公開日:2025.05.28
一般的に金融機関で住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険(以下、団信)の加入を求められます。団信に加入すれば、万が一のときに住宅ローンの残債を肩代わりしてもらえるのが魅力です。ただ、中には「保険金が受け取れなかった」というケースもあります。
この記事では、団信の保険金が受け取れない理由や団信加入時に確認しておきたいポイント、団信の保険金が受け取れなかったときの対処法について解説します。
団信とは、加入者が死亡または所定の身体障害状態になった場合に、住宅の持分や返済割合などにかかわらず、以後の住宅ローンの返済が不要となる生命保険です。この仕組みにより、遺された家族は住宅ローンの返済を気にすることなく生活を続けることができます。
団信の基本保障は「死亡」および「高度障害状態」です。最近では3大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)なども保障するタイプもあります。団信加入には保険会社の審査があり、健康状態などの告知が必要です。
団信は生命保険の一種であるため、一定の条件を満たさないと保険金は受け取れません。ここでは、団信で保険金が支払われない主な理由を紹介します。
団信には、保険金が支払われる条件が定められています。例えば、事故によって障害が残ったとしても、保険会社が定める高度障害状態に該当しないと判断された場合や、病気でも所定の状態にならなければ保障対象とならない場合など、支払事由に該当しないと保険金は受け取れません。
団信に加入する際は、健康状態に関する告知が義務付けられています。例えば、がん治療で通院していることを告知せずに加入し、加入後にそのがんが原因で死亡した場合や、申し込みの段階で、病歴や通院歴、服薬状況などを正確に告知していなかった場合は、告知義務違反と判断されて、保険金が受け取れないことがあります。
一般的に、住宅ローンを滞納して保証会社などの第三者が、ローンを滞納している債務者に代わって金融機関に一括返済する、いわゆる代位弁済の手続きが始まると団信は解約となります。団信が解約されたタイミングで、支払事由に該当する事案が発生したとしても保険金を受け取れなくなってしまいます。
団信の保険金は、死亡や高度障害状態になった場合に自動的に受け取れるものではありません。保険金を受け取るには、契約者自身または遺族が金融機関に対して保険金の請求手続きを行う必要があります。
保険金を請求する際は、医師の診断書など所定の書類を準備して金融機関で手続きを行います。万が一のときは、金融機関に連絡し手続きの方法や流れを確認するようにしましょう。
団信のトラブルを未然に防ぐために、団信加入時に以下のポイントを確認しておきましょう。
保険金が支払われる条件は、保険会社や商品によって異なります。加入時に死亡や高度障害状態の定義、3大疾病などの特約や保障範囲、給付条件などを確認しましょう。特に高度障害状態については、認定基準が細かく定められている場合があるので注意が必要です。責任開始日(保障が始まる日)や免責期間(保険金の支払いが免除される期間)なども把握しておきましょう。
前述の通り、健康状態を正しく告知しないと告知義務違反と判断され、保険金が受け取れない場合があります。病歴や通院歴、服薬状況などの告知事項はもれなく、正確に告知することを心掛けましょう。告知すべきか迷う項目がある場合は、自己判断せずに金融機関や保険会社に相談することが大切です。
住宅ローンの滞納を続けると、団信が解約されて保障を受けられなくなる恐れがあります。将来にわたって住宅ローンを無理なく払い続けられるか、団信加入前に資金計画を立てることが重要です。
万が一、団信の保険金が受け取れなかった場合は、状況に応じて以下の対処法を検討しましょう。
団信未加入で住宅ローンの完済前に契約者が亡くなった場合、融資された住宅を相続人が債務を引き継ぐことになります。債務が引き継がれた相続人は、今後の自身の収入や財産状況を整理し、返済を続けることが可能かを検討しましょう。返済が苦しい場合は、金融機関に返済計画の見直しや借り換えなどの対応を相談するのも一つの方法です。
契約者が亡くなり、住宅ローンを引き継いだが支払い続けるのが難しい場合は、任意売却で住宅を売却する方法もあります。任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になったときに、債権者と債務者の間で同意して担保不動産を売却することです。競売に比べて、市場価格に近い値段で売却できる可能性があります。
団信に加入すれば、契約者に万が一のことがあった場合は保険金で住宅ローンが完済されます。ただし、状況によっては保険金が受け取れないこともあります。団信加入時には支払条件や告知事項をしっかりと確認し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
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