老人ホームや介護施設にかかる費用、選び方を解説

更新日: / 公開日:2022.01.05

老後の住まいを考えたとき、老人ホームや介護施設などの、高齢者向け住宅を検討するかもしれません。一方で、これらの施設にかかる費用がいくらなのか、そもそもどのような人が、どのような施設を選ぶべきなのか、など、わからないことも多いでしょう。

この記事では、老人ホームや介護施設にかかる費用と、その選び方について解説します。なお、高齢者向け住宅については、以下の記事で詳しく解説しています。

老人ホーム・介護施設とは?公的施設と民間施設の違いも解説

老人ホームと介護施設の違いとは

「老人ホーム」と「介護施設」という言葉は、世間一般で使用されますが、実は正式に定義がされていません。たとえば、厚生労働省のホームページでは、これらの施設を総称して、「高齢者向け住まい・施設」という表記が用いられています。そのため、前述した記事と同様に、この記事でも「老人ホーム」と「介護施設」を以下のように定義します。

老人ホーム:広義の高齢者向け住まい・施設
介護施設:介護サービスを受けられる高齢者向け住まい・施設

なお、厚生労働省の資料では、「高齢者向け住まい・施設」の利用者数は下図のようになっています。

「高齢者向け住まい・施設」の利用者数

出典)厚生労働省「介護分野をめぐる状況について」

直近、最も利用が多かったのは、介護老人福祉施設です。次いで、有料老人ホーム、介護老人保健施設と続きます。また、有料老人ホームの種別としては、住宅型有料老人ホームが介護付き有料老人ホームの約1.5倍であることがわかります。

老人ホームの種類と費用の目安

では、老人ホームの種類と費用の目安を整理しておきましょう。それぞれの施設の特徴などは前述した記事を参照してください。

なお、以下で紹介する費用はあくまで目安額のため、要介護度などにより変わることもあります。また、施設によっては入所・入居時に一時金が発生する場合もあります。特に有料老人ホームは、グレードが高いものほど一時金が高くなる傾向があり、中には数千万円の一時金がかかるものもあります。

一方で、同じ部屋に対し、一時金があるプランと、一時金がない、もしくは少額である代わりに月額が高めのプランを用意しているところもあります。

介護施設を除く老人ホーム

施設公的/民間一時金(目安)月額(目安)
軽費老人ホーム(自立型)公的0~数百万円8~20万円
住宅型有料老人ホーム民間0~数千万円15~30万円
養護老人ホーム公的不要0~12万円
サービス付き高齢者向け住宅民間0~数十万円10~25万円
シルバーハウジング民間敷金1~13万円

介護施設

施設公的/民間一時金(目安)月額(目安)
介護老人福祉施設公的不要5~20万円
介護老人保健施設公的不要5~20万円
介護医療院公的不要7~17万円
介護療養型医療施設*公的不要7~17万円
軽費老人ホーム(介護型)公的0~数百万円10~25万円
認知症対応型共同生活介護民間0~数十万円10~25万円
介護付有料老人ホーム民間数十万円~数千万円15~30万円

※介護療養型医療施設は2023年度末で廃止
※執筆者作成

老人ホームの探し方

老人ホームを選ぶ際には、入所する人の経済状態や要介護度をはじめ、いくつかの条件で絞り込む必要があります。主なポイントは「健康状態」「予算」「立地」の3点です。

健康状態

まずは、入所者の健康状態を確認します。大きな軸としては、「自立している」か「要支援・要介護の状態である」かに分かれます。要支援や要介護の場合は、どの段階なのかということや、認知症であるか否か、ということも重要です。

たとえば、要介護状態で医療的措置が必要な人は、介護医療院や介護療養型医療施設、介護老人福祉施設が候補となります。

予算

次に、自身の経済状況を踏まえた予算設定が必要です。一般的に、民間施設よりも公的施設の方は費用が安いです。しかし、公的施設は需要過多の状態が続いており、入所待ちが常に発生している状況です。

一方で、有料老人ホームなどの民間施設は、公的施設よりも費用が高いものの、供給数が多いため、経済状況に合わせた選択肢もあるかもしれません。予算設定の際には、入所の際に発生する一時金や、毎月負担できる月額を考えましょう。貯金がない場合には、毎月の収入である年金や金融資産、いずれ住まなくなる自宅の活用などを加味して検討します。

立地

親族との近居をした方がいいのか、必要ないかなど、立地条件から絞り込むこともできます。家族が訪れやすいよう利便性を重視する場合は、地域を限定して探すことになります。地域が限定されるのであれば、自身が居住する地域の地域包括支援センターなどで相談をすると、空室状況なども教えてもらえます。

施設見学や体験入所で候補を絞る

老人ホームを前述のような条件で絞り込んだ後は、次のような5つのポイントを確認して施設を決めましょう。

  • 設備:浴室や食堂、リハビリ施設、トイレなど
  • 介護・医療サービス:施設スタッフによる介護か、外部サービスの施設か、看護スタッフがいるかなど
  • 食事:食事がおいしいか、病気に合わせて減塩、低糖などの配慮をしてくれるかなど
  • 入院時や看取り:病院に入院すると退所となるか、看取り(施設で亡くなること)ができるのかなど
  • 経営状態:施設の運営母体の財務状況に問題がないか、倒産時にどのような保証があるかなど

2025年は団塊世代が後期高齢者になり始めることから、大介護時代が始まるとされています。たとえば、介護老人福祉施設は要介護3以上が条件の施設ですが、首都圏を中心に空きがなく要介護度4でも入居待ちとなっているところもあります。

また、公的な介護施設は、重度の人が優先となり、軽度の人の選択余地はなくなることも考えられます。公的施設が難しく、有料老人ホームに入る場合は、具体的に施設を見学し、いくつか候補を絞っておくのがいいでしょう。施設見学や体験入所もできるので、元気なうちに候補を絞っておくと安心です。

まとめ

老後の住まいを決めるのは、元気に動けるときが一番です。人生100年時代とも言われる現在、目先の費用だけでなく、100歳まで長生きをしても払い続けられるかなど、持続性も確認しましょう。費用を捻出するために、自宅という資産を活用する選択肢があるのかどうかを確認しておくことも安心です。


執筆者紹介

豊田 眞弓( Mayumi Toyoda )
マネー誌ライターを経て、94年より独立系ファイナンシャルプランナー。
個人相談、講演・研修講師、コラム寄稿などを行う。座右の銘は「笑う門には福もお金もやってくる」。趣味は講談、投資。
<主な著書>
「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)、ほか著書多数。