夫婦で組むペアローンとは?後悔しないために知るべきデメリットと対応策

公開日:2026.08.12

住宅価格の上昇が続くなか、若年層を中心に住宅ローンで「ペアローン」を利用する世帯が増加しています。ペアローンは単独ローンよりも借入可能額を増やせるため、希望する住宅を取得するための有効な手段と言えます。

一方で、将来において収入減少や離婚といった予期せぬ事態が発生した際、返済が困難になるリスクも内包しています。

この記事では、単独ローンや収入合算との違いを整理したうえで、ペアローンのメリット・デメリットや後悔しないための活用法、さらには万が一の際の出口戦略(対応策)を解説します。

【本記事の要約】

  • 夫婦で組むペアローンとは:夫婦それぞれが主債務者として個別にローン契約を結び、互いに連帯保証人となる仕組み
  • メリット:借入可能額の拡大、夫婦双方での住宅ローン控除適用、団信(団体信用生命保険)の個別加入・最適化が可能
  • デメリット:育休や転職などによる世帯収入減少リスク、諸費用が2本分発生、離婚時の名義変更・ローン契約解消が困難
  • 出口戦略(対応策):無理のない返済負担率の維持、連生団信の活用、離婚時は売却(アンダーローン・オーバーローン別の対処)や借り換えによる清算が必要

夫婦で組むペアローンとは?基礎知識と「借入額を増やす」他の方法との比較

ペアローンとは_アイキャッチv2

夫婦で組むペアローンは、夫婦それぞれが主債務者として個別にローン契約を結ぶ手法です。単独ローンや収入合算とは契約構造が明確に異なります。

<比較表:ペアローン・単独ローン・収入合算>

ペアローン単独ローン収入合算(連帯保証)収入合算(連帯債務)
契約の数2本1本1本1本
借入可能額の審査基準夫婦それぞれの収入債務者の収入主たる債務者の収入と配偶者の収入を合算した金額
(ペアローンよりも上限が低くなる傾向あり)
住宅の所有権共有名義債務者の名義主たる債務者の名義共有名義
住宅ローン控除夫婦それぞれ対象債務者のみ対象主たる債務者のみ対象夫婦それぞれ対象
団信夫婦それぞれ加入可能債務者のみ主たる債務者のみ加入原則主たる債務者のみ加入※
事務手数料・印紙代2本分1本分1本分1本分

※収入合算(連帯債務)の団信は、原則主たる債務者のみ加入(【フラット35】の「デュエット(夫婦連生団信)」や一部民間金融機関の連生団信を利用できる場合があります)

ペアローンの基本的な仕組み

ペアローンは、夫婦がそれぞれ主たる債務者となって計2本の住宅ローンを契約し、互いが相手の連帯保証人となる仕組みです。1人(夫または妻)だけで契約する「単独ローン」より、借入可能額を拡大できる可能性があります。

住宅の持分割合(所有権の割合)は、それぞれの資金負担割合に応じて設定するのが一般的です。例えば、総額5,000万円の住宅に対し、夫が3,000万円、妻が2,000万円資金負担する場合、持分割合は夫3/5、妻2/5とするのが原則です。

実際の資金負担割合と登記上の持分割合に差異がある場合、差額分に対して贈与税が課されることもあるため注意が必要です。

ペアローンの利用動向

以下の表からペアローンの利用率は上昇傾向であることが読み取れます。背景には、共働き世帯の増加、住宅価格の上昇があると考えられます。

<ペアローンの利用動向>

借入形態(単独ローン・ペアローン)

出典)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「単独ローンと“増加する”ペアローン 変遷と実像比較

また、ペアローンは、若年層世帯の利用率が高い傾向にあります。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)」によると、ペアローンの利用割合は全体では24.1%であるのに対し、20代が35.3%、30代が30.9%となっています。

出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)】

収入合算(連帯保証・連帯債務)との違い

借入可能額を増やす方法としては、ペアローンのほかに収入合算もあります。収入合算とは、申込者本人(主たる債務者)の収入に配偶者の収入を合算して住宅ローンの審査を受ける方法で、「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類があります。

収入合算は住宅ローン契約が1本で済むため、事務手数料や印紙代などの初期費用を抑えられます。一方、住宅ローン控除適用の最大化や、夫婦それぞれの団信加入を重視して最適化する場合は、ペアローンが有力な選択肢となります。


ペアローンを利用する4つのメリット

ペアローンの主なメリットは、借入可能額の拡大に加え、住宅ローン控除の恩恵を夫婦双方で享受できる点、そして金利タイプ・返済期間を個別に設定できる点や団信の保障内容を個別に最適化できる点にあります。

借入可能額の拡大

住宅ローンは、債務者本人の収入をベースに審査が行われます。ペアローンは夫婦それぞれの収入をもとに2本の住宅ローンを組むため、単独ローンよりも借入可能額を拡大することが可能です。

また、収入合算の場合は「配偶者の年収の50%まで」といった合算上限を設ける金融機関もあるため、審査条件によってはペアローンの方がより借入可能額を拡大しやすいと言えます。

夫婦双方での住宅ローン控除適用

ペアローンは、夫婦がそれぞれ主たる債務者となるため、一定の要件を満たせば双方が住宅ローン控除(減税)を受けられます。

例えば、借入総額6,000万円(対象住宅の控除対象限度額が3,000万円・控除率0.7%の要件)の場合、単独ローンでは控除上限の対象となる年末借入残高は最大3,000万円までのため、年間最大21万円の控除にとどまります。

しかし、ペアローンで夫3,000万円・妻3,000万円の契約に分ければ、夫婦それぞれが年末借入残高を基に年間最大21万円(合計で年間最大42万円)の控除を受けられる計算となり、世帯全体での税負担の軽減効果を大きくできます。

※住宅ローン控除の適用要件や控除額は法改正等により変更される場合があります。最新の制度については国税庁や金融機関等でご確認ください。

金利タイプ・返済期間の個別設定

ペアローンは2本の独立した住宅ローン契約であるため、借入金額、金利タイプ、返済期間を夫婦で個別に設定できます。

「夫の住宅ローンは変動金利で目先の月々返済額を抑え、妻の住宅ローンは全期間固定金利で将来の金利上昇リスクをヘッジする」といった選択も可能です。返済期間についても、夫は35年、妻は25年といった柔軟な設計に対応する金融機関もあります。

夫婦それぞれのニーズに合った団信への加入

夫婦がそれぞれ個別の団信に加入できるため、健康状態や保障ニーズに合わせた選択が可能です。「夫はがん保障付き団信を手厚くし、妻は金利上乗せのない一般団信を選ぶ」といったカスタマイズができます。

収入合算では原則として主たる債務者しか団信に加入できないため、ペアローンならではの強みと言えます。

ペアローンで後悔する前に知るべき4つのデメリット

ペアローンは借入可能額を拡大できる反面、離婚時のローン契約の整理に困難が伴うほか、ライフイベントの変化による世帯収入減少のリスクが顕在化しやすい構造的な特徴を持っています。

離婚時の「ローン契約の整理」が困難

ペアローンの大きなリスクとして、離婚時における住宅の権利関係および債務の取り扱いに困難が伴うことが挙げられます。住宅が共有名義であり、かつ互いが連帯保証人となっているため、単独の意思での住宅売却や名義変更はできません。

また、「離婚に伴い夫が転居し、妻が家に住み続ける」と夫婦間で合意した場合でも、ローン契約の変更等の手続きを行わない限り、夫のローン契約と連帯保証債務はそのまま残ります。夫のローン返済が滞った場合、連帯保証人である妻に返済義務が移行する可能性もあります。妻側でも残債を支払うことができなければ、最終的に住宅が差し押さえられて競売に付され、居住の継続が難しくなる恐れがあります。

夫の返済滞納のリスクを排除するために、妻の単独ローンに借り換える方法もありますが、妻単独の収入で残債全額を負担するための審査を通過しなければなりません。

さらに、贈与税が発生するリスクについても要注意です。ペアローンからどちらか一方の単独ローンに借り換える場合、相手の債務を引き受けることで、経済的利益の供与とみなされ、贈与税がかかる恐れがあります。

※離婚時の単独ローンへの借り換えや名義変更にともなう手続きや税務上・法務上の取り扱いについては、金融機関、税理士、弁護士などの専門家へご相談ください。

出産・育休や転職による「世帯収入減少」のリスク

ペアローンは「夫婦双方が現在の水準で稼ぎ続けること」を前提に借入可能額を算出します。そのため、出産、育児、転職、病気休職などで一時的あるいは長期的に世帯収入が減少した場合、返済が困難になるリスクが高まります。

借入可能額の限界までローンを組むのではなく、将来の不確実性を織り込んだゆとりある資金計画を策定することが不可欠です。

配偶者に万が一の事態が生じた際の残債リスク

ペアローンで夫婦それぞれが団信に加入している場合、一方に万が一の事態(または所定の高度障害状態など)が発生した際に団信によって完済されるのは、該当する側のローン残債のみです。

世帯全体の収入が減少するなかで、残された自身のローン返済と生活費を単独の収入でまかなうことになるため、家計の収支状況によっては経済的な負担が重くなるリスクがあります。

契約にかかる諸費用(事務手数料や印紙代)が2倍になる

ペアローンは2本のローン契約を結ぶため、金融機関に支払う事務手数料、保証会社への保証料、契約書の印紙税、司法書士への抵当権設定登記費用などがそれぞれ2契約分発生します。

借入金額や利用する金融機関の商品性にもよりますが、単独ローンと比較して数十万円単位で諸費用が膨らむため、事前の資金計画に組み込んでおく必要があります。

後悔しないためのペアローン活用法・対応策

ペアローンのリスクをコントロールするためには、目先の借入可能額だけで判断せず、適正な返済負担率の維持と、将来の金利上昇や万が一の事態に備えた保障の確保を並行して行う必要があります。

他の借入手段と慎重に比較検討

ペアローンの大きな魅力は、借入可能額を増やせる点です。しかし、目先の金額だけで判断せず、諸費用、住宅ローン控除、将来のリスクを総合的にシミュレーションし、他の借入手段(単独ローンや収入合算)と比較検討することが重要です。

世帯収入減少に備えたゆとりある資金計画と適正な返済負担率の策定

ペアローンは世帯収入減少のリスクが顕在化しやすいため、「片方の収入だけでも返済可能な借入金額に抑える」「手元資金を多めに残す」といった、ゆとりある資金計画が重要です。

特に注意すべき点は、世帯年収に対する年間返済額の割合を示す「返済負担率」です。金融機関は上限35%程度まで借入可能額を提示することがありますが、将来の収入減少のリスクも見据え、国土交通省の調査による平均値(16〜20%程度)を目安に、無理のない借入金額を設定しましょう。

出典)国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書

団信に加え特約保障の拡充

夫婦それぞれの団信に、がん保障や3大疾病・8大疾病保障などの特約を付加することで、病気に伴う世帯収入減少に備えることができます。

ただし、これらの特約を付加する場合、住宅ローンの借入金利に年0.1〜0.3%程度が上乗せされるのが一般的です。現在加入しているがん保険や医療保険、就業不能保険などとの保障内容に重複がないかを確認し、コストと安心感のバランスを見極めながら検討しましょう。

ペアローン連生団信の活用

「配偶者に万が一の事態が生じた際、自身のローンが残る」リスクをカバーするためには、ペアローン向け「連生団信」の利用が有効です。連生団信とは、夫婦のどちらか一方に万が一のことがあった場合、双方のローン残債が全額保障(完済)される仕組みです。

残された家族の住居費負担を軽減できるため、万が一に備える手段の一つとして有効です。ただし、連生団信の利用にあたっては利用できる金融機関が限られる点と住宅ローンの借入金利に上乗せ(年0.1〜0.2%程度が目安)されるためコスト負担に注意が必要です。

金利上昇リスクへの備え(全期間固定金利の検討)

借入総額が大きくなりやすいペアローンにおいて、それぞれが変動金利を選択した場合の金利上昇による返済額の増加リスクは高くなります。例えば、夫婦で借入総額8,000万円・返済期間35年・元利均等返済・当初変動金利1%で借り入れた場合、当初の毎月返済額は約22.6万円です。

しかし、借り入れから5年後に適用金利が1%から3%に上昇すると、毎月返済額は約29.6万円となり毎月約7万円も返済負担が増加します。

ただし、「5年ルール」や「125%ルール」を採用している金融機関であれば、金利が上昇しても利息の支払いが繰り越されることで5年間の毎月返済額は変わりません。また、5年ごとに毎月返済額が増えるときも、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。

出典)住宅金融支援機構「返済プラン比較シミュレーション」をもとに「住まいとお金の知恵袋編集部」試算

将来の返済額を確定させ、金利変動リスクを完全に排除したい場合は、【フラット35】などの全期間固定金利をペアローンで利用することが有効です。


離婚に伴うペアローンの出口戦略

離婚によりペアローンの継続が困難となった場合、原則として住宅の売却または住宅ローンを借り換えた上での所有の継続が必要となります。いずれの選択も、夫婦間の合意と金融機関への確認が不可欠です。

住宅の売却による清算

夫婦双方が合意して住宅を売却し、その売却代金でそれぞれ返済中のペアローンを清算する方法です。売却価格が住宅ローン残債を上回るかどうかで対処法が異なります。

アンダーローン:住宅の価値>ローン残債(完済、リースバックの利用)

<アンダーローンのイメージ図>

アンダーローンのイメージ図v2

住宅の売却価格が住宅ローン残債を上回るアンダーローンの場合は、売却代金でローンを完済でき、手元に資金が残る状態です。この「含み益(売却益)」は夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象となります。

また、アンダーローンであればリースバックを利用して居住を継続する選択肢もあります。リースバックを利用することで、ローンを完済した上で、賃借人として居住を継続することができます。

オーバーローン:住宅の価値<ローン残債(任意売却または自己資金での補填)

<オーバーローンのイメージ図>

オーバーローンのイメージ図v2

売却代金だけでは住宅ローン残債を完済できない状態です。金融機関はローンを全額返済しなければ抵当権の抹消を認めないため、不足分を自己資金などで補填する必要があります。

自己資金などでの補填が不可能な場合は、金融機関の合意を得て「任意売却」を行う方法もありますが、売却後も無担保となった残債の返済義務が残る点に注意が必要です。

住宅所有を継続

住宅を売却せずに保有を続ける場合は、主に以下2つの選択肢があります。

単独名義への変更

住宅の所有を継続したままどちらか一方が住み続ける場合は、ペアローンを解消し、単独名義への変更と単独ローンへの借り換えを行うことになります。

ただし、2人分の収入を前提に組んだ住宅ローンを1人で引き受けることになるため、金融機関の審査通過のハードルは高く、必ずしも実現できるとは限りません。

投資用不動産への転用

夫婦ともに退去し、第三者に賃貸して得た家賃収入でローンを返済する方法です。住宅ローンは「自己の居住用」を資金使途とするため、賃貸物件として貸し出す場合は金融機関に申告のうえ、住宅ローンに比べ金利水準が高い「不動産投資用ローン」への借り換えが必須となります。無断で賃貸物件として貸し出すと一括返済を求められる可能性があるため、事前の金融機関への相談が欠かせません。

ただし、この解決策は以下のような高いハードルがあります。

  • 借り換え審査とキャッシュフローでのハードル:不動産投資用ローンは不動産の収益性(利回り)を重点的に審査されるため、希望通りの額で借り換えられないケースも少なくありません。また、家賃収入よりもローン返済金額や管理維持費が上回り、毎月のキャッシュフローが赤字(持ち出し)になるリスクがあります。
  • 共有名義による賃貸経営のハードル:ペアローン解消に至らず共有名義のまま賃貸物件として貸し出す場合、実質的に「元夫婦で賃貸経営の共同事業を行う」ことになります。新規入居者の審査、修繕費用の負担、家賃水準の決定、そして将来の売却方針(出口戦略)など、重要な意思決定には双方の合意が必要です。夫婦の関係性が悪化している場合、協議が難航して経営が立ち行かなくなる恐れがあります。


まとめ

ペアローンは、夫婦が協力して住宅ローンの借入可能額を拡大させ、高騰する住宅価格から選択肢を広げる有効な手段です。また、夫婦それぞれが住宅ローン控除の恩恵を受けられ、金利タイプ・返済期間を個別に設定できる点、団信も個別にカスタマイズできる点は大きな魅力と言えます。

その反面、「ライフイベントの変化による世帯収入減少リスク」「離婚時の権利関係・ローン契約解消の困難さ」「万が一の際には住宅ローン残債が残るリスク」など、単独ローンにはない構造的なリスクを負うことになります。

ペアローンを利用する際は、目先の借入可能額だけではなく、将来の不確実性を考慮し、無理のない資金計画を策定することが不可欠です。収入合算など他の借入手段と比較検討するとともに、連生団信や固定金利の活用を通じて、長期的なリスクマネジメントを徹底してください。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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