公開日:2026.01.05
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、16万件を超える大規模な住宅被害が発生しました。日本は地震大国であり、今後も大地震が発生するリスクがあります。地震による住宅被害を最小限に抑え、生活を再建するにはどのような備えが必要なのでしょうか。
この記事では、能登半島地震のデータをもとに、住宅被害の実態や復興の進捗、今後の課題、地震保険や防災対策の備えについて解説します。

能登半島地震では、住宅被害が16万件を超え、生活基盤に深刻な影響を与えました。特に古い木造住宅の倒壊が目立ち、耐震化の遅れが課題として浮き彫りになっています。ここでは、被害規模とライフラインへの影響を整理し、なぜこれほどの被害が発生したのかを考えます。
2024年1月1日午後4時10分、石川県能登地方でマグニチュード7.6、最大震度7の地震が発生しました。その後半年間で震度5強以上の地震が12回観測され、被害は石川県を中心に新潟・富山・福井にも広がりました。
内閣府の報告による住宅被害の状況は次のとおりです。
| 被害区分 | 棟数 |
|---|---|
| 全壊 | 6,536棟 |
| 半壊 | 2万3,693棟 |
| 一部破損 | 13万5,122棟 |
出典)内閣府 防災情報のページ「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」
合計16万件超の住宅が損壊し、生活再建に大きな課題を残しました。
地震の揺れだけでなく、二次災害も深刻でした。発生から約2か月間で火災は17件、交通網は寸断され、電気・水道などライフラインの復旧に時間を要しました。
| 断水 | 最大約13万5,000戸 |
|---|---|
| 停電 | 最大約4万4,000戸 |
長期の避難生活を余儀なくされた世帯も多く、災害時のライフライン確保の重要性が改めて浮き彫りになりました。
出典)内閣府 防災情報のページ「特集① 令和6年能登半島地震」
能登半島地震の発生から1年以上が経過し、被災地は「避難」から「復旧」、そして「生活再建」へと移行しています。しかし、復興は長期化しており、高齢化や建設業者不足などの課題が影響しています。ここでは、仮設住宅の設置状況、公費解体とインフラ復旧、災害公営住宅の整備、不動産市場の変化を整理します。
生活の基盤となる住まいの確保は、復興の第一歩です。能登半島地震では住宅の全壊・半壊が相次ぎ、自力で住居を確保できない世帯に対し、災害救助法に基づく応急仮設住宅が提供されました。必要戸数6,882戸は2024年12月23日にすべて建設完了しました。
仮設住宅はプレハブ型が中心で、入居条件は「住宅が全壊し居住できない」など所定の要件を満たすことが必要です。しかし、長期入居によるコミュニティの分断や孤独問題など、生活再建には新たな課題も生じています。
出典)
・石川県「応急仮設住宅(建設型)について(災害救助法:令和6年(2024年)能登半島地震)」
・内閣府 防災情報のページ「能登半島地震・豪雨におけるこれまでの取組と今後の対応方針について」
仮設住宅の整備と並行して、倒壊した家屋の処理やインフラ復旧も進められています。公費解体は、所有者に代わって自治体が解体を行う制度で、放置された家屋による防災・衛生リスクを防ぐために重要です。2025年10月末時点で申請棟数約4万棟のうち95%が完了し、街の景観は「倒壊家屋」から「更地」へと変わりつつあります。
インフラについては、上下水道の応急復旧は完了しましたが、耐震化を含む本復旧は2028年度末を目標に進行中です。完全復旧まで時間を要するため、住民の帰還や生活再建には長期的な課題が残っています。
出典)
・石川県「公費解体の進捗状況(令和7年10月末)p.1」
・国土交通省「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し (令和7年9月末時点)p.4」
仮設住宅の次のステップとして、恒久的な住まいとなる災害公営住宅の整備が進められています。能登半島地震では、石川県と富山県の10市町で約3,000戸の建設が計画され、2026年夏頃から順次入居が始まる予定です。
災害公営住宅は、長期的な生活再建を支える重要な施策ですが、人口減少や高齢化を踏まえた工夫も求められています。具体的には、将来的に「移住者への分譲」や「福祉施設等への転用」が可能な設計を採用するなど、資産価値を維持する取り組みが検討されています。
また、コミュニティの維持や高齢者支援のため、共用スペースや見守り体制の整備も課題となっています。
出典)
・国土交通省「令和6年能登半島地震による被災者の住まいの確保」
・国土交通省「中長期的活用を見据えた災害公営住宅の供給上の工夫についてp.8」
・国土交通省「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し (令和7年9月末時点)p.15」
震災は地域の不動産市場にも大きな影響を与えています。国土交通省の「令和7年地価公示」によると、石川県全体では住宅地の地価変動率が前年比+0.6%とわずかに上昇しましたが、甚大な被害を受けた能登地方では地価が大きく下落しました。
全国の地価変動率下位10地点はすべて能登地方が占めており、被災リスクの高まりや再建コスト増、人口流出が背景にあります。賃貸市場では、震災直後に仮住まい需要が急増し、家賃の上昇や空室率の低下が見られました。
しかし、長期的には人口減少や経済活動の停滞により、空室率の上昇や家賃の下落が懸念されています。こうした不動産価値の変動は、生活再建や資産形成に大きな影響を与えるため、今後の動向を注視する必要があります。
出典)
・国土交通省「令和7年地価公示の概要 p.5,p.8」
・公益社団法人 石川県宅地建物取引業協会「第19回不動産市況DI調査」
能登半島地震では、公的支援や保険金が生活再建を支えましたが、受け取れる金額には限度があります。住宅再建には数千万円単位の費用がかかることもあり、資金不足や二重ローン問題が深刻化しています。ここでは、公的支援の課題と地震保険の現状を整理し、今後の備えについて考えます。
能登半島地震では「被災者生活再建支援金」や「災害援護資金」などの公的支援が用意されましたが、これだけで元の生活を取り戻すことは困難です。支援金は最大300万円、自治体の上乗せを含めても数百万円規模にとどまり、住宅再建には数千万円単位の費用がかかるケースが多いためです。
特に深刻なのが「二重ローン」の問題です。自宅が全壊しても既存の住宅ローンは免除されず、再建のために新たな借り入れを行うと返済負担が二重になります。国や自治体は「災害援護資金」の貸付や「フラット35」の返済猶予措置を設けていますが、あくまで一時的な支援であり、最終的な返済負担は残ります。
こうした現状から、生活再建には公的支援だけでなく、自助努力による備えが不可欠です。
出典)
・石川県「令和6年能登半島地震における被災者生活再建支援金について」
・石川県「令和6年能登半島地震 被災者生活再建支援制度 市町独自制度一覧」
・珠洲市「珠洲市住まい再建支援金」
・内閣府 防災情報のページ「災害援護資金の貸付」
能登半島地震では、地震保険の重要性が改めて浮き彫りになりました。損害保険協会によると、2024年5月31日時点の支払保険金額は約910億円、支払件数は10万3,439件に上りました。しかし、2022年度の石川県の世帯加入率は30.2%、富山県は27.0%であり、生活再建資金の不足が深刻な課題となっています。
地震保険は火災保険に付帯する形で加入しますが、補償額は火災保険の30~50%に制限され、建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円までです。再建費用を全額カバーすることはできず、保険料負担や補償額の制限が加入率の低さにつながっています。
今後は、上乗せ補償や民間保険の活用、加入促進策が課題です。次章では、地震への備えと保険の重要性をさらに詳しく解説します。
出典)
・一般社団法人 日本損害保険協会「令和6年能登半島地震に係る地震保険の 支払件数・支払保険金等について」
・損害保険料率算出機構「2022年度 地震保険世帯加入率」
能登半島地震では、住宅被害が16万件を超え、生活再建には公的支援だけでなく保険や自助努力が不可欠であることが明らかになりました。ここでは、地震への備えとして、ハザードマップの活用、保険の見直し、経済的な準備のポイントを整理します。
能登半島地震では、地盤の弱い地域や津波リスクのある沿岸部で住宅被害が集中しました。こうした被害を防ぐために重要なのがハザードマップです。ハザードマップは、洪水・津波・土砂災害などのリスクや避難場所、避難経路を示した地図で、自治体や国土交通省のサイトで確認できます。
マイホームを購入する際は、必ずハザードマップで災害リスクを確認し、できるだけ安全な立地を選ぶことが生活再建の第一歩です。また、現在の住まいでも避難経路や避難所を事前に把握しておくことが重要です。
火災保険と地震保険では補償範囲に大きな違いがあります。火災保険は火災や風水害などによる損害を補償しますが、地震・噴火・津波による損害は対象外です。一方、地震保険は地震・噴火・津波を原因とする火災や損壊、埋没、流失を補償します。
ただし、地震保険の補償額は法律で制限されており、火災保険の30~50%の範囲で設定されます。建物は最大5,000万円、家財は最大1,000万円が上限です。これは、巨大災害時に保険金総額が膨らみすぎないよう国と民間が共同で運営しているためです。
能登半島地震では、地震保険の支払保険金額は約910億円に達しましたが、再建費用を全額カバーするには不十分なケースが多く、自己資金や追加補償の必要性が浮き彫りになりました。こうした補償の限界を理解し、上乗せ保険や資金計画を検討することが重要です。
地震保険の世帯加入率は2024年の全国平均で35.4%、火災保険契約における地震保険付帯率は70.4%と過去最高を記録しました。しかし、能登半島地震では加入率が低い地域で生活再建資金の不足が深刻化し、保険の重要性が改めて浮き彫りになりました。
地震保険を見直す際は、次のポイントを確認しましょう。
| 居住エリアのリスク | ハザードマップで地震・津波・液状化リスクを確認。 |
|---|---|
| 再建資金の有無 | 自己資金だけで生活再建が可能か。 |
| 資産の保全 | 建物や家財が高額な場合、失った際の経済的ダメージに耐えられるか。 |
地震保険は火災保険の30~50%しか補償されないため、上乗せ補償や特約の活用も検討し、万が一に備えた資金計画を立てることが重要です。
出典)
・損害保険料率算出機構「2024年度 地震保険付帯率、世帯加入率」
・損害保険料率算出機構「火災保険契約のうち70.4%が地震保険を付帯(2024年度地震保険付帯率)」
能登半島地震の被害と復興の状況から、生活再建には公的支援だけでは不十分であることがわかります。万が一に備えて耐震補強や防災グッズの準備に加え、地震保険の見直しや資金計画を検討することが重要です。
万が一の際に資金不足に陥らないよう、今のうちから以下の対策を検討しておきましょう。
災害はいつ起こるかわかりません。物理的・経済的な備えの両面から、ご家族の暮らしを守る準備を始めましょう。
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