不動産の共有持分だけ売却・放棄は可能?トラブル回避の手続きと税務リスク

公開日:2026.02.11

不動産を複数人で所有する「共有名義」の状態は、単独所有とは異なり、自身の判断だけで不動産全体を売却したり、建て替えたりすることができません。

「離婚した元配偶者と顔を合わせたくない」「兄弟間で遺産分割協議がまとまらない」といった理由から、自身の持分だけを手放したいと考える方は少なくありません。

結論から言えば、自身の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なく売却・放棄することが可能です。しかし、そこには法的な手順や、知っておかなければならない税務リスクが存在します。

この記事では、共有持分を単独で売却する4つの方法と、持分放棄の具体的な手続き、そしてトラブルを未然に防ぐための注意点について解説します。

共有持分の仕組みと放置するリスク

不動産の共有持分だけ売却・放棄は可能?トラブル回避の手続きと税務リスク

単独所有との違いと制限

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有する際に、各共有者が持つ所有権の割合のことです。

例えば、3,000万円の不動産を夫婦で購入し、それぞれ1,500万円ずつ負担した場合、持分割合は「2分の1ずつ」となります。共有者は、持分割合に応じて不動産を使用・管理する権利がありますが、同時に固定資産税や修繕費などの維持費を負担する義務もあります。

共有名義を放置するデメリット

共有持分の問題を先送りにして放置すると、以下のような問題が生じる場合があります。

  • 不動産全体は共有者が単独で自由に売却することができない
  • 共有者間で管理や費用負担をめぐるトラブルに発展する懸念がある
  • 相続発生時に権利関係が複雑化し、売却や活用がさらに難しくなる

共有名義の不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも同意が得られない場合、売却はできません。

さらに、共有者の1人が亡くなるとその持分が相続され、共有者の人数がねずみ算式に増えてしまうことがあります。こうなると権利関係が複雑化し、解決が極めて困難になるリスクがあります。

共有持分だけを売却する4つの方法

共有名義の不動産であっても、ご自身の「共有持分のみ」であれば売却が可能です。他の共有者の許可は不要ですが、後のトラブルを避けるために対策を講じる必要があります。

ここでは、代表的な4つの売却方法を紹介します。

他の共有者への売却

最もスムーズな方法は、他の共有者に売却することです。共有者が2人の場合、一方がもう一方に売却すれば不動産は単独名義となり、自由に活用できます。共有者が3人以上いる場合は、誰にどれだけの持分を売却するかなど、複雑化する場合があります。

ただし、個人間での売買は契約条件や価格交渉でトラブルが起きやすいため、不動産仲介業者を介して契約することが望ましいでしょう。

第三者への仲介売却

不動産仲介会社を通じて、第三者(個人や投資家)に売却する方法もあります。自分で売り出し価格を決められるため、買取業者よりも高値で売却できる可能性があります。

ただし、共有持分は利用に制約があるため、一般的に流通性が低く、買い手が見つかるまで時間がかかる傾向があります。時間に余裕があり、できるだけ高値で売却したい場合に適した方法といえます。

専門買取業者への売却

共有持分の買取業者に依頼すれば、仲介による売却よりも短期間で現金化できる可能性が高いです。売却価格は仲介より低くなる傾向がありますが、早期売却を希望する場合には適した選択肢です。

依頼する際は、複数社に評価を依頼して条件を比較することが重要です。売却価格だけではなく、契約条件や手数料の確認も忘れないようにしましょう。

土地の分筆による売却

土地の場合は、「分筆(複数の土地に分割して登記)」を行い、単独所有にしたうえで売却する方法もあります。分筆を行えば、自分の土地として自由に売却できるようになります。

ただし、分筆を行うには他の共有者全員の同意が必要です。また、土地の形状や立地によっては分筆が難しい場合があり、測量や登記の手続きに費用や時間がかかります。まずは、土地家屋調査士などの専門家に相談して判断することをおすすめします。

売却方法の比較表

売却方法メリットデメリット向いている状況
他の共有者への売却スムーズに話が進みやすい価格交渉が難航する場合あり共有者との関係が良好
第三者への仲介売却買取業者より高値で売却できる可能性あり買い手が見つかりにくい時間に余裕がある
買取業者に売却短期間で現金化可能仲介より価格が低い傾向あり早く売却したい
土地を分筆して売却単独所有で売却可能分筆費用・時間がかかる土地の形状が適している

※筆者作成

持分放棄の手続きと税務リスク

「売れなくてもいいから手放したい」という場合、持分を「放棄」することも可能です。民法第255条に基づき、放棄した持分は他の共有者に帰属します。

(持分の放棄及び共有者の死亡)第二百五十五条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

内容証明郵便による意思表示

持分放棄は、単に口頭で「いらない」と伝えるだけでは不十分です。後日、「そんな話は聞いていない」と言われないよう、持分放棄の意思表示を証拠として残すことが重要です。

具体的には、郵便局が文書の内容と発送事実を証明してくれる「内容証明郵便(配達証明付)」などが有効です。これにより、「いつ、誰が、誰に対して、持分放棄の意思表示をしたか」が客観的に証明されます。 通知が相手に到達したことを確認した後、司法書士に依頼して持分移転登記の手続きへと進みます。

なお、持分移転登記は原則として「他の共有者と共同」で行う必要があります。相手が登記手続きへの協力を拒否した場合は、裁判所を通じた手続きが必要になることもあるため、強引に進める前に専門家への相談が不可欠です。

「みなし贈与」などの税務リスク

注意すべきは「税金」です。持分を受け取った側の共有者は、経済的利益を得たことになります。これが相続税法第7条に基づき「みなし贈与」とされ、「持分を受け取った側の共有者」に贈与税が課税される場合があります。

また、放棄を行っても登記手続きが完了していなければ、固定資産税や管理費の負担義務は消えません。放棄を行う際は、司法書士や税理士へ相談しましょう。

出典)
・e-Gov法令検索「民法」(第255条
・e-Gov法令検索「相続税法」(第7条

トラブルを防ぐ注意点と「売らない」選択肢

共有持分の売却や買取を円滑に進めるためには、以下の点を確認してください。

売却・放棄を成功させる事前チェック

複数業者に評価を依頼する

共有持分は流通性が低く、業者によって評価額に差が出やすい特徴があります。1社だけで判断せず、複数社に評価を依頼し、条件を比較することで適正な価格を把握できます。

税務リスクを確認する(贈与税・譲渡所得税)

無償譲渡や低額譲渡は「みなし贈与」とされる可能性があります。また、売却益が出た場合は譲渡所得税が課税されます。税務判断は個別の状況により異なるため、事前の確認が不可欠です。

登記手続きまで確実に行う

口頭での合意だけでは不十分です。登記が完了していなければ、名義が残り続け、固定資産税や管理費の請求が来ることになります。司法書士に依頼するなどして、確実に名義変更を行いましょう。

専門家(弁護士・司法書士・税理士)に相談する

共有持分の取り扱いは、法的・税務的に複雑な判断を伴います。トラブルを未然に防ぎ、安全に取引を行うためにも、専門家の助言を得ることをおすすめします。

共有持分を担保にする不動産担保ローン

もし、共有持分の売却を検討している理由が「人間関係の解消」ではなく、「まとまった資金調達」であるならば、売却以外の選択肢もあります。それは、ご自身の共有持分のみを担保にして融資を受ける「不動産担保ローン」です。

通常の銀行ローンでは共有者全員の同意(連帯保証)を求められることが一般的ですが、ノンバンク系の不動産担保ローンであれば、自身の共有持分のみを担保に、原則として他の共有者の同意不要で融資を受けられる場合があります。また、金融機関によっては郵送物や連絡方法に配慮してくれるため、他の共有者に知られないよう進められる場合もあります。

「愛着のある不動産を手放したくはないが、現金が必要」という場合では、有効な解決策となります。

不動産共有持分に関するよくある質問

Q.他の共有者が反対していても売却できる?

A.自分の持分のみであれば可能です。他の共有者の同意は必要ありません。ただし、売却後に買主と他の共有者との間でトラブルになることを避けるため、事前に相談しておくのが望ましいといえます。

Q.放棄に費用はかかる?

A.はい、かかります。持分移転登記の手続きに必要な「登録免許税」や、手続きを代行する「司法書士報酬」などが必要です。

Q.一般的な不動産会社でも売却できますか?

A.共有持分単独での売却は、断られる場合があります。通常の不動産会社は「不動産全体」の売買を前提としているため、権利関係が複雑な共有持分のみの取り扱いは避ける傾向にあります。相談する際は、共有持分を専門に扱う不動産会社や、弁護士などの専門家を探すのが一般的です。

まとめ

共有名義の不動産は、自身の持分だけであれば「売却」や「放棄」によって単独で手放すことが可能です。

現金化したい場合なるべく高い金額での売却を目指す「仲介」や、早期解決が可能な「買取業者」など、優先順位に合わせて売却先を選ぶ。
手放したい場合放棄が可能だが、他の共有者への「みなし贈与」などの税務リスクに注意する。
資金だけ必要な場合売却せず、持分のみを担保にした「不動産担保ローン」の利用も検討する。

最も避けるべきは、問題を先送りにして権利関係をさらに複雑にしてしまうことです。ご自身の状況に合わせて、最適な出口戦略を選んでください。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。