公開日:2026.04.22
地震保険の加入は、地震による建物・家財の損壊だけでなく、通常の火災保険では対象外となる地震を原因とする「火災(延焼を含む)」や「津波」への備えとして有効な手段です。
しかし、「地震保険はいらない」という意見を聞いて、加入すべきか迷う人もいるでしょう。地震保険の必要性は、漠然とした不安や先入観ではなく、経済的合理性やリスク許容度の観点から冷静に判断することが重要です。
この記事では、「地震保険はいらない」と言われる理由と必要性の判断基準、保険料を抑える方法を解説します。地震保険の基本的な仕組みや火災保険との違いについては、以下の記事をご参考にしてください。

「地震保険は不要」と言われる主な理由は以下の3つです。
地震保険の保険金額(保険金の限度額)は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定します。建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。
さらに、地震保険は実際の修理費がそのまま支払われる「実損払い」ではありません。被害の程度に応じて「全損(100%)」「大半損(60%)」「小半損(30%)」「一部損(5%)」の4段階(平成29年1月1日以降保険始期の地震保険契約の場合)に区分し、契約した保険金額に対する一定の割合で保険金が支払われる仕組みとなっています。これは、個別の修理費を精査する時間を省き、被災者へ迅速に現金を届けるという公的性格を持つ制度としての役割を優先しているためです。
そのため、「地震で建物が損壊した場合、地震保険だけで建て替え費用や修理費用を全額カバーするのは難しい」というのが実態であり、これが不要と言われる理由の一つになっています。各損害区分(全損〜一部損)の詳しい認定基準や、実際の支払い例については以下の記事で解説しています。
前述のとおり、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の最大50%であり、損害額が全額補償されるわけではありません。また、地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同で運営する公共性の高い保険です。
建物の構造や所在地である都道府県ごとに基準料率が定められており、どの保険会社で加入しても保険料は一律ですが、地域によっては保険料が高額になるケースがあります。最大50%となる補償上限とのバランスから「割高だ」と感じる人がいるのも事実です。
解体撤去費用や家財購入で数百万円程度、建て替えが必要な場合は数千万円程度の費用が必要になるケースもあります。実際に「公的支援で受け取れる金額」と「生活再建にかかる費用の目安(例)」を比較してみましょう。
※上記の費用はあくまで目安(例)であり、建物の規模や被害状況、地域によって大きく異なります。
公的支援だけでは生活再建費用が足りない場合、地震保険や預貯金などで補う必要があります。
出典)内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」
地震保険に加入すべきかどうかは、万が一被災した際の「資金的な回復力」や「ご自身のリスク許容度」によって大きく変わります。
そのため、「絶対に必要」「全く不要」といった極端な二元論で決めるのではなく、現在の家計状況に照らし合わせて「地震保険で備えておいたほうが安心できるか」という視点で検討することが重要です。
具体的には、以下のポイントが判断の目安となります。
現在住宅ローンを返済中の人は、地震保険への加入によるリスクヘッジの優先度が相対的に高いと考えられます。万が一、地震で家が全壊して住めなくなったとしても、元の住宅ローンの返済義務はそのまま残ります。
もし新しい家を建て直したり、別の賃貸物件を借りたりする場合、「元の家のローン」と「新しい住居の費用(ローンや家賃)」を同時に負担する『二重ローン(二重債務)問題』に直面するリスクがあります。
地震保険の保険金があれば、この当面の二重ローンの返済や当座の生活費に充てることができ、家計の破綻リスクを軽減し、生活再建を支える一助となります。
十分な貯蓄がなく、被災後の生活再建を自己資金だけでまかなうことが難しい人は、地震保険で備えておく重要性が増します。
地震で被災した場合、家具・家電の買い替えや仮住まいの費用など、想定以上の支出が生じることがあります。また、公的支援だけでは補償が足りないケースも多いため、地震保険で備えると安心です。
仮に地震で住宅が損壊しても、自己資金で修繕や建て替えに対応できるのであれば、地震保険によるリスクヘッジの優先度は下がると考えられます。
ただし、多額の資金を取り崩すと、今後のライフプランに影響を及ぼすこともあります。保有資産と保険料負担とのバランスを踏まえ、「保険で備える」という選択肢も検討することが大切です。
地震保険には、さきほど述べたような「当面の生活資金を確保できる」メリットや「地震保険料控除が適用される」といったメリットなどがあります。このような経済的合理性の観点から、地震保険の必要性を考えることが重要です。
大地震の発生頻度は低いものの、一度起これば家計に深刻な打撃を与える恐れもあります。修繕費に加え、避難生活や仮住まい、生活必需品の購入など、短期間でまとまった資金が必要になるからです。
地震保険の保険金は使い道が限定されておらず、生活費や住宅の修理費など幅広い用途に充てることができます。
地震保険料控除は、支払った地震保険料に応じて所得税・住民税の負担が軽減される税制優遇制度です。支払保険料に応じて、最大で所得税は5万円、住民税は2万5,000円まで「所得」から控除されます。
これにより、所得税率10%・住民税率10%の世帯が上限まで控除を受けた場合、年間で合計7,500円(所得税5,000円+住民税2,500円)の減税効果が期待できる計算となります。
ただし、実際の軽減額はご自身の所得に応じた税率によって異なります。 地震保険料控除による税負担の軽減分を加味した「実質的な年間コスト」と、それによって得られる「生活再建資金(保険金)」を天秤にかけて加入判断を行うとよいでしょう。
地震保険料の負担を抑えるには、「家財のみ加入する」「長期契約をする」の2つが主な選択肢となります。
家財のみ加入すると、建物の補償がない分だけ保険料負担が軽減されます。
例えばマンションは、構造上、倒壊しにくいケースが多い一方で、特に高層階では揺れが増幅されやすく、家財に大きな被害が出ることがあります。このようなケースでは、建物の地震保険には加入せず、家財の地震保険のみ加入するのも選択肢となるでしょう。
ただし、建物に対する補償がゼロになるため、地震の揺れによる損壊だけでなく、「地震を原因とする火災(延焼を含む)や津波」で建物が失われた場合もすべて自己負担となる点には十分な注意が必要です。貯蓄額や住まいの状況を踏まえ、慎重に検討しましょう。
地震保険は2年〜5年の長期契約にすることで、1年あたりの保険料を割安にできます。保険期間に応じて割引率が高くなり、長期で契約したほうがお得になる設計になっています。
保険料を一括払いにする必要はありますが、1年あたりの保険料を少しでも抑えたい場合は長期契約がおすすめです。
出典)財務省「地震保険制度の概要」
地震保険は、補償額が火災保険の保険金額の最大50%であること、公的支援があることなどを理由に「地震保険はいらない」と言われることがあります。
しかし、支援金だけで生活再建費用をカバーするのは難しいため、地震保険に加入しないと多額の自己負担が生じるかもしれません。特に住宅ローンが残っている人や貯蓄だけで生活再建が難しい人は、地震保険によるリスクヘッジの優先度が高いと考えられます。
地震保険料の負担を少しでも抑えたい場合は、状況に応じて「家財のみ加入する」「長期契約をする」といった方法を検討しましょう。まずは現在の火災保険の契約内容を確認しましょう。地震保険は火災保険の契約期間中であっても、後から追加で加入(中途付帯)することが可能です。
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