2020.09.02

配偶者居住権とは?概要やメリット・デメリット、成立要件について解説

約40年ぶりに民法(相続法)が改正され、2020年4月から「配偶者居住権」が施行されました。配偶者居住権という言葉を聞いたことはある方でも、その内容まではよくわからないのではないでしょうか。配偶者居住権は、夫婦で暮らす自宅の相続や売却に関わってきます。そのため、現在夫婦で持ち家に暮らしているのであれば、相続が発生する時のために配偶者居住権について理解しておくことが大切です。今回は、配偶者居住権の概要やメリット・デメリット、成立要件について詳しく解説します。

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、配偶者が被相続人所有の不動産に居住していた場合に、相続開始後も引き続きその不動産に無償で居住できる権利のことです。通常、被相続人が死亡すると、被相続人が所有していた居住建物や預貯金などは、配偶者や子といった相続人が取得します。原則として、配偶者がすべての財産を相続できるわけではありません。そのため、配偶者が引き続き自宅に居住するために、自宅を相続すると他の預貯金などの財産を受け取れなくなり、「住む場所はあっても生活費が不足する」といった問題が発生していました。

今回の配偶者居住権の施行により、被相続人が亡くなった後も、配偶者は夫婦で暮らしていた自宅での居住を続けながら、預貯金などの財産も取得できるようになりました。具体的には、自宅を「配偶者居住権」と「負担付所有権」に分けて評価し、配偶者は配偶者居住権、子は負担付所有権を取得することになります。

配偶者居住権のメリット

配偶者居住権のメリットは以下2つです。

被相続人が亡くなった後も自宅に住み続けられる

配偶者居住権は、被相続人が亡くなった後も引き続き自宅に無償で居住できる権利です。これまでは、全体の相続財産よって、残された配偶者が夫婦で暮らしていた自宅を相続できず、自宅に住み続けられない可能性がありました。しかし、配偶者居住権を利用すれば、被相続人が亡くなった後も自宅に住み続けられます。

不動産以外の財産が受け取りやすくなる

配偶者居住権は、不動産以外の財産が受け取りやすくなるのもメリットです。たとえば、被相続人が夫、相続人が妻と子の場合、法定相続分は「妻:子=1:1」となります。相続財産が自宅と預貯金のみで、それぞれの価値が全く同じであれば、妻は自宅を相続すると預貯金は取得できなくなってしまいます。

しかし、配偶者居住権を利用すれば、自宅を配偶者居住権と負担付所有権に分けることになるので、妻は自宅に住み続けながら、預貯金の一部を受け取ることも可能になります。

配偶者居住権のデメリット

配偶者居住権には先程紹介したメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。

住まなくなっても自宅を売却できない

配偶者居住権にも価値はありますが、相続開始時に自宅に住んでいた配偶者だけに認められる権利であるため、第三者に売却できません。たとえば、介護が必要になって介護施設に入居することになっても、配偶者居住権が設定されたままの状態だと、自宅を売却して現金化できなくなります。対処法として、配偶者居住権を合意解除や放棄する事はできますが、自宅を売却する可能性があるなら、配偶者居住権の設定は慎重に判断したほうがいいでしょう。

設定手続きが複雑で税負担もある

配偶者居住権は、設定手続きが複雑でわかりにくいのもデメリットです。配偶者居住権の価値評価については、法務省が以下の「簡易な評価方法の考え方」を提示していいます。

配偶者居住権の価値=建物敷地の現在価値-負担付所有権の価値

一方で、日本不動産鑑定士協会連合会は、配偶者居住権の鑑定評価について「実務指針」を公表する予定でしたが、考え方の確立や実務の蓄積が待たれるとして、今のところは研究報告の公表にとどめています。このように、配偶者居住権の価値評価については、まだ不透明な部分が多いのが現状です。

固定資産税は不動産の所有者が負担するのが基本ですが、配偶者居住権を取得した者は「通常の必要費を負担する必要がある」とされており、固定資産税や修繕費を負担しなくてはなりません。また、配偶者居住権を第三者に主張するためには、登記も必要になります。このように、施行から日が浅く、専門的な知識がなければ一般の方には難しい内容となっています。

参考)
法務省|配偶者居住権の価値評価について(簡易な評価方法)【PDF】
公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会|「配偶者居住権等の鑑定評価に関する研究報告」の公表について

配偶者居住権の成立要件

配偶者居住権が成立するには、以下3つの要件を満たす必要があります。

  1. 相続開始時に被相続人の所有する建物に居住していたこと
  2. 相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していないこと
  3. 以下のいずれかに該当
    (ア) 遺産の分割により配偶者居住権を取得するものとされたこと
    (イ) 配偶者居住権が遺贈の目的とされたこと

被相続人が配偶者以外の者と自宅を共有していた場合、配偶者居住権は取得できないので注意が必要です。また、配偶者居住権は、遺産の分割や遺贈(遺言による贈与)により取得できます。

配偶者居住権を検討する場合は専門家に相談を

ここまで書いてきたように、配偶者居住権を設定すると、子が自宅の所有権を取得しても残された配偶者は自宅に住み続けられるメリットがありますが、子は相続できる現預金などの財産が少なくなる上、第三者に売却するのは難しくなります。そのため、配偶者居住権の設定は配偶者と子の折り合いが悪い場合などに限られるでしょう。

配偶者居住権は、まだ始まったばかりの制度です。配偶者居住権を設定すれば、被相続人がなくなった後も自宅に住み続けられますが、その成立要件や評価方法は複雑で、まだ不透明な部分が多いのが現状です。配偶者居住権を検討する場合は、相続税に強い税理士などの専門家に相談しましょう。

ご相談、仮審査申込は無料です。お気軽にお問い合わせください。
0120-334-258受付時間:月~土 9:00 - 17:45