公開日:2026.07.22
こんにちは、公認会計士の千日太郎です。前回の記事(【フラット35】2026年7月金利は3.14%に決定|公認会計士の予測と機構債分析)では、【フラット35】の2026年7月金利を3.16%~3.26%と予想し、3.14%となり予想レンジから外れる結果となりました。
まずは、最新の機構債と市場動向から分析した2026年8月の【フラット35】金利予想の結論をお伝えします。
2026年8月【フラット35】金利予想
政府の「骨太の方針」をめぐる報道を受け、財政規律の後退や日銀の利上げが遅れることへの懸念から国債が売られ、6月末から7月にかけて新発10年国債利回りは上昇しました。その後、財務大臣から日銀の独立性を尊重する発言もあり、新発10年国債利回りは低下しましたが、機構債の発行条件が決まる時点では、前月よりもおおむね0.1ポイント高い水準となりました。
さらに、機構債の表面利率を決めるもう一つの要素である「ローンチスプレッド」も、ここ数か月にわたって拡大を続けています。これは、機構債を購入する投資家が、より高い上乗せ利回りを求める傾向が強まっているということを意味します。
加えて、住宅金融支援機構(以下、機構)はここ数か月、【フラット35】金利を機構債表面利率より低く抑える「逆ザヤ」を縮小させています。逆ザヤの縮小は、【フラット35】金利の上昇要因となります。
新発10年国債利回りの上昇、ローンチスプレッドの拡大および逆ザヤの縮小傾向を踏まえ、8月の【フラット35】金利は上昇すると予想します。
この記事では、金利上昇の根拠となる国債・機構債の動きと、借り手にとって重要な「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の現状について解説します。
※10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。

2026年7月の【フラット35】金利は前月から0.07ポイント低下の3.14%に決定し、6月下旬での予想レンジ(3.16%~3.26%)を下回る結果となりました。この予想は、機構債表面利率の0.11ポイント低下および直近の「逆ザヤ(機構による金利抑制)」の縮小傾向を加味したものでした。
しかし、実際にはこの逆ザヤ縮小が想定よりも抑制され、【フラット35】金利は0.07ポイントの低下となりました。また、6月24日には、通常の月次MBSとは調達スキームが異なるE55債の発行条件も決定され、表面利率は2.61%となりました。通常の月次債よりも低利率の資金調達となるE55債の発行は【フラット35】金利を抑制する要因になり、機構の調達環境を見るうえでの補足材料になります。
なお、【フラット35】の金利は、以下の簡易式で説明できます。
このうち「新発10年国債利回り + ローンチスプレッド」は、機構債の表面利率として発表されます。つまり、金利予想において最も重要なのは、機構の裁量による調整幅(逆ザヤ)の動向です。
2026年5月まで新発10年国債利回りは上昇トレンドにあり、これに連動して機構債の表面利率も大きく上昇しました。その間【フラット35】の金利上昇は、機構債表面利率の上昇幅に比べ抑えられる場面がありました。結果として、過去13か月連続で【フラット35】の金利が機構債の表面利率を下回る「逆ザヤ」状態が維持されました。
2025年6月に0.05ポイントから始まった逆ザヤは拡大を続け、2026年2月には0.52ポイントに達しました。しかし、3月以降は縮小に転じ、7月時点では0.07ポイントまで縮小しています。逆ザヤはまだ残っているものの、解消に近づいている状況です。
ここまでの推移を踏まえ、機構は逆ザヤを段階的に縮小し、機構債表面利率に近い水準へ【フラット35】金利を戻す動きが見られます。
ここまでの推移を踏まえ、次のようなシナリオが想定されます。
機構債表面利率 vs 【フラット35】金利の推移(2025年4月以降)

※出典)
・住宅金融支援機構「既発債情報」
・住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」
※上記出典を基に「住まいとお金の知恵袋編集部」作成
逆ザヤの推移(2025年4月以降)

※上記出典を基に「住まいとお金の知恵袋編集部」作成
2026年6月から7月にかけて、新発10年国債利回りは2.62%から2.71%(※)へ、0.09ポイントの上昇となりました。さらに、ローンチスプレッドも0.59%から0.61%へ0.02ポイント拡大しています。これに伴い、機構債表面利率は3.21%から3.32%へと0.11ポイント上昇し、2026年6月と同じ利率となりました。
さらに逆ザヤから利ザヤへ推移していくペースを加味した、8月の【フラット35】金利予想の詳細は以下のとおり2つのシナリオが予想されます。
※10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。
【フラット35】金利推移(直近3か月)と2026年7月予想
| 2026年5月 | 2026年6月 | 2026年7月 | 2026年8月 千日太郎の予想 | |
|---|---|---|---|---|
| 【フラット35】の金利(※) | 2.71% | 3.21% | 3.14% | 3.21%~3.32% |
※出典)住宅金融支援機構【フラット35】「借入金利の推移(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)」
予想下限金利の3.21%は、機構債表面利率3.32%に対して、2026年6月と同じ0.11ポイントの逆ザヤを設けるシナリオです。
国民の住生活を支える公的使命を持つ機構としては、調達金利が上昇した局面であっても、直ちに金利を引き上げずに利用者負担を見ながら段階的に正常化を進める可能性があると考えます。
そのため、機構債表面利率が同じであった6月にならい、0.11ポイントの逆ザヤを設け、8月の【フラット35】金利を6月と同じ3.21%に抑える可能性があるとみています。
予想上限金利の3.32%は、逆ザヤを設けず、機構債の表面利率をそのまま【フラット35】金利へ反映するシナリオです。
機構が逆ザヤの解消を優先する場合、8月の【フラット35】金利は機構債表面利率と同じ3.32%になる可能性があります。
ここ数か月、逆ザヤは縮小してきました。また、ローンチスプレッドが上昇を続けていることから、機構債を購入する投資家は、より高い利回りを求めていることが分かります。ローンチスプレッドは機構債の需給や市場環境など複数の要因によって変動しますが、直近では上昇傾向が続いており、現時点ではこれが反転する材料にも乏しいことから、当面は高い水準で続くとみています。
この傾向を踏まえると、機構が再び大きな逆ザヤを設ける余地は限られており、3.32%まで上昇するシナリオも想定しておく必要があります。
主要データ(2026年7月17日時点)
| 機構債発表日 | 2026年4月17日 | 2026年5月21日 | 2026年6月19日 | 2026年7月17日 |
|---|---|---|---|---|
| 機構債の表面利率(※1) | 2.97% | 3.32% | 3.21% | 3.32% |
| 新発10年国債利回り(※2) | 2.42% | 2.74% | 2.62% | 2.71% |
| ローンチスプレッド(※1) | 0.55% | 0.58% | 0.59% | 0.61% |
※1:出典)住宅金融支援機構「既発債情報」
※2:10年国債利回りは便宜上、機構債表面利率からローンチスプレッドを差し引いた率としています。
政府の「骨太の方針」をめぐる報道を受け、財政悪化への懸念から国債が売られ、新発10年国債利回りは上昇し、前月と比べると0.1ポイントほど高い水準となっています。
また、機構債の表面利率を決めるローンチスプレッドも、ここ数か月にわたって上昇を続けています。長期金利の上昇とローンチスプレッドの拡大が重なり、最新の機構債表面利率は3.32%となりました。
機構が6月と同じ0.11ポイントの逆ザヤを設ければ、8月の【フラット35】金利については3.21%となります。一方、逆ザヤをゼロとし、機構債の表面利率をそのまま反映すれば3.32%となります。いずれのシナリオでも7月の3.14%から上昇するとみています。
住宅ローンの決定は金利を当てるマネーゲームではなく、生活を守るための長期のプロジェクトです。重要なのは最終的な損得ではなく、金利が変動しても生活を安定して維持できるかどうかです。金利水準だけでなく複数の金利タイプで事前にシミュレーションを行い、自身のライフプランに合ったリスクの取り方で住宅ローンを選ぶ視点が求められます。
※この記事は2026年7月17日時点の公開情報に基づき、筆者の個人的な見解として執筆したものです。将来の金利動向を保証するものではありません。最終的な借り入れや投資の判断は、ご自身の責任において行ってください。
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