公開日:2025.08.06
「5,000万円の家を買いたいけれど、自分の年収で本当に買えるのか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、フラット35を利用して5,000万円の家を購入する際の金利に基づく返済シミュレーションと、購入時に注意すべきポイントについて解説します。
フラット35では、融資率(借入金額が物件価格に対して占める割合)によって金利が変動します。融資率が9割以下と9割超の場合で適用金利が異なるため、頭金の有無によって返済額に差が生じます。
2025年7月時点の、新機構団信付きのフラット35(借入期間21年以上35年以下)の金利水準は以下のとおりです。
フラット35の金利水準(2025年7月)
融資率 | 金利の範囲 | 最も多い金利 |
---|---|---|
9割以下 | 年1.840%~年3.970% | 年1.840% |
9割超 | 年1.950%~年4.080% | 年1.950% |
出典)住宅金融支援機構金利情報をもとに筆者作成
ここでは、頭金なしと頭金を1割入れてローンを組む場合の2パターンでシミュレーションします。
返済期間35年、元利均等返済、ボーナス払いなしを前提に、頭金なし(融資率10割)と融資率9割を条件にシミュレーションすると下表のようになります。
条件 | 借入額 | 適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|---|---|
頭金なし | 5,000万円 | 1.95% | 約16.4万円 | 約6,902万円 |
頭金1割 | 4,500万円 | 1.84% | 約14.5万円 | 約6,106万円 |
頭金なしの場合は、初期費用を抑えられるメリットがありますが、融資率が9割超となるため金利が高くなり、結果として毎月の返済額や総返済額が増加します。一方で、頭金を1割入れると融資率が9割となり、金利が低く抑えられるため、返済負担も軽減されます。
5,000万円の家を購入する場合は、住宅ローンの返済だけでなく、将来の生活も見据えた資金計画が重要です。以下のポイントを押さえて、無理のない住宅購入を目指しましょう。
自己資金が多ければ多いほど、借入金額を抑えることができ、毎月の返済額や総返済額の負担を軽減できます。国土交通省の調査によると、住宅購入者の自己資金比率は平均30%~50%程度です。可能な限り自己資金は多めに準備をし、住宅ローンの借入額を適切に設定しましょう。
住宅種別 | 自己資金比率 |
---|---|
土地付注文住宅 | 29.0% |
マンション | 48.3% |
注文住宅 | 42.5% |
建売住宅 | 30.4% |
中古マンション | 47.9% |
中古戸建住宅 | 47.3% |
出典)国土交通省令和5年度住宅市場動向調査をもとに筆者作成
住宅購入では、物件価格以外にもさまざまな費用がかかります。借入額を決める場合は、購入時の「諸費用」や、購入後に継続して発生する「維持費」も含めて、総合的に資金計画を立てることが重要です。
これらの費用は、住宅ローンの返済とは別に必要となるため、月々の支出や将来の負担を見越して、余裕のある資金計画を立てましょう。
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示す指標で、住宅ローンの審査でも重視されます。この数値が高くなるほど、毎月の返済額や総返済額の負担が重くなり、生活費や将来の支出に影響を及ぼす恐れがあります。
国土交通省の調査によると、住宅ローンを利用している世帯の返済負担率は、平均で15~20%程度です。借入希望額を決める場合は、教育ローンや自動車ローンなどの他の借り入れも含めた総返済負担率が20%を超えないように意識すると安心です。以下は、住宅種別ごとの平均的な返済負担率です。
住宅種別 | 返済負担比率 |
---|---|
マンション | 15.5% |
注文住宅 | 19.4% |
建売住宅 | 17.6% |
中古マンション | 15.7% |
中古戸建住宅 | 16.1% |
出典)国土交通省令和5年度住宅市場動向調査をもとに筆者作成
一般的に、住宅ローンは長期にわたって返済が続くため、定年退職後も住宅ローンが残っていると、老後の生活に大きな負担になる場合があります。返済期間中には、病気やケガ、転職などで収入が減少するリスクもあるため、安定した収入があるうちに完済できるよう、計画的に返済期間を設定することが大切です。
例えば、30歳で住宅ローンを組む場合は、返済期間を35年に設定すると完済は65歳になります。60歳を定年として収入が減少することを考えると、最後の5年間は返済負担が大きくなることが想定されます。そのため、繰上返済を活用したり、返済期間を短めに設定したりすることで、定年までの完済を目指すことが現実的です。
5,000万円の家を購入するための住宅ローンの返済額は、適用金利や頭金の有無などによって大きく変動します。購入を検討する場合は、事前に返済シミュレーションを行い、月々の支出や将来の生活設計を踏まえた資金計画を立てることが大切です。
特に、定年までに無理なく完済できるよう、返済期間や自己資金の準備、諸費用・維持費の見積もりを含めて、総合的に判断しましょう。安心して自宅を購入するためには、「借りられる金額」だけでなく、「返せる金額」を見据えた計画が欠かせません。
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