【FP相談事例】退職後に家族を応援するための資金を調達したい

更新日: / 公開日:2019.11.26

自分だけでなく、家族がやりたいことを実現するために、急にまとまった資金が必要になることはよくあることでしょう。そんな時、先に住宅ローンの完済などへ充当してしまって手持ち資金が少なく、悩む方も多くみかけます。
この記事では、退職金で住宅ローンを完済した後に、家族を応援するために資金を捻出したいという66歳のFさんの相談事例をご紹介します。

[ご相談者 Fさん]
66歳男性 退職後アルバイト。配偶者を亡くし、一人娘(独身)が近所に住む。
自宅はマンション。昨年、退職金で住宅ローンを完済したので、手元の預貯金が少ない。
娘が知人のカフェを引き継ぎ、室内を一部リニューアルしたいと資金の相談を持ちかけてきた。5~6年後には返してくれるようだが、今、資金の余裕がなくどうしたらいいか?

(1)自宅に住むのは変わらずお金を生み出す更なる方法

>不動産担保ローンの概要についてはこちら
>リースバックの概要についてはこちら

Fさん: 昨年、退職金で住宅ローンを完済したので、手元の預貯金はかなり減ってしまいました。それでも、アルバイトをしながら、自分の老後のことは何とかできるようにと思ってがんばっています。

FP吹田:住宅ローンを完済されたのですね。アルバイトなどお仕事をされて収入を得続けられることは、経済面だけでなく、人との関わりや生きがいなどにもつながっていく大切なことだと思います。

Fさん: はい、家にじっとしているよりは、よほど充実しています。実は、一人娘がいるのですが、知人から譲り受けたカフェのリニューアル資金を貸してもらえないかと相談を持ちかけられました。5年前に亡くなった妻とともに可愛いがってきた娘なので、なんとか援助したいのですが、手元の資金は少なく、悩んでいます。

FP吹田:なるほど。お嬢様からはどのくらいの資金で、返済についても何かおっしゃっていましたか?

Fさん: はい、500万円~600万円くらいの予算らしく、毎年100万円くらいずつ返すと言われています。実は、娘は証券会社に勤めていた経験もあるので、お金の管理はちゃんとできる方だと思います。

FP吹田:しっかりしているお嬢様ですね。金融機関にお勤めでしたら、銀行からの借入は、審査が厳しく、無担保だと金利が高いのもご存じなのでしょうね。Fさんは、援助して応援したいと思っていらっしゃるのですよね。

Fさん: はい、そうです。今、担保とおっしゃいましたが、せっかく住宅ローンを完済したのだし、自宅を担保にしても住み続けながらお金を捻出する方法ってあるのでしょうか?

FP吹田:はい、いくつかあります。実は、先日、不動産を担保に年金形式で分割借入をしていくリバースモーゲージに関するご相談もあったのですが(詳細はこちらの記事参照「不動産担保ローンとリバースモーゲージ、違いを知って賢く使い分けよう!」)Fさんはまとまった資金なので、他の方法がいいでしょう。ご自宅に住み続けながら、ご自宅を活用して資金を生みだす方法として、不動産担保ローンとリースバックという方法があります。

(2)不動産担保ローンとリースバックの違いは?

Fさん: 不動産担保ローンはイメージがわきますが、リースバックって何ですか?

FP吹田:リースバックというのは、不動産の売却と賃貸の組み合わせで、不動産業者に自宅などの不動産を売却するのですが、そのまま賃貸するというものです。一方、イメージしやすいとおっしゃった不動産担保ローンは、不動産を担保にまとまったお金を借りることです。両方とも特に引越しなども不要で住み続けられるという点は似ていますね。

Fさん: では、違うのはどんなことでしょうか?

FP吹田:決定的に違うのは、所有権です。不動産担保ローンは、抵当権を設定はしますが、所有権は自分や家族など現状と変わりません、一方、リースバックは、売却をするので、所有権は一旦買い取った不動産業者に移ります。その不動産業者と、そのまま賃貸契約をするわけです。

Fさん: 引越しなどはしなくても、権利が変わっているんですね。所有権にこだわるかどうかが一つ目の鍵ですね。

FP吹田:所有権を手放すということは、精神的に寂しく感じる方もいらっしゃいますが、維持費の負担、例えば固定資産税の納税義務や地震や災害での修復などの重荷から解放されるとも言えます。

Fさん: 確かにそうですね。他に、返済などの今後については、どのような違いが出ますでしょうか?

FP吹田:リースバックは、家賃を支払い、将来、資金ができたら買い戻すこともできます。一方、不動産担保ローンは、借入期間中は借入元本と利息の返済をしていきます。

Fさん: なるほど。今の自分だとリースバックで家賃を払ったり、将来買い戻したりするのは資金的に難しそうです。でも、ローンだと、昨年終わったはずが、また始まるわけですね。

FP吹田:とはいえ、不動産担保ローンの実際の負担は、予算では500万円~600万円という借入金額ですし、何年間借りるかという返済期間によって全然変わってきますよ。それに、不動産担保ローンはFさんのお嬢様が借りる形にする方法もありますよ。

(3)利用者の生活スタイルや性格・志向によって使い分けできる

Fさん:え?私がローンを組まなくても、娘の名前で不動産担保ローンを契約できるのですか!それなら、娘が借入希望額や返済期間を決められるので、スッキリするような気がします。たぶん私への負い目を感じることも少なくてすむでしょうし。

FP吹田:そうですね。以下に比較一覧を作成しましたが、基本的にローンが嫌いな方、所有権が変わっても平気な方、物件も共有名義などでなく自分で決められるという方は、リースバックを好まれる傾向が強いようです。

Fさん: なるほど。所有権の変更で、ふと思い出したのですが、うちは小規模なマンションなので、管理組合の理事がよく回ってきます。来年くらいに順番だからお願いねと打診があったのを思い出しました。これは所有権の有無によって、理事を受けれるかどうか影響も出てきますよね。みんなからあれ?って思われてしまいそうで、ちょっと心配です。

FP吹田:マンション内でコミュニティができていて、皆さんよくお話しされる関係なのですね。理事の人事を巡って詮索されたくない場合は、所有権が変わらない状態で、担保評価の範囲内で借入をして返済をしていく不動産担保ローンのほうが、使いやすいかもしれませんね。お嬢様なら、返済計画もしっかり考えていそうでしょうし、お話しされてはいかがでしょうか?

Fさん:  わかりました。話してみます。それぞれの仕組みや特徴の違いがわかったので、私も娘も納得できると思います。

不動産担保ローンとリースバックの主な特徴

不動産担保ローンリースバック
仕組み不動産を担保にした借入れ不動産の売却と賃貸の組み合わせ
所有権の変更なしあり
月々の負担額借入元本返済と利息家賃
取引後返済できれば、不動産はそのまま。
返済できない場合は、担保不動産を売却。
そのまま賃貸として住み続けられる。
後で買い戻すことも可能。
資金使途の制限少ないなし
契約当事者所有者本人のほか、家族でも可能。所有&居住者(共有していれば名義人全員)

まとめ

住み続けながら資金を捻出する方法として、

不動産担保ローンが向いているタイプは?

・返済計画がしっかりできている方
・所有権が変わるのが気になる方(近所付き合いやマンション管理組合の理事など)
・本人や家族が不動産を持ち、ローンへの抵抗が少ない方

リースバックが向いているタイプは?

・借金が嫌いな方
・所有権を手放しても平気な方(固定資産税や維持費など負担が軽くていいなど)
・不動産が共有名義でなく、自分で意思決定しやすい方

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執筆者紹介

吹田 朝子( Tomoko Suita )
人とお金の理想的な関係を追求するお金のメンタリスト®・1級ファイナンシャルプランニング技能士・宅地建物取引士・住宅ローンアドバイザー・キャリアコンサルタント
(社)円流塾代表理事、ぜにわらい協会会長、STコンサルティング(有)代表取締役社長
一橋大学卒業後、金融機関の主計部を経て1994年より独立。中小企業経営者から個人まで相談実績は3,300件以上。自己実現のためのお金の使い方や増やし方のサポートに力を入れている。
<主な著書>
「お金の流れをきれいにすれば100年人生は楽しめる!」スタンダーズ社・「小学生でもわかる!お金にまつわるそもそも事典」C&R研究所・「お金オンチの私が株式投資を楽しめるようになった理由」C&R研究所 など