公開日:2026.07.15
区分マンション投資は、少額の自己資金から開始でき、管理の負担を抑制できることから、会社員を中心に普及している不動産投資手法です。一方で、一室のみを運用する場合は空室時に家賃収入が途絶えるなど、特有のリスクも存在します。
この記事では、区分マンション投資の仕組みや特徴、メリット・リスク、投資適性の判断基準を専門的な視点から解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品や投資行動を勧誘するものではありません。投資には元本割れを含むリスクがあります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の判断と責任において行ってください。

区分マンション投資の収益性とリスクは、タイプ(ワンルーム・ファミリー)や築年数(新築・中古)によって大きく変動するため、それぞれの特徴に応じた戦略的な選定が必要です。
区分マンション投資とは、マンションを一棟丸ごと所有するのではなく、一室単位で購入・所有して賃貸運用する不動産投資手法です。
投資家は、購入した一室を入居者へ賃貸することで毎月の家賃収入(インカムゲイン)を得ます。また、不動産市場の動向に応じて購入価格を上回る金額で売却できれば、売却益(キャピタルゲイン)を得ることも可能です。
一室でもワンルームとファミリータイプでは、賃貸需要のターゲットおよび居住期間が異なります。
ワンルームは主に単身者をターゲットとし、主要駅周辺や都心部近接の立地において高い賃貸需要が期待できます。ただし、就職や転勤、進学などによるライフステージの変化に伴い入退去の頻度が高く、平均居住期間は短くなる傾向にあります。
一方、ファミリータイプは夫婦や子育て世帯が中心です。入居決定後は長期間にわたり居住し続ける傾向があり、安定したインカムゲインが期待できます。ただし、購入価格(初期投資額)が高額になりやすく、賃貸需要が周辺の教育関連施設(保育所や学校)や生活利便施設(スーパーや病院)などの地域環境に左右されます。
新築と中古では、不動産価格だけでなく、減価償却費の計上をはじめとする税務面のメリットや将来の収益性に大きな差が生じます。
新築マンションは最新の設備や高い視認性により、初期の入居者募集において優位性を持ちます。しかし、不動産販売価格に不動産開発業者(デベロッパー)の広告宣伝費や人件費などの販売コストが上乗せされることで初期購入金額は比較的高額になる傾向があり、購入直後から建物の市場価格が下落するリスクを含んでいます。
対して、中古マンションは新築マンションに比べ購入価格を低く抑えられる場合もあり、投資金額に対する年間家賃収入の割合を示す「表面利回り」が高くなる可能性があります。ただし、築年数が著しく経過した中古マンションは、専有部の設備交換費用や共用部の修繕負担金が増加し、最終的な「実質利回り」が低下するリスクを内包しているため、事前の資金シミュレーションが不可欠です。
不動産の減価償却費とは、建物や設備の購入費用を、購入した年に一括で経費とせず、耐用年数にわたって毎年分割して経費計上する会計上の仕組みです。減価償却費は、実際の現金の支出を伴わない「帳簿上の経費」であり、課税対象となる不動産所得を圧縮して手元の現金を確保するための重要な役割を持ちます。
減価償却費の計算方法は、建物の種類や築年数によって異なります。新築の場合は、国税庁が定める法定耐用年数に基づいて均等に償却します。
一方、中古の場合は「見積法」や「簡便法」に基づく耐用年数を算定することで、新築より短い期間で償却を行うことが可能です。耐用年数が短いほど、減価償却費として経費計上できる金額が大きくなり、購入直後の税負担の軽減効果が期待できます。
※中古資産の耐用年数は、新築と同じ法定耐用年数をそのまま用いるのではなく、個別にあと何年使えるか(残存使用可能期間)を見積もる「見積法」を用いて算定することができます。その残存使用可能期間の年数を見積もることが困難である場合には、「簡便法」を用いることが可能です。
簡便法による耐用年数の計算式は以下の通りです。
例えば、築30年の鉄筋コンクリート造マンション(法定耐用年数47年)の場合、簡便法で算出される減価償却期間は、以下の通り23年と算出されます。
以下は鉄筋コンクリート造のマンション一室を新築4,000万円で購入した場合と中古(築30年)2,800万円で購入した場合(建物のみの価格)の年間減価償却費の比較です。
<減価償却費の計算例(鉄筋コンクリート造・建物価格ベース)>
| 新築 | 中古(築30年) | |
|---|---|---|
| 建物価格 | 4,000万円 | 2,800万円 |
| 耐用年数 | 47年 | 23年(簡便法) |
| 年間減価償却費※ | 約85万円 | 約122万円 |
※年間減価償却費は建物価格÷耐用年数で算出した概算額
建物価格が低い中古の方が新築よりも年間減価償却費が大きくなる試算となります。
ただし、簡便法を用いて耐用年数を短くした場合、償却期間が前倒しで終了します。計上できる減価償却費がゼロになると、帳簿上の利益が増加し、税負担も増加するため注意が必要です。
購入初期の減価償却による節税メリットだけに目を奪われず、償却期間終了後を見据えた不動産投資ローンの繰り上げ返済や売却時期の策定など、明確な出口戦略をシミュレーションしておくことが重要です。
※実際の確定申告における正確な税額計算については、必ず事前に税理士または所轄の税務署へご確認ください。
区分マンション投資は、一棟アパート投資や戸建て投資と比較して「初期費用を抑えやすく流動性が高い」という特徴を持つ一方、「空室時のリスク分散が困難である」という側面があります。それぞれの投資手法における投資効率やリスクの違いを正しく把握することが重要です。
<比較表:区分マンション投資・一棟アパート投資・戸建て投資>
| 区分マンション投資 | 一棟アパート投資 | 戸建て投資 | |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 比較的低い | 比較的高い | 物件による |
| 利回り(目安) | 低め | 高め | 高め |
| 空室リスク | 集中(0か100) | 分散可能 | 集中(0か100) |
| 管理負担 | 軽い(委託前提) | 重い | 重い |
| 流動性(売りやすさ) | 高い | 低い | 標準 |
※不動産投資手法の一般的な傾向を示した目安であり、実際の投資成果や条件を保証するものではありません。不動産の収益性やリスクは、立地、築年数、融資条件などによって不動産ごとに大きく異なります。
一棟アパート投資は、アパートを一棟丸ごと所有して賃貸に出す投資方法です。複数戸から家賃収入を得られるため、区分マンション投資よりも空室リスクを分散しやすいメリットがあります。また、建物一棟と土地を単独で所有する事になるため、土地が他の所有者との共有となる区分マンションと比較して、建て替えや売却など資産活用の選択肢が広がる傾向もあります。
一方で、購入価格が高額になりやすく、多額の資金調達が必要です。加えて、外壁塗装や屋根防水などの建物全体の修繕や管理も投資家の責任となり、管理の負担は大きくなります。大規模修繕費用に備えた資金計画と管理も求められます。
また、必要な資金規模から購入可能な投資家層が限られるため、区分マンションと比べると流動性が低く、売却に時間を要するケースがあります。
戸建て投資は、戸建て住宅を購入して賃貸に出す投資方法です。ファミリー層の需要を取り込みやすく、入居期間が長期化しやすい傾向があります。中古の戸建てを選択することで初期費用を低く抑え、高利回りも期待できます。
ただし、区分マンションと同様に原則一戸のみを貸し出すため、空室時には家賃収入がゼロになります。加えて、建物や設備の維持管理を投資家自身で負担する必要があります。
また、戸建ては投資家だけでなく実需層への売却も期待できるため、一棟アパートより売却先の選択肢が広い傾向にあります。一方で、区分マンションと比べると購入を検討する層が限定される傾向があります。
区分マンションには、以下4つのメリットがあります。
区分マンション投資のメリットの1つは、一室単位での購入となるため、総投資額を一棟投資に比べて抑制できる点です。都市部であっても中古マンションであれば数百万円台から市場に流通しており、金融機関からの借入総額も低く抑えられます。そのため、投資未経験者であっても過度なリスクを負わずに参入可能です。
区分マンション投資では、購入後の主要な実務(入居者募集、賃貸借契約手続き、家賃回収、滞納督促、クレーム対応など)を賃貸管理会社へ委託することが可能です。また、廊下やエレベーターといった建物の「共用部分」の維持管理や清掃は、マンション全体の管理組合および委託された建物管理会社が主導するケースが多いため、投資家自身が現地へ赴く必要は基本的にありません。
管理会社へ管理業務を委託することで負担が軽減されるため、本業を持つ会社員の方であっても両立しやすい投資手法です。なお、管理会社へ支払う管理委託手数料の市場相場は、月額家賃収入の5%前後といわれています。
※上記の手数料率は一般的な目安であり、管理会社や不動産の所在エリア、委託する業務の範囲など個別条件によって異なります。
都心部の主要駅周辺などの好立地環境において一棟アパートを取得するには、多額の資金調達が必要です。しかし、区分マンション投資であれば、同じ好立地環境にあるマンションの「一室」を比較的安価に取得できます。立地条件が優れている不動産は、将来にわたって安定した賃貸需要を維持しやすく、資産価値が急激に下落しにくい傾向にあります。
区分マンションは価格が比較的安価で実需もあるため、購入を検討する投資家の数が多く、居住としての実需層もターゲットとなるため不動産市場における「流動性(換金性)」が高いという強みを持っています。急な資金調達が必要になった場合や、利益確定・損切りのための売却(出口戦略)の速やかな実行が期待できます。
ただし、最寄り駅からの距離や周辺環境など利便性に課題がある場合や人口減少が顕著な地域では、買い手がつかず売却期間が長期化する恐れもあるため、購入時の立地精査が前提となります。
一方で、区分マンション投資には、収益の不確実性や法的な制約、外部環境の変化によるコスト上昇リスクが存在します。あらかじめリスクの発生メカニズムと具体的な回避策を理解しておくことが重要です。
区分マンション一室に投資する場合、入居者が退去するとその期間の家賃収入は完全にゼロになります。一方で、金融機関への不動産投資ローン返済のほか、管理費・修繕積立金の固定費支払いは毎月発生し続けます。
空室期間が長期化し、自己資金からの「持ち出し」が続くと、不動産投資のキャッシュフローが破綻し売却を余儀なくされる恐れがあります。
なお、空室期間中の家賃を保証する「サブリース契約」を利用する手法もあります。ただし、契約内に「免責期間」が設定されていることや、借地借家法第32条を根拠に数年ごとに賃料減額を請求されるトラブル、あるいは中途解約時の違約金トラブルなども発生しているため、契約内容の精査が必要です。
区分マンションは利便性の高い都心部に位置することが多く、価格が高額になりやすい特徴があります。結果として、投資額に対する年間家賃収入の割合である「利回り」は、地方の一棟アパート投資と比較して低くなる傾向があります。
不動産投資ローンなどでレバレッジをかけても手元に残る現金(キャッシュフロー)が少なくなるため、資産形成には相応の期間を要します。
区分マンションの投資家は、建物全体の修繕方針や将来の建て替えを単独の意思で決定できません。これらはすべて「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に基づく管理組合集会での決議が必要です。
例えば、共用部分の変更(大規模修繕の仕様変更など)には原則として出席した区分所有者およびその議決権の各「4分の3以上」、建物の建替え決議には区分所有者および議決権の各「5分の4(80%)以上」の賛成要件が区分所有法で定められています。
老朽化が進んでも、投資スタンスや経済状況が異なる他の所有者との合意形成が難航し、適切な修繕が遅延するリスクがあります。
※必要な決議要件は法改正や管理規約によって異なる場合があるため、最新の法令や管理規約を確認することが重要です。
このリスクを軽減するためには、購入前に不動産会社を通じて「重要事項調査報告書」や「長期修繕計画書」を取り寄せ、過去の修繕履歴や管理組合の修繕積立金残高、および管理費の滞納率を確認します。積立金が十分に確保され、計画通りに大規模修繕が実施されている管理優良物件を選ぶことが防衛策になります。
変動金利型の不動産投資ローンを利用して不動産投資をする場合、返済方式によって異なりますが金利上昇によりローンの毎月返済額が増加し、キャッシュフローを圧迫するリスクがあります。
区分マンションは、家賃収入からの運用利回りが低めの傾向があるため、資金調達コストである借入金利が1%上昇しただけでも自己資金からの「持ち出し(キャッシュフローの赤字)」の状態に陥りやすくなります。
将来の金利上昇リスクを排除したい場合は、金利体系が全期間確定する「固定金利型ローン」の不動産投資ローンを選択し、毎月返済額を一定にすることで長期的なキャッシュフロー計画を確定させる手法が有効です。
区分マンションの所有者は、建物の将来の大規模修繕に備え、毎月「修繕積立金」を支払う義務があります。昨今の建築資材高騰や人材不足を背景に、当初の計画から大幅に積立金が増額されるケースもあり、収益性低下のリスク要因となります。
特に以下の特徴を持つマンションは、将来のコスト増、あるいは一時金の徴収リスクが高いため注意を要します。
区分マンション投資に適性があるか否かは、「自己資金」「労力」「リスク耐性」の3つの指標から自身の適性を客観的に判断する必要があります。
区分マンション投資は、数千万円から数億円規模の一棟投資を行うだけの自己資金がない、または過大な債務(不動産投資ローン)を抱える心理的抵抗が強い人でも取り組むことが可能です。
少ない自己資金で区分マンション投資を通して実際の不動産賃貸経営を経験し、収支構造を実体験として理解した上で、資金調達手段を多様化して一棟アパート投資へシフトする戦略も考えられます。
区分マンション投資は、本業の業務負担が重く不動産管理に時間や心理的リソースを割けない会社員や経営者でも取り組むことができます。上述の通り管理の実務を管理会社へ委託できるため、投資家の対応事項を「毎月の管理報告書のチェック」と「修繕発生時の承認」などに限定させることも可能です。
区分マンション投資は、突発的に空室時の家賃途絶(収入ゼロ)が発生する恐れがあります。そのため、家賃途絶期間に自身の給与所得(フロー)や預貯金(ストック)から不動産投資ローン返済および管理費などの固定費を問題なく補填できる「手元流動性」を確保する必要があります。
手元流動性を確保できず余裕資金がない状態で投資を開始すると、一度の退去で資金ショートを起こし、市場価格より大幅に安い価格での損切りでの売却を強いられる恐れがあります。
区分マンション投資で成果を上げるためには、始める際に「立地精査」「管理状態の確認」「パートナー企業の選定」の3つのポイントを押さえることが重要です。
不動産投資は立地がとても重要です。長期的な賃貸需要が見込める立地選定の具体的な基準は、最寄り駅から近いこと、周辺の人口動態が維持または増加傾向にあること、再開発計画によって将来的な利便性向上が見込めることなどです。
長期的な賃貸需要が見込める立地であれば、旺盛な賃貸需要が期待でき、退去が発生しても速やかに次の入居者を確保することが可能です。すぐに入居者が確保できる環境下では、空室期間を恐れて家賃を下げる必要性が生じないため、結果として家賃の下落率を最小限に抑えるという好循環も期待できます。
「マンションは管理を買え」という格言があるように、管理体制が資産価値を左右します。また、修繕積立金の状況によっては、購入後に想定外の負担が生じる恐れもあるため、事前の確認が重要です。
不動産購入前に不動産仲介会社などを通じて以下の書類を請求し、管理体制および修繕積立金の状況を確認しましょう。
区分マンション投資は不動産の購入がスタートであり、その後の賃貸管理が最終的な実質利回りを大きく左右します。購入から賃貸管理まで一気通貫で伴走する不動産会社を選定する際は、以下の3つの観点から確認することが重要です。
区分マンション投資は、会社員の方でも少額の自己資金から本業に負荷をかけずに開始できる不動産投資手法である一方、一室運用時における空室リスクや運用利回りの低さといった構造的な課題も存在します。
購入前に「重要事項調査報告書」や「長期修繕計画書」による管理体制および修繕積立金状況の確認を行い、信頼に足る実務実績を持った不動産会社をパートナーに選定することが重要です。
自身の余裕資金とリスク許容度を客観的に見つめ直した上で、具体的な物件を用いた収支シミュレーションを行い、長期的に安定した資産形成を実現するためのファーストステップを踏み出してください。
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