大学を卒業して社会人になった後で、もう一度本格的に学ぶために留学を考える方も多いのではないでしょうか?学生であれば、日本政策金融公庫の国の教育ローンや奨学金を候補にすることもできますが、いざ社会に出てからだと、改めて学ぶための資金調達に悩む声をよく聞きます。
今回は、転職を繰り返してやっと自分の道を見つけ、フランス料理のシェフを目指してフランスで学びたいと強く願っている29歳のSさんの事例をご紹介します。
Sさん:この歳になって、やっと自分の進む道がわかり、フランス料理を習得するためにフランスに留学したいと思っています。ただ、授業料などで370万円くらいかかります。貯蓄では到底足りないので、どうしようかと思っています。事前に語学学校にも行きたいですし。
FP吹田:なるほど。今はアルバイトとのことですが、雇用保険に加入されていますか?まず、語学学校の費用については、厚生労働省の指定教育機関なら、雇用保険の教育訓練給付制度で条件によって20%または50%程度の援助を受けられるかもしれません。
Sさん:教育訓練給付制度ですか。アルバイトでも可能なんですか?今のレストランはやっと1年くらいになるから、ちょっと聞いてみます。
FP吹田:仮にパート・アルバイトでも、31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上働いている人は対象になっていますし、さかのぼって一定期間以上、雇用保険料を払っていれば、給付の要件を満たすことになるので、まずは確認してみてくださいね。
Sさん:わかりました。フランスの留学費用は、この教育訓練給付は該当しないのでしょうか?
FP吹田:ざっと調べたのですが、教育訓練給付制度は日本国内の制度ですし、厚生労働省が指定した国内の教育施設や資格制度が対象のようです。
Sさん:やはりそうでしたか(苦笑)。あとは、教育ローンとかは厳しいのでしょうか?
FP吹田:教育ローンの多くは、親が子供の高校や大学、専門学校などの学費のために用意した融資で、社会人にとっては使いにくいようです。
Sさん:やはり狭き門ですね。自分でもちょっと調べて、挫折しました。他に何か良さそうな手だてはないでしょうか?
FP吹田:そうですね。ご両親やお祖父様、お祖母様はSさんを応援してくださっているのでしょうか?
Sさん:はい、実は一人っ子で、両親は共働きだったので、同じ敷地にいるおばあちゃんに育てられました。おばあちゃんにとって孫は自分だけなんですよね。よく料理の話もしているので応援してくれると思います。
FP吹田:近くにいらっしゃって、大切なお孫さんとして応援してくださる関係性は本当にすてきですね。ところでお祖父様は不動産を所有してらっしゃいませんか?
Sさん:おじいちゃんは所有しておりませんが、おばあちゃんが不動産を所有していると聞いています。
FP吹田:なるほど。もし、お祖母様がSさんを応援してくださる気持ちで、お祖母様所有の不動産を担保にローンを組むことに協力してくださるなら、フランス留学の資金も捻出できるのではないでしょうか?
Sさん:その手がありましたか。でも、おばあちゃんがローンを組むのですか?
FP吹田:いえいえ、不動産担保ローンは、ご家族の不動産でも契約できるので、例えば、お祖母様の不動産を担保に、Sさんが契約してSさんが返済するというプランも可能なのですよ。
Sさん:え?それなら、自分もおばあちゃんのためにも頑張れそうです。
FP吹田:しっかり夢を実現するモチベーションにもなりますよね。ここで、不動産担保ローンと教育ローンを比較してみたので、以下をご参考ください。
不動産担保ローンと教育ローンの主な特徴
不動産担保ローン | 教育ローン | |
---|---|---|
資金使途の制限 | 少ない | あり |
債務者 | 所有者本人のほか、家族でも可能 | 留学する本人または保護者で安定収入がある人。本人が社会人の場合、無職だと厳しい。 |
借入限度 | 物件の担保価値による | 500万円や1000万円など規程あり |
借入(返済)期間 | 短期(1年超)から長期(35年)まで様々 | 3ヵ月から、最長15年・16年が多い |
保証人 | 原則不要(担保提供者など保証人を必要とする場合もある) | 原則不要(収入が少ない場合は、保証人が必要となる) |
FP吹田:はい、教育ローンの場合、資金使途として、入学金や授業料などに限定されるところ、生活費まで含められるところなど様々です。
Sさん:生活費も目安をしっかり立てておかないとですね。教育ローンが、社会人で安定収入がないと厳しいというのは、自分の場合やっぱり厳しいなぁと思います。ところで不動産担保ローンを借りる場合、保証人は必要なのでしょうか?
FP吹田:はい、不動産担保ローンでは、場合によって、担保を提供される方に保証人を求めることがあるので、最終的に金融機関の担当者に確認してくださいね。
Sさん:わかりました。あと、不動産担保ローンの場合、借入上限はだいたいどのくらいなのでしょうか?
FP吹田:一般的に担保物件の評価額の8~7割程度と言われています。その範囲内で、まずはSさんがフランスで必要になる額にし、無理なく返済できる期間で設計してもらうのがよいのではないでしょうか?
Sさん:はい、明るい光が見えてきました。まずは、おばあちゃんに相談してみます。
FP吹田:そうですね。Sさんが大切な一人孫さんで、お祖母様とも仲良くしていらっしゃるのは、大切な財産ですね。
Sさん:やっぱり家族って有難いなぁと思います。両親・おばあちゃんにも感謝しながら、夢をあきらめずにチャレンジしようと思います。
留学などでお金がかかる場合の資金調達として、
・基本的に親が子のためにローンを組む仕組み。但し、本人自身がローンを組むことも可能。
・資金使途や借入限度、期間も金融機関の規定しだい。
・債務者の収入が少ない場合、保証人が必要となるケースもある。
・担保にできる不動産は家族所有まで幅広く、本人が借りて返済するプランが可能。
・借入限度額は、担保物件の評価額の8~7割程度まで可能で、資金使途も制約が少ない。
・返済期間も長期の設計が可能。
・もし、返済できなくなった場合、担保とした不動産を失うことになるので、担保提供者などの保証人を必要とする場合がある。
執筆者紹介