な判断が求められます。
出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(返済負担率)p.7」
年収1,100万円の世帯が、住宅ローンを無理なく返済するためには、どのくらいの借入額が適正なのでしょうか?ここでは、総返済負担率を「20%以内」に抑えることを前提に、金利別に住宅ローンの適正額をシミュレーションしてみましょう。
今回のシミュレーションでは、以下の条件をもとに計算しています。
適用金利 | 住宅ローンの適正額(概算) |
---|---|
0.5% | 7,049万円 |
1.0% | 6,482万円 |
1.5% | 5,976万円 |
2.0% | 5,524万円 |
※【フラット35】ローンシミュレーションをもとに筆者作成。
この結果から、年収1,100万円世帯が住宅ローンを組む場合、借入額の目安は約5,500万円〜7,000万円となります。金利が低ければ借入可能額は増えますが、将来の支出や金利変動リスクも踏まえ、無理のない返済計画を立てることが、安心した住まい選びの第一歩です。
年収1,100万円という高収入世帯でも、住宅ローンの返済において油断は禁物です。収入が多いからこそ、物件のグレードや生活水準が上がりやすく、結果として家計に負担がかかるケースも少なくありません。ここでは、年収1,100万円世帯が住宅ローンを無理なく返済するために、特に注意すべきポイントを3つに分けて解説します。
高収入世帯は、物件に対する期待値が高くなりがちです。注文住宅や都心のマンションなど、価格帯が高い物件を選ぶ傾向があるため、借入額が膨らみやすくなります。
そのため、住宅ローンを組む際には、頭金や諸費用などの自己資金を多めに用意することが重要です。自己資金をしっかり確保することで、借入比率を抑え、返済負担を軽減できます。
国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査」によると、住宅を初めて購入する一次取得者の自己資金比率は20〜40%程度が一般的です。物件価格の2割以上の自己資金を目安に、余裕を持った資金計画を立てましょう。
出典)国土交通省「令和5年度 住宅調査報告書(一次取得・二次取得別の購入資金)p.50」
年収1,100万円は高収入といえますが、税負担や教育費、生活費などの支出も比例して増える傾向があります。特に子育て世帯では、教育費が家計を圧迫する要因になりやすく、住宅ローンの返済に影響を及ぼすこともあります。
また、将来的には老後資金や介護費用など、まとまった支出が発生することも考えられます。住宅ローンだけでなく、ライフイベントに備えた資金計画を立てることが、長期的な安心につながります。
夫婦ともに安定した収入がある場合は、ペアローンの活用も選択肢のひとつです。ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦それぞれが主債務者となり、2本のローンを組む方法です。
ペアローンを利用することで、借入可能額が増えるだけでなく、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるメリットもあります。控除額が増えることで、実質的な返済負担を軽減できる可能性があります。
ただし、諸費用が2本分かかる点や、離婚・収入変動などのリスクもあるため、慎重な検討が必要です。
年収1,100万円世帯が住宅ローンを検討する際は、「借りられる額」ではなく「無理なく返済できる額」を基準にすることが大切です。シミュレーションによる適正な借入額は約5,500万円〜7,000万円。総返済負担率を20%以内に抑えることで、家計への影響を最小限にできます。
住宅ローンは一人ひとりのライフスタイルや将来設計によって最適な選択が異なります。実際の借入可能額や返済プランを確認するために、返済シミュレーションなどを活用し、金融機関の事前審査も検討してみましょう。無理のない資金計画が、理想の住まいと安心した暮らしへの第一歩です。
執筆者紹介
次に読むべき記事
住宅ローンの選択肢として人気の高い「フラット35」。その魅力は長期固定金利で、将来の金利変動リスクを避けられる点にあります。しかし、具体的にどの金融機関や相談先を選べば良いのか、迷う方も多い...