ペアローンの住宅ローン控除シミュレーションと注意点

公開日:2026.09.02

住宅購入時に住宅ローンでペアローンを選択すると、夫婦それぞれが住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できるため、単独ローンと比較して税負担の軽減効果を高められる可能性があります。

ただし、所有権の持分割合や将来の収入変動を考慮せずに契約すると、本来受けられるはずの住宅ローン控除を十分に活用できないリスクおよび贈与税発生のリスクが生じます。

この記事では、ペアローンにおける住宅ローン控除の仕組みや単独ローンとの控除額比較のシミュレーション、失敗を防ぐための注意点、初年度の確定申告手続きの流れまで詳しく解説します。なお、ペアローンには夫婦以外の組み方もありますが、本記事では最も一般的な夫婦によるペアローンを前提に解説します。

<比較表:ペアローン・単独ローン>

項目ペアローン単独ローン
契約本数夫婦それぞれ1本ずつ(計2本)1本
住宅ローン控除の適用夫婦2人とも適用可能契約者(1人)のみ適用可能
注意すべきリスク持分と負担割合不一致による控除の取りこぼし、贈与税発生
育休などの減収による控除未消化
控除枠の上乗せ不可、高額物件での枠超過
主な手続き夫婦それぞれで確定申告(初年度)
年末調整(2年目以降)
契約者本人のみ確定申告(初年度)
年末調整(2年目以降)

ペアローンにおける住宅ローン控除の基本的な仕組み

ペアローン住宅ローン控除_アイキャッチ

ペアローンは、夫婦それぞれが主債務者として住宅ローン契約を締結する資金調達手法です。

住宅ローン控除の適用要件を夫婦双方が満たすことで、それぞれの控除枠を活用し、税負担の軽減効果をより高められる仕組みとなっています。


ペアローンは夫婦それぞれが「債務者」で控除枠も2人分

ペアローンは、1つの物件に対して夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約する形態です。夫婦ともに債務者となり2本の住宅ローンを組むため、住宅ローン控除の適用要件を満たせば控除枠も2人分となります。

住宅ローン控除は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%が所得税などから最長13年間控除されます。夫婦ともに一定の収入があり、ペアローンでそれぞれが住宅ローン控除を利用できる場合、単独ローンよりも税負担を軽減できる可能性があります。

なぜペアローンだと控除額が拡大するのか?(2つの上限)

ペアローンによって住宅ローン控除額の拡大を期待できる理由は、「借入限度額」と「納税額」にそれぞれ上限があるからです。

借入限度額による上限

住宅ローン控除には住宅の環境性能などに応じた「借入限度額(控除対象となる住宅ローン残高の上限)」が定められています。借入限度額を超えた部分は控除の対象外となります。

例えば、令和6年から令和12年入居の新築の長期優良住宅・低炭素住宅であれば借入限度額が4,500万円です。

※所得2,000万円以下、床面積40㎡以上が要件

※令和10年以降入居から土砂災害等の災害レッドゾーンの新築住宅は住宅ローン控除適用対象外

※子育て世帯・若者夫婦世帯への特例枠を適用した場合の上記住宅の借入限度額は5,000万円(特例枠の適用には床面積50㎡以上が要件)

出典)国土交通省「住宅ローン減税」および国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

下図は借入限度額4,500万円に対し6,000万円の住宅ローン残高があった場合の控除限度額の算出イメージ図です。

<借入限度額に応じた控除限度額のイメージ図>

借入限度額に応じた控除限度額のイメージ図

上図の例では、借入限度額を上回る1,500万円分が控除対象外となります。ペアローンで借入額を分散させることで、夫婦それぞれで限度額枠を活用でき、全体の控除対象残高を拡大できます。

納税額による上限

住宅ローン控除で減税できる金額は、本人が納めている所得税額が上限となります。

また、所得税から控除しきれなかった場合は、住民税額からも控除されます(ただし前年分の所得税の課税総所得金額等の5%、最高9.75万円までが上限)。

下図は住宅ローン減税による控除限度額31.5万円に対し所得税からの控除額13万円、住民税からの控除額9.75万円であった場合の控除額のイメージ図です。

<納税額に応じた控除額のイメージ図>

納税額に応じた控除額のイメージ図

上図の例では、控除対象となる所得税・住民税の合計が控除限度額を下回るため、控除額の未消化(使い残り)が発生します。ペアローンにより夫婦双方の納税額から分散して控除することで、控除額の未消化を防ぐことが可能となります。

【シミュレーション】単独ローンとペアローンの控除額比較

ここでは、総負担額8,000万円の新築住宅を購入し、6,000万円借り入れた場合に住宅ローン控除を受ける際の、単独ローンとペアローンの控除総額の試算をします。

【試算条件】

  • 総負担額:8,000万円、当初借入総額:6,000万円(新築、長期優良住宅)
  • 1人あたりの借入限度額:4,500万円(令和6年から令和12年入居、子育て世帯・若者夫婦世帯の特例枠を適用しない場合の標準限度額)
  • 金利タイプ:全期間固定金利
  • 適用金利:年3.0%
  • 返済期間:35年(1月に借入)
  • 返済方法:元利均等返済、ボーナス払いなし
  • 控除期間:13年間、控除上限:年末残高×0.7%
  • 世帯年収:夫800万円、妻400万円
  • 控除対象となる扶養親族:なし
  • 前提条件:夫婦間の借入割合と持分割合は一致
比較項目パターンA:夫の単独ローンパターンB:ペアローン
当初借入額夫 6,000万円夫 4,000万円 / 妻 2,000万円
13年間の控除総額約409万円夫 約317万円 / 妻 約158万円
総額約475万円

出典)イー・ローン「住宅ローンの控除(減税)シミュレーション」にて住まいとお金の知恵袋編集部試算

※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。控除上限額は社会保険料控除や各種所得控除適用後の課税所得、および住民税からの控除上限に基づいて算出しています。実際の金額は、個々の状況によって異なります。

今回の試算では、ペアローンを利用した場合、単独ローンに比べて控除総額が約66万円増える結果となりました。このように、住宅ローンの借入を分散させることで、住宅ローン控除額を拡大することが期待できます。

ペアローンによる控除で失敗しないための注意点

ペアローンによる税負担の軽減効果をより適切に活用するためには、以下の注意点を事前に把握し、対策を講じる必要があります。

  • 住宅の持分割合と負担割合の一致(控除の取りこぼし・贈与税発生リスク)
  • 産休や育休、将来の減収リスク
  • 住宅の環境性能区分などに応じた借入限度額の確認
  • 控除期間中の繰上返済タイミング

控除の取りこぼし・贈与税発生リスク

控除の取りこぼしおよび贈与税発生リスクを回避するためには、住宅の持分割合と負担割合(「(頭金負担額 + 住宅ローン借入額)÷ 住宅の取得総額」)を一致させることが重要です。

  • 住宅ローン控除の取りこぼしリスク
    住宅ローン控除の対象となる残高は原則として「自身の持分割合に応じた取得対価の額」または「自身のローン残高」のいずれか少ない方が上限となります。不一致が生じていると、本来受けられるはずの控除枠を取りこぼしてしまう原因となります。
  • 贈与税が発生するリスク
    例えば、住宅の持分割合を夫婦で「夫50%:妻50%(各4,000万円相当)」と登記したにもかかわらず、実際の負担割合が「夫60%(4,800万円):妻40%(3,200万円)」となった場合、夫から妻へ800万円(10%分)の利益移転があったとみなされ、贈与税の課税対象(みなし贈与)となる恐れがあります。

産休や育休、将来の減収リスク

住宅ローン控除は、所得税や住民税を納めていることが前提となる制度です。所得が減少して納める税金が減った場合、住宅ローン控除による税負担軽減効果も低減します。

例えば、産休や育休を取得して所得が大きく減少した場合、控除の未消化が大きくなることがあります。

ペアローンの借入割合を決める際、将来の育休取得期間や時短勤務による減収幅をあらかじめ想定し、減収が見込まれる側の借入額を抑える方法が考えられます。

住宅の環境性能などに応じた借入限度額の確認

住宅ローン控除における借入限度額は、取得する住宅の環境性能(長期優良住宅や省エネ性能など)および新築・既存(中古)などの区分に応じて異なります。

住宅の購入契約を結ぶ前に、ハウスメーカーや不動産仲介会社に対し「建設住宅性能評価書」や「住宅省エネルギー性能証明書」などの交付可否を確認し、自らが取得する住宅の環境性能区分と控除限度額を正確に把握することが重要です。

控除期間中の繰上返済タイミング

繰上返済を行うと将来の支払利息を削減できるメリットがありますが、控除期間中の実施には注意が必要です。

住宅ローン控除は「各年末時点の住宅ローン残高」を基準に計算されます。控除期間中の繰上返済により借入限度額よりも住宅ローン残高が下回った場合、控除される金額も減少します。

また、夫婦のどちらかだけを優先して繰上返済すると、控除額のバランスが崩れ、控除の取りこぼしとなる恐れもあります。

初年度の手続きは?ペアローン利用時の住宅ローン控除の「確定申告」の流れ

住宅ローン控除を適用する初年度は夫婦がそれぞれ確定申告を行う必要があります。2年目以降は、原則勤務先の年末調整で手続きが完結します。

初年度は夫婦別々に確定申告が必要

住宅ローン控除を初めて受ける年は確定申告が必要です。ペアローンでは夫婦それぞれが控除を受けるため、別々に確定申告を行います。主な必要書類は以下の通りです。

  • 控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの年末残高証明書
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書や工事請負契約書の写し
  • 住宅の環境性能を証明する書類

必要書類は、住宅の取得方法などによって異なります。手続きを円滑に進めるためにも、ハウスメーカーや不動産仲介会社、金融機関などに事前に確認しておきましょう。

2年目以降は会社の「年末調整」で完結

会社員で給与所得者の場合、2年目以降は原則として住宅ローン控除のための確定申告が不要となり、勤務先の年末調整で手続きが完結します。

税務署から交付される「住宅借入金等特別控除申告書」と、住宅ローン契約先の金融機関から届く「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を夫婦それぞれが自身の勤務先に提出することで控除が適用されます。3年目以降も、勤務先へ書類を提出する形式となります。

まとめ

ペアローンは夫婦それぞれの住宅ローン控除枠を活用して世帯における税負担を軽減できる有効な選択肢です。一方で、住宅の持分割合と負担割合の不一致による控除の取りこぼし・贈与税発生リスク、産休・育休期における将来の減収リスクも存在します。

将来のライフイベントや家計の変化を踏まえた適切な負担割合を設定することが、ペアローンにおける税負担の軽減効果を発揮するために重要なポイントとなります。

まずは購入予定住宅の環境性能および新築・既存(中古)などに応じた借入限度額を確認し、夫婦双方の将来の収入見通しをシミュレーションすることで、具体的な借入金額や負担割合の検討から始めましょう。

※本記事は執筆時点の法令・制度に基づいて作成しています。住宅ローン控除制度の内容(控除率、借入限度額、控除期間、適用要件等)は、今後の税制改正等により変更される場合があります。また、本記事は一般的な情報提供を目的としており、住宅ローン控除の適用可否や贈与税の課税関係等は個別の状況によって異なる場合があります。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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