公開日:2026.10.14
住宅ローンの変動金利と固定金利は、借入時の適用金利水準だけでは有利・不利を判断できません。借入後に急激な金利上昇が起きれば固定金利の方が総返済額を抑えられるケースがあります。一方、金利上昇のタイミングによっては、変動金利が固定金利よりも高くなったとしても総返済額を抑えられるケースもあります。
この記事では、金利上昇のタイミングが住宅ローンの総返済額に与える影響や、金利タイプの選択基準について解説します。
【本記事の要約】

変動金利における総返済額は、当初金利や上昇後の金利水準だけでなく、「金利上昇のタイミング」と「その時点の借入残高」によって大きく変わります。金利水準だけでなく、金利上昇のタイミングによる借入残高の減少ペースを把握することが重要です。
住宅ローンの支払利息は「借入残高×適用金利」を基に計算されます。そのため、借入残高が最も大きい返済初期段階の金利水準が総利息額に大きな影響を与えます。
全期間固定金利よりも低い金利水準で変動金利を利用した場合、返済初期の支払利息が抑えられ、その分だけ返済が進みます。仮に将来的に金利が上昇して固定金利の水準を上回る事態になっても、それまでに借入残高が十分に減っていれば、上昇後に生じる利息負担増の影響は限定的になります。
変動金利では、金利上昇のタイミングが早いほど総返済額が大きくなります。借入から数年以内に大幅な金利上昇が発生した場合、借入残高が大きいため支払利息が急増します。
一方、返済開始から10~15年程度経過するなど、返済が進んだ段階での金利上昇であれば、借入残高が順調に減っているため、仮に適用金利が高くなっても利息負担は比較的抑えられます。
したがって、「変動金利が固定金利を上回った=固定金利より不利になった」という単純な構造ではありません。当初の低い金利水準による利息軽減効果が、将来の金利上昇による負担増をどの程度吸収できるかが損益の分かれ目となります。
変動金利の返済(元利均等返済)において、顧客の急激な毎月返済負担増を緩和するため、金融機関によっては「5年ルール」と「125%ルール」が設けられている場合があります。
ただし、5年ルール・125%ルールがあるからといって、金利上昇による負担がなくなるわけではありません。これらは返済額の急激な増加を抑えるための仕組みであり、支払利息そのものを減らすものではありません。
そのため、金利が上昇した場合には、将来的な返済負担や総返済額が増加する恐れがあります。また、金利上昇幅によっては未払利息が発生する場合もあるため、注意が必要です。
変動金利の総返済額は、金利上昇のタイミングによって大きく変わります。そのため、変動金利と固定金利の総返済額を比較する際は、複数の金利上昇シナリオのシミュレーションを行う必要があります。
ここでは、全期間固定金利と変動金利2パターンの総返済額をシミュレーションします。
<試算条件>
| 全期間固定金利 | 変動金利① | 変動金利② | |
|---|---|---|---|
| 適用金利 | 3.5% | 当初1.0%、5.0%まで上昇 5年ごとに1.0%ずつ上昇 | 当初1.0%、5.0%まで上昇 3年ごとに1.0%ずつ上昇 |
| 当初の毎月返済額 | 約12.4万円 | 約8.5万円 | 約8.5万円 |
| 金利上昇後の 毎月返済額 | 約12.4万円(変動なし) | 約9.7万円~約12.7万円 | 約9.9万円~約15.0万円 |
| 総返済額 | 約5,207万円 | 約4,748万円 | 約5,449万円 |
| 固定金利との 総返済額の差額 | 基準 | 約▲459万円 | 約+242万円 |
出典)住宅金融支援機構「返済プラン比較シミュレーション」にて「住まいとお金の知恵袋編集部」試算
※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。
※本記事のシミュレーション結果は一定の条件に基づく参考値です。将来の金利動向や返済額を保証するものではありません。住宅ローンの借入れや金利タイプの選択にあたっては、ご自身の責任において行ってください。
変動金利①と②は、どちらも最終的な金利は年5.0%です。変動金利①は低金利が比較的長く続くため、借入残高が大きい時期の利息を抑えられ、総返済額は全期間固定金利より約459万円少なくなる試算結果となりました。
一方、変動金利②は早い段階から金利が上昇するため、低金利による利息軽減効果が小さく、全期間固定金利より約242万円多くなります。
変動金利と固定金利の損益分岐を考える際、「変動金利が何%になったら固定金利より不利か」と金利水準だけで判断することはできません。
今回の試算では、変動金利①と②はいずれも最終的に年5.0%まで上昇しますが、総返済額では約701万円の差が生じています。つまり、変動金利が優位となる損益分岐は、上昇後の金利水準だけでなく、上昇時期やその時点の借入残高によって変わります。
将来の金利推移を正確に予測することは困難です。そのため、複数の金利上昇シナリオで総返済額を試算し、家計のリスク許容度を把握した上で金利タイプを判断する必要があります。
金利タイプの選択は、目先の適用金利ではなく「家計の防衛力(貯蓄・余剰資金)」と「将来のライフイベント支出」を軸に判断する必要があります。
変動金利を検討する際は、将来的な金利上昇に伴う返済額の増加を、家計の余力で十分に吸収できるかを確認することが重要です。例えば、以下のような条件を満たしている場合には、金利上昇リスクに備えやすいと考えられます。
このような条件を満たす家計であれば、将来金利が上昇した場合でも、必要に応じて「繰上返済」を活用することで、借入残高を圧縮し、利息負担を抑えることが可能になります。
ただし、教育費など大きな支出を控えている場合は、繰上返済によって手元資金が不足しないよう注意が必要です。
全期間固定金利は、借入契約の時点で完済までの毎月返済額と総返済額が確定します。金利動向に関係なく、教育資金や老後資金を含めたライフプランニングが可能になります。
具体的には、以下の条件に当てはまる場合は、固定金利が有力な選択肢の一つになります。
固定金利と変動金利の金利差は、「金利上昇リスクを金融機関に引き受けてもらうための保険料」と捉えることができます。目先の金利の低さだけでなく、「金利上昇時にも無理なく返済を続けられるか」という観点から、自身の家計状況に応じて慎重に判断することが重要です。
住宅ローンの変動金利と固定金利の選択は、借入時の適用金利だけでなく、金利上昇のタイミングや借入残高の推移を踏まえて比較検討する必要があります。
変動金利は返済初期の低金利によって総返済額を抑えられる場合がある一方、早期に金利が上昇すると固定金利より不利になる恐れがあります。
将来の金利推移を正確に予測するのは難しいため、複数の金利上昇シナリオを試算し、家計の余力やリスク許容度に応じて選択することが重要です。
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