住宅ローンは変動から固定に借り換えるべき?金利上昇時の判断ポイントを解説

公開日:2025.09.03

最近の金利上昇を受けて、「変動金利のままで大丈夫?」「固定金利に変えたほうが安心?」と悩む人も多いのではないでしょうか。

この記事では、変動金利から固定金利への借り換えが住宅ローンの返済額にどのような影響を与えるのか、シミュレーションも交えてわかりやすく解説します。さらに、借り換えにかかる諸費用やタイミングの見極め方など、判断に役立つポイントも紹介します。

住宅ローンの変動金利と固定金利の違い

住宅ローンを選ぶ際に重要なのが、金利タイプの選択です。ここでは「変動金利」と「固定金利」の違いについて、仕組みや特徴を解説します。

変動金利型の住宅ローンの特徴

変動金利型の住宅ローンは、多くの場合、各金融機関が半年ごとに金利の見直しを行います。また、変動金利は一般的に金融機関が設定する短期プライムレートの動きに連動しています。この短期プライムレートは、日本銀行の政策金利の影響を受けるため、利上げが行われると、一定期間を経て住宅ローン金利も上昇する傾向があります。

ただし、金利がすぐに上昇するとは限らず、金融機関の判断で据え置かれることもあります。変動金利は借入当初の金利が低く、月々の返済額を抑えられる点がメリットです。

また、多くの金融機関では、以下のような返済額を調整する仕組みを設けています。

  • 5年ルール:金利が変動しても、5年間は返済額が変わらない
  • 125%ルール:金利が上昇しても、返済額の増加は最大125%までに抑えられる

これらの仕組みは、利息の支払いを免除するものではなく、支払いが先送りされるだけである点に注意が必要です。将来の金利変動に備え、こうした仕組みを理解したうえで、返済計画を立てることが大切です。

固定金利型の住宅ローンの特徴

固定金利型の住宅ローンは、一般的に新発10年国債利回りなどの長期金利を参考に、金融機関が金利を設定します。契約時に決定した金利が返済期間中ずっと適用されるため、月々の返済額が変わらないのが特徴です。金利が上昇しても返済額に影響がないため、将来の支出計画が立てやすく、家計管理の面でも安心感があります。

ただし、以下のような注意点もあります。

  • 借入時の金利は、変動金利よりも高めに設定される傾向がある
  • 金利が下がっても返済額は変わらないため、結果的に割高になることがある

とはいえ、金利上昇局面では返済額が固定されていることが大きなメリットとなり、長期的な安定を重視する方には適した選択肢といえるでしょう。

固定金利型の住宅ローンを選ぶ人が増加傾向にある

長く続いた低金利時代の日本では、住宅ローンの金利タイプとして変動金利を選ぶ人が多く見られました。しかし近年では、インフレの進行や賃上げの広がりを背景に、日本銀行が利上げに転じる動きが見られています。これに伴い、政策金利や長期金利が上昇し、住宅ローン金利にも影響が及んでいます。

こうした金利環境の変化を受けて、返済額が一定で安心感のある固定金利を希望する人が増えています。住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用予定者調査(2025年4月)」によると、希望する金利タイプは変動金利が37.1%、固定金利が30.7%でした。

前年(2024年4月)の調査と比較すると、変動金利は3.0ポイント減少し、固定金利は4.4ポイント増加しています。金利の先行きに不安を感じる人が、長期的な安定を重視して固定金利を選ぶ傾向が強まっていることがうかがえます。

出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用予定者調査(希望する金利タイプ)p.15

変動金利と固定金利の違いで住宅ローンの返済額はどう変わる

金利が変動すると、住宅ローンの返済額も変化します。特に変動金利を利用している場合、将来的な金利上昇によって返済負担が増えることがあるため、注意が必要です。

一般的に、変動金利は固定金利よりも金利水準が低く、借入当初の返済額を抑えられるメリットがあります。ただし、金利が上昇した場合には、返済額が増えるリスクがあります。

一方、固定金利に借り換えることで、返済額が一定になり、将来の金利変動に左右されずに安定した返済計画を立てることができます。これは、家計管理のしやすさや安心感につながる選択肢です。

住宅ローンの返済額を4パターンで比較|金利上昇・借り換えの影響

ここでは、以下の融資条件で住宅ローンをすでに15年間返済しているケースを想定し、4つのパターンで月々の返済額と総返済額の違いをシミュレーションします。

融資条件

  • 借入金額:3,000万円
  • 返済期間:35年(15年経過)
  • 金利タイプ:変動金利1.0%
  • 返済方法:元利均等返済(ボーナス払いなし)

上記の融資条件で返済が15年経過していると、借入残高は1,841万円です。ここから次の4つのケースでの返済シミュレーションを見ていきましょう。

融資条件

  1. 現状のまま返済を続け、金利が変動しない場合
  2. 現状のまま返済を続け、金利が上昇する場合(10年毎に0.5%)
  3. 現状のまま返済を続け、金利が上昇する場合(10年毎に1.0%)
  4. 固定金利(1.50%)に借り換えた場合(諸費用は60万円とし、借り換え後の残高に加算しない)
ケース1.現状維持2.金利上昇(+0.5%)3.金利上昇(+1.0%)4.借り換え(固定金利)
金利推移1.0%1.0%→1.5%→2.0%1.0%→2.0%→3.0%1.0%→1.5%
月々の返済額
1〜15年
84,685円
月々の返済額
16〜25年
84,685円88,856円93,154円88,856円
月々の返済額
26〜35年
84,685円91,056円97,757円88,856円
総返済額3,556万円3,683万円3,815万円3,656万円
諸費用60万円
総返済額+諸費用3,556万円3,683万円3,815万円3,716万円

住宅保証機構株式会社「住宅ローンシミュレーション」をもとに筆者作成(千円以下切り捨て)

今回のシミュレーションから、金利が上昇した場合には返済額・総返済額ともに増加することがわかります。特に③のように10年毎に1.0%の金利上昇があった場合、総返済額は約259万円増加し、家計への影響も無視できません。

一方、④のように固定金利へ借り換えた場合は、諸費用を含めても総返済額は約3,716万円に抑えられ、③よりも約99万円少なくなります。返済額が一定であることから、将来の金利変動に左右されず、家計管理のしやすさや精神的な安心感も得られる点が大きなメリットです。

ただし、借り換えには諸費用がかかるため、金利差や残りの返済期間によっては、必ずしも得になるとは限りません。借り換えを検討する際は、金利の動向だけでなく、諸費用や返済期間、ライフプランも含めて総合的に判断することが重要です。借り換えを検討している人は、まずは金融機関のシミュレーションツールを活用し、諸費用を含めた総返済額を確認してみましょう。

変動から固定金利型住宅ローンへ借り換える前に確認したい注意点

変動金利から固定金利へ借り換える場合は、以下の点に注意する必要があります。

借り換え効果が得られない場合がある

住宅ローンの金利は、変動金利が政策金利、固定金利が長期金利の影響を受けて決まります。金利が上昇する局面では、先に長期金利が上がり、後から政策金利が上昇する傾向があります。

そのため、金利が上昇してから固定金利への借り換えを検討しても、すでに固定金利も上がってしまっている可能性があります。結果として、期待していたほど有利な条件で借り換えができないこともあります。

こうした事態を避けるためには、金利の上昇が予測されるタイミングで、早めに固定金利への借り換えを検討することが重要です。

借り換えには諸費用がかかる

住宅ローンの借り換えには、以下のような諸費用が発生します。

  • 借り換え元のローンにかかる費用:繰上返済手数料、抵当権抹消費用など
  • 借り換え先のローンにかかる費用:融資事務手数料、保証料、印紙税、抵当権設定費用など

これらの費用は金融機関によって異なり、特に融資事務手数料の計算方法や保証料の有無によって大きな差が出ることがあります。借り換えを検討する際は、諸費用の総額を事前に確認し、総返済額にどの程度影響するかを把握しておくことが大切です。シミュレーションをする際に、実際の諸費用を含めた借り換え効果を確認するようにしましょう。

まとめ

住宅ローンの金利が上昇傾向にある今、変動金利から固定金利への借り換えは、将来の返済負担を抑える有効な手段となり得ます。特に、長期的な家計の安定を重視する方にとっては、返済額が一定になる固定金利は安心感のある選択肢です。

ただし、借り換えには諸費用がかかり、タイミングによってはメリットが小さくなる場合もあるため、慎重な検討が欠かせません。借り換えを検討している人は、まずは金融機関のシミュレーションツールを使って、諸費用を含めた総返済額を確認してみましょう。早めの行動が、将来の安心につながります。

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執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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